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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】ナノインプリント用光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231019BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20231019BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20231019BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
C08F210/00
C08F2/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021550423
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2020031938
(87)【国際公開番号】W WO2021070491
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019184217
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118061
【弁理士】
【氏名又は名称】林 博史
(72)【発明者】
【氏名】新田 真也
(72)【発明者】
【氏名】木津 智仁
(72)【発明者】
【氏名】中川 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊東 駿也
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056273(JP,A)
【文献】特開2014-205624(JP,A)
【文献】特開2011-162471(JP,A)
【文献】特開2008-019292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
C08F 210/00
290/00
2/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)又は(2)で表されるオニウム塩
(B)カチオン重合性炭化水素化合物
(C) エチレン性不飽和基を有するオリゴマー
を必須成分として含有し、(C)エチレン性不飽和基を有するオリゴマーにおけるエチレン性不飽和基の含有量が0.5~30mol%であることを特徴とする、ナノインプリント用光硬化性組成物。
[(Rf)PF6-n (1)
BR (2)
〔式(1)中、Rfは互いに独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基であり、かつそれぞれの基の炭素原子に結合した水素原子をフッ素原子で80%以上置換した基であり、nは1~5の整数であり;式(2)中、Rは少なくとも1個の水素原子がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基であり;Aは一価のヨードニウムカチオン又はスルホニウムカチオンである。〕
【請求項2】
一般式(1)中のRfが互いに独立して、水素原子をフッ素原子で90%以上置換した炭素数1~8のアルキル基である請求項1に記載のナノインプリント用光硬化性組成物。
【請求項3】
一般式(1)中の(Rf)PF6-n が、(CFCFPF 、又は(CFCFCFCFPF で表されるアニオンである請求項1又は2に記載のナノインプリント用光硬化性組成物。
【請求項4】
一般式(2)中のBR が、B(C 、又はB(C(CF で表されるアニオンである請求項1~3のいずれかに記載のナノインプリント用光硬化性組成物。
【請求項5】
(B)がカチオン重合性芳香族炭化水素化合物もしくはカチオン重合性環状炭化水素化合物である請求項1~4のいずれかに記載のナノインプリント用光硬化性組成物。
【請求項6】
(C)がエチレン性不飽和基を有するカチオン重合性炭化水素化合物(B)のオリゴマーである請求項1~5のいずれかに記載のナノインプリント用光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のナノインプリント用光硬化性組成物を用いることを特徴とするパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にモールドの凹凸パターンが転写された硬化樹脂パターンを形成するナノインプリント用光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ナノインプリントは、光硬化性組成物を基板等に塗布して形成した光硬化組成物層を、凹凸パターンが形成されたモールドと呼ばれる光透過性の型と基板との間に挟み込むことにより、光透過性の型のパターンに光硬化性組成物を充填して光照射を行い、光硬化性組成物層を硬化させることにより光硬化物として成形した後、モールドを離型することにより、基板上に、モールド表面の凹凸パターンが転写された光硬化物からなる樹脂パターン成形体を製造する方法である。この方法では簡便にかつ安価に凹凸パターンが転写された樹脂パターンを作ることができるため、近年マイクロサイズやナノサイズでの加工法として注目されている技術である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
近年、半導体集積回路作成に関し、微細化・集積化が進んでおり、その微細加工を実現するための技術としてフォトリソグラフィー技術の高精度化が進められてきた。しかしながら従来のフォトリソグラフィー技術の延長において解像性やコスト、スループット等を満たすことが難しくなってきている。一方、微細なパターン形成を低コストで実現するための技術として光ナノインプリントリソグラフィー技術が提案されている。本用途では、硬化樹脂パターンの成形体が基板加工時のエッチングマスクとして機能するため、硬化樹脂には加工対象となる基板に対して高いエッチング耐性が要求される(例えば特許文献2参照)。
【0004】
光ナノインプリントにより硬化樹脂の微細パターンを形成するにあたり、ナノインプリント用光硬化性組成物には、硬化樹脂をモールドから離型するための剥離性も重要である。フォトマスクと感光性樹脂が直接接触しない従来のフォトリソグラフィーと異なり、モールドとナノインプリント用光硬化性組成物とが直接接触するため、モールド剥離時にモールドに硬化樹脂の一部が付着することで剥離欠陥が生じて以降のインプリント時にパターン欠陥となる問題がある。また、ラジカル重合を用いた硬化法では、硬化物の収縮により、設計されたモールドの微細パターンの形状から、実際得られる硬化樹脂パターンの形状が変化する問題がある。
【0005】
このように、従来提案されている光ナノインプリント技術においては、パターン形成性、離型性及びエッチング耐性を同時に満たすことが困難であり、これらを満足する材料の開発が望まれている。
【0006】
一方、エッチング耐性が高い樹脂として炭素及び水素のみにより構成されるカチオン重合性炭化水素化合物からなる大西パラメーターが小さい光硬化性材料が挙げられるが、このような炭化水素化合物は分子間力が低いため揮発性が高く、塗布性に課題がある。(例えば特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許6334960号公報
【文献】特開2007-186570号公報
【文献】特開2018-56273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、微細パターン形成性、モールド剥離性及びエッチング耐性を有し、かつ塗布性に優れるナノインプリント用光硬化性組成物及びこれを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、ナノインプリント用光硬化性組成物を見出すに至った。
すなわち本発明は、
(A)一般式(1)又は(2)で表されるオニウム塩
(B)カチオン重合性炭化水素化合物
(C)エチレン性不飽和基を有するオリゴマー
を必須成分として含有することを特徴とする、ナノインプリント用光硬化性組成物である。
[(Rf)PF6-n (1)
BR (2)
〔式(1)中、Rfは互いに独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基であり、かつそれぞれの基の炭素原子に結合した水素原子をフッ素原子で80%以上置換した基であり、nは1~5の整数であり;式(2)中、Rは少なくとも1個の水素原子がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基であり;Aは一価のスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。〕
【0010】
更に本発明は、ナノインプリント用光硬化性組成物を用いることを特徴とするパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のナノインプリント用光硬化性組成物は、光に感光して酸を発生し、カチオン重合により硬化させることができ、モールド離型性及びエッチング耐性に優れたパターンを得ることができる。
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明のナノインプリント用光硬化性組成物は、一般式(1)又は(2)で表されるオニウム塩を含有することを特徴とする。
[(Rf)PF6-n (1)
BR (2)
【0014】
式(1)中、Rfは互いに独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基であり、かつそれぞれの基の炭素原子に結合した水素原子をフッ素原子で80%以上置換した基であり、nは1~5の整数である。
【0015】
炭素数1~8のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基が挙げられる。
【0016】
炭素数2~8のアルケニル基としては、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-1-プロペニルなどの直鎖又は分岐状のものが挙げられる。
【0017】
炭素数6~10(以下の置換基の炭素数は含まない)のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基及び芳香族複素環炭化水素基(チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル等単環式複素環;及びインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル等縮合多環式複素環)が挙げられる。
アリール基としては、以上の他に、アリール基中の水素原子の一部が炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基で置換されていてもよい。
【0018】
式(1)中Rfは、上記炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基における炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子で通常、80%以上置換されたものである。好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満では、本発明の感光性組成物において重合開始能が低下する。
Rfの中でも、原料の入手しやすさから、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、さらに炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。特に好ましいRfは、炭素数が1~4、かつフッ素原子の置換率が100%のアルキル基であり、具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFCが挙げられる。
【0019】
式(1)中、nはリン原子に置換する置換基Rfの個数を表し、1~5の整数である。
原料入手の観点から、好ましくはn=1~3であり、特に好ましくはn=2~3である。
【0020】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオン、[(Rf)PF6-nの具体例としては[(CF)PF、 [(CFPF、[(CFPF、[(CFCF)PF、 [(CFCFPF、 [(CFCFPF、 [((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCF)PF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCF)PF、[(CFCFCFCFPF、及び[(CFCFCFCFPFが挙げられ、
これらのうち、[(CFPF、[(CFPF、[(CFCFPF、 [(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF及び[(CFCFCFCFPFが特に好ましい。
【0021】
式(2)中のRは少なくとも1個の水素原子がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基である。
【0022】
BR で表されるアニオンとしては、B(C 、B(C(CF 、B(CF 、及びB(C で表されるアニオン等が挙げられる。
これらのうち、B(C 及びB(C(CF で表されるアニオンが好ましい。
【0023】
式(1)及び(2)中、Aは1価のヨードニウムカチオン又はスルホニウムカチオンである。
【0024】
好ましいヨードニウムカチオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウムカチオン、ジ-p-トリルヨードニウムカチオン及び4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオンの他、ジ-(4-tertブチル)フェニルヨードニウムカチオン、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムカチオン、ジ-4-イソプロピルフェニルヨードニウムカチオン、ビス(2,4-ジイソプロピルフェニル)ヨードニウムカチオン、4-ヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオン、4-シクロヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウムカチオン、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0025】
好ましいスルホニウムカチオンの具体例としては、上記トリフェニルスルホニウムカチオン、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムカチオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド及び4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムカチオンの他、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウムカチオン、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムカチオン、4-tertブチルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、ジフェニルフェナシルスルホニウムカチオン等が挙げられる。
【0026】
好ましいヨードニウム塩の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0027】
【化1】
【0028】
好ましいスルホニウム塩の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0029】
【化2】
【0030】
【化3】
【0031】
これらオニウム塩(A)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
本発明の、一般式(1)で表されるオニウム塩は公知の方法、例えば複分解法によって製造できる。複分解法は例えば、新実験化学講座14-I巻(1978年、丸善)p-448;Advance in Polymer Science,62,1-48(1984);新実験化学講座14-III巻(1978年、丸善)pp1838-1846;有機硫黄化学(合成反応編、1982年、化学同人)、第8章、pp237-280;日本化学雑誌,87,(5),74(1966);特開昭64-45357号、特開昭61-212554号、特開昭61-100557号、特開平5-4996号、特開平7-82244号、特開平7-82245号、特開昭58-210904号、特開平6-184170号などに記載されている。
【0033】
上記の複分解反応に用いるフッ素化アルキルフルオロリン酸塩としては、反応性の観点からアルカリ金属の塩が好ましい。この塩は前駆体であるフッ素化アルキルフルオロホスホランとフッ化アルカリ金属とをジメチルエーテル、ジエトキシエタン、アセトニトリル又はこれらの混合物のような非プロトン性の溶媒中、-35~60℃で反応させることで得られる(米国特許6210830号公報)。
【0034】
前駆体のフッ素化アルキルフルオロホスホランは、例えば、アルキルホスフィンを常圧下、-15~20℃の温度でフッ化水素酸により電気化学的にフッ素化する方法(米国特許6264818号)などにより得られる。電気化学的フッ素化の進行は電気量に比例し、通常、理論的電気量の90~150%、特に110~130%が消費された時点でフッ素化を終了する。これによりアルキル基の水素原子が80%以上、好ましくは90%以上がフッ素で置換されたフッ素化アルキルフルオロホスホランが得られる。目的のフッ素化アルキルフルオロホスホランは電解液から分離するので分液により回収し、必要により蒸留によって精製する。
【0035】
本発明のナノインプリント用光硬化性組成物(以下、硬化性組成物と略す)が含むカチオン重合性炭化水素化合物(B)としては、エチレン性不飽和基を有する炭化水素化合物であり、例えば炭素数4~35の脂肪族不飽和炭化水素化合物(B1)や炭素数6~18の芳香族化合物にエチレン性不飽和基を置換した化合物(B2)が使用できる。
【0036】
炭素数4~35の脂肪族不飽和炭化水素化合物(B1)のうち、不飽和基を1つ有する化合物(B11)としては、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、ビニルシクロペンタン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン、1-オクテン、2-オクテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、ビニルノルボルナン、1-デセン、カンフェン、α-ピネン、β-ピネン、ビニルアダマンタン等が挙げられる。
不飽和基を2つ以上有する化合物(B12)としては、ブタジエン、1,4-ペンタジエン、シクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2,5-ノルボリナジエン、ジシクロペンタジエン、4-ビニル-シクロへキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、あるいはこれらをディールスアルダー反応により生成される縮合多環不飽和炭化水素等が挙げられる。
【0037】
炭素数6~18の芳香族化合物にエチレン性不飽和基を置換した化合物(B2)とは、エチレン性不飽和基(ビニル基、アリル基等)を1つ以上置換した、炭素数6~18(芳香族化合物に置換した置換基の炭素数は含まない)の芳香族化合物をいう。また一つのエチレン性不飽和基に複数の芳香族化合物が置換したものもこれに含有する。
炭素数6~18の芳香族化合物としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニル等単環及び多環芳香族炭化水素化合物、及び芳香族複素環炭化水素化合物(チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル等単環式複素環;及びインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル等縮合多環式複素環)が挙げられる。
芳香族化合物としては、以上の他に、芳香族化合物中の水素原子の一部が炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数1~18のアシル基、炭素数1~18のアシロキシ基、ハロゲン原子、水酸基等で置換されていてもよい。
【0038】
炭素数6~18の芳香族化合物にエチレン性不飽和基を置換した化合物(B2)のうち、不飽和基を1つ有する化合物(B21)の具体例としては、ビニルチオフェン、ビニルフラン、ビニルピリジン、スチレン、α-メチルスチレン、4-ジクロロメチルスチレン、4-アセトキシスチレン、4-クロロスチレン、3,5-ジクロロスチレン、4-ブロモスチレン、4-ビニル安息香酸メチル、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、3-プロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、3-ブチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-ヘキシルスチレン、4-オクチルスチレン、3-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-tert-ブトキシカルボニルスチレン、4-メトキシスチレン、4-tert-ブトキシスチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、2-イソプロペニルナフタレン、9-ビニルアントラセン、1-ビニルアントラセン、N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。
不飽和基を2つ以上有する化合物(B22)の具体例としては、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジビニルナフタレン、1,5-ジビニルナフタレン、1,4-ジイソプロペニルナフタレン、9,10-ジビニルアントラセン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン等が挙げられる。
これらカチオン重合性炭化水素化合物(B)を、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
これらカチオン重合性炭化水素化合物の中でも、エッチング耐性の観点から、炭素及び水素のみにより構成される化合物が好ましく、芳香族炭化水素化合物及び、環状炭化水素化合物がより好ましい。
硬化性の観点で、上記不飽和基を一つ有する化合物(B11及びB21)と不飽和基を二つ以上有する化合物(B12及びB22)とを併用してもよい。不飽和基を二つ以上有する化合物の割合は、カチオン重合性炭化水素化合物重量に基づき通常0~90重量%、好ましくは5~80重量%、より好ましくは10~70重量%である。
【0040】
本発明において、カチオン重合性炭化水素化合物のほか、他のカチオン重合性化合物をさらに併用することができる。そのような化合物としては、ビニルエーテル化合物(B3)、プロペニルエーテル化合物(B4)、エポキシ化合物(B5)が挙げられる。
【0041】
本発明で用いられるビニルエーテル化合物(B3)としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等単官能ビニルエーテルや、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテル等のジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル及びプロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等多官能ビニルエーテルが挙げられる。
【0042】
本発明で用いられるプロペニルエーテル(B4)としては、例えば、エチル-1-プロペニルエーテル、tert-ブチル-1-プロペニルエーテル、2-エチルヘキシル-1-プロペニルエーテル、ノニル-1-プロペニルエーテル、ドデシル-1-プロペニルエーテル、ラウリル-1-プロペニルエーテル、シクロヘキシル-1-プロペニルエーテル、シクロヘキシルメチル-1-プロペニルエーテル、ベンジル-1-プロペニルエーテル、ジシクロペンテニル-1-プロペニルエーテル等単官能プロペニルエーテルや、エチレングリコールジプロペニルエーテル、ジエチレングリコールジプロペニルエーテル、ポリエチレングリコールジプロペニルエーテル、プロピレングリコールジプロペニルエーテル、ブチレングリコールジプロペニルエーテル、ヘキサンジオールジプロペニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジプロペニルエーテル、トリメチロールエタントリプロペニルエーテル、トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラプロペニルエーテル、グリセリントリプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラプロペニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタプロペニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサプロペニルエーテル等多官能プロペニルエーテルが挙げられる。
【0043】
本発明で用いられるエポキシ化合物(B5)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド及び3-ビニルシクロヘキセンオキサイド等単官能エポキシ化合物や、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3-テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8-ジエポキシオクタン及び1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0044】
これらの内、硬化速度の観点から好ましいのは、ビニルエーテル化合物(B3)、プロペニルエーテル化合物(B4)である。また、エッチング耐性の観点から、その他のカチオン重合製化合物を含有する割合は、全カチオン重合性化合物中40重量%以下が好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。
【0045】
本発明の硬化性組成物において、一般式(1)又は(2)で表されるオニウム塩(A)の含有量は、オニウム塩(A)、カチオン重合性炭化水素化合物(B)及びエチレン性不飽和基を有するオリゴマー(C)の合計重量に基づいて、0.1重量%~30重量%、好ましくは0.5重量%~20重量%、さらに好ましくは1重量%~10重量%である。
【0046】
本発明の硬化性組成物は、エチレン性不飽和基を有するオリゴマー(C)(以下、オリゴマー(C)と略す。)をさらに含有することを特徴とする。ここで、エチレン性不飽和基とは、カチオン重合可能な官能基(例えばビニル基、アリル基等)のことであり、例えばビニル基にカルボニル基が結合した、いわゆるラジカル重合性モノマーであるアクリル酸エステル、アクリルアミド等の基は意図していない。このような不飽和基をオリゴマーの側鎖、および主鎖部分に有することで、本発明の硬化性組成物で共に用いるカチオン重合性炭化水素化合物(B)と反応し均一な硬化物が得られ、カチオン重合性炭化水素化合物(B)単独で用いるよりも塗布性やエッチング耐性に優れる硬化物を得ることができる。
【0047】
上記オリゴマー(C)は溶解性の観点からゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)測定において、数平均分子量100~50,000が好ましく、より好ましくは200~20,000であり、さらに好ましくは300~10,000である。
【0048】
本発明におけるGPC測定は、HLC-8320GPC(東ソー(株)製)を使用し、THF溶媒、TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を基準物質として、測定温度:40℃、カラム:Alliance(ウォーターズ製)、検出装置:屈折率検出器で測定した。また、解析ソフトとしてGPCワークステーションEcoSEC-WS(東ソー(株)製)を使用した。
【0049】
前記オリゴマー(C)を得るために必要となる、単量体である重合性モノマーとしては、特に制限なく適宜利用可能であるが、エッチング耐性の観点では上記エチレン性不飽和基を有するカチオン重合性炭化水素化合物(B)が挙げられ、好ましくは(B1)及び(B2)であり、より好ましくは(B22)、(B22)と(B21)の併用、(B12)と(B21)の併用である。(B22)等は単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。
オリゴマー(C)におけるエチレン性不飽和基の含有量は、通常0.5~30mol%、好ましくは2~20mol%である。
【0050】
前記オリゴマー(C)は、種々の方法で得ることができる。例えば下記の文献に記載の方法によって合成することができる。
Makromol.Chem.189,723-731(1988).
Macromolecules 44,12,4579-4582(2011).
Macromolecules 13,6,1350-1354(1980).
Journal of Polymer Science,A:Polymer Chemistry 54,1902-1907(2016).
Journal of Polymer Science,A:Polymer Chemistry 51,2581-2587(2013).等。
【0051】
本発明の硬化性組成物において、前記オリゴマー(C)の含有量は、オニウム塩(A)、カチオン重合性炭化水素化合物(B)及びオリゴマー(C)の合計重量に基づいて、0.5重量%~90重量%、好ましくは1重量%~75重量%、さらに好ましくは5重量%~50重量%である。
【0052】
本発明の硬化性組成物には、離型性向上や基板への塗布性を向上させるために一般的に使用される界面活性剤(D)を含むことができる。
本発明で用いることができる界面活性剤(D)としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等であり、例えばエフトップEF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成製)、メガファックF171、同F173、同R30、メガファックペインタッド31(DIC製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子製)、KP341、X-70-090、X-70-091、X-70-092、X-70-093(信越化学工業製)等を挙げることができる。
これら界面活性剤(D)の含有量は、硬化性組成物全体の重量に基づいて、0.001~5重量%、好ましくは0.002~4重量%、さらに好ましくは0.005~3重量%である。2種以上の界面活性剤を用いる場合はその合計重量が上記記載の範囲にあることが好ましい。
【0053】
本発明の硬化性組成物は、照射された光を吸収し、得られたエネルギーを開始剤に受け渡すことで開始剤の光分解を促すことができる増感剤(H)をさらに含んでいてもよい。
【0054】
増感剤(H)としては、公知(特開平11-279212号及び特開平09-183960号等)の増感剤等が使用でき、具体例としては、ナフタレン(1-ナフトール、2-ナフトール、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン及び4-メトキシ-1-ナフトール等);ベンゾキノン{1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン等};ナフトキノン{1,4-ナフトキノン、1,2-ナフトキノン等};アントラキノン{2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、等};アントラセン{アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン等};ピレン;1,2-ベンズアントラセン;ペリレン;テトラセン;コロネン;チオキサントン{チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン及び2,4-ジエチルチオキサントン等};フェノチアジン{フェノチアジン、N-メチルフェノチアジン、N-エチルフェノチアジン、N-フェニルフェノチアジン等};キサントン;クマリン{7-(ジエチルアミノ)4-(トリフルオロメチル)クマリン、3,3'-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、10-アセチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H,-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン、10-(2-ベンゾチアゾリル)-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H,-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン等};ケトン{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、ビス(4,4’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及びビス(4,4’-ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等};カルバゾール{N-フェニルカルバゾール、N-エチルカルバゾール、ポリ-N-ビニルカルバゾール及びN-グリシジルカルバゾール等};クリセン{1,4-ジメトキシクリセン及び1,4-ジ-α-メチルベンジルオキシクリセン等};フェナントレン{9-ヒドロキシフェナントレン、9-メトキシフェナントレン、9-ヒドロキシ-10-メトキシフェナントレン及び9-ヒドロキシ-10-エトキシフェナントレン等}等が挙げられる。
特に、オニウム塩の電子受容性の観点から、ナフトキノン系、ベンゾフェノン系、キサントン系、アントラキノン系、チオキサントン系の増感剤を使用したときに、高い増感効果が得られるため、好ましい。
【0055】
これら増感剤(H)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、増感剤(H)の含有量は、増感剤(H)、オニウム塩(A)、カチオン重合性炭化水素化合物(B)及びオリゴマー(C)の合計重量に基づいて、通常0.005~20重量%、好ましくは0.01~10重量%である。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性組成物の硬化物の外観や物性を制御するために一般的に使用される他の添加剤(J)を含むことができる。その他の添加剤(J)としては、着色剤(Ja)、金属酸化物粒子(Jb)及び金属粒子(Jc)等が含まれる。
【0057】
本発明における着色剤(Ja)としては、従来、塗料及びインキ等に使用されている無機顔料及び有機顔料等の顔料並びに染料が使用できる。
【0058】
無機顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、アルミナ、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト及びチタンブラック等が挙げられる。
【0059】
有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシニンブルー、ハロゲン化銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、イソシンドリノン系、キナクリドン系、ジオキサンジン系、ペリノン系及びペリレン系等の多環式又は複素環式化合物が挙げられる。
【0060】
染料の具体例として、イエロー染料としては、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類若しくは開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリール又はヘテリルアゾ染料、カップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物を有するアゾメチン染料、ベンジリデン染料及びモノメチンオキソノール染料等のメチン染料、ナフトキノン染料及びアントラキノン染料等のキノン系染料等、キノフタロン染料、ニトロ、ニトロソ染料、アクリジン染料並びにアクリジノン染料等が挙げられる。
【0061】
マゼンタ染料としては、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、ピラゾロトリアゾール類、閉環型活性メチレン化合物類若しくはヘテロ環(ピロール、イミダゾール、チオフェン及びチアゾール誘導体等)を有するアリール又はヘテリルアゾ染料、カップリング成分としてピラゾロン類又はピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料、アリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料及びオキソノール染料等のメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料及びキサンテン染料等のカルボニウム染料、ナフトキノン、アントラキノン及びアントラピリドン等のキノン系染料並びにジオキサジン染料等の縮合多環系染料等を挙げられる。
【0062】
シアン染料としては、インドアニリン染料及びインドフェノール染料等のアゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料及びメロシアニン染料等のポリメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料及びキサンテン染料等のカルボニウム染料、フタロシアニン染料、アントラキノン染料、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピロロピリミジノン若しくはピロロトリアジノン誘導体を有するアリール又はヘテリルアゾ染料(C.I.ダイレクトブルー14等)並びにインジゴ・チオインジゴ染料を挙げられる。
【0063】
着色剤(Ja)の粒子径は、塗膜の鮮映性の観点から、平均粒子径として0.01μm~2.0μmが好ましく、0.01μm~1.0μmが更に好ましい。
【0064】
着色剤(Ja)の添加量は特に限定されないが、硬化性組成物の合計重量に基づいて1~60重量%であることが好ましい。
【0065】
顔料を用いる場合は、その分散性及び硬化性組成物の保存安定性を向上させるために顔料分散剤を添加することが好ましい。
顔料分散剤としてはビックケミー社製顔料分散剤(Anti-Terra-U、Disperbyk-101,103、106、110、161、162、164、166、167、168,170、174、182、184又は2020等)、味の素ファインテクノ社製顔料分散剤(アジスパーPB711、PB821、PB814、PN411及びPA111等)、ルーブリゾール社製顔料分散剤(ソルスパーズ5000、12000、32000、33000及び39000等)が挙げられる。これらの顔料分散剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。顔料分散剤の添加量は特に限定されるものではないが、硬化性組成物中に0.1~10重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0066】
本発明における(Jb)としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、酸化ニオブ及びチタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられ、好ましいのはチタン酸バリウムである。また、酸化アルミニウムや酸化ケイ素、酸化チタン等は基材の保護のためのコーティング層形成の際に使用される。
【0067】
(Jb)の粒子径は、誘電率の観点から、平均粒子径として0.01μm~2.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.01μm~1.0μmである。
【0068】
本発明における金属粉末(Jc)としては、パラジウム、ニッケル、銅、銀及び金等が挙げられ、好ましいのはパラジウム、ニッケル及び銅である。
(Jc)の平均粒子径は、0.01μm~10μmであることが好ましい。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、必要により溶剤及び密着性付与剤(シランカップリング剤等)等を含有することができる。
溶剤としては、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノアルキルエーテル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等)、エステル類(エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート及びプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、メシチレン及びリモネン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ゲラニオール、リナロール及びシトロネロール等)及びエーテル類(テトラヒドロフラン及び1,8-シネオール等)が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
硬化性組成物における溶剤の含有量は、硬化性組成物の合計重量に基づいて0~99重量%であることが好ましく、更に好ましくは0~95重量%、特に好ましくは0~90重量%である。
【0070】
密着性付与剤としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム及びアセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。密着性付与剤を用いる場合の含有量は、硬化性組成物の合計重量にもとづいて0~20重量%が好ましく、更に好ましくは1~15重量%、特に好ましくは5~10重量%である。
【0071】
本発明の硬化性組成物は、更に、使用目的に合わせて、無機微粒子、分散剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を含有することができる。
【0072】
本発明の硬化性組成物は、一般式(1)又は(2)で表されるオニウム塩(A)、カチオン重合性炭化水素化合物(B)、オリゴマー(C)、必要により用いる増感剤(H)、必要により用いる活性剤(D)、必要により用いる着色剤(Ja)、必要により用いる金属酸化物粒子(Jb)、必要により用いる金属粒子(Jc)、必要により用いる溶剤及び必要により用いる密着性付与剤を公知の撹拌混合装置(撹拌機の付属した混合容器及びペイントシェーカー等)を用いて均一混合する方法及び公知の混練機(ボールミル及び3本ロールミル等)を用いて混練する方法等で得られる。均一混合温度及び混練温度は通常10℃~40℃、好ましくは20℃~30℃である。
【0073】
本発明の硬化性組成物は、一般的に使用されている高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、キセノンランプあるいはLED光源が使用できる。
【0074】
本発明の硬化性組成物は、光を照射することによって強酸を発生させ、カチオン重合による硬化反応を促進させて、硬化物を得ることができる。したがって、このような硬化物の製造方法としては、光源となる光の波長に応じた増感剤(H)を選択し、該硬化性組成物に含有させたものを用いて光を照射するか、用いた増感剤(H)が有する吸収波長に該当する光源を用いて光を照射する工程を含むことが好ましい。また、硬化反応の際には必要に応じて加熱してもよい。加熱温度は、通常、30℃~200℃であり、好ましくは35℃~150℃、更に好ましくは40℃~120℃である。
【0075】
本発明の硬化性組成物の基材への塗布方法としては、用途に応じてスピンコート、ロールコート及びスプレーコート等の公知のコーティング法並びに平版印刷、カルトン印刷、金属印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷及びグラビア印刷といった公知の印刷法を適用できる。また、微細液滴を連続して吐出するインクジェット方式の塗布にも適用できる。
【0076】
本発明の硬化性組成物を塗布する基材としては、種々用途により選択することができる。例えば、ガラス、セラミック、金属等蒸着膜、磁性膜、反射膜、石英ガラス、Ni、Cu等金属基板、紙、光学フィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、TFTアレイ基板、ITO基板、シリコン基板等が用いられる。また、後述するモールドとの組み合わせにより、光透過性又は非光透過性の基材を選択できる。
【0077】
本発明の硬化性組成物を用いたパターンの形成方法としては、当該発明の硬化物との密着性向上を目的に、基板上に密着層を設けることが好ましい。密着層形成には、例えば上記密着性付与剤を用い、加熱蒸着や塗布-加熱工程により基板上に密着層を設けることができる。
【0078】
本発明の硬化性組成物を用いたパターンの形成方法としては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層にモールドを押接する。これによりモールド表面にあらかじめ形成されていた微細パターンをパターン形成層に転写できる。
本発明の硬化性組成物を用いたパターンの形成方法では、モールド材及び基材の少なくとも一方は光透過性の材料が必要となる。本発明の組成物を用いたパターン形成方法では、基材の上に本発明の組成物を塗布してパターン形成層を形成し、その表面に光透過性モールドを押接し、モールド裏面から光を照射し、パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に本発明の組成物を塗布、パターン形成層を形成し、その表面にモールドを押接し、基材の裏面から光を照射し、パターン形成層を硬化させることもできる。
ここで用いることができるモールド材は、光透過性モールド材としてガラス、石英ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリレート樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。非光透過性モールド材としてセラミック、金属等蒸着膜、Ni、Cu等金属基板、シリコン基板等を用いることができる。
【0079】
本発明の硬化性組成物を用いてパターンを形成する際、モールド表面と該硬化性組成物との剥離性を向上するために、モールド表面に離型処理を行うことが好ましい。例えばシリコーン系、フッ素系シランカップリング剤を用いて処理を行ったり、例えばオプツールDSX(ダイキン製)、NovecEGC-1720(住友スリーエム製)等市販の離型剤を用いることができる。
【0080】
本発明の硬化性組成物を用いてパターンを形成する際、通常窒素ガス雰囲気下、空気雰囲気下で行うことができる。ラジカル重合で問題となる酸素阻害を受けないので、空気雰囲気下で行うことが簡便で好ましく、水分による硬化の影響を避けるため乾燥空気雰囲気下で行うことがより好ましい。モールド表面と該硬化性組成物との間に生じる気泡に起因する欠陥を低減する目的で、フッ素系炭化水素ガス雰囲気下で行うことがさらに好ましい。例えばHFC-245fa(セントラル硝子製)を用いることができる。
【実施例
【0081】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0082】
製造例1[オリゴマー(C-1)の合成]
Macromolecules 13,6,1350-1354(1980)を参考に、モノマーとしてジビニルベンゼンを使用してジビニルベンゼン重合体を合成した。GPC測定において、数平均分子量は約2,600であった。H-NMRによりエチレン性不飽和基含有量は20mol%であった。
【0083】
製造例2[オリゴマー(C-2)の合成]
Journal of Polymer Science,A:Polymer Chemistry 54,1902-1907(2016)を参考に、モノマーとしてジビニルベンゼンとスチレンを使用してジビニルベンゼン-スチレン共重合体を得た。GPC測定において、数平均分子量は約8,000であった。H-NMRにより、得られた共重合体はジビニルベンゼン:スチレンのモル比が11:89からなる構造を有し、エチレン性不飽和基含有量は2.5mol%であることがわかった。
【0084】
製造例3[オリゴマー(C-3)の合成]
Journal of Polymer Science,A:Polymer Chemistry 54,1902-1907(2016)を参考に、モノマーとして5-ビニル-2-ノルボルネンとスチレンを使用してビニルノルボルネン-スチレン共重合体を得た。GPC測定において、数平均分子量は約8,500であった。H-NMRにより、得られた共重合体はビニルノルボルネン:スチレンのモル比が17:83からなる構造を有し、エチレン性不飽和基含有量は3.5mol%であることがわかった。
【0085】
<実施例1~45及び比較例1~18>
[ナノインプリント用光硬化性組成物の調製]
カチオン重合性化合物(B)100g、オリゴマー(C)20g、オニウム塩(A)2.0g、増感剤(H)としてアントラキュアーUVS1331(川崎化成製)2.0gを均一混合し、本発明のナノインプリント用光硬化性組成物を調製した。使用した原材料の種類は表1および表2に示した。
(オニウム塩(A))
オニウム塩(A)は特許5095208号公報に従い合成した。比較用のオニウム塩(A’)は市販のものを使用した。
A-1:ジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート
A-2:クミル-p-トリルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
A-3:(4-フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
A-4:トリス(4-tertブチルフェニル)スルホニウムビス(ノナフルオロブチル)テトラフルオロホスフェート
A-5:ジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
A-6:クミル-p-トリルヨードニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート
A-7:(4-フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
A-8:トリス(4-tertブチルフェニル)スルホニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート
A’-1:ジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(東京化成製)
A’-2:ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート(和光純薬製)
(カチオン重合性化合物(B))
B-1:4-tert-ブチルスチレン
B-2:1,4-ジイソプロペニルベンゼン
B-3:5-エチリデン-2-ノルボルネン
(オリゴマー(C))
C-1:製造例1で得られたオリゴマー
C-2:製造例2で得られたオリゴマー
C-3:製造例3で得られたオリゴマー
C’-1:市販の数平均分子量約2000のポリスチレン(Aldlich製)
【0086】
[光ナノインプリントによるパターン形成評価]
調製した硬化性組成物を、あらかじめ3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランのシランカップリング剤で表面処理を施したシリコン基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、ナノインプリントステッパー(三明製;ImpFlexEssential)を用いて光ナノインプリントによるパターン形成を行った。成形パターンについては、光学顕微鏡を用いてそのパターン形状を確認し、離型性については、使用したモールドを光学顕微鏡にて観察することで、付着物の有無を確認した。離型性を高めるため、HFC-245fa(セントラル硝子製)雰囲気下で行った。なお、モールドは表面に凹凸パターンを有するシリカモールドNIM-PM350(NTTAT製)をトリデカフルオロ-1,1,2,2-オクチルトリメトキシシランのシランカップリング剤で離型処理を施したものを用いた。光源としてはUV-LEDスポット光源LC-L1V3(浜松ホトニクス社製)を用いて露光を行った。その結果を表3および表4に示す。
パターン形状評価:
〇:モールドパターン通りに転写できている。
△:一部パターンに欠陥が見られる。
×:形状が維持できていない。
離型性評価:
〇:モールドへの硬化樹脂付着が見られない。
△:モールドへの硬化樹脂付着がわずかに見られる。
×:モールドへの硬化樹脂付着が明らかに見られる。
[エッチング耐性評価]
上記硬化性組成物を露光により硬化させた薄膜を、酸素反応性イオンエッチング装置(IM-TU01)を用いて酸素流量10sccm、真空度0.5Pa、高周波出力20W、エッチング時間を1分、2分、5分の条件下でドライエッチングを行い、エッチングレートを算出した。比較のため、PS(ポリスチレン樹脂)で同様の条件でドライエッチングを行い、エッチングレートを算出した。このPSで得られたエッチングレートを1としたときの各実施例及び比較例のエッチングレート比をエッチング耐性として評価した。その結果を表3および表4に示す。なお、値が小さい程ドライエッチング耐性が良好であることを示す。
塗布性評価:
○:スピンコート後5分静置した後、膜が均一である。
×:スピンコート後5分静置した後、膜にはじきやムラが見える。
硬化物外観評価
○:ガラス板上で硬化した硬化物が透明である。
×:ガラス板上で硬化した硬化物に濁りが見られる。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
表中、*1;硬化物が不均一のためエッチングレート算出できず。
【0092】
表3および表4より、本発明の硬化性組成物は比較の硬化性組成物と比べてパターン形成性、塗布性に優れ、かつエッチング耐性に優れていることが分かる。表4中、比較例3~10で示されるように、オリゴマーとして非反応性のスチレンオリゴマーを添加しても均一な硬化物を得ることができなかった。一方、比較例11~18で示されるように、オリゴマーを添加しないと塗布性について十分な性能を得ることができず、また架橋性も乏しいのでエッチング耐性が実施例1~45に比べてやや劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のナノインプリント用光硬化性組成物は、光照射を利用した微細パターン形成材料として用いられ、半導体集積回路基板、CSP、MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等、レジストフィルム、半導体素子及びFPD用透明電極(ITO,IZO、GZO)等の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の永久膜形成、MEMS用レジスト、ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、ホトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、光導波路材料、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、各種分離・分析用チップ製造、及びマイクロ光造形用材料等に好適に用いられる。