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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】電子クーポン提供システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0207 20230101AFI20231019BHJP
【FI】
G06Q30/0207
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020009356
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021117607
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591057256
【氏名又は名称】株式会社エクサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中菅 章浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 塁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 肖太
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190204(JP,A)
【文献】特開2015-032303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが事業者に対して提示することによって利益を得ることができる電子クーポンを提供する電子クーポン提供システムであって、
前記電子クーポンとして第1クーポンを生成するクーポン生成部、
前記第1クーポンの内容を記述した第1クーポンデータを格納する記憶部、
前記第1クーポンの内容を記述したデータを送信するように要求する送信リクエストを受け取るとその内容を返信することにより前記第1クーポンを事業者に対して提示できるようにする送信部、
を備え、
前記クーポン生成部は、前記第1クーポンを分割するように指示する分割指示を受け取ると、その指示にしたがって、前記第1クーポンの内容を分割した第2クーポンの内容を記述する第2クーポンデータを生成して前記記憶部へ格納するとともに、前記第2クーポンの内容を前記第1クーポンデータから減算するかまたは前記第1クーポンの内容から前記第2クーポンの内容を減算した第3クーポンの内容を記述する第3クーポンデータを前記記憶部に格納し、
前記送信部は、前記第2クーポンの内容を記述したデータを送信するように要求する送信リクエストを受け取ると、その内容を返信することにより、前記ユーザが前記第2クーポンを事業者に対して提示できるようにし、
前記クーポン生成部は、前記第1クーポンを分割することにより派生させる新たな電子クーポンの下限個数を指定する最小分割数を、前記記憶部に記録し、
前記クーポン生成部は、前記最小分割数が指定する前記下限個数の範囲内で、前記第2クーポンデータを生成し、
前記第1クーポンは、前記第1クーポンから直接的に派生し、または前記第1クーポンを起源として間接的に派生した電子クーポンの個数が、前記下限個数以上になった時点で前記ユーザが使用できるように構成されており、
前記送信部は、前記第1クーポンの内容を送信するように要求する送信リクエストを受け取ったとき、前記第1クーポンから直接的に派生し、または前記第1クーポンを起源として間接的に派生した電子クーポンの個数が、前記下限個数未満である場合は、前記第1クーポンを使用できない旨の応答を、前記送信リクエストに対して返信する
ことを特徴とする電子クーポン提供システム。
【請求項2】
前記クーポン生成部は、前記第1クーポンを分割することによって生成する新たな電子クーポンの上限個数を指定する最大分割数を、前記記憶部に記録し、
前記クーポン生成部は、前記最大分割数が指定する前記上限個数の範囲内で、前記第2クーポンデータを生成する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項3】
前記最大分割数は、前記第1クーポンから直接的に派生し、または前記第1クーポンを起源として間接的に派生することができる電子クーポンの最大派生個数を規定しており、 前記クーポン生成部は、前記第1クーポンから直接的に派生し、または前記第1クーポンを起源として間接的に派生した電子クーポンの個数を表す情報を前記記憶部に記録することにより、前記最大派生個数が指定する個数の範囲内で新たな電子クーポンを生成する ことを特徴とする請求項2記載の電子クーポン提供システム。
【請求項4】
前記最大分割数は、前記第1クーポンから派生する新たな電子クーポンの、前記第1クーポンから数えた最大世代数を規定しており、
前記クーポン生成部は、前記第1クーポンから数えた前記第2クーポンの世代数を表す情報を前記記憶部に記録することにより、前記最大世代数が指定する世代数の範囲内で新たな電子クーポンを生成する
ことを特徴とする請求項2記載の電子クーポン提供システム。
【請求項5】
前記クーポン生成部は、前記第1クーポンから派生する新たな電子クーポンのうち、前記第1クーポンから数えた同じ世代に属するものの最大個数として、同一世代内最大個数を規定しており、
前記クーポン生成部は、前記第1クーポンから数えた前記第2クーポンの世代数を表す情報を前記記憶部に記録することにより、前記同一世代内最大個数が指定する個数の範囲内で新たな電子クーポンを生成する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項6】
前記最大分割数は、前記第1クーポンから直接的に新たな電子クーポンを分割することができる最大分割可能回数を規定しており、
前記クーポン生成部は、前記第2クーポンを生成するとき、前記第1クーポンから直接分割した新たな電子クーポンの積算分割回数を表す情報を、前記記憶部に記録することにより、前記最大分割可能回数が指定する分割回数の範囲内で新たな電子クーポンを生成する
ことを特徴とする請求項2記載の電子クーポン提供システム。
【請求項7】
前記クーポン生成部は、前記第2クーポンが提供する利益として許容する上限価値と下限価値を、前記記憶部に記録し、
前記クーポン生成部は、前記第2クーポンの内容として、前記上限価値と前記下限価値との間の範囲内で前記第2クーポンが提供する利益を表すように、前記第2クーポンデータを生成する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項8】
前記上限価値は、1回の分割によって前記第1クーポンから分割することができる利益の上限を規定しており、
前記下限価値は、1回の分割によって前記第1クーポンから分割することができる利益の下限を規定している
ことを特徴とする請求項記載の電子クーポン提供システム。
【請求項9】
前記クーポン生成部は、前記第1クーポンから前記第2クーポンを分割することによって、前記第1クーポンが提供する利益が0または下限値以下になったとき、前記第1クーポンを使用または分割することができない旨を表す状態値を、前記第1クーポンデータに記録し、
前記送信部は、前記第1クーポンを使用または分割することができない旨を前記状態値が表している場合は、前記第1クーポンを提示するように指示するリクエストを受け取ったとき、その旨を表す応答を返信する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項10】
前記記憶部は、前記電子クーポンの有効期限を指定する有効期限値を記述した条件データを格納しており、
前記第1クーポンデータは、前記条件データを参照することにより、前記第1クーポンの有効期限を記述しており、
前記第2クーポンデータは、前記条件データを参照することにより、前記第2クーポンの有効期限を記述している
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項11】
前記有効期限値は、前記第1クーポンの有効期限を指定するとともに、前記第1クーポンから直接的にまたは前記第1クーポンを起源として間接的に派生した電子クーポンの有効期限を指定しており、
前記送信部は、前記第1クーポンまたは前記第1クーポンから派生した電子クーポンの内容を送信するように要求する送信リクエストを受け取ったとき、その電子クーポンが前記有効期限値を超過している場合は、その電子クーポンを使用できない旨の応答を、前記送信リクエストに対して返信する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項12】
前記有効期限値は、前記電子クーポンを使用することができる日数または時間数を指定しており、
前記送信部は、前記電子クーポンの内容を送信するように要求する送信リクエストを受け取ったとき、その電子クーポンが前記有効期限値を超過している場合は、その電子クーポンを使用できない旨の応答を、前記送信リクエストに対して返信する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項13】
前記記憶部は、前記クーポン生成部が前記第1クーポンを分割することによって前記第2クーポンを生成するときにおける制約条件を記述した条件データを格納しており、
前記電子クーポン提供システムはさらに、前記条件データを指定する条件指定リクエストを受け取り、その内容を前記条件データに反映する、条件指定部を備え、
前記クーポン生成部は、前記条件指定部が前記条件指定リクエストの内容を前記条件データに反映した以後は、その反映後の前記条件データが指定する制約条件にしたがって、前記第2クーポンを生成する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項14】
前記記憶部は、前記ユーザが前記電子クーポンを使用するときにおける制約条件を記述した条件データを格納しており、
前記電子クーポン提供システムはさらに、前記条件データを指定する条件指定リクエストを受け取り、その内容を前記条件データに反映する、条件指定部を備え、
前記送信部は、前記条件指定部が前記条件指定リクエストの内容を前記条件データに反映した以後は、その反映後の前記条件データが指定する制約条件にしたがって、前記電子クーポンの内容送信する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項15】
前記クーポン生成部は、前記第2クーポンを受け取ることができる第2ユーザの識別子を、前記第2クーポンデータ内に記録し、
前記送信部は、前記第2クーポンの内容を送信するように要求する送信リクエストを受け取ると、前記送信リクエストが前記第2ユーザから発信されたか否かを判定することにより、前記送信リクエストを認証し、
前記送信部は、前記認証が成功した場合は前記第2クーポンの内容送信し、失敗した場合は送信しない
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【請求項16】
前記記憶部は、前記電子クーポンの内容を記述したクーポンデータと関連付けて、前記電子クーポンを事業者に対して提示する際に前記ユーザがアクセスすべネットワーク上のアドレスを格納しており、
前記送信部は、前記アドレスを指定することにより前記電子クーポンの内容を送信するように要求する送信リクエストを受け取り、
前記送信部は、前記送信リクエストが指定する前記アドレスに対応する前記クーポンデータの内容を記述したデータ送信する
ことを特徴とする請求項1記載の電子クーポン提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが事業者に対して提示することによって経済的利益を得ることができる電子クーポンを提供する電子クーポン提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クーポン券は、商品やサービスの利用を促進するために、従来から用いられてきたものである。近年は紙のクーポン券に代えて、ネットワーク上で提供する電子クーポンが用いられる場合がある。電子クーポンの形態としては例えば、携帯端末の画面上にバーコードなどの情報を表示し、店舗端末がそのバーコードを読み取ることにより、ユーザに対して経済的利益を提供するものがある。ユーザは例えば、電子クーポンをあらかじめ携帯端末上にダウンロードするか、あるいは電子クーポンを提供するネットワークアドレスへアクセスするなどによって、電子クーポンを取得することができる。
【0003】
下記特許文献1は、電子クーポンに関する技術を記載している。同文献は、『より多数のユーザに電子クーポンが配布されるとともに、商品の購入意思の高いユーザに電子クーポンが配布されるようなインセンティブの働く販売促進方法を提供する。』ことを課題として、『ユーザ携帯端末間で配布でき、かつ配布を仲介したユーザの識別情報を記録する配布履歴情報記録部を備えた電子クーポンを用い、ユーザが配布を受けた電子クーポンを使用して商品を購入したときに、電子クーポンから配布履歴情報を取出し、配布を仲介したユーザに対して成約ポイントを分配する。配布に対しても配布ポイントを付与し、蓄積されたポイントはユーザ携帯端末で確認できるようにした。配布履歴情報は暗号化して記録し、個人のプライバシーを保護している。また、電子クーポンにはコピーを配布するか原本を配布するかの配布方式指定情報記録部を設けた。端末間の通信は近距離無線通信またはメール配信を使用する。』という技術を開示している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-187140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ユーザに対して配布された電子クーポンを、そのユーザが再配布できるようにするものである。このような再配布による場合、電子クーポンの再受取者は、その電子クーポンが提供する経済的利益を全額受け取ることになる。しかし場合によっては、再配布者が電子クーポンの経済的利益の一部のみを再配布することを望むことも考えられる。特許文献1においては、このような部分的な再配布については必ずしも十分に考慮されていないと考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、電子クーポンを受け取ったユーザがその電子クーポンの経済的価値を分割した新たな電子クーポンを別ユーザへ配布することができる電子クーポン提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子クーポン提供システムは、第1クーポンを分割するように指示する分割指示を受け取ると、その指示にしたがって、前記第1クーポンの内容を分割した第2クーポンの内容を記述する第2クーポンデータを生成して記憶部へ格納するとともに、前記第2クーポンの内容を第1クーポンから減算する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電子クーポン提供システムによれば、電子クーポンを受け取ったユーザはその電子クーポンの経済的価値を分割した新たな電子クーポンを別ユーザへ配布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る電子クーポン提供システム10の構成図である。
図2】電子クーポンを分割する様子を示す概念図である。
図3】記憶部150が格納する条件データ151の構成とデータ例を示す図である。
図4】記憶部150が格納するクーポンデータ152の構成とデータ例を示す図である。
図5】電子クーポン提供システム10の動作手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る電子クーポン提供システム10の構成図である。電子クーポン提供システム10は、ユーザ310またはユーザ320に対して電子クーポンを提供するシステムである。電子クーポン提供システム10は、サーバ100を備える。サーバ100はさらに、クーポン生成部110、条件指定部120、分割指示部130、送信部140、記憶部150を備える。
【0011】
電子クーポンを発行するクーポン発行事業者400は、条件指定部120に対して、その電子クーポンの発行条件を指定する。条件指定部120は、その発行条件を記述した条件データ151(詳細は後述)を記憶部150に格納する。クーポン生成部110は、条件データ151にしたがって電子クーポンを生成する。具体的には、クーポン生成部110は、電子クーポンの内容を記述したクーポンデータ152(詳細は後述)を記憶部150に格納する。
【0012】
本実施形態1における電子クーポンは、ユーザが所定のネットワークアドレスにアクセスすることにより、ユーザが所持する携帯端末などへ提供されるものである。送信部140は、ユーザ310の携帯端末210(ユーザ320の携帯端末220についても同様)から、電子クーポンを配信するよう要求する送信リクエストを受け取ると、クーポンデータ152が記述している電子クーポンの内容を表すデータを、その送信リクエストに対する応答として返信する。
【0013】
図2は、電子クーポンを分割する様子を示す概念図である。クーポン発行事業者400は、後述するcoupon2の条件を指定して、電子クーポン発行を指示したものと仮定する。サーバ100(クーポン生成部110)は、その条件にしたがって、電子クーポンcoupon2-0を生成する。coupon2-0の受取者として、USER2(図1におけるユーザ310)が指定されている。coupon2-0の内容は、ホテルにおいて1名5泊宿泊することができるものである。
【0014】
USER2は、coupon2-0の経済的価値の一部をUSER5(図1におけるユーザ320)へ渡したいと希望しているものと仮定する。そこでUSER2は、coupon2-0を分割して、1名3泊宿泊可能な電子クーポンと1名2泊宿泊可能な電子クーポンを生成するように、サーバ100(分割指示部130)に対して指示する。分割指示は、例えば携帯端末220を介して発信することができる。クーポン生成部110は、その分割指示にしたがって、1名3泊宿泊可能な電子クーポンcoupon2-1と1名2泊宿泊可能な電子クーポンcoupon2-2を生成する。2つの電子クーポンを新たに生成してもよいし、coupon2-0の内容からいずれかの派生電子クーポンの内容を差し引いてもよい。以下では説明の便宜上、新たに2つの電子クーポンを生成し、coupon2-0は分割以後は使用不可である旨のフラグ(ステータス「分割済」)をセットするものとする。coupon2-1と2-2のステータスは、それぞれ「利用待ち」となる。coupon2-1の受取者はUSER5である。
【0015】
USER5は、coupon2-1の経済的価値の一部をUSER6へ渡したいと希望しているものと仮定する。そこでUSER5は、coupon2-1を分割して、1名1泊宿泊可能な電子クーポンと1名2泊宿泊可能な電子クーポンを生成するように、サーバ100(分割指示部130)に対して指示する。クーポン生成部110は、その分割指示にしたがって、1名1泊宿泊可能な電子クーポンcoupon2-3と1名2泊宿泊可能な電子クーポンcoupon2-4を生成する。coupon2-1のステータスは「分割済」となる。coupon2-3と2-4のステータスは、それぞれ「利用待ち」となる(図2においてはその後さらに「利用済」となっている)。coupon2-3の受取者はUSER6である。
【0016】
図3は、記憶部150が格納する条件データ151の構成とデータ例を示す図である。条件データ151は、クーポン発行事業者400が電子クーポンを発行する際にその電子クーポンの利用条件などの条件を記述するデータである。条件データ151は、電子クーポンを発行する際に各フィールドの内容を指定することもできるし、電子クーポンを発行した後に各フィールドの内容を変更することもできる。
【0017】
条件IDフィールドは、条件データ151の各レコードを区別するためのIDである。発行される電子クーポンは、いずれかの条件IDを有する。同じ条件IDを有する電子クーポンは、同じ条件の下で利用されることになる。
【0018】
電子クーポンを利用できるサービス(電子クーポンが提供する経済的価値)としては、例えば以下のようなものが挙げられる:(a)特定の商品と引き換える、(b)決済時に金銭として用いることができる(割引もこれに含まれる)、(c)特定のサービス(図3においてはホテル宿泊、マッサージ、など)の提供を受けることができる。サービスタイプフィールドは、その電子クーポンが利用できるサービスタイプを記述する。価値単位フィールドは、そのサービスタイプによって提供される価値の単位(電子クーポンとしての価値単位)を記述する。
【0019】
初期受取者フィールドは、初回発行時の電子クーポンを受け取るユーザのIDを記述する。不特定者が受け取る電子クーポンであれば、本フィールドは必ずしも指定する必要はない。
【0020】
クーポンIDフィールドは、初回発行時の電子クーポンを識別するIDである。同じ条件IDを有する電子クーポンを改めて初回発行する場合は、条件データ151内に新たなレコードを生成して新たなクーポンIDを割り当てる。
【0021】
最小分割数フィールドは、初回発行した電子クーポンを分割する際における制約条件を記述している。最小分割数は、電子クーポンを分割することにより派生させる新たな電子クーポンの下限個数を指定する。同じ電子クーポンから派生した新たな電子クーポンの個数が下限個数以上になった時点で、その電子クーポンおよびその電子クーポンから派生した電子クーポンが、ともに使用可能となる。最小分割数の制約を設けない場合は、本フィールドを空(または0などの適当な値)にセットする。その他フィールドにおいても同様である。
【0022】
分割個数が下限個数未満の時点において、その電子クーポンの内容を送信するように要求する送信リクエストを送信部140が受け取った場合、送信部140は、その電子クーポンを使用できない旨の応答を返信する。したがって最小分割数は、クーポン発行事業者400がその電子クーポンを分割して拡散することを希望する場合などにおいて、有用である。
【0023】
最大分割数フィールドも、初回発行した電子クーポンを分割する際における制約条件を記述している。最大分割数は、以下のいずれかの最大値を指定することができる:(最大分割数その1)同じ電子クーポンから直接的に派生した電子クーポン(すなわち子クーポン)の個数、および子クーポンからさらに派生した電子クーポン(孫クーポンまたはそれ以降の世代)の個数、を全て合算した総数、(最大分割数その2)分割元クーポン(親クーポン)から起算した派生クーポンの世代数、(最大分割数その3)同じ電子クーポンから直接的に派生させることができるクーポン(すなわち子クーポン)の個数。
【0024】
図2に示す例において、現在の分割数は以下のように数えることができる。coupon2-0から派生した子クーポン以降の派生クーポンは、合計4個である(最大分割数その1の場合)。coupon2-3と2-4は、coupon2-0を第0世代とすると、第2世代である(最大分割数その2の場合)。coupon2-0から直接的に派生した子クーポンは2つである(最大分割数その3の場合)。
【0025】
最小分割価値フィールドは、1つの派生クーポンの価値として最小限確保すべき下限価値を指定する。換言すると、1回の分割によって生成する派生クーポンの最小価値を指定する。例えば条件ID=coupon2を有する電子クーポンを分割する際は、1名1泊以上の価値を有する派生クーポンを生成しなければならない(0.5泊などの派生クーポンは生成できない)。したがって最小分割価値は、クーポン発行事業者400がその電子クーポンをあまり細切れにしたくない場合などにおいて、有用である。
【0026】
最大分割価値フィールドは、1つの派生クーポンの価値として許容される上限価値を指定する。換言すると、1回の分割によって生成する派生クーポンの最大価値を指定する。例えば条件ID=coupon2を有する電子クーポンを分割する際は、1名5泊よりも大きい価値を有する派生クーポンを生成することはできない(1名6泊などの派生クーポンは生成できない)。
【0027】
有効フラグフィールドは、その条件IDを有する電子クーポンをユーザが使用できるか否かを指定する。例えば電子クーポン発行後において、後発的にその電子クーポンを使用できないようにする場合、クーポン発行事業者400は条件指定部120を介して本フィールドを「無効」にセットする。それ以後、その電子クーポンの内容を送信するように要求する送信リクエストを送信部140が受け取った場合、送信部140は、その電子クーポンを使用できない旨の応答を返信する。
【0028】
有効期限フィールドは、その条件IDを有する電子クーポンをユーザが使用できる期限を指定する。有効期限日時の開始時点/終了時点/開始時点と終了時点の双方のうちいずれかを指定することができる。あるいはこれに代えて、電子クーポン発行時点から起算した有効期間を指定することができる。例えば発行日時から24時間有効、発行日の翌日を初日として10日間有効、などの指定が考えられる。
【0029】
同一世代内最大個数フィールドは、同じ電子クーポンから派生した派生クーポンが同じ世代内に存在することができる最大個数を指定する。例えば条件ID=coupon2の電子クーポンは、同じ世代内に2つまでの子クーポンを生成することができる。図2の例において、第1世代には既に2つの子クーポンが存在するので、第1世代としてこれ以上子クーポンを生成することはできない。
【0030】
図4は、記憶部150が格納するクーポンデータ152の構成とデータ例を示す図である。クーポンデータ152は、クーポン生成部110が生成した親クーポンおよび子クーポン以降の世代の派生クーポンについての情報を記述するデータである。クーポンデータ152の各レコードは、クーポン生成部110が電子クーポンを生成するごとに新規生成または更新する。ここでは図2に示す派生関係に対応するレコード例を示した。
【0031】
クーポンIDフィールドは、各電子クーポンを識別するためのIDである。条件IDフィールドは、その電子クーポンに対して適用される条件ID(条件データ151内の同フィールドを参照)を指定する。
【0032】
分割元クーポンIDは、子クーポン以降の世代の電子クーポンについて、直接の派生元となった親クーポンのクーポンIDを示す。分割元クーポンIDを辿ることにより、1つの電子クーポンから派生した子クーポン以降の世代の電子クーポン数をカウントすることができる。図4の例においては、coupon2-0を起源とする電子クーポンが4個生成されていることが分かる。また、1つの電子クーポンから派生した世代数をカウントすることもできる。図4の例においては、coupon2-1と2-2が第1世代であり、coupon2-3と2-4が第2世代であることが分かる。さらに、1つの電子クーポンから直接的に派生したクーポンの個数をカウントすることもできる。図4の例においては、coupon2-0から直接分割したのはcoupon2-1と2-2であることが分かる。
【0033】
受取者フィールドは、電子クーポン発行時または分割時において、その新たに生成する電子クーポンを受け取るべきユーザのIDを指定する。価値フィールドは、その電子クーポンが提供する価値(例えば現金として利用できる電子クーポンであればその利用可能金額)を示す。
【0034】
有効フラグフィールドは、その電子クーポンをユーザが使用できるか否かを示す。例えば分割によって親クーポンの残存価値が0(または所定の下限値以下、以下同様)となった時点で、その親クーポンは「無効」となる。あるいは何らかの不正行為が発覚した場合、その電子クーポンを後発的に使用不能とするのであれば、クーポン発行事業者400が条件指定部120を介して本フィールドを「無効」にセットする。その他個別の状況に応じて本フィールドの「有効」「無効」を切り替えてもよい。
【0035】
ステータスフィールドは、各電子クーポンの利用状況を示す。ユーザが電子クーポンを利用すると、送信部140はその旨の通知を例えば利用店舗の決済端末から受け取り、本フィールドを「利用済」にセットする。利用されていない電子クーポンについては、クーポン生成部110は本フィールドを「利用待ち」にセットする。分割によって親クーポンの残存価値が0となった場合、クーポン生成部110は本フィールドを「分割済」にセットする。
【0036】
発行日時フィールドは、クーポン生成部110が各電子クーポンを生成した日時を保持する。有効期限を発行日時からの有効期間によって指定する場合、送信部140は本フィールドと有効期限フィールドを参照して、その電子クーポンが使用可能か否かを判断することができる。
【0037】
図5は、電子クーポン提供システム10の動作手順を説明するフロー図である。記載の便宜上、一部の参照番号を省略した。クーポン発行事業者400は、条件データ151の内容を指定して、電子クーポンを新規発行するように条件指定部120へ指示する(図2:(1)新規発行)。条件指定部120はその条件を条件データ151へ記録し、クーポン生成部110はその条件にしたがって電子クーポンを新規発行する。ここでは図2のcoupon2-0を発行したものとする。ユーザ310は分割指示部130に対して、coupon2-0を2つに分割するように指示する(図2:(2)分割指示)。ここでは図2のcoupon2-1と2-2を生成するように指示したものとする。クーポン生成部110は、条件ID=coupon2に準拠しつつ、coupon2-1と2-2の内容をクーポンデータ152内に記録する(図2:(3)分割)。ユーザ320はいずれかの電子クーポンの内容を送信するように、送信部140に対して要求する(図2:(4)送信リクエスト)。送信部140はその電子クーポンの内容をクーポンデータ152から読み出して応答する(図2:(5)応答)。
【0038】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る電子クーポン提供システム10は、第1クーポン(例えば図2のcoupon2-0)を分割するように指示する分割指示を受け取ると、その指示にしたがって、第2クーポン(例えば図2のcoupon2-1)の内容をクーポンデータ152へ記録するとともに、第1クーポンから第2クーポンの内容を減算するかまたは減算後の新たな第3クーポン(図2のcoupon2-2)の内容をクーポンデータ152へ記録する。これにより、電子クーポンが提供する利益を分割して新たな電子クーポンを生成することができる。
【0039】
本実施形態1に係る電子クーポン提供システム10において、条件データ151は最大分割数として、(最大分割数その1)~(最大分割数その3)として例示したような制約条件を規定し、クーポン生成部110はその制約条件の範囲内で新たな電子クーポンを分割によって生成する。これによりクーポン発行事業者400は、ユーザが電子クーポンを分割する際の条件を介して、分割過程を一定程度制御することができる。最小分割数についても同様に、クーポン発行事業者400が電子クーポンを制御するために用いることができる。
【0040】
本実施形態1に係る電子クーポン提供システム10において、条件データ151は最小分割価値と最大分割価値を指定し、クーポン生成部110はその範囲内で新たな電子クーポンを分割によって生成する。これによりクーポン発行事業者400は、最大分割数と最小分割数とは別の観点から、分割過程を一定程度制御することができる。
【0041】
本実施形態1に係る電子クーポン提供システム10において、条件データ151は親クーポンまたは子クーポン以降の世代のクーポンの有効期限を指定し、送信部140は有効期限を超過したクーポンに対する送信リクエストを受け取ると、そのクーポンを利用できない旨を応答する。これによりクーポン発行事業者400は、電子クーポンを一定期間内に利用するように促すことができる。また条件データ151を介して有効期限を指定することにより、親クーポンおよび親クーポンから派生する子クーポン以降について、一括して有効期限を管理指定することができるので、クーポン発行事業者400にとって便宜である。
【0042】
<実施の形態2>
実施形態1において、クーポン生成部110が生成する電子クーポンは、例えば携帯端末210上にその内容をダウンロードし、ユーザ310がその内容を店員や店舗端末に対して提示することにより、利用することができる。例えばクーポンデータ152内に、各電子クーポンを利用する際に携帯端末210がアクセスすべきアドレス(URLなど)を記録しておき、送信部140はそのアドレスに対応する電子クーポンの内容をクーポンデータ152から読み出して応答することができる。電子クーポンの内容とその電子クーポンを利用する際にアクセスすべきアドレスとの間の対応関係を記述するその他適当な方式を用いてもよい。
【0043】
電子クーポンの内容としては、例えばクーポンデータ152の内容にしたがって、その電子クーポンの価値を表すデータ(例:QRコードなど)を送信部140が生成し、そのデータを応答として送信すればよい。すなわちクーポンデータ152は、ユーザが利用する電子クーポンを生成することができる情報を記述すれば足り、事業者に対して提示する電子クーポンそのもの(例えばQRコードの画像イメージ)を記述する必要はない。
【0044】
電子クーポンは特定のユーザ宛に発行することもできるし、不特定者宛に発行することもできる。特定ユーザ宛に発行する場合は、サーバ100内で各ユーザの認証情報(例えばユーザIDとパスワード)を保持しておき、送信部140が電子クーポンに対する送信リクエストを受け取ったとき、その送信リクエストに対して認証プロセスを実施すればよい。送信部140は、認証を通過した場合のみ、その電子クーポンの内容を応答する。これにより、受取者フィールドが指定するユーザのみがその電子クーポンを受け取る(利用する)ことができる。
【0045】
<本発明の変形例について>
以上の実施形態において、クーポン生成部110、条件指定部120、分割指示部130、送信部140は、これらの機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、これらの機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することによって構成することもできる。
【0046】
以上の実施形態において、サーバ100が各機能部を備える構成例を説明したが、これら機能部は複数のコンピュータに分散して実装することもできる。その場合は各コンピュータが相互に例えば条件IDやクーポンIDなどを送受信することにより、必要なデータを互いに取得することができる。
【0047】
以上の実施形態において、電子クーポンの価値を一部のみ利用したい場合、その電子クーポンを分割して受取者を自身に指定すればよい。一部利用する価値相当分の電子クーポンはそのまま利用し、残存価値相当の電子クーポンは引き続き保持する。これにより実質的に電子クーポンの一部利用を実現することができる。本発明はこのような観点からも有用である。
【0048】
以上の実施形態において、電子クーポンの内容として、何らかの経済的価値に置き換えることができるもの(例えば金額換算、サービス提供、など)を説明したが、電子クーポンの内容はこれに限らず、ユーザが何らかの利益を受け取ることができるものであれば、以上の実施形態で説明したのと同様に、分割して他のユーザへ配布することができる。例えば必ずしも経済的利益と等価ではない便益や役務(経済的利益と等価ではないがユーザにとって何らかの価値があるもの)を提供する電子クーポンも、本発明の対象とすることができる。
【符号の説明】
【0049】
10:電子クーポン提供システム
100:サーバ
110:クーポン生成部
120:条件指定部
130:分割指示部
140:送信部
15:記憶部
210:携帯端末
220:携帯端末
310:ユーザ
320:ユーザ
400:クーポン発行事業者
図1
図2
図3
図4
図5