(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20231019BHJP
B01J 23/745 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B01D53/86 222
B01D53/86 150
B01J23/745 A ZAB
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022153191
(22)【出願日】2022-09-27
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲シュアン▼麟
(72)【発明者】
【氏名】林 弘萍
(72)【発明者】
【氏名】李 壽南
(72)【発明者】
【氏名】鄭 瑞翔
(72)【発明者】
【氏名】施 惠雅
(72)【発明者】
【氏名】粘 伊菱
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-87625(JP,A)
【文献】特表2019-527129(JP,A)
【文献】特開2006-181570(JP,A)
【文献】特開2001-317724(JP,A)
【文献】国際公開第2009/125457(WO,A1)
【文献】特開2000-61255(JP,A)
【文献】国際公開第2008/142765(WO,A1)
【文献】特開平5-15742(JP,A)
【文献】特表2019-505370(JP,A)
【文献】特開平9-213596(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101380578(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86
B01J 23/745
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置であって、
プロセスツールから排気ガスを受け入れる熱酸化室であって、前記排気ガスが可燃性ガス及び亜酸化窒素を含み、前記熱酸化室が第1排気管を有し、前記排気ガスが熱酸化された後に発生する粉塵及び亜酸化窒素を排出する、熱酸化室と、
第1排気管から粉塵および亜酸化窒素を受け入れる高温耐性粉塵フィルタであって、前記高温耐性粉塵フィルタは、フィルタ繊維ネットと第2排気管とを有し、前記第2排気管は、亜酸化窒素を排出するように構成されている、高温耐性粉塵フィルタと、
前記第2排気管から亜酸化窒素を受け入れる触媒室であって、前記触媒室は、窒素酸化物を窒素(N
2)と酸素(O
2)に分解する亜酸化窒素分解触媒を有している、触媒室と、を備える、装置。
【請求項2】
前記亜酸化窒素分解触媒が、鉄-アルミニウム-チタン触媒を含み、前記鉄-アルミニウム-チタン触媒における酸化鉄と酸化アルミニウムの和の二酸化チタンに対するモル比範囲が3.5:1から2.5:1であり、前記鉄-アルミニウム-チタン触媒における酸化鉄の酸化アルミニウムに対するモル比範囲が2.5:1から1.5:1である、請求項1に記載の可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置。
【請求項3】
前記触媒室内の気孔率が60%~70%である、請求項1に記載の可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置。
【請求項4】
前記亜酸化窒素分解触媒の粒径が2mm~5mmである、請求項1に記載の可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置。
【請求項5】
前記熱酸化室に入る前記排気ガスの圧力を増加させるための第1のポンプをさらに備える、請求項1に記載の可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置。
【請求項6】
前記触媒室は、窒素及び酸素を出力するように構成された第3排気管を備える、請求項1に記載の可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置。
【請求項7】
前記第3排気管に負圧を供給するための第2のポンプをさらに備える、請求項6に記載の可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の装置を用いて、半導体製造工程において可燃性ガス及び亜酸化窒素を含む排気ガスを同時に除去する方法であって、該方法は、
プロセスツールからの前記排気ガスを前記熱酸化室により加熱するステップであって、前記排気ガスが前記可燃性ガス及び前記亜酸化窒素を含み、前記可燃性ガスが熱酸化されて粉塵になる、ステップと、
前記熱酸化室からの前記粉塵を前記高温耐性粉塵フィルタによりろ過するステップと、
前記高温耐性粉塵フィルタから排出される亜酸化窒素を触媒室で窒素と酸素に分解するステップと、を有する方法。
【請求項9】
熱酸化の温度が450℃~750℃である、請求項8に記載の半導体製造工程において可燃性ガス及び亜酸化窒素を含む排気ガスを同時に除去する方法。
【請求項10】
前記熱酸化室の圧力が650torr~750torrである、請求項8に記載の半導体製造工程において可燃性ガス及び亜酸化窒素を含む排気ガスを同時に除去する方法。
【請求項11】
前記触媒室の動作温度が450℃~600℃である、請求項8に記載の半導体製造工程において可燃性ガス及び亜酸化窒素を含む排気ガスを同時に除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2016年には、世界の温室効果ガスの総排出量は、炭素換算で500億メートルトン(CO2e)に達している。2018年の米国環境保護庁発表の温室効果ガス排出量統計によれば、亜酸化窒素(N2O)は3番目に大きい温室効果ガスである。特に、近年の半導体産業から排出される温室効果ガスは、N2Oが最も多くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、N2Oを主成分とする排気ガスの処理には、熱湿式や燃焼湿式が多く用いられているが、N2Oが熱分解を受けると大気汚染物質NOXの排出問題が発生する。また、半導体製造工程で使用されるN2Oガスのほか、シリコン、リン、ヒ素、ホウ素などの可燃性ガスも併用されている。これらの可燃性ガスを高温で酸化すると、無機粉塵が生成し、他の浮遊微粒子(PM2.5)の汚染を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置は、熱酸化室、高温耐性粉塵フィルタ、及び触媒室を含む。熱酸化室は、プロセスツールから排気ガスを受け入れるように構成される。排気ガスは可燃性ガスと亜酸化窒素とを含み、熱酸化室は第1排気管を有し、可燃性ガスが熱酸化された後に発生した亜酸化窒素や粉塵を排出する。前記高温耐性粉塵フィルタは、前記第1排気管から前記粉塵及び亜酸化窒素を受け入れ、前記高温耐性粉塵フィルタは、フィルタ繊維ネット及び第2排気管を有し、前記第2排気管は、亜酸化窒素を排出するように構成されている。前記触媒室は、前記第2排気管から亜酸化窒素を受け入れ、前記触媒室は、亜酸化窒素を窒素(N2)と酸素(O2)に分解する亜酸化窒素分解触媒を有する。
【0005】
本発明の半導体製造工程において可燃性ガスおよび亜酸化窒素を含む排気ガスを同時に除去する方法は、プロセスツールからの排気ガスを上記の熱酸化室により最初に加熱し、前記排気ガスが前記可燃性ガス及び前記亜酸化窒素を含み、前記可燃性ガスが熱酸化されて粉塵になる。そして、前記熱酸化室からの前記粉塵は前記高温耐性粉塵フィルタによりろ過され、前記高温耐性粉塵フィルタから排出される亜酸化窒素は前記触媒室で窒素と酸素に分解される。
【発明の効果】
【0006】
以上のことを踏まえると、本発明に係る装置は、まず熱酸化室内で可燃性ガスを処理し、次いで半導体製造工程や熱酸化室で発生した無機粉塵を高温耐性粉塵フィルタを介してろ過し、最後に、亜酸化窒素分解触媒を有する触媒室を備えるとともに、N2Oを完全に窒素と酸素に分解して無公害排出を達成することができ、N2Oを処理して大量の大気汚染物質NOXを生成する高温熱分解を用いるという欠点を解消することができる。
【0007】
図を伴ういくつかの例示的な実施形態を以下に詳細に説明し、詳細に本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付図面は、更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、例示的実施形態を図示し、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による、可燃性ガスおよび亜酸化窒素を同時に除去するための装置の模式図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による、可燃性ガスおよび亜酸化窒素を同時に除去するための装置のフローチャートである。
【
図3】実験例1の熱酸化室の実験装置の模式図である。
【
図4】実験例1の時系列によるSiH
4濃度の変化を示すグラフである。
【
図5】実験例2の高温耐性粉塵フィルタの実験装置の模式図である。
【
図6】実験例3の触媒室の実験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態における添付図面は、本発明の実施形態をより完全に記述することを意図しているが、本発明は依然として多くの異なる形態で実施され得、記載された実施形態に限定されない。さらに、明瞭化のために、各装置または管ラインの相対的な距離、サイズ、および位置を縮小または拡大してもよい。
【0011】
本発明は、より高いN2O濃度を有するガスを処理し、同時に可燃性ガスを処理し得る可燃性ガスおよび亜酸化窒素を同時に除去するための装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、公害排出ゼロを達成するためにN2OをN2とO2に分解する可能性のある可燃性ガスと亜酸化窒素を同時に除去し、可燃性ガスの高温酸化後に発生する粉塵が外部に放出されるのを防止する方法も提供する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による、可燃性ガスおよび亜酸化窒素を同時に除去するための装置の模式図である。
【0014】
図1を参照すると、本実施形態の装置100は、実質的に、熱酸化室102と、高温耐性粉塵フィルタ104と、触媒室106とを備えている。熱酸化室102は、プロセスツール(図示せず)から排気ガスを受け取るように構成され、ここで、排気ガスは可燃性ガスおよび亜酸化窒素(N
2O)を含んでもよい。この熱酸化室102は、第1排気管108を有しており、N
2Oや排気ガスが熱酸化された後に発生した粉塵を放出する。
【0015】
高温耐性粉塵フィルタ104は、第1排気管108からゴミやN
2Oを受け取り、高温耐性粉塵フィルタ繊維ネット112が設けられており、高温耐性粉塵フィルタ104の使用温度範囲は、常温から20℃~750℃のような高温までである。また、高温抵抗粉塵フィルタ104は、N
2Oを放出する第2排気管110も有している。
図1に示すように、第1排気管108が高温耐性粉塵フィルタ104に接続される位置は、一般に第2排気管110の出口位置よりも低い。その結果、第1排気管108の粉塵やN
2Oが高温耐性粉塵フィルタ104に入った後、フィルタ繊維ネット112で粉塵が遮られて高温耐性粉塵フィルタ104の底部に落下し、N
2Oがフィルタ繊維ネット112を介して上方の第2排気管110から放出される。一実施形態によると、フィルタ繊維ネット112の材料は、高温耐性材料であり、特に限定されるものではなく、例えば、セラミック(Al
2O
3)繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリイミド(PI)繊維、芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維であってもよい。フィルタ繊維ネット112は、高い気孔率を有する。例えば、フィルタ繊維ネットが約0.4g/cm
3の密度を有し、セラミック繊維の直径が約2μm~3μmの場合、100nm~1000nmの粒径を有する粉塵をフィルタ除去することができる。
【0016】
触媒室106は、第2排気管110からN2Oを受け、触媒室106は、N2Oを窒素(N2)と酸素(O2)とに分解することができる亜酸化窒素分解触媒(図示せず)を有する。一実施形態によると、触媒室106には、亜酸化窒素分解触媒が充填され、触媒の粒径は、2mm~5mmであってよく、触媒室106内の気孔率は、例えば、60%~70%である。「気孔率」は、(触媒を充てんした後の水の重量)/(触媒を含まない水の重量)×100%として定義される。触媒の粒径や触媒室の気孔率が小さすぎると、ガスが容易に通り抜けられず、処理効率に影響を及ぼすことがある。触媒組成物に関して、一実施形態において、亜酸化窒素分解触媒は、酸化鉄と酸化アルミニウムの複合触媒であってもよく、整合触媒キャリアは、一般に鉄-アルミニウム-チタン触媒と呼ばれる二酸化チタンであってもよく、二酸化チタンに対する化鉄と酸化アルミニウムの和のモル比範囲は、3.5:1から2.5:1であり、酸化アルミニウムに対する酸化鉄のモル比範囲は、例えば、2.5:1から1.5:1であってもよい。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、亜酸化窒素分解触媒は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、ランタン(La)などの金属元素を含んでもよい。しかしながら、貴金属元素と比較して、鉄-アルミニウム-チタン触媒の使用は、加工コストを大幅に削減する可能性がある。また、触媒室106は、分解されたN2及びO2を出力するように構成された第3の排出管114をさらに含んでもよい。
【0017】
さらに
図1を参照すると、本実施形態の装置100には、熱酸化室102に入る排気ガスの圧力を高めるために第1のポンプ116を設けることもでき、例えば、第1のポンプ116を排気ガスの入口管118に接続する。第2のポンプ120は、第3の排気管114に設けられてもよく、第3の排気管114に負圧を与えて、触媒室106内のガスの流れを容易にするように構成されている。また、各機器の影響をリアルタイムに検出するために、第1排気管108にサンプリング穴122aを追加し、第2排気管110にサンプリング穴122bを追加し、第3排気管114にサンプリング穴122cを追加し、排気ガス入口管118にサンプリング穴122dを追加してもよい。試料ホール122aは、可燃性ガスが酸化除去されているか否かを確認するために、ガス(可燃性ガス及びN
2O)の濃度を試料し、検出するように構成することができる。サンプリング穴122bは、粉塵がフィルタ除去されるか否かをサンプリングして検出するように構成されてもよい。フィルタ繊維ネットの粒子除去効率(PRE)が90%より低い場合、フィルタ繊維ネット112を交換する必要がある。サンプリング穴122cは、N
2O がN
2とO
2 に完全に分解されているかどうかをサンプリングし、検出するように構成されてもよい。N
2Oの破壊および除去効率(DRE)が90%未満の場合は、触媒を交換する必要があり、装置100を修理または交換する必要がある。サンプリングホール122dは、排気ガス中のガス(可燃性ガス及びN
2O)濃度を初期値としてサンプリングし、検出するように構成することができる。
【0018】
図2は、本発明の別の実施形態による、可燃性ガスおよび亜酸化窒素を同時に除去するための装置のフローチャートである。
【0019】
図2を参照されたい。本実施形態では、先の実施形態の装置100を採用する。第1に、ステップ200は、上記の熱酸化室(
図1の102など)を使用する半導体プロセスツールなどのプロセスツールからの排気ガスを加熱するために実行され、ここで、排気ガスは可燃性ガスおよびN
2Oを含み、可燃性ガスは熱酸化されて粉塵になる。ここで、熱酸化の温度は、例えば、450℃から750℃の間である。可燃性ガスには、SiH
4、Si
2H
6、PH
3、AsH
3、またはB
2H
6など、シリコン、リン、ヒ素、およびホウ素のうちの少なくとも1つによって形成されるガスが含まれる。プロセスツールからの排気ガスが熱酸化室によって加熱される前に、窒素は、排気ガスを加圧するために第1のポンプ(
図1の116など)を用いて最初に導入されてもよく、窒素の流速は、バックエンド触媒室(
図1の106など)に入るN
2Oの反応を容易にするために、500 LPM以下で制御されてもよい。熱酸化室(
図1の102など)に入る流量は圧力に関係するため、熱酸化室(
図1の102など)の圧力は、650torrと750torrの間で制御されてもよい。
【0020】
そして、ステップ202は、高温耐性粉塵フィルタ(
図1の104など)を用いて熱酸化室(
図1の102など)から粉塵を濾過するために行われる。このステップ202では、温度又は流量を特に制御する必要はない。高温耐性粉塵ストフィルタ(
図1の104など)に入ったガスは、フィルタ繊維ネット(
図1の112など)を介して自然に第2排気管(
図1の110など)に入ることがある。
【0021】
次に、ステップ204を実行して、高温耐性粉塵フィルタ(
図1の104など)から放出されたN
2Oを、上記の触媒室(
図1の106など)を用いてN
2とO
2 に分解する。触媒室(
図1の106など)の動作温度は、例えば、450℃~600℃である。本発明の装置は、可燃性ガスを熱酸化するための装置と、亜酸化窒素を分解するための装置とを一体化したものであり、両者の間にフィルタを設けたものであるため、プロセスの排気ガスを連続的に処理することができ、処理時間の短縮や除去効率の向上という効果を奏するものである。
【0022】
以上のことから、本発明に係る装置は、まず、熱酸化室を用いてシリコン、リン、ヒ素、ホウ素等の可燃性ガスを処理し、次いで、高温耐性粉塵フィルタを用いて、処理端部及び熱酸化室で発生した無機粉塵をろ過し、次に、亜酸化窒素分解触媒を含む触媒室を介してN2Oを窒素及び酸素に完全に分解して、無公害放出を達成することにより、従来のN2Oを高温熱分解して処理することにより発生する多量の有害副生成物NOXの欠点を解消し、他の処理ガスの酸化により形成される粉塵をろ過することができる。
【0023】
本発明の有効性を検証するために、以下に実験を説明する。ただし、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0024】
<実験例1>
【0025】
半導体工場で使用されるシリコン、リン、ヒ素、ホウ素などの可燃性ガスのうち、SiH4が最も多い。また、これらの可燃性ガスは全て500℃の温度で壊れて分解される可能性がある。そこで、実験例1では、試験ガスとしてSiH4を用いた。
【0026】
まず、
図3に示すような実験装置を設けた。体積約1900 Lの熱酸化室のキャビティを電気加熱または燃焼により500℃に加熱し、次いで純SiH
4をマスフローコントローラ(MFC)を用いて導入し、純N
2の流量を変えて希釈した後、熱酸化室で処理し、熱酸化室の前後端のSiH
4濃度をフーリエ変換赤外分光法(FTIR)により解析し、破壊除去効率(DRE)を計算した。実験結果を以下の表1及び
図4に示す。
【0027】
【0028】
図4および表1から、本発明の装置の熱酸化室は、SiH
4を効果的に除去し、SiH
4を二酸化ケイ素(SiO
2)に酸化する可能性があることが分かるであろう。更に、N
2の流量を下げると、熱酸化室に入る、より高い濃度のSiH
4を誘起し、より高いDREを誘起することができる。
【0029】
<実験例2>
【0030】
SiH4の熱酸化により生成した粉末SiO2のピーク粒径は約200nmから300nmであり、ろ過温度が高いほどPREは良好であった。そこで、本実験では、粒径約200nmのSiO2を用いて室温でろ過実験を行い、高温耐性粉塵フィルタのろ過効果を試験した。
【0031】
まず、
図5に示すような実験装置を設け、350 LPM以下のガス流量を処理できるセラミックフィルタを1個、45 Lの高温耐性粉塵フィルタに設けた。次いで、気流中にPALAS (粉塵エアロゾル発生装置)により200nmのSiO
2粉末を同速で添加し、高温耐性粉塵フィルタの入口側と出口側の粉塵濃度をサンプリング測定し、それらの粒子除去効率(PRE)を算出した。実験結果を以下の表2に示す。
【0032】
【0033】
本発明の装置の高温耐性粉塵フィルタが、常温でも97%以上に達するPREを有することは、表2から得られ得る。従って、熱酸化室から塵埃を受け取る場合には、有効なろ過の結果を達成するために特に高温に強いダストフィルタ温度を制御する必要がない。
【0034】
<実験例3>
【0035】
半導体工場の実処理におけるN2O排ガス濃度をシミュレーションするため、本実験では、鉄‐アルミニウム‐チタン触媒により濃度約20%のN2Oを分解した。
【0036】
まず、
図6に示すような実験装置を設け、触媒室の体積を約20mlとした。ここで、鉄・アルミニウム・チタン触媒粒子を充填し、粒径を2mm~5mmとし、触媒室内の気孔率を約62%とし、鉄・アルミニウム・チタン触媒における酸化鉄と酸化アルミニウムの和の酸化チタンに対するモル比を約3:1とし、酸化鉄の酸化アルミニウムに対するモル比を約2:1とした。その後、以下の条件に従って試験を行った。
1. 入口側N
2O濃度:約20%
2. ガス流速: 648.2 sccm (N
2O 129.9 sccm、N
2 518.3 sccm)
3. 反応温度: 500℃
4. GHSV: 1944.6 h
-1(保持時間約1.9 秒)
5. 直線速度: 10.2cm/s
【0037】
N
2O触媒室出口側のN
2O濃度は約7837ppmと測定され、
【数2】
と算出された。また、NOとNO
2は検出されなかった。
【0038】
以上のことから、本発明の装置は、熱酸化室、高温耐性粉塵フィルタ、触媒室とが連続して接続されており、まず、シリコン、リン、ヒ素、ホウ素等の可燃性ガスを熱酸化室で処理した後、プロセス端部及び熱酸化室で発生した粉塵を高温耐性粉塵フィルタを介してろ過し、N2Oを触媒室を介して窒素及び酸素に最後に完全に分解し、無公害排出の結果を達成するとともに、N2Oを処理するために、従来の高温熱分解法で生成されていた有害副生成物NOXの大量の問題を解決することができる。同時に、他のプロセスにおける可燃性ガスも排除することができる。
【0039】
本発明の範囲または精神から逸脱することなく、開示された実施形態の構造に種々の変更および変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。以上のことを考慮すると、本発明が、本発明の変更および変形をカバーすることが意図されているが、ここでは、それらが以下の請求項の範囲およびそれらの均等物に含まれることを条件とする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
半導体製造工程における排気ガス処理装置及び排気ガス処理方法において、可燃性ガス及び亜酸化窒素を同時に除去する装置及び方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 装置
102 熱酸化室
104 高温耐性粉塵フィルタ
106 触媒室
108 第1排気管
110 第2排気管
112 フィルタ繊維ネット
114 第3排気管
116 第1のポンプ
118 入口入口管
120 第2のポンプ
122a、122b、122c、122d サンプリング穴
200、202、204 ステップ
MFC マスフローコントローラ
FTIR フーリエ変換赤外分光法