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特許7369850床下空間の断熱構造および床下空間の断熱構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】床下空間の断熱構造および床下空間の断熱構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20231019BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20231019BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
E04B1/76 400G
E04B5/43 G
E04G23/02 H
E04B1/76 500K
E04B1/76 500Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022196207
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2018163102の分割
【原出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2023022299
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】中谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】千葉 陽輔
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-046801(JP,A)
【文献】特開2002-250088(JP,A)
【文献】特開昭58-065842(JP,A)
【文献】特開昭54-117114(JP,A)
【文献】特開昭55-129533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052696(US,A1)
【文献】特開2015-083760(JP,A)
【文献】特開2015-121033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 5/43
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に断熱材が充填された状態で柱状に膨張したチューブ状の袋体と、
前記袋体の一辺に取り付けられたガイド棒と、
を備える断熱部材により構成され、
前記袋体および前記ガイド棒は、床下空間において前記床下空間の外周に沿った基礎の立上り部に並置される、
床下空間の断熱構造。
【請求項2】
前記ガイド棒は、前記袋体の長手方向に沿って前記袋体の一辺に取り付けられている、
請求項1に記載の床下空間の断熱構造。
【請求項3】
袋状に形成され、内部に気体が充填されることなく巻回された状態と、内部に気体が充填されてマット状に膨張した状態と、に変化可能に形成され、防湿性を有するシート体を更に備え、
前記シート体は、マット状に膨張した状態で前記床下空間の地盤面に敷設され、
前記断熱部材は、前記シート体に載置される、
請求項2に記載の床下空間の断熱構造。
【請求項4】
流体が充填された際に柱状に膨張する前記袋体を膨張前の状態で、前記基礎の立上り部に設けられた床下換気口から前記床下空間の内部に挿入する挿入工程と、
前記袋体を前記床下空間の外周に沿うように配置する配置工程と、
前記床下換気口から前記袋体の内部に流動性を有する断熱材を充填して柱状の前記断熱部材を形成する充填工程と、を備える、
請求項3に記載の床下空間の断熱構造の製造方法。
【請求項5】
前記挿入工程において、膨張前の前記袋体に前記ガイド棒を取り付けた後、前記床下換気口から前記ガイド棒と共に前記袋体を挿入する、
請求項4に記載の床下空間の断熱構造の製造方法。
【請求項6】
前記配置工程において、前記ガイド棒を前記立上り部の内側に沿わせながら移動し、前記袋体を前記立上り部の内側に並置させる、
請求項5に記載の床下空間の断熱構造の製造方法。
【請求項7】
前記充填工程において、気体と断熱材とが混合された混合気体を前記袋体の内部に流入させ、前記袋体を膨張させながら前記袋体の内部に前記断熱材を充填する、
請求項4から6のうちいずれか1項に記載の床下空間の断熱構造の製造方法。
【請求項8】
前記充填工程において、送風装置に接続されたホースを前記袋体の内部に挿入し、前記ホースの先端を前記袋体の内部の端部領域に配置した後、前記送風装置を稼働させ、前記ホースから前記袋体の内部に前記断熱材と気体との混合気体を送風して前記断熱材を充填しながら前記ホースを引き抜く方向に移動させる、
請求項4から7のうちいずれか1項に記載の床下空間の断熱構造の製造方法。
【請求項9】
前記挿入工程の前に、前記床下空間の地盤面に、気体の充填によりマット状に展開する防湿性の前記シート体を敷設する敷設工程を更に備え、
前記敷設工程は、前記床下換気口から膨張前の巻回された前記シート体を挿入した後、前記シート体の内部に気体を充填して前記シート体を膨張させると共に、前記シート体を前記床下空間の地盤面上に転がしながら展開させて敷設する、
請求項4から8のうちいずれか1項に記載の床下空間の断熱構造の製造方法。
【請求項10】
前記充填工程の後、前記床下換気口に前記床下空間の空気を排出するための換気装置を設置すると共に、外部と連通する前記基礎に設けられた他の床下換気口を蓋で塞ぐ設置工程を更に備える、
請求項4から9のうちいずれか1項に記載の床下空間の断熱構造の製造方法。
【請求項11】
前記設置工程の後、前記換気装置を稼働させ、前記床下空間の内部の空気を外部に排出すると共に、室内の空気を床下に導入させる換気工程を更に備える、
請求項10に記載の床下空間の断熱構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床下を断熱するための床下空間の断熱構造および床下空間の断熱構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の居住環境の改善とエネルギー効率の改善を目的として、建物の床下の断熱性を向上するための床下断熱構造が知られている(例えば、特許文献1)。この床下断熱構造は、床材の下面と地面(コンクリート面)との間に板状の断熱材を配置して床下の断熱を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-011997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床断熱が施工されていない既存建物の断熱性能を向上させるために、床下に断熱材を設置する床断熱リフォームが行われる。特許文献1に記載された技術は、新築の建物に対して床下断熱構造の施工を行うことが想定されており、既存の建物の床断熱リフォームに適用しようとすると、床材を剥がす等の大掛かりな施工が必要となり、工期が長くなると共に、施工費も高くなる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した事情に考慮してなされたものであり、既存の建物に床からの熱損失を低減して断熱性能を向上させるための床断熱リフォームを簡便に施工することができる、床下空間の断熱構造および床下空間の断熱構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造は、内部に断熱材が充填された状態で柱状に膨張したチューブ状の袋体と、前記袋体の一辺に取り付けられたガイド棒と、を備える断熱部材により構成され、前記袋体および前記ガイド棒は、床下空間において前記床下空間の外周に沿った基礎の立上り部に並置される。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造は、前記ガイド棒は、前記袋体の長手方向に沿って前記袋体の一辺に取り付けられている。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造は、袋状に形成され、内部に気体が充填されることなく巻回された状態と、内部に気体が充填されてマット状に膨張した状態と、に変化可能に形成され、防湿性を有するシート体を更に備え、前記シート体は、マット状に膨張した状態で前記床下空間の地盤面に敷設され、前記断熱部材は、前記シート体に載置される。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造の製造方法は、流体が充填された際に柱状に膨張する前記袋体を膨張前の状態で、前記基礎の立上り部に設けられた床下換気口から前記床下空間の内部に挿入する挿入工程と、前記袋体を前記床下空間の外周に沿うように配置する配置工程と、前記床下換気口から前記袋体の内部に流動性を有する断熱材を充填して柱状の前記断熱部材を形成する充填工程と、を備える。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造の製造方法は、前記挿入工程において、膨張前の前記袋体に前記ガイド棒を取り付けた後、前記床下換気口から前記ガイド棒と共に前記袋体を挿入する。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造の製造方法は、前記配置工程において、前記ガイド棒を前記立上り部の内側に沿わせながら移動し、前記袋体を前記立上り部の内側に並置させる。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造の製造方法は、前記充填工程において、気体と断熱材とが混合された混合気体を前記袋体の内部に流入させ、前記袋体を膨張させながら前記袋体の内部に前記断熱材を充填する。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造の製造方法は、前記充填工程において、送風装置に接続されたホースを前記袋体の内部に挿入し、前記ホースの先端を前記袋体の内部の端部領域に配置した後、前記送風装置を稼働させ、前記ホースから前記袋体の内部に前記断熱材と気体との混合気体を送風して前記断熱材を充填しながら前記ホースを引き抜く方向に移動させる。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造の製造方法は、前記挿入工程の前に、前記床下空間の地盤面に、気体の充填によりマット状に展開する防湿性の前記シート体を敷設する敷設工程を更に備え、前記敷設工程は、前記床下換気口から膨張前の巻回された前記シート体を挿入した後、前記シート体の内部に気体を充填して前記シート体を膨張させると共に、前記シート体を前記床下空間の地盤面上に転がしながら展開させて敷設する。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造の製造方法は、前記充填工程の後、前記床下換気口に前記床下空間の空気を排出するための換気装置を設置すると共に、外部と連通する前記基礎に設けられた他の床下換気口を蓋で塞ぐ設置工程を更に備える。
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造の製造方法は、前記設置工程の後、前記換気装置を稼働させ、前記床下空間の内部の空気を外部に排出すると共に、室内の空気を床下に導入させる換気工程を更に備える。
【0007】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱方法は、建物の基礎の立上り部に床下換気口を有する床下空間の断熱方法であって、流体が充填された際に柱状に膨張する袋体を膨張前の状態で前記床下換気口から前記床下空間の内部に挿入する挿入工程と、前記袋体を前記床下空間の外周に沿うように配置する配置工程と、前記床下換気口から前記袋体の内部に流動性を有する断熱材を充填して柱状の断熱部材を形成する充填工程と、を備える。
【0008】
本態様によれば、建物の外部に位置する作業者が膨張前の袋体を床下換気口から挿入した後に、床下空間の中で袋体の内部に断熱材を充填して袋体を膨張させて断熱部材を形成することで、建物の居室内に影響を与えずに床断熱リフォームを施工することができる。また、断熱部材は、外気の影響を受けやすい床下空間の外周部に設置されるため、断熱材の使用量を低減して施工コストを低減することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱方法は、前記挿入工程において、膨張前の前記袋体にガイド棒を取り付けた後、前記床下換気口から前記ガイド棒と共に前記袋体を挿入するように構成されている。
【0010】
本態様によれば、ガイド棒を袋体に取り付けることにより、ガイド棒と共に袋体を床下換気口から床下空間に挿入することを簡便にすることができる。
【0011】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱方法は、前記配置工程において、前記ガイド棒を前記立上り部の内側に沿わせながら移動し、前記袋体を前記立上り部の内側に並置させるように構成されている。
【0012】
本態様によれば、袋体が取り付けられたガイド棒を床下換気口の外側から移動させることができ、袋体を立上り部の内側などの設計上の所定位置に並置させることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱方法は、前記充填工程において、空気等の気体と断熱材とが混合された混合気体を前記袋体の内部に流入させ、前記袋体を膨張させながら前記袋体の内部に前記断熱材を充填するように構成されている。
【0014】
本態様によれば、袋体の内部に気体と断熱材とが混合された混合気体を流入させることにより、気体の送風により、袋体を膨張させる共に気体に混合された断熱材が袋体の内部に流入して蓄積されることにより、断熱材を袋体の内部に簡便に充填および圧入することができる。また、本態様によれば、断熱材が袋体の内部に充填されているため、断熱部材を入れ替える際に回収方法を容易とすることができる。
【0015】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱方法は、前記充填工程において、送風装置に接続されたホースを前記袋体の内部に挿入し、前記ホースの先端を前記袋体の内部の端部領域に配置した後、前記送風装置を稼働させ、前記ホースから前記袋体の内部に前記断熱材と気体との混合気体を送風して前記断熱材を充填しながら前記ホースを引き抜く方向に移動させるように構成されている。
【0016】
本態様によれば、袋体の内部において端部から断熱材を効率的に充填することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱方法は、前記挿入工程の前に、前記床下空間の地盤面に、気体の充填によりマット状に展開する防湿性のシート体を敷設する敷設工程を更に備え、前記敷設工程は、前記床下換気口から膨張前の巻回された前記シート体を挿入した後、前記シート体の内部に気体を充填して前記シート体を膨張させると共に、前記シート体を前記地盤面上に転がしながら展開させて敷設するように構成されている。
【0018】
本態様によれば、床下空間において地盤面がむき出しの状態である場合に、地盤面に敷設される防湿性のシート体を床下換気口から挿入することができる。また、膨張前のシート体が巻回されていることにより、袋体を床下換気口から床下空間の中に挿入することができる。そして、袋体の内部に気体が充填された際に袋体がマット状に展開されることにより、シート体を地盤面上に敷設することができる。また、巻回されたシート体を気体により膨張させながら展開させることにより、地盤面に凹凸や起伏が存在してもシート体がそれらを乗り越えて自走させることができる。
【0019】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱方法は、前記充填工程の後、前記床下換気口に前記床下空間の空気を排出するための換気装置を設置すると共に、外部と連通する前記基礎に設けられた他の床下換気口を蓋で塞ぐ設置工程を更に備えるよう構成されている。
【0020】
本態様によれば、蓋により外気と床下空間とを遮断して換気装置が床下空間の空気を排出することで、余剰な水分により床下空間が高湿度環境に長時間保持されることを防止することができる。
【0021】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱方法は、前記設置工程の後、前記換気装置を稼働させ、前記床下空間の内部の空気を外部に排出すると共に、室内の空気を床下に導入させる換気工程を更に備えるよう構成されている。
【0022】
本態様によれば、換気装置を稼働することで居室内の空調された空気を床下空間に導入して床下の空気の温度を居室内の空気の温度に近づけるこができ、床面を快適な温度に保つことができる。
【0023】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造は、チューブ状の袋体と、前記袋体の内部に充填された断熱材と、を備え、前記袋体は、前記断熱材が充填された状態で柱状に膨張し、床下空間において前記床下空間の外周に沿った基礎の立上り部に並置される、断熱部材である。
【0024】
本態様によれば、居室内に影響を及ぼすことなく、建物の外部から床下換気口を介して床下空間に熱損失を低減するための断熱部材を設置することができる。
【0025】
本発明の一態様に係る床下空間の断熱構造は、前記断熱部材が載置されるように前記床下空間の地盤面に敷設された防湿性を有するシート体を更に備え、前記シート体は、気体の充填によりマット状に展開するよう構成されている。
【0026】
本態様によれば、床下空間の地盤面が露出している場合、居室内に影響を及ぼすことなく、建物の外部から床下換気口を介して地盤面に防湿性を有するシート体を敷設することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、床下空間の断熱方法および床下空間の断熱構造を適用して既存の建物に床からの熱損失を低減して断熱性能を向上させるための床断熱リフォームを簡便に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る床下空間の断熱方法が適用される対象の建物の基礎の構成の一例を示す斜視図である。
図2】床下空間の断熱方法が適用される対象の布基礎の構成の一例を示す断面図である。
図3】床下空間の地盤面に敷設されるシート体の構成の一例を示す平面図である。
図4】シート体の敷設工程の過程を示す図である。
図5】布基礎の立上り部の内側に配置される袋体の構成の一例を示す平面図である。
図6】床下空間内に袋体を配置した状態の一例を示す斜視図である。
図7】袋体の内部に断熱材を充填して断熱部材が形成された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照にしつつ、本発明に係る床下空間の断熱方法および床下空間の断熱構造の実施形態について説明する。
【0030】
図1および図2に示されるように、既設の建物の基礎1には、床断熱が施工されていないものがある。床下空間の断熱方法は、例えば、布基礎2に適用されて床断熱リフォームが行われる。後述の断熱部材は、例えば布基礎2の内側の床下空間Sに設置される。
【0031】
布基礎2は、地盤面Eから上方に向かって立設された立上り部2aが連続壁状に形成されてなるコンクリート製の基礎である。布基礎2は、断面が逆T字型に形成されている。布基礎2は、鉛直方向に立設する立上り部2aと、断面方向から見て立上り部2aに直交方向に形成され、立上り部2aの底部に沿って延在するフーチング部2bとを備える。フーチング部2bは、地盤面Eより低い地中に埋設されている。
【0032】
立上り部2aは、例えば、建物の床面の形状に応じて設けられている。立上り部2aは、例えば、平面方向から見て矩形の板状の床スラブ10の周囲を支持するように矩形に配置されている。立上り部2aは、例えば、地盤面Eからの高さが400[mm]程度になるように形成されている。床スラブ10は、建物の床面積やレイアウトに応じて複数個配置される。床スラブ10は、例えば、セメントで成形されたALC(Autoclaved Light-weight Concrete)板である。
【0033】
床スラブ10の下部には、略矩形の地盤面Eの周囲を囲うように配置された立上り部2aと、略矩形の床スラブ10の底面と、略矩形の地盤面Eとにより囲まれた略直方体形状の床下空間Sが形成される。
【0034】
対向する一対の立上り部2aの中間部には、床スラブを支持する小梁が設けられていてもよい。床スラブ10は、束で支持されていないことが望ましい。特に、建物の外部空間に接する立上り部2aの内側に沿って束が存在しないことが望ましい。
【0035】
床下空間Sは、地盤面Eが露出している場合があり、地盤表面から床下に湿気が侵入することが懸念される。そのため、床下空間Sの外周における一辺の立上り部2aには、床下空間Sを換気するために少なくとも一つの床下換気口3が設けられている。一対の立上り部2aの中間部に小梁がある場合には、立上り部2aにおいて小梁で分断された範囲にそれぞれ1つの床下換気口3が設けられている。
【0036】
床下換気口3は、例えば、外部と床下空間Sを連通させるように形成された矩形の貫通孔である。床下換気口3は、例えば、高さ100[mm]×幅300[mm]程度の大きさで規格化されている。
【0037】
床下空間Sは、空気が床下換気口3から出入りするため、外気に晒されている。既存の建物によっては、床断熱が施工されていないものがあり、冬場など外気温が室内温度に比して低い場合、床下空間Sに外気が出入りすると、床を通じて室内の熱が逃げ、床の温度が下がり、床表面や足元が冷たく感じる場合がある。そのため、建物の居住性と暖冷房効率を向上させるため、熱損失を低減させる床断熱リフォームが施工される場合がある。
【0038】
床下空間Sの断熱方法は、例えば、布基礎2を備える既存の建物の床断熱リフォーム等の断熱改修工事に適用される。既存の建物は、居住者が生活しているため、なるべく居住者の生活に影響を与えずに断熱改修工事が施工されることが望ましい。床下空間の断熱方法では、建物内部で家具等を移動する等の生活への影響がなく、建物外部から断熱改修工事の施工を可能としている。
【0039】
床下空間の断熱方法においては、例えば、床下換気口3から断熱部材の資材の搬入を行い、施工作業の終了まで床下換気口3を通じて行う。床下換気口3には、小動物などが床下空間Sに侵入しないように格子3aが取り付けられている。格子3aは、例えば、立上り部2aに形成された床下換気口3に嵌め込まれている。格子3aは、立上り部2aのコンクリートの打設時に予め複数の鋼棒を並置して立上り部2aと一体に設けられている場合があり、また、格子3aの代わりに網が用いられている場合もある。
【0040】
格子3aは、例えば外部空間から床下空間Sへのアクセスを可能とする通路を確保するために、床下換気口3から取り外される。格子3aが床下換気口3と一体に形成されている場合、格子3aは切断により撤去される。格子3aが撤去されると、床下換気口3は、断熱部材の資材の搬入口となると共に、作業用スペースとなる。床下換気口3の縁は、断熱部材の資材等を搬入するためにシート状のもので養生される。
【0041】
次に、床下空間の断熱構造における断熱部材の設置方法について説明する。床下空間Sは、地盤面Eが露出しているので、先ず、地盤面Eを覆うための防湿性かつ、防水性を有するシート体20を敷設する。シート体20は、床下換気口3から搬入されると共に、床下空間Sの地盤面Eに展開されて敷設されるように構成されている。
【0042】
図3に示されるように、シート体20は、例えば、2枚の矩形のポリエチレン製のシート21,22の周囲が溶着されて袋状に形成されている。シート体20は、一枚のポリエチレン製のシートを折り曲げて周囲の三辺を溶着して形成されてもよいし、チューブ状のシートを潰した状態で両側の二辺を溶着して形成されてもよい。シート体20は、例えば、厚さが0.2[mm]程度である。
【0043】
周囲が溶着された2枚のシート21,22は、短辺方向に平行に複数の線状の仕切り23が形成されている。仕切り23は、2枚のシート21,22が互いに溶着されて形成された線状の複数の溶着部24と、溶着されていない気道25とを備える。複数の溶着部24の間には、気道25が所定の間隔で配置されている。これにより、シート体20には、軸線が短辺方向に沿った多数のセル26が隣接して形成されている。
【0044】
シート体20の2つの短辺の一端側には溶着されていない吸気口27が設けられている。吸気口27から気体を流入させると、例えば、セル26が略円柱状に膨張する。そして、膨張を終えたセル26の各気道25から気体が隣接するセル26に流入し、隣接するセル26も略円柱状に膨張する。全てのセル26が膨張すると、シート体20は、マット状に膨張する。シート体20の長手方向の長さは、例えば、地盤面Eの一辺の長さとなるように形成されている。
【0045】
このような構成の膨張前のシート体20を吸気口27が端部として現れるように長手方向に沿って巻回する。シート体20の巻回方向は、短手方向に沿った方向でもよい。巻回方向は、シート体20の大きさや形状、施工場所の状態に応じて適宜決定され、吸気口27の位置も、それに応じて適宜決定される。そのため、吸気口27は、シート体20の長辺側の任意の位置に設けられていてもよい。
【0046】
図4(1)に示されるように、作業者は、巻回されたシート体20を床下換気口3から、挿入する。次に、作業者は、図4(2)に示されるように、シート体20の吸気口27にホースHの一端を接続し、床下換気口3を通過させてホースHの他端を建物の外部に配置されたブロワBの送風口に接続する。そして、作業者は、ブロワBを稼働させてシート体20の内部に気体(空気)を充填して手前側のセル26から順次、円筒状に膨張させる。気体は、ボンベに充填された圧縮性のガスを用いて体20の内部に充填するようにしてもよいし、もしくは非圧縮性の液体をシート体20の内部に充填するようにしてもよい。
【0047】
隣接するセル26を順次膨張させ、巻回されたシート体20を膨張したセル26に押し上げさせて、地盤面Eに転がり始めさせる。即ち、作業者は、シート体20の内部に気体を充填してシート体20を膨張させると共に、シート体20を地盤面E上に転がしながら展開させて敷設する。
【0048】
そして、膨張を終えたセル26の各気道25から気体を隣接するセル26に流入させ、全てのセル26を膨張させ、シート体20を、マット状に展開させる。このように、巻回されたシート体20に空気を充填することにより、シート体20が転回して自走しながら展開する。このように、巻回されたシート体20を気体により膨張させながら展開させることにより、地盤面Eに凹凸や起伏が存在してもシート体20がそれらを乗り越えて自走させることができる。
【0049】
シート体20の長手方向の長さは、例えば、地盤面Eの略一辺の長さとなるように形成されている。作業者は、例えば、展開されたシート体20を床下空間Sの地盤面Eの全体に敷設する。作業者は、展開されたシート体20を少なくとも床下空間Sの周辺側、即ち建物の外部空間に露出している立上り部2aの内側に沿って地盤面Eに敷設する。
【0050】
この時、作業者は、展開されたシート体20の位置が所定位置からずれている場合、床下換気口3から棒等を用いて押し込んだり、手繰り寄せたりしてシート体20を所定位置に敷設する。マット状に展開されたシート体20は、剛性が生じているため、作業者による建物の外部からの位置調整が容易に行われる。
【0051】
作業者は、シート体20の敷設後に吸気口27からホースHを外す。この時、吸気口27は、必ずしも塞がれなくてもよい。即ちシート体20は、吸気口27から空気が抜けてカーペット状になってもよい。地盤面Eに既存の防湿土間コンクリートや、防湿シートが存在する場合には、これらをそのまま防湿手段として用いて、シート体20の敷設を省略してもよい。
【0052】
シート体20の上には、建物の外部空間に接している立上り部2aの内側(床下空間S側の壁)に沿って断熱部材30が設置される。断熱部材30は、後述のように、袋体31の内部に断熱材38を充填および圧入して形成される。
【0053】
図5に示されるように、袋体31は、チューブ状に形成されたポリエチレン製のシートの開口した両端を溶着して形成されている。袋体31は、2枚の帯状のシートの四辺を溶着してチューブ形成されてもよいし、1枚のシートを折り曲げて周囲の三辺を溶着して形成されてもよい。袋体31には、袋体31の内部に気体と後述の断熱材を充填および圧入するための開口部32が形成されている。
【0054】
開口部32には、断熱材を充填および圧入するためのホースH1が挿入される。開口部32は、ホースH1の断面積よりも大きく開口するように形成されている。開口部32は、床下換気口3の位置に対応する位置に設けられている。
【0055】
袋体31は、開口部32から内部に気体や断熱材が充填および圧入された場合、円柱状に膨張する。袋体31は、膨張時に例えば、直径が500~600[mm]程度の略円柱状となる。袋体31は、後述のように内部に断熱材が充填および圧入された状態で、立上り部2aの内側に沿って設置される。膨張前の袋体31は、帯状に潰れた状態となっている。袋体31の長手方向の長さは、例えば、地盤面Eの一辺の長さとなるように形成されている。一辺の長さは、複数の袋体31が長手方向に並べられた際に全長が地盤面Eの一辺の長さとなるように決定されていてもよい。
【0056】
膨張前の袋体31の長手方向の一辺には、例えば、長手方向に沿ってガイド棒Cが粘着テープT等を用いて取り付けられる。ガイド棒Cは、例えば、開口部32が設けられた袋体31の一辺側に取り付けられる。作業者は、例えば、床下換気口3の高さに合わせるように袋体31を適宜畳んで、膨張前の袋体31を床下換気口3からガイド棒Cと共に床下空間S内に、例えば矢印方向に沿って挿入する。そして、作業者は、袋体31を床下空間Sの外周に沿うように配置する。
【0057】
図6に示されるように、この配置工程において、作業者は、ガイド棒Cを立上り部2aの内側に沿わせながら移動させ、袋体31を立上り部2aの内側に並置させる。この時、作業者は、適宜異なる方向の床下換気口3から棒等を用いてガイド棒Cを押し込んだり手繰り寄せたりして袋体31の位置を調整する。
【0058】
袋体31は、直交する立上り部2aの内側に連続的に配置される。袋体31は、一つまたは複数のものを配置してもよいし、小梁が存在する場合は小梁の位置で分割して複数のものを配置してもよい。
【0059】
ガイド棒Cは、袋体31に取り付けられたまま床下空間Sの中に残置される。袋体31が配置された後、作業者は、床下換気口3から開口部32を介して袋体31の内部に送風装置(不図示)に接続されたホースH1を挿入する。その後、作業者は、送風装置を稼働させ、先ず空気のみを袋体31の内部に送風し、袋体31を膨張させる。
【0060】
この時、作業者は、ガイド棒Cを保持する等して袋体31が立上り部2aの内側から隔離しないように袋体31の位置を調整する。作業者は、棒の先に取り付けた360度の視界を撮像するカメラ等を用いて床下空間S内を撮影することで、袋体31が適正な位置に配置されているか否かを確認することもできる。
【0061】
次に、作業者は、流動性を有する断熱材を袋体の内部に流入させ、袋体を膨張させながら袋体31の内部に断熱材を充填および圧入する。流動性を有する断熱材とは、例えば、空気等の気体と断熱材とが混合された混合気体である。ここで、断熱材は、例えば、ホースH1の内部を流動するような大きさの綿状繊維の小塊が用いられる。綿状繊維には、例えば、セルロースファイバー、ウッドファイバー、綿、羊毛、グラスウール、ロックウール等が用いられる。断熱材には、綿状繊維だけでなく、チップ状、ビーズ状の発泡樹脂等が用いられてもよい。
【0062】
袋体31の内部に断熱材を充填する際において、気体に水分が混合する場合がある。従って、断熱材は結露や凍結を防止するために、吸湿性および防湿性を有するものが望ましい。断熱材に吸湿性および防湿性が少ないものが用いられる場合、断熱材にシリカゲルや珪藻土等の吸湿性および調湿性を有する材料を混在させてもよい。
【0063】
断熱材を充填する行程において、作業者は、ホースH1の先端を袋体31の内部の端部の領域にまで到達するように配置する。その後、作業者は、送風装置を稼働させ、ホースH1の先端から袋体31の内部に断熱材と気体との混合気体を送風して断熱材を袋体31の端部から充填および圧入しながらホースH1を引き抜く方向に移動する。これにより、袋体31の端部から断熱材を充填および圧入することができる。
【0064】
作業者は、断熱材を充填する際に、袋体31の開口部32は、完全に塞がずに隙間を空けて空気を排出させる。空気を排出させるために、袋体31には開口部32の他に、別途に空気の排出口が設けられていてもよい。排出口は、袋体31において開口部32の近傍に設けてもよいし、他の位置に設けられていてもよい。
【0065】
袋体31は、断熱材が充填および圧入されるに従って重量が増加する。断熱材の重量の増加と共に、袋体31の下部に位置する膨張したシート体20のうち、袋体31を載置している部分が潰れて空気が排出される。断熱材が充填および圧入された袋体31は、例えば、地盤面Eと床スラブ10の下面との間を塞ぐように突っ張って略円柱状に膨張する。袋体31は、例えば、地盤面Eと床スラブ10の下面との間に挟まれて必ずしも略円柱状に膨張しない場合がある。
【0066】
作業者は、袋体31の内部に断熱材を充填し終わった後、開口部32からホースH1を引き抜き、開口部32に粘着テープ等を張り付けて塞ぐ。上記工程により、略円柱状の断熱部材30が立上り部2aの内側に形成される。断熱部材30は、弾力性を有するため、地盤面Eに段差が生じていたり、上方に梁等の部材が存在したりしていても形状が馴染む。そして、断熱部材30は、膨張する過程で地盤面Eと床スラブ10の下面に圧着するため、特に固定手段を設けなくてもずれが生じにくくなる。
【0067】
断熱部材30によれば、断熱部材30と床スラブ10との間に隙間があったり、経時変化により隙間が生じたりしても、隙間の間隔が狭い場合、隙間においては空気が対流しにくくなるため、断熱性の低下が抑制される。このようにして断熱部材30を配置することにより、外部の空気に接している立上り部2aと建物の外周壁との間の隙間からの外気の進入を防止し、建物の気密性を向上させることにより、建物の漏気による熱損失が低減される。断熱部材30は、シート体20の上に設置されるため、地盤面E等の突起等による損傷等から保護される。また、固定手段を設けないことにより、断熱部材30の袋体31に破損が生じにくくなり、内部に充填された断熱材が床下空間Sに吹き出す可能性が低減される。
【0068】
図7に示されるように、直交する二辺の立上り部2aの内側に配置された2つの袋体31に順次、断熱材が充填および圧入され、断熱部材30が形成される。この時、後に断熱材が充填および圧入される袋体31は、先に断熱材が充填された方の袋体31の状態にあわせて膨張する。既存の建物の形状によっては、断熱部材30は、床下空間Sの外周辺に沿って完全に連続していない場合や、隙間の生じる場合もある。
【0069】
次に、作業者は、床下換気口3に床下空間Sの空気を排出するための換気装置40を設置する。換気装置40は、例えば、建物の外部から床下換気口3に設置される。換気装置40は、例えば、床下換気口3の開口の大きさにあわせて形成されている。換気装置40は、例えば、床下空間Sの空気を建物の外部に強制排気するファン41を備える。床下換気口3は、例えば、立上り部2aや小梁で区切られた1つの単位の床下空間Sに対して少なくとも1つ設置される。
【0070】
換気装置40は、例えば、洗面所やトイレ等の非採暖室の下方に設置された床下換気口3に設置されることが好ましい。また、換気装置40は、稼働中の運転音が気にならない場所に設けられることが好ましい。また、換気装置40は、既存の電源(給湯器用の電源等)の近くに設けられることが好ましい。
【0071】
換気装置40は、全ての床下換気口3に設置する必要はなく、換気装置40が設置されない他の床下換気口3には、外部から蓋45が設置されて開口が塞がれる。作業者は、蓋45の気密性を確保するために、例えば、居室内の床下点検口から床下空間Sに入り、蓋45の裏側から発泡樹脂等を用いて床下換気口3を塞いでもよい。また、作業者は、換気装置40もしくは蓋45の周辺の気密性を確保するために、換気装置40もしくは蓋45と床下換気口3との間の隙間に発泡樹脂等を充填してもよい。また、これらの作業は、床下点検口から床下空間Sに入るのが困難な場合は、建物の外部から行われてもよい。
【0072】
蓋45の設置後、換気装置40を稼働させる。換気装置40と床下空間Sとの間が断熱部材30で密閉されている場合、断熱部材30を変形させて気道を確保してもよいし、床スラブ10と断熱部材30との間にパイプなどを挟んで気道を確保してもよい。また、断熱部材30の施工時に床下換気口3の位置で断熱部材30が分割されるように袋体31を設置してもよい。
【0073】
換気装置40を稼働して床下空間Sの空気を建物の外部に排気すると、床下空間Sの気圧が低下すると共に、床スラブ10の隙間から建物の居室内の空気が床下空間Sに供給される。そうすると建物の居室内の気圧は、外部の気圧に比して低下するので、建物の換気口や隙間から外部の空気が居室内に供給される。このようにして換気装置40が稼働することにより、建物内の空気の換気が行われる。
【0074】
また、換気装置40の稼働により、建物内の空気を換気することの他に、居室内の空調された空気を床下空間に導入して床下の空気の温度を居室内の空気の温度に近づけることができる。
【0075】
即ち、換気装置40が稼働することにより、例えば、冬場においては床下空間Sに空調された居室内の空気が導入され、床下空間S内の空気が暖められる。床下空間S内の空気は、周囲が断熱部材30により断熱されているため、冷えにくくなる。これにより、床下空間S内の温度が上昇し、床スラブ10に床下空間Sの空気の熱が伝導して居室内の床面の温度が断熱部材30や換気装置40を設置していない状態に比して上昇し、床面を快適な温度に保つことができる。
【0076】
特に、上述のように洗面所やトイレ等の非採暖室の下部の床下換気口3に換気装置40が設置されるため、洗面所やトイレの床面の温度が快適に保たれる。また、換気装置40により居室内で空調された空気を床下空間Sに導入するため、湿気が床下空間Sに溜まることで発生する余剰な水分により床下空間が高湿度環境に長時間保持されることが防止される。上述したように、シート体20、断熱部材30、および換気装置40を設置する工程により、既存の建物の基礎の床下空間Sに断熱構造が施工される。
【0077】
上述したように、床下空間の断熱方法によれば、建物の外部から布基礎2に設けられた床下換気口3から断熱部材30を床下空間Sに設置するため、居室内に影響を与えずに床下空間の断熱の施工を行うことができる。即ち、床下空間の断熱方法によれば、建物の居住者に負担を与えず、居室内を汚すことが無く、居室内を養生する必要が無く、居住者が不在でも施工することが可能となる。また、断熱部材30は、袋体31の内部に断熱材が充填されているため、断熱材を入れ替える施工を行う際に回収が容易となる。
【0078】
本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、床下空間の断熱方法に用いられる断熱材には、シロアリ等の害虫を駆除するための防虫剤を混入させてもよい。また、夏場に換気装置40のファン41を逆回転させることにより、床下空間Sの地盤面Eの地熱により冷やされた空気を居室内に導入するようにしてもよい。また、上記床下空間の断熱方法は、既存の建物に施工する場合を例示したが新築の建物に適用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…基礎、2…布基礎、2a…立上り部、2b…フーチング部、3…床下換気口、3a…格子、10…床スラブ、20…シート体、21、22…シート、24…溶着部、25…気道、26…セル、27…吸気口、30…断熱部材、31…袋体、32…開口部、38…断熱材、40…換気装置、41…ファン、45…蓋、B…ブロワ、C…ガイド棒、E…地盤面、H、H1…ホース、S…床下空間、T…粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7