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特許7369722工作機械のためにパレットを保管及び輸送するパレットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】工作機械のためにパレットを保管及び輸送するパレットシステム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20231019BHJP
   B23Q 7/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B23Q7/00 E
B23Q7/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020566756
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019067972
(87)【国際公開番号】W WO2020007969
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】102018211023.9
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506381599
【氏名又は名称】ディッケル マホ プロンテン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン リーデル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル トレンクル
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-056859(JP,A)
【文献】特開平11-300567(JP,A)
【文献】特開2016-165774(JP,A)
【文献】特開2014-083670(JP,A)
【文献】特開昭57-201156(JP,A)
【文献】特開平10-230438(JP,A)
【文献】特開平06-134658(JP,A)
【文献】特開2007-319951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00
B23Q 7/14
B23Q 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(M1、M2、M3)のためにパレットを保管及び輸送するパレットシステム(1、1’)であって、
少なくとも1つのパレット交換機(3、3’)と、
前記少なくとも1つのパレット交換機(3、3’)を第1の軸線(X)に沿って搬送及び案内する直線状のレールシステム(2、2’)と、
ワークピースをパレット(10、10’)上に配列する少なくとも1つの設置ステーション(4、4’)と、
パレット(10)を保管する複数の保管ステーション(5、5’)と、
を備え、
前記パレット交換機(3、3’)は、駆動部(33)によって前記レールシステム(2、2’)に沿って移動可能であり、
前記パレット交換機(3、3’)は、少なくとも1つのパレット収容部(32)を備え、該パレット収容部(32)は、前記第1の軸線(X)に対して0°、90°、180°、270°に対応する4つの好ましい角度位置の内の1つに向くように前記パレット交換機(3、3’)の垂直軸線(Z)の周りに回転可能であり、
前記パレット交換機(3、3’)は、前記パレット(10、10’)を前記パレット交換機(3、3’)に連結するとともに前記パレット(10、10’)を前記垂直軸線(Z)に垂直な方向において前記パレット交換機(3、3’)上に引っ張るように構成された、輸送機構(34)を有し、
前記パレット交換機(3、3’)は、複数の動作位置からパレット(10、10’)を拾い上げ、又は前記複数の動作位置のうちの1つにパレット(10、10’)を渡すように構成され、前記動作位置は、
前記少なくとも1つの設置ステーション(4、4’)と、
前記複数の保管ステーション(5、5’)と、
前記パレット(10、10’)上に配列された前記ワークピースを加工する少なくとも1つの加工位置と、
を含み、
前記パレット交換機(3、3’)は、パレット(10’)を拾い上げるために入れ子式
に延び出し可能なパレットフォークを備えるパレット持ち上げ機(36)を含み、
前記パレット交換機(3、3’)は、前記レールシステム(2、2’)に沿って前記パレット交換機が移動する間、拾い上げたパレットを変位位置に配置するように構成され、
前記変位位置は、前記パレット交換機(3、3’)上の中央に配置され
前記パレット収容部(32)上にはパレット(10)を搬送及び案内する2本のレール(31)が配列され、該2本のレール(31)の上又は間に、前記パレット(10、10’)を前記パレット収容部(32)上にある前記レール(31)に沿って輸送するように構成された、前記輸送機構(34)が配列され、
前記パレット収容部(32)は非対称であり、結果として前記レール(31)に沿って測定したとき、前記パレット収容部(32)の第1の端が、回転の前記垂直軸線(Z)から、前記パレット収容部(32)の前記第1の端とは反対側にある第2の端よりも大きく離れている、パレットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のパレットを保管及び輸送するためのパレットシステム(1’)であって、
前記パレットフォークは、前記パレット交換機(3、3’)と動作位置との間の距離を埋め合わせるために、第2の軸(Y)の方向に延び出し可能である、パレットシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパレットを保管及び輸送するパレットシステム(1、1’)であって、
前記複数の保管ステーション(5)は、前記レールシステム(2)の第1の長手方向側面に配列されている、パレットシステム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のパレットを保管及び輸送するパレットシステム(1、1’)であって、前記少なくとも1つの設置ステーション(4)は、前記レールシステム(2)の第1の長手方向側面とは反対側の第2の長手方向側面に配列されている、パレットシステム。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のパレットを保管及び輸送するパレットシステム(1)であって、前記直線状のレールシステム(2)は、少なくとも1本の支持レール(21)及び/又は上面に前記パレット交換機(3)の前記駆動部(33)が作用する少なくとも1本の駆動レール(22)及び/又は前記パレット交換機(3)の前記駆動部(33)に電気エネルギーを供給する少なくとも1本の電力レール(23)を備える、パレットシステム。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のパレットを保管及び輸送するパレットシステム(1)であって、前記少なくとも1つの設置ステーション(4)は、360度回転可能な回転板(43)上に配列され、パレット(10)を搬送及び案内する2本のレール(41)を備える、パレットシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のパレットを保管及び輸送するパレットシステム(1’)であって、前記保管ステーション(5’)は、それぞれ上下に配列された少なくとも2つの高さを有し、各高さは、パレット(10’)のために少なくとも2つの保管位置を備える、パレットシステム。
【請求項8】
請求項に記載のパレットを保管及び輸送するパレットシステム(1’)であって、前記パレット交換機(3’)は、パレット(10’)を持ち上げるために垂直な駆動部(37)を備える、パレットシステム。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のパレットを保管及び輸送するパレットシステム(
1、1’)を動作させる方法であって、前記パレット(10、10’)は、以下の方法ステップの組合せのみによって移動され、該方法ステップは、
前記パレット交換機(3、3’)を、前記第1の軸線(X)に沿って前記レールシステム(2、2’)上で移動させるステップと、
前記パレット(10、10’)を、第2の軸線(Y)に沿って移動させるステップと、
前記パレット収容部(32)を前記垂直軸線(Z)の周りに移動させるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のためにパレットを保管及び輸送するパレットシステム、並びにパレットシステムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のワークピースは、工作機械によるこれらの加工を自動化するために、通常パレット上に配列される。ワークピースをパレット上に配列するプロセスは、いわゆる設置ステーション(setup station)において実施される。パレットを加工のための1つ以上の工作機械に輸送するために、自動輸送システムを使用することができる。そのような輸送システムは、通常複数の保管位置(storage positions)も有し、保管位置にはワークピースを載せた又は載せていないパレットが、加工ステップの前、後又は合間に待機可能である。
【0003】
例えば、複数の保管位置と設置ステーションとを備える回転式の保管システムが既知である。保管位置及び設置ステーションは、中心にある回転式のパレット交換機(pallet changer)の周辺に円周方向に配列され、パレット交換機は、パレットを保管位置から拾い上げ、パレットを工作機械に移送することができる。そのような円形の保管システムには、保管位置の数が制限され、パレットを通常1つの工作機械にしか移送することができないという欠点がある。
【0004】
ワークピースを複数の工作機械によって加工するために直線式の保管システムが使用され、例えばこの保管システムでは、パレット交換機はレール上を移動可能に配列され、結果として、レールに沿って配列した多数の工作機械に到達することができる。既知のシステムでは、パレットをパレット交換機から工作機械に又は保管位置に移送するとき、パレット交換機と工作機械又は保管位置との間の距離を、例えば案内部を延ばすことによって埋め合わせる必要がある。システムによっては、パレット交換機と工作機械又は保管位置との間の高さの差を埋め合わせるために、持ち上げ運動も必要になる。これは、非常に大きな及び/又は非常に重いワークピースを加工するとき特に問題になることがある。
【0005】
特に寸法が数メートルの範囲にある体積が大きくかつ重いワークピースを加工することを意図する大型の機械では、パレットの輸送及び保管システムを備える生産ラインにおけるワークピースの自動加工は、今まで、制限された範囲内でしか実施することができない。加えて、パレットの寸法及びワークピースの重量のせいで、パレットを輸送する複雑な変位機構が、制限された範囲内でしか高い費用効果で実施することができない。
【0006】
特許文献1には、コンベアラインを備える様々な製造システムが記載されており、この製造システムでは、ワークピースは、パレット上の留め区域に留められ、コンベアラインによって1つ、幾つか又は全ての機械に次々に輸送される。この公報に記載されたコンベアラインの欠点は、一方では移送ステーションにおいて多数のパレット交換機が必要なことと、他方ではパレットを置くために持ち上げ運動が要求される、棚保管システムを使用することとである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第2754095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、既知のパレットシステムにおける問題を解決する、パレットを保管及び輸送するパレットシステムを提供することである。特に、大型の機械のための多数の大きなパレットを、設置面積を取らない様式で保管するとともに、多数の大きなパレットを、短い配送時間及び行路を維持しながら、完全に自動化された様式で多数の工作機械に供給することができる、パレットを保管及び輸送するパレットシステムを提供することを意図している。
【0009】
上記目的は、請求項1に記載のパレットを保管及び輸送するパレットシステム、及び請求項12に記載のパレットシステムを動作させる方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による工作機械のためにパレットを保管及び輸送するパレットシステムは、少なくとも1つのパレット交換機を第1の軸線の方向に搬送及び案内するために直線状のレールシステムを備えている。上記第1の軸線は、以下においてX軸線とも呼ぶ。本発明によるパレットを保管及び輸送するパレットシステムは、特に直線状の保管システムであり、ここで「直線状」という用語は、レールシステムの直線区間が湾曲区間によって互いに接続されることを排除しない。レールシステムを備える直線状の保管システムには、レールを延長することによって単純な様式で拡張することができるという長所がある。任意の数の保管位置、設置ステーション及び/又は工作機械を、こうしてレールシステムの2つの長手方向側面に配列することができる。保管位置、設置ステーション及び工作機械における加工位置は、以下ではまとめてパレットの動作位置と呼ぶ。さらに、特に著しく重い及び/又は大きなワークピースの場合、パレットは、直線状のレールシステム上で安全にかつ素早く輸送可能である。
【0011】
パレットを保管及び輸送するパレットシステムは、ワークピースをパレット上に配列する少なくとも1つの設置ステーションと、それぞれが少なくとも1つのパレットを保管可能な複数の保管ステーションとを備えている。設置ステーションは、ワークピースをパレット上で正確に配列するために使用する。保管ステーションは、空のパレット又はワークピースを載せたパレットを保管するために使用する。
【0012】
パレット交換機は、駆動部によってレールシステムに沿って移動することができる。駆動部は、特にレールシステムの少なくとも1本のレールに動作的に接続された電気モーターとすることができる。駆動部は、例えば、レール上に載り、パレット交換機を搬送及び/又は案内する、パレット交換機のホイール又はローラーに動作的に接続することができる。パレット交換機は、電気式駆動部によってレールシステムに非常に正確に位置決め可能である。
【0013】
パレット交換機は、パレットを動作位置から拾い上げ又はパレットを動作位置に渡すように構成されている。パレットを拾い上げ又は渡すプロセスを以下においてパレット交換とも呼ぶ。動作位置は、少なくとも1つの設置ステーションと、複数の保管ステーションと、パレット上に配列されたワークピースを加工する少なくとも1つの加工位置とを含む。特に、加工位置は工作機械の作業空間内にある。パレットは、このようにパレット交換機によって1つの動作位置から別の動作位置に輸送可能である。
【0014】
本発明によるパレットを保管及び輸送するパレットシステムは、特に大型の機械を備える製造システムで使用することができる。大型の機械は、著しく大きなかつ重いワークピースを加工可能な工作機械である。パレットの重さは数トン(1000kg)になることがある。例えば、テーブルの重さが最大で約10トン又は更には20トンにもなり得る、大型の機械が知られている。したがって、質量が数トンであるワークピースを載せたパレ
ットが、持ち上げ動作なしに拾い上げ、輸送及び渡すことが可能であれば有利である。本発明によるパレットを保管及び輸送するパレットシステムの場合、パレットは水平方向に移動するのみであり、結果として特に積載量が多いパレットでも拾い上げ、輸送し、渡すことが可能である。
【0015】
個々に又は互いに組み合わせて使用することができる、有利な実施形態及び更なる展開は、従属請求項の主題である。
【0016】
少なくとも1つの設置ステーションは、レールシステムの第1の長手方向側面に配列することが好ましい。複数の保管ステーションは、レールシステムの第1の長手方向側面とは反対側にある第2の長手方向側面に配列することが好ましい。設置ステーション及び保管位置を長手方向側面に配列することによって、利用可能な空間が特に効率的に使用可能である。複数の工作機械は、第1の長手方向側面に配列することが好ましい。
【0017】
設置ステーション及び/又は保管ステーションは、レールシステムの端面上にも配列可能である。特にこれは、後述する回転可能なパレット交換機によって可能になる。したがって、パレットシステムの構造のモジュール性を更に向上させることができ、その結果、据え付け場所、例えば機械室の所与の又は変動する境界条件に柔軟に対応することが可能である。材料の流れもこのような様式で最適化可能である。例えば、少なくとも1つの設置ステーションは機械室への入口に据え付けることができ、その結果、例えば設置ステーションは、パレット又はワークピースを備えるパレットをフォークリフトによって積載可能である。さらに、設置ステーション、保管ステーション及び工作機械の位置は、必要に応じて変更可能である。例えば、設置ステーション及び/又は保管ステーションは、工作機械の間に配列することもできる。
【0018】
パレット交換機は、その中心の垂直軸線の周りに回転することができる少なくとも1つのパレット収容部(pallet receptacle)を備える。パレット収容部は、このパレット収容部を回転させることによってパレットを動作位置から拾い上げ又は動作位置に渡し得るように整列されている。パレットを拾い上げること又は渡すことは、パレット収容部上に配列された輸送機器によって、パレットを、回転軸線に垂直なパレット収容部の主軸線に沿ってパレット収容部を越えて真っ直ぐに並進運動させることによって行うことが好ましい。
【0019】
輸送機構は、パレットの前面及び/又は底面とパレット交換機との間に、強制終了接続部(force-closed connection)を生成するように構成され、結果としてパレットは、パレットを動作位置から拾い上げ及び/又はパレットを動作位置に渡すために、輸送機器の駆動部によってパレット収容部のパレットレールに沿って移動可能である。
【0020】
本発明によるパレットシステムは、1つ以上のパレット交換機を備えることができる。複数のパレット交換機がある場合、それらは、レールシステム上で互いに無関係に移動可能である。さらに、好ましい実施の形態では、パレット交換機は、2つ以上の回転可能なパレット収容部を有することができ、それらのパレット収容部は、パレットを互いに無関係に拾い上げ又は渡すことができる。特に、2つのパレット交換機は、互いにパレットを拾い上げ又はパレットを渡すことができる。そのような動作は、2つのパレット収容部を備えるパレット交換機によって行うことも可能である。複数のパレット交換機を備えるパレットシステムは、複数のパレット交換を同時に実施可能であり、その結果、製造工場の生産性が向上し得る。例えば、第2のパレット交換機が、まだ以前に工作機械から除去されたパレットを別の動作位置に輸送するプロセスにある間に、工作機械には第1のパレット交換機によって新しいパレットを積載可能である。特に、複数のパレット交換機は、こうしてそれらが仕事をできるだけ効率的にかつ相乗作用的に行うように協調させた様式で
制御される。
【0021】
本発明によるパレットシステムは、特にパレット交換機を、回転可能な収容部及び収容部上にあるパレット用の輸送機構及び直線状のレールシステムと組み合わせたおかげで、特に据え付け面積に関する限り空間を取らない。その理由は、まずパレットが直線状のレールシステムに沿って長い距離移動可能であり、次いでパレット交換機が、単なる回転移動により、パレット収容部上に設けたレールを設置ステーション又は保管ステーションのレールと整列させることによって工作機械、設置ステーション又は保管ステーションに直接接続可能であり、次いで、収容部上に設けた輸送機構を使用して、パレットを直線運動によってパレット交換機上で移動させ、設置位置、保管位置又は工作機械の作業空間内の加工位置にパレットを到らせるためである。こうして、従来技術において慣習的である交換機のパレット収容部全体を移動させる追加的な直線状の輸送システムを省略することができ、かなりの省スペース効果につながる。こうして、直線状のレールシステムは、設置ステーションに又は工作機械に非常に接近して位置決めすることができ、その理由は、次いでパレットをパレット交換機から工作機械又は保管ステーション若しくは設置ステーションに配送する、複雑かつ場所を取る追加の輸送システムのための空間が必要とされないからである。
【0022】
好ましい輸送機構は、保持具と、保持具を移動させるチェーン駆動部とを備える。チェーン駆動部は、少なくとも2つのプーリーにわたって案内されるチェーンを備えることが好ましい。プーリーの回転運動は、チェーン駆動部によってチェーンの並進運動に変換可能である。チェーン上に配列された保持具は、並進運動をパレットに伝達する。
【0023】
パレット交換機の動作時、パレット収容部をその回転軸線の周りに回転させることによって、パレット収容部は、4つの好ましい角度位置のうちの1つに向けられる。角度位置は、それぞれX軸線に対するパレット収容部の主軸線の角度を示す。パレット交換機をレールシステムに沿って移動させるとき、パレット収容部は、X軸線に沿った向きにすることが好ましい。この位置は、0度又は180度の角度に対応する。パレットを渡し又は拾い上げるとき、パレット収容部は、通常X軸線と垂直に向けられる。以下において、X軸線に垂直な軸線はY軸線とも呼ぶ。パレット収容部のこの位置は、したがって90度又は270度の角度に対応する。パレット収容部が回転可能であることにより、レールシステムの長手方向側面に配列されず端面上にある動作位置を実現することもできる。パレットを拾い上げ又は渡すとき、パレット収容部は、対応してX軸線に沿って向けられる。
【0024】
パレットを搬送及び案内する2本のレールをパレット収容部上に配列することが好ましい。これらのレールは、以下においてパレットレールとも呼ばれる。パレットレールは、パレット収容部の主軸線と平行に延びている。パレットは、パレットレールと動作的な接続状態になる、対応する部品を備える。例えば、パレットは、パレットをパレットレールに沿って案内する案内ローラーを備えることができる。さらに、パレットは、パレットをパレットレール上で搬送するホイール又はローラーを備えることができる。保管ステーション、少なくとも1つの設置ステーション及び工作機械の加工位置は、対応するパレットレールを有する。パレットを渡し又は拾い上げるとき、パレット交換機のパレットレールは、それぞれの動作位置のパレットレールに沿った向きにされ、結果としてパレットは、単純な並進運動によって、パレット交換機から動作位置まで移送可能であり又は動作位置からパレット交換機まで移送可能である。パレットレールの整列は、単にレールシステム上におけるパレット交換機の並進運動及びパレット収容部の回転運動によって実施することが好ましい。
【0025】
設置ステーションのパレットレールは360度回転可能な回転板上に配列することが好ましい。ワークピースは、工作機械内で加工するために整列するように、回転板を回転さ
せることによってパレット上で釣合い可能である。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態では、パレット収容部は非対称であり、結果としてレールに沿って測定したとき、パレット収容部の第1の端が、回転軸線に対して、パレット収容部の第1の端とは反対側にある第2の端よりも大きく離れている。パレット収容部が非対称な構成であるおかげで、角度位置0度及び180度と角度位置90度及び270度とは互いに区別可能である。パレットを拾い上げ又は渡すとき、パレットの並進運動は、常に第1の端を越えて起こることが好ましい。第2の端を越えるパレットの移動は起こらないことが好ましい。
【0027】
直線状のレールシステムは、パレット交換機を搬送する少なくとも1つの支持レール及び/又は上面にパレット交換機の駆動部が作用する少なくとも1つの駆動レール及び/又はパレット交換機の駆動部に電気エネルギーを供給する少なくとも1つの電力レールを備えることが好ましい。レールシステムは少なくとも2本の支持レールを備え、支持レールのうち少なくとも1本は、駆動レール及び/又は案内レールとして同時に使用可能である。好ましい実施の形態では、駆動レールは、パレット交換機の駆動部の歯付きホイールが動作的に接続される、歯付きラックを備えることができる。支持レールは、例えば、クレーンレール、ヴィニョル(Vignoles)レール又は溝付きレールの形態にすることができる。レールシステムのレールは、例えば、機械室の床板又は土台の止め部上に置くことができる。電力レールの代わりに、エネルギーチェーンを使用して、パレット交換機に電気エネルギーを供給することもできる。好ましい実施の形態では、レールシステムは、支持レールの代わりに標準的な直線状の案内部を有することもできる。レール又は直線案内部は、例えば溶接フレームに取り付けることができる。
【0028】
本発明の更なる態様によれば、保管ステーションは、それぞれ垂直方向で上下に配列された少なくとも2つの高さを有することができ、各高さは、パレットのために少なくとも2つの保管位置を備えている。このように、利用可能な領域により増加した数の保管スロットを設け得るように、パレットの棚保管システムを実装することができる。
【0029】
複数の高さを有する棚保管システム内の保管位置にパレットを保管するため、又はパレットを複数の高さにおける保管位置から拾い上げるために、好ましいパレット交換機は、パレットを持ち上げるために垂直な駆動部を備える。特に、パレット持ち上げ機は、垂直な駆動部によって上下に移動可能である。この目的のために、パレット交換機は、垂直方向に配列された案内レールを備えることができる。垂直な駆動部による持ち上げ運動は、Z軸線と平行に行うことが好ましい。
【0030】
好ましい実施の形態では、パレット交換機は、パレットを拾い上げるために入れ子式に延び出し可能なパレットフォークを有する、パレット持ち上げ機を備えている。パレットフォークは、特にパレット交換機とパレットの動作位置との間の距離を埋め合わせるために、Y軸線の方向に延び出し可能にすることができる。
【0031】
本発明による目的は、パレットシステムを動作させる方法によっても達成される。本方法によれば、パレットは以下の方法ステップの組合せのみによって移動され、方法ステップは、パレット交換機を第1の軸線に沿ってレールシステム上で移動させるステップと、パレットを第2の軸線に沿って移動させるステップと、パレット収容部を垂直軸線の周りに回転させるステップとを含み、個々の方法ステップは数回実施可能である。
【0032】
以下において、更に有利な構成を、図面に示す例示的な実施形態に基づきより詳しく説明するが、本発明はそれらに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の例示的な実施形態によるパレットシステムの斜視図である。
図2】構成が変更された第1の例示的な実施形態によるパレットシステムの平面図である。
図3】(a)はパレットの底面図であり、(b)はパレットの断面図である。
図4】(a)はパレット交換機の斜視図であり、(b)はパレット交換機の正面図である。
図5】(a)設置ステーションの斜視図であり、(b)設置ステーションの断面図である。
図6】(a)保管ステーションの斜視図であり、(b)は保管ステーションの断面図である。
図7】(a)~(h)は、パレットを工作機械内の動作位置から拾い上げて、パレットを保管ステーション内の動作位置に渡すプロセスを示す図である。
図8】第2の例示的な実施形態によるパレットシステムの斜視図である。
図9】第2の例示的な実施形態の保管ステーションの斜視図である。
図10】(a)は第2の例示的な実施形態のパレット交換機の斜視図であり、(b)はパレット交換機の正面図である。
図11】更に構成が変更された本発明によるパレットシステムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の記載では、同じ参照符号は、同じ又は同種の構成部品を表わす。
【0035】
図1は、第1の例示的な実施形態によるパレットを保管及び輸送するパレットシステム1の斜視図を示し、パレットシステム1は、レールシステム2の長手方向側面に沿って配列された20個の保管ステーション5を備えている。レールシステム2の反対側の長手方向側面には、3つの工作機械M1、M2、M3、2つの設置ステーション4、及び2つの更なる保管ステーション5が配列されている。図1の実例では、保管ステーション5及び設置ステーション4は、それぞれ空のパレット10によって塞がれている。レールシステム2は、3本の平行な直線状のレールを有し、そのうち2本の外側レールはパレット交換機3の支持レールとして役立つ。レールシステム2の中央のレールは、案内レール及び駆動レールとして役立つ。レールシステム2のレールは、以下において図4(b)を参照してより詳しく説明される。
【0036】
パレット交換機3は、駆動部によってレールシステム2のレールに沿って移動可能であり、設置ステーション4、保管ステーション5又は工作機械M1、M2、M3からパレットを拾い上げること、又はパレットをそれらに渡すことができる。図1の実例では、パレット交換機3は、パレットシステム1内で一番右側にある第1の設置ステーション4に位置決めされている。パレット交換機3は、上記位置にあるので、パレットを移動させることによって第1の設置ステーション4から拾い上げることができる。加工するために、それぞれ1つのワークピースをパレット上に配列することができる。しかしながら、ワークピースは図示しない。
【0037】
本発明によって構成が変更された第1の例示的な実施形態によるパレットシステム1が図2の平面図に示される。図2のパレットを保管及び輸送するパレットシステム1は、図1に示したパレットを保管及び輸送するパレットシステム1と比べて、保管ステーション5及び設置ステーション4の数及び配列(位置)のみが異なる。図2の構成では、レールシステム2の第1の長手方向側面に配列された12個の保管ステーション5がある。レールシステム2の反対側の長手方向側面に、2つの設置ステーション4及び3つの工作機械M1、M2、M3が配列されている。レールシステム2は、実質的に図1のレールシステ
ム2に対応する。レールシステム2は3本の平行で直線状のレールを有し、2本の外側レールは、パレット交換機3の支持レールとして役立つ。中央のレールは、駆動レールとして役立つ。レールシステム2の3本のレールは、以下においてX軸線と呼ぶ第1の軸線と平行に置かれている。パレット交換機は、こうしてレールシステム2上でX軸線の方向に移動することができる。
【0038】
図2の実例において、パレット交換機3は、システム1の一番左側にある第1の設置ステーション4に位置決めされている。パレット交換機3は、パレットを移動させることによって第1の設置ステーション4からパレットを拾い上げることができる。工作機械M1、M2、M3内のパレットの動作位置も図2に示される。図2の実例で分かるように、保管ステーション5の上、設置ステーション4の上及び工作機械M1、M2、M3内のパレットの動作位置は、それぞれレールシステム2の中央のレールから同じ距離に配列され、その結果、パレット交換機3によってパレットを拾い上げ又は渡すプロセスは、X軸線に垂直なパレット交換機3の直線運動を必要とすることなく、同じ様式で実施可能である。
【0039】
図1及び図2に示す構成と異なり、パレットシステム1は、レールシステム2の長手方向側面ではなくその端面に配列された、設置ステーション4又は保管ステーション5を備えることもできる。そのような構成は、以下において図11を参照して説明される。端面配列は、特に、以下で説明する回転可能なパレット交換機3によって可能になる。こうして、パレットシステム1の構造のモジュール性を更に向上させることができ、結果として据え付け場所、例えば機械室の所与の又は変動する境界条件に柔軟に対応することができる。材料の流れもこのような様式で最適化することができる。例えば、少なくとも1つの設置ステーション4は、機械室への入口に据え付けることができ、その結果、例えば、設置ステーション4には、フォークリフトによってパレット又はワークピースを備えるパレットが積載可能である。さらに、設置ステーション4、保管ステーション5及び工作機械の位置は、所望に応じて変更することができる。例えば、設置ステーション4及び/又は保管ステーション5は、工作機械M1、M2、M3の間に配列することもできる。
【0040】
パレット10の例示的な実施形態が図3に示される。図3のパレットは、図1図2図5及び図6に示したパレットに対応する。図3(a)はパレット10の底面の平面図を示し、図3(b)はパレット10の断面図を示す。パレット10は、その底面に横断面がT字形の輪郭とされた2つの溝11を有し、溝11のそれぞれはレールを受け入れる。溝11内には複数の支持ローラー132及び複数の案内ローラー131が配列されている。支持ローラー132は、パレット10及びその上に配列されたワークピースの重量を支え、パレット10がレール上を低摩擦で滑ることを可能にしている。案内ローラー131は、レールに対して両側面から横方向に当接して、レール上でパレット10の移動を案内するような方式で配列されている。溝11がT字形の輪郭であることは図3(b)の断面図で明らかである。図5(b)は、T字形の輪郭とされたレール41が高精度に案内するために溝11にどのように正確に位置するかを示す。図6(b)は、長方形の輪郭とされたレール51が溝11にどのように位置するかを示す。
【0041】
さらに、図3(b)の断面図でパレット10の上面に複数の固定溝15が示される。固定溝15は、ワークピースをパレット10上に固定するために使用される。溝15に代えて又は溝15に加えて、パレット10は、その上面にワークピースを固定するために複数のねじ付き穴を有することもできる。
【0042】
さらに、パレット10の底面に2つの指標収容部12(index receptacles)が配列されている。パレット10を調整及び位置決めする指標シリンダーを、指標収容部12のそれぞれに挿入することができる。この機能は、以下において図5(b)及び図6(b)を参照してより詳しく説明する。
【0043】
加えて、パレット10上には2つの保持具案内部141、142が配列されている。第1の保持具案内部141はパレット10の端面上に配列され、第2の保持具案内部142はパレット10の底面上に配列されている。示した例示的な実施形態では、保持具案内部141、142は、それぞれ横方向に開いた好ましくはアンダーカット溝として構成され、好ましくは突起を有する保持具が上記溝内に開放側から係合し、結果的に保持具は、保持具案内部141、142との分離可能な形状嵌め接続部に入って、パレット10の並進運動を生じさせる。この機能は、以下において図4を参照してより詳しく説明する。
【0044】
図4(a)はパレット交換機3の斜視図を示し、図4(b)はパレット交換機3の断面図を示す。図4は、X軸線とこれに垂直なY軸線及びZ軸線との方向を示す。図4(a)のZ軸線は、パレット交換機3の回転軸線と平行に延びている。
【0045】
パレット交換機3は回転可能に取り付けたパレット収容部32を備え、パレット収容部32は、パレット10を受け入れるためにその上面に配列された2本のレール31を備えている。図6(b)の断面図に示すように、レール31は、長方形の輪郭とされ、保管ステーション5のレール51と同様にパレットのレール溝11内にはまり込んでいる。
【0046】
パレット収容部32上には、4つのプーリー341とプーリー341の周りに延びるチェーンとを備える、変位機構34も配列されている。チェーンは、4つのプーリー341によって実質的に長方形の循環通路をたどることができ、実質的に長方形の通路には、その各角部に1つの曲げローラー341が配列されている。チェーンに代えて、テープ又はベルトを使用することもできる。少なくとも2つのプーリー341のうちの一方は、モーターによって駆動することができる。
【0047】
さらに、変位機構34のチェーン上には少なくとも1つの保持具342が配列され、この保持具は、パレット10の保持具案内部141、142に係合可能であって、チェーンからパレット10に並進運動を伝達する。図3(a)に示すように、保持具案内部141、142は、それぞれ横方向に開いた好ましくはアンダーカット溝を有し、結果としてチェーンがプーリー341の周りに移動するとき、保持具342は、保持具案内部141、142内に係合し、規定の位置に到達した後再び保持具案内部141、142から出る結果、動作位置とパレット交換機3上の位置との間の規定の距離だけパレット10を変位させる動作が実施される。保持具342が引き続き移動すれば、実質的にプーリー341の周りに一回転する間に、X軸線と平行な2つの並進運動及びY軸線と平行な2つの並進運動が実施される。
【0048】
保持具342の移動順序の方向は、図3(a)に及び対応して図4(a)に太い点線の矢印a及び矢印bで示される。パレット10を保管ステーション5、設置ステーション4又は工作機械M1、M2、M3内の動作位置からつかむために、保持具342は、プーリー341のうちの1つをチェーンで駆動することによって移動される。パレット10をパレット交換機3によって拾い上げ又は渡す動作は、2つの段階で実施される。第1の段階では、パレット10は、パレット10の端面上にある第1の保持具案内部141によってパレット交換機3までの距離の半分だけ引っ張られる。第2の段階では、パレット10は、パレット10の底面上にある第2の保持具案内部142によってパレット交換機3までの距離の残り分だけ引っ張られる。
【0049】
パレット10を2つの動作位置間で拾い上げ及び渡すときの移動順序の詳しい実例が、図7(a)~図7(h)にステップ毎に示される。図7(a)は、パレット10が工作機械M1内の動作位置に位置決めされた初期状況を示す。目的は、パレット10を保管ステーション5内の空いたスロットに輸送することである。パレット10が所望の保管ステー
ション5内にある最終状況が図7(h)に示される。初期状況及び最終状況である図7(a)及び図7(h)は、それぞれ保管ステーション5及び機械M1とともに概観として示す。図7(b)~図7(g)の中間段階は詳細図として示す。説明が不明瞭になるのを避けるために、全ての図面に全ての参照符号を示すとは限らない。以下の説明では、パレット交換機のパレット収容部32の位置は、時計の時針との類推から対応する時刻で指定される。図7(a)及び図7(h)では、パレット収容部32はしたがって9時の位置にある。
【0050】
図7(b)では、パレット収容部32は最初に6時の位置に旋回され、結果として非対称のパレット収容部32の突出端が、パレット10の端面と整列及び接続する。この位置では、保持具342は、パレット10の端面上にある第1の保持具案内部141に係合可能である。この目的のために、保持具342は最初にX軸線と平行に移動し、それは、図3(a)及び図4(a)に矢印aによって示す。ここで、保持具342は、パレット10の第1の保持具案内部141に横方向に係合して、保持具案内部141とともに分離可能な形状嵌め接続部を形成する。保持具342は、変位機構34の隣のプーリー341において移動方向が変化し、結果として保持具342は、矢印bに沿ってY軸線と平行に移動し、パレット10をY軸線に沿ってパレット交換機3上に変位させる。図7(c)では、パレット10は、現在パレット交換機3に移動する第1の段階にあって、既にパレット収容部32のレール31によって案内されている。
【0051】
保持具342は、次のプーリー341に到達すると、矢印cをたどって移動し、結果として第1の保持具案内部141から解放される。パレット10を拾い上げる第1の段階はここで終わる。チェーン又は保持具342は、循環を続けるにつれてパレット10の底面の第2の保持具案内部142に係合し、結果としてパレット10を拾い上げる第2の段階は、図7(d)に示すパレット交換機3上の変位位置にパレットが到達するまで実施可能である。
【0052】
保持具342は、保持具案内部142内の留め部としてこの変位位置にとどまり、結果としてパレット10は、パレット交換機3がレールシステム2に沿って移動する間は変位しない。パレット10がパレット交換機3上に移動した(パレット交換機3によって拾い上げられた)後、パレット収容部32は、図7(e)に示すように90度回転されて9時の位置に戻り、その後、パレット交換機3がレールシステム2に沿って移動することができる。図7(e)に示すように、9時の位置(及び対応して3時の位置)にあるパレット交換機3は、レールシステム2の2つの外側支持レール21を越えて突出せず、結果としてパレット交換機3は、レールシステム2上で渡し位置まで移動可能である。ここに例示した例では、パレット交換機3は、空の保管位置5に位置決めされるようにX軸線の方向にほんの短い距離だけ移動する。
【0053】
パレット交換機3が所望位置に移動した後、パレット収容部32は、90度回転して、図7(f)に示す12時の位置に至る。その結果、パレット収容部32のレール31は、設置ステーションのレール51と整列する。
【0054】
パレット10を保管位置5へ渡す動作は、拾い上げと同様に2つの段階で実施され、変位機構34のチェーンが反対方向に駆動される。この目的のために、例えば、変位機構34の従動プーリー341は、反対方向に回転可能である。次いで、保持具342は、初めに図3(a)及び図4(a)の矢印bを反対方向にたどることで、図7(g)に示すようにパレット10を保管ステーション5の動作位置に変位させる。最後に、保持具342は、矢印aと反対方向に移動して第1の保持具案内部141から外に出て、それにより事前に空になっている保管ステーション5にパレット10を渡すプロセスが終了する。パレット収容部32は、ここで回転して9時の位置に戻ることができる。図7(h)では、パレ
ット交換機3は、パレット10を拾い上げ及び渡す更なる動作の準備ができている。パレット10が工作機械M1からでなく設置ステーション4又は保管ステーション5から拾い上げられる場合、又は、パレット10が保管ステーション5ではなく設置ステーション4又は工作機械M1、M2、M3に渡される場合、プロセスは対応して進むことを理解されたい。
【0055】
図4(a)に示すパレット交換機3は非対称のパレット収容部32を備え、図4(a)で前部に示すパレット収容部32の端は、回転軸線からの距離が後端よりもかなり大きい。パレット収容部32のこの長い端は、図7(a)~図7(h)を参照して前述したように、パレット交換機3と保管ステーション5、設置ステーション4又は工作機械M1、M2、M3内の動作位置との間の距離を埋め合わせるのに使用する。この目的のために、上述したように、パレット収容部32は、9時の位置から(又は対応して3時の位置から)6時の位置に又は12時の位置に90度旋回する。
【0056】
図4(b)は、2本の支持レール21と駆動レール22とを備える、レールシステム2上のパレット交換機3の正面図を示す。パレット交換機3は、支持レール21に載った4つのローラー35を有する。パレット交換機3は駆動部33として電気モーターも備え、モーターはパレット交換機3を支持レール21に沿って移動させる。この目的のために、駆動レール22は、駆動部33の歯車に動作的に接続された歯付きラックを有する。したがって、パレット交換機3の駆動部は、このようにラック式鉄道に類似することができる。レールシステム22のレールは、X軸線に沿って向けられ、地面の止め部に配列されている。パレット交換機は、電力レール23から集電装置(図示せず)によって電気エネルギーを受け取ることができる。別の様式として、電力レール23の代わりにエネルギーチェーンを使用して、パレット交換機3に電気エネルギーを供給することもできる。
【0057】
図5(a)は設置ステーション4の斜視図を示し、図5(b)はパレット10が設置ステーション上に配列された状態の設置ステーション4の断面図を示す。図5は、設置ステーション4の垂直な回転軸線を示す。回転軸線はZ軸線と平行である。設置ステーション4は、回転軸線の周りに回転可能な回転板43を備える。特に回転板43は、パレット10上に配列されたワークピースを工作機械における加工に応じた向きにするために、360度回転可能である。
【0058】
設置ステーション4の回転板43上には、T字形の輪郭とされた2本のレール41が配列されている。図5(b)の断面図に示すように、レール41のT字形の輪郭は、パレット10のレール溝11のT字形の輪郭に対応する。パレット10は、レール41によって及び案内ローラー131と協力して、設置ステーション4上に非常に正確に位置決めすることができる。レール41に沿った位置は、2つの指標シリンダー42(index cylinder)によって決定される。図5(b)は、指標シリンダー42がパレットの指標収容部12にどのように係合するかを示す。指標シリンダーは、例えば油圧制御によって延び出し及び後退することができる。2つの指標シリンダー42を使用することによって、ほんの数マイクロメートルの非常に高い位置精度を達成することができる。設置ステーション4は、設置ステーション4を水平にするために、調整可能な水平化要素45として役立つ三点支持部45を有する。
【0059】
設置ステーション4のレール41はクランプ機構44も備える。クランプ機構44が作動すれば、パレット10は、回転板43上の支持点に向かってしっかり引っ張られる。パレットは、こうして設置ステーション4上に位置的に固定することができる。クランプ機構44は、工作機械Mでも使用されるので実質的にクランプ機構に対応する。
【0060】
図6(a)は保管ステーション5の斜視図を示し、図6(b)は保管ステーション上に
パレット10が配列された状態の保管ステーション5の断面図を示す。設置ステーション4とは対照的に、保管ステーション5のレール51はT字形横断面とされておらず、その理由は、ここではパレット10の非常に正確な位置決めは必要でないからである。
【0061】
保管ステーション5はただ1つの指標シリンダー52を備え、それは、図6(b)の断面図ではパレット10の指標収容部12に係合している。この指標シリンダー52は、本質的にパレット10を適所に保持するのに役立ち、結果としてパレット10には、保管ステーション5からの意図せぬ転落が起こり得ない。保管ステーション5のレール51は、水平化要素55によって水平な姿勢に調整することができる。さらに、保管ステーション5にはしずく受け53があり、これは、ワークピースの加工後に滴り又は落ちることがある、冷却液及び/又は潤滑剤の残り及びチップを回収するのに役立つ。
【0062】
保管ステーション5は、その構造が単純でしかも固いために、上面にワークピースが配列された状態でも配列されていない状態でもパレット10のための、安定して安全な保管部を低コストで提供することができる。
【0063】
図11は、本発明によるパレットシステム1の更なる構成を示す。図11に示すパレットシステム1は、レールシステムの端面上のアーチに配列された保管ステーション5を備え、端面は、ここでは例えば互いに45度の角度で配列されている。図11に例示するように、パレット交換機3は、一方の端面に移動可能であり、この端面で回転移動によって5つの設置ステーション5のうちの1つのみに到達可能である。もちろん、保管ステーション5の代わりに、レールシステムの端面上に工作機械又は設置ステーション4を配列することもできる。
【0064】
図11に示すように、レールシステム2の端面の周りに保管ステーション5をアーチ形に配列する場合は、回転可能なパレット収容部と直線状に変位可能なパレット交換機3との組合せに起因する技術的な利点が、最大限に利用可能である。一方では、多数の保管ステーション5を、結果的にレールシステム2の周りに配列することができる。他方では、進行経路がより短いので、パレットシステム1の効率を向上させることができる。さらに、パレット収容部は、パレット交換機3がレールシステム2に沿って直線状に運動する間に、接近した動作位置と回転によって既に整列可能になっており、結果としてパレット交換を実施するために必要な時間は更に短縮可能である。
【0065】
加えて、図11は、本発明によるパレットシステム1のモジュール性及び結果として生じる適応性を印象的に例示する。パレットシステム1は、こうして境界条件及び機械室又は他の据え付け現場の利用可能な空間に最適に適応可能である。
【0066】
図11は、レールシステム上を互いに無関係に移動可能な、3つのパレット交換機3を備える実施形態も示す。こうして、複数のパレット交換が同時に実施可能であり、結果として4つの工作機械M1、M2、M3、M4で示す生産ラインにおける全体の生産性が向上され得る。
【0067】
図11の中央に示すパレット交換機3は、独立して回転可能な2つのパレット収容部を有する。2つのパレット収容部は、X軸線に沿って、互いに2つの保管ステーション5の間又は2つの設置ステーション4の間の距離に対応する距離で配列することが好ましく、結果として両方のパレット収容部は、同時にパレットを交換可能である。
【0068】
複数のパレット交換機3がある場合、又は2つのパレット収容部を備える1つのパレット交換機3がある場合は、加工済みのワークピースを備えるパレットを工作機械から拾い上げ、次いで適切に装備をされたパレットを渡すことによって工作機械に新しいワークピ
ースを載せるプロセスは、ただ1つのパレット交換機3を備えるパレットシステム1よりもはるかに早く実施可能であり、その理由は、完成したワークピースを備えるパレットを拾い上げるステップ及び加工すべきワークピースを備える新しいパレットを渡すステップという2つのステップの間に、レールシステム2に沿って非常に短い進行経路さえ取れば良いからである。
【0069】
別の例示的な実施形態が、以下において図8図10を参照して説明される。図8は、第2の例示的な実施形態によるパレットシステム1’の斜視図を示す。図9は、第2の例示的な実施形態の保管ステーション5’の斜視図を示す。図10(a)は、第2の例示的な実施形態のパレット交換機3’の斜視図を示し、図10(b)は、パレット交換機3’の正面図を示す。以下の説明では、特に第2の実施形態と第1の実施形態との間の実質的な差が検討されるであろう。
【0070】
パレットを保管及び輸送するパレットシステム1’は、第1の例示的な実施形態のパレットを保管及び輸送するパレットシステム1と比較して、より軽量のワークピースに対応するためにより小型のパレット用に構成されている。パレットシステム1’は、第1の例示的な実施形態のパレットを保管及び輸送するパレットシステム1と同様に、2本の支持レール21、駆動レール22及び電力レール23を有する、直線状のレールシステム2’を備えている。
【0071】
第1の例示的な実施形態と異なり、パレットを保管及び輸送するパレットシステム1’は、パレットが保管ステーション5’に2つの棚高さで保管可能な棚システムとして構成されている。図9は4つの保管位置を備える保管棚5’の斜視図を示し、それぞれの保管棚5’は、隆起した様式で配列された4つのパレット円錐部56を有する。各高さは、しずく受け53も備える。
【0072】
パレット交換機3’は、入れ子式に延び出し可能なパレットフォークを備える、パレット持ち上げ機36を備える。パレット持ち上げ機36のパレットフォークは、パレットを拾い上げるためにパレットの下方で延び出し、次いで上昇する。パレット交換機3’は、パレットを上昇させるために垂直な駆動部37を有し、駆動部37は、垂直な案内部38に沿ってパレット持ち上げ機36を上昇させ及び下降させることができる。特に、垂直な案内部38は、パレット交換機3’のフレーム上にZ方向に沿って配列された歯付きラックとして構成されている。垂直な駆動部37は、例えば、従動式の回転可能なねじ付き棒として構成することができる。
【0073】
パレット交換機3'のフレームは垂直な回転軸線の周りに回転可能であり、こうしてパレット持ち上げ機36は、パレットを保管及び輸送するパレットシステム1’におけるパレットの動作位置と整列する。
【0074】
上記説明、請求項及び図面に開示された特徴は、個々及び任意の組合せの両方において、本発明をその様々な構成で実行する際に意義深くなり得る。
【符号の説明】
【0075】
1、1’ パレットシステム
10 パレット
11 レール溝
12 指標収容部
131 案内ローラー
132 支持ローラー
141 第1の保持具案内部
142 第2の保持具案内部
15 固定溝
2、2’ レールシステム
21 支持レール
22 駆動レール
23 電力レール
3、3’ パレット交換機
31 パレット交換機のレール
32 パレット収容部
33 パレット交換機の駆動部
34 パレット交換機の変位機構
341 プーリー
342 保持具
35 パレット交換機のローラー
36 パレット持ち上げ機
37 垂直な駆動部
38 垂直な案内部
4、4’ 設置ステーション
41 設置ステーションのレール
42 設置ステーションの指標シリンダー
43 設置ステーションの回転板
44 クランプ機構
45 水平化要素
5 保管ステーション
51 保管ステーションのレール
52 保管ステーションの指標シリンダー
53 しずく受け
55 水平化要素
56 パレット円錐部
M 工作機械
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11