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  • 特許-マイクロカプセルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】マイクロカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/16 20060101AFI20231019BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231019BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B01J13/16
A61Q5/00
A61Q13/00 102
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020554463
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019069690
(87)【国際公開番号】W WO2020020829
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】18185415.9
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラウシーヌ ワリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ バセ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ エシェナウシア
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/110638(WO,A1)
【文献】特開2015-108153(JP,A)
【文献】特開2016-123968(JP,A)
【文献】特表2002-513042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/02- 13/22
A61Q 5/00; 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル型マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、
a)少なくとも1つの疎水性活性成分を少なくとも1つの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーと混合して、油相を形成するステップと、
b)前記油相を、コロイド安定剤を含む水相に加えて、水中油型エマルションを形成するステップと、
c)前記多官能性1,1-二置換アルケンモノマーの界面重合の誘発に十分な条件を適用して、マイクロカプセルをスラリーの形態で形成するステップと
を含む方法において、窒素求核剤、硫黄求核剤、炭素求核剤、酸素求核剤、リン求核剤およびそれらの混合物からなる群から選択される求核性化合物である反応物を、ステップa)および/またはステップb)およびまたはステップc)で加え、前記多官能性1,1-二置換アルケンモノマーが、マロン酸メチレン、メチレンβ-ケトエステル、およびメチレンβ-ジケトンからなる群から選択される少なくとも1つの1,1-二置換アルケンを含む、方法。
【請求項2】
前記多官能性1,1-二置換アルケンモノマーが、共有結合した少なくとも3つのマロン酸メチレンを含む、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記多官能性モノマーが、O’,O’-(2-(((2-(エトキシカルボニル)アクリロイル)オキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイル)3-ジエチルビス(2-メチレンマロナート)、O”,O’,O-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)-3-トリエチルトリス(2-メチレンマロナート)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項または記載の方法。
【請求項4】
前記コロイド安定剤が、アラビアガム、加工デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アニオン性多糖類、アクリルアミドコポリマー、リグニンおよび誘導体、無機粒子ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記反応物が、キシリレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、L-リジン、L-リジンエチルエステル、O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコール、エチレンジアミン、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン、ジエチレントリアミン、スペルミン、スペルミジン、シスタミン、シスチン、シスチンジアルキルエステル、重炭酸アミノグアニジン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、ポリアミドアミン(PAMAM)、キトサン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、L-アルギニン、1,3-ジアミノプロパン、N-エチルグアニジンスルファート、1,6-ジアミノヘキサン、グアニジン塩、N,N,N’,N’-テトラキス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン、グアナゾール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、エタノールアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、トリス[2-(メチルアミノ)エチル]アミン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、フタル酸二カリウム塩、コハク酸二ナトリウム塩、ジチオトレイトール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、2,2’-チオジエタンチオールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記多官能性1,1-二置換アルケンモノマーを、前記油相の総質量に対して最大50質量%の量で加える、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記反応物を、前記水中油型エマルションの総質量に対して最大60質量%の量で加える、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記疎水性活性成分が、香油である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
性コアと、
- 少なくとも1つの重合済みの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーを含むシェルと
から構成される少なくとも1つのマイクロカプセルを含み、前記多官能性1,1-二置換アルケンモノマーが、マロン酸メチレン、メチレンβ-ケトエステル、およびメチレンβ-ジケトンからなる群から選択される少なくとも1つの1,1-二置換アルケンを含む、コアシェル型マイクロカプセルスラリー。
【請求項10】
(i)前記油性コアが香料を含む、請求項記載の香料マイクロカプセルスラリーと、
(ii)香料担体と香料ベースとからなる群から選択される少なくとも1つの成分と、
(iii)任意に少なくとも1つの香料アジュバントと
を含む、賦香組成物。
【請求項11】
- パーソナルケア用の活性ベースと、
- 請求項記載のマイクロカプセルまたは請求項10記載の賦香組成物と
を含み、パーソナルケア組成物の形態である、消費者製品。
【請求項12】
- ホームケアまたはファブリックケアの活性ベースと、
- 請求項記載のマイクロカプセルまたは請求項10記載の賦香組成物と
を含み、ホームケアまたはファブリックケア組成物の形態である、消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型マイクロカプセルの新規の製造方法に関する。マイクロカプセルも本発明の対象である。該カプセルを含む賦香組成物および消費者製品、特にホームケアまたはパーソナルケア製品の形態の香料入り消費者製品もまた、本発明の一部である。
【0002】
発明の背景
香料業界が直面している問題の1つは、特に「トップノート」の揮発性により、芳香性化合物によって提供される嗅覚上の利点が比較的急速に失われることにある。香料を含むマイクロカプセルなどの送達システムは、揮発性物質の放出速度を調整するために、コアのペイロードを保護し、後でトリガーを受けた際に放出することが必要である。これらのシステムに関する産業からの重要な要求は、物理的に分離したり劣化したりすることなく、困難なベース中での懸濁に耐えることである。これは、送達システムの安定性といわれている。例えば、高レベルの強力な界面活性洗剤を含む芳香性の個人用および家庭用クレンザーは、マイクロカプセルの安定性にとって非常に困難である。
【0003】
ポリ尿素およびポリウレタンベースのマイクロカプセルスラリーは、様々な基材に施与した後に長続きする心地よい嗅覚効果を提供するため、例えば香料産業で広く使用されている。これらのマイクロカプセルは、従来技術において広く開示されている(例えば、本出願人からの国際公開第2007/004166号または欧州特許出願公開第2300146号明細書を参照のこと)。
【0004】
マイクロカプセルは従来技術から知られているが、特に消費者製品における安定性の観点から、また疎水性物質送達の観点で良好な性能を提供することに関して、それらの性能について妥協することなく新規のマイクロカプセルを提供することが求められている。
【0005】
本発明は、マイクロカプセルの新規の製造方法に基づいて、上記の問題に対する解決法を提案するものである。
【0006】
発明の概要
ここで、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーと反応物とを、プロセス中に、好ましくは界面重合中に反応させてマイクロカプセルをスラリーの形態で形成することにより、少なくとも1つの疎水性物質を封入する安定なコアシェル型マイクロカプセルが得られることが見出された。
【0007】
本発明は、第1の態様では、コアシェル型マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、
a)少なくとも1つの疎水性物質を少なくとも1つの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーと混合して、油相を形成するステップと、
b)該油相を、コロイド安定剤を含む水相に加えて、水中油型エマルションを形成するステップと、
c)該多官能性1,1-二置換アルケンモノマーの界面重合の誘発に十分な条件を適用して、マイクロカプセルをスラリーの形態で形成するステップと
を含む方法において、反応物を、ステップa)および/またはステップb)および/またはステップc)で加える方法に関する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、上記で定義された方法により得ることができるコアシェル型マイクロカプセルスラリーに関する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、
- 液体コア、好ましくは油性コアと、
- 少なくとも1つの重合済みの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーを含むシェルと
から構成される少なくとも1つのマイクロカプセルを含むコアシェル型マイクロカプセルスラリーに関する。
【0010】
本発明のもう1つの対象は、
(i)油が少なくとも1つの疎水性物質を含む、上記で定義されたマイクロカプセルと、
(ii)担体と任意に補助成分とからなる群から選択される少なくとも1つの成分と、
(iii)任意に少なくとも1つのアジュバントと
を含む組成物である。
【0011】
- 活性ベースと、
- 上記で定義されたマイクロカプセルまたは組成物と
を含む消費者製品であって、パーソナルケア組成物またはホームケア組成物の形態である消費者製品も、本発明の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のマイクロカプセルの50℃でのTGAプロファイルである。
【0013】
発明の詳細な説明
「疎水性活性成分」とは、単一の化合物、または複数成分の組合せを意味する。
【0014】
「香油またはフレーバーオイル」とは、単一の賦香もしくはフレーバー付与化合物、またはいくつかの賦香もしくはフレーバー付与化合物の混合物を意味する。
【0015】
「消費者製品」または「最終製品」とは、消費者が配布、販売および使用する準備ができている製造品を意味する。
【0016】
明確にするために述べると、本発明における「分散液」という表現は、異なる組成の連続相に粒子が分散されている系を意味し、具体的には、懸濁液またはエマルションを含む。
【0017】
「多官能性モノマー」とは、集合体として、化学的に反応または結合してポリマーまたは超分子ポリマーを形成する分子を意味する。本発明の多官能性モノマーは、マイクロカプセルシェルを形成し得る少なくとも2つの官能基を有する。「シェル」および「壁」という用語は、本発明では区別することなく用いられる。
【0018】
界面重合中に少なくとも1つの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーを使用した場合に、安定したコアシェル型マイクロカプセルが得られることが見出された。
【0019】
マイクロカプセルスラリーの製造方法
第1の態様では、本発明は、コアシェル型マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、
a)少なくとも1つの疎水性物質を少なくとも1つの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーと混合して、油相を形成するステップと、
b)該油相を、コロイド安定剤を含む水相に加えて、水中油型エマルションを形成するステップと、
c)該多官能性1,1-二置換アルケンモノマーの界面重合の誘発に十分な条件を適用して、マイクロカプセルをスラリーの形態で形成するステップと
を含む方法において、反応物を、ステップa)および/またはステップb)および/またはステップc)で加える方法に関する。
【0020】
一実施形態によれば、コアシェル型マイクロカプセルスラリーの製造方法は、
a)少なくとも1つの疎水性物質を少なくとも1つの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーと混合して、油相を形成するステップと、
b)該油相を、コロイド安定剤を含む水相に加えて、水中油型エマルションを形成するステップと、
c)ステップb)の水中油型エマルションを反応物に加えて、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーの界面重合を誘発することで、マイクロカプセルをスラリーの形態で形成するステップと
を含む。
【0021】
本方法の一ステップにおいて、油相は、少なくとも1つの疎水性物質を少なくとも1つの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーと混合することによって形成される。
【0022】
1,1-二置換アルケン化合物の多官能性モノマー
一実施形態によれば、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーは、マロン酸メチレン、メチレンβ-ケトエステル、メチレンβ-ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルおよびそれらの混合物からなる群において選択される少なくとも1つの1,1-二置換アルケンを含む。
【0023】
もう1つの実施形態によれば、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーは、マロン酸メチレン、メチレンβ-ケトエステル、メチレンβ-ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルおよびそれらの混合物からなる群において選択される共有結合した少なくとも2つの1,1-二置換アルケンを含む。
【0024】
もう1つの実施形態によれば、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーは、マロン酸メチレン、メチレンβ-ケトエステル、メチレンβ-ジケトン、ジアルキル二置換ビニルおよびそれらの混合物からなる群において選択される共有結合した少なくとも3つの1,1-二置換アルケンを含む。
【0025】
多官能性1,1-二置換アルケンモノマーが少なくとも2つの1,1-二置換アルケンを含む場合、それらは、同じ性質のものであっても異なったものであってもよい。
【0026】
特定の一実施形態によれば、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーは、共有結合した少なくとも3つのマロン酸メチレンを含む。
【0027】
特定の一実施形態によれば、多官能性モノマーは、O’,O’-(2-(((2-(エトキシカルボニル)アクリロイル)オキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイル)3-ジエチルビス(2-メチレンマロナート)、O”,O’,O-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)-3-トリエチルトリス(2-メチレンマロナート)、2-エチル-2-(((2-メチレン-3-オキソブタノイル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(2-メチレン-3-オキソブタノアート)、O’,O-(1,4-フェニレンビス(メチレン))3-ジエチルビス(2-メチレンマロナート)、ベンゼン-1,3,5-トリイルトリス(メチレン)トリス(2-メチレン-3-オキソブタノアート)、ベンゼン-1,3,5-トリイルトリス(メチレン)トリス(2-メチレン-3-オキソペンタノアート)およびそれらの混合物からなる群において選択される。
【0028】
一実施形態によれば、少なくとも3つのマロン酸メチレンを含む多官能性1,1-二置換アルケンモノマーは、2つのマロン酸メチレンを含む多官能性1,1-二置換アルケンモノマーと組み合わせて使用される。
【0029】
本発明による方法で使用される多官能性モノマーは、油相の総質量に対して最大50質量%、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%で表される量で存在する。
【0030】
本発明で使用することができる多官能性1,1-二置換アルケンモノマーを得る方法に関して、特別な制限はない。
【0031】
一実施形態によれば、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーは、
a)エステル化によりエステルを製造するステップと、
b)マンニッヒ反応により1,1-二置換アルケン化合物を製造するステップと
を含む方法によって製造される。
【0032】
特定の一実施形態によれば、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーは、マロン酸メチレンであり、
a)塩化アシルおよびアルコールからマロン酸エステルを製造するステップと、
b)ステップa)のマロン酸エステルと、反応物、好ましくはホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド前駆体およびアンモニアまたは第一級もしくは第二級アミンとを反応させることにより、マンニッヒ反応によってマロン酸メチレンを製造するステップと
を含む方法によって製造される。
【0033】
第一級または第二級アミンは、好ましくはジイソプロピルアンモニウム2,2,2-トリフルオロアセタートである。
【0034】
当業者は、技術的知識に基づいてマンニッヒ反応を行うことができるであろう。
【0035】
本明細書で使用される場合、「マンニッヒ反応」とは、ホルムアルデヒドおよびアンモニアまたは任意の第一級または第二級アミンによる、カルボニル官能基の隣に配置された酸性プロトンのアミノアルキル化を意味する。
【0036】
一実施形態によれば、マンニッヒ反応は、ジイソプロピルアンモニウム2,2,2-トリフルオロアセタートとO,O’-(2-(((3-エトキシ-3-オキソプロパノイル)オキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイル)ジエチルジマロナートとの反応によるマロン酸メチレン生成物の生成を含む。
【0037】
本発明のもう1つの対象は、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーの製造方法であって、
a.塩化アシルおよびアルコールからマロン酸エステルを製造するステップと、
b.ステップa)のマロン酸エステルと、反応物、好ましくはホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド前駆体およびアンモニアまたは第一級もしくは第二級アミンとを反応させることにより、マンニッヒ反応によってマロン酸メチレンを製造するステップと
を含む方法である。
【0038】
疎水性物質
本発明による疎水性物質は、溶媒または活性成分のような「不活性」材料であり得る。
【0039】
特定の一実施形態によれば、疎水性物質は、疎水性活性成分である。
【0040】
「疎水性活性成分」とは、水と混合すると二相分散液を形成する疎水性活性成分(単一成分または複数成分の混合物)を意味する。疎水性活性成分は、約20℃で液体である。
【0041】
疎水性活性成分は、好ましくは、フレーバー、フレーバー成分、香料、香料成分、栄養補助食品、化粧品、害虫駆除剤、殺生物剤活性物質およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、香料と、栄養補助食品、化粧品、害虫駆除剤および殺生物剤活性物質からなる群から選択されるもう1つの成分との混合物を含む。
【0043】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、殺生物剤活性物質と、香料、栄養補助食品、化粧品、害虫駆除剤からなる群から選択されるもう1つの成分との混合物を含む。
【0044】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、害虫駆除剤と、香料、栄養補助食品、化粧品、殺生物剤活性物質からなる群から選択されるもう1つの成分との混合物を含む。
【0045】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は香料を含む。
【0046】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は香料からなる。
【0047】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、殺生物剤活性物質からなる。
【0048】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、害虫駆除剤からなる。
【0049】
本明細書中で「香料」(または「香油」ともいう)とは、約20℃で液体である成分または組成物を意味する。上記の実施形態のいずれか1つによれば、前述の香油は、賦香成分のみであってもよいし、賦香組成物の形態の複数成分の混合物であってもよい。「賦香成分」とは、本明細書では、匂いを付与または変調するという主な目的に使用される化合物を意味する。換言すれば、賦香成分であると見なされるべきそのような成分は、単に匂いを有するだけでなく、組成物の匂いを少なくともポジティブに、または心地よいものに付与または変調することができるものと当業者には認識されるはずである。本発明において、香油には、賦香成分と、該賦香成分の送達を一緒に改善、増強または変調する物質、例えば香料前駆体、エマルションまたは分散液との組合せ、ならびに匂いの変調または付与以外の追加の有益性、例えば長期性、ブルーミング作用、悪臭への対抗作用、抗菌作用、微生物安定性、害虫駆除性を付与する組合せも含まれる。
【0050】
油相中に存在する賦香成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づいて、用途および望ましい官能効果に応じてそれらを選択することができる。総じて、これらの賦香成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセタート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫複素環式化合物および精油などの様々な化学クラスに属し、前述の賦香補助成分は、天然由来のものであっても合成に由来するものであってもよい。これらの補助成分の多くは、いずれにせよ、S. Arctanderによる著書のPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版などの参照テキスト、または同様の性質の他の著作物に、また香料分野での多数の特許文献に列挙されている。前述の成分が、様々な種類の賦香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0051】
賦香成分は、香料産業で現在使用されている溶媒に溶解させることができる。溶媒は、好ましくはアルコールではない。このような溶媒の例としては、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(Eastmanより入手可能なロジン樹脂)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネンもしくは他のテルペン、またはイソパラフィンである。好ましくは、溶媒は、例えばAbalyn(登録商標)または安息香酸ベンジルのように非常に疎水性が高く、かつ高度に立体障害性を示す。好ましくは、香料は、30%未満の溶媒を含む。より好ましくは、香料は、20%未満、さらにより好ましくは10%未満の溶媒を含み、これらのパーセンテージはすべて、香料の総質量に対する質量により定められる。最も好ましくは、香水は、実質的に溶媒を含まない。
【0052】
「殺生物剤」という用語は、生物(例えば微生物)を殺傷するか、またはそれらの成長および/もしくは蓄積を低減もしくは防止することができる化学物質を指す。殺生物剤は、医学、農業、林業、ならびに例えば水、種子を含む農産物および油用パイプラインの腐敗が防止される産業で一般的に使用されている。殺生物剤は、殺真菌剤、除草剤、防虫剤、殺藻剤、軟体動物駆除剤、殺ダニ剤および殺鼠剤、ならびに/または抗菌剤、例えば殺菌剤、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤および/もしくは抗寄生虫剤を含む農薬であってよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、「害虫駆除剤」とは、害虫を撃退または誘引してそれらの成長、発達またはそれらの活性を低減、阻害または促進するのに役立つ物質を示す。害虫とは、動物、植物または真菌を問わず、植物や動物に侵入する、または害となるあらゆる生物を指し、害虫には、昆虫、特に節足動物、ダニ、クモ、真菌、雑草、細菌および他の微生物が含まれる。
【0054】
特定の一実施形態によれば、疎水性物質は、いかなる活性成分(香料など)も含まない。この特定の一実施形態によれば、疎水性物質は、水と混合すると二相分散液を形成し得る溶媒を含み、これは好ましくは、ミリスチン酸イソプロピル、トリグリセリド(例えば、Neobee(登録商標)MCT油、植物油)、D-リモネン、シリコーン油、鉱油、酢酸エチルおよびそれらの混合物であって、任意に、好ましくは1,4-ブタンジオール、ベンジルアルコール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、酢酸ベンジル、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセロール、グリコールエーテルおよびそれらの混合物からなる群において選択される他の溶媒と使用できるものからなる群で選択される。
【0055】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、疎水性物質は、ステップb)の後に得られた分散液の総質量に対して約10~60質量%、またはさらには20~45質量%を占める。
【0056】
特定の一実施形態によれば、油相は、実質的に、1,1-二置換アルケン化合物の多官能性モノマーと少なくとも1つの疎水性物質とからなる。
【0057】
本発明による方法のもう1つのステップにおいて、ステップa)の油相を、コロイド安定剤を含む水溶液に分散させて、水中油型エマルションを形成する。
【0058】
コロイド安定剤
本発明で使用されるコロイド安定剤は、分子コロイド安定剤または固体粒子であり得る。
【0059】
一実施形態によれば、コロイド安定剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、大豆タンパク質、カゼインナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、テンサイペクチン、加水分解大豆タンパク質、加水分解セリシン、シュードコラーゲン、バイオポリマーSA-N((INCI名:ヒアルロン酸(および)アルブミン(および)デキストラン硫酸塩;供給元Lipo Chemicals)、Pentacare-NA PF(INCI名:加水分解小麦グルテン(および)セラトニアシリクア(キャロブ)ガム(および)水(および)デキストラン硫酸ナトリウム(および)ビスヒドロキシエチルトロメタミン(および)フェノキシエタノール(および)エチルヘキシルグリセリン;供給元DSM Nutritional Products, LLC)、リグニン誘導体、例えばリグノスルホン酸塩およびそれらの混合物からなる群において選択されるイオン性コロイド安定剤である。
【0060】
もう1つの実施形態によれば、コロイド安定剤は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、加工デンプン、加工セルロース、多糖類、リグニンおよびそれらの混合物からなる群において選択される非イオン性乳化剤である。
【0061】
好ましい一実施形態によれば、コロイド安定剤は、アラビアガム、加工デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アニオン性多糖類、アクリルアミドコポリマー、リグニンおよび誘導体、無機粒子ならびにそれらの混合物からなる群において選択される。
【0062】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、エマルションは、少なくとも1つのコロイド安定剤を約0.1~5質量%含み、ここで、パーセンテージは、ステップb)の後に得られたエマルションの総質量に対する質量ベースで表現される。本発明のさらにもう1つの態様では、エマルションは、少なくとも1つのコロイド安定剤を約0.1~2質量%含む。
【0063】
エマルションは、高剪断混合によって製造され、所望の液滴サイズに調整することができる。エマルションの平均液滴サイズは、好ましくは1~1000ミクロン、より好ましくは1~500ミクロン、さらにより好ましくは5~50ミクロンで構成される。液滴サイズは、光散乱測定法または顕微鏡法で確認できる。この手順は当業者によく知られているため、本明細書ではより詳細な説明は不要である。
【0064】
本発明によれば、反応物を、ステップa)および/またはステップb)および/またはステップc)で加える。
【0065】
特定の一実施形態によれば、本方法のステップc)において、ステップb)の水中油型エマルションに反応物を加えて多官能性1,1-二置換アルケンモノマーの界面重合を誘発することで、マイクロカプセルをスラリーの形態で形成する。
【0066】
反応物
本発明で使用することができる反応物のうち、求核性化合物および/またはラジカル開始剤(すなわち、重合活性剤)を挙げることができる。
【0067】
本発明によれば、求核性化合物は、電子対を求電子体に供与して、反応に関する化学結合を形成する化学種と定義される。
【0068】
求核性化合物は、窒素求核剤、硫黄求核剤、酸素求核剤、炭素求核剤、リン求核剤およびそれらの混合物からなる群において選択することができる。
【0069】
窒素求核性化合物は、アンモニア、アジド、アミン、ニトリット、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、カルバジド、フェニルヒドラジン、セミカルバジドおよびアミドならびにそれらの混合物からなる群において選択される少なくとも1つの官能基を有し得る。
【0070】
硫黄求核性化合物は、硫化水素およびその塩、チオール(RSH)、チオラートアニオン(RS-)、チオールカルボン酸アニオン(RC(O)-S-)、およびジチオカーボナート(RO-C(S)-S-)およびジチオカルバマート(R2N-C(S)-S-)のアニオンならびにそれらの混合物からなる群において選択される少なくとも1つの官能基を有し得る。
【0071】
酸素求核性化合物は、水、水酸化物アニオン、アルコール、アルコキシドアニオン、カルボン酸アニオン、カーボナート、スルホナート、スルファート、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ砂、四ホウ酸ナトリウムおよびそれらの混合物からなる群において選択される少なくとも1つの官能基を有し得る。
【0072】
炭素求核性化合物は、エノール炭素求核剤、マロナートおよびアセトアセタートからなる群において選択される少なくとも1つの官能基を有し得る。
【0073】
リン求核性化合物は、ホスフィン、ホスファイトアニオンおよびそれらの混合物からなる群において選択される少なくとも1つの官能基を有し得る。
【0074】
特定の一実施形態によれば、反応物は、キシリレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、L-リジン、L-リジンエチルエステル、Jeffamine(登録商標)(O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコール)、エチレンジアミン、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン、ジエチレントリアミン、スペルミン、スペルミジン、シスタミン、シスチン、シスチンジアルキルエステル、重炭酸アミノグアニジン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、ポリアミドアミン(PAMAM)、キトサン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、L-アルギニン、1,3-ジアミノプロパン、N-エチルグアニジンスルファート、1,6-ジアミノヘキサン、グアニジン塩、N,N,N’,N’-テトラキス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン、グアナゾール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、エタノールアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、トリス[2-(メチルアミノ)エチル]アミン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、フタル酸二カリウム塩、コハク酸二ナトリウム塩、ジチオトレイトール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、2,2’-チオジエタンチオールおよびそれらの混合物からなる群において選択される。
【0075】
本発明で使用することができる最も一般的なクラスのラジカル開始剤は、過酸化物、アゾ化合物および過硫酸塩である。ラジカルは、熱または周囲の酸化還元条件によって生成可能である。
【0076】
マイクロカプセルの壁は、多官能性1,1-二置換アルケンモノマーと、好ましくはステップc)で加えられる反応物との界面重合による生成物である。
【0077】
反応物の使用量は、通常は、反応物の反応性基と1,1-二置換アルケンモノマーの反応性基とのモル比が、0.1~10、好ましくは1~5に構成されるように調整される。
【0078】
「反応物の反応性基」とは、先に定義された反応物の求核性基を意味する。
【0079】
「1,1-二置換アルケンモノマーの反応性基」とは、メチレン基を意味する。
【0080】
多官能性1,1-二置換アルケンモノマーの界面重合を誘発するために、特定の作用は必要ない。好ましくは、反応は、2~15時間、より好ましくは2~10時間保持される。速度論的反応を増加させるために、前述のステップは、60~80℃で構成される温度で、可能な限り圧力下で、1~4時間行うことができる。より好ましくは、前述のステップは、50~90℃で30分~4時間にわたって行われる。
【0081】
本発明の特定の一実施形態によれば、ステップc)の終わりに、またはステップc)の間に、カチオン性ポリマー、多糖類およびそれらの混合物から選択されるポリマーを本発明のスラリーに加えて、マイクロカプセルへの外部コーティングを形成することもできる。
【0082】
多糖ポリマーは、当業者によく知られている。好ましい非イオン性多糖類は、ローカストビーンガム、キシログルカン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチンならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0083】
カチオン性ポリマーは、当業者によく知られている。好ましいカチオン性ポリマーは、少なくとも0.5meq/g、より好ましくは少なくとも約1.5meq/gであるが、好ましくは約7meq/g未満、より好ましくは約6.2meq/g未満のカチオン電荷密度を有する。カチオン性ポリマーのカチオン電荷密度は、米国薬局方で窒素測定のための化学試験に記載されているようにケルダール法によって測定することができる。好ましいカチオン性ポリマーは、主ポリマー鎖の一部を形成し得るか、またはそれに直接結合した側鎖置換基が有し得る第1級、第2級、第3級および/または第4級アミン基を含む単位を含むものから選択される。カチオン性ポリマーの質量平均(Mw)分子量は、好ましくは10,000~3.5Mダルトン、より好ましくは50,000~1.5Mダルトンである。特定の一実施形態によれば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、4級化N,N-ジメチルアミノメタクリラート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、4級化ビニルイミダゾール(3-メチル-1-ビニル-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド)、ビニルピロリドン、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドをベースとするカチオン性ポリマーが使用される。好ましくは、コポリマーは、ポリクオタニウム-5、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-28、ポリクオタニウム-43、ポリクオタニウム-44、ポリクオタニウム-46、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドからなる群から選択される。市販品の具体例として、Salcare(登録商標)SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドとアクリルアミドとのカチオン性コポリマー、供給元:BASF)またはLuviquat(登録商標)、例えばPQ 11N、FC 550またはStyle(ポリクオタニウム-11~68またはビニルピロリドンの4級化コポリマー、供給元:BASF)またはさらにはJaguar(登録商標)(C13SまたはC17、供給元:Rhodia)が挙げられる。
【0084】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つによれば、約0~5質量%、またはさらには約0.1~2質量%で構成される上記の量のポリマーが加えられ、ここで、パーセンテージは、ステップc)の後に得られたスラリーの総質量に対する質量ベースで表現される。前述の添加されたポリマーの一部のみがマイクロカプセルシェルに組み込まれる/マイクロカプセルシェル上に堆積されることは、当業者に明確に理解される。
【0085】
マイクロカプセル粉末の製造方法
本発明のもう1つの対象は、マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、上記で定義されたステップと、ステップc)で得られたスラリーを噴霧乾燥のような乾燥に供して、マイクロカプセルをそのままで、すなわち粉末状で提供することからなる追加のステップd)とを含む方法である。そのような乾燥を行うために当業者に知られている任意の標準的な方法も適用可能であることが理解される。特に、スラリーを、好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、天然または加工デンプン、植物ガム、ペクチン、キサンタン、アルギン酸塩、カラゲナンまたはセルロース誘導体などのポリマー担体材料の存在下で噴霧乾燥することで、マイクロカプセルを粉末状で提供することができる。
【0086】
しかしながら、例えば押出、流動層、またはさらには国際公開第2017/134179号に開示されている特定の基準を満たす材料(担体、乾燥剤)を用いた室温での乾燥といった、他の乾燥方法も挙げられる。
【0087】
マイクロカプセルスラリー/マイクロカプセル粉末
本発明のもう1つの対象は、
- 液体コア、好ましくは油性コアと、
- 少なくとも1つの重合済みの多官能性1,1-二置換アルケンモノマーを含むシェルと
から構成される少なくとも1つのマイクロカプセルを含むコアシェル型マイクロカプセルスラリーである。
【0088】
上記の方法により得ることができるマイクロカプセルスラリーもまた、本発明の対象である。
【0089】
本発明のさらにもう1つの対象は、上記のマイクロカプセルスラリーを乾燥させることによって得られたマイクロカプセル粉末である。
【0090】
マイクロカプセルの製造方法について前述した実施形態が、前述したマイクロカプセルスラリー/粉末にも適用される。
【0091】
賦香組成物/消費者製品
本発明のもう1つの対象は、
(i)油が疎水性物質を含む、上記で定義されたマイクロカプセルと、
(ii)担体と任意に補助成分とからなる群から選択される少なくとも1つの成分と、
(iii)任意に少なくとも1つのアジュバントと
を含む、組成物である。
【0092】
本発明のもう1つの対象は、
(i)油性コアが香料を含む、上記で定義されたマイクロカプセルと、
(ii)香料担体、香料補助成分およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、
(iii)任意に少なくとも1つの香料アジュバントと
を含む、賦香組成物である。
【0093】
液体香料担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、または香料で一般的に使用される溶媒が挙げられる。香料に一般的に使用される溶媒の性質および種類の詳細な説明は、網羅できるものではない。しかしながら、非限定的な例として、最も一般的に使用されるジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノールまたはクエン酸エチルなどの溶媒が挙げられる。香料担体および香料補助成分の双方を含む組成物の場合、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、イソパラフィン、例えば商標Isopar(登録商標)(供給元:Exxon Chemical)で知られているもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えば商標Dowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)で知られているものも、前述したもの以外の適切な香料担体であり得る。「香料補助成分」とは、本明細書では、快楽効果を付与するために賦香調製物または組成物に使用される化合物であって、上記で定義されたマイクロカプセルではないものを意味する。換言すれば、賦香補助成分であると見なされるべきそのような補助成分は、単に匂いを有するだけでなく、組成物の匂いを少なくともポジティブに、または心地よいように付与または変調し得るものと当業者には認識されるはずである。
【0094】
賦香組成物中に存在する賦香補助成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づいて、用途および望ましい官能効果に応じてそれらを選択することができる。総じて、これらの賦香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセタート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫複素環式化合物および精油などの様々な化学クラスに属し、前述の賦香補助成分は、天然由来のものであっても合成に由来するものであってもよい。これらの補助成分の多くは、いずれにせよ、S. Arctanderによる著書のPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版などの参照テキスト、または同様の性質の他の著作物に、また香料分野での多数の特許文献に列挙されている。前述の補助成分が、様々な種類の賦香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0095】
「香料アジュバント」とは、本明細書では、色、特定の耐光性、化学的安定性などのさらなる追加の有益性を付与し得る成分を意味する。賦香ベースで一般的に使用されるアジュバントの性質および種類の詳細な説明は網羅できるものではないが、前記成分は当業者によく知られていることに言及しなければならない。
【0096】
好ましくは、本発明による賦香組成物は、上記で定義されたマイクロカプセルを0.1~30質量%含む。
【0097】
本発明のマイクロカプセルはまた、様々な香料入り消費者製品に加えることができる。
【0098】
特に、本発明のもう1つの対象は、(i)上記で定義されたマイクロカプセルと、(ii)少なくとも1つの賦香補助成分と、(iii)任意に香料アジュバントとを含む賦香組成物である。
【0099】
「賦香補助成分」とは、本明細書では、快楽効果を付与するために賦香調製物または組成物に使用される化合物であって、上記で定義されたマイクロカプセルではないものを意味する。換言すれば、賦香補助成分であると見なされるべきそのような補助成分は、単に匂いを有するだけでなく、組成物の匂いをポジティブにまたは心地よいように付与または変調し得るものと当業者には認識されるはずである。賦香組成物中に存在する賦香補助成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づいて、用途および望ましい官能効果に応じてそれらを選択することができる。総じて、これらの賦香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセタート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫複素環式化合物および精油などの様々な化学クラスに属し、前述の賦香補助成分は、天然由来のものであっても合成に由来するものであってもよい。これらの補助成分の多くは、いずれにせよ、S. Arctanderによる著書のPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版などの参照テキスト、または同様の性質の他の著作物に、また香料分野での多数の特許文献に列挙されている。前述の補助成分が、様々な種類の賦香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0100】
「香料アジュバント」とは、本明細書では、色、特定の耐光性、化学的安定性などのさらなる追加の有益性を付与し得る成分を意味する。賦香ベースで一般的に使用されるアジュバントの性質および種類の詳細な説明は網羅できるものではないが、前記成分は当業者によく知られていることに言及しなければならない。
【0101】
好ましくは、本発明による賦香組成物は、上記で定義されたマイクロカプセルを0.1~30質量%含む。
【0102】
本発明のマイクロカプセルは、有利に、多くの適用分野で使用することができ、消費者製品で使用することができる。マイクロカプセルは、液体消費者製品に適用可能な液体形態、ならびに粉末消費者製品に適用可能な粉末形態で使用することができる。
【0103】
香油性コアを含むマイクロカプセルの場合、本発明の生成物は、特に、ファインフレグランスまたは「機能性」香料に属する製品などの香料入り消費者製品に使用することができる。機能性香料には、特に、ヘアケア、ボディクレンジング、スキンケア、衛生ケアなどのパーソナルケア製品に加え、ランドリーケアやエアケアなどのホームケア製品が含まれる。したがって、本発明のもう1つの対象は、上記で定義されたマイクロカプセルまたは上記で定義された賦香組成物を賦香成分として含む香料入り消費者製品からなる。前記消費者製品の香料要素は、上記で定義された香料マイクロカプセルと、自由な状態の、または封入されていない香料と、本明細書に開示されたもの以外の種類の香料マイクロカプセルとの組合せであり得る。
【0104】
特に、本発明のもう1つの対象は、液体消費者製品であって、
- 少なくとも1つの界面活性剤を、該消費者製品の総質量に対して2~65質量%と、
- 水または水混和性の親水性有機溶媒と、
- 疎水性活性成分が香料を含む、上記で定義された賦香組成物またはマイクロカプセルと
を含む液体消費者製品である。
【0105】
また、粉末消費者製品であって、
- 少なくとも1つの界面活性剤を、該消費者製品の総質量に対して2~65質量%と、
- 疎水性活性成分が上記で定義された香料を含む、賦香組成物またはマイクロカプセル粉末と
を含む粉末消費者製品も本発明の一部である。
【0106】
したがって、本発明のマイクロカプセルは、香料入り消費者製品に、そのままで加えることも、本発明の賦香組成物の一部として加えることもできる。
【0107】
明確にするために述べると、「香料入り消費者製品」とは、それを適用する表面(例えば皮膚、毛髪、テキスタイル、紙または家庭の表面)に、または空気中(エアフレッシュナー、脱臭剤など)に、様々な有益性の中で賦香効果をもたらすことが期待される消費者製品を意味することに言及しなければならない。換言すれば、本発明による香料入り消費者製品は、「ベース」とも称される機能性配合物と、有益剤、そのうち有効量の本発明によるマイクロカプセルとを含む製造品である。
【0108】
香料入り消費者製品の他の成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅できるものではなく、当業者は、自身の常識に基づいて、該製品の性質および望ましい効果に応じてそれらを選択することができる。本発明のマイクロカプセルを組み込むことができる消費者製品のベース配合物は、そのような製品に関連する多数の文献に見出すことができる。これらの配合物は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅できるものではない。そのような消費者製品を配合する当業者は、自身の常識および入手可能な文献に基づいて適切な成分を完全に選択することができる。
【0109】
適切な香料入り消費者製品の非限定的な例は、パフューム、例えばファインパフューム、コロン、アフターシェーブローション、ボディスプラッシュ;ファブリックケア製品、例えば液体または固体洗剤、タブレットおよびポッド、布地用柔軟剤、乾燥機用シート、ファブリックリフレッシャー、アイロニングウォーターまたは漂白剤;パーソナルケア製品、例えばヘアケア製品(例えばシャンプー、ヘアコンディショナー、カラーリング調製剤またはヘアスプレー)、化粧品(例えばバニシングクリーム、ボディローションまたは脱臭剤もしくは制汗剤)またはスキンケア製品(例えば香料入り石鹸、シャワーもしくはバスムース、ボディウォッシュ、オイルもしくはジェル、バスソルトまたは衛生製品);エアケア製品、例えばエアフレッシュナーまたは「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー;またはホームケア製品、例えば汎用クリーナー、液体もしくは粉末もしくはタブレット状の食器洗浄用製品、トイレクリーナーまたは様々な表面を洗浄するための製品、例えばテキスタイルもしくは硬質表面(床、タイル、石床など)の手入れ/リフレッシュを目的としたスプレーおよびワイプ;衛生用品、例えば生理用ナプキン、おむつ、トイレットペーパーであり得る。
【0110】
本発明のもう1つの対象は、
- パーソナルケア用の活性ベースと、
- 上記で定義されたマイクロカプセルまたは上記で定義された賦香組成物と
を含み、パーソナルケア組成物の形態である消費者製品である。
【0111】
本発明のマイクロカプセルを組み込むことができるパーソナルケア用の活性ベースは、そのような製品に関連する多数の文献に見出すことができる。これらの配合物は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅できるものではない。そのような消費者製品を配合する当業者は、自身の常識および入手可能な文献に基づいて適切な成分を完全に選択することができる。
【0112】
パーソナルケア組成物は、好ましくは、ヘアケア製品(例えばシャンプー、ヘアコンディショナー、カラーリング調製剤またはヘアスプレー)、化粧品(例えばバニシングクリーム、ボディローションまたは脱臭剤もしくは制汗剤)またはスキンケア製品(例えば香料入り石鹸、シャワーもしくはバスムース、ボディウォッシュ、オイルもしくはジェル、バスソルトまたは衛生製品)からなる群において選択される。
【0113】
本発明のもう1つの対象は、
- ホームケアまたはファブリックケアの活性ベースと、
- 上記で定義されたマイクロカプセルまたは上記で定義された賦香組成物と
を含み、ホームケアまたはファブリックケア組成物の形態である消費者製品である。
【0114】
本発明のマイクロカプセルを組み込むことができるホームケアまたはファブリックケアベースは、そのような製品に関連する多数の文献に見出すことができる。これらの配合物は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅できるものではない。そのような消費者製品を配合する当業者は、自身の常識および入手可能な文献に基づいて適切な成分を完全に選択することができる。ホームまたはファブリックケア組成物は、好ましくは、布地用柔軟剤、液体洗剤、粉末洗剤、液体セントブースター、固体セントブースターからなる群において選択される。
【0115】
特定の一実施形態によれば、消費者製品は、布地用柔軟剤組成物の形態であり、
- 布地用柔軟剤活性ベースを85~99.9%と、
- 本発明のマイクロカプセルスラリーを0.1~15質量%、より好ましくは0.2~5質量%と
を含む。
【0116】
布地用柔軟剤活性ベースは、第4級アンモニウムのカチオン性界面活性剤、例えばジアルキルエステルジメチルアンモニウムクロリド(DEEDMAC)、TEAQ(トリエタノールアミン4級塩)、HEQ(ハンブルクエステル4級塩)およびそれらの混合物を含み得る。
【0117】
好ましくは、消費者製品は、本発明のマイクロカプセルを0.1~15質量%、より好ましくは0.2~5質量%を含み、ここで、これらのパーセンテージは、消費者製品の総質量に対する質量により定められる。当然のことながら、上記の濃度は、各製品に望まれる有益性効果に応じて適合させることができる。
【0118】
ここで、本発明を実施例によりさらに説明する。特許請求される本発明は、これらの実施例によって何ら限定を意図するものではないことが理解されよう。
【0119】
実施例
実施例1
O’,O’-(2-(((2-(エトキシカルボニル)アクリロイル)オキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイル)3-ジエチルビス(2-メチレンマロナート)モノマー合成(トリDEMM)
I O,O’-(2-(((3-エトキシ-3-オキソプロパノイル)オキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイル)ジエチルジマロナートの製造
【化1】
【0120】
2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(4.45g、33.2mmol)、エチルマロニルモノクロリド(21.23ml、166mmol)およびピリジン(13.41ml、166mmol)を、ジクロロメタン(491ml、7628mmol)/テトラヒドロフラン(82ml、995mmol)中で混合し、この溶液を20℃で12時間撹拌した。この混合物を飽和NHCl水溶液で洗浄し(2×)、乾燥させ(NaSO)、蒸発乾固させた。カラムクロマトグラフィー(SiO;CHCl/AcOEt 3:1)により、所望の生成物O,O’-(2-(((3-エトキシ-3-オキソプロパノイル)オキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイル)ジエチルジマロナート(15.5g、31.9mmol、収率96%)が、無色の油状物として得られた。
【0121】
II O’,O’-(2-(((2-(エトキシカルボニル)アクリロイル)オキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイル)3-ジエチルビス(2-メチレンマロナート)モノマー合成(トリDEMM)の製造
【化2】
無水THF(91ml、1109mmol)、O,O’-(2-(((3-エトキシ-3-オキソプロパノイル)オキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイル)ジエチルジマロナート(15g、31.5mmol)、2,2,2-トリフルオロ酢酸ジイソプロピルアンモニウム(20.33g、94mmol)、パラホルムアルデヒド(5.67g、189mmol)および2,2,2-トリフルオロ酢酸(0.723ml、9.44mmol)を、250mLの丸底フラスコに加えた。冷却器を加え、この懸濁液を2時間撹拌して還流させた。パラホルムアルデヒド(5.67g、189mmol)を加え、還流を6時間再開した。この反応物を室温に冷却し、試験用の油(重合用の支持体)を加え(38.90g)、THFを減圧下(45℃で300~50mbar)で除去した。この粗混合物をジエチルエーテル(250mL)に溶解させ、分液漏斗で綿を通して濾過した。有機層を、1M HCl(100mL)で2回洗浄した。水層を合し、ジエチルエーテル(50mL)で抽出した。有機層を合し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、黄色の油状物(70g)を得た。
【0122】
実施例2
O”,O’,O-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)-3-トリエチルトリス(2-メチレンマロナート)モノマー合成(芳香族トリDEMM)
I O,O’,O”-ベンゼン-1,3,5-トリイルトリエチルトリマロナートの製造
【化3】
【0123】
ベンゼン-1,3,5-トリオール(2g、15.86mmol)、エチルマロニルモノクロリド(10.15ml、79mmol)およびピリジン(6.41ml、79mmol)を、ジクロロメタン(235ml、3648mmol)/THF(39.0ml、476mmol)中で混合し、この溶液を20℃で12時間撹拌した。この混合物を濾過し、飽和NHCl水溶液で洗浄し(2×)、乾燥させ(NaSO)、蒸発乾固させた。カラムクロマトグラフィー(SiO;CHCl/AcOEt 3:1)により、所望の生成物が無色の油状物として得られた。
【0124】
II O”,O’,O-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)-3-トリエチルトリス(2-メチレンマロナート)モノマー合成(芳香族トリDEMM)の製造
【化4】
【0125】
無水THF(14.67ml、179mmol)、O,O’,O”-ベンゼン-1,3,5-トリイルトリエチルトリマロナート(2.38g、5.08mmol)、ジイソプロピルアンモニウム2,2,2-トリフルオロアセタート(3.28g、15.24mmol)、パラホルムアルデヒド(0.915g、30.5mmol)および2,2,2-トリフルオロ酢酸(0.117ml、1.524mmol)を、50mLの丸底フラスコに加えた。冷却器を加え、この懸濁液を2時間撹拌して還流させた。パラホルムアルデヒド(0.915g、30.5mmol)を加え、還流を6時間再開した。この反応物を室温に冷却し、試験用の油(重合用の支持体)を加え(5.97g)、THFを減圧下(45℃で300~50mbar)で除去した。この粗混合物をジエチルエーテル(40mL)に溶解させ、分液漏斗で綿を通して濾過した。有機層を、1M HCl(15mL)で2回洗浄した。水層を合し、ジエチルエーテル(8mL)で抽出した。有機層を合し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、黄色の油状物を得た。
【0126】
実施例3
2-エチル-2-(((2-メチレン-3-オキソブタノイル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(2-メチレン-3-オキソブタノアート)モノマー合成(トリアセトアセタート)
I 2-エチル-2-(((3-オキソブタノイル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(3-オキソブタノアート)の製造
【化5】
【0127】
トリメチロールプロパン(1.1g、8.20mmol)をキシレン(10ml、27.0mmol)に加え、この溶液を125℃に加熱する。2,2,6-トリメチル-4H-1,3-ジオキシン-4-オン(6.13g、41.0mmol)をゆっくり添加する(2.5ml/時間)。この混合物を、開いたフラスコ内で125℃に保つ。
【0128】
II 2-エチル-2-(((2-メチレン-3-オキソブタノイル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(2-メチレン-3-オキソブタノアート)(トリアセトアセタート)の製造
【化6】
【0129】
無水THF(14.90ml、182mmol)、2-エチル-2-(((3-オキソブタノイル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(3-オキソブタノアート)(1g、2.59mmol)、ジイソプロピルアンモニウム2,2,2-トリフルオロアセタート(1.671g、7.76mmol)、パラホルムアルデヒド(0.466g、15.53mmol)および2,2,2-トリフルオロ酢酸(0.059ml、0.776mmol)を、50mLの丸底フラスコに加えた。冷却器を加え、この懸濁液を2時間撹拌して還流させた。パラホルムアルデヒド(0.466g、15.53mmol)を加え、還流を6時間再開した。この反応物を室温に冷却し、試験用の油(重合の支持体)を加え(2.55g)、THFを減圧下(45℃で300~50mbar)で除去した。この粗混合物を酢酸エチル(25mL)に溶解させ(ジエチルエーテルには可溶でない)、分液漏斗で綿を通して濾過した。有機層を、1M HCl(15mL)で2回洗浄した。水層を合し、酢酸エチル(8mL)で抽出した。有機層を合し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、黄色の油状物を得た。
【0130】
実施例4
O,O’-(1,4-フェニレンビス(メチレン))3-ジエチルビス(2-メチレンマロナート)モノマー合成(芳香族ジDEMM)
I O,O’-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ジエチルジマロナートの製造
【化7】
【0131】
1,4-フェニレンジメタノール(2g、14.48mmol)、エチルマロニルモノクロリド(5.56ml、43.4mmol)およびピリジン(3.51ml、43.4mmol)をジクロロメタン(214ml、3329mmol)/テトラヒドロフラン(35.6ml、434mmol)中で混合し、この溶液を20℃で12時間撹拌した。この混合物を飽和NHCl水溶液で洗浄し(2×)、乾燥させ(NaSO)、蒸発乾固させた。カラムクロマトグラフィー(SiO;CHCl/AcOEt 3:1)により、所望の生成物が無色の油状物として得られた。
【0132】
II O,O’-(1,4-フェニレンビス(メチレン))3-ジエチルビス(2-メチレンマロナート)の製造
【化8】
【0133】
無水THF(35.5ml、433mmol)、O,O’-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ジエチルジマロナート(4.5g、12.28mmol)、ジイソプロピル2,2,2-トリフルオロアセタート(5.29g、24.57mmol)、パラホルムアルデヒド(1.475g、49.1mmol)および2,2,2-トリフルオロ酢酸(0.188ml、2.457mmol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。冷却器を加え、この懸濁液を2時間撹拌して還流させた。パラホルムアルデヒド(1.475g、49.1mmol)を加え、還流を6時間再開した。この反応物を室温に冷却し、試験用の油(重合の支持体)を加え(11.2g)、THFを減圧下(45℃で300~50mbar)で除去した。この粗混合物をジエチルエーテル(25mL)に溶解させ、分液漏斗で綿を通して濾過した。有機層を、1M HCl(15mL)で2回洗浄した。水層を合し、ジエチルエーテル(8mL)で抽出した。有機層を合し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、黄色の油状物(16g)を得た。
【0134】
実施例5
本発明によるマイクロカプセルの製造
マイクロカプセルA~Gを、以下のプロトコルに従って製造した。
【0135】
全般的プロトコル:
脱イオン水にアラビアガムSuperstab AA(供給元:Nexira、フランス)2質量%を溶解させることにより、安定剤の水溶液を製造する。別個の容器中で、香油A(表1を参照)または溶媒に、モノマー(実施例1で製造したもの(トリDEMM)、実施例2で製造したもの(芳香族トリDEMM)、実施例3で製造したもの(トリアセトアセタート)または実施例4で製造したもの(芳香族ジDEMM))を溶解させることにより、油相を調製する。この油相を水相に注ぎ、この混合物をウルトラタラックス溶解機で24000rpmで30秒間乳化させて、水中油型エマルションを形成する。このエマルションを、還流冷却器およびステンレス鋼撹拌機を取り付けたジャケット付き反応器に導入し、400rpmで撹拌する。フラスコ内で、トリス(2-アミノエチル)アミン(供給元:Alfa Aesar、スイス)の水溶液を製造し、これを水中油型エマルションに滴下する。この反応混合物を、室温で少なくとも2時間、または60℃で2時間撹拌する。最終生成物を、乳状の分散液として回収する。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
【表5】
【0141】
実施例6
元素分析によるシェルの組成
シェルを抽出し、元素分析により分析した。成分組成に基づく算出により、組成を推定した。
【0142】
【表6】
【0143】
この元素分析の結果は、カプセルのシェルに窒素が存在することを示している。このことは、膜が、トリス(2-アミノエチル)アミンとトリDEMMモノマーとの反応により得られたものであることを強調している。
【0144】
実施例7
50℃でのカプセルの性能
TGA:カプセルの性能を、微量天秤(精度:1μg)および内容積35mlの精密オーブンを備えた熱質量分析装置(TGA/SDTA851e、供給元:Mettler-Toledo、スイス)を使用して、20ml/分の一定の窒素流下で50℃で評価した。香料の蒸発を、時間の関数として測定した。マイクロカプセル分散液(10mg)を100μlのアルミナパンに導入した。50℃での測定を、25℃から開始して5℃/分で50℃とし、その後50℃で4時間停止した。プロファイルが長続きする香油の蒸発がより遅いことは、カプセルがより安定していることに関連していた。
【0145】
図1は、マイクロカプセルAが安定していることを示している。
【0146】
実施例8
布地用柔軟剤の組成
本発明のカプセルA、B、CまたはDを、表7に記載の布地用柔軟剤ベースに分散させて、封入された香油の濃度0.22%を得る。
【0147】
【表7】
【0148】
実施例9
液体洗剤の組成
本発明のカプセルA、B、CまたはDを、表8に記載の液体洗剤ベースに分散させて、封入された香油の濃度0.22%を得る。
【0149】
【表8】
【0150】
実施例10
リンスオフコンディショナー
本発明のカプセルA、B、CまたはDを、表9に記載のリンスオフコンディショナーベースに分散させて、封入された香油の濃度0.5%を得る。
【0151】
【表9-1】
図1