(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】皮膚バリア機能を改善するためのアンブロキソールの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20231019BHJP
A61K 8/68 20060101ALI20231019BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20231019BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20231019BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20231019BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231019BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231019BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20231019BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231019BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231019BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/68
A61K31/136
A61K31/164
A61K31/202
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/18
A61P43/00 105
A61Q19/00
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2020561603
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 US2019015137
(87)【国際公開番号】W WO2019147931
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-28
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520274024
【氏名又は名称】ノイレ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, スティーブン
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-137933(JP,A)
【文献】特開2016-121165(JP,A)
【文献】特開2013-241398(JP,A)
【文献】特表2008-520630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0161916(US,A1)
【文献】特開2013-099305(JP,A)
【文献】HAORAN Tai, et al.,Autophagy impairment with lysosomal and mitochondrial dysfunction is an important characteristic of oxidative stress-induced senescence,Autophagy,2017年,Vol.13, No.1,page.99-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/00-31/80
A61P 17/00-17/18
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において皮膚バリア機能を改善するための、アンブロキソールの低用量製剤を含む組成物であって、前記組成物が局所投与され、皮膚バリア機能を改善することを特徴と
し、アンブロキソールの前記低用量製剤が、0.1%(w/w)未満であり、前記改善された皮膚バリア機能は、
a.損傷後の皮膚バリア機能の回復を速めること;
b.未熟児もしくは高齢者においてしばしば起こるような、皮膚バリア回復における遅れを減少させること;
c.経上皮水分蒸散量(TEWL)を減少させる/防止すること;
d.皮膚における電解質喪失を減少させる/防止すること;
e.乾燥肌を減少させる/防止すること;
f.掻痒を減少させる/防止すること;
g.皮膚病変を減少させる/治癒させる/防止すること;
h.皮膚水和を増大する/改善すること;
i.外来性の損傷からの防御を改善すること;
j.セラミド(CER)および/もしくはグルコシル-セラミド生成を増大させること;
k.グルコシル-CERからCERへの変換を増大させること;
l.皮膚においてCERの量および/もしくは濃度を増大させること;
m.グルコセレブロシダーゼ活性を、基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層にいて増大させること;ならびに/または
n.加齢に際して皮膚の強さの喪失の全体的な割合を、一般に認められる、そのような減少をモニターする機能的メトリクスに従って、減少させること;
によって測定され、ここで(a)~(n)のうちのいずれか1つの増大または減少は、処置されていない状態と比較して、少なくとも10%の増大または減少である、組成物。
【請求項2】
前記皮膚バリア機能は、処置されていないコントロール被験体と比較して
、10
%まで改善される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記改善された皮膚バリア機能は
、
i.外来性の損傷からの防御
を改善することであって、前記外来性の損傷からの防御が、抗微生物バリア
であること;
j.セラミド(CER)および/もしくはグルコシル-セラミド生成を
、皮膚の基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層において増大させること;
k.グルコシル-CERからCERへの変換を
、皮膚の顆粒層および角質層において増大させること;
ならびに/または
l.皮膚において
、皮膚の角質層において、CERの量および/もしくは濃度を増大させること
;
によって
さらに測定され
る、請求項1または2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記角質層において増大したCERの濃度は、コレステロールおよび/もしくは遊離脂肪酸または他の適切なベンチマークの濃度と比較した場合より、少なくとも10
%高い、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記改善した皮膚バリア機能は、被験体において、皮膚の外見、皮膚の弾力性、健康的な皮膚の加齢および/または皮膚の水分を増大させるおよび/または改善することによって測定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記改善された皮膚バリア機能は、前記被験体において、皮膚の加齢、皮膚の加齢に関連する症状、および/または皮膚の加齢に関連する疾患を阻害するおよび/または軽減することによって測定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の投与は、加齢(もしくは早期老化)の徴候を軽減する、皮膚の加齢プロセスを減少させる、小じわおよび/もしくは皺の外見を軽減する、皮膚のたるみを減少させる、皮膚の弾力性もしくは柔軟性を改善するおよび/もしくは促進する、日光によるダメージを軽減する、皮膚伸展線条を軽減する、瘢痕の外見を軽減する、熱傷の外見を軽減する、欠
点の外見を軽減する、くまの外見を軽減する、加齢によるシミの外見を軽減する、ならびに/または腫れの外見を軽減する、皮膚の水分喪失を防止する、ならびに/あるいは水分の閉じ込めを増大させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、毛に塗布される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、アンブロキソールの
塩を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、セラミドをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記セラミドは、セラミドEOS、セラミドNS、セラミドNP、セラミドEOH、セラミドAS、セラミドNH、セラミドAP、セラミドAH、セラミドEOP、セラミドNdS、セラミドAdS、および/またはセラミドEOdSから選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記皮膚細胞内のオートファジーがまた誘導される、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物は、所定の期間にわたって数
回局所塗布される、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、少なくとも1年
間にわたって局所塗布される、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
アンブロキソールの前記低用量製剤濃度は
、0.01%(w/w)未
満である、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記被験体は、哺乳動物であ
る、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
皮膚バリア機能を改善することにおける使用のための局所用組成物であって、ここで前記組成物は、アンブロキソールの低用量製剤を含み、ここで前記低用量製剤は
、0.1%(w/w)未満
であり、前記皮膚バリア機能の改善は、
a.損傷後の前記皮膚バリア機能の回復を速めること;
b.未熟児または高齢者においてしばしば起こるような、皮膚バリア回復における遅れを減少させること;
c.経上皮水分蒸散量(TEWL)を減少させる/防止すること;
d.皮膚における電解質喪失を減少させる/防止すること;
e.乾燥肌、湿疹、および/もしくはアトピー性皮膚炎を減少させる/防止すること;
f.掻痒を減少させる/防止すること;
g.皮膚病変を減少させる/治癒させる/防止すること;
h.皮膚水和を増大させる/改善すること;
i.外来性の損傷からの防御を改善すること;
j.セラミド(CER)および/もしくはグルコシル-セラミド生成を増大させること;
k.グルコシル-CERからCERへの変換を増大させること;
l.皮膚においてCERの量および/もしくは濃度を増大させること;
m.グルコセレブロシダーゼ活性を、基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層にいて増大させること;ならびに/または
n.加齢に際して皮膚の強さの喪失の全体的な割合を、一般に認められる、そのような減少をモニターする機能的メトリクスに従って、減少させること;
o.被験体において皮膚の外見、皮膚の弾力性、健康的な皮膚の加齢および/もしくは皮膚の水分を増大させるおよび/もしくは改善すること
p.前記被験体において皮膚の加齢、皮膚の加齢に関連する症状、および/もしくは皮膚の加齢に関連する疾患を阻害するおよび/もしくは軽減すること;
q.加齢の徴候(もしくは早期老化)を減少させる、皮膚の加齢プロセスを減少させる、小じわおよび/もしくは皺の外見を軽減する、皮膚のたるみを減少させる、皮膚の弾力性もしくは柔軟性を改善するおよび/もしくは促進する、日光によるダメージを軽減する、皮膚伸展線条を軽減する、瘢痕の外見を軽減する、熱傷の外見を軽減する、欠点の外見を軽減する、くまの外見を軽減する、加齢によるシミの外見を軽減する、ならびに/または腫れの外見を軽減する、皮膚の水分喪失を防止する、ならびに/あるいは水分の閉じ込めを増大させること、
によって測定され、ここで(a)~(n)のうちのいずれか1つの増大または減少は、処置されていない状態と比較して、少なくとも10%である、局所用組成物。
【請求項18】
前記皮膚バリア機能の改善は
、
i.外来性の損傷からの防御
することであって、前記外来性の損傷は、抗微生物バリア
であること;
j.セラミド(CER)および/もしくはグルコシル-セラミド生成を
、皮膚の基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層において増大させること;
k.グルコシル-CERからCERへの変換を
、皮膚の顆粒層および角質層において増大させること;
ならびに/あるいは
l.皮膚において
、皮膚の角質層において、CERの量および/もしくは濃度を増大させること
;
によって
さらに測定され
る、請求項17に記載の局所用組成物。
【請求項19】
オートファジーは、前記皮膚細胞において誘導される、請求項17または18のいずれか記載の局所用組成物。
【請求項20】
前記CERの濃度は、コレステロールおよび/もしくは遊離脂肪酸ならびに/または他の適切なベンチマークの濃度(例えば、処置によって影響を及ぼされないことが公知である角質層における参照分子の濃度)と比較して、前記角質層において、前記処置前に存在した濃度より少なくとも10
%高く増大される、請求項19に記載の局所用組成物。
【請求項21】
前記製剤は、アンブロキソールの
塩を含む、請求項17~20のいずれか1項に記載の局所用組成物。
【請求項22】
前記組成物は、セラミドをさらに含む、請求項17~21のいずれか1項に記載の局所用組成物。
【請求項23】
前記セラミドは、セラミドEOS、セラミドNS、セラミドNP、セラミドEOH、セラミドAS、セラミドNH、セラミドAP、セラミドAH、セラミド9(EOP)、セラミドNdS、セラミドAdS、および/またはセラミドEOdSから選択される、請求項22に記載の局所用組成物。
【請求項24】
前記組成物は、ローション、スプレー、クリーム、シャンプー、セラム、エマルジョン、ゲル、オイル、マスク、エッセンス、トナーまたはペーストとして製剤化される、請求項17~23のいずれか1項に記載の局所用組成物。
【請求項25】
前記組成物は、必須脂肪
酸をさらに含む、請求項17~24のいずれか1項に記載の局所用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、被験体、好ましくはヒト被験体において皮膚バリア機能を改善するためのアンブロキソールの使用に関する。このような使用の例としては、皮膚水和の増大、化粧品用途、熱傷、瘢痕および/または発疹の軽減が挙げられる。本発明は、アンブロキソールの局所塗布によって、経上皮水分蒸散量(TEWL)を阻害するおよび/もしくは軽減すること、ならびに/または皮膚の表皮および/もしくは毛におけるセラミド(CER)の量および/もしくは濃度を増大させることにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の考察
以下の考察において、ある種の文献および方法は、背景および導入目的で記載される。本明細書に含まれるものは、先行技術の「自認」として解釈されるべきではない。出願人は、適切な場合、その本明細書で言及される文献および方法が、適用可能な法律上の条項の下で先行技術を構成しないことを示す権利を明らかに有する。
【0003】
皮膚の主な機能は、宿主の内部環境と環境による損傷(例えば、化学物質、紫外線、機械的損傷および病原性微生物)との間にバリアを形成することである。その皮膚の構造は、細胞の層および細胞由来組織から構成され、その最外層のセットは、表皮である。その表面層は、角質層といわれ、次に、以下のように内側に進んでいく:顆粒層、有棘層、基底層、および次に真皮層。さらに、手掌および踵は、角質層と顆粒層との間にさらなる層、淡明層を有する。皮膚および毛の機能および/または外見を改善するために、多くの製品が開発されている。
【0004】
例えば、2016年において、美容およびパーソナルケア市場は、5000億ドル近くの産業であった。環境による損傷(例えば、日光)への反復曝露は、皮膚の薄化、脆弱性および皺を引き起こす。より重篤な日光への曝露は、皮膚の弾力性の喪失、深い皺、増大した肌荒れおよび乾燥、ならびに色素沈着の変化(加齢によるシミ、シミ)を引き起こし得る。その皮膚はまた、深い溝によって特徴づけられる外見になって、がさがさになり(leathery)、肥厚化し得る。他の環境による損傷(例えば、化学物質が原因の熱傷および/または傷害)、ざ瘡またはウイルス感染(例えば、水痘)は、瘢痕化を引き起こし得、より重篤でかつ永久的な皮膚への損傷を生じる。
【0005】
さらに、疾患はまた、皮膚の外見において変化を引き起こし得る。例えば、狼瘡患者はしばしば、患者の顔面に拡がる「蝶形紅斑」といわれる特徴的な発疹を示す。
【0006】
さらに、その皮膚の、特に、環境ストレスに応答するおよび/または疾患に耐えるその能力に関する、強さおよび完全性は、概して年齢と共に低下する。
【0007】
皮膚損傷のタイプに拘わらず、その皮膚の外見を改善するとして市場に出されている多くの種々のスキンケア製剤が存在する。このような製剤の例としては、レチノール、ヒドロキシ酸(hydroxyl acid)、コエンザイムQ10、銅ペプチド、カイネチン、および/または茶抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。多くのクリーム、オイル、局所用製品および経口用製品が毎月送り出されているとしても、被験体の最大の器官-皮膚の機能を改善するにあたって、安全かつ有効な新しいレジメンの必要性が継続している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
この要旨は、以下の詳細な説明においてさらに記載される、単純化した形態での選り抜きの概念を紹介するために提供される。この要旨は、特許請求される主題の鍵となるまたは本質的な特徴を同定することが意図されるのでも、特許請求された主題の範囲を限定するために使用されることが意図されるのでもない。特許請求される主題の他の特徴、詳細、有用性、および利点は、添付の図面の中で図示され、添付の特許請求の範囲において規定されるそれら局面を含め、以下の書面による詳細な説明から明らかである。
【0009】
本発明は、皮膚バリア機能を改善するための、アンブロキソール組成物およびその使用に関する。具体的には、本発明は、有効量のアンブロキソールを被験体に投与することを包含する、被験体、好ましくはヒトの皮膚バリア機能を改善することに関する。アンブロキソールは、組成物として、被験体の皮膚および/または毛への局所送達のための他の構成要素とともに、投与され得る。好ましい実施形態において、アンブロキソールの低用量製剤を含む局所用組成物は、皮膚バリア機能を改善するために使用される。さらに好ましい実施形態において、皮膚バリア機能は、処置されていないコントロール被験体と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%まで改善される。
【0010】
皮膚のバリア機能は、
a.損傷後の皮膚バリア機能の回復を速めること;
b.未熟児もしくは高齢者においてしばしば起こるような、皮膚バリア回復における遅れを減少させること;
c.経上皮水分蒸散量(TEWL)を減少させる/防止すること;
d.皮膚における電解質喪失を減少させる/防止すること;
e.乾燥肌を減少させる/防止すること;
f.掻痒を減少させる/防止すること;
g.皮膚病変を減少させる/治癒させる/防止すること;
h.皮膚水和を増大する/改善すること;
i.外来性の損傷からの防御(例えば、抗微生物バリア)を改善すること;
j.セラミドおよび/もしくはグルコシル-セラミド生成を、好ましくは、皮膚の基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層において増大させること;
k.グルコシル-CERからCERへの変換を、好ましくは、皮膚の顆粒層および角質層において増大させること;
l.皮膚において、好ましくは、皮膚の角質層において、CERの量および/もしくは濃度を増大させること;
m.グルコセレブロシダーゼ活性を、皮膚の基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層において増大させること;または
n.加齢に際して皮膚の強さの喪失の全体的な割合を、一般に認められる、そのような減少をモニターする機能的メトリクスに従って、減少させること;
によって測定される場合、アンブロキソールの局所投与で改善され得、ここで(a)~(n)のパーセンテージの変化(すなわち、増大または減少)は、処置されていない状態と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%である。
【0011】
さらに好ましい実施形態において、本明細書で記載されるとおりのアンブロキソールの局所用製剤は、皮膚の加齢または損傷の症状(例えば、皺、細かな小じわ、変色、トーンの喪失、弾力性の喪失、薄化など)を、皮膚細胞内のオートファジーを活性化することによって処置する、改善する(reversing)および/または防止することを含め、皮膚の全体的な外見を改善するために使用され得る。
【0012】
アンブロキソール製剤の組成物は、局所塗布に適した種々の形態(例えば、化粧品、ローション、シャンプー、セラム、スプレー、スキンローション、およびクレンザー)において提供される。同様に、アンブロキソール製剤は、クレンザー、スプレーエッセンス、ローション、セラムおよびアンチエイジングナイトクリームを含むキットにおいて提供される。
【0013】
さらに、アンブロキソール製剤は、細胞レベルで毒素を除去する助けとするために、および皮膚の完全性をブーストして、以下を行う助けとするために使用され得る:
a.細胞損傷を防止する;
b.細胞損傷を修復する;
c.皮膚の構造ネットワークを再構築する、および修復する;
d.皮膚細胞機能を再活性化する(reinvigorate);ならびに/または
e.より健康に機能する細胞のために、損傷した細胞構成要素を修復する、除去する、および/もしくは再利用する。
【0014】
さらに好ましい実施形態において、本明細書で記載されるとおりのアンブロキソールの局所用製剤は、皮膚細胞内でオートファジーを誘導するために使用され得る。
【0015】
好ましい実施形態において、アンブロキソールの局所投与後に角質層において増大されるCERの濃度は、コレステロールもしくは遊離脂肪酸または他の適切なベンチマークの濃度と比較した場合より、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%または60%高い。
【0016】
皮膚バリア機能を改善することによって、皮膚および/または毛の外見はまた、改善される。このような改善としては、加齢の徴候(もしくは早期老化)を軽減する(例えば、皮膚の加齢プロセスを減少させる、小じわ(例えば、細かい小じわ)および/もしくは皺の外見を軽減する、皮膚のたるみおよび/もしくは欠陥を減少させる、ならびに/または皮膚の弾力性もしくは柔軟性を改善するおよび/もしくは促進するような)、ならびに/または皮膚における流体の保持を増大させるおよび/もしくは促進することが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態において、皮膚および/または毛の外見としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:日光によるダメージ(特に、UV照射誘導性酸化的ストレス/光損傷)、皮膚伸展線条、および/または瘢痕を軽減する、熱傷の外見を軽減する、欠点(例えば、ざ瘡)の外見を軽減する、くま、加齢によるシミおよび他の色素沈着症の外見を軽減する、皮膚の厚み、弾力性および/もしくはコラーゲン含有量の喪失を軽減する、乾燥肌および/もしくは腫れを軽減する、皮膚の水分喪失を防止する、ならびに/あるいは水分の閉じ込めを増大させる、ならびに/あるいは黒子、そばかす、および/もしくは肝斑を軽減する。局所投与はまた、毛へのアンブロキソールの塗布を含む。
【0017】
多くの医薬、化粧品、および炎症性皮膚疾患は、ケミカルピーリング、成分、殺虫剤、化学物質、界面活性剤、熱、レーザーリサーフェシング、レーザーを利用した脱毛および皮膚傷害に対する有害反応に加えて、色素沈着障害の原因であり得る。これらの色素沈着障害はまた、本明細書で記載されるように、アンブロキソールによって処置され得る。
【0018】
本明細書で記載されるとおりのアンブロキソールの局所投与の他の使用は、アトピー性皮膚炎、乾癬;局所トレチノインを使用する患者、未熟児、熱傷、および高齢者の処置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施形態において、アンブロキソール(その塩および特に薬学的に受容可能な塩を含む)のエナンチオマー、アナログ、エステル、アミド、プロドラッグ、または代謝産物は、使用され得る。好ましい実施形態において、アンブロキソールの塩は、塩酸塩である。
【0020】
好ましい実施形態において、アンブロキソールの局所投与は、低用量製剤で起こる。本明細書で使用される場合、「低用量製剤(low dose formulation)は、0.1%(w/w)未満、より好ましくは、0.01%(w/w)未満、およびさらにより好ましくは0.01%~0.09%(w/w)の間、およびさらにより好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の間、およびさらにより好ましくは0.0001~0.001%(w/w)の間、およびさらにより好ましくは0.00001~0.0001%(w/w)の間の濃度のアンブロキソールを含む。さらに好ましい実施形態において、局所投与のためのアンブロキソールの低用量製剤濃度は、約0.00001%(w/w)、0.00002%(w/w)、0.00003%(w/w)、0.00004%(w/w)、0.00005%(w/w)、0.00006%(w/w)、0.00007%(w/w)、0.00008%(w/w)、0.00009%(w/w)、0.0001%(w/w)、0.0002%(w/w)、0.0003%(w/w)、0.0004%(w/w)、0.0005%(w/w)、0.0006%(w/w)、0.0007%(w/w)、0.0008%(w/w)、0.0009%(w/w)、0.001%(w/w)、0.002%(w/w)、0.003%(w/w)、0.004%(w/w)、0.005%(w/w)、0.006%(w/w)、0.007%(w/w)、0.008%(w/w)、0.009%(w/w)、0.01%(w/w)、0.02%(w/w)、0.03%(w/w)、0.04%(w/w)、0.05%(w/w)、0.06%(w/w)、0.07%(w/w)、0.08%(w/w)、または0.09%(w/w)、ならびにこれらの低用量製剤濃度の任意の組み合わせで起こる。アンブロキソールがこのような低製剤濃度で皮膚バリア機能を改善し得ることは、予測外であり、文献中で示唆もされない
【0021】
アンブロキソールは、本明細書で記載されるとおりの局所投与のために他の化合物とともに製剤化され得る。例えば、アンブロキソール製剤は、セラミドを含み得る。このようなセラミドの好ましい例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:セラミド1(EOS)、セラミド2(NS)、セラミド3(NP)、セラミド4(EOH)、セラミド5(AS)、セラミド6(NH)、セラミド7(AP)、セラミド8(AH)、またはセラミド9(EOP)。
【0022】
さらなる実施形態において、本発明は、皮膚バリア機能を改善するためのアンブロキソールの長期使用を含み、上記方法は、治療上有効な量のアンブロキソールを局所投与する工程を包含し、ここで上記化合物の投与は、少なくとも、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、または10年間にわたる。アンブロキソールの投与は、所定の期間にわたって数回、例えば、1日に1回、1日に2回の用量、1日に3回、局所塗布され得る。
【0023】
さらに好ましい実施形態において、上記皮膚の外見(例えば、乾燥、瘢痕化、色素沈着症などに起因する)は、処置されていないコントロール被験体と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%まで改善または促進される。
【0024】
好ましい実施形態において、上記被験体は哺乳動物であり、なおさらに好ましい実施形態において、上記哺乳動物はヒトである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体において皮膚バリア機能を改善するための方法であって、ここで前記方法は、アンブロキソールの低用量製剤を含む組成物を局所投与して、皮膚バリア機能を改善する工程を包含する方法。
(項目2)
前記皮膚バリア機能は、処置されていないコントロール被験体と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%まで改善される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記改善された皮膚バリア機能は、
a.損傷後の皮膚バリア機能の回復を速めること;
b.未熟児もしくは高齢者においてしばしば起こるような、皮膚バリア回復における遅れを減少させること;
c.経上皮水分蒸散量(TEWL)を減少させる/防止すること;
d.皮膚における電解質喪失を減少させる/防止すること;
e.乾燥肌を減少させる/防止すること;
f.掻痒を減少させる/防止すること;
g.皮膚病変を減少させる/治癒させる/防止すること;
h.皮膚水和を増大する/改善すること;
i.外来性の損傷からの防御(例えば、抗微生物バリア)を改善すること;
j.セラミド(CER)および/もしくはグルコシル-セラミド生成を、好ましくは、皮膚の基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層において増大させること;
k.グルコシル-CERからCERへの変換を、好ましくは、皮膚の顆粒層および角質層において増大させること;
l.皮膚において、好ましくは、皮膚の角質層において、CERの量および/もしくは濃度を増大させること;
m.グルコセレブロシダーゼ活性を、基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層にいて増大させること;ならびに/または
n.加齢に際して皮膚の強さの喪失の全体的な割合を、一般に認められる、そのような減少をモニターする機能的メトリクスに従って、減少させること;
によって観察され、ここで(a)~(n)のうちのいずれか1つの増大または減少は、処置されていない状態と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の増大または減少である、項目1または2のいずれかに記載の方法。
(項目4)
前記角質層において増大したCERの濃度は、コレステロールおよび/もしくは遊離脂肪酸または他の適切なベンチマークの濃度と比較した場合より、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%または60%高い、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記改善した皮膚バリア機能は、被験体において、皮膚の外見、皮膚の弾力性、健康的な皮膚の加齢および/または皮膚の水分を増大させるおよび/または改善することによって測定される、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記改善された皮膚バリア機能は、前記被験体において、皮膚の加齢、皮膚の加齢に関連する症状、および/または皮膚の加齢に関連する疾患を阻害するおよび/または軽減することによって測定される、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記方法は、加齢(もしくは早期老化)の徴候を軽減する、皮膚の加齢プロセスを減少させる、小じわおよび/もしくは皺の外見を軽減する、皮膚のたるみを減少させる、皮膚の弾力性もしくは柔軟性を改善するおよび/もしくは促進する、日光によるダメージを軽減する、皮膚伸展線条を軽減する、瘢痕の外見を軽減する、熱傷の外見を軽減する、欠点(例えば、ざ瘡)の外見を軽減する、くまの外見を軽減する、加齢によるシミの外見を軽減する、ならびに/または腫れの外見を軽減する、皮膚の水分喪失を防止する、ならびに/あるいは水分の閉じ込めを増大させる、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記組成物は、毛に塗布される、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
組成物は、アンブロキソールの塩、好ましくは塩酸アンブロキソールを含む、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記組成物は、セラミドをさらに含む、項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記セラミドは、セラミドEOS、セラミドNS、セラミドNP、セラミドEOH、セラミドAS、セラミドNH、セラミドAP、セラミドAH、セラミドEOP、セラミドNdS、セラミドAdS、および/またはセラミドEOdSから選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記皮膚細胞内のオートファジーがまた誘導される、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
組成物は、所定の期間にわたって数回、例えば、1日に1回、1日に2回の用量、1日に3回、局所塗布される、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記組成物は、少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、または10年間にわたって局所塗布される、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
アンブロキソールの前記低用量製剤濃度は、
(a)0.1%(w/w)未満;
(b)0.01%(w/w)未満;
(c)0.01%~0.09%(w/w)の間;
(d)0.001%~0.01%(w/w)の間;
(e)0.0001~0.001%(w/w)の間;
(f)0.00001~0.0001%(w/w)の間;
(g)約0.00001%(w/w)、0.00002%(w/w)、0.00003%(w/w)、0.00004%(w/w)、0.00005%(w/w)、0.00006%(w/w)、0.00007%(w/w)、0.00008%(w/w)、0.00009%(w/w)、0.0001%(w/w)、0.0002%(w/w)、0.0003%(w/w)、0.0004%(w/w)、0.0005%(w/w)、0.0006%(w/w)、0.0007%(w/w)、0.0008%(w/w)、0.0009%(w/w)、0.001%(w/w)、0.002%(w/w)、0.003%(w/w)、0.004%(w/w)、0.005%(w/w)、0.006%(w/w)、0.007%(w/w)、0.008%(w/w)、0.009%(w/w)、0.01%(w/w)、0.02%(w/w)、0.03%(w/w)、0.04%(w/w)、0.05%(w/w)、0.06%(w/w)、0.07%(w/w)、0.08%(w/w)、もしくは0.09%(w/w)において;または
(h)(g)のうちのいずれかの組み合わせ、
である、項目1~14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記被験体は、哺乳動物であり、好ましくはヒトである、項目1~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
皮膚バリア機能を改善することにおける使用のための局所用組成物であって、ここで前記組成物は、アンブロキソールの低用量製剤を含み、ここで前記低用量製剤は、
(a)0.1%(w/w)未満;
(b)0.01%(w/w)未満;
(c)0.01%~0.09%(w/w)の間;
(d)0.001%~0.01%(w/w)の間;
(e)0.0001~0.001%(w/w)の間;
(f)0.00001~0.0001%(w/w)の間;
(g)約0.00001%(w/w)、0.00002%(w/w)、0.00003%(w/w)、0.00004%(w/w)、0.00005%(w/w)、0.00006%(w/w)、0.00007%(w/w)、0.00008%(w/w)、0.00009%(w/w)、0.0001%(w/w)、0.0002%(w/w)、0.0003%(w/w)、0.0004%(w/w)、0.0005%(w/w)、0.0006%(w/w)、0.0007%(w/w)、0.0008%(w/w)、0.0009%(w/w)、0.001%(w/w)、0.002%(w/w)、0.003%(w/w)、0.004%(w/w)、0.005%(w/w)、0.006%(w/w)、0.007%(w/w)、0.008%(w/w)、0.009%(w/w)、0.01%(w/w)、0.02%(w/w)、0.03%(w/w)、0.04%(w/w)、0.05%(w/w)、0.06%(w/w)、0.07%(w/w)、0.08%(w/w)、もしくは0.09%(w/w)において;または
(h)(g)のうちのいずれかの組み合わせ、
から選択される、局所用組成物。
(項目18)
前記皮膚バリア機能の改善は、
a.損傷後の前記皮膚バリア機能の回復を速めること;
b.未熟児または高齢者においてしばしば起こるような、皮膚バリア回復における遅れを減少させること;
c.経上皮水分蒸散量(TEWL)を減少させる/防止すること;
d.皮膚における電解質喪失を減少させる/防止すること;
e.乾燥肌、湿疹、および/もしくはアトピー性皮膚炎を減少させる/防止すること;
f.掻痒を減少させる/防止すること;
g.皮膚病変を減少させる/治癒させる/防止すること;
h.皮膚水和を増大させる/改善すること;
i.外来性の損傷からの防御(例えば、抗微生物バリア)を改善すること;
j.セラミド(CER)および/もしくはグルコシル-セラミド生成を、好ましくは、皮膚の基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層において増大させること;
k.グルコシル-CERからCERへの変換を、好ましくは、皮膚の顆粒層および角質層において増大させること;
l.皮膚において、好ましくは、皮膚の角質層において、CERの量および/もしくは濃度を増大させること;
m.グルコセレブロシダーゼ活性を、基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層にいて増大させること;ならびに/または
n.加齢に際して皮膚の強さの喪失の全体的な割合を、一般に認められる、そのような減少をモニターする機能的メトリクスに従って、減少させること;
o.被験体において皮膚の外見、皮膚の弾力性、健康的な皮膚の加齢および/もしくは皮膚の水分を増大させるおよび/もしくは改善すること
p.前記被験体において皮膚の加齢、皮膚の加齢に関連する症状、および/もしくは皮膚の加齢に関連する疾患を阻害するおよび/もしくは軽減すること;
q.加齢の徴候(もしくは早期老化)を減少させる、皮膚の加齢プロセスを減少させる、小じわおよび/もしくは皺の外見を軽減する、皮膚のたるみを減少させる、皮膚の弾力性もしくは柔軟性を改善するおよび/もしくは促進する、日光によるダメージを軽減する、皮膚伸展線条を軽減する、瘢痕の外見を軽減する、熱傷の外見を軽減する、欠点(例えば、ざ瘡)の外見を軽減する、くまの外見を軽減する、加齢によるシミの外見を軽減する、ならびに/または腫れの外見を軽減する、皮膚の水分喪失を防止する、ならびに/あるいは水分の閉じ込めを増大させること、
によって観察され、ここで(a)~(n)のうちのいずれか1つの増大または減少は、処置されていない状態と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%である、項目17に記載の局所用組成物。
(項目19)
オートファジーは、前記皮膚細胞において誘導される、項目17または18のいずれか記載の局所用組成物。
(項目20)
前記CERの濃度は、コレステロールおよび/もしくは遊離脂肪酸ならびに/または他の適切なベンチマークの濃度(例えば、処置によって影響を及ぼされないことが公知である角質層における参照分子の濃度)と比較して、前記角質層において、前記処置前に存在した濃度より少なくとも10%、20%、30%、40%、50%または60%高く増大される、項目19に記載の局所用組成物。
(項目21)
前記製剤は、アンブロキソールの塩、好ましくは塩酸アンブロキソールを含む、項目17~20のいずれか1項に記載の局所用組成物。
(項目22)
前記組成物は、セラミドをさらに含む、項目17~21のいずれか1項に記載の局所用組成物。
(項目23)
前記セラミドは、セラミドEOS、セラミドNS、セラミドNP、セラミドEOH、セラミドAS、セラミドNH、セラミドAP、セラミドAH、セラミド9(EOP)、セラミドNdS、セラミドAdS、および/またはセラミドEOdSから選択される、項目22に記載の局所用組成物。
(項目24)
前記組成物は、ローション、スプレー、クリーム、シャンプー、セラム、エマルジョン、ゲル、オイル、マスク、エッセンス、トナーまたはペーストとして製剤化される、項目17~23のいずれか1項に記載の局所用組成物。
(項目25)
前記組成物は、必須脂肪酸、好ましくはω-3またはω-6オイルをさらに含む、項目17~24のいずれか1項に記載の局所用組成物。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、100% ジメチルスルホキシド中のアンブロキソールでベースライン値に向かってTEWLが戻る時間経過の結果を示す。
【0026】
【
図2】
図2は、60% ジメチルスルホキシド:40% 水[v/v]の代替の製剤中のアンブロキソールでベースライン値に向かってTEWLが戻る時間経過の結果を示す。
【0027】
【
図3】
図3は、アンブロキソール濃度が20μM~2.0mMの範囲に及ぶ場合の、TEWLに対する種々のアンブロキソール濃度の効果を示す。
【0028】
【
図4】
図4は、公知のスフィンゴイド塩基および脂肪酸に基づく12のセラミドクラスを示す。
【0029】
【
図5】
図5は、いくつかのセラミドに関する化学構造および呼称を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
I.定義
以下の定義は、以下の書面による詳細な説明において使用される具体的用語について提供される。
【0031】
本明細書および請求項において使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」は、状況が別段明らかに規定しなければ、複数形への言及を含む。例えば、用語「1つの細胞(a cell)」とは、複数の細胞(その混合物を含む)を含む。用語「1つの核酸分子(a nucleic acid molecule)」とは、複数の核酸分子を含む。
【0032】
本発明は、本発明の構成要素および本明細書で記載される他の成分または要素「を含み(comprise)」得る(制限がない)かまたは「から本質的になり(consist essentially of)」得る。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、その記載される要素、または構造もしくは機能におけるそれらの均等物、加えて記載されていない任意の他の要素を意味する。用語「有する(having)」および「含む、包含する、が挙げられる(including)はまた、状況が別段示唆しなければ、制限がないものとして解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、本発明が、請求項の中に記載されるものに加えて、しかしそのさらなる成分が、その特許請求される発明の基礎的かつ新規な特徴を本質的に変化させない場合にのみ、成分を含み得ることを意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「被験体(subject)」は、脊椎動物であり、好ましくは、哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。哺乳動物としては、ネズミ科動物、類人猿、ヒト、家畜、競技用動物、および愛玩動物が挙げられるが、これらに限定されない。他の好ましい実施形態において、その「被験体」は、齧歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科動物(例えば、マウス)、イヌ科動物(例えば、イヌ)、ネコ科動物(例えば、ネコ)、ウマ科動物(例えば、ウマ)、霊長類、類人猿(例えば、サル(monkey)または類人猿(ape))、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)、または類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)である。他の実施形態において、非ヒト哺乳動物、特に、ヒトにおける治療有効性を示すためのモデルとして従来から使用されている哺乳動物(例えば、ネズミ科動物、霊長類、ブタ、イヌ科動物、またはウサギ動物)が使用され得る。好ましい実施形態において、「個体(individual)」または「患者(patient)」(処置の被験体におけるように)は、哺乳動物、特に、非ヒト霊長類、例えば、類人猿およびサル、および最も詳細には、ヒトを意味する。
【0034】
本明細書で理解されるように、本発明の局所用組成物の「有効量(effective amount)」とは、その被験体において有益な応答を誘発するために適した、例えば、皮膚バリア機能を改善する(例えば、皮膚水和、CER生成、および/もしくは皮膚の健康な加齢を増大させる、ならびに/または被験体においてTEWLを減少させる、のような)のための組成物の量に言及する。
【0035】
用語「用量(dose)」または「投与量(dosage)」とは、本明細書で使用される場合、被験体に投与するために適した物理的に不連続の単位であって、各投与量は、所望の応答を生じるために計算された活性な薬学的成分の所定の量を含むものに言及する。
【0036】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」とは、当業者によって決定されるように、特定の値(これは、その値がどのようにして測定または決定されるか、例えば、その測定システムの制限に一部依存する)に関する許容可能な範囲内を意味する。例えば、「約」は、所定の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、およびより好ましくはさらに1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関しては、その用語は、値の一桁以内、好ましくは、5倍以内、およびより好ましくは2倍以内を意味し得る。別段述べられなければ、用語「約」は、±1~20%、好ましくは±1~10%およびより好ましくは±1~5%のような、特定の値に関する許容可能な誤差範囲内を意味する。なおさらなる実施形態において、「約」は、±5%を意味することが理解されるべきである。
【0037】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の各間に入る値、およびその述べられた範囲における任意の他の述べられたかまたは間に入る値は、本発明の範囲内に包含されることは理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立してそのより小さな範囲の中に含まれ得、同様にその述べられた範囲の中の任意の具体的に排除される限定を条件として、本発明の範囲内に包含され得る。その述べられた範囲がその限界のうちの一方または両方を含む場合、それら含まれる限界のうちのいずれかまたは両方を排除する範囲はまた、本発明の中に含まれる。
【0038】
本明細書で使用される全てのパーセンテージおよび比は、別段本明細書で示されなければ、組成物全体の重量による。全ての温度は、別段特定されなければ、セルシウス温度単位である。行われる全ての測定は、別段指定されなければ、18~25℃の周囲空気温度、通常大気圧、および30~50%の相対湿度におけるものである。
【0039】
本明細書で記載される全ての範囲は、2つの値の「間の」範囲を記載するものを含め、端点を含む。「約」、「概して(generally)」、「実質的に(substantially)」、「およそ」などのような用語は、期間(term)または値を修飾し、その結果、その期間または値が絶対ではなく、先行技術では読み取れないと解釈されるべきである。このような用語は、それら用語が当業者によって理解されるように、それらが修飾する状況および用語によって規定される。これは、少なくとも、値を測定するために使用される所定の技術に関する予測される実験誤差、技術の誤差および機器の誤差の程度を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「および/または(and/or)」は、2またはこれより多くの項目のリストの中で使用されるときに、その列挙された特徴のうちのいずれか1つが存在し得ること、またはその列挙された特徴のうちの2もしくはこれより多くの任意の組み合わせが存在し得ることを意味する。例えば、本発明の組成物は、特徴A、B、および/またはCを含むと記載される場合、その組成物は、Aという特徴単独;B単独;C単独;AおよびBの組み合わせ;AおよびCの組み合わせ;BおよびCの組み合わせ;またはA、B、およびCの組み合わせを含み得る。
【0041】
用語「単離された化合物(isolated compound)」とは、その化合物が天然にともに存在する夾雑物もしくは細胞構成要素、または合成において使用される試薬もしくは合成の副生成物を実質的に含まない化合物を意味する。「単離された(isolated)」および「夾雑物を実質的に含まない(substantially free of contaminant)」とは、その調製物が技術的に純粋である(均質である)が、その調製物が治療的に使用され得る形態でその化合物を提供するために十分に純粋であることは意味しない。
【0042】
本明細書で使用される場合、「皮膚バリア機能(skin barrier function)」または「皮膚のバリア機能(skin’s barrier function)」とは、当該分野でのその使用法と一致して - 主に、外部危険要因(微生物による、化学的な、および/または機械的な損傷が挙げられる)から被験体を防御する皮膚(毛を含む)の機能を記載するために、使用される。本明細書で使用される場合、その皮膚バリア機能は、多くの方法によって測定され得る。その方法としては、以下が挙げられる:(a)損傷後の皮膚バリア機能を回復するために必要とされる時間量;(b)経上皮水分蒸散量(TEWL);(c)電解質喪失の量;(d)乾燥肌の量および/もしくは治癒時間;(e)掻痒の量および/もしくは治癒時間;(f)皮膚病変の量および/もしくは治癒時間;(g)皮膚水和の量;(h)外来性の損傷から被験体を防御する能力(例えば、抗微生物バリア);(i)セラミド(CER)および/もしくはグルコシル-CER生成の、好ましくは、皮膚の基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層における量および/もしくは効率;(j)グルコシル-CERからCERへの変換の、好ましくは皮膚の顆粒層および角質層における、変換量および/もしくは効率;(k)皮膚における、好ましくは皮膚の角質層におけるCERの量および/もしくは濃度;ならびに/または(l)基底層、有棘層、顆粒層、および/もしくは角質層におけるグルコセレブロシダーゼ(GCE)活性。皮膚バリア機能を測定するための方法は、周知であり、文献中に十分に記載されている。例えば、Antonov et al., 「Methods for the Assessment of Barrier Function」, Curr Probl Dermatol. Basel, Karger, 2016, vol 49, pp 61-70; Feingold and Elias 「Role of Lipids in the Formation and Maintenance of the Cutaneous Permeability Barrier」 Biochimica et Biophysica Acta 1841:280-294 (2014); Breiden and Sandhoff, 「The Role of Sphingolipid Metabolism in Cutaneous Permeability Barrier Formation」 Biochimica et Biophysica Acta 1841:441-452 (2014)ならびにそれらの中に引用される参考文献(それらは全て、それらの全体において参考として援用される)を参照のこと。
【0043】
「改善された皮膚バリア機能(improved skin barrier function)」を評価するために使用される生化学的手段の他に、本明細書で記載されるとおりのアンブロキソールの局所投与は、視覚的に、例えば、改善された美容上の加齢の徴候、あるいは加齢の徴候および/もしくは皮膚の変性の存在のリスクを軽減する、その発生を遅らせる、その進行を遅らせる、ならびに/またはその重篤度および/もしくはその発現を軽減する(ならびに加齢の徴候および/もしくは皮膚の変性の存在、発生または進行を防止する、が挙げられるが、これらに限定されない)手段によって、測定され得る。他の好ましい実施形態としては、皮膚の加齢プロセスを減少させること、小じわ(例えば、細かい小じわ)および/もしくは皺の外見を軽減すること、皮膚のたるみおよび/もしくは欠陥を減少させること、ならびに/または皮膚の弾力性もしくは柔軟性を改善するおよび/もしくは促進すること、ならびに/または皮膚における流体の保持を増大させるおよび/もしくは促進することが挙げられる。他の実施形態において、改善された皮膚バリア機能は、日光によるダメージ(特に、UV照射誘導性酸化的ストレス/光損傷)、皮膚伸展線条、および/もしくは瘢痕を軽減すること、熱傷の外見を軽減すること、欠点(例えば、ざ瘡)の外見を軽減すること、くま、加齢によるシミ、および他の色素沈着症の外見を軽減すること、皮膚の厚み、弾力性および/もしくはコラーゲン含有量の喪失を軽減すること、乾燥肌および/もしくは腫れを軽減すること、皮膚の水分喪失を防止すること、ならびに/または水分の閉じ込めを増大させること、ならびに/または黒子、そばかす、および/もしくは肝斑を軽減することによって、示され得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「オートファジー(autophagy)」とは、細胞構成要素を分解および再利用するための根本的プロセスを記載する。オートファジーの間に、損傷した、不必要な、機能不全の高分子およびオルガネラは分解され、新たな細胞構成要素を構築するために再利用される。特に、オートファジーによって、細胞において長寿命を有するタンパク質を調節、修復、および排除することが可能になり、従って、ヒトの皮膚の分化および加齢の間の細胞のホメオスタシスを促進する。オートファジーは、皮膚のケアにおいて役割を果たすと考えられる。さらに、アンブロキソールは、オートファジーを調節することが示された。例えば、PCT/US2018/042193(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0045】
本明細書で使用される場合、「セラミド(ceramide)」とは、アミド結合を介して脂肪酸へと結合体化されるスフィンゴイド塩基から構成される分子に言及し、12種の異なるサブクラスを含む(
図4に示される);これら12のサブクラスのうちの少なくとも11が、ヒトの皮膚と関連することが公知である。セラミドは、角質層(表皮の最外層)において見出される顕著な脂質であり、角質層における皮膚バリアの形成および保持において重要な機能を有する。疑似セラミドは、天然のセラミドに類似の構造を有する。バリア機能に必須の脂質を除去する界面活性剤によって引き起こされる皮膚損傷は、経上皮水分蒸散量(transdermal water loss)(TEWL)の増大を生じ、害されたバリア機能は、皮膚の全体の状態にとって否定的な結論を有する。損傷した皮膚バリアは、アトピー性皮膚炎または乾癬のような増大した皮膚の感受性および潜在的な刺激をもたらす。セラミドまたは疑似セラミド含有組成物の局所塗布は、アトピー性湿疹を緩和するにあたって有効である。セラミドまたは疑似セラミドはまた、細胞修復および増殖の促進を通じて創傷および潰瘍の治癒のような治療特性を示す。
【0046】
340を超える異なる種のセラミドが、脂肪酸のヘッド基の組成またはエステル化に基づいて分類されてきた。現在は、4種の異なるスフィンゴイド塩基および3種の異なるタイプの脂肪酸が存在する。
図5は、その異なるクラスのセラミドの化学的構造および呼称を概説する。Farwick et al. 「Developments in Ceramide Identification, Synthesis, Function and Nomenclature」, Cosmetics & Toiletries, Vol 124, No. 2 (2009)もまた参照のこと。本明細書で使用される場合、アンブロキソールとの組み合わせにおいて使用される好ましいセラミドとしては、セラミドEOS、セラミドNS、セラミドNP、セラミドEOH、セラミドAS、セラミドNH、セラミドAP、セラミドAH、セラミドEOP、セラミドNdS、セラミドAdS、および/またはセラミドEOdSから選択されるセラミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される場合、語句「美容上受容可能な送達ビヒクル(cosmetically acceptable delivery vehicle)」は、皮膚表面に塗布または送達される製剤の100% 重量を達成するために使用されるレベルで安全かつ非毒性と概して認識される、アンブロキソール製剤の活性成分以外の製剤の構成要素を記載するために使用される。美容上受容可能なビヒクルは、皮膚への塗布に適していることが当該分野で公知である任意の形態をとり得る。そのビヒクルは、水性層、オイル層、アルコール、シリコーン相またはこれらの混合物を含み得る。その美容上受容可能なビヒクルはまた、エマルジョンを含み得る。適切な美容上受容可能なビヒクルの非限定的な例は、米国特許第9,238,000号(発明の名称「Method of Improving Aging Appearance of Skin by Modulation of WIPI-1」;その教示は、本明細書に参考として援用される)に開示されている。
【0048】
本明細書で使用される場合、「クレンザー(cleanser)」とは、死滅した皮膚細胞を穏やかに剥離し、毛穴に詰まっている汚れ(impurities)を溶かし、レジメンの残りのために皮膚を滑らかにし、整えて準備するために、本明細書で記載されるとおりのアンブロキソールとともに製剤化される。クレンザー製剤の中に含まれ得るさらなる構成要素の例としては、過剰な油分およびくすませる汚れを穏やかに除去して、皮膚の肌理を再度整え(re-texturize skin)、毛穴を引き締める(tighten appearance of pore)ザクロ抽出物、ならびに炎症を軽減し、改善された肌理および心地よい使用感(after feel)のために必須脂質を補う椿オイルおよびローズヒップオイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される場合、「エッセンス(essence)」製品は、有害な環境ストレッサーから皮膚を防御し、皮膚を再水和し、滑らかにして整えるために、本明細書で記載されるとおりのアンブロキソールとともに製剤化される。エッセンスに添加され得るさらなる構成要素としては、環境汚染物質および攻撃因子(aggressor)から皮膚を防御し、それと同時に皮膚を水和しかつ滑らかにするpHバランスを整えるミストを達成する緑茶抽出物、および/または皮膚を解毒する一助となるオレンジ果皮オイルが挙げられるが、これらに限定されない一方で、ポリフェノール、白茶、ビタミンBおよびビタミンCを含む高強度抗酸化剤は、フリーラジカルからの終日の防御を提供する。さらに、栄養を供給する果実抽出物およびヒアルロン酸は、乾燥し、くすんだ皮膚を回復させ、腫れを軽減し、皺の形成を妨げるために、送達ビヒクルに添加され得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、本明細書で記載されるとおりのアンブロキソールとともに製剤化される「セラム製品(serum product)」とは、とりわけ、細胞再生を促進し、引き締まり(firmness)および弾力性を改善し、変色を軽減し、顔色を明るくし、スキントーンおよび肌理を向上させる。セラム製剤のさらなる構成要素としては、時間を経て自然に失われたものを皮膚に戻し、自己修復能力を与えるセラムを達成するオイル/水エマルジョン;皮膚再生を促進し、コラーゲンおよびエラスチン生成を支援し、引き締まりおよび弾力性を向上させる、プロバイオティクスおよびビタミンD3が挙げられ得る;甘草根、ナイアシンアミドおよびビタミンCは、シミを軽減し、目に見えて輝く顔色のためにスキントーンを明るくするためにその送達ビヒクルの中に含まれ得る。その使い心地の軽い(lightweight)処方および成分は、皮膚の特有のニーズに適合し、かつ輝度(luminosity)、弾力性および柔軟性を再び引き起こす。
【0051】
本明細書で使用される場合、「デイクリーム(day cream)」とは、UVAおよびUVBの広いスペクトルのSPF 30成分をも含み、赤みおよび炎症を軽減し、有害なフリーラジカルによるコラーゲン破壊を防止し、日中の水和を提供し、肌をふっくらとさせるために、アンブロキソールとともに製剤化され得る。添加され得る他の構成要素としては、水和および防御の精密なバランスを送達して、目に見える加齢の徴候と積極的に戦うデイクリームを達成するオイル/水エマルジョン、有害な紫外(UV)線およびフリーラジカルに対して防御し、それと同時に、皺と戦いかつ肌を目に見えてふっくらとさせるSPF 30(例えば、UVAおよびUVB広域スペクトルSPF 30成分)、ならびに/または日光の有害な光線から防御し、フリーラジカルを中和する抗酸化剤、コラーゲン生成を改善して、たるんだ肌を目に見えて引き上げかつ皺の始まりを防止するペプチドおよび植物幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。ヒアルロン酸および白キクラゲはまた、滑らかでふっくらとした肌を目指して深く水和するために、送達ビヒクルに添加され得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「ナイトクリーム(night cream)」は、天然のオイルで深く水分を閉じ込め、バランスをとり、顔の輪郭を引き上げ、引き締め、かつはっきりさせ(sculpt)、細かい小じわおよび皺の深さを軽減し、くすんで疲れた肌に再び活力を与えるために、アンブロキソールとともに製剤化される。ナイトクリーム製剤に添加され得る他の構成要素としては、睡眠の間に修復および再生を最大化するために必要とされる特有の支援を皮膚に提供するナイトクリームを達成する軽いオイル/水エマルジョンが挙げられるが、これらに限定されない。このような構成要素としては、乾燥してくすんだ肌を水和し、栄養を供給し、戦い、そしてバリア機能を改善する、アルガンオイル、ビタミンB5およびヒアルロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドは、ビタミンAおよびCとともに、引き締めを改善し、滑らかでふっくらとした肌を目指して細かい小じわおよび皺の外見を減らすコラーゲンおよびエラスチン生成を促進するために、その送達ビヒクルの中に含まれ得る。そのリッチで泡を立てたような肌触りは、皮膚の深くに栄養を供給し、一晩で顔の輪郭を再度くっきりとさせて、起床時の引き締まりおよび輝く顔色を生じさせる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ブースター(booster)」製品とは、例えば、目に見える小じわを低減し得、それと同時に皮膚の弾力性を増大させ得る、皮膚を劇的により若々しく演出するための皮膚オートファジーおよび/または皮膚バリア機能を効果的にアップレギュレートする助けとするために、アンブロキソールとともに製剤化される。ブースター製剤中の送達ビヒクルは、目に見える小じわを標的としかつ処置し、それと同時に皮膚の弾力性を増大させる、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンB3およびω-6オイルを含み得る。
【0054】
本発明の化合物
アンブロキソール(その化学名trans-4-(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジルアミノ)シクロヘキサノールによっても公知)は、表1に示されるとおりの構造を有する。本明細書で使用される場合、本明細書全体を通しての「アンブロキソール(ambroxol)」への言及は、アンブロキソールの全ての塩を含む。このような塩の一例は、表1にも示される塩酸塩である。
【表1】
【0055】
用語「塩(salt)」は、遊離酸または遊離塩基の付加塩を包含する。用語「薬学的に受容可能な塩(pharmaceutically-acceptable salt)」とは、薬学的適用における有用性を与える範囲内の毒性プロフィールを有する塩に言及する。薬学的に受容不能な塩は、にもかかわらず、本発明の実施において有用性(例えば、治療用化合物の合成、精製または製剤化のプロセスにおける有用性のような)を有する、高結晶性のような特性を有し得る。
【0056】
適切な薬学的に受容可能な酸付加塩は、無機酸からまたは有機酸から調製され得る。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、およびリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機酸は、脂肪族の酸、シクロ脂肪族の酸、芳香族の酸、芳香脂肪族(araliphatic)の酸、複素環式の酸、炭素環式の酸および有機酸のスルホン酸クラス(salfonic classes of organic acid)から選択され得、それらの例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボニン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギニン酸、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、粘液酸、シュウ酸、マロン酸およびガラクツロン酸が挙げられる。薬学的に受容不能な酸付加塩の例としては、例えば、過塩素酸塩およびテトラフルオロボレートが挙げられる。これらの酸付加塩の全ては、例えば、その適切な酸とアンブロキソールとを反応させることによって、その化合物から調製され得る。
【0057】
アンブロキソールの適切な薬学的に受容可能な塩基付加としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の塩を含む金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩および亜鉛塩のような)が挙げられる。薬学的に受容可能な塩基付加塩としてはまた、塩基性アミン(例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)およびプロカインのような)から作製される有機塩が挙げられる。薬学的に受容不能な塩基付加塩の例としては、リチウム塩およびシアン化物塩(cyanate salt)が挙げられる。これらの塩基付加塩の全ては、例えば、その適切な塩基とアンブロキソールとを反応させることによって、その化合物から調製され得る。
【0058】
アンブロキソール(その塩を含む)は公知であり、有機合成の分野の当業者に公知の方法によって調製され得る。例えば、米国特許出願公開番号US2004/0242700(その全体において本明細書に参考として援用される)は、アンブロキソールの調製のための合成プロトコールを提供する。
【0059】
局所用組成物
一局面において、本発明は、皮膚バリア機能を改善するために、局所投与のための薬学的に受容可能な賦形剤とともに治療上有効な量のアンブロキソールを含む組成物を包含する。アンブロキソールは、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、局所用組成物の形態で投与され得る。
【0060】
アンブロキソールは、疼痛の処置のために患者に局所的に使用されてきた。Kern and Weiser, 「Topical Ambroxol for the Treatment of Neuropathic Pain」, Der Schmerz, Suppl 3, 29: S89-96 (2015)を参照のこと。ここで、20% アンブロキソールを含む局所用製剤を、アンブロキソールが疼痛を緩和および/または排除するか否かを決定するために患者に対して試験した。その著者らは、この濃度における疼痛軽減が、33~100%の間であり、それらが臨床上関連しているとみなされることを報告した。重要なことには、その著者らは、アンブロキソールが全身の接触性皮膚炎を引き起こすことを他の症例報告が示唆するとしても、皮膚の変化は観察されないことを報告した。Monzon et al. , 「Ambroxol-Induced Systemic Contact Dermatitis Confirmed by Positive Patch Test」, Allergol Immunolpathol 37:167-169を参照のこと。従って、本出願の出願前に、アンブロキソールが、有害な皮膚変化を引き起こすか、または皮膚の外見に対して影響を有しないことのいずれかが文献中で公知であった。
【0061】
しかし、実質的に20%未満の用量が、実際には、皮膚の状態を改善することは、驚くべきことに予測外であった。皮膚バリア機能を改善するアンブロキソールの局所投与は、0.1%(w/w)未満、およびより好ましくは0.01%(w/w)未満、およびさらにより好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の間、およびさらにより好ましくは0.0001~0.001%(w/w)の間、およびさらにより好ましくは0.00001~0.0001%(w/w)の間の製剤濃度で起こり得ると考えられる。製剤濃度の範囲(全て、本明細書で記載されるとおりの0.1%(w/w)未満)はまた、具体的に企図される。アンブロキソールが、このような低製剤濃度で皮膚バリア機能を改善し得ることは、予測外であり、文献中で示唆されていない。
【0062】
「薬学的に受容可能なキャリア(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、その製剤の他の成分と適合性でありかつレシピエントに対して有害でない、任意のキャリア、希釈剤または賦形剤を意味する。その活性薬剤は、薬学的調製物の分野において標準的実務に従って投与形態へと製剤化され得る。Alphonso Gennaro, ed., Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版(1990), Mack Publishing Co., Easton, Paを参照のこと。アンブロキソールの調製物の例については、例えば、WO2005/007146の実施例1~8、またはその対応US2005/00148747(本明細書に参考として援用される)に開示される。
【0063】
局所投与のために、アンブロキソールは、適切なキャリアまたは希釈剤(例えば、水、水性緩衝液、オイル(特に、植物性オイル)、エタノール、生理食塩水溶液、水性デキストロース(グルコース)および関連する糖溶液、グリセロール、またはグリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール))と混合され得る。局所投与のための液剤は、好ましくは、その活性剤の水溶性の塩を含む。安定化剤、抗酸化剤および保存剤はまた、添加され得る。適切な抗酸化剤としては、スルファイト、アスコルビン酸、クエン酸およびその塩、ならびにEDTAナトリウムが挙げられる。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、およびクロルブタノール(chlorbutanol)が挙げられる。局所投与のための組成物は、水性または非水性の液剤、分散物、懸濁物またはエマルジョンの形態をとり得る。
【0064】
好ましい実施形態において、アンブロキソールは、アンブロキソールが皮膚の上側の層に透過することを可能にする溶媒とともに製剤化される。好ましい実施形態において、その溶媒は、有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシドのような)である。
【0065】
本発明に従う適切な透過促進剤は、尿素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒアルロン酸ナトリウム塩、アルカノール(例えば、ラウリルアルコールまたはオレイルアルコール)、アルカン酸(例えば、オレイン酸)、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはメタノール、ならびに以下の中から選択される他の透過促進剤である:1-アシルグリコシド、1-アシル-ポリオキシエチレン、1-アシル-サッカリド、2-n-アシル-シクロヘキサノン、2-n-アシル-l,3-ジオキソラン(SEPA)、1,2,3-トリアシル-グリセロール、1-アルカノール、1-アルカン酸、1-アルキル-アセテート、1-アルキル-アミン、1-アルキル-n-アルキル-ポリオキシエチレン、1-アルキル-アルキレート、n-アルキル-β-D-チオグリコシド、1-アルキル-グリセリド、1-アルキル-プロピレングリコール、1-アルキル-ポリオキシエチレン、1-アルキル-2-ピロリドン、アルキル-アセトアセテート、アルキレングリコール、アルキルメチルスルホキシド、アルキル-プロピオネート、アルキルスルフェート、ジアシルスクシネート、ジアシル-N,N-ジメチルアミノアセテート(DDAA)、ジアシル-N,N-ジメチルアミノイソプロピオネート(DDAIP)およびフェニルアルキルアミンである。
【0066】
局所用製剤はまた、少なくとも1種の賦形剤(例えば、充填剤、結合剤、保湿剤(humectant)、崩壊剤、溶解遅延剤(solution retarder)、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤(absorbent)または滑沢剤)と組み合わされ得る。
【0067】
アンブロキソールの低用量製剤を含む局所用組成物は、セラミド(これは当該分野で周知である)をさらに含み得る。例えば、Meckfessel and Brandt, 「The Structure Function and Importance of Ceramides in Skin and Their Use as Therapeutic Agents in Skin-Care Products」, J Am Acad Dermatol 2014;71:177-84(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと。さらに好ましい実施形態において、その局所用製剤は数回にわたって使用され、ある期間にわたって、例えば、1日用量または1週間もしくはこれより長い間にわたって1日に2回の処置の用量を与える。
【0068】
本明細書で記載されるとおりのアンブロキソールとともに製剤化され得るセラミドの例としては、セラミドEOS、セラミドNS、セラミドNP、セラミドEOH、セラミドAS、セラミドNH、セラミドAP、セラミドAH、セラミドEOP、セラミドNdS、セラミドAdS、および/またはセラミドEOdSが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
さらなる実施形態において、本発明は、被験体における長期の使用、ならびに/または皮膚の加齢プロセス、皮膚の加齢に関連する症状、および/もしくは皮膚の加齢に関連する疾患を処置する、阻害する、および/もしくは軽減する方法、ならびに/または皮膚バリア機能を、好ましくはヒトにおいて改善する方法を含み、その方法は、治療上有効な量のアンブロキソールを投与する工程を包含し、ここでその化合物の投与は、少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、または10年間にわたる。
【0070】
さらに好ましい実施形態において、皮膚バリア機能は、処置されていないコントロール被験体と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%まで改善される。さらに好ましい実施形態において、その皮膚バリア機能は、処置されていないコントロール被験体と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%改善される。皮膚バリア機能を測定する方法は、当該分野で周知であり、本明細書では具体的に上記の段落[0042~0043]に記載される。
【0071】
本発明の局所用組成物はまた、その中でアンブロキソールの遅延したまたは制御された放出を提供するように、例えば、所望の放出プロフィールを提供するために種々の割合のヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性の膜、浸透圧システム、多層被覆、微粒子、リポソームおよび/もしくはマイクロスフェアを使用して、製剤化され得る。これらの実施形態において、これらの製剤は、理想的には、皮膚バリア機能を改善するために適している。
【0072】
一般に、放出制御調製物は、必要とされる速度でアンブロキソールを放出して、所望の期間にわたって一定の薬理学的活性を維持し得る局所用組成物である。このような投与形態は、所定の期間の間に身体への薬物の供給を提供し、従って、従来の制御されていない製剤より長期間にわたって、アンブロキソールレベルをその治療範囲の中に維持する。
【0073】
その活性成分の放出制御は、種々の誘導因子(例えば、pH、温度、酵素、水、または他の生理学的条件)または化合物によって刺激され得る。種々の薬物放出機構が存在する。例えば、一実施形態において、その放出制御構成要素は、嚥下され得、患者への投与後にその活性成分を放出するために十分大きな多孔性の開口部を形成し得る。用語「放出制御構成要素(controlled-release component)」とは、本発明の状況において、その局所用組成物においてアンブロキソールの放出制御を容易にする化合物(例えば、ポリマー、ポリマーマトリクス、ゲル、透過性の膜、リポソームおよび/もしくはマイクロスフェア)として定義される。別の実施形態において、その放出制御構成要素は、生分解性であり、身体における水性環境、pH、温度または酵素への曝露によって誘導される。別の実施形態において、ゾル-ゲルが使用され得、ここでその活性成分は、室温において固体であるゾル-ゲルマトリクスへと組み込まれる。このマトリクスは、そのゾル-ゲルマトリクスのゲル形成を誘導するために十分高い体温を有する皮膚へと配置され、それによって、アンブロキソールを放出する。
【0074】
さらなる記載がなくとも、当業者は、前述の詳細な説明および以下の例証となる実施例を使用すれば、本発明の化合物を作製および利用でき、特許請求される発明を実施できると考えられる。従って、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘し、本開示の残りを限定するとは如何様にしても解釈されるべきではない。本明細書中の発明は、実施形態を参照して記載されてきたが、これらの実施形態、および本明細書で提供される実施例が、本発明の原理および適用の例証に過ぎないことは理解されるべきである。従って、多くの改変が、その例証となる実施形態および実施例に対して行われ得、他の取り合わせが、添付の特許請求の範囲によって規定されるとおりの本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、考案され得ることは、理解されるべきである。本明細書で引用される全ての特許出願、特許、文献および参考文献は、それらの全体において参考として援用される。
【実施例】
【0075】
実施例1. ジメチルスルホキシドによる破壊後の皮膚バリア機能の回復
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、角質層のセラミド含有脂質二重層を破壊し、それによって、皮膚の透過性バリアを混乱させることによって作用すると考えられる周知の皮膚透過エンハンサーである(Agner and Serup, Clin. Expt. Dermatology 14:214 [1989]; Notman et al Biophysical Journal 93:2056 [2007])。その多くの防御機能の中で、この脂質バリアは、経上皮水分蒸散量(TEWL)を調節し、哺乳動物における皮膚の乾燥の防止に必須である。従って、TEWLの測定値が、皮膚透過性バリアの完全性を直接アッセイするために使用され得ることは、その分野の研究者によって受け入れられている(Fluhr et al Experimental Dermatology 15:483 [2006])。
【0076】
アンブロキソールがTEWLを改善する(すなわち、水分喪失の速度を軽減する)能力を試験するために、アンブロキソール-HCl(MW 414.6, EPグレード, Shilpa Medicare Ltd., Raichur, Karnataka - 584 102, India)を、99.9% 純粋ジメチルスルホキシド(EPグレード, Heiltropfen, Germany)中で濃度2.0mM(0.075% 溶液[w/w])へと溶解した。DMSOおよび99.9% 純粋DMSO中のその2.0mM アンブロキソール溶液のうちの20μlのアリコートを、ヒト(成人男性)大腿部上部の皮膚の区画の上に拡げた;各場合にその溶液によって覆われた皮膚の面積は、およそ2cm2であった。全ての実験を、狭い範囲の相対湿度(30~40%)および18~22℃の安定な室温において行った。
【0077】
経上皮水分蒸散量(TEWL)測定値(g/m
2-h単位)を、その皮膚部位への溶液の塗布(t=0)後の種々の時点でとった。TEWL値を、小さな面積(約1.3cm
2)にわたる水分蒸散速度を自動的に計算するワイヤレス閉鎖チャンバシステム(VapoMeter, Delphin Technologies Ltd., Kuopio, Finland)を使用して評価した;各測定値を、約10秒とった(Fluhr et al Experimental Dermatology 15:483 [2006])。実験の開始前および実験の完了時に、隣接する処置していない皮膚領域のTEWL測定値を記録した;処置していない皮膚のベースラインTEWLは、その実験の過程の間に有意に変化しないことが見出された。全ての時点を、二連または三連で測定した。
図1は、この実験の結果を示す。「コントロール」(DMSOのみ)曲線および「2mM アンブロキソール」(2.0mM アンブロキソールを含むDMSO)曲線は両方とも、最初に、そのベースライン(処置前)TEWLに向かってゆっくりと戻る傾向を示し、その皮膚バリアの自然な破壊後の再確立を反映する(Agner and Serup, Clin. Expt. Dermatology 14:214 [1989])。しかし、塗布後約60分では、そのアンブロキソール曲線はTEWLの突然の低下を示し、これは、およそ30分間の期間にわたって皮膚バリア治癒の迅速なバーストを示す。TEWLの改善、その2つの曲線間の4~6g/m
2-hの差異は、次いで、その実験の残りの過程にわたってそれ自体を維持する。これは、塗布後60~90分間の間の経上皮水分蒸散量における改善のバーストが、その皮膚バリアにおける持続性の改善をもたらしたことを示す。[記号: 実線、DMSO(アンブロキソールなしのコントロール);一点短鎖線、DMSO中の2.0mM アンブロキソール;点線、処置部位に隣接した領域からの処置されていない皮膚。各点について、エラーバー(二連または三連の測定値の標準偏差)が示される;いくつかの点については、そのエラーバーは、見えづらい。なぜならそれらは、その点を表す記号の直径より小さかったからである]。
【0078】
実施例2. ジメチルスルホキシド含有水性製剤による破壊後の皮膚バリア機能の回復
代替の皮膚破壊薬剤(水性製剤を含む)を試験して、これがアンブロキソールの皮膚バリア回復特性に影響を及ぼし得るか否かを観察した。よって、アンブロキソールの2.0mM 溶液を、溶媒として60% DMSO(60:40 DMSO:水[v/v])混合物を使用して調製した。60% DMSOは、皮膚におけるセラミド含有脂質二重層を破壊するために必要とされるDMSOの最低濃度であると報告されている(Notman et al Biophysical Journal 93:2056 [2007])。
【0079】
実験条件は、DMSO:水(60:40 [v/v])中の2.0mM アンブロキソール溶液の10μl アリコートを、またはコントロールとしてDMSO:水溶液単独を大腿部上部領域のヒト皮膚の区画上に拡げたことを除いて、実施例1において使用されるものと本質的に同一であった。結果を
図2に示す。全ての時点を、二連または三連で測定した。
【0080】
図1に示される実験と同様に、コントロールおよびアンブロキソール処置した皮膚は両方とも、数時間の期間にわたってベースラインTEWLレベルへのゆっくりとした接近を示す。また、
図1に示される実験におけるように、DMSO:水製剤単独で処置した皮膚と比較して、アンブロキソール処置した皮膚の水分喪失の速度において、およそ5g/m
2-hの恒久的な改善がある。しかし、この場合、そのバーストが、その時間経過において、塗布後最初の1時間で、より速く起こる(実際の理由に関しては、このシリーズでの最も速い時点は、塗布後約40分であり、そのバーストは、その時点で既に始まっていた)。これは、アンブロキソール製剤を変更することによって、皮膚バリア改善の動態が調節され得ることを示す[記号: 実線、60:40(v/v) DMSO:水(アンブロキソールなしのコントロール);一点短鎖線、60:40(v/v) DMSO:水中の2.0mM アンブロキソール;点線、処置部位に隣接する領域からの処置されていない皮膚。各点について、エラーバー(二連または三連の測定値の標準偏差)が示される;いくつかの点については、そのエラーバーは、見えづらい。なぜならそれらは、その点を表す記号の直径より小さかったからである]。
【0081】
実施例3. TEWLに対するアンブロキソール投与量の効果
図3は、20μM、60μM、0.2mM、0.6mM、および2.0mMのアンブロキソール濃度を試験する用量範囲試験を示す。これらのさらなる濃度とは別に、条件および製剤(99.9% DMSO)は、この実験において10μlのアリコートを拡げ、その試験した皮膚領域が前腕手掌側であったことを除いて、実施例1に記載されるものと本質的に同じであった。
【0082】
図3におけるデータを、示される開始点(塗布後1時間)および終点(塗布後10時間)のみでヒストグラムとして表す。この実験については、2つのことが顕著である。1つは、他の実験とは対照的に、DMSO単独で処置したコントロール皮膚は、実施例1および2における実験で観察されたように、データ収集の10時間の時間範囲の間にベースラインに逆行しなかった;実際に、そのTEWLは、その期間の間にわずかに悪化したようであった。これは、大腿部上部の皮膚と比較して、前腕手掌側の皮膚の相対的な敏感さを反映し得、その結果、その同じ処置が、処置した皮膚領域に依存して、より厳しかった可能性も、あまり厳しくなかった可能性もある。この実験からの第2の顕著な結果は、2.0mMより遙かに低いアンブロキソール濃度すら、皮膚バリアに対するDMSO損傷に引き起こされたTEWLの増大を改善するという点で明確な結果を生じることであった。実際に、ミリモル未満の濃度のアンブロキソールは、いくつかの状況においてスキンケアの選択肢ですらあり得る[記号: 白抜きの矩形、塗布後1時間で測定した皮膚TEWL; 斜線付きの矩形、塗布後10時間で測定した皮膚TEWL; 破線、処置部位に隣接する領域からの処置されていない皮膚の平均TEWL値(7.8±1.1g/m
2-hr)。全ての測定値は、四連(n=4)または五連(n=5)でとった。各値に関して、エラーバーが示される(四連または五連の測定値の標準偏差)]。
【0083】
本明細書で引用される各々のおよびあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、それらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0084】
本発明は、具体的実施形態に言及して開示されてきたが、本発明の他の実施形態およびバリエーションが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのこのような実施形態および均等なバリエーションを含むと解釈されることが意図される。