(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】補助電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231019BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K9/00 F
(21)【出願番号】P 2020028778
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012144(WO,A1)
【文献】特開平04-322108(JP,A)
【文献】特開2006-230064(JP,A)
【文献】特開2002-136153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床下に設置される補助電源装置であって、
架線から入力される架線電圧を一定の電圧に維持するフィルタコンデンサと、
スイッチング素子を動作させて入力電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記スイッチング素子及び地上に設置された鉄道信号設備を結ぶ直線と交わる位置に配置されるシールド板と、
を備え
、
前記シールド板は、前記フィルタコンデンサの外壁に設置される、補助電源装置。
【請求項2】
鉄道車両の床下に設置される補助電源装置であって、
架線から入力される架線電圧を一定の電圧に維持するフィルタコンデンサと、
スイッチング素子を動作させて入力電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記スイッチング素子及び地上に設置された鉄道信号設備を結ぶ直線と交わる位置に配置されるシールド板と、
を備え、
前記シールド板は、当該補助電源装置の筐体に設置される
、補助電源装置。
【請求項3】
鉄道車両の床下に設置される補助電源装置であって、
架線から入力される架線電圧を一定の電圧に維持するフィルタコンデンサと、
スイッチング素子を動作させて入力電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記スイッチング素子及び地上に設置された鉄道信号設備を結ぶ直線と交わる位置に配置されるシールド板と、
を備え、
前記スイッチング素子は、前記鉄道信号設備までの距離が、前記フィルタコンデンサから前記鉄道信号設備までの距離よりも長くなるように配置される
、補助電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の補助電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
列車の運転は、信号機の現示に従って運転することで他の列車との衝突を回避し、安全を確保している。しかし、運転士が信号機の現示を見落としたり、ブレーキ操作が遅れたりした場合には、列車衝突などの重大な事故となる。このような事故を防止するため、自動的に列車のブレーキを動作させ、停止信号までに列車を停止させる自動列車停止装置(ATS:Automatic Train Stop)が一般的に設けられている。ATSは、地上に設置される地上子と、車両に搭載される車上子によって構成される。地上子は信号機の現示や速度制限などの情報を列車に送信し、車上子は地上子から情報を受信し、条件によって自動的にブレーキを動作させる。地上子は一般的に、コイルやリレーを有することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、鉄道車両には、架線からの電力をインバータにより補助回路用の電力に変換して供給する補助電源装置が設置される(例えば、非特許文献2参照)。インバータはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子をオンオフ動作させるため、ノイズの発生源となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“自動列車停止装置”、[online]、[2019年11月22日検索]、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%8B%95%E5%88%97%E8%BB%8A%E5%81%9C%E6%AD%A2%E8%A3%85%E7%BD%AE>
【文献】井上 昌義、“鉄道車両用 補助電源装置について”、2014年10月、[online]、[2019年11月22日検索]、インターネット<URL:https://www.tetsushako.or.jp/page_file/20141022131624_lkPJ20N3Fe.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道車両の床下に補助電源装置を設置した場合、補助電源装置と地上子との間の距離は短くなる。そのため、コイルを有する地上子は、放射ノイズを発生する補助電源装置が近くに位置すると、電磁誘導によりノイズが誘導され、誤動作するおそれがあった。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、放射ノイズが地上子などの鉄道信号設備に与える影響を抑制することが可能な補助電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る補助電源装置は、鉄道車両の床下に設置される補助電源装置であって、架線から入力される架線電圧を一定の電圧に維持するフィルタコンデンサと、スイッチング素子を動作させて入力電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記スイッチング素子及び地上に設置された鉄道信号設備を結ぶ直線と交わる位置に配置されるシールド板と、を備え、前記シールド板は、前記フィルタコンデンサの外壁に設置されることを特徴とする。
【0009】
一実施形態に係る補助電源装置は、鉄道車両の床下に設置される補助電源装置であって、架線から入力される架線電圧を一定の電圧に維持するフィルタコンデンサと、スイッチング素子を動作させて入力電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記スイッチング素子及び地上に設置された鉄道信号設備を結ぶ直線と交わる位置に配置されるシールド板と、を備え、前記シールド板は、当該補助電源装置の外壁に設置されることを特徴とする。
【0010】
一実施形態に係る補助電源装置は、鉄道車両の床下に設置される補助電源装置であって、架線から入力される架線電圧を一定の電圧に維持するフィルタコンデンサと、スイッチング素子を動作させて入力電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記スイッチング素子及び地上に設置された鉄道信号設備を結ぶ直線と交わる位置に配置されるシールド板と、を備え、前記スイッチング素子は、前記鉄道信号設備までの距離が、前記フィルタコンデンサから前記鉄道信号設備までの距離よりも長くなるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射ノイズが鉄道信号設備に与える影響を抑制することが可能な補助電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る補助電源装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る補助電源装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1に、一実施形態に係る補助電源装置の構成例を示す。
図1に示す補助電源装置1は、フィルタコンデンサ10と、インバータ回路20と、を備える。
【0015】
フィルタコンデンサ10は、架線から入力される架線電圧(例えば、DC1500V)を一定の電圧に維持する。
【0016】
インバータ回路20は、複数のスイッチング素子21(例えば、IGBT)を備える。各スイッチング素子21には還流ダイオード22が並列接続される。
図1に示すインバータ回路20は3レベルインバータ方式であるため、補助電源装置1は、2個のフィルタコンデンサ10と、12個のスイッチング素子21とを備える。3レベルインバータ方式では、2個のフィルタコンデンサ10の両端の電圧を制御に使用する。なお、インバータ回路20を2レベルインバータ方式とし、1個のフィルタコンデンサ10と、6個のスイッチング素子21と、を備える構成としてもよい。インバータ回路20は、スイッチング素子21をオンオフさせて、三相交流電力を生成し、ACフィルタ30に出力する。
【0017】
スイッチング素子21のオンオフはPWM(Pulse Width Modulation)制御に基づいて行われ、スイッチング素子21のゲートには図示しない制御回路からゲート信号が入力される。
【0018】
ACフィルタ30は、インバータ回路20から入力された電圧の波形を正弦波に整形し、変圧器40に出力する。
【0019】
変圧器40は、ACフィルタ30から入力された電圧を所定の電圧(例えば、AC440V)に変換し、絶縁して出力する。これにより、補助電源装置1は、交流電力を負荷回路へ供給する。
【0020】
図2に、
図1に示した補助電源装置1を鉄道車両の床下に設置した場合の、平面図の一例を示す。フィルタコンデンサ10-1の奥にフィルタコンデンサ10-2が配置される。なお、フィルタコンデンサ10’は予備のフィルタコンデンサ(パンタグラフの離線保障用のフィルタコンデンサ)であり、必須な構成ではない。
【0021】
ゲート出力基板25は、スイッチング素子21のオンオフ制御用のゲート信号を生成する制御回路を搭載する基板である。
【0022】
床下吊下げ式の補助電源装置1では、補助電源装置1の底面と地面との間の距離は数十センチメートル程度と短くなる。補助電源装置1と、地上子などの、地上に設置された鉄道信号設備2との間の距離が短くなると、補助電源装置1の放射ノイズが鉄道信号設備2に悪影響を及ぼし、鉄道信号設備2が誤動作するおそれがある。また、スイッチング素子21の数が多くなると放射ノイズも増大する。そこで、補助電源装置1はシールド板50を備える。
【0023】
シールド板50は、例えばアルミニウム製である。シールド板50は、スイッチング素子21及び鉄道信号設備2を結ぶ直線と交わる位置に配置される。ここで、スイッチング素子21及び鉄道信号設備2を結ぶ直線とは、複数のスイッチング素子21のうちの1つ及び鉄道信号設備2内の任意の位置(例えば、コイルの配置位置)とを結ぶ直線のことをいう。
【0024】
シールド板50は、取り付け易く、且つ振動にも強い箇所に設置されることが望ましい。
図2では、取り付け易く、且つ振動にも強い箇所に設置されたシールド板50-1及び50-2を太い線で示している。シールド板50の設置数は任意である。
図2に示す例では、補助電源装置1は2つのシールド板50-1及び50-2を備えるが、いずれか一方のみを備えていてもよい。
【0025】
シールド板50-1は、フィルタコンデンサ10-1,10-2とゲート出力基板25との間であって、フィルタコンデンサ10-1,10-2の外壁に設置される。
【0026】
シールド板50-2は、補助電源装置1の筐体5に設置される。シールド板50-2は、筐体5の外面にも内面にも設置可能であるが、筐体5にカバーが設けられる場合には、シールド板50-2はカバーの開閉に支障が出ない位置に設置されることが望ましい。そのため、シールド板50-2は、筐体カバーの位置に応じて、筐体カバーの開閉に支障が出ないように適宜分割され、筐体5の外面及び内面に設置され得る。
図2に示す例では、シールド板50-2は、筐体カバー6の開閉に支障が出ないように2分割され、筐体5の外面及び内面に設置されている。なお、筐体カバー6の位置はこれに限定されるものではない。
【0027】
補助電源装置1は、スイッチング素子21を冷却するための冷却器60を備える。また、補助電源装置1は、インバータ回路20の出力電流を検出する電流検出器26を備えていてもよい。
【0028】
ノイズの発生源となるスイッチング素子21から鉄道信号設備2までの距離は長いほうが望ましい。そのため、フィルタコンデンサ10は鉄道車両の中央側に配置され、スイッチング素子21は鉄道車両の外側に配置される。言い換えれば、スイッチング素子21は、スイッチング素子21から鉄道信号設備2までの距離が、フィルタコンデンサ10から鉄道信号設備2までの距離よりも長くなるように配置される。
【0029】
以上説明したように、補助電源装置1は、スイッチング素子21及び鉄道信号設備2を結ぶ直線と交わる位置に配置されるシールド板50を備える。そのため、補助電源装置1の放射ノイズが鉄道信号設備2に与える影響を低減させることができる。したがって、鉄道信号設備2が放射ノイズの影響により誤動作することを防止できる。また、シールド板50を、フィルタコンデンサ10の外壁、又は補助電源装置1の筐体5に設置することにより、シールド板50が振動により外れることを防止できる。
【0030】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。また、
図2に記載の寸法は適宜変更し得る。
【符号の説明】
【0031】
1 補助電源装置
2 鉄道信号設備
5 筐体
6 筐体カバー
10,10’ フィルタコンデンサ
20 インバータ回路
21 スイッチング素子
22 還流ダイオード
25 ゲート出力基板
26 電流検出器
30 ACフィルタ
40 変圧器
50 シールド板
60 冷却器