IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノースウエスタン ユニバーシティの特許一覧

特許7369734免疫応答を調節するための、炭水化物で修飾された粒子および粒子製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】免疫応答を調節するための、炭水化物で修飾された粒子および粒子製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7004 20060101AFI20231019BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20231019BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20231019BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231019BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231019BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231019BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
A61K31/7004
A61K47/69
A61K47/60
A61K9/16
A61K45/00
A61P37/08
A61P37/02
A61P3/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021078275
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2018514933の分割
【原出願日】2016-05-27
(65)【公開番号】P2021130665
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】62/167,054
(32)【優先日】2015-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507294960
【氏名又は名称】ノースウエスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ブライス ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シーン カレン ビー.
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】Pharm. Res.,2015年02月,Vol.32,pp.2713-2726
【文献】Infect. Immun.,1976年,Vol.13 No.1,pp.127-132
【文献】Pharm. Res.,2011年,Vol.28,pp.2288-2301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00~ 9/72
47/00~47/69
31/00~33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物で修飾された粒子を含む、細胞においてIL-10を誘導するための薬学的組成物であって、該粒子は、抗原をカプセル化し、かつ、0.01~500μmの有効平均直径を有する生分解性ポリマー基材と、該粒子の表面に共有結合している免疫調節物質である炭水化物部分とを含む薬学的組成物。
【請求項2】
前記炭水化物部分がヘパリン二糖II-A、ヘパリン二糖III-A、ヘパリン二糖IV-Aヘパリン不飽和二糖I-Hコンドロイチン二糖ΔDi-triS血液型Bタイプ2直鎖三糖、P1抗原シアリル・ルイスAシアリル・ルイスX β-メチルグリコシド、スルホ・ルイスA、スルホ・ルイスXα1-3-マンノビオース、α1-6-マンノビオース、マンノテトラオース、α1-3,α1-3,α1-6-マンノペントース、β1-2-N-アセチルグルコサミン-マンノースα-D-N-アセチルガラクトサミニル1-3ガラクトースβ1-4グルコースラクト-N-テトラオース(LNT)4-β-ガラクトビオース、1-3ガラクトジオシル(Galactodiosyl)β-メチルグリコシ、α1-3,β1-4,α1-3ガラクトテトラオース、β-ガラクトシル1-3 N-アセチルガラクトサミンメチルグリコシド、β1-3 Gal-N-アセチルガラクトサミニル-β1-4 Gal-β1-4-Glc1-デオキシノジリマイシン(DNJ)、D-フコース、L-フコースカリステギンA3、カリステギンB3、N-メチル シス-4-ヒドロキシメチル-L-プロリンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項3】
ポリマー基材が、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)とのコポリマー(すなわち、PLGA)を含む、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項4】
前記炭水化物部分が、リンカーを介して前記粒子の表面に共有結合ている、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項5】
リンカーが、(1)前記炭水化物部分の遊離ヒドロキシル基と反応する求電子種;および(2)ポリマー基材の遊離カルボキシル基と反応する求核種を含む、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項6】
前記炭水化物部分が、カルボジイミド架橋を介して前記粒子の表面に共有結合ている、請求項5に記載の薬学的組成物
【請求項7】
前記炭水化物部分以外に付加的な免疫調節物質をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項8】
免疫調節物質が脱感作もしくは寛容を誘導し、かつ/または免疫調節物質が抗炎症応答を誘導する、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項9】
付加的な免疫調節物質が、自己免疫疾患または障害と関連した抗原である、請求項8に記載の薬学的組成物
【請求項10】
抗原が、インスリンに由来する抗原である、請求項9に記載の薬学的組成物
【請求項11】
適切な担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
その必要がある対象における疾患または障害を処置するための請求項1~11のいずれか一項に記載の薬学的組成物
【請求項13】
前記対象が、免疫疾患もしくは障害を有するか、または免疫疾患もしくは障害を発症する危険性がある、請求項12に記載の薬学的組成物
【請求項14】
免疫疾患または障害がアレルギー反応であり、かつ前記薬学的組成物が前記対象において寛容を誘導する、請求項13に記載の薬学的組成物
【請求項15】
免疫疾患または障害が自己免疫疾患または障害である、請求項13に記載の薬学的組成物
【請求項16】
免疫疾患または障害が1型糖尿病である、請求項15に記載の薬学的組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2015年5月27日に出願された米国仮出願第62/167,054号の優先権の恩典を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、概して、免疫応答を調節するための組成物、キット、および方法の分野に関する。とくに、本発明は、免疫応答を調節するための、炭水化物で修飾された粒子および粒子製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫応答を調節するための方法は、多くの疾患の処置に重要であり、そして粒子担体は、タンパク質、薬物、および他の処置のための送達デバイスとしての効力を検討されてきた。しかしながら、これらの担体は、大部分はそれら自体が生得的であり、そして典型的に、活性構成要素に対する担体としてのみ機能する。ここで、本発明者らは、結果として生じる免疫応答を能動的に改変するようにナノ粒子担体を官能基化する可能性を検討した。確立されたナノ粒子材料であるポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)、つまりPLGA、および免疫調節性共シグナルについての自家ハイスループットスクリーニングを用いて、本発明者らは、免疫応答を調節し得る、炭水化物で増強されたナノ粒子(CENP)を開発した。
【発明の概要】
【0004】
概要
免疫応答を調節するための組成物、キット、および方法が開示される。組成物およびキットは、炭水化物で修飾された粒子、および炭水化物で修飾された粒子を含む粒子製剤を含み、かつ方法はそれを利用する。
【0005】
本明細書において開示される炭水化物で修飾された粒子は、比較的小さくかつマイクロスケールまたはナノスケールの範囲内に有効平均直径を有する。具体的には、炭水化物で修飾された粒子は、「炭水化物で増強されたナノ粒子」または「CENP」と呼ばれ得る。粒子は、粒子の表面における1つまたは複数の炭水化物部分の付着により修飾される。好ましくは、粒子は、粒子の表面における1つまたは複数の炭水化物部分の共有結合性付着により修飾される。炭水化物部分は、粒子の表面に直接的に、または1つもしくは複数のリンカー分子を介して付着され得る。炭水化物部分は、好ましくは、免疫調節物質、例えば免疫寛容を誘導する調節物質として機能する。
【0006】
組成物および製剤についての開示される粒子は、好ましくは生分解性であり、かつポリマー基材から形成される。一部の態様において、粒子は、炭水化物モノマーまたはプレポリマーから形成されたポリマー基材を含む。
【0007】
炭水化物部分に加えて、開示される炭水化物で修飾された粒子は、免疫応答を調節するための付加的な構成要素を含み得る。とくに、開示される炭水化物で修飾された粒子は、抗原、例えば抗原に対して対象を脱感作しかつ/または対象において寛容を誘導するために抗原として利用されかつ対象に投与されるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含み得る。開示される炭水化物で修飾された粒子へ含めるための適切な抗原には、自己免疫疾患と関連した自己抗原(例えば、自己免疫疾患と関連しているペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質)が含まれ得る。適切な抗原には、1型糖尿病(T1D)と関連した自己抗原が含まれ得る。適切な抗原には、アレルギー反応と関連した抗原(すなわち、アレルゲン)も含まれ得る。
【0008】
開示される粒子は、以下の段階のうちの1つまたは複数を含む方法によって調製され得る:(a)炭水化物部分のライブラリーと免疫細胞とを接触させて、免疫細胞を刺激することに対する前記ライブラリーの効果を測定することによって(例えば、ベースラインを上回るサイトカイン産生、とくにIL-10、TGFβ、および/またはCCL4産生対IL-6産生を測定することによって)、免疫調節物質活性について前記ライブラリーをスクリーニングする段階;(b)免疫細胞を刺激することに対するその効果に基づいて炭水化物部分を選択する段階;ならびに(c)好ましくは、前記炭水化物部分を、生分解性ポリマー基材から形成された粒子の表面に共有結合的に付着させることによって、ゆえに選択された前記炭水化物部分を、ポリマー基材から形成された粒子に付着させる段階。
【0009】
開示される粒子は、免疫応答を調節するための組成物として製剤化され得る。したがって、組成物は、対象を脱感作することおよび/または対象において寛容を誘導することを含み得るがそれらに限定されない、免疫応答を誘導するために、それを必要としている対象に投与することができる。組成物は、自己免疫応答と関連した疾患および障害を処置および/もしくは予防するために、またはアレルギー反応を処置および/もしくは予防するために、投与することができる。組成物は、移植拒絶を処置および/または予防するために、投与することができる。
[本発明1001]
炭水化物で修飾された粒子であって、0.01~500μmの有効平均直径を有する生分解性ポリマー基材と、前記粒子の表面に共有結合的に付着された免疫調節物質である炭水化物部分とを含む、前記粒子。
[本発明1002]
前記炭水化物部分が、ヘパリン二糖I-A、ヘパリン二糖II-A、ヘパリン二糖III-A、ヘパリン二糖IV-A、ヘパリン二糖IV-S、ヘパリン不飽和二糖I-H、ヘパリン不飽和二糖II-H、ヘパリン不飽和二糖II-H、ヘパリン不飽和二糖I-P、コンドロイチン二糖Δdi-0S、コンドロイチン二糖Δdi-4S、コンドロイチン二糖Δdi-6S、コンドロイチン二糖ΔDi-diSB、コンドロイチン二糖ΔDi-diSE、コンドロイチン二糖ΔDi-triS、コンドロイチン二糖ΔDi-UA2S、ネオカラデカオース(Neocarradecaose)-41,3,5,7,9-ペンタ-O-サルフェート、ネオカラヘキサデカオース(neocarrahexadecaose)-41,3,5,7,9,11,13,15-オクタ-O-サルフェート、GalNAcβ1-4Gal(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)の線毛に対する受容体)、血液型Bタイプ2直鎖三糖、P1抗原、Tn抗原、シアリル・ルイスA、シアリル・ルイスX、シアリル・ルイスX β-メチルグリコシド、スルホ・ルイスA、スルホ・ルイスX、α1-2-マンノビオース、α1-3-マンノビオース、α1-6-マンノビオース、マンノテトラオース、α1-3,α1-3,α1-6-マンノペントース、β1-2-N-アセチルグルコサミン-マンノース、LS-四糖a(LSTa)、LS-四糖c(LSTc)、α-D-N-アセチルガラクトサミニル1-3ガラクトース、α-D-N-アセチルガラクトサミニル1-3ガラクトースβ1-4グルコース、D-ガラクトース-4-O-サルフェート、グリシル-ラクトース(Lac-gly)、グリシル-ラクト-N-テトラオース(LNT-gly)、2'-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ジフコヘキサオースI(LNDFH I)、ラクト-N-ジフコヘキサオースII(LNDFHII)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH)、3'-シアリルラクトース(3'-SL)、6'-シアリルラクトース(6'-SL)、3'-シアリル-N-アセチルラクトサミン、6'-シアリル-N-アセチルラクトサミン(6'-SLN)、3-フコシルラクトース(3FL)、フコイダン、4-β-ガラクトビオース、1-3ガラクトジオシル(Galactodiosyl)β-メチルグリコシ(glycosie)、α1-3,β1-4,α1-3ガラクトテトラオース、β-ガラクトシル1-3 N-アセチルガラクトサミンメチルグリコシド、β1-3 Gal-N-アセチルガラクトサミニル-β1-4 Gal-β1-4-Glc、β1-6ガラクトビオース、グロボトリオース、β-D-N-アセチルガラクトサミニル1-3ガラクトース(グロボトリオースの末端二糖)、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)、D-フコース、L-フコース、D-タロース、カリステギンA3、カリステギンB3、N-メチル シス-4-ヒドロキシメチル-L-プロリン、2,5-ジデオキシ-2,5-イミノ-D-マンニトール、カスタノスペルミン、6-エピ-カスタノスペルミン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1001の粒子。
[本発明1003]
ポリマー基材が、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)とのコポリマー(すなわち、PLGA)を含む、本発明1001の粒子。
[本発明1004]
前記炭水化物部分が、リンカーを介して前記粒子の表面に共有結合的に付着している、本発明1001の粒子。
[本発明1005]
リンカーが、(1)前記炭水化物部分の遊離ヒドロキシル基と反応する求電子種;および(2)ポリマー基材の遊離カルボキシル基と反応する求核種を含む、本発明1004の粒子。
[本発明1006]
前記炭水化物部分が、カルボジイミド架橋を介して前記粒子の表面に共有結合的に付着している、本発明1005の粒子。
[本発明1007]
前記炭水化物部分以外に付加的な免疫調節物質をさらに含む、本発明1001の粒子。
[本発明1008]
免疫調節物質が脱感作もしくは寛容を誘導し、かつ/または免疫調節物質が抗炎症応答を誘導する、本発明1001の粒子。
[本発明1009]
付加的な免疫調節物質が、自己免疫疾患または障害と関連した抗原である、本発明1008の粒子。
[本発明1010]
抗原が、インスリンに由来する抗原である、本発明1009の粒子。
[本発明1011]
適切な担体、賦形剤、または希釈剤と一緒に本発明1001の粒子を含む、薬学的組成物。
[本発明1012]
その必要がある対象における疾患または障害を処置するための方法であって、本発明1011の組成物を前記対象に投与する段階を含む、前記方法。
[本発明1013]
前記対象が、免疫疾患もしくは障害を有するか、または免疫疾患もしくは障害を発症する危険性がある、本発明1012の方法。
[本発明1014]
免疫疾患または障害がアレルギー反応であり、かつ前記方法が前記対象において寛容を誘導する、本発明1013の方法。
[本発明1015]
免疫疾患または障害が自己免疫疾患または障害である、本発明1013の方法。
[本発明1016]
免疫疾患または障害が1型糖尿病である、本発明1015の方法。
[本発明1017]
以下の段階のうちの1つまたは複数を含む、本発明1001の粒子を調製するための方法:
(a)炭水化物部分のライブラリーと免疫細胞とを接触させて、免疫細胞を刺激することに対する前記ライブラリーの効果を測定することによって、免疫調節物質活性について前記ライブラリーをスクリーニングする段階;
(b)免疫細胞を刺激することに対するその効果に基づいて炭水化物部分を選択する段階;ならびに
(c)ポリマー基材から形成された粒子に前記炭水化物部分を付着させる段階。
[本発明1018]
免疫細胞を刺激することに対する前記ライブラリーの効果を測定することが、サイトカイン産生を測定することを含む、本発明1017の方法。
[本発明1019]
サイトカイン産生を測定することが、ベースラインを上回るIL-10産生を測定することと、ベースラインを上回るIL-6産生を測定することとを含み、かつ免疫細胞を刺激することに対するその効果に基づいて炭水化物部分を選択することが、IL-6分泌を変化させないが、またはIL-6分泌を減少させるが、ベースラインを上回ってIL-10分泌を増加させる炭水化物部分を選択することを含む、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記炭水化物部分を付着させることが、ポリマー基材から形成された粒子に共有結合的に付着させることである、本発明1017の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】PLGA粒子(PP)によるマクロファージのインビトロ刺激(LPS)がIL-10を増強せず、一方でEDC-細胞(EDC SP)がIL-10を増強することを示している。
図2】マクロファージによるサイトカイン産生の誘導のための、炭水化物化合物のハイスループットスクリーニングに関するストラテジーを示している。
図3A図2で示されるハイスループットスクリーニングを用いて判定される、IL-10応答の上方制御または下方制御に関する誘導ヒートマップを示している。
図3B図2で示されるハイスループットスクリーニングを用いて判定される、IL-10応答の上方制御または下方制御に関する誘導ヒートマップを示している。
図4】PLGAナノ粒子にL-フコースを付加するための化学的連結反応を示している。
図5】フコシル化PLGA(F-CENP)が、PLGA単独、EDC-細胞、または遊離L-フコースよりも強力なIL-10誘導を促進することを示している。
図6】感作および寛容の免疫学的メカニズムを示している。
図7】脱感作、および寛容の誘導によりアレルギーを処置するための潜在的療法を示している。
図8】アポトーシス細胞の細胞表面にある潜在的な天然の寛容原性シグナルを示している。
図9】T1Dにおける寛容療法のためのAg-NP送達システムの効力が、(1)CD209およびMer二重シグナル伝達のためのNP上の標的リガンド(LNFPIIIおよびGAS6)を同時に操作すること;ならびに(2)感染寛容を誘導するための初回の疾患関連自己抗原としてのインスリンの脱アミド化形態(INS(Q→E))の送達、によって有意に増強され得るという仮説を示している。
図10A】AG-SPが、Treg細胞の増殖、AD欠失、およびTeff細胞のアネルギーにより寛容を誘導することを示している。A.移植後28日目の、Ag-SP処理されたおよび対照のレシピエントにおける、脾臓、dLN、および移植片におけるCD4+Foxp3+ Treg細胞。
図10B】AG-SPが、Treg細胞の増殖、AD欠失、およびTeff細胞のアネルギーにより寛容を誘導することを示している。B.-4日目、0日目、および7日目の、Ag-SP処理されたおよび対照のレシピエントにおける、脾臓、dLN、および移植片において数えられた、類遺伝子的に(congenically)印付けされたTEa TCRトランスジェニックT細胞。
図10C】AG-SPが、Treg細胞の増殖、AD欠失、およびTeff細胞のアネルギーにより寛容を誘導することを示している。C.Ag-SPの1回目および2回目の注射後にインビボ増殖について検討された、類遺伝子的に印付けされかつCFSE標識された4C TCRトランスジェニックT細胞。ヒストグラムの重ね合わせは、未処理のマウスにおける増殖していない4C T細胞も示している。(Kheradmand et al, J Immunol 189:804-12, 2012)。
図11A】AG-SP注射は、Tregの誘導およびホーミングに関係する、MDSCの増殖および可溶性媒介物質を誘導する。A.Ly6CHIおよびGr1HI MDSCの両方が、Ag-SP注射後に数が増大する。B.刺激されたT細胞とのLy6CHIおよびGr1HI MDSCの共培養は、IL-10およびCCL4の産生を誘導する。C.Ag-SP処理されたレシピエント由来の同種移植片は、Foxp3+ Tregの進行性蓄積を示している。(Bryant et al, J Immunol 192(12):6092, 2014)。
図11B図11Aの説明を参照のこと。
図11C図11Aの説明を参照のこと。
図11D図11Aの説明を参照のこと。
図12A】Ag-SP媒介性MDSC増殖が、受容体型チロシンキナーゼMERに依存していることを示している。A.表面レクチンCD209およびCD169を発現する2種の脾臓マクロファージ集団は、Ag-SP処理に応答してMer発現を上方制御する。
図12B】Ag-SP媒介性MDSC増殖が、受容体型チロシンキナーゼMERに依存していることを示している。B.Ly6CHIおよびGr1HI MDSC のAg-SP誘導性増殖は、MerTK-/-マウスにおいて喪失する。
図12C】Ag-SP媒介性MDSC増殖が、受容体型チロシンキナーゼMERに依存していることを示している。C.Ag-SP寛容療法は、MerTK-/-マウスにおいて無効である。これはBALB/c→B6心臓移植モデルにおけるものであり、MerTK+/+(野生型)マウスにおけるAg-SPは、膵島同種移植片のものとは対照的に無期限の生存ではないものの、心臓同種移植片生存を有意に延長する(非公開データ)。
図13A図13A、13B、および13Cは、NPが、抗原送達および寛容誘導に適合し得ることを示している。A.PLG NPは、指定のサイズ(この場合、約500nm)およびゼータ電位(この場合、約-75mV)を有して製造され得る。B.ドナー脾細胞溶解物の形態のドナー抗原は、PLG NPに連結され得かつレシピエントマウスに安全に送達され得る。しかしながら、Ag-NPの現在の形態は、単独で与えられた場合、移植された膵島同種移植片にわずかな保護のみを提供する。短期コースの低用量ラパマイシンと組み合わせた場合、Ag-NPは、膵島同種移植片保護においてその効力を有意に改善する。(Bryant et al, Biomaterials 35:8887-94, 2014)。
図13B図13Aの説明を参照のこと。
図13C図13Aの説明を参照のこと。
図14A】ヒトT1D患者におけるおよびNODマウスにおける脱アミド化プロインスリンに対する液性応答を示している。A.30人の成人T1D患者のコホートのうちの4人における、ウェスタンブロットによって検出された脱アミド化ヒトプロインスリンに対する抗体応答。
図14B】ヒトT1D患者におけるおよびNODマウスにおける脱アミド化プロインスリンに対する液性応答を示している。B.上のパネル:3週齢から始まる連続的に検討された雌NODマウスのコホートにおける、ウェスタンブロットによる、脱アミド化マウスプロインスリン1に対する代表的な抗体応答。下のパネル:脱アミド化プロインスリンに対する抗体の有無での、雌NODマウス部分群における糖尿病出現率。
図14C】ヒトT1D患者におけるおよびNODマウスにおける脱アミド化プロインスリンに対する液性応答を示している。C.陽性のNOD B細胞ハイブリドーマ由来の上清によってプローブされた、マウスプロインスリン1および2についての4×30ペプチドアレイ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
下記で述べられるいくつかの定義を用いて記載され得る疾患に対して免疫応答を誘導するための組成物、キット、および方法が本明細書において開示される。
【0012】
文脈によって別様に指定されないまたは示されない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、「1つまたは複数」を意味する。加えて、「炭水化物」および「炭水化物部分」などの単数名詞は、文脈によって別様に指定されないまたは示されない限り、それぞれ「1つまたは複数の炭水化物」および「1つまたは複数の炭水化物部分」を意味すると解釈されるべきである。「粒子」などの単数名詞は、文脈によって別様に指定されないまたは示されない限り、「1つまたは複数の粒子」を意味すると解釈されるべきである。
【0013】
本明細書において使用するとき、「約」、「およそ」、「実質的に」、および「大幅に」は、当業者によって理解され、かつそれらが用いられる文脈によってある程度変動する。それが用いられる文脈を考慮して当業者にとって不明瞭である用語の使用がある場合、「約」および「およそ」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%以下を意味し、そして「実質的に」および「大幅に」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%超を意味する。
【0014】
本明細書において使用するとき、「含む(include)」および「含むこと(including)」という用語は、「含む(comprise)」および「含むこと(comprising)」という用語と同じ意味を有する。「含む(comprise)」および「含むこと(comprising)」という用語は、特許請求の範囲において列挙されるそうした構成要素に付け加えた付加的な構成要素の内包を容認する「開かれた」暫定的用語であると解釈されるべきである。「なる」および「からなる」という用語は、特許請求の範囲において列挙される構成要素以外の付加的な構成要素の内包を容認しない「閉じた」暫定的用語であると解釈されるべきである。「から実質的になる」という用語は、部分的に閉じており、かつ主張される対象物の性質を根本的に変更しない付加的な構成要素の内包のみを許すと解釈されるべきである。
【0015】
「対象」、「患者」、または「宿主」という用語は、本明細書において互換可能に用いられ得、そしてヒトまたは非ヒト動物を指し得る。非ヒト動物には、非ヒト霊長類、イヌ、およびネコが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
【0016】
「対象」、「患者」、または「個体」という用語は、ヒトまたは非ヒト動物を指すために用いられ得る。対象には、脱感作および/または寛容の誘導を含み得る免疫調節によって処置され得かつ/または予防され得る疾患および/または障害を有するヒト、または有する危険性があるヒトが含まれ得る。免疫調節によって処置されかつ/または予防される疾患および/または障害には、食物アレルギーおよび他のタイプのアレルギーを含めたアレルギーが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。免疫調節によって処置されかつ/または予防される疾患および/または障害には、心臓(例えば、心筋炎および心筋梗塞後症候群)、腎臓(例えば、抗糸球体基底膜腎炎)、肝臓(例えば、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変)、皮膚(例えば、円形脱毛症、乾癬、全身性強皮症、および白斑)、副腎(例えば、アジソン病)、膵臓(例えば、自己免疫性膵炎および1型糖尿病(T1D))、甲状腺(例えば、グレーブス病)、唾液腺(例えば、シェーグレン症候群)、消化器系(例えば、セリアック病、クローン病、および潰瘍性結腸炎)、血液(例えば、自己免疫性血小板減少性紫斑病、エヴァンス症候群、悪性貧血、および血小板減少症)、結合組織(例えば、強直性脊椎炎、若年性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、および全身性エリテマトーデス)、筋組織(例えば、線維筋痛症、重症筋無力症、および皮膚筋炎)、ならびに神経系(例えば、急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、および特発性炎症性脱髄疾患)の自己免疫疾患など、自己免疫性の疾患および障害が含まれ得る。
【0017】
対象には、移植手術をまさに受けようとしている対象または移植手術を受けた対象が含まれ得る。対象には、移植手術をまさに受けようとしている対象または移植手術を受けた対象が含まれ得、該対象は移植拒絶であるまたは移植拒絶の危険性がある。
【0018】
炭水化物で修飾された粒子が本明細書において開示される。炭水化物で修飾された粒子は、比較的小さくかつマイクロスケールまたはナノスケールの範囲内に有効平均直径を有する。一部の態様において、炭水化物で修飾された粒子は、約500μm、200μm、100μm、50μm、20μm、10μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.05μm、0.02μm、0.01μm未満の有効平均直径を有し得る、または炭水化物で修飾された粒子は、0.02~1μmもしくは200~1000nmなど、終点としてのこれらの値のいずれかによって境界される値域内に有効平均直径を有し得る。炭水化物で修飾された粒子は、「マイクロ粒子」および/または「ナノ粒子」と呼ばれ得る。具体的には、炭水化物で修飾された粒子は、「炭水化物で増強されたナノ粒子」または「CENP」と呼ばれ得る。
【0019】
開示される粒子は、典型的に、例えば開示される粒子をそれを必要としている対象に投与するための、適切なゼータ電位を有する。一部の態様において、開示される粒子は、例えば、以下のゼータ電位値:-10mV、-20mV、-30mV、-40mV、-50mV、-60mV、-70mV、-80mV、-90mV、または-100mVのいずれかによって境界される値域内、例えば-50~-100mVまたは-60~-80mVに負のゼータ電位を有する。
【0020】
開示される粒子は、生分解性基材を含み得る。粒子は、当技術分野において理解されるであろう「生分解性」である。「生分解性」という用語は、生理学的環境においてより小さな基本的構成要素に分解され得る材料を記載するために用いられ得る。好ましくは、より小さな基本的構成要素は無毒である。例えば、生分解性ポリマーは、水、二酸化炭素、糖類、有機酸(例えば、トリカルボン酸またはアミノ酸)、およびアルコール(例えば、グリセロールまたはポリエチレングリコール)を含むがそれらに限定されない、基本的構成要素に分解され得る。本明細書において企図される粒子を調製するために利用され得る生分解性材料には、米国特許第7,470,283号;第7,390,333号;第7,128,755号;第7,094,260号;第6,830,747号;第6,709,452号;第6,699,272号;第6,527,801号;第5,980,551号;第5,788,979号;第5,766,710号;第5,670,161号;および第5,443,458号;ならびに米国公開出願第20090319041号;第20090299465号;第20090232863号;第20090192588号;第20090182415号;第20090182404号;第20090171455号;第20090149568号;第20090117039号;第20090110713号;第20090105352号;第20090082853号;第20090081270号;第20090004243号;第20080249633号;第20080243240号;第20080233169号;第20080233168号;第20080220048号;第20080154351号;第20080152690号;第20080119927号;第20080103583号;第20080091262号;第20080071357号;第20080069858号;第20080051880号;第20080008735号;第20070298066号;第20070288088号;第20070287987号;第20070281117号;第20070275033号;第20070264307号;第20070237803号;第20070224247号;第20070224244号;第20070224234号;第20070219626号;第20070203564号;第20070196423号;第20070141100号;第20070129793号;第20070129790号;第20070123973号;第20070106371号;第20070050018号;第20070043434号;第20070043433号;第20070014831号;第20070005130号;第20060287710号;第20060286138号;第20060264531号;第20060198868号;第20060193892号;第20060147491号;第20060051394号;第20060018948号;第20060009839号;第20060002979号;第20050283224号;第20050278015号;第20050267565号;第20050232971号;第20050177246号;第20050169968号;第20050019404号;第20050010280号;第20040260386号;第20040230316号;第20030153972号;第20030153971号;第20030144730号;第20030118692号;第20030109647号;第20030105518号;第20030105245号;第20030097173号;第20030045924号;第20030027940号;第20020183830号;第20020143388号;第20020082610号;および第0020019661号に開示される材料が含まれ得、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。典型的に、本明細書において開示される粒子は、粒子の生分解性ポリマーのモノマーへの分解;粒子の生分解性ポリマーの水、二酸化炭素、糖類、有機酸(例えば、トリカルボン酸またはアミノ酸)、およびアルコール(例えば、グリセロールまたはポリエチレングリコール)への分解;ならびに粒子の炭水化物部分または粒子内に存在する任意の免疫調節作用物質を放出するような粒子の分解のうちの1つまたは複数により、対象への投与後約4、5、6、7、または8週間後に、粒子がそれらの初期質量の約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%を上回る割合を喪失するような分解速度でインビボで分解される。
【0021】
粒子の基材を調製するための適切なポリマーには、PLAとPGAとのコポリマー(すなわち、PLGA)、ポリ乳酸を含むポリラクチドなどのモノポリマー(すなわち、PLA)、ポリグリコール酸を含むポリグリコリドなどのモノポリマー(すなわち、PGA)が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。他の適切なポリマーには、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ジオキサノン)(PDO)、コラーゲン、再生コラーゲン、ゼラチン、再生ゼラチン、架橋ゼラチン、およびそれらのコポリマーが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。粒子のポリマーは、ポリマー鎖の加水分解の結果として、ポリラクチド、ポリグリコリド、およびそれらのコポリマーなど、生物学的に許容されかつ進行的により小さな構成要素に分解するように設計される。これらは、最終的に乳酸およびグリコール酸へと崩壊し、クレブス回路に入り、かつ二酸化炭素および水へと崩壊し、かつ排出される。
【0022】
炭水化物部分に加えて、開示される炭水化物で修飾された粒子は、免疫応答を調節するための付加的な構成要素を含み得る。とくに、開示される炭水化物で修飾された粒子は、抗原、例えば抗原に対して対象を脱感作しかつ/または対象において寛容を誘導するために利用されかつ対象に投与される抗原を含み得る。抗原は、炭水化物で修飾された粒子の表面に共有結合的にまたは別様に付着され得る。適切な抗原には、アレルギー反応と関連した抗原、例えば食物アレルギーと関連した抗原も含まれ得る。開示される炭水化物で修飾された粒子へ含めるための適切な抗原には、心臓(例えば、心筋炎および心筋梗塞後症候群)、腎臓(例えば、抗糸球体基底膜腎炎)、肝臓(例えば、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変)、皮膚(例えば、円形脱毛症、乾癬、全身性強皮症、および白斑)、副腎(例えば、アジソン病)、膵臓(例えば、自己免疫性膵炎および1型糖尿病(T1D))、甲状腺(例えば、グレーブス病)、唾液腺(例えば、シェーグレン症候群)、消化器系(例えば、セリアック病、クローン病、および潰瘍性結腸炎)、血液(例えば、自己免疫性血小板減少性紫斑病、エヴァンス症候群、悪性貧血、および血小板減少症)、結合組織(例えば、強直性脊椎炎、若年性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、および全身性エリテマトーデス)、筋組織(例えば、線維筋痛症、重症筋無力症、および皮膚筋炎)、ならびに神経系(例えば、急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、および特発性炎症性脱髄疾患)の自己免疫疾患より選択されるがそれらに限定されない自己免疫疾患と関連した抗原など、自己免疫疾患と関連した自己抗原が含まれ得る。
【0023】
開示される炭水化物で修飾された粒子についての一部の態様において、炭水化物部分に加えて、開示される炭水化物で修飾された粒子は、抗原またはアレルゲンを含み得、例えば炭水化物で修飾された粒子を、抗原もしくはアレルゲンに対してアレルギー反応を呈する対象、または抗原もしくはアレルゲンに対してアレルギー反応を起こす危険性がある対象に投与して、抗原もしくはアレルゲンに対して対象を脱感作しかつ/または抗原もしくはアレルゲンに対して対象において寛容を誘導することができる。開示される炭水化物で修飾された粒子についての他の態様において、炭水化物部分に加えて、開示される炭水化物で修飾された粒子は、インスリンに由来する抗原を含み得、例えば炭水化物で修飾された粒子を、1型糖尿病を有する対象または1型糖尿病を発症する危険性がある対象に投与して、インスリンに対して対象を脱感作しかつ/またはインスリンに対して対象において寛容を誘導することができる。開示される炭水化物で修飾された粒子についてのさらなる態様において、炭水化物部分に加えて、開示される炭水化物で修飾された粒子は、移植片に由来する抗原を含み、移植片の抗原に対して対象を脱感作しかつ/または移植片の抗原に対して対象において寛容を誘導することができ、そして移植拒絶を処置しかつ/または予防することができる。
【0024】
炭水化物で修飾された粒子へ含めるための適切な抗原には、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が含まれ得る。本明細書において使用するとき、本明細書において互換可能に言及され得る「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸のポリマーを含む分子を指す。天然に存在するタンパク質分子の配列を指すために「アミノ酸配列」が記述される場合、「アミノ酸配列」および同様の用語は、該アミノ酸配列を、記述されるタンパク質分子と関連した完全な天然アミノ酸配列に限定することを意味するわけではない。「アミノ酸」という用語は、天然に存在するおよび/または天然に存在しないアミノ酸を指し得る。
【0025】
本明細書において企図されるように、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質は、抗原、例えば本明細書において開示される粒子の表面に共有結合的に付着される抗原として利用され得る。例えば、SEQ ID NO:1~9は、本明細書において企図される抗原として利用され得る、インスリンまたはその変種(例えば、Q→E脱アミド化変種)の一部分のアミノ酸配列を提供する。例示的なペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質は、SEQ ID NO:1~9のいずれかのアミノ酸を含み得る、またはSEQ ID NO:1~9のいずれかと少なくとも約80%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸を含み得る。変種ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質は、参照ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質と比べて、1個または複数個のアミノ酸の置換、欠失、付加、および/またはアミノ酸挿入を有するポリペプチドを含み得る。
【0026】
本明細書において企図されるアミノ酸配列は、参照アミノ酸配列と比べて、保存的アミノ酸置換を含み得る。例えば、変種インスリンポリペプチドは、天然インスリンポリペプチドと比べて、保存的アミノ酸置換を含み得る。「保存的アミノ酸置換」とは、参照ポリペプチドの特性を最も妨げないと予測されるそうした置換である。言い換えれば、保存的アミノ酸置換は、参照タンパク質の構造および機能を実質的に保存する。以下の表は、例示的な保存的アミノ酸置換の一覧を提供する。
【0027】
保存的アミノ酸置換は、概して、(a)例えばβシートもしくはαヘリックス立体構造としての、置換のエリアにおけるポリペプチド骨格の構造、(b)置換の部位における分子の電荷もしくは疎水性、および/または(c)側鎖の大きさ、を維持する。
【0028】
「欠失」とは、参照配列と比べて、1個または複数個のアミノ酸残基またはヌクレオチドの欠如をもたらす、アミノ酸またはヌクレオチド配列の変化を指す。欠失は、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、50、100、または200個のアミノ酸残基またはヌクレオチドを取り除く。欠失には、内部欠失または末端欠失(例えば、参照ポリペプチドのN末端切断もしくはC末端切断、または参照ポリヌクレオチドの5'末端もしくは3'末端切断)が含まれ得る。
【0029】
「フラグメント」とは、参照配列と配列が同一であるが参照配列よりも長さが短い、アミノ酸配列またはポリヌクレオチドの一部分である。フラグメントは、少なくとも1個のヌクレオチド/アミノ酸残基を引いた、参照配列の全体の長さまでを含み得る。例えば、フラグメントは、それぞれ参照ポリヌクレオチドまたは参照ポリペプチドの5~1000個の連続的ヌクレオチドまたは連続的アミノ酸残基を含み得る。一部の態様において、フラグメントは、それぞれ参照ポリヌクレオチドまたは参照ポリペプチドの少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、250、または500個の連続的ヌクレオチドまたは連続的アミノ酸残基を含み得る。フラグメントは、分子のある特定の領域から優先的に選択され得る。「少なくともフラグメント」という用語は、全長ポリヌクレオチドまたは全長ポリペプチドを包含する。
【0030】
「相同性」とは、2種もしくはそれを上回る種類のポリヌクレオチド配列、または2種もしくはそれを上回る種類のポリペプチド配列の間での配列類似性、または互換可能に配列同一性を指す。相同性、配列類似性、および配列同一性パーセンテージは、当技術分野におけるおよび本明細書において記載される方法を用いて判定され得る。
【0031】
ポリペプチド配列に適用される「同一性パーセント」および「同一性%」という語句は、標準化されたアルゴリズムを用いてアライメントされた少なくとも2種のポリペプチド配列間での残基一致のパーセンテージを指す。ポリペプチド配列アライメントの方法は周知である。一部のアライメント法は、保存的アミノ酸置換を考慮に入れる。上記でより詳細に説明されるそのような保存的置換は、概して、置換の部位における電荷および疎水性を保ち、ゆえにポリペプチドの構造(したがって機能)を保つ。アミノ酸配列に対する同一性パーセントは、当技術分野において理解されるように判定され得る。(例えば、米国特許第7,396,664号を参照されたく、それは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。一般に用いられかつ自由に利用可能な配列比較アルゴリズムの一式は、国立生物工学情報センター(NCBI)の基本的局所的アライメント検索ツール(BLAST)によって提供されており(Altschul, S. F. et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403 410)、それは、NCBI, Bethesda, Md.を含めたいくつかの供給元からそのウェブサイトで利用可能である。BLASTソフトウェア一式は、公知のアミノ酸配列と多様なデータベースからの他のアミノ酸配列とをアライメントするために用いられる「blastp」を含めた、様々な配列分析プログラムを含む。
【0032】
同一性パーセントは、例えば特定のSEQ ID番号によって規定される既定のポリペプチド配列全体の長さにわたって測定され得る、またはより短い長さにわたって、例えばより大きな既定のポリペプチド配列から選ばれたフラグメント、例えば少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70、もしくは少なくとも150個の連続的残基のフラグメントの長さにわたって測定され得る。そのような長さは単なる例示的なものであり、かつ本明細書において、表、図、または配列表において示される配列によって裏付けされる任意のフラグメント長を用いて、同一性パーセンテージが測定され得る長さを記載し得ると理解される。
【0033】
特定のポリペプチド配列の「変種」は、国立生物工学情報センターのウェブサイトで利用可能な「BLAST 2 Sequences」ツールを備えたblastpを用いて、ポリペプチド配列の一方のある特定の長さにわたる特定のポリペプチド配列と少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチド配列と規定される。(Tatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden (1999),「Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences」, FEMS Microbiol Lett. 174:247-250を参照されたい)。そのような一対のポリペプチドは、該ポリペプチドの一方のある特定の既定の長さにわたって、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%、またはそれを上回る割合の配列同一性を示し得る。
【0034】
開示されるポリペプチドは、該開示されるポリペプチドが天然に存在していると言われ得ないような、アミノ酸配列または修飾されたアミノ酸を含むように修飾され得る。一部の態様において、開示されるポリペプチドは修飾され、かつ修飾は、アシル化、アセチル化、ホルミル化、リポイル化、ミリストイル化、パルミトイル化、アルキル化、イソプレニル化、プレニル化、およびアミド化からなる群より選択される。開示されるポリペプチドにおけるアミノ酸はこのようにして修飾され得るが、とくに、修飾は、ポリペプチドのN末端および/またはC末端に存在し得る(例えば、N末端アシル化もしくはアセチル化、および/またはC末端アミド化)。修飾は、ポリペプチドの安定性を増強し得、かつ/またはポリペプチドをタンパク質分解に対して抵抗性にし得る。
【0035】
開示される粒子は、米国特許第8,546,371号;第8,518,450号;および第7,550,154号に開示される方法を含むがそれらに限定されない、当技術分野において公知の方法によって調製され得、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。マイクロ粒子および/またはナノ粒子を形成するための方法には、噴霧乾燥、沈降、および/または基材(例えば、生分解性のポリマー基材)の粉砕が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
【0036】
開示される粒子は、典型的に、炭水化物部分、好ましくは(例えば、共有結合性付着により)粒子の表面に付着された免疫調節物質である炭水化物部分を含めることにより修飾される。適切な炭水化物部分には、以下の群またはその薬学的な塩に由来する部分が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない:ヘパリン二糖I-A、ヘパリン二糖II-A、ヘパリン二糖III-A、ヘパリン二糖IV-A、ヘパリン二糖IV-S、ヘパリン不飽和二糖I-H、ヘパリン不飽和二糖II-H、ヘパリン不飽和二糖II-H、ヘパリン不飽和二糖I-P、コンドロイチン二糖Δdi-0S、コンドロイチン二糖Δdi-4S、コンドロイチン二糖Δdi-6S、コンドロイチン二糖ΔDi-diSB、コンドロイチン二糖ΔDi-diSE、コンドロイチン二糖ΔDi-triS、コンドロイチン二糖ΔDi-UA2S、ネオカラデカオース(Neocarradecaose)-41,3,5,7,9-ペンタ-O-サルフェート、ネオカラヘキサデカオース(neocarrahexadecaose)-41,3,5,7,9,11,13,15-オクタ-O-サルフェート、GalNAcβ1-4Gal(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)の線毛に対する受容体)、血液型Bタイプ2直鎖三糖、P1抗原、Tn抗原、シアリル・ルイスA、シアリル・ルイスX、シアリル・ルイスX β-メチルグリコシド、スルホ・ルイスA、スルホ・ルイスX、α1-2-マンノビオース、α1-3-マンノビオース、α1-6-マンノビオース、マンノテトラオース、α1-3,α1-3,α1-6-マンノペントース、β1-2-N-アセチルグルコサミン-マンノース、LS-四糖a(LSTa)、LS-四糖c(LSTc)、α-D-N-アセチルガラクトサミニル1-3ガラクトース、α-D-N-アセチルガラクトサミニル1-3ガラクトースβ1-4グルコース、D-ガラクトース-4-O-サルフェート、グリシル-ラクトース(Lac-gly)、グリシル-ラクト-N-テトラオース(LNT-gly)、2'-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ジフコヘキサオースI(LNDFH I)、ラクト-N-ジフコヘキサオースII(LNDFHII)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH)、3'-シアリルラクトース(3'-SL)、6'-シアリルラクトース(6'-SL)、3'-シアリル-N-アセチルラクトサミン、6'-シアリル-N-アセチルラクトサミン(6'-SLN)、3-フコシルラクトース(3FL)、フコイダン、4-β-ガラクトビオース、1-3ガラクトジオシル(Galactodiosyl)β-メチルグリコシ(glycosie)、α1-3,β1-4,α1-3ガラクトテトラオース、β-ガラクトシル1-3 N-アセチルガラクトサミンメチルグリコシド、β1-3 Gal-N-アセチルガラクトサミニル-β1-4 Gal-β1-4-Glc、β1-6ガラクトビオース、グロボトリオース、β-D-N-アセチルガラクトサミニル1-3ガラクトース(グロボトリオースの末端二糖)、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)、D-フコース、L-フコース、D-タロース、カリステギンA3、カリステギンB3、N-メチル シス-4-ヒドロキシメチル-L-プロリン、2,5-ジデオキシ-2,5-イミノ-D-マンニトール、カスタノスペルミン、6-エピ-カスタノスペルミン、およびそれらの組み合わせ。一部の態様において、粒子は、複数種の炭水化物部分を含み、そして免疫調節により疾患または障害を処置および/または予防するように調整される。
【0037】
開示される粒子の炭水化物部分は、典型的に、炭素、水素、および酸素原子からなる炭水化物であり、かつ経験的式Cm(H2O)nを有し得、式中、mおよびnは整数でありかつ同じであっても異なっていてもよい。一部の炭水化物は、炭素、水素、および酸素以外の原子、例えば窒素、リン、および/または硫黄原子を含み得る。しかしながら、炭素、水素、および酸素以外の原子、例えば窒素、リン、および/または硫黄原子を含む炭水化物は、典型的に、炭水化物分子のごくわずかなモル質量(例えば、10%または5%未満)でこれら他の原子を含む。
【0038】
炭水化物部分は、(例えば、共有結合性連結により)粒子の表面に直接付着され得る。任意で、炭水化物部分は、例えば共有結合的に1つまたは複数のリンカー分子(例えば、ポリエチレングリコールリンカー)を介して、粒子の表面に間接的に付着され得る。炭水化物部分は、カルボジイミド(EDC)架橋を含み得るがそれらに限定されない架橋法により粒子の表面に付着され得る。
【0039】
任意で、開示される粒子は、炭水化物部分以外に1種または複数種の付加的な免疫調節作用物質を含み得る。付加的な作用物質には、上記で述べられる抗原、ならびに/またはサイトカイン(例えば、インターロイキンおよびインターフェロン)および/もしくは免疫調節抗体が含まれ得る。
【0040】
開示される粒子は、「免疫増強物質」および/または「免疫阻害物質」として機能する。したがって、開示される粒子は、ワクチン効力を改善する免疫増強;抗腫瘍免疫および癌転帰を改善する免疫増強;感染性疾患の間の転帰を改善する免疫増強;喘息、食物アレルギー、および湿疹などのアレルギー疾患を処置する免疫阻害;関節リウマチ、多発性硬化症、および糖尿病などの自己免疫疾患を処置する免疫阻害;ならびに/または移植の間の転帰を改善する免疫阻害を含むがそれらに限定されない、いくつかの適用において投与され得る。
【0041】
開示される粒子は、抗原に対して対象を脱感作しかつ/または対象において寛容を誘導するために投与することができる。脱感作および/または寛容は、好ましくは、ベースラインを上回るマクロファージによるIL-10、TGFβ、またはCCL4の分泌の誘導対ベースラインを上回るIL-6の分泌の誘導を含み得るがそれらに限定されない、当技術分野におけるおよび本明細書において開示される方法を用いて査定され得る。したがって、脱感作および/または寛容は、ベースラインを上回るIL-10の分泌対ベースラインを上回るIL-6の分泌の変化、の相対的変化を反映するIL-10/IL-6比を用いて査定され得る。
【0042】
開示される粒子は、対象において免疫応答を調節するために投与することができる。したがって、開示される粒子は、薬学的組成物として製剤化され得る。そのような組成物は、特定の患者の年齢、性別、重量、および病状、ならびに投与の経路などの要因を考慮に入れた投薬量でかつ医学の技術分野における当業者に周知の技法によって製剤化され得かつ/または投与され得る。
【0043】
組成物は、当技術分野において公知の、担体、希釈剤、賦形剤(例えば、ラクトース、スクロース、およびマンニトールなどの粉末賦形剤)、および界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)を含む薬学的溶液を含み得る。さらに、組成物は、防腐剤(例えば、抗微生物剤または抗細菌剤)を含み得る。組成物は、緩衝剤(例えば、組成物のpHを6.5~7.5に維持するため)も含み得る。
【0044】
薬学的組成物は、予防的にまたは治療的に投与され得る。予防的投与において、組成物は、疾患または障害から保護するために免疫応答を調節するのに十分な量(すなわち、「予防上有効な用量」)で対象に投与され得る。治療的適用において、組成物は、疾患または障害を処置するのに十分な量(すなわち、「治療上有効な用量」)で対象に投与される。
【0045】
本明細書において開示される組成物は、多様な経路を介して送達され得る。典型的な送達経路には、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、または皮下送達)が含まれる。他の経路には、鼻腔内および肺内経路が含まれる。薬学的組成物の製剤化には、液体(例えば、溶液およびエマルション)、スプレー、およびエアロゾルが含まれ得る。とくに、組成物は、鼻腔内または肺内送達のためのエアロゾルまたはスプレーとして製剤化され得る。鼻腔内または肺内送達のためのエアロゾルまたはスプレーを投与するための適切なデバイスには、吸入器および噴霧器が含まれ得る。
【0046】
本明細書において開示される組成物は、抗原の免疫原性を増強するために抗原と組み合わせて与えられるアジュバントまたは化学的もしくは生物学的作用物質を含めた、他の免疫学的な抗原性組成物またはワクチン組成物または治療用組成物とともに共投与され得るまたは逐次的に投与され得る。付加的な治療用作用物質には、インターロイキンおよびインターフェロンなどのサイトカインが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
【0047】
本明細書において使用するとき、「プライム-ブーストワクチン接種レジメン」とは、対象に第一の組成物を投与し、次いで決められた期間の後(例えば、約2、3、4、5、または6週間後)、対象に、第一の組成物と同じであっても異なっていてもよい第二の組成物を投与するレジメンを指す。第一の組成物(および第二の組成物)は、1回または複数回投与され得る。開示される方法は、第一の組成物を少なくとも1回投与することによって対象を第一の組成物でプライムする段階、あらかじめ決められた時間の長さ(例えば、少なくとも約2、3、4、5、または6週間)を経過させる段階、次いで同じ組成物または第二の異なる組成物を投与することによってブーストする段階を含み得る。
【0048】
本明細書において開示される薬学的組成物の効力を査定するために、細胞媒介性応答および/または抗体応答の誘導を測定することによって、免疫応答を査定し得る。T細胞応答は、例えば新鮮なもしくは培養されたPBMCの四量体染色、ELISPOTアッセイを用いることによって、または機能的細胞毒性アッセイを用いることによって測定され得、それらは当業者に周知である。抗体応答は、ELISAなど、当技術分野において公知のアッセイによって測定され得る。病原体の力価または負荷は、病原体の核酸を検出する方法を含めた、当技術分野における方法を用いて測定され得る。(例えば、米国特許第7,252,937号を参照されたく、その内容は参照によりその全体が組み入れられる)。
【実施例
【0049】
以下の実施例は例証的であり、かつ開示される対象物を限定することを意図するわけではない。
【0050】
実施例1-免疫調節のための、炭水化物で増強されたナノ粒子
序論
PLGAナノ粒子は、薬物送達、組織および細胞のイメージングを含めた多様な適用のために、ならびに免疫の活性化または寛容の誘導を助ける自己または外来タンパク質を送達するために利用されている。(Sah et al.,「Concepts and practices used to develop functional PLGA-based nanoparticulate systems」, International Journal of Medicine, 2013:8 747-765を参照されたい)。ここで、本発明者らは、官能基化PLGA粒子を生成するための技術を開発し、かつ免疫応答を改変するためのそれらの潜在力を確立した。
【0051】
実験の方法、結果、および考察
本発明者らは、初めに、アレルギー疾患を処置することへの治療的手法として、細胞に連結した抗原寛容に関する本発明者らの研究からこのエリアに着手し(Smarr et al.,「Antigen-fixed leukocytes tolerize Th2 responses in mouse models of allergy」, The Journal of Immunology, 11/2011; 187(1):5090-8を参照されたい)、それによってアレルギー性タンパク質を、EDCカルボジイミド架橋化学を用いて自己細胞に付着させ、マウスに注入して戻し、かつ寛容(すなわち、免疫学的非応答の状態)が生じる。これを患者に適用することは、細胞の使用によって複雑化するため、本発明者らは、代用としてPLGAナノ粒子の潜在的使用を検討し始めた;しかしながら、本発明者らの知見は、PLGAナノ粒子内にカプセル化された抗原が、異なる応答(寛容よりもむしろ脱感作、そのため反応性はしばらくして回復される)を誘導することを示した。マクロファージは、それらの産生を通じた、インターロイキン-10(IL-10)と呼ばれる主要な免疫媒介物質の寛容を含めた、免疫応答において重要であると考えられる1種の免疫細胞であるため、本発明者らは、EDC-細胞体対PLGAナノ粒子の効果を、IL-10産生に対するそれらの効果についてスクリーニングすることへのインビトロ手法を開発した。図1に示されるように、本発明者らは、EDC-細胞が、刺激(リポ多糖(LPS))後にIL-10を増強し、一方でPLGA粒子はそうではないことを観察した。
【0052】
これに基づき、本発明者らは、細胞上に存在するシグナルがPLGA粒子上に存在しないと結論付けし、そのためハイスループットに基づくスクリーニングを開発した(エバンストンにあるノースウェスタンHTSコアにより実施された)。図2に概説されるように、本発明者らは、炎症誘発性応答(IL-6)または抗炎症応答(IL-10)を検討した。
【0053】
本発明者らは、細胞上に見出されるがPLGAナノ粒子上には存在しないと考えられる70種の特有の炭水化物化合物の一団を検討した。図2におけるストラテジーを用いて、本発明者らは、0.1、1、10、および100μMという治療上関連する用量曲線にわたるサイトカイン産生に対する最大の変化倍率を算出した。図3に表されるように、本発明者らは、EDC-細胞または刺激単独と比較して、上方制御、下方制御の両方、または変化なしといった、マクロファージ応答を改変し得る多くの炭水化物化合物を同定し、これらは、粒子に連結された場合にPLGAを官能基化する潜在力を有するという示唆を有した。これをさらに追及するために、本発明者らは、1つの候補(L-フコース)を選出し、かつ2段階の化学的過程を用いてそれをPLGAに連結した。連結過程は、図4に示されている。
【0054】
初めに、L-フコースの誘導体(4-アミノフェニルβ-L-フコピラノシド)を、EDC架橋反応を用いてポリ(エチレングリコール)(PEG)リンカーに付着させた。次いで、これを、第二のEDC架橋反応を用いてカルボキシル化PLGAナノ粒子に付着させた。最終産物の特徴付けにより、連結していない粒子の球体構造の喪失、および粗い不規則な粒子が示された。フコシル化PLGAナノ粒子(F-CENPと称される)の機能的能力を試験するために、本発明者らは、IL-10産生のための本発明者らのインビトロモデルに対するそれらの効果を検討した。図5に示されるように、F-CENPは、PLGA単独、L-フコース単独、または更にはEDC-細胞を受け取った細胞よりもIL-10誘導において有意に優れており、官能基化PLGA粒子はEDC-細胞さえを上回る改善であることが示唆された。
【0055】
実施例2-食物アレルギーにおける免疫寛容の誘導のための、炭水化物で増強されたナノ粒子の開発
食物アレルギーは、食物に対する有害な免疫反応として規定され得、そして蕁麻疹および致死的なアナフィラキシーを含み得る。反応の重症度は、摂取された食物の量、食物の形態(例えば、生の、調理された、または加工された)、ならびに年齢、感作の程度、および他の併存状況などの危険要因を含めた、いくつかの要因に依存し得る。食物アレルギーは、古典的にIgE媒介性であるとして知られるが、生理学的な応答および症状においては不均一であり得る。(Sicherer and Sampson, J Allergy Clin. Immunol. (2010) Feb;125(2 Suppl 2)S116-25;Berin and Mayer, J. Allergy Clin. Immunol. (2013) Jan;131(1):14-22;およびBoyce et al. (NIAIDガイドライン), J. Allergy Clin. Immunol. (2010) Dec;126(6 Suppl):S1-58を参照されたい)。食物アレルギーに関与する免疫学的メカニズムには感作および寛容が含まれ、(Johnston et al., J. Immunol. (2014) Mar 15;192(6):2529-34、および図6を参照されたい)、かつ食物アレルギーに対する潜在的療法は、脱感作のために(短期療法)および/または寛容を増加させるために(長期療法)抗原を投与する段階を伴い得る(Berin and Mayer, J. Allergy Clin. Immunol. (2013) Jan;131(1):14-22、および図7)。脱感作を誘導するために、マイクロ粒子にカプセル化された抗原が食物アレルギーモデルにおいて投与されており、そして抗原固定された白血球は、アレルギーのマウスモデルにおいて応答を寛容化することが示されている。(Smarr et al., J. Immunol. (2011) 187:5090-5098を参照されたい)。しかしながら、理想的な工学的治療法は、免疫系に、脱感作または寛容を誘導する抗原だけでなく、並行した寛容原性シグナルも提供すべきである。したがって、脱感作および寛容を伴うアレルギー療法に利用され得る寛容原性シグナルを同定するための方法が望ましい。いったん同定されると、寛容原性シグナルは、脱感作および/または寛容を誘導するための抗原を任意で含むマイクロ粒子および/またはナノ粒子の一部として製剤化され得る。アポトーシス細胞は、細胞表面に天然の寛容原性シグナルを含む。(Taylor et al., Nat. Rev. Mol. Bio. (2008) Mar;9(3):231-41、および図8を参照されたい)。寛容の発生に関与し得るタンパク質、脂質、糖脂質、および炭水化物を含めた、化合物が細胞表面に存在する。
【0056】
アレルギー応答は一般的に炎症応答を伴い、そしてLPS刺激されたマクロファージ(すなわち、「活性化マクロファージ」)は、炎症応答の傾斜を調査するためのツールとして用いられている。例えば、LPS刺激されたマクロファージは、IL-6、TNF-α、およびIL1βなどの炎症誘発性サイトカインを分泌し、かつこれらの炎症性サイトカインの分泌の調節を用いて、炎症応答を阻害する化合物を同定し得る。炎症誘発性サイトカインの分泌の減少およびIL-10/TGFβの増加によって特徴付けされる、RAW 264.7マクロファージにおいてこの炎症応答を阻害することが見出されている化学的化合物には、6-デヒドロギンゲルジオン;ペイミン;アデノシン;およびサイコサポニンAが含まれる。(Huang et al., J. Agric. Food Chem. (2014) Seep 17;62(37):9171-9;Yi et al., Immunopharmacol. Immunotoxicol. (2013) Oct;35(5):567-72;Zhu et al., Exp. Ther. Med. (2013) May;5(5):1345-1350;およびKoscso et al., J. Leukoc. Biol. (2013) Dec;94(6):1309-15を参照されたい)。したがって、活性化RAWマクロファージは、寛容原性シグナルをスクリーニングするモデルとして用いられ得る。
【0057】
活性化RAWマクロファージを用いて、本発明者らは、寛容原性シグナルを同定するハイスループットスクリーニング法を開発した。(図2を参照されたい)。本発明者らは、LPSで活性化されたマクロファージにおいて、および化学的架橋剤のエチルカルボジイミドで処理されている脾細胞(SP)(ECDI-SP)の存在下にてLPSで活性化されたマクロファージにおいて、ベースラインに対してIL-10分泌を増加させ得かつ/またはベースラインに対してIL-6分泌を減少させ得る化合物の能力に基づき、七十(70)種の化合物を試験した。ECDI-SPの表面に架橋されている抗原は、抗原特異的寛容を誘導することにおいて投与され得(Jenkins et al., J. Exp. Med. 165:302-319 (1987)を参照されたい)、かつしたがって、本発明者らは、ECDI-SPの存在下にてLPSで活性化されたマクロファージを含めて、LPSで活性化されたマクロファージにおいて、およびECDI-SPの存在下にてLPSで活性化されたマクロファージにおいて、化合物が同様の寛容原性シグナルを呈するかどうかを判定した。本発明者らは、寛容原性シグナルを呈するいくつかの炭水化物化合物を同定した。(図3Aおよび3Bを参照されたい)。フコースを、寛容原性シグナルを呈する例示的な炭水化物化合物として選択し、かつPLGAポリマーコアを有するナノ粒子に連結して、炭水化物で増強されたPLGAナノ粒子(F-CENP)を生成した。(図4を参照されたい)。図5に示されるように、F-CENPは、PLGA単独、L-フコース単独、または更にはEDC-細胞を受け取った細胞よりもIL-10誘導において有意に優れており、官能基化PLGA粒子はEDC-細胞さえを上回る改善であることが示唆された。
【0058】
要するに、RAWマクロファージは、寛容を誘導し得る潜在的化合物を同定するスクリーニングシステムとして用いられ得る。70種の化合物についての本発明者らの予備的スクリーニングは、IL-6分泌を変化させないまたは減少させると同時にIL-10分泌を促進するために用いられ得るいくつかの化合物を明らかにした。本発明者らの結果は、抗原を投与しかつより大きな効率で寛容を誘導するための治療設計に、寛容促進シグナルが組み入れられ得ることを示す。
【0059】
実施例3-T1Dにおける寛容送達のためのLNFPIIIおよびGAS6シグナル伝達ナノ粒子
背景
1型糖尿病(T1D)は、膵臓β細胞の自己反応性T細胞媒介性破壊によって引き起こされる自己免疫障害であり、外因性インスリン療法を要する高血糖症をもたらす。T1Dを発症する高い危険性を有する個体は、現在、ヒト白血球抗原に関する遺伝子型判定と膵島細胞自己抗体の一団に関する血清学的試験との組み合わせで同定され得る1。この危険性の高い集団では、臨床的糖尿病の急性発症の前または間、進行中のβ細胞指向性自己免疫が有効かつ永久に阻害され得る場合に、残りのβ細胞が正常血糖を回復させ得るような、実質的なβ細胞質量がなおも存在し得る2,3。制御性T細胞(Treg)は、末梢寛容を維持することにおいて重要な役割を果たし、かつそれらの欠損は、T1Dを含めた制御不良の自己免疫と関連している4。それゆえ、Tregを直接的または間接的に増殖させる免疫療法は、有望な治療的手法として見られてきた5~7。最近の第1相臨床試験は、エクスビボ増殖の実現可能性、およびT1D患者におけるポリクローナルTregの養子移入の安全性を実証した7;しかしながら、エクスビボ増殖されたTregを用いたそのような養子免疫療法の効力は、依然として判定されていない。他方で、抗原特異的Tregは、T1Dにおける自己免疫を抑制することにおいて、ポリクローナルTregよりも強力であると考えられる8~10。しかしながら、ヒト療法のための抗原特異的Tregのエクスビボ増殖は、関係するβ細胞自己抗原が、そのような個体において拡散しているよく認識されたエピトープを与えられた移動標的であることは言うまでもなく、非常に労働集約的でありかつ重要な規制およびライセンス義務を負う11。その結果として、内因性Tregのインビボ増殖を目的とする免疫療法が、より実現可能性が高く、かつ所与の個体に存在する自己抗原の特異的セットに合わせて調整された所望の抗原特異的阻害を達成する可能性がより高い。T1Dにおける免疫療法の最も有望な抗原候補は、インスリンそれ自体およびその誘導体である12。理想的には、関連するインスリン由来自己抗原を用いて、他のβ細胞自己抗原に拡散する有効な感染寛容13を誘導し得る。
【0060】
本発明者らおよび本発明者らの同僚は、自己免疫および同種免疫を制御するための有効な寛容原性ワクチンを確立した14,15。寛容原性ワクチンは、抗原に連結したエチレンカルボジイミド(ECDI)固定された脾細胞(Ag-SP)として製造され、かつ静脈内(i.v.)経路を介して与えられる。自己抗原に連結したAg-SPのi.v.注射は、自己免疫性糖尿病16、EAE17,18、アレルギー疾患19のマウスモデルにおいて;より最近では、Luo研究室による、マウス20,21および非ヒト霊長類(未公開データ)の両方における同種および異種移植モデルにおいて、有効でかつ長期の抗原特異的寛容を誘導することが示されている。より重要なことには、この原理に基づく、ミエリンペプチドに連結した自己細胞を用いた、多発性硬化症に対するファースト・イン・ヒューマン臨床試験が、本発明者らの同僚によって最近公開され22、この新規な寛容ストラテジーについての臨床的実現可能性、安全性、および効力が確立された。面白いことには、Ag-SP媒介性寛容の目立った特質は、非ヒト霊長類において最近再現されている観察結果である24、内因性Tregの堅牢なインビボ増殖である15,19,23。それゆえ、Ag-SPは、T1Dを有する患者にとって非常に有望な抗原特異的寛容療法である。
【0061】
Ag-SPを製造するための多数の患者細胞を加工する必要性を回避するために、本発明者らは、最近、積み荷抗原の送達のための担体として生物工学により作られたナノ粒子(NP)を用いた仕事を始めており、かつそのような寛容原性Ag-NPワクチンの有望な効力を実証する本発明者らの早期の仕事を公開した25~27。しかしながら、食物アレルギーおよび同種膵島移植の両方のマウスモデルにおいて、本発明者らは、そのようなAg-NPが、Ag-SPと比較して準最適な寛容効力を有することを観察する。これらの観察結果から、本発明者らは、Ag-NPには存在しない、Ag-SPによって提供される付加的な寛容原性シグナルが存在するに違いないと理論付ける。本発明者らの予備的調査を通じて、本発明者らは、宿主食細胞と相互作用すると(1)レクチンCD209および(2)エフェロサイトーシス(efferocytic)受容体型チロシンキナーゼMerを活性化し得る、Ag-NPからのそのような不足している2つの寛容原性シグナルを同定した(図12A、B、およびC)。それゆえ、本発明者らは、CD209およびMerに対するリガンドを(直接的にまたはリンカーを介して間接的に共有結合性付着により)NPに接合させることが、Ag-NPワクチンの寛容原性を大幅に増強するであろうと仮説を立てる。
【0062】
ここで、本発明者らは、CD209およびMer二重シグナル伝達リガンドを担持する生物工学により作られたNPを開発し、かつT1Dに対するβ細胞特異的寛容を誘導し得るそれらの能力を試験することを提案する。本発明者らの説得力のある予備的結果、包括的な実験計画、および研究チームの相乗的専門知識は、T1Dにおける寛容送達のための非常に有効な生物工学により作られたAg-NPワクチンの設計にとって特有の機会を提示する。
【0063】
提案される研究
中心的仮説:図9に概略的に示されるように、本発明者らは、T1Dにおける寛容療法のためのAg-NP送達システムの効力が、(1)CD209およびMer二重シグナル伝達のためのNP上の標的リガンド(LNFPIIIおよびGAS6)を同時に操作すること;ならびに(2)感染寛容を誘導するための初回の疾患関連自己抗原としてのインスリンの脱アミド化形態(INS(Q→E))の送達、によって有意に増強され得ると仮説を立てる。
【0064】
具体的な目的:目的1.NPの表面に存在するLNFPIIIおよびGAS6を含むNPを開発すること。具体的には、本発明者らは、NPへのLNFPIIIおよびGAS6の接合が、適当なマウス食細胞において、これらの食細胞における寛容原性特質の有効な誘導につながる、同時標的化およびシグナル伝達をもたらすかどうかを判定する。本発明者らは、LNFPIII-GAS6-NPが、CD209およびMer二重シグナル伝達を介してマウスマクロファージ(MF)において寛容原性特質を有効に誘導すると仮説を立てる。目的2.非肥満糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPの寛容効力を試験すること。具体的には、本発明者らは、脱アミド化マウスプロインスリンと連結したLNFPIII-GAS6-NPの送達が、β細胞指向性自己免疫に対する堅牢な寛容をもたらし、その結果としてNODマウスにおいて臨床的糖尿病を予防しかつ/または反転させるかどうかを、NODマウスにおいて判定する。本発明者らは、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPが、NODマウスにおいてβ細胞指向性自己免疫を有効に抑制すると仮説を立てる。
【0065】
論理的根拠
抗原特異的寛容療法は、とくにT1Dに対する膵島移植の背景において、Luo研究室の主要な焦点になっている14。本発明者らの一次的手法は、関心対象の(ドナー)抗原を、カルボキシル活性化剤の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(ECDI)の存在下で、アミド結合形成によりそれらを脾細胞(Ag-SP)の表面に連結することによって送達することである20。この手法は、自己免疫の動物モデルにおける寛容誘導のために、本発明者らの同僚によって初めに実験された28。Luo研究室における先駆的仕事は、この寛容手法の堅牢な効力を同種および異種移植にさらに広げており21,23,29、一方でBryce研究室は、喘息およびアレルギー疾患においてこの手法の効力を実証するのに成功している19。Ag-SPを製造するための多数の患者細胞を加工する必要性を回避するために、本発明者らは、最近、そのような寛容原性Ag-NPワクチンの有望な効力を実証する、寛容原性抗原送達のための生物工学により作られたNPを用いた本発明者らの先駆的仕事を公開した25~27。臨床的移植についてのはっきりとした見解を持って、この適用において、本発明者らは、(1)CD209およびMer二重シグナル伝達リガンドをNPの表面に結合させ;かつ(2)感染寛容を誘導するための初回の自己抗原として脱アミド化プロインスリンを送達することによって、T1Dにおける寛容送達のための非常に効果的なAg-NPワクチンを開発することに本発明者らの調査の焦点を合わせる予定である。
【0066】
LNFPIIIおよびGAS6媒介性寛容送達に関する論理的根拠:食物アレルギーおよび同種膵島移植の両方のマウスモデルにおいて、本発明者らは、Ag-NPが、Ag-SPと比較して準最適な寛容効力を有することを観察する。本発明者らの予備的調査を通じて、本発明者らは、Ag-NPが関わらない、Ag-SPによる寛容に関係する2つの寛容原性シグナル伝達受容体:(1)エフェロサイトーシス受容体型チロシンキナーゼMer(図12A、B、およびC);および(2)レクチンCD209を同定した。その結果として、本発明者らは、MerおよびCD209に対するリガンドをNPの表面に結合させることが、Ag-NPワクチンの寛容原性を大幅に増強するであろうと仮説を立てる。アポトーシス細胞の恒常的クリアランスに特化する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーの3つのメンバー:TAM RTKと総称されるTYRO3、Axl、およびMerが存在し、後者の2つは免疫系における主たるTAM RTKである30。プロテインSおよびGAS6(Growth Arrest-Specific 6)は、TAM RTKに対する2つの同族リガンドである。TAM RTKは、2つの公知の機能:(1)アポトーシス細胞の恒常的食作用の過程である「エフェロサイトーシス」を媒介すること31,32;および(2)先天性免疫応答を調節する制御シグナルを送ること33,34、を有する。TAMシグナル伝達の欠損は、重度の自己免疫につながることが知られている30,33。外因性GAS6は、MerおよびAxlの両方のチロシン自己リン酸化を刺激し得、一方でプロテインSは、Merを通じてシグナルを送り得るのみである35。加えて、GAS6は、とくに炎症の設定において36、プロテインSよりも効率的な食作用を刺激する35。CD209は、MFの表面に存在するC型レクチン受容体である。MFにおけるそのシグナル伝達は、MFのIL-10媒介性抑制機能と関連している37。ラクト-N-フコペンタオースIII(Lacto-N-fucopentaose III)(LNFPIII)は、CD209に結合しかつそれを通じてシグナルを送るルイスX三糖を含有する天然の五糖であり38、そして免疫調節効果を誘導し39,40、同種移植片生存を延長させ41、かつ移植寛容を促進する37ことが示されている。本発明者らの予備的調査において(図12A)、本発明者らは、CD209は、Ag-SP注射があるとRTK Merを上方制御するがAg-NP注射ではそうではない、目立った脾臓MFを印付けすることを観察する。これらの特質により、GAS6およびLNFPIIIは、MerおよびCD209二重シグナル伝達のためのAg-NPに対する治療的生物工学の2つの魅力的な候補となり、ゆえにAg-NPの寛容原性を増強するであろう不足しているシグナルが提供される。
【0067】
標的に対する初回の糖尿病関連自己抗原としての脱アミド化インスリンに関する論理的根拠:膵島β細胞は、生理学的条件下で酸化ストレスおよびERストレスの影響を非常に受けやすいため、これらの細胞に存在するタンパク質は、様々な翻訳後修飾(PTM)を受ける高い確率を有する。修飾されたβ細胞タンパク質は、中枢および/または末梢の寛容メカニズムを通じて自己寛容化されていない新抗原を生成し得、それゆえ免疫応答およびそのような新抗原に向けられた次の自己免疫をトリガーする可能性がより高い。細胞分画および質量分析法を用いた最近の3つの調査42~44は、インスリンが、β細胞分泌顆粒によって生成されるポリペプチド種の豊富な供給源であることを明らかにし、β細胞に対する自己免疫を媒介するインスリンの主な役割を実証する既存の文献と一致する12,45。Global Proteome Machineデータベースについての詳細な検討とともに、本発明者らは、グルタミン(Q)の脱アミド化がインスリンに対する高頻度のPTMであることを見出した。Qの側鎖の脱アミド化はデアミダーゼ酵素によって触媒され得る、またはそれは、該タンパク質が酸性に曝露された場合に自発的に生じ得る。インビボにおいて、小胞酸性化を引き起こす酸化ストレスを経験しているβ細胞は、考えられる限りでは、大量の脱アミド化インスリンタンパク質/ペプチドを生成することに寄与する環境を提供する。顕著には、本発明者らの予備的調査において、本発明者らは、T1D患者およびNODマウスの両方において、天然インスリンに対してよりも、脱アミド化(Q→E)プロインスリンに対して、より強力な液性(図14A、B、およびC)および細胞性(データ示されず)応答を検出し、そのような脱アミド化インスリンが非常に免疫原性であるという本発明者らの仮説を裏付けた。重要なことには、脱アミド化プロインスリンに対するそのような応答は、NODマウスにおける糖尿病発症の出現率と有意に相関関係にあり(図14B)、T1Dの危険性がある小児集団においても現在評価されている現象である。天然プロインスリンと比較して、脱アミド化プロインスリンに対するより堅牢な免疫応答を考慮して、本発明者らは、脱アミド化プロインスリンが本発明者らのAg-NP寛容送達手法における標的抗原として用いられた場合、寛容はより有効であろうという仮説を立てる。興味深いことには、脱アミド化プロインスリンに対して陽性の液性応答を有するNODマウスから回収されたハイブリドーマからのクローニング、およびペプチドアレイのプロービングにより、本発明者らは、C-ペプチドにおける唯一の脱アミド化グルタミン残基に対する反応性をマッピングすることが可能となった(図14C)。C-ペプチドのこの高度に免疫原性の脱アミド化配列は、標的に対する本発明者らの初めの自己抗原候補であろう。
【0068】
予備データ
Ag-SP細胞を介した抗原送達は、欠失およびアネルギーによりTreg細胞の有意な増殖およびTeff細胞の寛容をもたらす。BALB/c→B6同種膵島移植モデルにおいて、B6レシピエントにおける(0日目のBALB/c膵島移植に対して)-7日目および+1日目のECDI固定されたドナー(BALB/c)脾細胞(Ag-SP)の注射は、無期限の膵島同種移植片生存をもたらす20。Ag-SP注射は、レシピエントの脾臓、流入リンパ節(dLN)、および移植された同種移植片におけるCD4+Foxp3+ Tregの有意な増殖をもたらす(図10A)。したがって、Ag-SP注射の時点のTregの枯渇がその寛容効力を完全に破棄したように20、Ag-SPによって誘導された寛容は、Ag-SPによるTregの増殖に依存している。Ag-SPによるTreg増殖は、最近、本発明者ら自身の仕事(非公開データ)によるおよび他者の公開データによる24、非ヒト霊長類膵島同種移植モデルにおいて立証されている。Treg増殖に付随して、Teff細胞は、2つの異なるメカニズム:(1)間接的特異性を有するT細胞の欠失;および(2)直接的特異性を有するT細胞のアネルギーによって寛容化される23図10Bに示されるように、脾臓およびdLNにおいて、間接的ドナー特異性を有するT細胞(TEa TCRトランスジェニックT細胞の養子移入によって詮索される46)は、堅牢な初期増殖(-4日目)、それに続く急速な収縮および枯渇を受け(0日目、7日目)、それにより、7日目までに膵島同種移植片に浸潤するそのようなT細胞はほとんどない。対照的に、図10Cに示されるように、直接的ドナー特異性を有するT細胞(4C TCRトランスジェニックT細胞の養子移入によって詮索される47)は、未処理のBALB/c SPの注射に対するそれらの増殖と比較して、1回目のAg-SP注射に対して有意に損なわれた増殖を受ける。より重要なことには、残りの4C T細胞は、2回目のECDI-SP注射に対するそれらの応答の欠乏に現れるように(右のドットプロット)、ドナー刺激にもはや応答せず、それらが有効にアネルギー化されることを示す。まとめると、これらのデータは、Ag-SPがTregを堅牢に増殖させ、一方でTeffを欠失させかつ/またはアネルギー化することを示唆する。
【0069】
Ag-SP寛容において、炎症の部位へのTreg誘導および遊走は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の増殖に依存している。Ag-SP注射は、脾臓(図11A)および移植片部位(データ示されず)における2つの骨髄集団:CD11b+Ly6CHIGr1INT細胞(Ly6CHI細胞と呼ばれる)およびCD11b+Ly6CLOGr1HI細胞(Gr1HI細胞と呼ばれる)の有意な増殖につながる。これら2つの細胞集団は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)との表現型相似性を持ち、かつインビトロでT細胞増殖を抑制する29,48。重要なことには、抗CD3/CD28刺激の下でT細胞とともに共培養した場合、同種移植片Ly6CHIおよびGr1HI細胞は、Treg細胞の誘導およびホーミングに関係する2つの可溶性媒介物質であるIL-10およびCCL4の有意な産生を誘導し得る(図11B)。この可能性を支持して、ドナーAg-SP処理されたレシピエントから取り出された同種移植片は、対照レシピエントからのものと比較して、Foxp3+細胞の進行的増加を示す(図11C)。その結果として、Ly6CHIおよびGr1HI MDSCの枯渇は、Ag-SPによる寛容誘導を有効に破棄する29,48。まとめると、これらのデータは、MDSCの増殖が、Ag-SPによって誘導されるTregの誘導および遊走を媒介する重大な工程であることを示唆する。
【0070】
Ag-SPによるLy6C HI およびGr1 HI MDSCの増殖は、受容体型チロシンキナーゼMerに依存している。本発明者らが、注射されたAg-SPをインビボで追跡した場合、本発明者らは、それらが、脾性辺縁帯に保持されかつこの領域において食細胞によって内在化されることを見出した23。受容体型チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーのTAM(Tyro 3、Axl、Mer)は、アポトーシス細胞の恒常的クリアランスに関係しているため、本発明者らは、最初に、それらが、Ag-SPによって誘導される寛容に関係するかどうかを検討した。図12Aに示されるように、Mer発現は、主として、細胞表面レクチンを発現する2つの脾臓MF集団:CD169+移行帯金属親和性MFおよびCD209+辺縁帯MF上に、Ag-SPの注射によって誘導される。食細胞集団上のMer誘導が、Ag-SPによって誘導される寛容において役割を果たすかどうかを判定するために、本発明者らは、Mer-/-マウスを活用した。図12Bに示されるように、Ag-SPによって誘導されるLy6CHIおよびGr1HI MDSCの増殖は、Mer-/-マウスにおいて有意に鈍化する。
【0071】
Ag-SPによるLy6C HI およびGr1 HI MDSCの増殖は、受容体型チロシンキナーゼMerに依存している。本発明者らが、注射されたAg-SPをインビボで追跡した場合、本発明者らは、それらが、脾性辺縁帯に保持されかつこの領域において食細胞によって内在化されることを見出した23。受容体型チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーのTAM(Tyro 3、Axl、Mer)は、アポトーシス細胞の恒常的クリアランスに関係しているため、本発明者らは、最初に、それらが、Ag-SPによって誘導される寛容に関係するかどうかを検討した。図12Aに示されるように、Mer発現は、主として、細胞表面レクチンを発現する2つの脾臓MF集団:CD169+移行帯金属親和性MFおよびCD209+辺縁帯MF上に、Ag-SPの注射によって誘導される。食細胞集団上のMer誘導が、Ag-SPによって誘導される寛容において役割を果たすかどうかを判定するために、本発明者らは、Mer-/-マウスを活用した。図12Bに示されるように、Ag-SPによって誘導されるLy6CHIおよびGr1HI MDSCの増殖は、Mer-/-マウスにおいて有意に鈍化する。抑制性単球の誘導およびTreg細胞の増殖34,35,37,41
【0072】
ナノ粒子(NP)は、寛容原性抗原送達に用いられ得る(Ag-NP)。抗原送達を簡略化しかつ標準化しようとする試みにおいて、本発明者らおよび他者は、抗原送達ビヒクルとしてPLG NPを利用しようと試みた25~27,49図13Aに示されるように、本発明者らは、サイズおよび電荷の仕様を有するPLG NPを製造し、かつ同じECDI-連結化学を用いて、ドナー(BALB/c)脾細胞溶解物の形態のドナー抗原(Ag)を連結し、かつ0日目のBALB/c膵島移植と比べて、-7日目および+1日目にB6レシピエントへAg-NPを注射した。図13Bに示されるように、Ag-NP単独の注射(「PLG-dAg」群)は、わずかな移植片保護のみをもたらした。それゆえ、Ag-NPの使用は、この寛容手法の臨床的実現可能性を大いに増強し得たものの、Ag-NPによる寛容効力は、Ag-SPによるものと比較して堅牢性が低い25。本発明者らは、これは、相互作用する食細胞において損なわれた寛容原性シグナル伝達をもたらす、重大な細胞表面炭水化物およびタンパク質リガンドを欠いたAg-NPによるものであるという仮説を立てる。
【0073】
ハイスループットスクリーニングは、炭水化物が、マクロファージのサイトカイン産生レパートリーを調節し得ることを実証する。ECDI固定されたNPは寛容原性シグナルの誘導のためのシグナルを欠いているという本発明者らの全体にわたる概念を支持して、本発明者らは、マクロファージ細胞株(RAW264.7)においてサイトカイン応答を調節し得る能力を検討した。この細胞株は、寛容のための細胞応答を提示する抗原を予測するために以前に用いられている。LPS添加によって細胞を刺激してIL-6およびIL-10の両方を発現する、384ウェルハイスループットスクリーニング(HTS)に基づく手法を用いると、ECDI固定されたSPは、IL-10の産生の有意な増加につながり(図1)、かつIL-6を減少させた(示されず)。著しく対照的に、ECDI処理されたNPは、対照と比較して、無効でありかつRAW264.7細胞によるIL-10産生を事実上低下させた(図1)。このHTS手法を利用して、本発明者らは、細胞によって提供され得るがNPによってはそうではない広範囲にわたる潜在的シグナルを検討し、かつMFのサイトカイン産生レパートリーを調節するそれらの能力について、天然および合成の両方の炭水化物構造の一団に焦点を合わせた。同時のIL-10の増強およびIL-6産生の抑制に基づき、本発明者らは、ルイスX抗原を含めたいくつかのそのような刺激的な炭水化物候補を同定するのに成功した(図3A)。さらには、パイロット実験において、フコースの付着は、細胞によるNP取り込みを増強しかつIL-10に傾斜した応答を促進するのに十分であった(図5)。
【0074】
プロインスリンQ→E脱アミノ化(deamination)は、ヒトおよびマウスの両方において堅牢な免疫応答を引き出す。本発明者らは、最初に、それらのグルタミン(Q)残基のすべてがグルタミン酸(E)残基に変異した、組換えヒトプロインスリンまたはマウスプロインスリン1およびプロインスリン2タンパク質を合成し、かつこれらのQ→Eプロインスリンタンパク質を用いて、既知のT1Dを有する30人の成人患者(図14A)および3週齢から始まる33匹の若齢NOD雌マウス(図14B)のコホートの血清をプローブした。図14Aに示されるように、30人の成人T1D患者のうちの4人は、脱アミド化プロインスリンに対して抗体応答を有したが、天然(WT)プロインスリンに対してはそうではなかった。同様に、図14Bの上のパネルに示されるように、個々のNODマウスは、脱アミド化プロインスリンに対する抗体応答を生じたが、WTプロインスリンに対してはそうではなかった(脱アミド化マウスプロインスリン1に対する抗体応答の例が示されているが、脱アミド化マウスプロインスリン2または両方に対する応答も観察された)。重要なことには、NODマウスにおいて、脱アミド化プロインスリンに対する液性応答は、糖尿病発症の出現率と高度に相関関係にある(図14Bの下のパネル)。この予測的相関は、現在、T1Dの危険性がある小児集団においても評価されている。興味深いことには、脱アミド化プロインスリンに対して陽性の液性応答を有するNODマウスから回収されたハイブリドーマからのクローニング、および図14Cに例示されるペプチドアレイのプロービングにより、本発明者らは、C-ペプチド内の唯一の脱アミド化グルタミン残基に対する液性反応性をマッピングすることが可能となった:スポットY19、20、22は、配列
に相関する。
【0075】
研究設計および方法
目的1.LNFPIIIおよびGAS6装飾されたNPを開発すること
目的1A.LNFPIII-GAS6-NPの設計および製造。本発明者らは、最初に、Bryantらによって以前に記載された単一エマルション技法25を用いて、直径およそ500nmのポリ(ラクチド-コ-グリコリド(1:1))(PLG)ナノ粒子を作り上げる。ナノ粒子の表面を0.05または0.1MのNaOHで部分的に加水分解して、粒子の表面を官能基化しかつ抗原を連結するのに利用可能なカルボキシル基の密度を増加させる。NPゼータ電位を測定することによって、ならびにトルイジンブルーを用いてカルボキシル含量を定量化することによって、修飾をモニターする50。NP上のカルボキシル基を、カルボジイミド化学(ECDI)を用いて活性化し、かつ(N--マレイミドプロピオン酸ヒドラジド(BMPH)と反応させて、「クリック」化学において利用されるチオール基に反応性である、NPの表面にマレイミド基を提供する51。リガンドLNFPIIIおよびGAS6をシステインで誘導体化して、マレイミド官能基化されたNPへのそれらの共有結合性連結を可能にするチオール基を提供する。LNFPIII-Cysは、LNFPIIIとCysとの間の還元的アミノ化により合成される52。末端Cysを有するGAS6は、以前に記載されるように36、HEK 293T細胞においてHis6タグを用いた組換えDNA技術により合成され、かつNi-NTAビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィー、それに続くHiTrap Q FFイオン交換カラム(GE Healthcare)での精製により単離される。
【0076】
LNFPIII-CysおよびGAS6-Cysの両方を、クリック化学によりPLG-NPに付着させる51。RAW264.7 MFアッセイ(下記の目的1Bで詳細に記載される)によって判定される、予想される結果がクリック化学を用いて獲得されない場合、代替的にPLG NPを、カルボジイミド化学によりストレプトアビジンで官能基化する。ストレプトアビジン-PLG NPを、その後、ビオチン化されたLNFPIIIおよびGAS6と反応させる。リガンドの連結効率を、連結反応の前および後の上清中のタンパク質および炭水化物を定量化することによって判定する。さらには、NPの表面のタンパク質および炭水化物を、GAS6およびLNFPIIIに特異的である標識抗体により検出する。
【0077】
RAW264.7 MFアッセイ(下記の目的1Bで詳細に記載される)によって判定される、PLGプラットフォームを用いた活性化が準最適である場合、本発明者らは、送達プラットフォームとして、ポリ(ポリエチレングリコールクエン酸-コ-N-イソプロピルアクリルアミド)(PPCN)の使用を調べる。PPCNは、生体適合性でありかつタンパク質をゆっくりと送達し得ることが示されている、開発された熱応答性生分解性の巨大分子である53。この巨大分子は、官能基化され得る高密度のカルボキシル基を有し、かつ非常に穏やかな条件下で直径およそ200~300nmのNPを容易に形成し得る。リガンドは、PLG NPに関して上記で記載される同じクリック化学を用いて、PPCNに接合され得る。PPCNを用いることの潜在的利点は、リガンドへの巨大分子の直接接合による、NPの表面での有意により高い密度のリガンドの呈示、およびリガンド-官能基化PPCNの自己会合によるNPの形成である。
【0078】
目的1B.RAW264.7 MFにおけるサイトカイン調節によるLNFPIII-GAS6-NPのスクリーニング。目的1Aにあるように開発されたLNFPIII-GAS6-NPを、図2に示されるRAW264.7細胞株マクロファージとの共培養システムを用いてスクリーニングする。本発明者らは、可変パラメーター(接合法(クリック化学対ビオチン-ストレプトアビジン)、ポリマー材料(PLG対PPCN))を有するLNFPIII-GAS6-NPを逐次的に製造し、それゆえ回転式に試験することを見込む。LNFPIII-GAS6-NPの各種を、LPS刺激の存在下でRAW264.7 MFとともに72時間共培養する(MF+LNFPIII-GAS6-NP+LPS)。結果として生じる上清を、ELISAによってIL-10およびIL-6について測定する。対照共培養には、(1)MF単独;(2)MF+LPS;(3)MF+非修飾NP;(4)MF+非修飾NP+LPS;および(5)MF+LNFPIII-GAS6-NPが含まれる。対照条件#2のIL-10/IL-6比をベースラインと見なす。ベースラインを上回るIL-10/IL-6比を、スクリーニングされた「陽性」と見なし;一方でベースラインを下回る比を、スクリーニングされた「陰性」と見なす。RAW264.7 MF細胞株から獲得された結果を付帯的に裏付けるために、スクリーニングされた「陽性」LNFPIII-GAS6-NP種を、同様の共培養システムにおいてMF由来の初代マウス骨髄を用いて確認もする。
【0079】
目的1C.スクリーニング「陽性」LNFPIII-GAS6-NPへの抗原負荷。本発明者らは、目的2で提案される実験に対して、3つの考え得るβ細胞抗原:脱アミド化プロインスリンペプチド
図14C)、脱アミド化プロインスリン全体、またはMIN6(β細胞株)細胞溶解物全体を負荷する。本発明者らは、スクリーニング「陽性」LNFPIII-GAS6-NP種への抗原負荷のための2つの方法を試験する。第一の方法は、本発明者らが以前に記載したように25、ECDI化学を用いて、ナノ粒子の表面にペプチド/タンパク質抗原を連結することである。粒子に連結されたペプチド/タンパク質の量を、連結反応の前および後の上清中の抗原を定量化することによって判定する。連結効率またはRAW264.7 MFとのそれらの相互作用のいずれかが准最適である場合、本発明者らは、粒子内への抗原のカプセル化がより効率的であるかどうかも試験する。カプセル化されたペプチドとともに形成されたPLG粒子は、自己免疫性脳炎のモデルにおいて有効である54。単一エマルション過程と同様の直径および電荷(500nm、ζ電位=-60mV)を有する粒子を創出することを目的とする二重エマルション過程により、抗原をPLGまたはPPCN粒子内にカプセル化する。カプセル化のためのポリマー組成および平均分子量(固有の粘度によって特徴付けされる)を実験する、というのもこれらの特性はNPの安定性に影響し、それゆえカプセル化された抗原の細胞内在化および放出の両方に影響するであろうためである55。粒子サイズおよびゼータ電位の分布をゼータサイザーで測定する。粒子内にカプセル化されたペプチド/タンパク質の量を、CBQCAアッセイを用いた後続の解析のために、抗原負荷されたNPをDMSOに溶解することによって定量化する56
【0080】
予想される成果、潜在的落とし穴、および代替的手法。本発明者らは、NPにLNFPIIIおよびGAS6を接合することは、MFとのそれらの寛容原性相互作用を有意に増強し、かつ好ましいIL-10/IL-6産生比につながるであろうと見込む。本発明者らは、種々の接合法(クリック化学対ビオチン-ストレプトアビジン)、ポリマー材料(PLG対PPCN)、抗原負荷のための方法(架橋対カプセル化)、β細胞抗原の選出(プロインスリンペプチド対タンパク質全体対β細胞溶解物全体)を用いて、本発明者らが、広域のMF IL-10/IL6産生比を有するAg-LNFPIII-GAS6-NP種のライブラリーを生成するであろうことを見込む。最上位の成績を上げたものを、目的2で提案される実験のために選択する。準最適なIL-10/IL-6産生比がすべての変動に関して全体にわたって観察される場合、1つの付加的な検討事項は、GAS6のGLAドメインにホスファチジルセリン(PS)を連結することによってGAS6シグナル伝達を増強することである32。これは、1:10(PS:ポリマー)の重量比でのPSの添加を有するエマルション過程による、PLGまたはPPCN粒子へのPSの組み入れによって成し遂げられ得る57。PSは、カルボン酸頭基およびアルキル尾部を有し、それゆえポリマー粒子への組み入れ、およびECDI連結またはカプセル化による抗原負荷の両方のための官能基を所有する。
【0081】
目的2.NODマウスモデルにおいて、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPの寛容効力を試験すること
目的2A:寛容原性INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンによる、NODにおける糖尿病の予防および処置マウスモデル。本発明者らは、2種のNODモデルを用いる。第一のモデル(「予防」モデル)において、本発明者らは、2つの年齢コホート:5週齢および9週齢の雌NODマウスを処理する。両方の年齢群において、膵臓における炎症応答は、炎症誘発性免疫細胞浸潤の存在によって実証されるようにすでに始まっているが、血中グルコースレベルは、なおも正常範囲内にある。ゆえに、それらは前糖尿病である。本発明者らは、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理(目的1による)について最もよく同定された式を適用して、本発明者らが、これらの前糖尿病NODマウスが糖尿病を発症するのを予防し得るかどうかを判定する。INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理後、マウスを血中グルコースレベルについて30週齢までモニターする。第二のモデル(「処置」モデル)において、本発明者らは、12週齢から始まる週2回のスクリーニングによって同定された、高血糖症にまさになっている急性糖尿病(12~30週齢)NODマウスを用いる。本発明者らは、高血糖症の急性発症の3~5日以内にINS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理を適用する。この段階で、免疫療法による自己免疫の有効な制御が、残りのβ細胞の機能の回復、およびその結果として糖尿病の反転につながり得るような58、相当のβ細胞質量がこれらのNODマウスになおも残る。本発明者らは、急性糖尿病NODマウスにINS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理を適用し、かつ本発明者らが、これらのマウスにおいて糖尿病を反転させ得るかどうかを判定する。INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理後、マウスを血中グルコースレベルについて合計60日間モニターして、糖尿病反転を判定する。
【0082】
INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理。RAW264.7 MFとともに共培養すると堅牢なIL-10/IL-6産生比を有するNP種を、NODマウスのインビボ処理のための標的化抗原を負荷するために治療的分量で製造する。初めに、本発明者らは、本発明者らの標的化抗原として図14Cにあるように同定される脱アミド化の重大な部位を含有する15-aaのプロインスリンペプチド
を試験する。15-aaのINS(Q→E)ペプチドを、(ECDI媒介性架橋により54)LNFPIII-GAS6-NPの表面に付着させる、またはLNFPIII-GAS6-NP内にカプセル化する。架橋とカプセル化との間での選出を、目的1Cで判定される抗原負荷効率に基づいて判定する。3mgのINS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPを3つの年齢群(5週、9週、または急性糖尿病)の雌NODマウスにi.v.注射する。対照マウスは、天然プロインスリンペプチド
を負荷されたLNFPIII-GAS6-NP、非負荷LNFPIII-GAS6-NP、またはNPなしを注射された年齢がマッチした雌NODマウスである。これらの対照群により、本発明者らは、(1)CNS感染および心虚血モデルにおいて記載されているように27、裸のLNFPIII-GAS6-NPが、任意の疾患改変効果それ自体を有するかどうか;ならびに(2)脱アミド化プロインスリンペプチドを標的とすることが、天然プロインスリンペプチドを標的とするよりも有効であるかどうかを判定することが可能となる。実験群(INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPで処理された)が、優れた糖尿病抑制を実証する場合、本発明者らは、4週間ごとの有効なINS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンの複数回注射が、持続的疾患制御にとって付加的な利益を有するかどうかも試験する。この移植片の予定表(2年間)以内に本発明者らの提案される実験を完了するために、本発明者らは、複数の有望なNP種を、それらが開発され、かつ上記で規定されるIL-10/IL-6読み出しを満たすことを立証されるにつれて、本発明者らが回転式に試験する必要があるであろうと見込む。
【0083】
T1Dに対する寛容原性LNFPIII-GAS6-NPワクチンとして試験される対象となる付加的な自己抗原。プロインスリンペプチド
に加えて、含められる必要があるであろう複数の自己抗原のプールは、自己抗原性が他のエピトープに拡散している可能性がある場合のとくに疾患のより後期の間、有効な寛容を達成する可能性がある22,59。それゆえ、とりわけ高齢マウスにおいて、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPが疾患「ブレイクスルー」を呈する場合、本発明者らは、同じLNFPIII-GAS6-NPビヒクルを用いて付加的な考え得る自己抗原を送達する。寛容原性LNFPIII-GAS6-NP送達により試験される対象となる付加的な考え得る自己抗原は、(a)脱アミド化インスリン全体:その天然形態でのインスリン全体は、NODマウスにおける寛容療法において効力を実証していることが示されており16,59、かつ本発明者らの予備的結果(図14B)は、脱アミド化プロインスリン全体に対する免疫応答の高まりを実証したため、本発明者らは、LNFPIII-GAS6-NPによって送達される自己抗原として、脱アミド化インスリン全体(それらのグルタミン(Q)残基のすべてがグルタミン酸(E)残基に変異した、組換えマウスプロインスリン1およびプロインスリン2タンパク質)も試験して、拡大した範囲のエピトープを有するそのような脱アミド化プロインスリンが、
単独のものと比較して、より良好な寛容効力を呈するかどうかを判定する。(b)β細胞溶解物全体:本発明者らは、それらのβ細胞においてSV40のラージT抗原を発現するトランスジェニックマウスに由来するインスリノーマ細胞株MIN6からβ細胞溶解物全体を調製する60。β細胞溶解物全体を、ECDI架橋により表面に付着させる(本発明者らが、移植抗原に関してドナー細胞溶解物を用いて以前に行っているように25)、またはLNFPIII-GAS6-NP内にカプセル化する。架橋とカプセル化との間での選出を、目的1Cで記載される抗原負荷効率に基づいて同様に判定する。β細胞溶解物-LNFPIII-GAS6-NPを、前糖尿病および急性糖尿病の雌NODマウスに投与し、かつマウスをそれぞれ糖尿病予防および糖尿病反転についてモニターする。
【0084】
実験の読み出し。糖尿病予防群(前糖尿病NODマウス)に関しては、マウスが30週齢に達するまで、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理後、血中グルコースレベルを週2回チェックする。糖尿病を発症するマウスのパーセンテージを、対照群のものと比較する。糖尿病処置群(糖尿病NODマウス)に関しては、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理後、合計60日間、血中グルコースレベルを週2回チェックする。正常血糖を回復させるマウスのパーセンテージを、対照群のものと比較する。実験の終了時、膵島のサイズ、数、および構築、ならびに炎症細胞の浸潤についての膵臓の検討のために、NODマウスを屠殺する。
【0085】
目的2B:寛容原性INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンによる保護のメカニズムを判定するMDSCの増殖。本発明者らは、MDSCおよびTregのインビボ増殖、ならびにTeffの阻害に対するINS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンの効果を検討する。処理されたおよび対照NODマウスを、脾臓および膵臓におけるCD11b+Ly6CHIGr1INT(LyCHI)細胞およびCD11b+Ly6CLOGr1HI(Gr1HI)細胞の増殖について検討する。処理されたおよび対照NODマウスの脾臓および膵臓から単離されたLy6CHIまたはGr1HI細胞を、抗CD3/CD28によって刺激されたナイーブNOD T細胞とともに72時間共培養する。T細胞増殖の抑制を、CFSE希釈によって判定する。培養上清におけるIL-10およびCCL4の産生を、図11Bに示されるようにELISAによって測定し、かつTregの増殖を、Ly6CHIまたはGr1HIとの共培養後にFoxp3+細胞を数えることによって判定する。
【0086】
自己抗原特異的CD4 + Foxp3 + Tregの増殖。処理されたおよび対照NODマウスを、修飾されたプロインスリンペプチド
に対する特異性を有する抗原特異的CD4+Foxp3+ Tregの誘導または増殖について検討する:(a)膵臓DLNおよび脾臓を、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理後の一連の時点におけるCD4+Foxp3+ Tregの総数について(FACSによって)検討する;(b)膵臓DLNまたは脾臓由来の精製された総CD4+ T細胞(Tregおよび非Treg)を、
ペプチド、または非関連OVAペプチド、または抗CD3抗体で刺激する(pan-TCR刺激)。刺激後、CD4+Foxp3+ Tregを数えて、Tregの増殖が抗原特異的様式で生じているかどうかを判定する。(c)膵臓DLNまたは脾臓由来の濃縮されたCD4+CD25- T細胞(非Treg)を、同じ
ペプチド、または非関連OVAペプチド、または抗CD3抗体で刺激する(pan-TCR刺激)。刺激後、CD4+Foxp3+ T細胞を数えて、Tregの誘導が抗原特異的様式で生じているかどうかを判定する。
【0087】
自己抗原特異的エフェクターT細胞(Teff)の阻害。処理されたおよび対照NODマウスを、自己抗原特異的Teff細胞機能について以下のとおり検討する:(a)膵臓DLNおよび脾臓を、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP処理後の一連の時点におけるCD4もしくはCD8、IFN-γ、またはIL-17産生細胞について(FACSによって)検討しかつ数える;(b)膵臓DLNまたは脾臓由来の濃縮された総CD4+ T細胞(Tregおよび非Treg)を、
ペプチド、または非関連OVAペプチド、または抗CD3抗体で刺激する(pan-TCR刺激)。刺激後、T細胞増殖をCFSE希釈によって判定し、かつIFN-γ、IL-17、およびIL-4を含めたT細胞由来炎症誘発性サイトカインを、培養上清のELISAアッセイによって判定する;(c)膵臓DLNまたは脾臓由来の精製されたCD4+CD25- T細胞(非Treg)を、
ペプチド、または非関連OVAペプチド、または抗CD3抗体で刺激する(pan-TCR刺激)。刺激後、Tregの非存在下におけるT細胞増殖およびT細胞由来サイトカインを測定して、増殖および/または炎症性サイトカイン産生が、未処理のマウス由来のT細胞のレベルに増加して戻るかどうかを判定する。
【0088】
予想される成果、潜在的落とし穴、および代替的手法。本発明者らは、糖尿病が、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンで処理された、前糖尿病NODマウスにおいて予防され、かつ急性糖尿病NODマウスにおいて反転されるであろうと見込む。さらには、本発明者らは、脱アミド化プロインスリンまたはプロインスリンペプチドが、修飾されていないそれらの対応物よりも、寛容を誘導することにおいてより有効であろうと見込む。最後に、糖尿病の後期において、β細胞溶解物全体などのより広範な抗原プールを用いた寛容は、単一のタンパク質/ペプチドワクチン単独よりも有効であり得る。保護されたNODマウスは、保たれた膵島構築および軽減した膵島炎を呈する。本発明者らは、寛容原性INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンで処理されたNODマウスにおいて、自己抗原特異性を実証するより多数のTregが観察されるであろうとも見込む。逆に、処理マウスにおいて、自己抗原で刺激されたエフェクターT細胞の増殖および炎症誘発性サイトカイン産生は阻害されるが、非特異的抗CD3で刺激されたエフェクターT細胞の増殖および炎症誘発性サイトカイン産生はそうではないと考えられ、かつこの阻害はTreg依存的である。本発明者らは、寛容原性INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンが、二重に、自己抗原特異的Tregを誘導しかつ自己抗原特異的Teffを阻害することによって、免疫系を再プログラム化すると予測する。前述の実験的調査から得られた知見および知識は、T1Dを有する患者に対する臨床設定に本発明者らの手法を転換するためのメカニズム的および実践的な基盤を提供するであろうと予想される。INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンが、前糖尿病期および急性糖尿病期の間の自己免疫を制御することにおいて有望な効力を実証する場合、2年間の申請された資金提供期間を越えた将来的調査は、(1)本発明者らが以前に公開したNOD同系膵島移植モデル58を用いることによって糖尿病後期;(2)インスリン特異的INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンにより、他の抗原特異性を有するT細胞(NOD 8.361(IGRPに特異的)またはNOD BDC2.545(ChgAに特異的)T細胞など)の寛容を検討することによって感染寛容の誘導、をさらに検討するように設計される。INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NPワクチンがNODマウスにおいて部分的な効力のみを実証する場合、本発明者らは、Treg/Teffのバランスを制御に向かってさらに傾け得る、付加的な低用量のIL-2またはラパマイシンなどの組み合わせ療法を考慮する。
【0089】
本発明者らの目標に対処するであろう代替的手法を上回る利点。T1Dに対する現在の抗原特異的免疫療法は大部分を抗原のみから構成され、それゆえ限定された潜在力を有する。LNFPIII-GAS6-NPによりβ細胞新自己抗原を送達する本発明者らの手法は、標的化寛容原性シグナルを宿主食細胞に提供し、MDSCおよび抗原特異的Tregなどの内因性サプレッサー細胞集団を増殖させ、かつ究極的に寛容効力を増強し、それにもかかわらずAg-NPワクチンの製造の簡潔性を保つと考えられる。加えて、それは、他の自己免疫およびアレルギーの病状に対する広い適用可能性の潜在力を有するプラットフォーム技術を付与する。
【0090】
本発明者らのJDRF助成金申請に資金提供されれば、提案される研究は、T1D治療用産物の開発およびライセンス供与に焦点を有する産業連携の確立につながるであろう可能性が極めて高い。申請された資金提供期間の最初の年のうちに、本発明者らは、産業パートナーを参加させるために、INS(Q→E)-LNFPIII-GAS6-NP寛容原性ワクチンの製造および治療効力に関する十分な予備データをおそらく獲得しているであろう。
【0091】
参考文献
【0092】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、種々の置換および改変が、本明細書において開示される本発明になされ得ることは、当業者に容易に明白であろう。本明細書において例証的に記載される本発明は、本明細書において具体的に開示されていないいかなる1種または複数種の要素、1つまたは複数の限定もなしで、適切に実践され得る。採用されている用語および表現は、説明の用語としてであり限定の用語としてではなく用いられ、そのような用語および表現の使用において、示されかつ記載される特質の任意の同等物またはその一部分を除外する意図はないが、本発明の範囲内で様々な改変が可能であると認識される。ゆえに、本発明は、具体的な態様および任意の特質によって例証されているものの、本明細書において開示される概念の改変および/または変動が当業者によって用いられ得ること、ならびにそのような改変および変動は、本発明の範囲内にあると見なされることが理解されるべきである。
【0093】
多数の特許および非特許参考文献への引用が本明細書においてなされる。引用された参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。引用された参考文献における用語の定義と比較して、本明細書における用語の定義との間に矛盾がある事象では、用語は、本明細書における定義に基づいて解釈されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
【配列表】
0007369734000001.app