IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋セメント株式会社の特許一覧 ▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】セメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20231019BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20231019BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20231019BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20231019BHJP
   C04B 7/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B18/08 Z
C04B14/28
C04B18/14 A
C04B7/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022191266
(22)【出願日】2022-11-30
(62)【分割の表示】P 2019084867の分割
【原出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2023018126
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】中口 歩香
(72)【発明者】
【氏名】黒川 大亮
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】田原 和司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】松澤 一輝
(72)【発明者】
【氏名】坂井 悦郎
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100204(JP,A)
【文献】特開2020-164411(JP,A)
【文献】特開平09-142900(JP,A)
【文献】特開2019-196276(JP,A)
【文献】特開2017-149638(JP,A)
【文献】特開平09-227182(JP,A)
【文献】特開平06-115998(JP,A)
【文献】国際公開第92/018434(WO,A1)
【文献】特開2011-132045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0298011(US,A1)
【文献】特許第7187380(JP,B2)
【文献】安藝朋子 新島瞬 黒川大亮 平尾宙,省エネルギー型汎用セメントの開発,セメント・コンクリート論文集,日本,一般社団法人 セメント協会,2014年,68巻1号,103-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーグ式を用いて算出した値として、アルミネート相(3CaO・Al)の割合が8.7~15.0質量%、ビーライト(2CaO・SiO)の割合が10.0~16.0質量%、及び、フェライト相(4CaO・Al・Fe)の割合が7.5~9.0質量%である普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末を含むセメント組成物であって、
上記普通ポルトランドセメントと上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量100質量%中の、上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量の割合が、5.0~15.0質量%であり、
上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量100質量%中の上記フライアッシュの割合が、10~90質量%であり、
上記セメント組成物は、高炉スラグ微粉末を含まない、または、上記フライアッシュと上記石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の上記高炉スラグ微粉末の割合が10質量%未満となるように、高炉スラグ微粉末を含み、
上記セメント組成物について、「JIS R 5203:2015(セメントの水和熱測定方法)」に準拠して、材齢28日の水和熱を測定し、かつ、「JIS R 5201:2015」に準拠して、材齢28日のモルタルの圧縮強さを測定した場合において、「(材齢28日のモルタルの圧縮強さの測定値X;単位:N/mm)/(材齢28日のセメント組成物の水和熱の測定値Y;単位:J/g)」の値(X/Y;ただし、単位は省略する。)が、0.158以上であることを特徴とするセメント組成物。
【請求項2】
上記普通ポルトランドセメントは、ボーグ式を用いて算出した値として、エーライト(3CaO・SiO)の割合が55.0~65.0質量%のものである請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
上記普通ポルトランドセメントは、ケイ酸率(S.M.)が2.41~2.65の範囲内のものである請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポルトランドセメントクリンカの原料として、廃棄物の使用量を増やすことが求められている。原料として廃棄物の使用量を増やした場合、普通ポルトランドセメント中のアルミネート相(3CaO・Al;「CA」ともいう。)の割合が増加することで、普通ポルトランドセメントの水和熱が大きくなることが懸念されている。
また、コンクリートのひび割れ発生の低減や防止の観点から、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さいセメント組成物が求められている。
セメント組成物の水和熱を低減することができる技術として、特許文献1には、CS(ビーライト;2CaO・SiO)100重量部に対して、CAS(2CaO・Al・SiO)を10~100重量部含有し、かつ、CAの含有率が20重量部以下であることを特徴とする焼成物が記載されている。また、特許文献1には、該焼成物を粉砕してなるセメント混和材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-2155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、容易に製造することができ、強度発現性に優れ、かつ、セメント組成物に含まれる普通ポルトランドセメント中のアルミネート相の割合が大きいにもかかわらず水和熱の小さいセメント組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ボーグ式を用いて算出したアルミネート相(3CaO・Al)の割合が8.7~15.0質量%である普通ポルトランドセメントとフライアッシュと石灰石粉末と任意に配合される高炉スラグ微粉末を含むセメント組成物であって、上記普通ポルトランドセメントとフライアッシュと石灰石粉末と任意に配合される高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の、フライアッシュと石灰石粉末と任意に配合される高炉スラグ微粉末の合計量の割合が5.0~15.0質量%であり、フライアッシュと石灰石粉末と任意に配合される高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中、各材料の割合が、特定の数値範囲内であるセメント組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を提供するものである。
[1] ボーグ式を用いて算出したアルミネート相(3CaO・Al)の割合が8.7~15.0質量%である普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末を含むセメント組成物であって、上記普通ポルトランドセメントと上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量100質量%中の、上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量の割合が、5.0~15.0質量%であり、上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量100質量%中の上記フライアッシュの割合が、10~90質量%であることを特徴とするセメント組成物。
[2] ボーグ式を用いて算出したアルミネート相(3CaO・Al)の割合が8.7~15.0質量%である普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末と、高炉スラグ微粉末を含むセメント組成物であって、上記普通ポルトランドセメントと上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の、上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量の割合が、5.0~15.0質量%であり、上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の上記フライアッシュの割合、上記石灰石粉末の割合、及び、上記高炉スラグ微粉末の割合が、各々、10~80質量%であることを特徴とするセメント組成物。
[3] ボーグ式を用いて算出したフェライト相(4CaO・Al・Fe)の割合が7.0~9.5質量%である、前記[1]または[2]に記載のセメント組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のセメント組成物は、強度発現性に優れ、かつ、セメント組成物に含まれる普通ポルトランドセメント中のアルミネート相の割合が大きい(8.7~15.0質量%)にもかかわらず水和熱の小さいものである。
また、本発明のセメント組成物は、セメント組成物に含まれる普通ポルトランドセメント中のアルミネート相の割合が大きく(8.7~15.0質量%)ても、水和熱の小さいものであることから、普通ポルトランドセメントクリンカの原料としての廃棄物の使用量を増やすことができる。
さらに、本発明のセメント組成物は、特定の材料を混合するという容易な方法で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[3成分系の場合]
本発明のセメント組成物は、ボーグ式を用いて算出したアルミネート相(3CaO・Al)の割合が8.7~15.0質量%である普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末を含むセメント組成物であって、上記普通ポルトランドセメントとフライアッシュと石灰石粉末の合計量100質量%中の、フライアッシュと石灰石粉末の合計量の割合が、5.0~15.0質量%であり、フライアッシュと石灰石粉末の合計量100質量%中のフライアッシュの割合が、10~90質量%であるものである。
本発明において、セメント組成物とは、ペースト、モルタルまたはコンクリートを調製するための他の材料(減水剤、消泡剤、収縮低減剤等の各種セメント混和剤や、細骨材、粗骨材、及び、水等)は含まれないものとする。
また、本発明のセメント組成物は、水等を混合していない状態で、粉末状の形態を有する。
【0008】
本発明で用いられる普通ポルトランドセメント中のアルミネート相の割合は、8.7~15.0質量%、好ましくは8.9~14.0質量%、より好ましくは9.0~13.0質量%、さらに好ましくは9.5~12.0質量%、さらに好ましくは9.7~11.5質量%、特に好ましくは10.0~11.0質量%である。該割合が8.7質量%未満であると、セメント組成物の強度発現性(特に、初期強度発現性)が低下する。また、普通ポルトランドセメントクリンカの原料としての廃棄物の使用量が小さくなる。該割合が15.0質量%を超えると、水和熱を低減する効果が小さくなる。
【0009】
普通ポルトランドセメント中のエーライト(3CaO・SiO2;「C3S」ともいう。)の割合は、セメント組成物の強度発現性、水和熱の低減、製造の容易性等の観点から、好ましくは55.0~65.0質量%、より好ましくは56.0~64.0質量%、さらに好ましくは57.0~63.0質量%、特に好ましくは58.0~62.0質量%である。
普通ポルトランドセメント中のビーライト(2CaO・SiO2;「C2S」ともいう。)の割合は、セメント組成物の強度発現性、水和熱の低減、製造の容易性等の観点から、好ましくは10.0~16.0質量%、より好ましくは10.5~15.5質量%、特に好ましくは11.0~15.0質量%である。
普通ポルトランドセメント中のフェライト相(4CaO・Al・Fe);「CAF」ともいう。)の割合は、製造の容易性等の観点から、好ましくは7.0~9.5質量%、より好ましくは7.5~9.0質量%、特に好ましくは7.8~8.5質量%である。また、上記割合が7.0質量%以上であれば、セメント組成物の水和熱をより小さくすることができる。上記割合が9.5質量%以下であれば、普通ポルトランドセメントクリンカの原料としての廃棄物の使用量をより大きくすることができる。
【0010】
なお、本明細書において、普通ポルトランドセメント中、C3S、C2S、C3A、及びC4AFの各割合は、普通ポルトランドセメント全量(100質量%)中の割合として、普通ポルトランドセメントの化学成分に基づき、下記のボーグ式(ボーグの計算式)を用いて算出することができる。
3S(質量%)=(4.07×CaO(質量%))-(7.60×SiO2(質量%))-(6.72×Al23(質量%))-(1.43×Fe23(質量%))-(2.85×SO(質量%))
2S(質量%)=(2.87×SiO2(質量%))-(0.754×C3S(質量%))
3A(質量%)=(2.65×Al23(質量%))-(1.69×Fe23(質量%))
4AF(質量%)=3.04×Fe23(質量%)
【0011】
また、本発明において、普通ポルトランドセメントの水硬率(H.M.:Hydraulic Module)は、好ましくは2.1~2.3、より好ましくは2.15~2.25である。 該水硬率が2.1以上であれば、初期強度発現性がより向上する。該水硬率が2.3以下であれば、水和熱をより小さくすることができる。
また、上記普通ポルトランドセメントのケイ酸率(S.M.:Silica Module)は、流動性等の観点から、好ましくは2.3~2.65、より好ましくは2.35~2.5である。また、該ケイ酸率が2.3以上であれば、水和熱をより小さくすることができる。該ケイ酸率が2.65以下であれば、原料としての廃棄物の使用量をより増やすことができる。
また、上記普通ポルトランドセメントの鉄率(I.M.:Iron Module)は、流動性等の観点から、好ましくは2.0~2.3、より好ましくは2.1~2.25である。また、該鉄率が2.0以上であれば、初期強度発現性がより向上する。該鉄率が2.3以下であれば、水和熱をより小さくすることができる。
【0012】
なお、水硬率、ケイ酸率、及び鉄率は、それぞれ、下記式を用いて算出することができる。
水硬率=CaO/(SiO+Al+Fe
ケイ酸率=SiO/(Al+Fe
鉄率=Al/Fe
(上記式中の化学式は、普通ポルトランドセメント中の、該化学式が表す化合物の含有率(質量%)を表す。)
【0013】
普通ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、好ましくは2,500~4,000cm/g、より好ましくは3,000~3,800cm/g、特に好ましくは3,200~3,600cm/gである。上記ブレーン比表面積が2,500cm/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が4,000cm/g以下であれば、セメント組成物の流動性がより向上する。
【0014】
フライアッシュのブレーン比表面積は、水和熱の低減や入手の容易性等の観点から、好ましくは3,000~5,000cm/g、より好ましくは3,300~4,500cm/g、特に好ましくは3,500~4,200cm/gである。また、上記ブレーン比表面積が3,000cm/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が5,000cm/g以下であれば、セメント組成物の流動性がより向上する。
石灰石粉末のブレーン比表面積は、水和熱の低減等の観点から、好ましくは3,000~10,000cm/g、より好ましくは3,500~9,000cm/g、さらに好ましくは3,800~8,000cm/g、特に好ましくは4,000~5,000cm/gである。また、上記ブレーン比表面積が3,000cm/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が10,000cm/g以下であれば、セメント組成物の流動性がより向上する。
【0015】
普通ポルトランドセメントとフライアッシュと石灰石粉末の合計量100質量%中の、フライアッシュと石灰石粉末の合計量の割合は、5.0~15.0質量%、好ましくは5.5~12.0質量%、より好ましくは6.0~10.0質量%である。該割合が5.0質量%未満であると、水和熱を低減する効果が低下する。該割合が15.0質量%を超えると、セメント組成物の強度発現性が低下する。
また、フライアッシュと石灰石粉末の合計量100質量%中のフライアッシュの割合は、10~90質量%、好ましくは30~70質量%、より好ましくは40~60質量%である。該割合が上記数値範囲外であると、セメント組成物の強度発現性や水和熱を低減する効果が低下する。
また、3成分系のセメント組成物(上述した普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末を含むセメント組成物)は、フライアッシュと石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の割合で、10質量%未満の高炉スラグ微粉末を含んでいてもよい。
【0016】
[4成分系の場合]
本発明のセメント組成物は、原料としての廃棄物の使用量が多い等の理由で、普通ポルトランドセメント中のアルミネート相の割合が大きい(例えば、9.0質量%以上)場合において、水和熱を低減する効果をより大きくする観点から、さらに、高炉スラグ微粉末を含んでいてもよい。
このような場合において、セメント組成物に含まれる普通ポルトランドセメント等は、上述した3成分系のセメント組成物に含まれる普通ポルトランドセメント等と同様である。
高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積は、水和熱の低減等の観点から、好ましくは3,000~8,000cm/g、より好ましくは3,500~7,000cm/g、さらに好ましくは3,800~6,000cm/g、特に好ましくは4,000~5,000cm/gである。また、上記ブレーン比表面積が3,000cm/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が8,000cm/g以下であれば、セメント組成物の流動性がより向上する。
本発明のセメント組成物が高炉スラグ微粉末を含む(4成分系のセメント組成物)場合において、普通ポルトランドセメントとフライアッシュと石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の、フライアッシュと石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量の割合は、5.0~15.0質量%、好ましくは5.5~12.0質量%、より好ましくは6.0~10.0質量%である。該割合が5.0質量%未満であると、水和熱を低減する効果が低下する。該割合が15.0質量%を超えると、セメント組成物の強度発現性が低下する。
フライアッシュと石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中、フライアッシュの割合、石灰石粉末の割合、及び高炉スラグ微粉末の割合は、各々、10~80質量%、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~40質量%である。該割合が上記数値範囲外であると、セメント組成物の強度発現性や水和熱を低減する効果が低下する。
【0017】
上述した原料を適宜混合することによって、本発明のセメント組成物を得ることができる。
本発明のセメント組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下の(1)~(2)の方法が挙げられる。
(1)普通ポルトランドセメントと、石灰石粉末と、フライアッシュと、任意に配合される高炉スラグ微粉末を一括して混合する方法
(2)普通ポルトランドセメントと石灰石粉末と任意に配合される高炉スラグ微粉末の混合物と、フライアッシュを混合する方法。
上記(2)の方法において、普通ポルトランドセメントと石灰石粉末と任意に配合される高炉スラグ微粉末の混合物は、例えば、普通ポルトランドセメントクリンカと石膏と石灰石と任意に配合される高炉スラグを同時に粉砕することで得ることができる。
中でも、特定の材料を混合するという容易な方法で製造することができる観点から、(1)の方法が好適である。
【実施例
【0018】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)普通ポルトランドセメント1~4(表1、2、4、6、8中、「セメント1~4」と示す。):詳細は表1参照
(2)石灰石粉末:ブレーン比表面積4,230cm/g
(3)フライアッシュA:ブレーン比表面積3,680cm/g
(4)フライアッシュB:ブレーン比表面積4,010cm/g
(5)高炉スラグ微粉末:ブレーン比表面積4,280cm/g
(6)細骨材:「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に規定される標準砂
(7)水:水道水
【0019】
【表1】
【0020】
実施例、比較例における水和熱及びモルタルの圧縮強さ(表3、5、7、9中、「モルタル圧縮強さ」と示す。)の測定方法を以下に示す。
[水和熱]
「JIS R 5203:2015(セメントの水和熱測定方法)」に準拠して、材齢7日、及び28日の水和熱を測定した。
[モルタルの圧縮強さ]
「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日、7日、及び28日におけるモルタルの圧縮強さを測定した。
【0021】
[実施例1~4、比較例1~5]
上記材料を、表2に示す種類および配合割合でミキサーに投入して混合し、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の水和熱及びモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表3に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
[実施例5~6、比較例6~10]
上記材料を、表4に示す種類および配合割合でミキサーに投入して混合し、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の水和熱及びモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表5に示す。
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
[実施例7~8、比較例11~15]
上記材料を、表6に示す種類および配合割合でミキサーに投入して混合し、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の水和熱及びモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表7に示す。
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
[実施例9~12、比較例16~20]
上記材料を、表8に示す種類および配合割合でミキサーに投入して混合し、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の水和熱及びモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表9に示す。
【0031】
【表8】
【0032】
【表9】
【0033】
表3から、実施例1(フライアッシュA及び石灰石粉末を含むもの)及び実施例2(フライアッシュB及び石灰石粉末を含むもの)と、比較例1~5を比較すると、実施例1~2のモルタルの圧縮強さ(材齢3日:38.1~38.7N/mm、材齢7日:54.4~54.8N/mm、材齢28日:66.1~69.0N/mm)は、各々、比較例1(石灰石粉末のみを含むもの)、比較例2(フライアッシュAのみを含むもの)、比較例3(高炉スラグ微粉末のみを含むもの)、比較例4(石灰石粉末及び高炉スラグ微粉末を含むもの)、及び比較例5(フライアッシュA及び高炉スラグ微粉末を含むもの)のモルタルの圧縮強さ(材齢3日:34.5~37.9N/mm、材齢7日:48.0~54.5N/mm、材齢28日:62.2~66.1N/mm)と同程度または大きいことがわかる。
また、実施例1~4における、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値(表3、5、7、9中、「材齢28日の圧縮強さ/水和熱」と示す。)は、0.161~0.166であり、比較例1~5における上記数値(0.150~0.156)よりも大きいことがわかる。
なお、「材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値」は、大きいほど水和熱が低減されていることを意味している。
【0034】
表5から、実施例5(フライアッシュA及び石灰石粉末を含むもの)と比較例6~10を比較すると、実施例5のモルタルの圧縮強さ(材齢3日:35.4N/mm、材齢7日:51.9N/mm、材齢28日:65.6N/mm)は、各々、比較例6(石灰石粉末のみを含むもの)、比較例7(フライアッシュAのみを含むもの)、比較例8(高炉スラグ微粉末のみを含むもの)、比較例9(石灰石粉末及び高炉スラグ微粉末を含むもの)、及び比較例10(フライアッシュA及び高炉スラグ微粉末を含むもの)のモルタルの圧縮強さ(材齢3日:31.1~36.0N/mm、材齢7日:44.7~51.4N/mm、材齢28日:60.5~63.4N/mm)と同程度または大きいことがわかる。
また、実施例5~6における、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値は、0.158であり、比較例6~10における上記数値(0.147~0.151)よりも大きいことがわかる。
【0035】
表7から、実施例7(フライアッシュA及び石灰石粉末を含むもの)と比較例11~15を比較すると、実施例7のモルタルの圧縮強さ(材齢3日:33.6N/mm、材齢7日:51.2N/mm、材齢28日:65.0N/mm)は、各々、比較例11(石灰石粉末のみを含むもの)、比較例12(フライアッシュAのみを含むもの)、比較例13(高炉スラグ微粉末のみを含むもの)、比較例14(石灰石粉末及び高炉スラグ微粉末を含むもの)、及び比較例15(フライアッシュA及び高炉スラグ微粉末を含むもの)のモルタルの圧縮強さ(材齢3日:29.9~34.2N/mm、材齢7日:44.0~49.5N/mm、材齢28日:59.9~63.8N/mm)と同程度または大きいことがわかる。
また、実施例7~8における、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値は、0.159~0.163であり、比較例11~15における上記数値(0.142~0.156)よりも大きいことがわかる。
【0036】
表9から、実施例9(フライアッシュA及び石灰石粉末を含むもの)、実施例10(フライアッシュB及び石灰石粉末を含むもの)、実施例11(フライアッシュA、石灰石粉末、及び高炉スラグ微粉末を含むもの)、実施例10(フライアッシュB、石灰石粉末、及び高炉スラグ微粉末を含むもの)と、比較例16~20を比較すると、実施例9~12のモルタルの圧縮強さ(材齢3日:32.0~32.7N/mm、材齢7日:49.0~50.1N/mm、材齢28日:64.6~66.4N/mm)は、各々、比較例16(石灰石粉末のみを含むもの)、比較例17(フライアッシュAのみを含むもの)、比較例18(高炉スラグ微粉末のみを含むもの)、比較例19(石灰石粉末及び高炉スラグ微粉末を含むもの)、及び比較例20(フライアッシュA及び高炉スラグ微粉末を含むもの)のモルタルの圧縮強さ(材齢3日:30.6~32.1N/mm、材齢7日:46.0~49.1N/mm、材齢28日:59.8~63.9N/mm)より大きいことがわかる。
また、実施例9~12における、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値は、0.167~0.169であり、比較例16~20における上記数値(0.149~0.164)よりも大きいことがわかる。