(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】積層成形システムおよび積層成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20231019BHJP
B29C 43/56 20060101ALI20231019BHJP
B29C 43/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/56
B29C43/14
(21)【出願番号】P 2022077853
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2021020950の分割
【原出願日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】石川 善孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 桂一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊川 雅之
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-028980(JP,A)
【文献】特開2006-312280(JP,A)
【文献】特開2008-087408(JP,A)
【文献】特開2019-155732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空積層装置とプレス装置を備えた積層成形システムにおいて、
真空状態のチャンバ内で積層成形を行う真空積層装置と、
前記真空積層装置の後工程に設けられサーボモータを駆動源とする第1のプレス装置と第2のプレス装置とが備えられ、
前記第1のプレス装置は、
前記第1のプレス装置のサーボモータが備える第1のロータリエンコーダと、
前記第1のプレス装置の上盤と下盤の間、下盤とベース盤の間、前記上盤および下盤にそれぞれ取り付けられる加圧ブロックの間のいずれかを接続して両者の距離を検出する第1の位置センサと、
力制御に用いられるロードセルと、が備えられ、
前記第2のプレス装置は、
前記第2のプレス装置のサーボモータが備える第2のロータリエンコーダと、
前記第2のプレス装置の上盤と下盤の間、下盤とベース盤の間、前記上盤および下盤にそれぞれ取り付けられる加圧ブロックの間のいずれかを接続して両者の距離を検出する第2の位置センサと、が備えられる、積層成形システム。
【請求項2】
前記第1のプレス装置は、前記ロードセルで検出される圧力値に基づく力制御を含む加圧制御が少なくとも実施されるとともに、前記第1の位置センサから得られる位置情報によらず予め設定した時間が経過したことに伴い前記力制御を含む加圧制御を停止する動作モードを含み、
前記第2のプレス装置は、前記第2の位置センサで検出される位置情報に基づく位置制御を含む加圧制御が少なくとも実施される、請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項3】
真空積層装置とプレス装置を用いた積層成形方法において、
真空状態のチャンバ内で積層成形を行う真空積層装置と、前記真空積層装置の後工程に設けられサーボモータを駆動源とする第1のプレス装置と第2のプレス装置とが備えられ、
前記第1のプレス装置には力制御に用いられるロードセルが備えられ、
前記第1のプレス装置において少なくとも力制御を含む加圧制御を行い、
前記第2のプレス装置において少なくとも位置制御を含む加圧制御を行
い、
前記第1のプレス装置は、
前記第1のプレス装置のサーボモータが備える第1のロータリエンコーダと、
前記第1のプレス装置の上盤と下盤の間、下盤とベース盤の間、前記上盤および下盤にそれぞれ取り付けられる加圧ブロックの間のいずれかを接続して両者の距離を検出する第1の位置センサと、
前記ロードセルと、が備えられ、
前記第2のプレス装置は、
前記第2のプレス装置のサーボモータが備える第2のロータリエンコーダと、
前記第2のプレス装置の上盤と下盤の間、下盤とベース盤の間、前記上盤および下盤にそれぞれ取り付けられる加圧ブロックの間のいずれかを接続して両者の距離を検出する第2の位置センサと、が備えられ、
前記第1のプレス装置は、前記ロードセルで検出される圧力値に基づく力制御を含む加圧制御が少なくとも実施されるとともに、前記第1の位置センサから得られる位置情報によらず予め設定した時間が経過したことに伴い前記力制御を含む加圧制御を停止する動作モードを含む、積層成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空積層装置とプレス装置を備えた積層成形システムおよび真空積層装置とプレス装置を用いた積層成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空積層装置とプレス装置を備えた積層成形システムとしては、真空積層装置の後工程に1基のプレス装置を備えたものと2基のプレス装置を備えたものが存在する。真空積層装置の後工程に1基のプレス装置を備えたものとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の真空積層装置の後工程に備えられる平坦化プレス装置は、リミットスイッチが備えられ中間積層品の挟持が検出されるようになっている。また真空積層装置の後工程に2基のプレス装置を備えたものとしては、特許文献2、特許文献3に記載されたものが知られている。とりわけ特許文献3については第2の平面プレス手段3が、サーボモータの作動により一対のプレートの少なくとも一方が他方に向けて進退可能となっていることが記載されている。そしてサーボモータ53の回転数は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)からの指令信号およびフィードバックされたプレスブロック46,47間の距離情報に基づき、サーボアンプ(図示省略)によってコントロールされていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-66967号公報
【文献】特開2002-120100号公報
【文献】特開2020-28980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記特許文献3については、第2の平面プレス手段3のみが距離情報に基づき積層成形品の押圧を行うものであるので次のような問題が発生する場合があった。即ち第1の平面プレス手段においては、所定の圧力で積層成形品を押圧するのみであるので、第1の平面プレス手段から第2の平面プレス手段に送られる積層成形品は厚みムラが存在する。そのため一部の積層成形品においては、第2の平面プレス手段で所望の距離となるように押圧しても最終成形品にも厚みムラが残ったり、無理に所望の距離となるように押圧する結果、想定の圧力以上の圧力が発生して、積層成形品の側方に積層(樹脂)フィルムが溶融して流出する等の不良が発生する場合があった。
【0005】
また第1の平面プレス手段に一般的な圧力制御バルブにより制御される油圧シリンダを用いた場合、プレス工程中に圧力制御の応答性に劣るという問題があった。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る、積層成形システムは、真空積層装置とプレス装置を備えた積層成形システムにおいて、真空状態のチャンバ内で積層成形を行う真空積層装置と、前記真空積層装置の後工程に設けられサーボモータを駆動源とする第1のプレス装置と第2のプレス装置とが備えられ、前記第1のプレス装置と第2のプレス装置にはサーボモータが備えるロータリエンコーダ以外に、上盤と下盤の間、下盤とベース盤の間、前記上盤および下盤にそれぞれ取り付けられる加圧ブロックの間のいずれかを接続して両者の距離を検出する位置センサが備えられる。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施形態によれば、例えば積層成形システム等に好適であって、積層成形品の積層成形を良好に行うことができる積層成形システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
【
図2】第1の実施形態の第1のプレス装置および第2のプレス装置の制御を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態の第1のプレス装置による第1のプレス工程の加圧成形を示す説明図である。
【
図4】第1の実施形態の第2のプレス装置による第2のプレス工程の加圧成形を示す説明図である。
【
図5】第2の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
【
図6】第3の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態の積層成形システム1について、真空積層装置12と第1のプレス装置13と第2のプレス装置14をその一部を断面表示した
図1を参照して説明する。積層成形システム1は、真空積層装置12の後工程に第1のプレス装置13と第2のプレス装置14の2基のプレス装置13,14が連続して設けられている。また積層成形システム1は、真空積層装置12の前工程にキャリアフィルム送出装置15を備えるとともに第2のプレス装置14の後工程にキャリアフィルム巻取装置16を備えている。更に積層成形システム1は、制御装置17を備えている。前記制御装置17は、真空積層装置12、第1のプレス装置13、第2のプレス装置14、キャリアフィルム送出装置15、およびキャリアフィルム巻取装置16に接続されていて積層成形システム1全体の制御を行う。
【0010】
前工程から順にまずキャリアフィルム送出装置15について説明する。基板A1と積層フィルムA2の移送装置とテンション装置を兼ねるキャリアフィルム送出装置15は、下側の巻出ロール511および従動ロール512を備えている。前記巻出ロール511から巻き出された下キャリアフィルムF1は従動ロール512の部分で水平状態に向きが変更される。下キャリアフィルムF1が水平状態となった部分に、前工程から重ねられて送られてくる被成形材である基板A1と積層フィルムA2を載置する載置ステージ部513が設けられている。またキャリアフィルム送出装置15は、上側の巻出ロール514および従動ロール515を備えており、前記巻出ロール514から巻き出された上キャリアフィルムF2は従動ロール515の部分で基板A1と積層フィルムA2からなる積層成形物A3の上に重ねられる。これらキャリアフィルムF1,F2に挟まれて基板A1と積層フィルムA2が移送される。そして真空積層装置12、第1のプレス装置13、第2のプレス装置14においてキャリアフィルムF1,F2を介して積層成形が行われることにより、積層フィルムA2が溶融して装置部分に付着することを防止する。またキャリアフィルムF1,F2の使用は、特に第1のプレス装置13と第2のプレス装置14においては1次積層成形品A4と2次積層成形品A5を加圧する際に一定の緩衝作用が付与されるという利点もある。
【0011】
次にキャリアフィルム送出装置15の後工程に配置される真空積層装置12について説明する。真空積層装置12は、真空状態のチャンバC内においてダイアフラム211等の加圧体により基板A1と積層フィルムA2からなる積層成形物A3を加圧して、1次積層成形品A4に積層成形するものである。真空積層装置12は、固定的に設けられた上盤212に対して下盤213が昇降機構214により昇降可能に設けられ、外枠を含む下盤213が上昇して上盤212と当接した際に内部にチャンバCが形成可能となっている。昇降機構214は油圧シリンダからなるが、真空積層装置12の昇降機構214に電動モータやエアシリンダを用いてもよい。真空積層装置12の昇降機構214に電動モータを用いて油圧機構を用いない場合、後述する第1のプレス装置13と第2のプレス装置14の駆動源を電動モータとすることと相俟って積層成形システム1全体の電動化が図れ、クリーンルーム内に積層成形システム1を配置した際のクリーン度がアップする。チャンバCは図示しない真空ポンプに接続され、内部空間の大気を吸引して真空状態のチャンバCが形成可能となっている。なお本発明において真空状態とは所定値まで減圧された状態のものを指す。
【0012】
上盤212の中央の下面には図示しないヒータにより加熱される熱板215が取付けられ、熱板215の表面には図示しない耐熱性のゴム膜等の弾性体シート216が取付けられている。一方下盤213の中央の上面にも図示しないヒータにより加熱される熱板217が取付けられている。また下盤213の前記熱板217の周囲の部分には加圧体である耐熱性ゴム膜からなるダイアフラム211が熱板217の上面を覆うように取付けられている。そして図示しないコンプレッサにより加圧空気がダイアフラム211の裏面側に送られることによりダイアフラム211はチャンバC内で膨出して熱板217との間で基板A1と積層フィルムA2を加圧する。なお真空積層装置12のダイアフラム211は上盤212に取付けられ上盤212側から基板A1と積層フィルムA2からなる積層成形物A3を押圧するものでもよい。また真空積層装置12は、上下の加圧ブロックの平坦な加圧面にそれぞれゴムが貼りつけられ、いずれか一方の加圧ブロックが他方の加圧ブロックに向けて前進して積層成形物A3を押圧するものでもよい。また真空積層装置は、真空状態のチャンバ内で上下にそれぞれ設けられたロール間で積層成形を行うロール式ラミネータでもよい。
【0013】
次に前記真空積層装置12の後工程に直列方向に配設される第1のプレス装置13について説明する。第1のプレス装置13は、真空積層装置12で加圧成形され凹凸部を備えた被積層材A1と積層フィルムA2とからなり積層フィルムA2の側に凹凸が残った状態の1次積層成形品A4を更に加圧してより平坦な2次積層成形品A5に加圧成形するものである。第1のプレス装置13は、下方に設けられた略矩形のベース盤311と、前記ベース盤311の上方に位置する略矩形の固定盤である上盤312の四隅近傍の間にそれぞれ立設された4本のタイバ313を備えている。そして第1のプレス装置13は、略矩形の可動盤である下盤314がベース盤311と上盤312との間で昇降移動可能となっている。また第1のプレス装置13は、サーボモータ315等の電動モータを駆動源とするものであり、ベース盤311には加圧手段のサーボモータ315が取付けられている。
【0014】
サーボモータ315はロータリエンコーダ316を備えるとともに、サーボアンプ317に接続され、サーボアンプ317は、上記制御装置17に接続されている。サーボモータ315の駆動軸にはボールねじ318が接続されるか、または前記駆動軸自体がボールねじとなっている。一方下盤314の下面にはボールねじ機構のボールねじナット319が固定され、前記ボールねじ318は、ボールねじナット319に挿通されている。更に下盤314とボールねじナット319の間にはロードセル320が取り付られている。なおロードセル320が取り付けられる部分は、プレス工程の加圧力が受けられる部分であれば限定されず、一例としてサーボモータ315の取り付け部分であってもよい。
【0015】
上記構造により第1のプレス装置13は、サーボモータ315の作動により下盤314が上盤312に対して昇降されるようになっている。なお第1のプレス装置13ボールねじ機構は、サーボモータ315の駆動軸とボールねじ318に取り付けられたプーリの間にベルトが掛け渡されベルトを介して駆動力が伝達されるものでもよい。更には第1のプレス装置13ボールねじ機構は、ベース盤311にボールねじナット319が回転自在に取付られ、ボールねじ318が昇降するものでもよい。またボールねじ318の部分をカバーで覆うことによりグリースの拡散を防止できクリーンルーム内のクリーン度アップに寄与する。更には第1のプレス装置13は、トグル機構、クランク機構、クサビ機構などの倍力機構やそれに類する機構を用いたものでもよい。また上記の例では第1のプレス装置13は、1基のサーボモータ315により加圧成形が行われるが、2基以上のサーボモータ315または2基以上のボールねじ機構を用いて加圧成形するものを除外しない。更にはサーボモータ以外ではクローズドループ制御可能なリニアモータを使用したものでもよい。そしてまた、第1のプレス装置13は、上記機構のいずれかの機構を用いて下盤314に対して上盤312が昇降されるものでもよい。
【0016】
上盤312の側面と下盤314の側面の間には位置センサであるリニアスケール321が取り付けられている。リニアスケール321は、いずれかの一方の盤にスケール321aが取り付けられ、他方の盤に測定部であるスライダ321bが取り付けられている。上盤312に対する下盤314の位置(距離)は、サーボモータ315のロータリエンコーダ316でも検出できる。しかしボールねじ318とボールねじナット319の間には僅かなバックラッシが存在することや、タイバ313やボールねじ318には熱膨張が発生する。そのためリニアスケール321により直接的に上盤312に対する下盤314の位置(距離)を測定したほうが望ましい場合も多い。リニアスケール321等の位置センサの分解能としては、一例として0.002mm以下のものが望ましく、更には0.001mm以下であって実用化されている分解能0.0001mmや分解能0.000025mmなど最小の分解能の単位以上のものがより一層望ましい。
【0017】
第1のプレス装置13に取り付けられるリニアスケール321は1基だけでもよいが、キャリアフィルムF1,F2の進行方向に対して上盤312と下盤314の両側側面に1基ずつ合計2基、または2基ずつ合計4基を取り付けてもよい。そして両側側面に合計4基の位置センサを取付ける場合は、上盤312に対する下盤314の平行度を検出することができる。または位置センサを設ける位置は加圧ブロック322,323を接続する位置や、ベース盤311と下盤314を接続する位置でもよい。更に第1のプレス装置13は、下盤314の位置が機械設計上の下降限界点や上昇限界点を超えないようにする等の目的で図示しないリミットスイッチまたは近接スイッチなどの位置を検出可能なセーフティスイッチを備えることが一般的である。
【0018】
第1のプレス装置13の上盤312と下盤314の各対向面には図示しない断熱板を介して加圧ブロック322,323がそれぞれ取付けられている。加圧ブロック322,323には、カートリッジヒータ等の温度制御手段が備えられている。加圧ブロック322,323の加圧面327の構造はそれぞれ同じであるので、一方の加圧ブロック322の加圧面327について説明する。加圧ブロックの323の表面にはゴム、樹脂フィルム、繊維シート等の緩衝材325が取り付られている。前記緩衝材325の厚みは、一例として0.05mmないし3.00mmである。そして前記緩衝材325の表面には一例として0.2mmないし3.00mmの板厚の弾性変形可能なステンレス等の材質からなる金属板326が取り付けられている。そして前記金属板326の緩衝材325と接する面の反対側の表面が加圧面327となっている。
【0019】
なお第1のプレス装置13の加圧面を構成する部材は、フッ素ゴムシート等の耐熱性を備えた弾性体シートであってもよい。その場合、弾性体シートの硬度(ショアA硬度)は、これに限定されるものではないが一例として30ないし80、更に好ましくは40ないし70のものが用いられる。また第1のプレス装置13は、真空状態とすることが可能なチャンバを備えていないが、真空状態にすることが可能なチャンバを備え、真空チャンバ内で加圧成形を行うものでもよい。
【0020】
次に第1のプレス装置13の加圧成形に関する制御ブロック図について
図2を参照して説明する。第1のプレス装置13は位置制御要素を有するものである。制御装置17には力指令信号出力部701と位置指令信号出力部702を備えている。力指令信号出力部701と位置指令信号出力部702は、上位の制御部であるシーケンス制御部703に接続され、シーケンス制御部703から各種の成形条件等が送られる。またシーケンス制御部703は、設定入力・表示部704、記憶部705に接続されている。
【0021】
また第1のプレス装置13のロードセル320は、制御装置17の加算器706に接続されている。そして力指令信号出力部701から送られた指令信号とロードセル320から送られた信号が加算器706において比較および加算される。更にリニアスケール321は、制御装置17の加算器707に接続されている。そして位置指令信号出力部702から送られた指令信号とリニアスケール321から送られた信号が加算器707で比較および加算される。更に前記加算器706、707の少なくとも一方から送られた信号は、力・位置比較切換部708、および指令信号生成部709を経てサーボアンプ317へ送られる。またサーボモータ315のロータリエンコーダ316はサーボアンプ317に接続されている。そして指令信号生成部709から送られた信号とロータリエンコーダ316から送られた信号が加算されるようになっている。なお
図2の制御ブロック図は概念的なものであり、実際は第1のプレス装置13の側に全ての機能を備えるようにするなどしてもよく、
図2のものに限定されない。
【0022】
次に第1のプレス装置13の後工程に直列方向に連続して配置される第2のプレス装置14について説明する。第2のプレス装置14は、第1のプレス装置13で積層成形された2次積層成形品A5を更に加圧して完全に平坦な積層成形品A6に加圧成形するものである。第1の実施形態の積層成形システム1の第2のプレス装置14の加圧手段等の構造は、第1のプレス装置13と略同一である。
【0023】
第2のプレス装置14は、下方に設けられた略矩形のベース盤411と、前記ベース盤411の上方に位置する略矩形の固定盤である上盤412の四隅近傍の間にそれぞれ立設された4本のタイバ413を備えている。そして第2のプレス装置14は、略矩形の可動盤である下盤414がベース盤411と上盤412との間で昇降移動可能となっている。また第2のプレス装置14は、電動モータを駆動源とするものであり、ベース盤411には加圧手段のサーボモータ415が取付けられている。第1の実施形態では、第2のプレス装置14のサーボモータ415は、第1のプレス装置13のサーボモータ315と定格出力等の仕様が同じものが使用されている。しかしながら第1のプレス装置13のほうが大出力のサーボモータ315を使用してもよく、また反対に第2のプレス装置14のほうが大出力のサーボモータ415を使用してもよい。
【0024】
サーボモータ415はロータリエンコーダ416を備えるとともに、サーボアンプ417に接続され、サーボアンプ417は、上記制御装置17に接続されている。サーボモータ415の駆動軸にはボールねじ418が接続されるか、または前記駆動軸自体がボールねじとなっている。一方下盤414の下面にはボールねじ機構のボールねじナット419が固定され、前記ボールねじ418は、ボールねじナット419に挿通されている。更に下盤414とボールねじナット419の間にはロードセル420が取り付られている。従って第2のプレス装置14は、サーボモータ415の作動により下盤414が昇降されるようになっている。なお第2のプレス装置14の加圧機構も上記の第1のプレス装置13と同様に各種の態様に変更が可能である。もしも第2のプレス装置14では位置制御要素を含む制御しか行わない場合、ロードセル420は取り付けられない場合もある。また上盤412の側面と下盤414の側面の間には第1のプレス装置13と同様に位置センサであるリニアスケール421が取り付けられている。リニアスケール421の性能は第1のプレス装置13と同じである。ただし最終的な積層成形品A6の板厚のみをより正確に検出したい場合は、第2のプレス装置14のリニアスケール421を第1のプレス装置13のリニアスケール321よりも分解能の高いものを採用してもよい。位置センサは、リニアスケール321を使用する場合、磁歪式、光学式、静電容量式等種類を選ばず、また超音波センサ等であってもよい。
【0025】
第2のプレス装置14の上盤412と下盤414の各対向面には加圧ブロック422,423がそれぞれ取付けられている。前記加圧ブロック422,423には、カートリッジヒータ等の温度制御手段が備えられている。加圧ブロック422,423の加圧面427の構造はそれぞれ同じであるので、一方の加圧ブロック4323の加圧面427について説明する。加圧ブロック423の表面にはゴム、樹脂フィルム、繊維シート等の緩衝材425が取り付られている。前記緩衝材425の厚みは、一例として0.02mmないし2.00mmである。
【0026】
第2のプレス装置14の緩衝材425の緩衝作用は、第1のプレス装置13の緩衝材325の緩衝作用と同じか、より小さいことが望ましい。従って緩衝材425が同じ材質である場合は、第2のプレス装置14の緩衝材425は厚みが同じか厚みを薄くすることが望ましい場合が多い。または第1のプレス装置13の緩衝材325と第2のプレス装置14の緩衝材の厚みが同じ場合、第2のプレス装置14の緩衝材425は同じ材質か硬度が高いものを使用することが望ましい場合が多い。そして前記緩衝材325の表面には一例として0.2mmないし3.00mmの板厚の弾性変形可能なステンレス等の材質からなる金属板426が取り付けられている。そして前記金属板426の緩衝材425に接する面の反対側の表面が加圧面427となっている。第2のプレス装置14の制御ブロック図については、第1のプレス装置13の制御ブロック図と略同じであるので上記説明を援用する。
【0027】
次に第2のプレス装置14の後工程に設けられるキャリアフィルム巻取装置16について説明する。キャリアフィルム巻取装置16は、キャリアフィルムF1,F2の移送装置とテンション装置を兼ねたものである。キャリアフィルム巻取装置16は、下側の巻取ロール611および従動ロール612を備えており、前記巻取ロール611により下キャリアフィルムF1が巻き取られる。またキャリアフィルム巻取装置16は、上側の巻取ロール613および従動ロール614を備えており、前記従動ロール614の部分で積層成形品A6から上キャリアフィルムF2が剥離され、上キャリアフィルムF2は前記上側の巻取ロール613に巻取られる。そして下キャリアフィルムF1のみが水平状態で送られる部分に積層成形品A6の取出ステージ部615が設けられている。なおキャリアフィルムF1,F2の移送装置としては、キャリアフィルムF1,F2の両側を把持して後工程に向けて引っ張る移載装置(いわゆるチャック装置)を設けてもよい。
【0028】
次に第1の実施形態の積層成形システム1を用いた、被積層材A1と積層フィルムA2の積層成形方法について説明する。連続成形時の積層成形システム1では、制御装置17のシーケンス制御により、ダイアフラム式の真空積層装置12、第1のプレス装置13、第2のプレス装置14において同時にバッチ処理的に積層成形が行われる。しかしここでは1バッチ分の被積層材である基板A1と積層フィルムA2の積層成形物A3の成形順序に沿って説明する。
【0029】
キャリアフィルム送出装置15の載置ステージ部513に載置される被積層材A1は、基板表面に接着された銅箔部分の凸部と銅箔が無い部分の凹部からなる凹凸部を有するビルドアップ用の回路基板である。銅箔の厚み(基板部分に対する高さ)はこれに限定されないが数umから数十um程度であって殆どの場合0.1mm以下である。前記回路基板A1の上下にそれぞれ積層フィルムA2が重ねられてビルドアップ成形用の積層成形物A3が構成される。なお
図1では積層成形物A3は1個が記載されているが、同時に複数個数の積層成形物A3が載置ステージ部513に載置され、積層成形されるものでもよい。
【0030】
そして載置ステージ部513に載置された前記積層成形物A3は、巻取ロール611,613の回転駆動ともに上下キャリアフィルムF1,F2とともに移動され、開放状態の真空積層装置12のチャンバC内に送られ位置決めされる。次に真空積層装置12はチャンバCが閉鎖され図示しない真空ポンプにより減圧され、真空状態(減圧状態)のチャンバCが形成される。そしてダイアフラム211の裏面側に加圧空気を送り込んでダイアフラム211をチャンバC内に膨出させ、基板A1と積層フィルムA2からなる積層成形物A3を上盤212側の熱板215に取り付られた弾性体シート216との間で加圧する。この際のダイアフラム211による加圧力(積層成形物A3に加えられる面積当たりの圧力)は一例として0.3MPaないし1.5MPaであり、基板A1の凹部に積層フィルムA2が埋め込まれる形で基板A1と積層フィルムA2の接着が行われ、1次積層成形品A4が積層成形される。しかし真空積層装置12により積層成形された1次積層成形品A4の積層フィルムA2の表面はまだ基板A1の凹凸部の形状に倣って凹凸が残った状態である。またこの際、使用される積層フィルムが無機材料の含有率が高い場合(一例としてSiO2が35ないし75重量%の積層フィルム)には溶融樹脂の流動性が低いのでより一層凹凸が残りやすい。
【0031】
真空積層装置12において凹凸部を備えた被積層材A1と積層フィルムA2からなり、両者が貼着された1次積層成形品A4が積層成形されるとチャンバCが開放される。そして前記1次積層成形品A4はキャリアフィルム巻取装置16による次のキャリアフィルムF1,F2の送りにより、後工程の第1のプレス装置13の上盤312と下盤314の間に搬送され、所定の加圧位置に停止される。
【0032】
次に第1のプレス装置13のサーボモータ315が作動され、下盤314および加圧ブロック323が上昇され第1のプレス工程が開始される。第1のプレス工程では位置制御要素を含む加圧制御が行われる。最初に下盤314および加圧ブロック323は、加圧面327が下キャリアフィルムF1に当接する直前の速度切換位置P1、または上キャリアフィルムF2が上盤412側の加圧面327に当接する直前の位置まではサーボモータ315により高速で移動制御される。しかし前記位置に到達したことがロータリエンコーダ316、リニアスケール321、或いはリミットスイッチや近接スイッチ等により検出されると、サーボモータ315により低速で移動制御されて、1次積層成形品A4が加圧面427,427の間に挟まれた際に急激に過剰な負荷がかかることを低減する。1次積層成形品A4が加圧面427,427に挟まれたことは、サーボモータ315のトルクを検出して把握してもよく、または予め設定した位置P2に到達したことにより推認してもよい。
【0033】
1次積層成形品A4が加圧面427,427に挟まれると、第1のプレス工程のうちの第1の加圧工程PR1に移行する。第1の加圧工程PR1では、ロードセル320の値を検出して力制御によるフィードバック制御が行われる。力指令信号出力部701からは力の指令信号の値が送られ、ロードセル320により検出された力信号の値と比較され加算がなされる。そして第1の加圧工程PR1は、力制御のみであるので、力・位置比較切換部708はそのまま通過し、指令信号生成部709においてサーボアンプ317に対する速度制御の指令値として送信がされる。
【0034】
そしてサーボアンプ317ではサーボモータ315の回転数と電流値が生成されサーボモータ315に送られる。なお前記のようにサーボモータ315の制御は力制御により行われるが、力は1次積層成形品A4に加えられる面積当たりの圧力(面圧)に換算して表すことができる。本実施形態の積層成形方法では、前記面圧は、一例として0.3MPaないし1.5MPaであることが望ましく、特には真空積層装置12よりも面圧が低いことが望ましいことが多い。そして第1の加圧工程PR1において下盤314および加圧ブロック323が更に上昇して予め設定した位置P3(加圧面327,327間の距離と同一)となったことがリニアスケール321により検出されるか、或いは所定の時間が経過すると次に第1のプレス工程のうちの第2の加圧工程PR2に移行する。またはリニアスケール321かロータリエンコーダ316の少なくとも一方の検出値により第2の加圧工程PR2に移行する。
【0035】
第2の加圧工程PR2では位置制御要素を優先した加圧制御が行われる。リニアスケール321の値を検出して目標位置P4に向けて位置制御(または速度制御)のフィードバック制御を行う。位置指令信号出力部702からは指令信号の値が送られ、リニアスケール321により検出された位置信号の値と比較され加算がなされる。またロードセル320の値も常時検出され、加算器706を介して力・位置比較切換部708に送られる。そしてロードセル320の検出値には一例として2段階の閾値が設けられ、ロードセル320の検出値が最初の閾値を超えた場合は、位置制御の指令値に減算がなされる。またロードセル320の検出値が最後の閾値を超えた場合には位置制御の指令信号の指令値を前回指令値に対してマイナスした指令値とするか、位置信号の指令値の出力を一時的または第2のプレス工程PR2が終了するまで停止する。
【0036】
第2の加圧工程PR2についてもサーボアンプ317へは速度制御の指令値が送られ主には電流値の制御が行われる。サーボアンプ417とサーボモータ415の間ではロータリエンコーダ316を用いた速度制御が行われる。このことにより第2のプレス工程では、下盤314の位置が、リニアスケール321により検出された値を基に正確に制御される。そして下盤314の位置が目標位置P4となるとサーボモータ415は現在位置を維持するように制御され(サーボロックやサーボOFFを含む)、正確な板厚T1の2次積層成形品A5が加圧成形される。ただし位置制御時に大きな位置偏差が発生し加圧される1次積層成形品A4に圧力異常が発生した場合は、前記力検出により位置の指令値が後退側に変更されたり加圧が中止されるので、押し過ぎによる厚み減少や側方への溶融樹脂の流出等の不良品の発生を防止することができる。なお前記第2の加圧工程PR2においては目標位置(指令位置)に対して最終的にその位置に到達できない場合(押しきれない場合)であっても許容される板厚の範囲内であればよいとすることもできる。
【0037】
なお第2の加圧工程PR2は、位置制御要素を用いた制御であれば、力を優先した制御を行ってもよい。一例としては第1のプレス工程と同様にロードセル320の値を検出した力制御に、更に位置制御のフィードバック制御を一定割合で加算してもよい。または速度制御要素をフィードフォーワード制御信号として加算してもよい。更にはリニアスケール321により検出された位置に対応して力指令信号出力部701から送信される力信号の指令値を変更するものでもよい。
【0038】
なお第1のプレス工程の各加圧工程は、上記に限定されず更に加圧工程の数が多いものでもよい。また各工程における位置制御要素を用いた加圧成形とは、速度制御の要素を一部または全部に用いるものであっても広義の意味の位置制御要素に含むものとする。そして速度制御を含む位置制御要素は電流値の制御、電圧値の制御、トルク値のいずれかを制御してサーボモータ315の制御を行うものでもよい。また本発明の請求項2に対応するものとして、サーボモータ315を駆動源とする第1のプレス装置13は、全ての加圧工程において力制御のみ行うものでもよい。その場合であってもサーボモータ315を用いた第1のプレス装置13による力制御は、従来の一般的な圧力制御バルブにより制御される油圧シリンダを用いたプレス装置の圧力制御よりも1次積層成形品に対して高精度の加圧制御を行うことが可能となり、厚みムラも減少する。
【0039】
またこの際の第1のプレス装置13の加圧ブロック322,323の温度は、基板A1や積層フィルムA2の材質によって異なるからこれに限定されるものではないが、80℃ないし200℃、より好ましくは90℃ないし150℃に温度制御される。
【0040】
そして所定時間が経過して第1のプレス装置13の第2の加圧工程PR2が終了して2次積層成形品A5が積層成形されると、下盤314が下降される。この際成形された2次積層成形品A5の表面は、第1のプレス装置13の加圧面327に緩衝材325を介して弾性を備えた金属板326を備えた加圧ブロック322,323により加圧成形されているので、1次積層成形品A4の表面に残っていた凹凸はより一層平坦に加工されている。そしてキャリアフィルム巻取装置16による次の巻出ロール511および従動ロール512、巻出ロール414および従動ロール515によるキャリアフィルムF1,F2の送りと、巻取ロール611,613のキャリアフィルムF1,F2の巻き取りにより、前記2次積層成形品A5は第1のプレス装置13の後工程の第2のプレス装置14の上盤412と下盤414の間に搬送され、所定の加圧位置に停止される。
【0041】
次に第2のプレス装置14のサーボモータ415が作動され、第1のプレス装置13の制御と同様に下盤414および加圧ブロック423が高速で上昇され、速度切換位置P11で低速に切換され、やがて当接点P12で2次積層成形品A5が加圧面427,427に挟持される。第2のプレス装置14でも位置制御要素を含む加圧成形が行われる。第2のプレス装置14の第1の加圧工程PR11では、第1のプレス装置13の第2の加圧工程PR2と類似した制御が行われる。即ちリニアスケール421等の位置を検出してサーボモータ415を作動させる位置制御が行われるが、ロードセル320の値を検出して閾値を超えた場合等に前記位置指令制御信号(電流値等)に制限が加えられる。そして下盤414または加圧ブロック423が所定の切換位置P13に到達したことが検出されるかまたは所定時間が経過したことが検出されると第1の加圧工程PR11は終了し、第2の加圧工程PR12に移行する。
【0042】
第2のプレス工程の第2の加圧工程PR12では、リニアスケール421等の位置を検出してサーボモータ415を作動させた位置制御(または速度制御)のみが行われる。しかしながら第2のプレス装置14により加圧成形された2次積層成形品A5の板厚と最終製品である積層成形品A6の板厚の差は極めて小さくなっているので位置制御のみであっても位置偏差が大きくなりすぎて、サーボモータ315が予期せぬ過剰な力で駆動されるような指令信号が送られることはない。また第1の加圧工程PR11から第2の加圧工程PR12への切換位置P13から最終の加圧完了目標位置P14までの距離は極めて小さくなっているので、位置制御のみであっても位置偏差が大きくなりすぎてサーボモータ315が予期せぬ過剰な力で駆動されるような指令信号が送られることは殆どない。そのため最終製品である積層成形品A6は極めて精密な厚み精度を達成することができ、積層成形品A6の側方への溶融樹脂の流出を防止できる。ただし第2のプレス工程PR12もサーボモータ415のトルクリミット等の制限を設けてもよい。そして下盤314の位置が最終の加圧完了目標位置P14に到達されるとサーボモータ415は現在位置を維持するように制御され(サーボロックやサーボOFFを含む)、正確な板厚T2の積層成形品A6が加圧成形される。
【0043】
この2次加圧成形の際の第2のプレス装置14の加圧ブロック422,423の温度は、基板A1や積層フィルムA2の材質によって異なるからこれに限定されるものではないが、80℃ないし200℃、より好ましくは90℃ないし150℃に温度制御される。ただし第1のプレス装置13の加圧ブロック322,323の温度と同温か、または第2のプレス装置14の加圧ブロック422,423の温度のほうが低くなるようにすることが望ましい。
【0044】
第2のプレス装置14は、最終の加圧完了目標位置P14まで到達後に所定時間が経過すると下盤314が下降される。この際成形された積層成形品A6の板厚T2は、第2の加圧成形が位置制御により行われることにより正確な厚みとなっている。そして2次積層成形品A5の表面に僅かに凹凸が残っている場合はより一層平坦に加工することができる。
そしてキャリアフィルム巻取装置16による次のキャリアフィルムF1,F2の送りにより、最終の積層成形品A6は第2のプレス装置14の後工程の取出ステージ部615に搬送され、図示しない装置により次工程に向けて送られる。
【0045】
なお第2のプレス装置14による第1のプレス工程および第2のプレス工程は、第1のプレス装置13の第2のプレス工程PR2のように少なくとも位置制御要素を含むものであればよく、最初から位置制御(または速度制御)のみを行うものであってもよく力を検出して制御に用いるものでもよい。
【0046】
また第1の実施形態の積層成形システム1は、真空積層装置の後工程に力制御(または圧力制御)と位置制御要素を備えた1基のプレス装置を設けた積層成形システムとの比較において次の点で優れている。即ち連続する第1のプレス装置13と第2のプレス装置14でそれぞれ位置制御要素の加圧成形を行うことにより、2段階で所望の板厚に加工することができる。従って1基のプレス装置で所望の板厚に成形加工する積層成形システムと比較して、無理な加圧を行うことなく加圧成形を行うことができるので、積層成形品の側方への溶融樹脂の流出が防止できる。また基板の積層成形においては真空積層装置1による積層成形の必要時間よりもプレス装置による加圧成形の必要時間のほうが長い場合も多いが、プレス装置を連続する2基とすることにより、プレス装置による加圧成形の必要時間をそれぞれのプレス装置13,14に分割できる。そのため1バッチ当たりの積層成形のサイクル時間を短縮することができる。
【0047】
なお第2のプレス装置14は、また本発明の請求項2に対応するものとして、全ての加圧工程においてサーボモータ415の力制御のみ行うものでもよい。その場合であってもサーボモータ415を用いた第2のプレス装置14による力制御は、従来の一般的な圧力制御バルブにより制御される油圧シリンダを用いたプレス装置の圧力制御よりも2次積層成形品A5に対して高精度の加圧制御を行うことが可能となり、厚みムラも減少する。
【0048】
次に第2の実施形態の積層成形システム2について
図5を参照して相違点を中心に説明する。第2の実施形態の積層成形システム2は、前記真空積層装置22の後工程に設けられ位置制御要素を有する少なくとも2基の工程が連続したプレス装置を備える点や積層成形品の搬送方法などで共通している。また第1のプレス装置23や第2のプレス装置24のベース盤2311、上盤2312,タイバ2313,下盤2314の構成や、加圧ブロック2322,2323の構造等も共通している。第1の実施形態の第1のプレス装置13および第2のプレス装置14と、第2の実施形態の第1のプレス装置23および第2のプレス装置24の相違点は、加圧手段にある。
【0049】
第1のプレス装置23では、ベース盤2311には加圧手段であって油圧により作動する加圧シリンダ2315が設けられ、加圧シリンダ2315のラム2316が下盤2314の背面に固定されている。そして加圧シリンダ2315は図示しないサーボバルブ等のクローズドループ制御可能なバルブを含む油圧装置2317に接続されている。また加圧シリンダ2315は圧力センサにより作動油の圧力が検出可能となっている。そして前記圧力センサを含む油圧装置2317は制御装置17に接続されている。また第1のプレス装置23の上盤2312と下盤2314の間には
図1と同様のリニアスケール2318が取り付けられている。そしてリニアスケール2318は制御装置17に接続され、上盤2312と下盤2314の間の距離が検出可能となっている。
【0050】
また第2のプレス装置24の構造は第1のプレス装置23と同様であり、ベース盤2411には加圧手段であって油圧により作動する加圧シリンダ2415が設けられ、加圧シリンダ2415のラム2416が下盤2414の背面に固定されている。そして加圧シリンダ2415は図示しないサーボバルブ等のクローズドループ制御可能なバルブを含む油圧装置2417に接続されている。また加圧シリンダ2415は圧力センサにより作動圧が検出可能となっている。そして前記圧力センサを含む油圧装置2417は制御装置17に接続されている。また第2のプレス装置24の上盤2412と下盤2414の間には第1のプレス装置23と同様のリニアスケール2418が取り付けられている。そしてリニアスケール2418は制御装置17に接続され、上盤2412と下盤2414の間の距離が検出可能となっている。
【0051】
真空積層装置22で積層成形された1次積層成形品A4は、第1の実施形態の積層成形システム1と同様に第1のプレス装置23に送られて2次積層成形品A5に積層成形され、第2のプレス装置24に送られて積層成形品A6に積層成形される。第2の実施形態の積層成形システム2における第1のプレス装置23および第2のプレス装置24における積層成形方法は、第1の実施形態の積層成形システム1の積層成形方法と大半の部分において同様であるので上記の第1の実施形態の説明を援用する。相違点について記載すれば、第1の実施形態ではロードセル320等の値を検出してサーボモータ315を力制御していた部分が、第2の実施形態では、圧力センサの値を検出して加圧シリンダ2415の圧力制御が行われる点において相違する。即ちサーボバルブを用いる場合、サーボバルブにより圧力センサの値を用いた圧力のクローズドループ制御と、リニアスケール2418を用いた位置(または速度)のクローズドループ制御が行われる。
【0052】
また本発明は、第1の実施形態の積層成形システム1と第2の実施形態の積層成形システム2を混交したものとして、第1のプレス装置を油圧等の加圧シリンダを用い位置制御要素を有するプレス装置として、第2のプレス装置をサーボモータ等の電動モータを使用し位置制御要素を有するプレス装置としてもよい。更には反対に第1のプレス装置をサーボモータ等の電動モータを使用したプレス装置とし、第2のプレス装置を油圧等の流体を用いた加圧シリンダを用いたプレス装置としてもよい。
【0053】
次に第3の実施形態の積層成形システム3について
図6を参照して相違点を中心に説明する。第3の実施形態は、最後の工程のプレス装置と、前記最後の工程のプレス装置の前工程に連続するプレス装置にそれぞれ少なくとも位置制御要素を含む加圧制御を行うプレス装置を備えたものである。具体的には真空積層装置32の直後の後工程に備えられる第1のプレス装置33は油圧等の加圧シリンダ3311を用い圧力制御のみを行うプレス装置が備えられている。第1のプレス装置33は、加圧ブロックの平坦な加圧面にゴムが貼りつけられたものでもよい。そして第2のプレス装置34と第3のプレス装置35は、サーボモータ3411,3511等の電動モータを使用し位置制御要素を有するプレス装置が備えられている。従って本発明の「真空積層装置の後工程の連続するプレス工程」とは、2基のプレス装置によるそれぞれのプレス工程がN番目のプレス工程とN+1番目のプレス工程として連続していればよい。そのため真空積層装置32のすぐ後に連続する工程のプレス装置は、少なくとも位置制御要素を含む加圧制御を行うものでない場合も含まれる。また「連続するプレス工程」とは、プレス工程とプレス工程の間にプレス工程以外の工程を挟むものでもよい。
【0054】
そして第3のプレス装置35の加圧面は、第1のプレス装置33や第2のプレス装置34と同様の緩衝材と弾性金属板を備えている。また第3のプレス装置35は、緩衝材の厚みを第2のプレス装置34の緩衝材よりも薄くするか、緩衝材の硬度を第2のプレス装置34よりも高くして、第2のプレス装置34よりも緩衝効果を小さくしてよい。また第3のプレス装置35は緩衝材を設けずに、金属製の加圧盤または前記金属板に取り付け金属薄板が加圧面となるものでもよい。また第3のプレス装置35は、特に積層成形品を冷却する冷却プレスとし、第3のプレス装置35の加圧盤の温度は、第2のプレス装置34の加圧盤の温度よりも低温となるように制御してもよい。
【0055】
なお第3のプレス装置35が冷却プレスであって積層成形品A6に僅かな圧力で面当接さえすればよい場合は、第3のプレス装置35は位置制御要素が不要である場合もあり得る。その際は真空積層装置32の直後の第1のプレス装置33により行われる第1のプレス工程と第1のプレス装置33に連続して配置される第2のプレス装置34により行われる第2のプレス工程のみが少なくとも位置制御要素を用いた制御が行われる。
【0056】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した第1の実施形態および第2の実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや第1の実施形態ないし第3の実施形態の各記載を掛け合わせたものについても、適用されることは言うまでもないことである。積層成形システム1,2,3で積層成形される積層成形品は、回路基板の他、半導体ウエハや他の板状体であってもよく限定されない。またフィルム等の積層材が積層される面も、基板やウエハの片面であっても両面であってもよい。更にはLED基板などでもよい。本発明によれば、基板のチップ(凸部)の高さが0.1mm以上、積層される樹脂フィルムの厚みが0.15mm以上の場合であっても良好な積層成形が行えるケースが多い。
【符号の説明】
【0057】
1,2,3 積層成形システム
12,22,32 真空積層装置
13,23,33 第1のプレス装置
14,24,34 第2のプレス装置
17 制御装置
212,312,412,2412,2412 上盤
213,314,414,2314,2414 下盤
322,323,422,423,2322,2323 加圧ブロック
315,415,3411,3511 サーボモータ
317,417 サーボアンプ
320,420 ロードセル
321,421,2318,2418 リニアスケール
A4 1次積層成形品
A5 2次積層成形品
A6 積層成形品