(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】量子ニューラルネットワークの訓練方法及び装置、電子機器並びに媒体
(51)【国際特許分類】
G06N 10/60 20220101AFI20231019BHJP
G06N 3/08 20230101ALI20231019BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20231019BHJP
【FI】
G06N10/60
G06N3/08
G06N20/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022031755
(22)【出願日】2022-03-02
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】202110432127.0
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514322098
【氏名又は名称】ベイジン バイドゥ ネットコム サイエンス テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing Baidu Netcom Science Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】2/F Baidu Campus, No.10, Shangdi 10th Street, Haidian District, Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】シン・ワーン
(72)【発明者】
【氏名】シージュオ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジーシン・ソーン
(72)【発明者】
【氏名】シュエンチアーン・ジャオ
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-522805(JP,A)
【文献】松井 伸之,量子ニューロコンピューティング,システム/制御/情報,日本,システム制御情報学会,2008年05月15日,第52巻、第5号,pp. 169-174
【文献】古澤 明,解説 量子テレポーテーションネットワーク,応用物理,第75巻、第11号,社団法人応用物理学会,2006年11月10日,pp. 1324-1327,ISSN: 0369-8009
【文献】谷 誠一郎,量子分散コンピューティング,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会,2007年05月01日,第J90-A巻、第5号,pp. 393-402,ISSN: 0913-5707
【文献】Xuanqiang Zhao et al.,LOCCNet: a machine learning framework for distributed quantum information processing,arXiv,arXiv: 2101.12190v1,2021年01月,<URL: https://arxiv.org/abs/2101.12190v1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00- 3/10
G06N 10/00-10/80
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ニューラルネットワークの訓練方法であって、
量子通信の双方のそれぞれに対して、訓練すべき第1量子ニューラルネットワーク及び少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークを初期化し、伝送すべきキュービットに対応する量子状態訓練セットを取得し、前記第1量子ニューラルネットワークは量子通信用のキュービットを受信するように構成され、前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを受信するように構成されることと、
量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定することと、
各量子状態組合せについて、前記各量子状態組合せはそれぞれ2組の前記訓練セットからの1つの量子状態を含むことと、
前記量子状態組合せ中の量子状態及び前記もつれ状態にあるキュービットペア中のキュービットをそれぞれに対応する前記第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々に入力しないキュービットを測定して、対応する量子状態を得ることと、
相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行して、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得することと、
前記量子通信の双方のそれぞれが得た量子状態と前記量子状態組合せ中の対応する量子状態との間の誤差を計算することと、
すべての前記量子状態組合せに対応する誤差に基づいて損失関数を計算することと、
前記損失関数が最小値に達するように量子通信の双方のそれぞれの前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークのパラメータ値を調整して、訓練後の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークを取得することと、を含む量子ニューラルネットワークの訓練方法。
【請求項2】
量子通信の双方のそれぞれに対して、
前記もつれ状態にあるキュービットペアの数が伝送すべきキュービットの数よりも小さいことに応答して、前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は、前記第1量子ニューラルネットワークが出力する、前記設定されるもつれ状態にあるキュービット及び1つ又は複数の前記伝送すべきキュービットに対応するキュービットを受信するよう構成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
量子通信の双方のそれぞれに対して、
前記もつれ状態にあるキュービットペアの数が伝送すべきキュービットの数以上であることに応答して、前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は、前記第1量子ニューラルネットワークが出力する、もつれ状態にあるキュービットに対応するキュービットを受信するよう構成される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
以下の式に基づいて前記損失関数を計算する請求項1に記載の方法。
【数1】
式中、Lは損失関数であり、{σ
j,ρ
i}はそのうち1つの訓練セットからの量子状態σ
jともう1つの訓練セットからの量子状態ρ
iとで構成される1つの量子状態組合せを表し、g(σ
j,θ
k)及びf(ρ
i,θ
k)はそれぞれ量子ニューラルネットワークのパラメータがθ
kである場合、σ
jとρ
iを相手方に伝送した後に得た量子状態を表し、θ
kはk回目の訓練プロセスにおける1組のパラメータ値を表し、前記1組のパラメータ値中の各パラメータ値はそれぞれ前記量子通信の双方のそれぞれの前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々に対応し、F()は忠実度関数を表し、m及びnはそれぞれ前記1つの訓練セットの量子状態の数及び前記もう1つの訓練セットの量子状態の数を表す。
【請求項5】
最適化方法によって前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークのパラメータ値を調整する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
双方向量子テレポーテーション方法であって、
量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定することと、
量子通信の双方のそれぞれに対して、量子通信用のキュービットを第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを第2量子ニューラルネットワークに入力することと、
前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記第2量子ニューラルネットワークに入力しないキュービットを測定して、対応する量子状態を得ることと、
相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行して、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得することと、を含み、
前記量子通信の双方の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークは請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって取得される双方向量子テレポーテーション方法。
【請求項7】
量子ニューラルネットワークの訓練装置であって、
量子通信の双方のそれぞれに対して、訓練すべき第1量子ニューラルネットワーク及び少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークを初期化し、伝送すべきキュービットに対応する量子状態訓練セットを取得するように構成され、前記第1量子ニューラルネットワークは量子通信用のキュービットを受信するように構成され、前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを受信するように構成される初期化ユニットと、
量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定するように構成されるもつれ状態割り当てユニットと、
各量子状態組合せについて、前記各量子状態組合せはそれぞれ2組の前記訓練セットからの1つの量子状態を含み、
前記量子状態組合せ中の量子状態及び前記もつれ状態にあるキュービットペア中のキュービットをそれぞれに対応する前記第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々に入力しないキュービットを測定して、対応する量子状態を得て、
相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行して、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得し、
前記量子通信の双方のそれぞれが得た量子状態と前記量子状態組合せ中の対応する量子状態との間の誤差を計算するように構成される通信ユニットと、
すべての前記量子状態組合せに対応する誤差に基づいて損失関数を計算するように構成される計算ユニットと、
前記損失関数が最小値に達するように量子通信の双方のそれぞれの前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークのパラメータ値を調整して、訓練後の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークを取得するように構成される訓練ユニットと、を含む量子ニューラルネットワークの訓練装置。
【請求項8】
双方向量子テレポーテーション装置であって、
量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定するように構成されるもつれ状態割り当てユニットと、
前記量子通信の双方のそれぞれに対して、量子通信用のキュービットを第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを第2量子ニューラルネットワークに入力するように構成される第1伝送ユニットと、
前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記第2量子ニューラルネットワークに入力しないキュービットを測定して、対応する量子状態を得るように構成される測定ユニットと、
相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行して、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得するように構成される第2伝送ユニットと、を含み、
前記量子通信の双方の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークは請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって取得される双方向量子テレポーテーション装置。
【請求項9】
電子機器であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと通信接続されるメモリと、を含み、
前記メモリには前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令が記憶されており、前記命令が前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されることで、前記少なくとも1つのプロセッサが請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を実行可能となる電子機器。
【請求項10】
コンピュータに請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのコンピュータ命令が記憶される非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項11】
プロセッサによって実行されると請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を実現するコンピュータプログラ
ム。
【請求項12】
電子機器であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと通信接続されるメモリと、を含み、
前記メモリには前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令が記憶されており、前記命令が前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されることで、前記少なくとも1つのプロセッサが請求項6に記載の方法を実行可能となる電子機器。
【請求項13】
コンピュータに請求項6に記載の方法を実行させるコンピュータ命令が記憶される非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると請求項6に記載の方法を実現するコンピュータプログラ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は量子計算の分野に関し、特に量子情報伝送技術の分野に関し、具体的には、量子ニューラルネットワークの訓練方法、装置、電子機器、コンピュータ可読記憶媒体及びコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
人類は新しい量子科技の急速な台頭の波の真っ只中にあり、ますます多くの量子科技は次々と出現しており、量子ハードウェアの技術も年々向上しており、量子通信及び量子インターネットも発展し続けており、この中では、最も基本的な技術は量子テレポーテーション(Quantum Teleportation、QT)であり、一般に、量子もつれと古典的通信によって量子情報の伝送を実現することを指す。該技術は量子もつれ(Quantum entanglement)を利用することで、任意の距離の量子情報伝送を実現でき、従って、量子通信、分散型量子計算及び量子ネットワークの発展にとっていずれもかけがえのない重要性を持っている。
【0003】
現在、双方向量子テレポーテーションに対して一方向量子テレポーテーションを2回行う必要があるが、量子もつれリソースの準備及び割り当ては困難である。従って、どのようにできるだけ少ないもつれリソースを利用してより多くの量子情報の伝送を実現するかは、量子科技の実用にとって非常に重要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、量子ニューラルネットワークの訓練方法、装置、電子機器、コンピュータ可読記憶媒体及びコンピュータプログラム製品を提供する。
本開示の一態様によれば、量子通信の双方のそれぞれに対して、訓練すべき第1量子ニューラルネットワーク及び少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークを初期化し、伝送すべきキュービットに対応する量子状態訓練セットを取得し、前記第1量子ニューラルネットワークは量子通信用のキュービットを受信するように構成され、前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを受信するように構成されることと、量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定することと、各量子状態組合せについて、前記各量子状態組合せはそれぞれ2組の前記訓練セットからの1つの量子状態を含むことと、前記量子状態組合せ中の量子状態及び前記もつれ状態にあるキュービットペア中のキュービットをそれぞれに対応する前記第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々に入力しないキュービットを測定し、対応する量子状態を得ることと、相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行し、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得することと、前記量子通信の双方のそれぞれが得た量子状態と前記量子状態組合せ中の対応する量子状態との間の誤差を計算することと、すべての前記量子状態組合せに対応する誤差に基づいて損失関数を計算することと、前記損失関数が最小値に達するように量子通信の双方のそれぞれの前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークのパラメータ値を調整して、訓練後の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークを取得することと、を含む量子ニューラルネットワークの訓練方法を提供する。
【0005】
本開示の別の態様によれば、量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定することと、量子通信の双方のそれぞれに対して、量子通信用のキュービットを第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを第2量子ニューラルネットワークに入力することと、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記第2量子ニューラルネットワークに入力しないキュービットを測定し、対応する量子状態を得ることと、相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行し、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得し、前記量子通信の双方の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークは本開示に記載の量子ニューラルネットワークの訓練方法によって取得されることと、を含む双方向量子テレポーテーション方法を提供する。
【0006】
本開示の別の態様によれば、量子通信の双方のそれぞれに対して、訓練すべき第1量子ニューラルネットワーク及び少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークを初期化し、伝送すべきキュービットに対応する量子状態訓練セットを取得するように構成され、前記第1量子ニューラルネットワークは量子通信用のキュービットを受信するように構成され、前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを受信するように構成される初期化ユニットと、量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定するように構成されるもつれ状態割り当てユニットと、各量子状態組合せについて、前記各量子状態組合せはそれぞれ2組の前記訓練セットからの1つの量子状態を含み、前記量子状態組合せ中の量子状態及び前記もつれ状態にあるキュービットペア中のキュービットをそれぞれに対応する前記第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々に入力しないキュービットを測定し、対応する量子状態を得て、相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行し、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得し、前記量子通信の双方のそれぞれが得た量子状態と前記量子状態組合せ中の対応する量子状態との間の誤差を計算するように構成される通信ユニットと、すべての前記量子状態組合せに対応する誤差に基づいて損失関数を計算するように構成される計算ユニットと、前記損失関数が最小値に達するように量子通信の双方のそれぞれの前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークのパラメータ値を調整して、訓練後の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークを取得するように構成される訓練ユニットと、を含む量子ニューラルネットワークの訓練装置を提供する。
【0007】
本開示の別の態様によれば、量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定するように構成されるもつれ状態割り当てユニットと、量子通信の双方のそれぞれに対して、量子通信用のキュービットを第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを第2量子ニューラルネットワークに入力するように構成される第1伝送ユニットと、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記第2量子ニューラルネットワークに入力しないキュービットを測定し、対応する量子状態を得るように構成される測定ユニットと、相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行し、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得するように構成され、前記量子通信の双方の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークは本開示に記載の量子ニューラルネットワークの訓練方法によって取得される第2伝送ユニットと、を含む双方向量子テレポーテーション装置を提供する。
【0008】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサと通信接続されるメモリと、を含み、メモリは少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令が記憶されており、該命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサが本開示に記載の量子ニューラルネットワークの訓練方法を実行できる、電子機器を提供する。
【0009】
本開示の別の態様によれば、コンピュータに本開示に記載の量子ニューラルネットワークの訓練方法を実行させるためのコンピュータ命令が記憶される非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0010】
本開示の別の態様によれば、プロセッサによって実行されると本開示に記載の量子ニューラルネットワークの訓練方法を実現するコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0011】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサと通信接続されるメモリと、を含み、メモリは少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令が記憶されており、該命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサが本開示に記載の双方向量子テレポーテーション方法を実行できる、電子機器を提供する。
【0012】
本開示の別の態様によれば、コンピュータに本開示に記載の双方向量子テレポーテーション方法を実行させるためのコンピュータ命令が記憶される非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0013】
本開示の別の態様によれば、プロセッサによって実行されると本開示に記載の双方向量子テレポーテーション方法を実現するコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0014】
本開示の1つ又は複数の実施例によれば、量子通信の双方のそれぞれに訓練パラメータを絶えず最適化できるいくつかの量子ニューラルネットワークを作成することによって、訓練後の量子ニューラルネットワークが双方向量子テレポーテーションとなるように達成するとともに、もつれリソースの消費をさらに減らすことができ、強い拡張性及び適応性を有する。
【0015】
この部分で説明される内容は本開示の実施例のキー又は重要な特徴を識別することを目的とするものでも本開示の範囲を限定するためのものでもないと理解すべきである。本開示のほかの特徴は以下の明細書によって容易に理解できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は実施例を例示的に示し、明細書の一部を構成し、明細書のテキスト記述とともに実施例の例示的な実施形態を説明することに用いられる。示される実施例は例示のみを目的としており、請求項の範囲を限定するものではない。すべての図面では、同じ符号は類似するが必ずしも同じではない要素を示す。
【
図1】本開示の実施例に係る本明細書に記載される様々な方法を実施できる例示的なシステムの模式図を示す。
【
図2】例示的な実施例における一方向量子テレポーテーションの模式図を示す。
【
図3】例示的な実施例における双方向量子テレポーテーションの模式図を示す。
【
図4】例示的な実施例における一方向量子テレポーテーションの回路テンプレートの模式図を示す。
【
図5】本開示の実施例による量子ニューラルネットワークの訓練方法のフローチャートを示す。
【
図6】本開示の実施例による双方向量子テレポーテーションの回路テンプレートの模式図を示す。
【
図7】
図6に示す回路テンプレートに基づく訓練プロセス中の損失関数変化をシミュレーションする模式図を示す。
【
図8】本開示の実施例に係る3つのノイズ含有もつれを利用して4つの量子状態を双方向に伝送する回路テンプレートの模式図を示す。
【
図9】本開示の実施例に係る双方向量子テレポーテーション方法のフローチャートを示す。
【
図10】本開示の実施例に係る量子ニューラルネットワークの訓練装置の構成ブロック図を示す。
【
図11】本開示の実施例に係る双方向量子テレポーテーション装置の構成ブロック図を示す。
【
図12】本開示の実施例を実現することに使用できる例示的な電子機器の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本開示の例示的な実施例を説明し、容易に理解できるように本開示の実施例の様々な詳細が含まれており、あくまでも例示的なものであると理解すべきである。従って、当業者は、本開示の範囲を逸脱することなく、ここで説明される実施例に対して様々な変化や変更を行うことができることを理解すべきである。同様に、明確且つ簡潔にするために、以下の説明では公知の機能及び構造についての説明は省略されている。
【0018】
本開示では、特に断らない限り、用語「第1」、「第2」等を使用して様々な要素を説明することは、これらの要素の位置関係、時系列関係又は重要性関係を限定することを意図せず、このような用語は単に1つの素子を別の素子と区別することに用いられる。いくつかの例では、第1要素と第2要素は該要素の同一例を指してもよく、場合によっては、コンテキストの説明に基づいて、異なる実例を指してもよい。
【0019】
本開示では様々な前記例の説明に使用される用語は特定の例を限定するのではなく、説明することのみを目的とする。コンテキストに別途明記していない限り、要素の数を意図的に限定しないと、該要素は1つであってもよく複数であってもよい。また、本開示で使用される用語「及び/又は」はリストされる項目のうちのいずれか及びすべての可能な組合せ方式をカバーする。
【0020】
以下、図面を参照しながら本開示の実施例を詳細に説明する。
図1は本開示の実施例に係る本明細書に記載される様々な方法及び装置を実施できる例示的なシステム100の模式図を示す。
図1に示すように、該システム100は1つ又は複数のクライアント機器101、102、103、104、105及び106と、サーバ120と、1つ又は複数のクライアント機器をサーバ120に結合される1つ又は複数の通信ネットワーク110と、を含む。クライアント機器101、102、103、104、105及び106は1つ又は複数のアプリケーションプログラムを実行するように構成され得る。
【0021】
本開示の実施例では、サーバ120は、画像充填方法を実行可能にする1つ又は複数のサービス又はソフトウェアアプリケーションを実行し得る。 いくつかの実施例では、サーバ120は非仮想環境及び仮想環境を含み得るほかのサービス又はソフトウェアアプリケーションをさらに提供し得る。いくつかの実施例では、これらのサービスはwebに基づくサービス又はクラウドサービスとして提供されてもよく、たとえば、ソフトウェア、即ちサービス(SaaS)モデル下でクライアント機器101、102、103、104、105及び/又は106のユーザーに提供される。
【0022】
図1に示す構成では、サーバ120はサーバ120によって実行される機能を実現する1つ又は複数のコンポーネントを含み得る。これらのコンポーネントは1つ又は複数のプロセッサによって実行され得るソフトウェアコンポーネント、ハードウェアコンポーネント又はそれらの組合せを含み得る。クライアント機器101、102、103、104、105及び/又は106を操作するユーザーは1つ又は複数のクライアントアプリケーションプログラムを順に利用してサーバ120と対話することで、これらのコンポーネントが提供するサービスを利用することができる。様々な異なるシステム構成は可能であり、システム100と異なってもよいと理解すべきである。従って、
図1は本明細書に記載される様々な方法を実施するためのシステムの一例であり、それを限定することを目的とするものではない。
【0023】
クライアント機器101、102、103、104、105及び/又は106は訓練、伝送用のデータ、命令等を提供することに用いられ得る。クライアント機器はクライアント機器のユーザーがクライアント機器と対話できるインターフェースを提供し得る。クライアント機器はさらに該インターフェースを介して情報をユーザーに出力し得る。
図1は6種のクライアント機器のみを示しているが、当業者が理解できるように、本開示は任意の数のクライアント機器をサポートし得る。
【0024】
クライアント機器101、102、103、104、105及び/又は106は、たとえば、ポータブルハンドヘルドデバイス、汎用コンピュータ(たとえば、パーソナルコンピュータ及びラップトップコンピュータ)、ワークステーションコンピュータ、ウェアラブルデバイス、ゲームシステム、シンクライアント、様々なメッセージ送受信機器、センサ又はほかのセンシング機器等の様々なタイプのコンピュータ機器を含み得る。これらのコンピュータ機器は、たとえば、Microsoft Windows、Apple iOS、UNIX(登録商標)系オペレーティングシステム、Linux(登録商標)又はLinux系オペレーティングシステム(たとえば、Google Chrome OS)のような様々なタイプ及びバージョンのソフトウェアアプリケーションプログラム及びオペレーティングシステムを実行でき、又は、たとえば、Microsoft Windows Mobile OS、iOS、Windows Phone、Androidのような様々なモバイルオペレーティングシステムを含む。ポータブルハンドヘルドデバイスはセルラ電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)等を含み得る。ウェアラブルデバイスはヘッドマウントディスプレイ及びほかの機器を含み得る。ゲームシステムは様々なハンドヘルドゲーム機器、インターネットをサポートするゲーム機器等を含み得る。クライアント機器は、たとえば、Internetに関連する様々なアプリケーションプログラム、通信アプリケーションプログラム(たとえば、電子メールアプリケーションプログラム)、ショートメッセージサービス(SMS)アプリケーションプログラムのような様々な異なるアプリケーションプログラムを実行でき、且つ様々な通信プロトコルを使用できる。
【0025】
ネットワーク110は当業者が周知する任意のタイプのネットワークであってもよく、複数種の利用可能なプロトコルのうちのいずれか1種(TCP/IP、SNA、IPX等を含むが、これらに限定されない)を使用してデータ通信をサポートすることができる。単なる例として、1つ又は複数のネットワーク110は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、イーサネットベースネットワーク、トークンリング、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、仮想ネットワーク、仮想プライベートネットワーク(VPN)、イントラネット、エクストラネット、パブリックスイッチドテレフォンネットワーク(PSTN)、赤外線ネットワーク、ワイヤレスネットワーク(たとえば、ブルートゥース(登録商標)、WIFI)、及び/又はこれら及び/又はほかのネットワークの任意の組合せであり得る。
【0026】
サーバ120は、1つ又は複数の汎用コンピュータ、プライベートサーバコンピュータ(たとえば、PC(パーソナルコンピュータ)サーバ、UNIXサーバ、ミッドレンジサーバ)、ブレードサーバ、メインフレームコンピュータ、サーバクラスタ又はほかの任意の適切な配置及び/又は組合せを含み得る。サーバ120は仮想オペレーティングシステムを実行する1つ又は複数の仮想マシン、又は仮想化に関するほかの計算アーキテクチャ(たとえば、サーバの仮想記憶機器をメンテナンスするために仮想化され得るロジック記憶機器の1つ又は複数の柔軟なプール)を含み得る。様々な実施例では、サーバ120は以下に説明される機能を提供する1つ又は複数のサービス又はソフトウェアアプリケーションを実行できる。
【0027】
サーバ120の計算ユニットは上記任意のオペレーティングシステム及び任意の商業的に利用可能なサーバオペレーティングシステムを含む1つ又は複数のオペレーティングシステムを実行できる。サーバ120はさらに、HTTPサーバ、FTPサーバ、CGIサーバ、JAVA(登録商標)サーバ、データベースサーバ等を含む様々な追加のサーバアプリケーションプログラム及び/又は中間層アプリケーションプログラムのうちのいずれか1つを実行できる。
【0028】
いくつかの実施形態では、サーバ120は、クライアント機器101、102、103、104、105及び106のユーザーから受信されるデータフィード及び/又はイベント更新を分析及び合併するように、1つ又は複数のアプリケーションプログラムを含み得る。サーバ120はクライアント機器101、102、103、104、105及び106の1つ又は複数の表示機器を介してデータフィード及び/又はリアルタイムなイベントを表示するように、1つ又は複数のアプリケーションプログラムをさらに含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、サーバ120は分散型システムのサーバ、又はブロックチェーンと組み合わされたサーバであり得る。サーバ120はクラウドサーバ、又は人工知能技術を備えたインテリジェントクラウド計算サーバ又はインテリジェントクラウドホストであり得る。クラウドサーバはクラウド計算サービスシステムのホスト製品であり、従来の物理ホストと仮想プライベートサーバ(VPS、Virtual Private Server)のサービスにおける管理が困難で、ビジネス拡張性が低いという欠陥を解決するためのものである。
【0030】
システム100は1つ又は複数のデータリポジトリ130をさらに含み得る。特定の実施例では、これらのデータリポジトリはデータ及びほかの情報を記憶することに用いられてもよい。たとえば、データリポジトリ130のうちの1つ又は複数は、たとえば、訓練セット、パラメータ等のデータを記憶することに用いられ得る。データリポジトリ130は様々な位置に駐在し得る。たとえば、サーバ120に使用されるデータリポジトリはサーバ120のローカルに位置してもよく、又はサーバ120から離れネットワークに基づく接続又は専用の接続を介してサーバ120と通信してもよい。データリポジトリ130は異なるタイプであり得る。いくつかの実施例では、サーバ120に使用されるデータリポジトリは、たとえば、関係データベースのようなデータベースであり得る。これらのデータベースのうちの1つ又は複数は命令に応答してデータベースへのデータ及びデータベースからのデータを記憶、更新及び検索することができる。
【0031】
いくつかの実施例では、データリポジトリ130のうちの1つ又は複数はさらに、アプリケーションプログラムデータを記憶するようにアプリケーションプログラムに使用できる。アプリケーションプログラムに使用されるデータリポジトリは、たとえば、キー値リポジトリ、オブジェクトリポジトリ又はファイルシステムによりサポートされる通常のリポジトリのような異なるタイプのデータベースであり得る。
【0032】
図1のシステム100は、本開示に記載される様々な方法及び装置を適用できるように、様々な方式で構成及び操作することができる。
1キュービット(qubit)の情報を伝送することを例として、量子通信の双方がそれぞれ送信側Alice及び受信側Bobであることを仮定する。
図2に示すように、送信側と受信側の双方は情報を伝送する前に、一定のもつれを持つ1対のキュービットペアを共有し、A及びBと記す(複数のキュービット情報を伝送する必要がある場合、もつれリソースをその分増加させる必要がある)。最高の伝送忠実度を確保するために、もつれを持つこのキュービットペアABは一般にベル状態Φ
+(Bell state)として準備される。Aliceが伝送すべき情報はもう1つのキュービットCに記憶される。このようなタスクでは、通信の双方は通常、2つの場所に分散しているため、許可される物理的操作はAliceとBobのそれぞれのローカル量子操作及び古典的通信(LOCC、local operations and classical communication)である。ここで、量子操作は通常、キュービットに作用する量子ゲート及び量子測定を指すが、ローカル量子操作はAliceとBobがそれぞれの実験室におけるキュービットのみに対して量子操作を行うことができることを表し、古典的通信は通常、2人が量子測定から得られた結果を交換することに用いられる。
【0033】
上記量子テレポーテーションは一方的な情報伝送プロセスであるが、より効率的な双方向伝送スキーム、即ち、双方向量子テレポーテーション(Bidirectional Quantum Teleportation、BQT)がある。
図3に示すように、双方向量子テレポーテーションは1回の伝送プロセスで通信の双方のそれぞれの量子情報を交換できる。
【0034】
現在、双方向量子テレポーテーションは一般に一方向量子テレポーテーションを2回行う必要がある。具体的には、
図4に示すように、AliceとBobは量子通信の双方として、予め割り当てられた1対のもつれペア、即ち、
図3中のキュービットA及びBを持ち、A及びBはベル状態Φ
+にある。そして、Aliceは特定の量子状態ρにある付加的なもう1つのキュービットCを持つ。キュービットCの量子状態をBobに伝送するために、(1)AliceはキュービットC及びAに対して制御ノットゲート(CNOT gate)を施し、その後、キュービットCに対してH(Hadamard)ゲートを施し、(2)AliceはキュービットC及びAを測定し、測定結果m
1m
2∈{00,01,10,11}を古典的通信の方式によってBobに送信し、BobはAliceが送信してきた測定結果に応じて、条件付きでX及びZ回転ゲートをそのローカルのキュービットBに施し、たとえば、AliceによるC及びAの測定結果がそれぞれ0及び1であると、BobはZゲートを施さず、Xゲートのみを施す。古典的通信はメール、電話等による方式を含み得る。双方向量子テレポーテーションを実現し、即ち、Bobもそのローカルの1つのキュービットの量子状態をAliceに送信することを望む場合、双方は2対のベル状態を共有し、(1)~(3)の操作を2回繰り返す必要があり、それにより双方のそれぞれが持つ量子状態を相手方にそれぞれ送信する。
【0035】
複数のキュービットについては、異なる形式のもつれリソース(たとえば、クラスタ状態(cluster state)のような最大もつれ状態とは異なる)の双方向伝送状態は現在、統一されたスキームがなく、従来の文献で提案されている解決方法は依然としてケースバイケース(case-by-case)に基づく量子回路にある。n対のキュービットの量子状態を交換する応用シーンについては、従来のスキームは少なくとも2n個のキュービットもつれペアのリソースを消費する必要がある。
【0036】
実際の応用では、量子もつれリソースの準備及び割り当ては困難である。従って、どのようにできるだけ少ないもつれリソースを利用してより多くの量子情報の伝送を実現するかは、量子科技の実際の応用に対して非常に重要である。
【0037】
従って、本開示の実施例によれば、量子ニューラルネットワークの訓練方法500を提供し、
図5に示すように、量子通信の双方のそれぞれに対して、訓練すべき第1量子ニューラルネットワーク及び少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークを初期化し、伝送すべきキュービットに対応する量子状態訓練セットを取得すること(ステップ510)と、量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定すること(ステップ520)と、各量子状態組合せについて、前記各量子状態組合せはそれぞれ2組の前記訓練セットからの1つの量子状態を含むみ、前記量子状態組合せ中の量子状態及び前記もつれ状態にあるキュービットペア中のキュービットをそれぞれに対応する前記第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々に入力しないキュービットを測定して、対応する量子状態を得ること(ステップ530)と、相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行して、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得すること(ステップ540)と、前記量子通信の双方のそれぞれが得た量子状態と前記量子状態組合せ中の対応する量子状態との間の誤差を計算すること(ステップ550)と、すべての前記量子状態組合せに対応する誤差に基づいて損失関数を計算すること(ステップ560)と、前記損失関数が最小値に達するように量子通信の双方のそれぞれの前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークのパラメータ値を調整して、訓練後の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークを取得すること(ステップ570)と、を含む。
【0038】
本開示の実施例によれば、本開示に係る方法は量子通信の双方のそれぞれで訓練パラメータを絶えず最適化できるいくつかの量子ニューラルネットワークを作成することによって、訓練後の量子ニューラルネットワークが双方向量子テレポーテーションとなるように達成するとともに、もつれリソースの消費をさらに減らすことができ、強い拡張性及び適応性を有する。
【0039】
量子ニューラルネットワーク(Quantum Neural Network、QNN)は通常、いくつかの単一キュービット回転ゲート及びCNOTゲートから構成され、いくつかの回転角度はベクトルθ、即ち調整可能なパラメータを構成する。より一般的には、量子ニューラルネットワークはパラメータ調整可能ないくつかの量子回路から構成されてもよい。量子ニューラルネットワークは様々な量子アルゴリズムに広く適用されており、たとえば、1つの量子システムの最低エネルギーを求めるVQEアルゴリズムが挙げられる。本開示の方法によれば、Alice及びBobの両方のローカルで訓練パラメータを絶えず最適化できる量子ニューラルネットワークをそれぞれ作成し、ローカルの測定結果及び古典的通信によって通信の双方にパラメータ化されたローカル操作を条件付きで一回再実行させ、それにより双方向量子テレポーテーションに達する。
【0040】
いくつかの例では、量子通信用のキュービットはもつれ状態にあるキュービット及び伝送すべきキュービットを含む。
いくつかの例では、AliceとBobはまず、ローカルでパラメータ調整可能ないくつかの量子ニューラルネットワークを準備し、それぞれAliceとBobのローカルで1組の量子状態{ρi}i=1…nと{σj}j=1…mを訓練セットとして定義する。訓練セット中の量子状態は量子通信プロセスで相互に伝送されようとする量子状態とされる。定義された訓練セット中の量子状態のキュービットの数は引用すべき量子通信プロセスで伝送されようとするキュービット数に適応し、即ち、Aliceは実際に2ビットの量子状態をBobに伝送する必要がある場合、AliceとBobが準備したパラメータ調整可能な量子ニューラルネットワークを訓練する際に、Aliceのローカルで1組の量子状態{ρi}i=1…nを定義し、訓練セット中の各量子状態ρiはいずれも2ビットの量子状態であり、Bobは同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0041】
いくつかの例では、量子ニューラルネットワーク及び量子状態訓練セットを準備した後、量子ニューラルネットワークの訓練プロセスでは、AliceとBobはそれぞれの訓練セット中の量子状態を伝送されようとする量子状態として伝送すべきキュービットで順に初期化する。各回の訓練プロセスでは、AliceとBobの双方が伝送すべき量子状態は1つの量子状態組合せを形成する。たとえば、{ρi}i=1…4と{σj}j=1…4は{ρ1、σ1}、{ρ1、σ2}、{ρ1、σ3}、{ρ1、σ4}、{ρ2、σ1}…等の16個の量子状態組合せを形成する。ほかの量子状態組合せの形式も可能であり、ここでは限定しない。
【0042】
いくつかの例では、AliceとBobはそれぞれ予め定義された回路テンプレートに従って、準備した量子ニューラルネットワークをそれぞれの量子システムに作用させる。AliceとBobはそれぞれローカルのキュービットを測定し、測定結果を古典的通信の方式によって相手方に伝送し、AliceとBobは情報伝送結果に応じてローカル操作を再実行し、AliceとBobのローカルのそれぞれの量子状態の交換を実現する。
【0043】
予め定義した回路テンプレートに従って、対応する第1量子ニューラルネットワーク及び第2量子ニューラルネットワークを準備する。第2量子ニューラルネットワークは少なくとも2つであってもよい。いくつかの実施例によれば、第1量子ニューラルネットワークは量子通信用のキュービットを受信するように構成され、少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークのうちの各々は、第1量子ニューラルネットワークが出力する、伝送すべきキュービットと同数のキュービットを受信するように構成される。
【0044】
いくつかの実施例によれば、量子通信の双方のそれぞれに対して、もつれ状態にあるキュービットペアの数が伝送すべきキュービットの数よりも小さいことに応答して、少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は、第1量子ニューラルネットワークが出力する、設定されるもつれ状態にあるキュービット及び1つ又は複数の伝送すべきキュービットに対応するキュービットを受信するように構成される。
【0045】
いくつかの実施例によれば、量子通信の双方のそれぞれに対して、もつれ状態にあるキュービットペアの数が伝送すべきキュービットの数以上であることに応答して、少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は、第1量子ニューラルネットワークが出力する、もつれ状態にあるキュービットに対応するキュービットを受信するように構成される。
【0046】
理解できるように、もつれ状態にあるキュービットの数が伝送すべきキュービットの数以上である場合、量子情報の伝送効果は良い。しかしながら、本開示に係る方法によって訓練された回路テンプレートに基づいて量子情報伝送を行う際に、通常の一方向量子テレポーテーションよりも少なくとも半分のもつれ状態キュービットペアが節約される。
【0047】
いくつかの実施例によれば、以下の式に基づいて前記損失関数を計算する。
【0048】
【0049】
式中、Lは損失関数であり、{σj,ρi}は1つの訓練セットからの量子状態σjともう1つの訓練セットからの量子状態ρiで構成される1つの量子状態組合せを表し、g(σj,θk)及びf(ρi,θk)はそれぞれ量子ニューラルネットワークのパラメータがθkである場合、σjとρiを相手方に伝送した後に得た量子状態を表し、θkはk回目の訓練プロセスにおける1組のパラメータ値を表し、前記1組のパラメータ値中の各パラメータ値はそれぞれ前記量子通信の双方のそれぞれの前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々に対応し、F()は忠実度関数を表し、m及びnはそれぞれ前記1つの訓練セットの量子状態の数及び前記もう1つの訓練セットの量子状態の数を表す。
【0050】
ここで、すべての量子ニューラルネットワークのパラメータをθと統一して記し、θは1つのベクトルを表し、回路テンプレート中のすべての調整可能なパラメータを含む。なお、回路中の各量子ニューラルネットワークは全体的なパラメータθの一部のみを含み、異なる量子ニューラルネットワークに含まれるパラメータは互いに独立する。
【0051】
いくつかの実施例によれば、最適化方法によって第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークのパラメータ値を調整し、勾配降下法等を含むが、これに限定されない。
【0052】
本開示の1つの例示的な実施例では、
図6に示すように、AliceとBobの双方はもつれを持つ1対のキュービットペアを共有し、且つAliceとBobの双方は1つのキュービット情報を交換する。まず、AliceとBobはいずれもローカルで一連の単一ビット量子状態を訓練セット{ρ
i}
i=1…n及び{σ
j}
j=1…mとして定義する。例示的には、密度行列を用いて1つの量子状態を示すようにしてもよい。
図6に示すように、AliceとBobのローカル量子ニューラルネットワークであるU
A(θ)、V
A
i(θ)、U
B(θ)、V
B
i(θ)をそれぞれ準備し、ここで、下付き文字Aを用いてAliceのローカル回路をマークし、下付き文字Bを用いてBobのローカル量子ニューラルネットワークをマークする。U
A(θ)とU
B(θ)はそれぞれAliceとBobの第1量子ニューラルネットワークであり、V
A
i(θ)とV
B
i(θ)はそれぞれAliceとBobの第2量子ニューラルネットワークを表す。
【0053】
図6に示すように、V
A
i(θ)及びV
B
i(θ)はそれぞれB
2及びA
2の測定結果に応じて選択的に実行され、単一キュービットB
2及びA
2の可能な測定結果は、0又は1の2つだけであり、従って、それぞれB
2及びA
2の測定結果に応じてV
A
i(θ)及びV
B
i(θ)のうちそれぞれに対応する一方を選択的に実行するために、V
A
i(θ)はV
A
0(θ)及びV
A
1(θ)を含み、V
B
i(θ)はV
B
0(θ)及びV
B
1(θ)を含むようにする。準備したAliceとBobのローカル量子ニューラルネットワーク中のパラメータθをランダムに初期化し、ここで、θは各量子ニューラルネットワークに対応する1組のパラメータ値を表す。A
1、B
1をAliceとBobが共有するもつれキュービットペアΨとする。量子ニューラルネットワークの訓練の流れは以下の通りである。
【0054】
(1)訓練回数k=0を初期化し、パラメータをθkと記してもよい。
(2)AliceとBobはそれぞれの訓練セットから1つの量子ρi、σjをそれぞれ選択し、A2及びB2キュービットをそれぞれρi、σj状態に準備する。
【0055】
(3)AliceとBobはそれぞれのローカルの量子ニューラルネットワークUA(θk)、UB(θk)をそれぞれ実行する。
(4)AliceとBobはそれぞれのローカルのキュービットA2、B2をそれぞれ測定し、測定結果を古典的通信によって相手方に通知する。該測定は単一キュービットでの01測定であるため、可能な測定結果は0又は1の2つだけである。
【0056】
(5)AliceとBobはそれぞれ相手方から伝送された古典的通信結果に応じてそのローカルの第2量子ニューラルネットワークVA
i(θ)及びVB
i(θ)を選択的に実行する。たとえば、Aliceが受信したBobから伝送された測定結果が1である場合、AliceはVA
1(θ)を実行し、そうではない場合、VA
0(θ)を実行する。Bobは同様である。
【0057】
(6)AliceとBobはそれぞれA1、B1での量子状態g(σj,θk),f(ρi,θk)とステップ(2)ではB2、A2で準備された初期状態σj、ρiとの忠実度F(g(σj,θk),σj),F(f(ρi,θk),ρi)を計算し、Li,j=2-F(g(σj,θk),σj)-F(f(ρi,θk),ρi)を損失関数として計算する。このとき、A1、B1でのキュービットと(2)におけるB2、A2で準備された初期状態が同じである場合、即ち、伝送後の状態と伝送前の状態が一致する場合、2つの忠実度はいずれも1であり、損失関数は0である。
【0058】
(7)AliceとBobは、2組の訓練セット中の量子状態のすべての可能な組合せをトラバーサルするまで、異なる状態を選択して(2)~(6)を繰り返し、且つ、各組合せの損失関数を加算して今回訓練される全体的な損失関数Lとする。即ち、
【0059】
【0060】
である。
(8)量子ニューラルネットワーク中のパラメータθkに対する損失関数Lの勾配
【0061】
【0062】
を求め、該勾配に応じてパラメータθkを更新し、損失関数Lを最も小さくするパラメータ組合せを徐々に見つける。たとえば、
【0063】
【0064】
である。上記勾配降下法によってパラメータθkを調整することを除き、ほかのオプティマイザーを用いてパラメータを更新するようにしてもよく、広義的には、θk+1=h(θk)とするようにしてもよい。
【0065】
(9)損失関数Lが変化しなくなる又は訓練回数が予め設定されたある値に達するまで、k=k+1として(2)~(8)を繰り返す。
最終的に損失関数が最も小さくなった場合、パラメータが訓練されて得られたθである上記回路テンプレートを利用して、AliceとBobがそれぞれ入力した任意の量子状態を相手方に可能な限り正確に伝送することを意味する。
【0066】
訓練完了後、訓練されて得られたθを固定し、
図6中の回路テンプレートと組み合わせて、訓練済みの双方向テレポーテーションプロトコルが得られた。該プロトコルは、与えられたもつれリソースの下で、双方がローカル操作及び古典的通信によって、可能な限り高精度(伝送前後の状態の忠実度が可能な限り1に近いことを指す)の量子情報交換であるAliceとBobのローカルの量子状態情報の双方向伝送を実現することができる。
【0067】
固定表現形式を有するもつれペアの場合、上記訓練プロセスはすべて古典的なコンピュータでシミュレーションして完成させてもよく、得られたプロトコルは実際の量子状態に対して同じ効果を有する。勿論、現在のもつれリソースに対する可能な限り最適な結果を得るために、実際の量子システムで完成させてもよい。
【0068】
いくつかの例では、Paddle Quantum中のLOCCNetモジュールを利用して上記実施例における(1)~(9)中の訓練プロセスをシミュレーションするようにしてもよい。選択された訓練セットは、たとえば、{ρ1,ρ2,ρ3,ρ4}及び{σ1,σ2,σ3,σ4}であり、ここで、
【0069】
【0070】
である。
上記選択された訓練セットは単一ビットの1組の線形独立基底であり、いずれかの量子状態ρ(σ)は、この1組の基底の線形組合せとして記述できる。つまり、この1組の訓練セット上での損失関数が0である場合、該プロトコルは任意の状態の双方向伝送を行うことができる。勿論、ほかの線形独立状態を訓練セットとして選択し、又はほかの状態を訓練セットとするようにしてもよく、同様の効果を奏することができる。具体的には、シミュレーション結果は
図7に示すように、損失関数Lが訓練によって0に達し、即ち、全体的には双方向量子テレポーテーションのタスクが完了することが分かる。
【0071】
1対のもつれペアを使用して1対の量子状態を交換する上記スキームに基づいて、
図4中の各回路モジュールのサイズを調整することによって、任意の数のノイズ含有もつれペアを使用して任意の数の量子状態を双方向に伝送する量子回路にさらに拡張することができる。且つ、もつれリソースが与えられた場合、ほかの方法の実現範囲を遥かに超えるより良い伝送効率を達成できる。たとえば、
図8は3つのノイズ含有もつれペアを利用して4つの量子状態を双方向に伝送する回路テンプレートの模式図を示し、該例のスキームは3対のもつれ量子ペアを消費することによって、AとBの間での2対の量子状態の量子情報交換を実現する。従って、パラメータ化された量子回路の柔軟で多様な構造に基づいて、訓練されて得られた双方向量子テレポーテーションは強い拡張性及び適応性を有し、様々な応用シーン及び量子機器に対して適したスキームを設計することができる。
【0072】
本開示の実施例によれば、双方向量子テレポーテーション方法900をさらに提供し、
図9に示すように、量子通信の双方が共有するもつれ状態にある1つ又は複数のキュービットペアを設定すること(ステップ910)と、量子通信の双方のそれぞれに対して、量子通信用のキュービットを第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを第2量子ニューラルネットワークに入力すること(ステップ920)と、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記第2量子ニューラルネットワークに入力しないキュービットを測定して、対応する量子状態を得ること(ステップ930)と、相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行して、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得すること(ステップ940)と、を含む。量子通信の双方の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークは上記いずれか一項に記載の訓練方法によって取得される。
【0073】
いくつかの例では、量子通信用のキュービットはもつれ状態にあるキュービット及び伝送すべきキュービットを含む。
本開示の実施例によれば、量子ニューラルネットワークの訓練装置1000をさらに提供し、
図10に示すように、量子通信の双方のそれぞれに対して、訓練すべき第1量子ニューラルネットワーク及び少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークを初期化し、伝送すべきキュービットに対応する量子状態訓練セットを取得するように構成され、前記第1量子ニューラルネットワークは量子通信用のキュービットを受信するように構成され、前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々は前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを受信するように構成される初期化ユニット1010と、前記量子通信用の1つ又は複数のキュービットをもつれ状態に準備するように構成されるもつれ状態割り当てユニット1020と、各量子状態組合せについて、前記各量子状態組合せはそれぞれ2組の前記訓練セットからの1つの量子状態を含み、前記量子状態組合せ中の量子状態及び前記もつれ状態にあるキュービットペア中のキュービットをそれぞれに対応する前記第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記少なくとも2つの第2量子ニューラルネットワークの各々に入力しないキュービットを測定して、対応する量子状態を得て、相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行して、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得し、前記量子通信の双方のそれぞれが得た量子状態と前記量子状態組合せ中の対応する量子状態との間の誤差を計算するように構成される通信ユニット1030と、すべての前記量子状態組合せに対応する誤差に基づいて損失関数を計算するように構成される計算ユニット1040と、前記損失関数が最小値に達するように量子通信の双方のそれぞれの前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークのパラメータ値を調整して、訓練後の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークを取得するように構成される訓練ユニット1050と、を含む。
【0074】
ここで、量子ニューラルネットワークの訓練装置1000の上記各ユニット1010~1050の操作はそれぞれ以上に説明されたステップ510~570の操作と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0075】
本開示の実施例によれば、電子機器、可読記憶媒体及びコンピュータプログラム製品をさらに提供する。
本開示の実施例によれば、双方向量子テレポーテーション装置1100をさらに提供し、
図11に示すように、前記量子通信の双方の1つ又は複数のキュービットをもつれ状態に準備するように構成されるもつれ状態割り当てユニット1110と、量子通信の双方のそれぞれに対して、量子通信用のキュービットを第1量子ニューラルネットワークに入力し、前記第1量子ニューラルネットワークが出力する伝送すべきキュービットと同数のキュービットを第2量子ニューラルネットワークに入力するように構成される第1伝送ユニット1120と、前記第1量子ニューラルネットワークが出力し且つ前記第2量子ニューラルネットワークに入力しないキュービットを測定して、対応する量子状態を得るように構成される測定ユニット1130と、相手方の前記測定結果に応じて、対応する第2量子ニューラルネットワークを選択的に実行して、双方の前記対応する第2量子ニューラルネットワークのそれぞれが出力するキュービットの量子状態を、前記量子通信を行った後に双方が交換して得た量子情報として取得するように構成される第2伝送ユニット1140と、を含む。前記量子通信の双方の前記第1量子ニューラルネットワーク及び前記第2量子ニューラルネットワークは上記いずれか一項に記載の訓練方法によって取得される。
【0076】
ここで、双方向量子テレポーテーション装置1100の上記各ユニット1110~1140の操作はそれぞれ以上に説明されたステップ910~940の操作と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0077】
本開示の実施例によれば、電子機器、可読記憶媒体及びコンピュータプログラム製品をさらに提供する。
図12を参照して本開示のサーバ又はクライアントとされ得る電子機器1200の構成ブロック図を説明し、本開示の各態様に適用され得るハードウェア機器の例である。電子機器は、たとえば、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ワークステーション、パーソナルデジタルアシスタント、サーバ、ブレードサーバ、メインフレームコンピュータ、及びその他の適切なコンピュータなど様々な形式のデジタル電子コンピュータ機器を表すことを目的としている。電子機器は、たとえば、パーソナルデジタルアシスタント、セルラ電話、スマートフォン、ウェアラブルデバイス及びその他の類似した計算装置など様々な形式のモバイルデバイスを表すこともできる。本明細書に示されているコンポーネント、それらの接続と関係、及びそれらの機能はあくまでも例とされるものであり、本明細書で説明及び/又は要求される本開示の実現を制限することを意図したものではない。
【0078】
図12に示すように、機器1200は、リードオンリーメモリ(ROM)1202に記憶されるコンピュータプログラム又は記憶ユニット1208からランダムアクセスメモリ(RAM)1203にロードされるコンピュータプログラムに従って、種々の適切な動作及び処理を実行することができる計算ユニット1201を含む。RAM 1203には、機器1200の操作に必要な様々なプログラム及びデータがさらに記憶されてもよい。計算ユニット1201、ROM 1202及びRAM 1203はバス1204を介して互いに接続される。入力/出力(I/O)インターフェース1205もバス1204に接続される。
【0079】
入力ユニット1206、出力ユニット1207、記憶ユニット1208及び通信ユニット1209を含めて機器1200中の複数のコンポーネントはI/Oインターフェース1205に接続される。入力ユニット1206は機器1200に情報を入力できる任意のタイプの機器であってもよく、入力ユニット1206は、入力される数字又はキャラクター情報を受信し、電子機器のユーザー設定及び/又は機能制御に関連するキー信号入力を生成することができ、マウス、キーボード、タッチスクリーン、トラックパッド、トラックボール、ジョイスティック、マイクロフォン及び/又はリモコンを含み得るが、これらに限定されない。出力ユニット1207は情報を提示できる任意のタイプの機器であってもよく、ディスプレイ、スピーカー、ビデオ/オーディオ出力端末、バイブレータ及び/又はプリンタを含み得るが、これらに限定されない。記憶ユニット1208は磁気ディスク、及び光ディスクを含み得るが、これらに限定されない。通信ユニット1209は、機器1200がたとえばインターネットのコンピュータネットワーク及び/又は様々な電気通信ネットワークを介してほかの機器と情報/データを交換することを可能にし、モデム、ネットワークカード、赤外線通信機器、ワイヤレス通信送受信機及び/又はチップセット、たとえば、ブルートゥースTM機器、802.11機器、WiFi機器、WiMax機器、セルラー通信機器及び/又は同等物を含み得るが、これらに限定されない。
【0080】
計算ユニット1201は処理及び計算能力を有する様々な汎用及び/又は専用処理コンポーネントであり得る。計算ユニット1201のいくつかの例は中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、様々な専用人工知能(AI)計算チップ、機械学習モデルアルゴリズムを実行する様々な計算ユニット、デジタル信号プロセッサ(DSP)、及び任意の適切なプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含むが、これらに限定されない。計算ユニット1201は以上に説明された各方法及び処理、たとえば、方法500、900を実行する。たとえば、いくつかの実施例では、方法500、900はコンピュータソフトウェアプログラムとして実現されてもよく、たとえば、記憶ユニット1208のような機械可読媒体に有形に含まれる。いくつかの実施例では、コンピュータプログラムの一部又は全部はROM 1202及び/又は通信ユニット1209を介して機器1200にロード及び/又はインストールされてもよい。コンピュータプログラムがRAM 1203にロードされ且つ計算ユニット1201によって実行されると、以上に説明された方法500、900の1つ又は複数のステップを実行する。オプションとして、ほかの実施例では、計算ユニット1201はほかの任意の適切な方式によって(たとえば、ファームウェアを介して)、方法500、900を実行するように構成されてもよい。
【0081】
本明細書で以上に説明されたシステム及び技術の様々な実施形態は、デジタル電子回路システム、集積回路システム、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、特定用途用標準製品(ASSP)、システムオンチップ(SOC)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組合せにおいて実現できる。これらの様々な実施形態は、1つ又は複数のコンピュータプログラムにおいて実施することを含んでもよく、該1つ又は複数のコンピュータプログラムは、少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステムにおいて実行及び/又は解釈でき、該プログラマブルプロセッサは専用又は汎用プログラマブルプロセッサであってもよく、記憶システム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも1つの出力装置からデータ及び命令を受信し、データ及び命令を、該記憶システム、該少なくとも1つの入力装置、及び該少なくとも1つの出力装置に伝送することができる。
【0082】
本開示の方法を実施するためのプログラムコードは1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組合せによって作成されることができる。これらのプログラムコードは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ又はほかのプログラマブルデータ処理装置のプロセッサ又はコントローラに提供されることが可能であり、プログラムコードがプロセッサ又はコントローラによって実行されると、フローチャート及び/又はブロック図に規定される機能/操作が実施されるようにする。プログラムコードは完全に機械上で実行されてもよく、部分的に機械上で実行されてもよく、独立したソフトウェアパッケージとして部分的に機械上で実行され且つ部分的にリモートマシン上で実行され又は完全にリモートマシン又はサーバ上で実行されてもよい。
【0083】
本開示のコンテキストでは、機械可読媒体は有形な媒体であってもよく、命令実行システム、装置又は機器に使用される、又は命令実行システム、装置又は機器と組み合わせて使用されるプログラムを含む又は記憶することができる。機械可読媒体は機械可読信号媒体又は機械可読記憶媒体であり得る。機械可読媒体は電子、磁気、光学、電磁、赤外線、又は半導体システム、装置又は機器、又は上記のものの任意の適切な組合せを含み得るが、これらに限定されない。機械可読記憶媒体のより具体的な例は、1つ又は複数の配線に基づく電気的接続、ポータブルコンピュータディスク、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、光学記憶機器、磁気記憶機器、又は上記のものの任意の適切な組合せを含む。
【0084】
ユーザーとの対話を提供するように、ここで説明されるシステム及び技術をコンピュータにおいて実施することができ、該コンピュータは、ユーザーに情報を表示するための表示装置(たとえば、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニター)、キーボード及びポインティング装置(たとえば、マウスやトラックボール)を有し、ユーザーが該キーボード及び該ポインティング装置によってコンピュータに入力を提供することができる。ほかの種類の装置は、ユーザーとの対話の提供に用いられることもでき、たとえば、ユーザーに提供されるフィードバックは、任意の形式の感覚フィードバック(たとえば、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、又は触覚的フィードバック)であってもよく、そして、ユーザーからの入力は、任意の形式(音響入力、音声入力、又は触覚入力を含む)で受信できる。
【0085】
ここで説明されるシステム及び技術は、バックエンドコンポーネントを含む計算システム(たとえば、データサーバとして)、又はミドルウェアコンポーネントを含む計算システム(たとえば、アプリケーションサーバ)、又はフロントエンドコンポーネントを含む計算システム(たとえば、グラフィカルユーザーインターフェース又はWEBブラウザーを備えたユーザーコンピュータが挙げられ、ユーザーは該グラフィカルユーザーインターフェース又は該WEBブラウザーを介してここで説明されるシステム及び技術の実施形態と対話できる)、又はこのようなバックエンドコンポーネント、ミドルウェアコンポーネント、又はフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含む計算システムにおいて実施されることができる。システムのコンポーネントは、任意の形式又は媒体のデジタルデータ通信(たとえば、通信ネットワーク)を介して相互に接続されることができる。通信ネットワークの例として、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、及びインターネットが含まれる。
【0086】
コンピュータシステムは、クライアント及びサーバを含み得る。クライアントとサーバは通常、互いに遠く離れており、通信ネットワークを介して対話するのが一般的である。クライアントとサーバとの関係は、対応するコンピュータで実行され互いにクライアント-サーバの関係を持つコンピュータプログラムによって生成される。
【0087】
なお、以上に示す様々な形式のプロセスを用いて、ステップを改めて並べ替えたり、追加したり、削除したりすることができる。たとえば、本開示に記載された各ステップは、本開示に開示されている技術案の所望の結果が達成できる限り、並行して実行しても、順次実行しても、異なる順序で実行してもよく、本明細書では、それについて限定しない。
【0088】
図面を参照しながら本開示の実施例又は例を説明してきたが、上記方法、システム及び機器はあくまでも例示的な実施例又は例であり、本発明の範囲はこれらの実施例又は例に限定されず、特許権付与後の特許請求の範囲及びその同等の範囲のみによって定められると理解すべきである。実施例又は例における様々な要素は省略されてもよく、または、同等の要素によって代替されてもよい。また、本開示に説明される順序とは異なる順序で各ステップを実行できる。さらに、実施例又は例における様々な要素は様々な方式で組み合わせられることができる。重要な点として、技術が進化するにつれて、ここで説明される多くの要素は本開示の後に現れる同等の要素によって置き換えることができる。