(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】突出する割り出しラッチを備える周面を有する円形の両面切削インサート、切削インサートのためのインサートホルダ、及び切削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/22 20060101AFI20231019BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B23C5/22
B23C5/06 A
(21)【出願番号】P 2020536872
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 IL2019050087
(87)【国際公開番号】W WO2019159161
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-03
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト,ギル
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0259356(US,A1)
【文献】特開2014-024124(JP,A)
【文献】特表2012-525268(JP,A)
【文献】特表2020-504025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/06、5/10、5/20、5/22
B23B 27/00、27/08、27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート中心軸(A)を有する円形割り出し可能切削インサート(22)であって、前記切削インサート(22)は、
対向するインサート上面(30)及びインサート下面(32)と、前記インサート上面(30)及び前記インサート下面(32)の間に延在し、前記インサート中心軸(A)回りに延在するインサート周面(34)と、
前記インサート周面(34)と前記インサート上面(30)及び前記インサート下面(32)それぞれとの交線に形成された上側切れ刃(40)及び下側切れ刃(42)と、を備え、
前記インサート周面(34)は、前記インサート周面(34)から突出する複数の角度的に離間する割り出しラッチ(54)と、前記複数の割り出しラッチ(54)と周方向に交互である複数のインサート側当接面(64)と、を備え、
前記複数のインサート側当接面(64)は、前記切削インサート(22)と同軸である仮想インサート円筒体の外側円筒形面(IC)上にあり、
前記複数の割り出しラッチ(54)は、前記上側切れ刃(40)及び前記下側切れ刃(42)を径方向外側方向に越えて延在する、切削インサート(22)。
【請求項2】
前記インサート周面(34)は、前記外側円筒形面(IC)上にある、請求項1に記載の切削インサート(22)。
【請求項3】
前記複数の割り出しラッチ(54)は、前記インサート上面(30)及び前記インサート下面(32)から割り出しラッチ距離(D)だけ離間する、請求項1又は2に記載の切削インサート(22)。
【請求項4】
前記割り出しラッチ距離(D)は、0.3mm≦D≦0.5mmの範囲内である、請求項3に記載の切削インサート(22)。
【請求項5】
前記複数の割り出しラッチ(54)は、前記インサート周面(34)から径方向外側方向にラッチ突出距離(E)だけ突出し、
前記ラッチ突出距離(E)は、0.2mm≦E≦0.4mmの範囲内である、請求項1~4のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項6】
前記複数の割り出しラッチ(54)のそれぞれは、ラッチ角度(α)によって規定される前記インサート中心軸(A)回りに角度寸法を有し、
前記ラッチ角度(α)は、11°≦α≦25°の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項7】
前記複数の割り出しラッチ(54)は、前記インサート中心軸(A)回りにラッチ間隔角度(β)だけ互いから角度的に離間し、
前記ラッチ間隔角度(β)は、35°≦β≦49°の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項8】
前記複数の割り出しラッチ(54)のそれぞれは、ラッチ角度(α)によって規定される前記インサート中心軸(A)回りに角度寸法を有し、
前記複数の割り出しラッチ(54)は、前記インサート中心軸(A)回りにラッチ間隔角度(β)だけ互いから角度的に離間し、
前記ラッチ角度(α)は、前記ラッチ間隔角度(β)未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項9】
各割り出しラッチ(54)は、軸方向に対向するラッチ上側中心面(60)とラッチ下側中心面(62)とを備え、前記ラッチ上側中心面(60)は、前記ラッチ下側中心面(62)よりも前記インサート上面(30)に近く、その逆も同様であり、
前記ラッチ上側中心面(60)及び前記ラッチ下側中心面(62)のそれぞれは、前記ラッチ上側中心面(60)及び前記ラッチ下側中心面(62)に隣接する前記インサート上面(30)及び前記インサート下面(32)に向かう方向で径方向内側に傾斜し、
前記ラッチ上側中心面(60)は全て、前記切削インサート(22)と同軸である仮想ラッチ上側円錐体(CU)上にあり、
前記ラッチ下側中心面(62)は全て、前記切削インサート(22)と同軸である仮想ラッチ下側円錐体(CL)上にあり、
前記ラッチ上側円錐体(CU)は、ラッチ上側円錐開度(2γ)を有し、
前記ラッチ下側円錐体(CL)は、ラッチ下側円錐開度(2θ)を有し、
前記ラッチ上側円錐開度(2γ)及び前記ラッチ下側円錐開度(2θ)はそれぞれ、5°≦2γ,2θ≦20°の範囲である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項10】
インサートホルダ(24)であって、前記インサートホルダ(24)は、
ホルダ端面(68)に交差するホルダ主要面(66)と、
前記ホルダ主要面(66)内に凹み、ポケット開口(70)で前記ホルダ端面(68)に開口するホルダポケット(26)であって、ポケット長軸(B)を有するホルダポケット(26)と、を備え、
前記ホルダポケット(26)は、ポケットベース面(72)と、ポケット周面(74)と、ポケット支持面(76)と、を備え、前記ポケット周面(74)は、前記ポケットベース面(72)に実質的に直交して向けられ、前記ポケットベース面(72)の部分境界を形成し、前記ポケットベース面(72)は、前記ポケット開口(70)では前記ポケット周面(74)によって境界を定められず、
前記ポケット周面(74)は、
軸方向に延在する内側円筒形ポケット側方面(80)を備え、
前記内側円筒形ポケット側方面(80)は、前記内側円筒形ポケット側方面(80)内に凹む少なくとも1つの非側方割り出し間隙(85)によって複数の角度的に離間する円筒形ポケット側当接面(88)に分割され、前記各非側方割り出し間隙(85)は、一対の隣接し合う円筒形ポケット側当接面(88)の間に位置
し、
前記各非側方割り出し間隙(85)は、間隙角度(δ)によって規定される前記ポケット長軸(B)回りに角度寸法を有し、
前記複数の円筒形ポケット側当接面(88)のそれぞれは、ポケット側当接面角度(μ)によって規定される前記ポケット長軸(B)回りに角度寸法を有し、
前記間隙角度(δ)は、前記ポケット側当接面角度(μ)未満である、インサートホルダ(24)。
【請求項11】
前記ポケット側方面(80)は、部分環状ポケット隆起部(82)上に位置し、前記部分環状ポケット隆起部(82)は、前記ポケット周面(74)に沿って円周方向に延在し、前記ポケット周面(74)から突出する、請求項10に記載のインサートホルダ(24)。
【請求項12】
前記各非側方割り出し間隙(85)は、間隙角度(δ)によって規定される前記ポケット長軸(B)回りに角度寸法を有し、
前記間隙角度(δ)は、12°≦δ≦26°の範囲である、請求項10又は11に記載のインサートホルダ(24)。
【請求項13】
前記複数の円筒形ポケット側当接面(88)のそれぞれは、ポケット側当接面角度(μ)によって規定される前記ポケット長軸(B)回りに角度寸法を有し、
前記ポケット側当接面角度(μ)は、34°≦μ≦48°の範囲である、請求項10~12のいずれか1項に記載のインサートホルダ(24)。
【請求項14】
前記軸方向に延在する内側円筒形ポケット側方面(80)は、厳密に1つの非側方割り出し間隙(85)によって厳密に2つの円筒形ポケット側当接面(88)に分割される、請求項10~
13のいずれか1項に記載のインサートホルダ(24)。
【請求項15】
前記ポケット周面(74)は、1つ又は2つの側方割り出し間隙(90)を更に備え、前記1つ又は2つの側方割り出し間隙(90)は、前記ポケット側方面(80)と前記ホルダ主要面(66)との交線及び/又は前記ポケット側方面(80)と前記ホルダ端面(68)との交線に形成される、請求項10~
14のいずれか1項に記載のインサートホルダ(24)。
【請求項16】
厳密に2つの側方割り出し間隙(90)を備え、前記側方割り出し間隙(90)は、前記少なくとも1つの非側方割り出し間隙(85)の両側にあり、
前記少なくとも1つの非側方割り出し間隙(85)は、前記ポケット側方面(80)の高さ全体に延在する、
請求項
15に記載のインサートホルダ(24)。
【請求項17】
切削工具(20)であって、前記切削工具(20)は、
請求項1~9のいずれか1項に記載の切削インサート(22)と、
請求項10~
16のいずれか1項に記載のインサートホルダ(24)と、を備え、
前記切削工具(20)は、取外位置と締結位置との間で調節可能であり、前記切削工具(20)の締結位置において、
前記切削インサート(22)は、前記ホルダポケット(26)内に取り外し可能に保持され、
複数の円筒形ポケット側当接面(88)のそれぞれは、それぞれのインサート側当接面(64)と当接し、
ポケットベース面(72)上に位置するポケット支持面(76)は、インサート下面(32)上に位置するインサート下側軸受け面(38)と当接し、
各非側方割り出し間隙(85)は、それぞれの割り出しラッチ(54)によって占められている、切削工具(20)。
【請求項18】
前記切削工具(20)の締結位置において、
前記各非側方割り出し間隙(85)は、前記それぞれの割り出しラッチ(54)を角度的又は軸方向に締め付けない、請求項
17に記載の切削工具(20)。
【請求項19】
前記切削インサート(22)は、インサート貫通孔(52)を備え、前記インサート貫通孔(52)は、前記インサート中心軸(A)に沿って前記インサート上面(30)と前記インサート下面(32)との間に延在し、前記インサート上面(30)及び前記インサート下面(32)に開口し、
前記ホルダポケット(26)は、ポケットねじ孔(78)を備え、前記ポケットねじ孔(78)は、ねじ孔軸(A)に沿って前記ポケットベース面(72)内に凹み、前記ポケットベース面(72)に開口し、
前記切削工具(20)の締結位置において、
前記切削インサート(22)は、保持ねじ(28)によって前記インサートホルダ(24)に取り外し可能に保持され、前記保持ねじ(28)は、前記インサート貫通孔(52)内に位置し、前記ポケットねじ孔(78)内に螺入される、請求項
17又は18に記載の切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、切削インサートの種類の切削工具に関し、より詳細には、円形の基本形状を有する切削インサート、また更に詳細には、インサートホルダのポケット内に割り出し可能に位置決め可能な両面切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
切れ刃を識別することが困難であるので、インサートホルダのポケット内に円形切削インサートを割り出し可能に位置決めすることが問題となることがある。切れ刃したがって、切削工具は、ポケット内に切削インサートを割り出し可能に位置決めする割り出し機構を備えることができる。
【0003】
いくつかのそのような割り出し機構において、切削インサート及びポケットの一方は、少なくとも1つの割り出し間隙(「凹部」とも呼ばれる)を含むことができ、切削インサート及びポケットの他方は、少なくとも1つの割り出しラッチ(「突出部」とも呼ばれる)を含むことができる。ポケットに対する切削インサートの割り出し可能な正確な位置決めは、少なくとも1つの割り出しラッチが少なくとも1つの割り出し間隙内に配置される際に識別可能である。
【0004】
いくつかのそのような割り出し機構において、少なくとも1つの割り出しラッチ及び少なくとも1つの割り出し間隙の一方は、切削インサートの底部に配置され得る一方で、少なくとも1つの割り出しラッチ及び少なくとも1つの割り出し間隙の他方は、ポケットのベース面に配置され得る。そのような切削インサートの例は、例えば、米国特許出願公開第8,858,130号及び米国特許出願公開第9,011,049号に開示されている。
【0005】
他のそのような割り出し機構において、少なくとも1つの割り出しラッチ及び少なくとも1つの割り出し間隙の一方は、切削インサートの周辺部に配置され得る一方で、少なくとも1つの割り出しラッチ及び少なくとも1つの割り出し間隙の他方は、ポケットの周面に配置され得る。そのような切削インサートの例は、例えば、米国特許出願公開第2013/330135号及び米国特許出願公開第9,289,834号に開示されている。
【発明の概要】
【0006】
本出願の主題の一目的は、割り出しラッチを有する、新たな円形の両面切削インサートを提供することである。
【0007】
本出願の主題の更なる目的は、両面切削インサートを取り外し可能に取り付ける新たなインサートホルダを提供することである。
【0008】
本出願の主題のまた更なる目的は、新たなインサートホルダ及び新たな円形の両面切削インサートを含む新たな切削工具を提供することである。
【0009】
本出願の主題の第1の態様によれば、インサート中心軸を有する円形の割り出し可能切削インサートが提供され、切削インサートは、
対向するインサート上面及びインサート下面、並びにインサート上面とインサート下面との間に延在し、インサート中心軸回りに延在するインサート周面と、
インサート周面とインサート上面及びインサート下面それぞれとの交線に形成される上側切れ刃及び下側切れ刃と、を備え、
インサート周面は、インサート周面から突出する複数の角度的に離間する割り出しラッチと、複数の割り出しラッチと周方向に交互である複数のインサート側当接面と、を備え、
複数のインサート側当接面は、切削インサートと同軸である仮想インサート円筒体の外側円筒面上にある。
【0010】
本出願の主題の第2の態様によれば、インサートホルダが提供され、インサートホルダは、
ホルダ端面に交差するホルダ主要面と、
ホルダ主要面内に凹み、ポケット開口でホルダ端面に開口するホルダポケットであって、ポケット長軸を有するホルダポケットと、を備え、
ホルダポケットは、ポケットベース面と、ポケット周面と、ポケット支持面と、を備え、ポケット周面は、ポケットベース面に実質的に直交して向けられ、ポケットベース面の部分境界を形成し、ポケットベース面は、ポケット開口ではポケット周面によって境界を定められず、
ポケット周面は、
軸方向に延在する内側円筒形ポケット側方面を備え、内側円筒形ポケット側方面は、内側円筒形ポケット側方面内に凹む少なくとも1つの非側方割り出し間隙によって複数の角度的に離間する円筒形ポケット側当接面に分割され、各非側方割り出し間隙は、一対の隣接し合う円筒形ポケット側当接面の間に位置する。
【0011】
本出願の主題の第3の態様によれば、切削工具を提供し、切削工具は、
上記した種類の切削インサートと、
上記した種類のインサートホルダと、を備え、
切削工具は、取外位置と締結位置との間で調節可能であり、切削工具の締結位置において、
切削インサートは、ホルダポケット内に取り外し可能に保持され、
複数の円筒形ポケット側当接面のそれぞれは、それぞれのインサート側当接面と当接し、
ポケットベース面に位置するポケット支持面は、インサート下面に位置するインサート下側軸受け面と当接し、
各非側方割り出し間隙は、それぞれの割り出しラッチによって占められている。
【0012】
上記は、概要であり、以下で説明する特徴は、本出願の主題にあらゆる組合せで適用可能であり、例えば、以下の特徴のいずれかは、切削インサート、インサートホルダ又は切削工具に適用可能であることを理解されたい。
【0013】
複数の割り出しラッチは、上側切れ刃及び下側切れ刃を越えて径方向外側方向に延在することができる。
【0014】
複数の角度的に離間する割り出しラッチのそれぞれは、軸方向で凸状に成形されることができる。
【0015】
インサート周面は、外側円筒形面上にあることができる。
【0016】
複数の割り出しラッチは、インサート上面及びインサート下面からある割り出しラッチ距離だけ離間することができる。
【0017】
割り出しラッチ距離は、0.3mm以上であり、0.5mm以下とすることができる。
【0018】
複数の割り出しラッチは、インサート周面からあるラッチ突出距離だけ径方向外側方向に突出することができる。ラッチ突出距離は、0.2mm以上であり、0.4mm以下とすることができる。
【0019】
複数の割り出しラッチのそれぞれは、あるラッチ角度によって規定されるインサート中心軸回りに角度寸法を有する。ラッチ角度は、11°以上であり、25°以下とすることができる。
【0020】
複数の割り出しラッチは、インサート中心軸回りに互いからあるラッチ間隔角度だけ角度的に離間することができる。ラッチ間隔角度は、35°以上であり、49°以下とすることができる。
【0021】
複数の割り出しラッチのそれぞれは、あるラッチ角度によって規定されるインサート中心軸回りに角度寸法を有する。複数の割り出しラッチは、インサート中心軸回りに互いからあるラッチ間隔角度だけ角度的に離間することができる。ラッチ角度は、ラッチ間隔角度未満とすることができる。
【0022】
ラッチ角度は、ラッチ間隔角度の半分未満とすることができる。
【0023】
各割り出しラッチは、軸方向に対向するラッチ上側中心面とラッチ下側中心面とを備えることができ、ラッチ上側中心面は、ラッチ下側中心面よりもインサート上面に近く、その逆も同様である。ラッチ上側中心面及びラッチ下側中心面のそれぞれは、ラッチ上側中心面及びラッチ下側中心面に隣接するインサート上面及びインサート下面に向かう方向で径方向内側に傾斜させることができる。
【0024】
ラッチ上側中心面は全て、切削インサートと同軸である仮想ラッチ上側円錐体上にあることができる。ラッチ下側中心面は全て、切削インサートと同軸である仮想ラッチ下側円錐体上にあることができる。
【0025】
複数の割り出しラッチは、インサート周面から径方向外側方向にあるラッチ突出距離だけ突出することができる。ラッチ突出距離は、0.2mm以上であり、0.4mm以下とすることができる。
【0026】
ラッチ上側円錐体は、あるラッチ上側円錐開度を有することができる。ラッチ下側円錐体は、あるラッチ下側円錐開度を有することができる。ラッチ上側円錐開度及びラッチ下側円錐開度はそれぞれ、5°以上であり、20°以下とすることができる。
【0027】
切削インサートは、インサート正中面回りに鏡面対称であり、インサート正中面は、インサート中心軸に直交して向けられ、インサート上面とインサート下面との間の中間を通過する。
【0028】
切削インサートは、インサート中心軸回りに回転対称とすることができる。
【0029】
複数の割り出しラッチは、同一とすることができる。
【0030】
切削インサートは、インサート貫通孔を備え、インサート貫通孔は、インサート中心軸に沿ってインサート上面とインサート下面との間に延在し、インサート上面及びインサート下面に開口することができる。
【0031】
ポケット側方面は、部分環状ポケット隆起部上に位置することができ、部分環状ポケット隆起部は、ポケット周面に沿って円周方向に延在し、ポケット周面から突出する。
【0032】
各非側方割り出し間隙は、ある間隙角度によって規定されるポケット長軸回りに角度寸法を有することができる。間隙角度は、12°以上であり、26°以下とすることができる。
【0033】
複数の円筒形ポケット側当接面のそれぞれは、あるポケット側当接面角度によって規定したポケット長軸回りに角度寸法を有することができる。ポケット側当接面角度は、34°以上であり、48°以下とすることができる。
【0034】
各非側方割り出し間隙は、ある間隙角度によって規定されるポケット長軸回りに角度寸法を有することができる。複数の円筒形ポケット側当接面のそれぞれは、あるポケット側当接面角度によって規定したポケット長軸回りに角度寸法を有することができる。間隙角度は、ポケット側当接面角度未満とすることができる。
【0035】
間隙角度は、ポケット側当接面角度の半分未満とすることができる。
【0036】
軸方向に延在する内側円筒形ポケット側方面は、厳密に1つの非側方割り出し間隙によって厳密に2つの円筒形ポケット側当接面に分割することができる。
【0037】
ポケット支持面は、平面であり、ポケット長軸に直交することができる。
【0038】
ホルダポケットは、ポケットねじ孔を備えることができ、ポケットねじ孔は、ねじ孔軸に沿ってポケットベース面内に凹み、ポケットベース面に開口している。
【0039】
ポケット周面は、1つ又は2つの側方割り出し間隙を更に備えることができ、1つ又は2つの側方割り出し間隙は、ポケット側方面とホルダ主要面との交線及び/又はポケット側方面とホルダ端面との交線に形成される。
【0040】
インサートホルダは、厳密に2つの側方割り出し間隙を備えることができ、側方割り出し間隙は、少なくとも1つの非側方割り出し間隙の両側にある。
【0041】
少なくとも1つの非側方割り出し間隙は、ポケット側方面の高さ全体を拡張させることができる。
【0042】
切削工具の締結位置において、各非側方割り出し間隙は、それぞれの割り出しラッチを角度的又は軸方向に締め付けなくてよい。
【0043】
切削工具の締結位置において、切削インサートは、保持ねじによってインサートホルダに取り外し可能に保持することができ、保持ねじは、インサート貫通孔内に位置し、ポケットねじ孔内に螺入される。
【0044】
切削工具は、第1の中間位置及び第2の中間位置を介して第1の締結位置と第2の締結位置との間で調節可能とすることができる。切削工具の第1の中間位置において、保持ねじは、インサート貫通孔内に位置し、ポケットねじ孔内に部分的に螺入することができる。切削インサートは、複数の円筒形ポケット側当接面から離して配設することができる。各非側方割り出し間隙は、それぞれの割り出しラッチによって占められることがない。
【0045】
ポケット周面は、2つの側方割り出し間隙を更に備えることができ、一方は、ポケット側方面とホルダ主要面との交線に形成し、もう一方は、ポケット側方面とホルダ端面との交線に形成される。切削工具の第1の中間位置において、2つの側方割り出し間隙の少なくとも一方は、それぞれの割り出しラッチによって占められることがない。
【0046】
切削工具の第2の中間位置において、切削インサートは、インサート中心軸回りに回転することができ、これにより、各非側方割り出し間隙は、それぞれのインサート側当接面と角度的に位置合わせされ、各円筒形ポケット側当接面は、それぞれの割り出しラッチと角度的に位置合わせされる。
【0047】
複数の割り出しラッチのそれぞれは、あるラッチ角度によって規定されるインサート中心軸回りに角度寸法を有する。各非側方割り出し間隙は、ある間隙角度によって規定されるポケット長軸回りに角度寸法を有することができる。間隙角度は、ラッチ角度よりも1°以下だけ大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
次に、本出願をより良好に理解し、本出願を実際にどのように実行し得るかを示すため、添付の図面を参照する。
【
図2】本発明による切削インサートの斜視図である。
【
図5】
図1のインサートホルダのホルダポケットホルダポケットの斜視図である。
【
図7】切削工具が締結位置にある際の
図6のホルダポケットの上面図である。
【
図8】
図7の線XIII-XIIIに沿って取った断面図である。
【
図9】切削工具が第1の中間位置にある際の
図6のホルダポケットの上面図である。
【
図10】切削工具が第2の中間位置にある際の
図6のホルダポケットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
説明図を簡単、明快にするため、図面に示す要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことは了解されよう。例えば、要素の一部の寸法は、明快にするために他の要素に対して強調している場合があるか、又はいくつかの物理的構成要素は、1つの機能ブロック若しくは要素内に含めることができる。適切であると見なされる場合、参照数字は、対応又は類似する要素を示すため、図面の中で繰り返すことができる。
【0050】
以下の説明では、本出願の主題の様々な態様を説明する。説明のために、特定の構成及び細部を十分詳細に示し、本出願の主題に対する完全な理解を提供する。しかし、本明細書で提示する特定の構成及び細部を伴わずに本出願の主題を実行し得ることも当業者には明らかであろう。
【0051】
まず、本出願の主題の実施形態による、チップ除去のための切削工具20を示す
図1に注意を向けられたい。切削工具20は、典型的には超硬合金から作製し得る切削インサート22を有する。切削工具20は、ホルダポケット26を有するインサートホルダ24も有する。インサートホルダ24は、典型的には鉄鋼から作製することができる。この非限定的な例では、切削工具20は、回転フライス加工工具であり、切削インサート22は、フライス加工インサートである。しかし、本出願の主題は、他の種類の切削工具及び切削インサート、例えば、限定はしないが、旋削工具及び旋削インサートにも適用されることを留意されたい。切削工具20は、取外位置と締結位置との間で調節可能である。切削工具20の締結位置において、切削インサート22は、例えば保持ねじ28によってインサートホルダ24に取り外し可能に取り付けられる。
【0052】
次に、本発明の第1の態様に関連する、本出願の主題による切削インサート22を示す
図2から
図4を参照されたい。切削インサート22は、単一の統合された一体化構造を備える。切削インサート22は、インサート中心軸Aを有する。切削インサート22は、対向するインサート上面30とインサート下面32とを含む。インサート中心軸Aは、インサート上面30及びインサート下面32を通じて延在する。切削インサート22は、インサート上面30とインサート下面32との間に延在するインサート周面34を更に含む。インサート周面34は、インサート中心軸Aの回りに延在する。切削インサート22は、インサート正中面Mを有し、インサート正中面Mは、インサート中心軸Aに直交して向けられ、インサート上面30とインサート下面32との間の中間を通過する。
【0053】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、インサート中心軸A回りに回転対称とすることができる。切削インサート22は、インサート正中面M回りに鏡面対称とすることができる。
【0054】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート周面34は、インサート中心軸Aから一定の距離で、インサート中心軸A回りに延在することができる。別の言い方をすれば、インサート周面34は、インサート周面34の円筒軸としてインサート中心軸Aを有する仮想インサート円筒体の外側円筒形面IC上にあることができる(即ち、インサート円筒体及び切削インサート22は、互いに同軸である)。
【0055】
インサート上面30及びインサート下面32は、円形の基本形状を有する。言い換えれば、切削インサート22は円形である。インサート上面30は、インサート上側軸受け面36を含む。同様に、インサート下面32は、インサート下側軸受け面38を含む。インサート上側軸受け面36及びインサート下側軸受け面38は、切削インサート22をホルダポケット26内に据え付けた際にホルダポケット26内の対応する面と接触するように構成される。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート上側軸受け面36及びインサート下側軸受け面38は、平面であり、互いに平行とすることができる。インサート上側軸受け面36及びインサート下側軸受け面38は、これらそれぞれのインサート上面30及びインサート下面32上の中心に配設することができる。
【0056】
切削インサート22は、上側切れ刃40及び下側切れ刃42を含み、上側切れ刃40及び下側切れ刃42は、インサート周面34とインサート上面30及びインサート下面32それぞれとの交線に形成される。したがって、切削インサート22は、両面使用可能であり、インサート上側軸受け面36及びインサート下側軸受け面38のどちらででもホルダポケット26内に据え付けることができる。言い換えれば、切削インサート22は「リバーシブル」である。上側切れ刃40及び下側切れ刃42は、円形であり、インサート中心軸Aに直交する2つの平行な離間する平面内にあることができる。
【0057】
インサート上面30は、上側切れ刃40に沿って延在する上側すくい面44を含む。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、上側すくい面44は、上側切れ刃40をインサート上側軸受け面36に接続することができる。上側切れ刃40に隣接する上側すくい面44の部分は、径方向内側方向でインサート正中面Mに向けて傾斜させることができる。同様に、インサート下面32は、下側すくい面46を含み、下側すくい面46は、同様に構成し、向けることができる。
【0058】
インサート周面34は、上側切れ刃40及び下側切れ刃42のそれぞれに沿って延在する上側逃げ面48及び下側逃げ面50を含む。
【0059】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、インサート貫通孔52を含み、インサート貫通孔52は、切削インサート22を保持ねじ28でホルダポケット26内に留めるように設計されている。インサート貫通孔52は、インサート上面30とインサート下面32との間に延在し、インサート上面30及びインサート下面32に開口している。インサート貫通孔52は、インサート中心軸Aに沿って延在することができ、したがって、インサート中心軸Aは、貫通孔軸Tとして働くことができる。インサート貫通孔52は、保持ねじ28を受け入れ、切削インサート22をインサートホルダ24に固着するためのものである。
【0060】
インサート周面34は、複数の角度的に(「円周方向に」)離間した割り出しラッチ54を含み、割り出しラッチ54は、インサート周面34から径方向外側方向に突出する。複数の割り出しラッチ54は、切削インサート22が、ホルダポケット26内で正確な割り出し可能位置にあるという通知を与えるように働く。割り出しラッチ54の数は、切削インサート22をホルダポケット26内に据え付けた際に切削インサート22が各側に有する割り出し可能位置の数を決定する。図示するこの非限定的な例では、インサート周面34は、厳密に6個の割り出しラッチ54を含み、したがって、12通り(各面で6通り)に割り出し可能である。
【0061】
上述の米国特許出願公開第9,289,834号及び米国特許出願公開第2013/0330135号に見られる両面切削インサートのインサート周面内に形成される間隙(「凹部」)及びこれに付随して生じるアンダーカットとは対照的に、本発明の切削インサートは、インサート周面34上に形成した突出部54を有する。したがって、製造工程の間、本発明のインサートは、有利には、単軸2部構成鋳型を使用してプレス成形することができ、単軸2部構成鋳型の半分は、後にインサート正中面Mになるところで合致する。したがって、本発明のインサートの製造は、可能性としては、多軸鋳型によるプレス成形、又はインサート周面内に間隙/凹部を機械加工することに関連する更なる費用を回避することができる。
【0062】
図3を参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の割り出しラッチ54は、上側切れ刃40及び下側切れ刃42を越えて径方向外側方向に延在することができる。複数の割り出しラッチ54は、インサート周面34から径方向外側方向にラッチ突出距離Eだけ突出することができる。ラッチ突出距離Eは、0.2mm≦E≦0.4mmの範囲内とすることができる。複数の割り出しラッチ54は全て、互いに同一とすることができる。複数の割り出しラッチ54は、均等に離間させることができる。複数の割り出しラッチ54は、インサート上面30及びインサート下面32から離間することができる。複数の割り出しラッチ54がインサート上面30及びインサート下面32から離間するために、切削インサート22は、0°の隙間で中立である。複数の割り出しラッチ54は、インサート上面30及びインサート下面32から割り出しラッチ距離Dだけ離間することができる。割り出しラッチ距離Dは、0.3mm≦D≦0.5mmの範囲内とすることができる。
【0063】
図3を参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、各割り出しラッチ54は、2つの円周方向に対向するラッチ側方面56と、ラッチ側方面56の間に延在するラッチ中心面58とを含む。2つのラッチ側方面56は、インサート周面34から全体に径方向外側方向に延在する。好ましくは、切削インサート22の上面図(即ち
図4)において、所与の割り出しラッチ54に関し、ラッチ側方面56は、互いに向かって径方向外側方向に収束することができる。したがって、切削インサート22の上面図において、各割り出しラッチ54は、(インサート周面34に最も近い)割り出しラッチ54の基部が最も広く、ラッチ中心面58の径方向最外部分が最も狭い。
【0064】
図4を再度参照すると、複数の割り出しラッチ54の、周方向におけるそれぞれの対向する末端部(例えば、2つのラッチ側方面56)は、インサート中心軸Aでラッチ角度αを定める。即ち、複数の割り出しラッチ54のそれぞれは、ラッチ角度αによって規定されるインサート中心軸A回りに角度寸法を有する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ラッチ角度αは、11°≦α≦25°の範囲とすることができる。
【0065】
図3を参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の割り出しラッチ54は、インサート中心軸A回りに互いにラッチ間隔角度βだけ角度的に離間する。ラッチ間隔角度βは、35°≦β≦49°の範囲とすることができる。ラッチ角度αは、ラッチ間隔角度β未満とすることができる。好ましくは、ラッチ角度αは、ラッチ間隔角度βの半分未満とすることができる。インサートが、ラッチ角度が等しい、角度的に離間する割り出しラッチを有する場合、360°=(α+β)×(割り出し位置の数)である。
【0066】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数の角度的に離間する割り出しラッチ54のそれぞれは、軸方向で(即ち、切削インサート22の側方面図で)凸状に成形することができる(
図3を参照)。ラッチ中心面58は、軸方向に対向するラッチ上側中心面60及びラッチ下側中心面62を含むことができる。ラッチ上側中心面60、ラッチ下側中心面62は、ラッチ中間面63によって互いに離間させることができる。ラッチ中間面63は、インサート周面34と同軸である円筒体上にあることができ、ラッチ中心面58の径方向最外部分を形成する。ラッチ上側中心面60は、ラッチ下側中心面62よりもインサート上面30に近く、その逆も同様、即ち、ラッチ下側中心面62は、ラッチ上側中心面60よりもインサート下面32に近い。ラッチ上側中心面60は、インサート上面30に向かう方向で径方向内側に傾斜させることができ、ラッチ下側中心面62は、インサート下面32に向かう方向で径方向内側に傾斜させることができる。別の言い方をすれば、ラッチ上側中心面60及びラッチ下側中心面62のそれぞれは、それらに隣接するインサート上面30及びインサート下面32に向かう方向で径方向内側に傾斜させることができる。したがって、切削インサート22の側面図(即ち、
図3)において、あらゆる所与の割り出しラッチ54に関し、ラッチ上側中心面60及びラッチ下側中心面62は、ラッチ収束角度εで、互いに向かって径方向外側方向に収束させることができる。好ましくは、ラッチ収束角度εは、70°≦ε≦84°の範囲とすることができる。そのような構成は、上述の範囲のラッチ突出距離Eと組み合わせると、金属切削作業を実施する際、有効切れ刃に隣接する割り出しラッチ54が加工物に干渉しないことを保証することに留意されたい。
【0067】
図3を参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ラッチ上側中心面60及びラッチ下側中心面62は、インサート正中面Mの両側に配設することができる。ラッチ上側中心面60は全て、切削インサート22と同軸である仮想ラッチ上側円錐体CU上にあることができる。ラッチ上側円錐体CUは、ラッチ上側円錐開度2γを有する。ラッチ上側円錐開度2γは、5°≦2γ≦20°の範囲とすることができる。ラッチ下側中心面62は全て、切削インサート22と同軸である仮想ラッチ下側円錐体CL上にあることができる。ラッチ下側円錐体CLは、ラッチ下側円錐開度2θを有する。ラッチ下側円錐開度2θは、5°≦2θ≦20°の範囲とすることができる。ラッチ上側円錐開度2γ及びラッチ下側円錐開度2θは、等しくすることができる。ラッチ上側円錐体CU及びラッチ下側円錐体CLは、互いから離れて向いている。
【0068】
インサート周面34は、複数のインサート側当接面64を含む。複数のインサート側当接面64は、複数の割り出しラッチ54と円周方向に交互である。各インサート側当接面64は、一対の隣接し合う割り出しラッチ54の間に位置する。各インサート側当接面64は、必ずしも一対の隣接し合う割り出しラッチ54に延在しなくてよい(即ち、複数のインサート側当接面64は、複数の割り出しラッチ54から離間させることができる)。複数のインサート側当接面64は、外側円筒形面IC上にあることができる。複数のインサート側当接面64は、切削インサート22をホルダポケット26内に据え付けた際にホルダポケット26内の対応する面と接触するように構成される。
【0069】
本出願の主題の第2の態様は、インサートホルダ24に関する。
図5及び
図6に注意を向けられたい。インサートホルダ24は、ホルダ端面68と交差するホルダ主要面66を含む。インサートホルダ24は、切削インサート22を中に取り外し可能に取り付けるホルダポケット26を含む。図示するこの非限定的な例では、ホルダポケット26は、ホルダ溝69の端部に位置し、ホルダ溝69の端部は、ホルダポケット26上に凹み、ホルダ端面68に開口する。
【0070】
ホルダポケット26は、ポケット長軸Bを有する。ホルダポケット26は、単一の統合された一体化構造を備える。ホルダポケット26は、ホルダ主要面66内に凹んでいる。ホルダポケット26は、ポケット開口70でホルダ端面68に開口している。ホルダポケット26は、ポケットベース面72及びポケット周面74を含む。ポケット周面74は、ホルダ主要面66からホルダ端面68まで延在する。ポケット周面74は、ポケットベース面72に実質的に直交して向けられ、ポケットベース面72の部分境界を形成する。ポケットベース面72は、ポケット開口70ではポケット周面74によって境界を定められない。ポケットベース面72は、ポケット長軸Bによって交差される。
【0071】
図5から
図6を参照すると、ポケットベース面72は、ポケット支持面76を含む。ポケット支持面76は、切削インサート22をホルダポケット26内に据え付けた際に切削インサート22内の対応する面と接触するように構成される。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット支持面76は、平面であり、ポケット長軸Bに直交させることができる。ポケット支持面76は、ポケットベース面72上に中心に配設することができる。
【0072】
ポケット周面74は、ポケット側方面80を含む。ポケット側方面80は、一定の距離でポケット長軸B回りに延在し、ポケット長軸Bの方に面する。別の言い方をすれば、ポケット周面74は、ポケット長軸Bに沿って軸方向に延在し、仮想ポケット円筒体の内側円筒形面PC上にあり、仮想ポケット円筒体は、その円筒軸としてポケット長軸Bを有する(即ち、ポケット円筒体及びホルダポケット26は、互いに同軸である)。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット円筒体の直径は、インサート円筒体の直径に等しくすることができる。ポケット側方面80は、部分環状ポケット隆起部82上に位置することができ、部分環状ポケット隆起部82は、ポケット周面74に沿って円周方向に延在し、ポケット周面74から突出している。
【0073】
ポケット側方面80は、少なくとも1つの割り出し間隙84によって中断される。少なくとも1つの割り出し間隙84は、割り出しラッチ54のそれぞれを受け入れるように設計される。少なくとも1つの割り出し間隙84は、ポケット側方面80内に凹んでいる。少なくとも1つの割り出し間隙84は、凹んだ間隙面86によって形成され、間隙面86の少なくとも一部分は、割り出しラッチ54のための回転停止部として働くように構成される。
【0074】
少なくとも1つの割り出し間隙84は、少なくとも1つの非側方割り出し間隙85を含むこともでき、少なくとも1つの非側方割り出し間隙85は、ホルダ主要面66及びホルダ端面68から離間する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの割り出し間隙84は、厳密に1つの非側方割り出し間隙85を含むことができる。2つ以上の非側方割り出し間隙85を有する構成では、非側方割り出し間隙85は、同一とすることができる。各非側方割り出し間隙85は、間隙角度δによって規定されるポケット長軸B回りに角度寸法を有する。間隙角度δは、12°≦δ≦26°の範囲とすることができる。間隙角度δは、ラッチ角度αよりも1°以下だけ大きくすることができる。図示する非限定的な例において、少なくとも1つの非側方割り出し間隙85の間隙面86は、ポケット長軸Bに沿って見ると凹状に湾曲している。少なくとも1つの非側方割り出し間隙85は、ポケット側方面80の高さ全体を拡張させることができる。
【0075】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの割り出し間隙84は、1つ又は2つの側方割り出し間隙90を更に含むことができる。1つ又は2つの側方割り出し間隙90は、ポケット側方面80の対向する円周端部に形成され、これらの対向する円周端部は、ポケット側方面80とホルダ主要面66との交線及び/又はポケット側方面80とホルダ端面68との交線に位置する。図面からわかるように、側方割り出し間隙90は、上述の交線で切り欠きとして形成され、したがって、非側方割り出し間隙85とは形状が異なる。図示するこの非限定的な例において、少なくとも1つの割り出し間隙84は、厳密に2つの側方割り出し間隙90を含み、第1の側方割り出し間隙90aは、ホルダ端面68と交差し、第2の側方割り出し間隙90bは、ホルダ主要面66と交差する。第1の側方割り出し間隙90a及び第2の側方割り出し間隙90bは、同一でなくてよい。厳密に2つの側方割り出し間隙90は、少なくとも1つの非側方割り出し間隙85の両側に位置する。
【0076】
少なくとも1つの割り出し間隙84は、複数の角度的に離間するポケット側当接面88を規定し、ポケット側当接面88は、ポケット長軸B回りに少なくとも1つの非側方割り出し間隙85と円周方向に交互である。より詳細には、軸方向に延在する内側円筒形ポケット側方面80は、1つ又は複数の非側方割り出し間隙85によって複数の角度的に離間する円筒形ポケット側当接面88に分割される。複数のポケット側当接面88は、ポケット側方面80上に位置し、したがって、円筒形である。各非側方割り出し間隙85は、一対の隣接し合うポケット側当接面88の間に位置する。したがって、非側方割り出し間隙85は、ホルダ主要面66及びホルダ端面68から離間する。各ポケット側当接面88は、円周方向におけるポケット側当接面88の片側又は両側が、それぞれの少なくとも1つの非側方割り出し間隙85に隣接することができる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット側方面80は、厳密に2つのポケット側当接面88を含むことができる。
【0077】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、複数のポケット側当接面88のそれぞれは、ポケット側当接面角度μによって規定されるポケット長軸B回りに角度寸法を有することができる。ポケット側当接面角度μは、34°≦μ≦48°の範囲とすることができる。間隙角度δは、ポケット側当接面角度μ未満とすることができる。好ましくは、間隙角度δは、ポケット側当接面角度μの半分未満とすることができる。
【0078】
図5、
図6及び
図8を参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダポケット26は、ポケットねじ孔78を含むことができ、ポケットねじ孔78は、保持ねじ28を螺入するように設計され、切削インサート22をインサートホルダ24に固着するようにする。ポケットねじ孔78は、ポケットベース面72、好ましくは、ポケット支持面76内に凹み、開口している。ポケットねじ孔78は、ねじ孔軸Sに沿って延在する。ねじ孔軸S及びポケット長軸Bは、互いに非平行とすることができる。ねじ孔軸S及びポケット長軸Bは、ねじ孔平面P内にあることができ、ねじ孔平面Pは、少なくとも1つの非側方割り出し間隙85の1つと交差する。ねじ孔軸Sは、ポケット長軸Bに対して傾斜させることができる。特に、ねじ孔軸S及びポケット長軸Bは、ねじ孔平面P内にねじ孔角度λを規定することができる。ねじ孔角度λは、1°≦λ≦10°の範囲とすることができる。有利には、ねじ孔角度λは、ホルダポケット26内での切削インサート22の強固な据え付けを保証し、この締め付け力は、ポケット支持面76及び複数のポケット側当接面88の方に向けられる。
【0079】
ホルダポケット26内での切削インサート22の据え付け及び支持は、
図1、
図7及び
図8を参照して説明する。切削工具20の締結位置において、切削インサート22は、インサートホルダ24のホルダポケット26内に取り外し可能に保持される。図示するこの非限定的な例において、切削インサート22は、保持ねじ28によってホルダポケット26内に保持され、保持ねじ28は、インサート貫通孔52内に位置し、ポケットねじ孔78内に螺入されている。インサート中心軸A及びポケット長軸Bは、一致してよい。
【0080】
インサート中心軸A及びポケット長軸Bを含む平面内で取った、非側方割り出し間隙85の1つを通過する断面を示す
図8を参照すると、切削工具20の締結位置において、ポケット支持面76は、インサート下側軸受け面38に当接する。複数の円筒形ポケット側当接面88のそれぞれは、それぞれの円筒形インサート側当接面64と当接する。各非側方割り出し間隙85は、割り出しラッチ54を中に配置させる。したがって、両回転方向におけるインサート中心軸A回りの切削インサート22の回転は、ラッチ側方面56のそれぞれと各非側方割り出し間隙85の間隙面86との間の接触によって防止される。1つ又は2つの側方割り出し間隙90を含む構成において、一方又は両方の側方割り出し間隙90は、それぞれの割り出しラッチ54を中に配置させることができる。側方割り出し間隙90は、一回転方向のみでのインサート中心軸A回りの回転を防止することに留意されたい。具体的には、第1の側方割り出し間隙90aは、(ホルダポケット26の上面図で)切削インサート22の時計回り方向での回転のみを防止し、第2の側方割り出し間隙90bは、切削インサート22の反時計回り方向での回転のみを防止する。
【0081】
ホルダポケット26の上面図(即ち、
図7)において、割り出しラッチ54が内側円筒形面PCを越えて割り出し間隙84に入ると、割り出し間隙84は、それぞれの割り出しラッチ54を中に配置させることを了解されたい。そのような場合、割り出し間隙84は、その割り出しラッチ54によって占められるとみなされる。同様に、同じ上面図において、割り出しラッチ54が内側円筒形面PCを越えて割り出し間隙84に入らない場合、割り出し間隙84には、それぞれの割り出しラッチ54がない。そのような場合、割り出し間隙84は、割り出しラッチ54によって占められないとみなされる。
【0082】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、各非側方割り出し間隙85、及び任意で各側方割り出し間隙90が存在する場合、それぞれの割り出しラッチ54から離間する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、2つのラッチ側方面56のうち多くとも1つは、間隙面86に当接させることができる。全ての構成において、各非側方割り出し間隙85、及び任意で各側方割り出し間隙90が存在する場合、それぞれの割り出しラッチ54を角度的又は軸方向に締め付けなくてよい。本明細書では、「当接」は、「締め付け」を必要とせず、このため、第1の部品は、第2の部品を締め付けずに、第2の部品に当接し得ることを理解されたい。
【0083】
切削インサート20を割り出す際、切削工具20は、第1の中間位置及び第2の中間位置を介して、2つの異なる締結位置、即ち、第1の締結位置と第2の締結位置との間で調節される。第1の締結位置の
図9を参照すると、保持ねじ28は、ポケットねじ孔78から部分的に抜かれている。保持ねじ28の径方向寸法は、インサート貫通孔52の径方向寸法未満である。したがって、切削インサート22は、複数のポケット側当接面88から離して配設することができ、各非側方割り出し間隙85がそれぞれの割り出しラッチ54によって占められないようにする。2つの側方割り出し間隙90を有する第1の任意の構成において、側方割り出し間隙90の少なくとも1つは、それぞれの割り出しラッチ54によって占められていない。1つの側方割り出し間隙90のみを有する第2の任意の構成において、側方割り出し間隙90は、占められていても、占められていなくてもよい。そのような上記の状態では、切削工具20は第1の中間位置にある。側方割り出し間隙90が割り出しラッチ54によって占められていない場合、切削インサート22は、インサート中心軸A回りで両方向に自由回転可能である。それ以外の場合、切削インサート22は、インサート中心軸A回りに一方向のみで自由回転可能である。図示するこの非限定的な例において、第1の側方割り出し間隙90aだけ、それぞれの割り出しラッチ54によって占められていない。
【0084】
図10を参照すると、切削工具20の第2の中間位置において、切削インサート22は、インサート中心軸A回りに回転し、このため、各非側方割り出し間隙85は、それぞれのインサート側当接面64と角度的に位置合わせされ、各ポケット側当接面88は、それぞれの割り出しラッチ54と角度的に位置合わせされる。明らかに、割り出し間隙84のいずれも、割り出しラッチ54を中に配置させていない。インサート中心軸A回りの切削インサート22を更に回転させると、各非側方割り出し間隙85がそれぞれの割り出しラッチ54と位置合わせされ、この段階で、各割り出しラッチ54が、対応する非側方割り出し間隙85に自由落下する。その後、保持ねじ28をしっかりと締めることにより、切削工具20の第2の締結位置が達成される。
【0085】
本出願の主題は、ある程度の詳細まで説明しているが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な代替形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。