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特許7369689冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストン
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/22 20060101AFI20231019BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20231019BHJP
   F03C 2/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F04B1/22
F16J15/18 B
F03C2/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020512867
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 FR2018051958
(87)【国際公開番号】W WO2019048750
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】1758196
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501211925
【氏名又は名称】ラビー,ヴィアニー
【氏名又は名称原語表記】RABHI Vianney
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラビー,ヴィアニー
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-083006(JP,U)
【文献】実開昭60-030378(JP,U)
【文献】特表2016-530438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/22
F16J 15/18
F03C 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ピストン(1)であって、前記油圧ピストン(1)は、円筒外面(13)とシリンダー(4)との間に間隙空間(32)が残留するように、前記シリンダー(4)内にわずかなクリアランスを伴って収容される前記円筒外面(13)を提供する円筒体(6)を備え、前記油圧ピストン(1)は、前記シリンダー(4)内を並進移動することができ、それにより可変容積の油圧室(5)が形成され、前記油圧ピストン(1)の第1の端部は流体(11)の圧力を受けるために前記油圧室(5)内に面する圧縮面(10)を有し、一方、前記油圧ピストン(1)の他端は伝達手段(9)に力を加えるためにピストン支持面(8)を有する、前記油圧ピストン(1)において、
・前記円筒外面(13)上に配置される封止手段(16)であって、前記シリンダー(4)と共に封止を形成することができる、封止手段(16)と、
・前記円筒体(6)内に完全にまたは部分的に配置される少なくとも1つの冷却および潤滑パイプ(7)であって、該冷却および潤滑パイプ(7)は、前記油圧室(5)と直接または間接的に連通するパイプ入口(14)から始まり、前記円筒外面(13)のレベルで直接または間接的に開口するパイプ出口(15)で終わり、前記油圧室(5)に存在する圧力が前記間隙空間(32)に存在する圧力よりも大きい場合、前記流体(11)は、前記パイプ入口(14)から前記パイプ出口(15)へ前記冷却および潤滑パイプ(7)内を流れることができ、一方で前記封止手段(16)が、前記流体(11)が前記パイプ入口(14)から前記パイプ出口(15)に流れることとなるように、前記流体(11)が前記円筒体(6)の外部を通り抜けるのを防ぐ、少なくとも1つの冷却および潤滑パイプ(7)と、
・前記冷却および潤滑パイプ(7)内に完全にまたは部分的に収容され、前記冷却および潤滑パイプ(7)内での前記流体(11)の通過を可能にすることまたは防止することそれぞれを行うために開閉できる、少なくとも1つの冷却および潤滑バルブ(2)であって、該冷却および潤滑バルブ(2)は、前記流体(11)が通過することを可能にするため、前記冷却および潤滑パイプ(7)の内部もしくは端部に配置されるバルブ接触面(26)から、ある距離に留まることができる、または前記流体(11)の通過を防止する封止接触線(25)を前記バルブ接触面(26)と共に形成するために、前記バルブ接触面(26)との接触状態を維持されることができる、フロー封止シート(24)を備える、少なくとも1つの冷却および潤滑バルブ(2)と、
・前記冷却および潤滑バルブ(2)を開閉するために操作できるように前記冷却および潤滑バルブ(2)にしっかり連結される少なくとも1つのバルブ-アクチュエータピストン(22)であって、該バルブ-アクチュエータピストン(22)は、前記円筒体(6)内または前記円筒体(6)上に配置されるアクチュエータシリンダー(31)内にわずかなクリアランスで収容され、前記バルブ-アクチュエータピストン(22)は、前記アクチュエータシリンダー(31)内で長手方向の並進移動が可能であり、前記油圧室(5)内に存在する圧力に曝される高圧面(23)を有し、一方で前記バルブ-アクチュエータピストン(22)は、前記高圧面(23)の反対側にある、前記間隙空間(32)および前記ピストン支持面(8)の一方または両方と直接または間接的に連通する低圧面(28)を有する、少なくとも1つのバルブ-アクチュエータピストン(22)と、
・前記冷却および潤滑パイプ(7)内を流れることができる流体(11)の最大流量を制限する少なくとも1つの流量校正開口通路(27)であって、該流量校正開口通路(27)は、前記冷却および潤滑バルブ(2)とは前記流体(11)の経路内において直列の関係で配置されかつ、前記バルブ-アクチュエータピストン(22)の周囲の前記クリアランスを流れる流体に対して、前記流体(11)の経路内において、列の関係で配置されて前記流体(11)が前記流量校正開口通路(27)を通過または前記バルブ-アクチュエータピストン(22)の周囲の前記クリアランスを通過することを可能にする、少なくとも1つの流量校正開口通路(27)と、
・前記フロー封止シート(24)を前記バルブ接触面(26)から遠ざけるのに役立つ少なくとも1つのバルブ戻しばね(30)と、
・前記バルブ接触面(26)に対して前記フロー封止シート(24)の最大隔離距離を設定する少なくとも1つのバルブ停止スペーサー(3)と、
を備えることを特徴とする、油圧ピストン(1)。
【請求項2】
前記バルブ戻しばね(30)は、前記バルブ-アクチュエータピストン(22)と前記封止接触線(25)との間に形成される中間流体室(29)の内部に完全にまたは部分的に収容されることを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項3】
前記封止手段(16)は、前記円筒体(6)に配置されて前記円筒外面(13)上で開口する少なくとも1つの封止溝(18)内に設けられる少なくとも1つのカットセグメント(17)からなることを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項4】
前記封止手段(16)は、前記円筒体(6)に配置され、前記円筒外面(13)上で開口する少なくとも1つの封止溝(18)に収容される少なくとも1つの可撓性円形ガスケット(19)からなることを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項5】
剪断防止間隙溝(20)は、前記円筒体(6)に配置され、前記剪断防止間隙溝(20)は、前記円筒外面(13)上で開口することを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項6】
ベアリングテーパ(21)を形成するために、前記圧縮面(10)側に位置する前記円筒体(6)の軸方向の端部の直径は、ある長さにわたって徐々に減少することを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項7】
前記油圧室(5)の反対側に位置する前記シリンダー(4)の軸方向の端部の直径は、ベアリング拡大部(12)を形成するために、ある長さにわたって徐々に増加することを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項8】
前記流量校正開口通路(27)は前記バルブ-アクチュエータピストン(22)の内部であって、前記バルブ-アクチュエータピストン(22)の前記高圧面(23)および前記低圧面(28)の方を前記流量校正開口通路(27)が前記バルブ-アクチュエータピストン(22)の円筒外面と連結するような前記バルブ-アクチュエータピストン(22)の内部に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項9】
前記流量校正開口通路(27)は、前記バルブ-アクチュエータピストン(22)と、前記バルブ-アクチュエータピストン(22)が協働する前記アクチュエータシリンダー(31)との間に残留するクリアランスからなることを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項10】
前記円筒体(6)は、前記圧縮面(10)上および前記ピストン支持面(8)上の両方において開口する、前記伝達手段を潤滑するためのパイプ(33)によってその長さ方向に完全に貫通されていることを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項11】
前記冷却および潤滑バルブ(2)および前記バルブ-アクチュエータピストン(22)は、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ(34)を形成するために同じ材料のブロックで作られることを特徴とする、請求項1に記載の油圧ピストン。
【請求項12】
バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ(34)は、前記伝達手段を潤滑するためのパイプ(33)によって軸方向に完全に貫通され、前記バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ(34)は当該パイプ(33)に封止を形成しながら前記伝達手段を潤滑するためのパイプ(33)の周囲でスライドすることができることを特徴とする、請求項10および11のいずれか一項に記載の油圧ピストン。
【請求項13】
バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ(34)は、前記伝達手段を潤滑するためのパイプ(33)によって軸方向に完全に貫通され、前記バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ(34)は当該パイプ(33)の一部を形成することを特徴とする、請求項10および11のいずれか一項に記載の油圧ピストン。
【請求項14】
前記バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ(34)は、前記伝達手段を潤滑するためのパイプ(33)内に配置されるエンドピース受容シリンダー(42)と封止を形成する摺動封止エンドピース(41)を端部とし、前記摺動封止エンドピース(41)は、前記バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ(34)が当該パイプ(33)に対して長手方向に並進移動することを可能にすることを特徴とする、請求項13に記載の油圧ピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンに関し、当該ピストンは、例えば、アキシャルまたはラジアルピストンを備えるポンプまたは油圧モーターの可変容積の油圧室を形成するためにシリンダーと協働する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルまたはラジアルピストンを備える油圧ポンプおよびモーターのピストンの封止は、通常、協働する前述のピストンとシリンダーとの間に小さな直径方向のクリアランスを残すことによって得られる。例えば、前述のクリアランスは、20ミリメートルの直径を有するピストンについては20~40マイクロメートルの値を有することができる。このような小さな直径方向のクリアランスは、ピストンと、前述のピストンが中を並進移動するシリンダーとの間に十分なオーバーラップが得られる場合、通常、最大約300~500バールの作動圧力の許容可能な気密レベルを得ることを可能にする。
【0003】
ピストンとそのシリンダーとの間に小さな直径方向のクリアランスを設けると、単純で堅牢な封止の解決方法となる。さらに、前述の解決方法の製造原価は、必要とされる高い加工精度にもかかわらず、高くはない。
【0004】
アキシャルピストンを備える油圧ポンプおよびモーターのピストンは、通常、前述のポンプまたは前述のモーターが固定または可変容量形モーターであるかどうかに応じて、傾斜板または傾斜可能な板上をスライドする連結シューで終わることに留意されたい。前述の板が傾斜し、任意の作動液、例えば油によって、ピストンのいずれか1つに圧力が加えられる場合、前述のピストンの連結シューが前述の板に及ぼす力は、反作用により、前述のピストンとそれが協働するシリンダーとの間の半径方向の力を生成する。
【0005】
前述の半径方向の力は、前述のピストンとそのシリンダーとの間に接触圧力を発生させる。前述の圧力は、第1の部分については、連結シューに対向する前述のピストンの端部位置で、第2の部分については、傾斜板の方向に開口する前述のシリンダーの端部位置で加えられる。
【0006】
これまで説明してきた油圧ポンプおよびモーターのピストンは、様々なタイプのエネルギー損失の原因であり、これにより前述のポンプおよび前述のモーターの総エネルギー効率が低下する。
【0007】
前述のエネルギー損失の中で、まず作動液の漏れが顕著である。圧力の効果により、実際には、作動液は、ピストンとシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスによって形成される空間を介して油圧室から排出され、作動液は傾斜板の方向に開口するシリンダーの端部位置で流出する。さらに、シリンダー内で前後に移動することにより、ピストンはピストンと前述のシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスの大きさでポンプ効果を生み出し、ポンプ効果により油漏れ率を増加させることに留意されたい。
【0008】
ピストンとシリンダーとの間に挿入される作動液の剪断も、上記エネルギー損失に含まれる。前述の剪断は、ポンプまたは油圧モーターの回転に抵抗する抵抗力を生み出す。一方、この剪断力は、作動液の粘性が高いほど大きく、他方、ピストンとシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスが小さいほど大きくなる。
【0009】
最後に、前述のエネルギー損失は、ピストンシューが傾斜板に及ぼす力からも生じる。前述の力は、ピストンがそのシリンダーに及ぼす半径方向の力をもたらす。前述のシリンダー内の前述のピストンの動きと連動して、前述の半径方向の力は、前述の力と、前述のピストンとそのシリンダーとの間の摩擦係数との積に、前述のシリンダー内の前述のピストンが移動した距離を乗じたエネルギー損失を発生させる。
【0010】
上記を読んで容易に理解されるように、油圧ポンプおよびモーターのピストンによって生成される総エネルギー損失を低減するために、油漏れを可能な限り制限すること、作動液の剪断による損失を可能な限り低減すること、およびピストンとそのシリンダーとの間の接触レベルで生じる摩擦による損失を最小限にすること、の少なくとも3つの目的を達成するように努力しなければならない。
【0011】
それにもかかわらず、様々な矛盾が存在し、それはこれらの3つの目的を同時に追求することと矛盾する。
【0012】
確かに、最先端の技術では、剪断による損失が容認できないほど増加するため、ピストンとそのシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスをさらに低減することによって、作動液の漏れを低減することはできない。
【0013】
実際、これらの剪断による損失の増加により、ピストンとそのシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスに保持されるより少量の作動液で放出される熱量は増加する。この状況は、前述の流体の温度を劇的に上昇させ、その粘度を低下させる。前述の流体は、その多くの潤滑特性を失い、それは摩擦による損失を増加させ、これにより直径方向のクリアランスに保持される作動液が受け入れる熱量をさらに増加させる。
【0014】
そしてその結果、熱放出が急増し、作動液の温度が暴騰し、ある閾値を超えると、ピストンとそのシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランス内に保持される前述の液体のコークファクション(cokefaction)による破壊を伴う。さらに、ピストンの温度は、ピストンが並進移動するシリンダーよりも急速に、前述のピストンが膨張する温度まで上昇する可能性がある。この最後の影響は、前述のシリンダー内の前述のピストンの焼き付きの原因となる可能性がある。
【0015】
その結果、作動液の漏れを低減するために、特に、剪断による損失を低減するためには反対に前述のクリアランスを増加させる必要があるので、ピストンとそのシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスを低減することは難しい。実際、剪断による損失は、上記クリアランスにほぼ反比例して増加する。
【0016】
剪断による損失を低減することに加えて、前述のクリアランスを増加させることはまた、ピストンがそのシリンダーに及ぼす半径方向の力によって誘発される摩擦による損失を低減させることになる。確かに、ピストンとシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスの合理的な増加は、前述のピストンと前述のシリンダーとの間の流体力学的潤滑状態の形成および維持を促進することになる。これは、具体的には、作動液、例えば油の場合の膜はより厚くなるからであり、作動液はより低い温度に維持されることになるからである。
【0017】
しかし、ピストンとそのシリンダーとの間の直径方向のクリアランスを増加させることも解決策ではない。これは、これら2つの部品間を流れる油漏れに影響するからである。前述の漏れは著しく増加する。
【0018】
今説明した目的は、その実施に関して矛盾しているので、従来技術によるアキシャルまたはラジアルピストンを備える油圧ポンプおよびモーターのピストンとシリンダーとの間の直径方向のクリアランスは、一方では油圧漏れとの間、他方では油の剪断によるおよび機械的摩擦による損失との間の妥協の結果である。
【0019】
油圧室に最も近い前述のピストンの端部、あるいはその中央のいずれかにピストン上にガスケットを配置し、前述のガスケットがシリンダーから決して外れないように注意して、この妥協を避けることを想像することができる。したがって、封止はもはやクリアランスに依存しないため、ピストンとそのシリンダーとの間に大きな直径方向のクリアランスを持たせることが可能になる。
【0020】
あらゆるガスケットまたは封止セグメントに係わる問題は、ピストンとそのシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスによって形成される空間内に不十分な量の油しか導入されないため、ピストンがそのシリンダー内で十分に潤滑されないことである。
【0021】
さらに、漏れによって放出される熱、剪断による損失、および摩擦による残留損失を排除するために、前述の油を継続的に交換する必要がある。アキシャルピストンまたはラジアルピストンを備える油圧ポンプおよびモーターのピストンに気密封止を取り付けることは、必然的にシリンダーの乾燥につながり、これは、潜在的に前述のシリンダー内のピストンの焼き付きを引き起こし、局所的に過度の温度を受ける作動液の早期劣化を引き起こす。
【0022】
さらに、特定のポンプまたは特定の油圧モーターは、油圧室の反対側に配置され、ピストンとそのシリンダーとの間の漏れ速度の結果として完全にまたは部分的に潤滑および/または冷却される機械部品を備えることに留意されたい。したがって、ピストンとそのシリンダーとの間の作動液の漏れを防ぐことは、意図的なオイルの供給によって、例えばインジェクターを用いて前述の部品を潤滑する必要があることになる。
【発明の概要】
【0023】
これらの様々な問題を解決するために、本発明による冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンは、その実施形態に応じて、
・ピストンとそのシリンダーとの間にガスケットまたはシーリングセグメントを取り付けることであって、前述のガスケットは、特に、油圧ポンプまたはそれを受け入れる油圧モーターの油圧室に高圧が存在する場合、前述のピストンと前述のシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスの大きさで発生する作動液の漏れを防ぎ、前述の取り付けることは、従来技術と比較して前述のシリンダー内の前述のピストンの適切な潤滑に対してもはや悪影響を及ぼさない、取り付けること、
・油圧ポンプまたはそれを受け入れる油圧モーターの油圧室に低圧が存在する場合のみ、ピストンとそのシリンダー間の直径方向のクリアランスの大きさで潤滑および冷却油の高い漏れ率の流れを可能にすることであって、前述の低圧は、例えば一般的に「ブースト圧力」と呼ばれる圧力である、高い漏れ率の流れを可能にすること、
・ピストンとシリンダーとの間に残留する直径方向のクリアランスを流れる油圧流体の漏れに関連するエネルギー損失をわずかに増加させることだけにより、剪断によるおよび摩擦による損失を最小にするために、前述のピストンとその前述のシリンダーどの間に残留する直径方向のクリアランスを最適化すること、
・任意の油圧ポンプまたはそれを受け入れる油圧モーターの収率を大幅に向上させること、
・ポンプまたはそれを受け入れる油圧モーターの製造原価をごくわずかしか上げないこと、
を可能にする。
【0024】
機器または装置が油圧式であるか空気圧式であるかにかかわらず、アキシャルまたはラジアルピストンを備える油圧ポンプおよびモーターでの使用に加えて、本発明による冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンは、他のいずれのポンプ、モーター、モーターポンプ、ジャッキまたは任意の形態もしくは種類の装置で使用できるが、ただし前述の構成要素または装置の構成により本発明による前述のピストンを有利に作動させることが可能になることを条件とする、と理解される。
【0025】
本発明の他の特徴は、明細書および独立請求項に直接または間接的に依存する従属請求項に記載されている。
【0026】
油圧ピストンは、円筒外面とシリンダーとの間に間隙空間が残留するように、前述のシリンダー内にわずかなクリアランスで収容される前述の面を露出する円筒体からなり、前述のピストンは可変容積の油圧室を形成する前述のシリンダー内を並進移動することができ、前述のピストンの第1の端部は流体の圧力を受けるために油圧室内に通じる圧縮面を有し、一方、前述のピストンの他端は伝達手段に力を加えるためにピストン支持面を有する。
【0027】
本発明による油圧ピストンは、
・円筒外面上に配置される封止手段であって、前述の手段はシリンダーと共に封止を形成することができる、封止手段と、
・円筒体内に完全にまたは部分的に配置される少なくとも1つの冷却および潤滑パイプであって、前述のパイプは、一方では油圧室と直接または間接的に連通するパイプ入口で始まり、他方では、円筒外面のレベルで直接または間接的に開口するパイプ出口で終わり、油圧室に存在する圧力が間隙空間に存在する圧力よりも大きい場合、流体は、前述の入口から前述の出口まで前述のパイプ内で循環することができ、一方、封止手段は、前述の入口から前述の出口に流れるために、前述の流体が円筒体の外部を通り抜けるのを防ぐ、少なくとも1つの冷却および潤滑パイプと、
・冷却および潤滑パイプ内に完全にまたは部分的に収容され、それぞれ前述のパイプ内の流体の循環を可能にするまたは防止するために開閉できる、少なくとも1つの冷却および潤滑バルブであって、前述のバルブは、流体が通過することを可能にするため、冷却および潤滑パイプの内部もしくは端部に配置されるバルブ接触面から、ある距離に留まることができる、または前述の流体の通過を防止する封止接触線をバルブ接触面と共に形成するために、前述の面との接触状態を維持されることができる、フロー封止シートを備える、少なくとも1つの冷却および潤滑バルブと、
・冷却および潤滑バルブを開閉するために操作できるように、冷却および潤滑バルブにしっかり連結される少なくとも1つのバルブ-アクチュエータピストンであって、前述のピストンは、円筒体内または上に配置されるアクチュエータシリンダー内にわずかなクリアランスで収容され、前述のピストンは、前述のシリンダー内で長手方向の並進移動が可能であり、油圧室内に存在する圧力に曝される高圧面を有し、一方、前述の高圧面の反対側で、前述のピストンは、間隙空間と、もしくはピストン支持面と、またはこの2つと直接または間接的に連通する低圧面を有する、少なくとも1つのバルブ-アクチュエータピストンと、
・冷却および潤滑パイプ内を循環できる流体の最大流量を制限する少なくとも1つの流量校正開口部であって、前述の開口部は、流体の経路に、冷却および潤滑バルブと直列に、およびバルブ-アクチュエータと並列に配置される、少なくとも1つの流量校正開口部と、
・フロー封止をバルブ接触面から遠ざけるのに役立つ少なくとも1つのバルブ戻しばねと、バルブ接触面に対してフロー封止シートの最大隔離距離を設定する少なくとも1つのバルブ停止スペーサーと、
を備える、油圧ピストン。
【0028】
本発明による油圧ピストンは、バルブ-アクチュエータピストンと封止接触線との間に形成される流体用の中間室の内部に完全にまたは部分的に収容されるバルブ戻しばねを備える。
【0029】
本発明による油圧ピストンは、円筒体に配置され、円筒外面上に開口する少なくとも1つの封止溝に収容される少なくとも1つのカットセグメントからなる封止手段を備える。
【0030】
本発明による油圧ピストンは、円筒体に配置され、円筒外面上で開口する少なくとも1つの封止溝に収容される少なくとも1つの可撓性円形ガスケットからなる封止手段を備える。
【0031】
本発明による油圧ピストンは、円筒体に配置される剪断防止間隙溝を備え、前述の溝は、円筒外面上で開口している。
【0032】
本発明による油圧ピストンは、ベアリングテーパを形成するために、圧縮面側に位置する円筒体の軸方向端部の、ある長さにわたって徐々に減少する直径を備える。
【0033】
本発明による油圧ピストンは、ベアリング拡大部を形成するために、油圧室の反対側に位置するシリンダーの軸方向端部の、ある長さにわたって徐々に減少する直径を備える。
【0034】
本発明による油圧ピストンは、バルブ-アクチュエータピストンの内部に配置され、流量校正開口部は高圧面および低圧面、または前述の2つの面のいずれかを前述のピストンの円筒外面と連結させる流量校正開口部を備える。
【0035】
本発明による油圧ピストンは、バルブ-アクチュエータピストンと、前述のピストンが協働するアクチュエータシリンダーとの間に残留するクリアランスからなる流量校正開口部を備える。
【0036】
本発明による油圧ピストンは、伝達手段を潤滑するためのパイプによってその長さ方向に完全に貫通される円筒体を備え、ハイプは一方では圧縮面上で、他方ではピストン支持面上で開口する。
【0037】
本発明による油圧ピストンは、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリを形成するために同じ材料のブロックで作られる冷却および潤滑バルブならびにバルブ-アクチュエータピストンを備える
【0038】
本発明による油圧ピストンは、伝達手段を潤滑するためのパイプによって軸方向に完全に貫通されるバルブ-アクチュエータピストンアセンブリを備え、前述のアセンブリは伝達手段の周囲で伝達手段と封止を形成しながらスライドすることができる。
【0039】
本発明による油圧ピストンは、伝達手段を潤滑するためのパイプによって軸方向に完全に貫通されるバルブ-アクチュエータピストンアセンブリを備え、前述のアセンブリは前述のパイプの一部を形成する。
【0040】
本発明による油圧ピストンは、伝達手段を潤滑するためにパイプ内に配置されるエンドピース受容シリンダーと封止を形成する摺動封止エンドピースで終わるバルブ-アクチュエータピストンアセンブリを備え、前述の封止エンドピースは、前述のアセンブリが前述のパイプに対して長手方向に並進移動することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
非限定的な例である添付の図面を参照する以下の説明により、本発明、本発明が提示する特徴、および本発明が得ることができる利点をよりよく理解することが可能になる。
図1図1は、本発明による冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンを備える可変容量形アキシャルピストンを備える油圧ポンプの概略断面図である。
図2図2は、本発明による冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンの概略断面図であり、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリは、伝達手段を潤滑するためにパイプによって軸方向に完全に貫通され、前述のアセンブリは伝達手段の周囲で伝達手段と封止を形成しながらスライドすることができる。
図3図3および図4は、本発明による冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンの概略断面詳細図であり、油圧室に存在する圧力が低い場合、そして高い場合のそれぞれ前述の発明の作動を例示する。バルブ-アクチュエータピストンアセンブリは、一方では伝達手段を潤滑するための一部を形成するパイプによって軸方向に貫通され、他方では前述の潤滑パイプ内に配置されるエンドピース受容シリンダーと封止を形成する摺動封止エンドピースで終わる。
図4】同上。
図5図5は、本発明および図2に示すその変形例による冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンの概略断面詳細図である。
図6図6は、本発明による冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンの概略断面図であり、そのバルブ-アクチュエータピストンの低圧面は、流体の流れ方向に対して封止接触線の下流に位置する。
図7図7は、本発明による冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンの概略断面図であり、伝達手段を潤滑するパイプはない。
図8図8は、本発明による、ならびに図3および図4に示すその変形例による、冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンの3次元分解立体図であり、前述のピストンは組み立てられている。
図9図9は、本発明による、ならびに図3および図4に示すその変形例による、冷却および潤滑バルブを備える油圧ピストンの3次元分解立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1および9は、冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1、様々なその構成部品の詳細、そのバリエーション、ならびにその付属品示す。
【0043】
具体的に図1および図2に見られるように、油圧ピストン1は、円筒体6から成り、円筒体6は、円筒外面13とシリンダー4との間に間隙空間32を残すように、シリンダー4内にわずかなクリアランスで収容される円筒外面13を提供し、前述のピストン1は前述のシリンダー4内を並進移動することができ、それにより可変容積の油圧室5を形成する。
【0044】
具体的には、図1および図2に記載のように、油圧ピストン1の第1の端部は、流体11の圧力を受けるために油圧室5内につながる圧縮面10を有し、一方、前述のピストンのもう1つの端部3は、伝達手段9に力を加えるためのピストン支持面8を有すること、に留意されたい。
【0045】
図1図9は、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1が、円筒外面13に配置される封止手段16を備えることを例示し、前述の手段16はシリンダー4とほぼ完全な封止を形成することができ、好ましくは、油圧室5に近い円筒外面13の一部の上に配置される。
【0046】
封止手段16は、円筒外面13の直径の局所的増加によって得られる間隙空間32の局所的縮小から単純になることができること、に留意されたい。前述の増加は、非円筒状であり、例えば、シリンダー4内に連結され、増加を受容する隆起形状または球形状とみなされる。
【0047】
具体的に図2~8では、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1が少なくとも1つの冷却および潤滑パイプ7を備え、冷却および潤滑パイプ7は円筒体6内に完全にまたは部分的に配置され、前述のパイプ7は、一方で油圧室5と直接または間接的に連通するパイプ入口14で始まり、他方で円筒外面13のレベルで直接または間接的に開口するパイプ出口15で終わることが分かる。
【0048】
油圧室5に存在する圧力が間隙空間32に存在する圧力よりも大きい場合、流体11は前述の入口14から前述の出口15まで前述のパイプ7内を循環することができ、一方、封止手段16は、前述の手段16がシリンダー4と封止を形成する場合、前述の流体11が円筒体6の外部を通過して前述の入口14から前述の出口15に行くのを防ぐことに留意されたい。
【0049】
図1~9では、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1は、冷却および潤滑パイプ7内に完全にまたは部分的に収容され、それぞれ前述のパイプ7内の流体11の循環を可能にするまたは防止するために開閉できる少なくとも1つの冷却および潤滑バルブ2を備えることが示される。
【0050】
本発明によれば、冷却および潤滑バルブ2は、流体11が通過することを可能にするため、冷却および潤滑パイプ7の内部または端部に配置されるバルブ接触面26からある距離に留まることができる、または、前述の流体11の通過を防止する封止接触線25を前述のバルブ接触面26と共に形成するために、前述の面26との接触状態を維持されるための、フロー封止シート24を備え、前述の線25は図4に示される。
【0051】
具体的に図2~9に記載のように、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1は、冷却および潤滑バルブを開閉するために操作できるように、冷却および潤滑バルブ2にしっかりと連結される少なくとも1つのバルブ-アクチュエータピストン22を備えること、に留意されたい。前述のピストン22は、円筒体6内または上に配置されるアクチュエータシリンダー31内にわずかなクリアランスで収容され、前述のシリンダー31内で長手方向に並進移動することができる。
【0052】
図3~7および図9に記載のように、バルブ-アクチュエータピストン22は、油圧室5内に存在する圧力に曝される高圧面23を有し、一方、前述のピストン22は、前述の高圧面23の反対側に、間隙空間32もしくはピストン支持面8または2つの32、8と直接または間接的に連通する低圧面28を有すること、に留意されたい。
【0053】
バルブ-アクチュエータピストン22またはアクチュエータシリンダー31ーは、前述のピストン22とシリンダー31との間に形成される封止を改善するために、当業者に公知の任意のタイプのガスケットを備えることができること、に留意されたい。
【0054】
図2から9では、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1が、冷却および潤滑パイプ7内を循環できる最大流量11を制限する少なくとも1つの流量校正開口部27を備えることが明確に分かる。
【0055】
流量校正開口部27は、流体11の経路内に、冷却および潤滑バルブ2と直列に、かつバルブ-アクチュエータピストン22と並列に配置される。すなわち、冷却および潤滑パイプ7内の流体11の流れの方向に関して、前述の開口部27は、冷却および潤滑バルブ2の前または後に配置され、一方、前述の開口部27を通る流体11の通路は、前述の開口部27が前述の流体11を前述のピストン22を迂回させるかまたは通過させるかのどちらかである限り、バルブ-アクチュエータピストン22の位置によって少しも影響されない。
【0056】
具体的に図2から9では、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1は、バルブ接触面26からフロー封止シート24を遠ざける傾向がある少なくとも1つのバルブ戻しばね30を備えることが分かり、前述のばね30は、任意のタイプのつる巻きばね、ねじりばね、引張ばね、または弾性ワッシャ、一般的に、当業者に公知の任意のタイプとすることができる。
【0057】
同じく図2~9では具体的に、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1は、少なくとも1つのバルブ停止スペーサー3を有し、バルブ停止スペーサー3はバルブ接触面26に対してフロー封止シート24の最大隔離距離を設定することも分かる。
【0058】
バルブ停止スペーサー3は、具体的には、それが協働する冷却および潤滑バルブ2のまたはバルブ-アクチュエータピストン22の任意の構成部分と協働することができる。また、前述の停止スペーサー3は、例えば、アクチュエータシリンダー31内に配置される溝内に収容されるサークリップから成り、バルブ-アクチュエータピストン22は前述のサークリップと接触することができること、に留意されたい。
【0059】
図1~9に示す冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の変形例に応じて、バルブ戻しばね30は完全にまたは部分的に、バルブ-アクチュエータピストン22と封止接触線25との間に形成される中間流体室29の内部に収容できること、に留意されたい。
【0060】
図1図5および図7図9では、封止手段16は、円筒体6に配置され、および円筒外面13で開口する、少なくとも1つの封止溝18内に収容される少なくとも1つのカットセグメント17からなることができること、に留意されたい。
【0061】
図6に例示の変形例では、封止手段16は、円筒体6に配置され、および円筒外面13で開口する、少なくとも1つの封止溝18内に収容される少なくとも1つの可撓性円形ガスケット19からなることもできる。
【0062】
可撓性円形ガスケット19は、例えば、エラストマーで作られるOリングから作られることができるか、または、具体的に、減摩性および/もしくは耐摩耗性粒子の充填剤を含むもしくは含まないプラスチック材料で作られたリングと協働するエラストマーで作られるOリングからなる複合タイプのものであることができること、に留意されたい。
【0063】
図1図9は、剪断防止間隙溝20を円筒体6内に有利に設けることができることを示しており、前述の溝20は円筒外面13で開口する。
【0064】
この特定の構成によれば、剪断防止間隙溝20の前後で軸方向に位置する円筒外面13の一部は、正確に同じ直径を有していなくてもよい。例えば、封止手段16を備える部分は、封止手段16のない部分よりも実質的に大きな直径を有することができる。
【0065】
具体的には図3~9に見ることができる、冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の別の変形例では、圧縮面10の側に位置する円筒体6の軸方向端部の直径は、ベアリングテーパ21を形成するために、ある長さにわたって徐々に減少することができ、ベアリングテーパ21は、油圧ピストン1がシリンダー4内で油圧室5の方向に上昇する場合、流体11を、円筒体6の前述の軸端部とシリンダー4との間で前述の端部と前述のシリンダー4との間の接触状態で貫入させること、に留意されたい。
【0066】
本発明による油圧ピストン1のこの特定の構成は、前述の接触状態で流体力学的潤滑状態の確立を促進させ、シリンダー4内の油圧ピストン1の変位によって発生される摩擦による損失を低減させる。
【0067】
代替的にまたは補完的に、図2は、油圧室5の反対側に位置するシリンダー4の軸方向端部の直径は、ベアリング拡大部12を形成するために、ある長さにわたって徐々に増加することができ、ベアリング拡大部12は、油圧ピストン1がシリンダー4内で油圧室5の方向に上昇すると、流体11を、円筒体6とシリンダー4の前述の軸方向端部との間に前述の端部と前述のシリンダー4との間の接触状態で貫入させることを示す。
【0068】
本発明による油圧ピストン1のこの特定の構成はまた、前述の接触状態で流体力学的潤滑レジームの確立を促進させ、およびシリンダー4内の油圧ピストン1の変位によって発生される摩擦による損失を低減させる。
【0069】
図2~5および7~9では、流量校正開口部27はバルブ-アクチュエータピストン22の内部に配置されることができ、流量校正開口部27は、高圧面23および低圧面28を、または前述の2つの面23、28のいずれかを、前述のピストン22の円筒外面と連結させること、に留意されたい。
【0070】
あるいは、流量校正開口部27は、バルブ-アクチュエータピストン22と、前述のピストン22が協働するアクチュエータシリンダー31との間に残留するクリアランスから有利になることができる。さらに、前述の開口部27は、前述のピストン22と、封止を形成することができる他の任意の部分との間に残留する任意のクリアランスからなること、も留意されたい。
【0071】
具体的には図2~6および図8および9に見ることができる、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の別の変形例では、円筒体6は、伝達手段33を潤滑するためのパイプによってその長さ方向に完全に貫通されることができ、一方では圧縮面10で、他方ではピストン支持面8で開口する。
【0072】
伝達手段33を潤滑するためのパイプは、流体11が油圧室5から伝達手段9に搬送されることを可能にし、伝達手段9は、例えば傾斜可能な板38と協働する油圧シューからなることができる。
【0073】
図1図9は、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ34を形成するために、冷却および潤滑バルブ2ならびにバルブ-アクチュエータピストン22は同じ材料ブロックで製造されることができることを例示する。
【0074】
図5は、伝達手段33を潤滑するためのパイプが、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ34を軸方向に完全に貫通することができることを示し、伝達手段と封止を形成しながらバルブ-アクチュエータピストンアセンブリは、伝達手段の周りをスライドできることを示している。
【0075】
図3、4、8および9に示す代替形態では、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ34は、伝達手段33の潤滑のためのパイプによって軸方向に完全に貫通されることができ、前述のアセンブリ34は前述のパイプ33の一部を形成する。
【0076】
これらの同じ図では、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ34は、有利に、摺動封止エンドピース41で終わることができ、摺動封止エンドピース41は伝動手段33の潤滑のためにパイプ内に配置されるエンドピース受容シリンダー42と封止を形成し、前述の前述の封止エンドピース41は、前述のアセンブリ34が前述のパイプ33に対して長手方向に並進移動することを可能にすること、に留意されたい。
【0077】
摺動封止エンドピース41またはエンドピース受容シリンダー42は、前述のエンドピース41と前述のシリンダー42との間に形成される封止を改善するために、当業者に公知の任意のタイプのガスケットを備えることができること、に留意されたい。
【実施例
【0078】
本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の作動は、図1~9により容易に理解される。
【0079】
図1は、それ自体知られている可変容量形アキシャルピストンを備える油圧ポンプ35に適用された油圧ピストン1を示す。
【0080】
前述のポンプ35の一部である伝達軸36が図示されていない駆動源により回転されると、前述の軸36は小さなシリンダー37を回転駆動し、シリンダーは前述の軸36にしっかりと連結される。
【0081】
前述のポンプ35の一部である傾斜板38が傾斜している場合、前述のポンプ35の油圧ピストン1は、協働するシリンダー4内で往復運動を付随して実行する。前述の往復運動の結果として、前述のピストン1は、吸入管39内に流体11を吸い込み、吸入管39内には例えば20バールの「ブースト圧力」と呼ばれる低圧の流体11が供給され、そして、吸入管は、前述の流体11を例えば400バールの圧力まで上昇させる送達パイプ40内に、前述の流体11を放出する。
【0082】
本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の作動を説明するために、ここでは、油圧ピストン1の円筒体6とそれが協働するシリンダー4との間に残留する直径方向のクリアランスは、非限定的な例として、およそ80~100マイクロメートルであると推測される。
【0083】
このクリアランスは、通常従来技術による可変容量形アキシャルシリンダー35を備える油圧ポンプの、協働するピストンとシリンダー4との間に残留するおよそ20~40マイクロメートルのクリアランスよりもかなり大きいことを強調する。このような大きなクリアランスは、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の目的のうちの1つであり、装備されている可変容量形アキシャルピストン35を備える油圧ポンプの総エネルギー収率、または前述のピストン1と有利に適合する他のいずれの装置の総エネルギー収率を改善することを目的とする。
【0084】
実際、本発明による油圧ピストン1は、円筒体6とシリンダー4との間に残留する直径方向のクリアランスが封止要件によってもはや決定されるのではなく、むしろ、ある程度の透過性が望ましく、主に摩擦と摩耗による損失を可能な限り少なくするガイド基準に基づくことを可能にする。
【0085】
本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の作動を説明するために、図1~5および7~9に例示のように、ここでは、各油圧ピストン1の封止手段16は、円筒体6内に配置される封止溝18に収容されるカットセグメント17からなり、前述の溝18は円筒外面13で開口するとする。
【0086】
具体的には図3~5および図7では、前述のセグメント17、より正確には、シリンダー4の内壁に対して保持されるようにここに設けられた前述のセグメント17の外面の、油圧室5に含まれる流体11の圧力の影響により膨らむプロファイルに留意されたい。
【0087】
ここで問題のカットセグメント17は、油圧室5内に存在する圧力が20バールである「停止(parked)」状態から、前述の油圧室5内に存在する圧力が400バールである「シリンダー4と封止接触している」状態に連続的に移行する。
【0088】
油圧室5に存在する圧力が400バールである場合、カットセグメント17がシリンダー4と形成する高度な封止により、前述のセグメント17と前述のシリンダー4との間では、流体11はほとんど流出しない。
【0089】
それにもかかわらず、油圧室5に存在する圧力がわずか20バールであり、したがって低い場合、前述のセグメント17は実際には停止状態であるが、前述のセグメント17がシリンダー4と形成する残留封止は、円筒外面13とシリンダー4との間に残留する小さな間隙空間32と組み合わされ、前述の空間32を通って油圧室5から流体11はごくわずかだけ流出する。
【0090】
このような少量の流体1では、シリンダー4と接触状態で円筒体6を好適に冷却および潤滑するに不十分である。この状況は、機械的完全性を損なうシリンダー4の乾燥、円筒外面13とシリンダー4との間の接触状態で生じる摩擦によるエネルギー損失の劇的な増加、ならびに、エネルギー収率および可変容量形アキシャルピストンを備える油圧ポンプ35の寿命の劇的な低下をもたらす。したがって、「停止」状態のカットセグメント17がちょうど通過できるより多い流体11が必要である。
【0091】
図3に例示のように、これが、油圧室5に存在する圧力が低い場合に、追加の流体11が油圧室5からカットセグメント17を迂回して間隙空間32に直接流れることができるように、本発明による油圧ピストン1が設けられる理由である。
【0092】
この結果を達成することを可能にする本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の作動を例示するために、図3および4に特に注意されたい。
【0093】
図3は、油圧室5に含まれる流体11の圧力がわずか20バールである場合の本発明による油圧ピストン1を示し、一方、図4は、前述の油圧室5に含まれる前述の流体11の圧力が400バールである場合、本発明の作動に何が起こるかを例示する。
【0094】
本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1は、図1に示す可変容量形アキシャルピストン35を備える油圧ポンプで効果的に用いられるとする。
【0095】
図3から分かるように、油圧室5に存在する圧力は20バールであり、バルブ-アクチュエータピストン22の低圧面28上にバルブ戻しばね30によって生成される力は、高圧面23上の流体11の圧力よって生成される力よりも大きい。
【0096】
この状況の結果、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ34は、それが協働するバルブ停止スペーサー3と接触または近接したままであり、およびフロー封止シート24はバルブ接触面26から離れたままである。その結果、流体11は、油圧室5からシリンダー4と共に剪断防止間隙溝20を形成する環状キャビティに流れるために、冷却および潤滑パイプ7内を循環することができる。
【0097】
この目的のために、前述の流体11は最初に流量校正開口部27を通り抜け、次に中間流体室29に入る。その後、流体はフロー封止シート24とバルブ接触面26との間に残留する空間を通り抜け、冷却および潤滑パイプ7の残りの部分を通り抜けた後、剪断防止間隙溝20に達する。
【0098】
そして、流体11は、ピストン支持面8の近傍に至る前に可変容量形アキシャルピストン35を備える油圧ポンプのケーシング内に放出され、円筒外面13とシリンダー4との間に形成される接触区域全体を潤滑および冷却するために、間隙空間32内で作用することができる。
【0099】
本発明による油圧ピストン1によって意図的に発生された前述の流体フロー11により損失した総エネルギーは、前述の流れが作動する圧力が低いため、全ての場合において低いままであることに留意されたい。この低エネルギー損失とは対照的に、また以下で説明するように、本発明による油圧ピストン1は、大幅なエネルギー節約を達成することを可能にし、最終結果が可変容量形アキシャルピストン35を備える油圧ポンプの総収率の増加を促進する。
【0100】
図4は、油圧室5内に存在する圧力が高い、例えば400バールの場合、何が発生するかを例示する。
【0101】
この場合、バルブ-アクチュエータピストン22の低圧面28上にバルブ戻しばね30によって生成される力は、高圧面23上に流体11の圧力によって生成される力よりも小さい。
【0102】
この状況の結果、バルブ-アクチュエータピストン22はフロー封止シート24をバルブ接触面26に当接させている。その結果、封止接触線25が形成され、流体11は冷却および潤滑パイプ7内でもはや循環することができなくなる。
【0103】
流体11がもはやカットセグメント17も冷却および潤滑パイプ7も通り抜けることができないため、油圧室5の封止は完全である。そして、可変容量形アキシャルピストン35を備える油圧ポンプは、密閉され、かつ完全に潤滑されているため、最大の収率を与える。
【0104】
その目的は、高圧で前述の流体11の漏れがなく、間隙空間32内に低圧で作用する潤滑および冷却の流体フロー11を達成することであり、よって実際に適切に達成される。
【0105】
「ブースト」圧力と呼ばれる20バールの低い圧力では、流量校正開口部27を通過する流体フロー11は、具体的には、圧縮面10が受ける圧力とピストン支持面8が受ける圧力との差に依存することに留意されたい。
【0106】
図3および4から容易に分かるように、前述の流れは、流体経路11に直列に配置される流れ制限にも依存し、流れ制限は連続する流量校正開口部27、フロー封止シート24とバルブ接触面26との間に残留する空間、および間隙空間32からなる。
【0107】
さらに、冷却および潤滑パイプ7内を低圧で循環する流体フロー11も、バルブ戻しばね30の風袋および剛性に依存する。
【0108】
実際に、図3を参照すると、他の全てが同じである場合、フロー封止シート24とバルブ接触面26との間に残留する空間が大きいため、バルブ戻しばね30によって低圧面28に及ぼす力が大きいほど、流量校正開口部27を通り抜ける流体フロー11が高くなることが理解される。
【0109】
しかし実際には、可変容量形アキシャルピストン35を備える油圧ポンプが回転し、油圧室5が20バール~400バールで周期的に通過する場合、バルブ-アクチュエータピストンアセンブリ34は停止スペーサー3と接触し、周期的には戻らない。
【0110】
事実、実際的な問題として、油圧室5に存在する圧力が20バールである場合、フロー封止シート24はバルブ接触面26から数ミクロンから数百分の1ミリメートルの距離を超えて移動しない。この距離は、存在する全ての力の間で見つかる平衡に、および具体的には図3を参照して、油圧室5に存在する圧力と中間流体室29に存在する圧力との差に対応する。
【0111】
したがって、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1が低圧で作動することを可能にする潤滑および冷却流体フロー11は、前述のピストン1の設計中に、可変容量形アキシャルピストンを備える油圧ピストン35の作動圧力を考慮して、高圧面23の断面、低圧面28の断面、流量校正開口部27の直径および長さ、バルブ戻しばね30の風袋と剛性、ならびに間隙空間32の値を適切に選択することにより、決定される。
【0112】
したがって、これらの値は全て、油圧室5内に存在する閾値圧力を決定することを可能にし、閾値圧力を超えると、封止接触線25が形成され、閾値圧力より低いと前述のフロー封止シート24がバルブ接触面26から離れたままである。
【0113】
上記から、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1は、従来技術による油圧ピストンによって課せられる妥協を容易に回避することを可能にし、その結果は通常前述のピストンとそのシリンダー4との間に残留する直径方向のクリアランスであることが理解できる。実際に、先行技術によれば、前述のクリアランスは、十分な流体11が流れて前述のピストンを潤滑および冷却すること可能にし、ならびに、剪断および摩擦による損失を制限するのに十分に大きくなければならないが、多量の流体11を流出させるほど大きくはない。この結果は、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1によって排除される妥協点である。
【0114】
さらに、本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1によって提供される有利な状況は、円筒体6が剪断防止間隙溝20を有することができることを含むことに留意されたい。油圧ピストン1の封止は、前述のピストン1と協働するシリンダー4との間に残留する小さなクリアランスによってはもはや保証されないが、例えば、図1~5および7~9に示すカットセグメント17、または図6に例示の可撓性円形ガスケット19、ならびにシリンダー4内の前述のピストン1の適切な潤滑および適切な冷却を含まないものであることができる封止手段16によって保証されるので、図1から9に示すこの特定の構成は可能である。
【0115】
前述の構成により、油圧ピストン1がシリンダー4内を移動する場合に間隙空間32に保持された流体11が発生させる剪断による損失を大幅に低減することが可能になる。剪断防止間隙溝20は、油圧ピストン1の作動中に円筒体6が示す円筒外面13とシリンダー4との間の大きな接触圧力を受けない領域に軸方向に配置されること、ならびに、それは本発明による油圧ピストン1の総エネルギー収率、およびしたがってこの非限定的な応用例による可変容量形アキシャルピストン35を備える油圧ポンプの総エネルギー収率、を改善する効果を有すること、に留意されたい。
【0116】
実際、剪断によるエネルギー損失は、相対運動において2つの部品セット間、および流体膜11が保持される2つの部品セット間に残留するクリアランスにほぼ反比例する。したがって、剪断防止間隙溝20は、円筒体6の円筒外面13の非常に大きな長さにわたる剪断による損失を排除する効果を有する。
【0117】
前述の収率をさらに改善するために、具体的には図3~7では、圧縮面10の側に位置する円筒体6の軸方向端部の直径は、ベアリングテーパ21を形成するために、ある長さにわたって徐々に減少することができ、ベアリングテーパ21は、油圧ピストン1がシリンダー4内で油圧室5の方向に上昇すると、流体11を、円筒体6の前述の軸方向端部とシリンダー4との間に前述の端部と前述のシリンダー4との間の接触状態で貫入させること、に留意されたい。本発明による油圧ピストン1のこの特定の構成はまた、前述の接触状態で流体力学的潤滑状態の確立を促進させ、およびシリンダー4内の油圧ピストン1の変位によって発生される摩擦による損失を低減させる。
【0118】
同じ目的で、代替的にまたは補完的に、具体的に図2は、油圧チャンバー5の反対側に位置するシリンダー4の軸方向端部の直径は、ベアリングテーパ12を形成するために、ある長さにわたって徐々に増加することができ、ベアリングテーパ12は、油圧ピストン1がシリンダー4内で油圧チャンバー5の方向に上昇すると、流体11を、円筒形本体6とシリンダー4の前述の軸方向端部との間に前述の端部と前述のシリンダー4との間の接触状態で貫入させることを示すことに留意されたい。
【0119】
本発明による冷却および潤滑バルブ2を備える油圧ピストン1の可能性は、今説明した用途のみに限定されるものではなく、前述の説明は単なる例であり、また、本発明の範囲を制限するものでは決してないこと、記載されている実施形態の詳細が他の等価物によって置き換えられた場合、本発明の範囲を超えないこと、が理解されなければならない。
図1
図2
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図7
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図9