(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】2層構造を有するセラミック電気発熱体および電気はんだごて
(51)【国際特許分類】
B23K 3/03 20060101AFI20231019BHJP
H05B 3/18 20060101ALI20231019BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B23K3/03 B
H05B3/18
H05B3/14 C
(21)【出願番号】P 2022518166
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 CN2020114709
(87)【国際公開番号】W WO2021057507
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】201910912270.2
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518060538
【氏名又は名称】チョンチン リ-マーク テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING LE-MARK TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】15-1,Fengsheng Road,Jiulongpo District,Chongqing 401329 China
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ピーター
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0219641(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1738493(CN,A)
【文献】特開平08-268760(JP,A)
【文献】特開2015-153606(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106376107(CN,A)
【文献】特開2010-105029(JP,A)
【文献】特開2000-021556(JP,A)
【文献】特表2018-523908(JP,A)
【文献】中国実用新案第2728154(CN,Y)
【文献】国際公開第2016/114263(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00-3/86
B23K 3/00-3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気はんだごてであって、
内側導電層と外側絶縁層を備え、該導電層が該絶縁層で覆われており、セラミック電気発熱体の先端部および尾部において該導電層が該絶縁層から露出しているセラミック電気発熱体と、はんだごてのこて先とを備え、該はんだごてのこて先の一端にブラインドホールが設けられており、該ブラインドホールの内部に金属層が設けられて
おり、前記セラミック電気発熱体の先端部が、前記はんだごてのこて先に設けられたブラインドホールに挿入されて、前記金属層に溶接されて
おり、前記セラミック電気発熱体の尾部の導電層は金属ワイヤに対して軸方向に溶接されており、前記金属ワイヤの他端は金属電極に溶接されており、前記金属ワイヤの外壁は絶縁スリーブで覆われており、前記金属電極の外面は上側絶縁スリーブで覆われており、前記絶縁スリーブと上側絶縁スリーブの外壁は外側チューブで覆われており、金属スリーブは前記外側チューブの外壁とはんだごてのこて先の間に嵌合しており、前記金属ワイヤと金属スリーブは異なる材料から製造されている、電気はんだごて。
【請求項2】
前記導電層の尾部が、前記絶縁層の尾部と同一平面上にある、請求項1に記載の
電気はんだごて。
【請求項3】
前記導電層の尾部に、ブラインドホールまたは溝が設けられている、請求項1に記載の
電気はんだごて。
【請求項4】
前記導電層の尾部に、V字形のブラインドホールが設けられている、請求項2に記載の
電気はんだごて。
【請求項5】
前記導電層の製造材料が、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(200~700):(100~700):(600~1500):(40~80):(10~70):(5~50)の割合で調製される、
請求項の1~4のいずれか1項に記載の電気はんだごて。
【請求項6】
前記絶縁層の製造材料が、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(400~900):(50~200):(500~800):(40~90):(30~80):(5~60)の割合で調製される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電気はんだごて。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気はんだごてであって、セラミック電気発熱体の先端部に、導電層と絶縁層を覆う金属被膜が設けられている、電気はんだごて。
【請求項8】
前記金属被膜の材料が、銀銅合金とチタンである、請求項7に記載の
電気はんだごて。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電気発熱体に関し、より具体的には、オールセラミック構造を有する電気発熱体、およびこのような電気発熱体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性材料としてのセラミック電気発熱体は、点火機構の電気発熱体として使用されることがあり、帯電したセラミックが極高温に達することによって点火または発熱が起こる。セラミック電気発熱体は、エンジンの点火、ガスレンジの点火、給湯器の点火、赤外線の発生、酸素センサの加熱、はんだごてのこて先の加熱などの分野でも使用されることがある。セラミック材料からなる電気発熱体は、速い起動性、高耐熱性、耐腐食性、高強度、高耐用性などの利点を持つ。
【0003】
中国特許第100484337号(C)には、丸みを帯びた多層セラミック電気発熱体およびその製造方法が開示されている。より具体的には、このセラミック電気発熱体の抵抗層、絶縁層および導電層が、Si3N4、Al2O3、Y2O3およびMoSi2の4つの素材を含むことが開示されている。Si3N4は網目構造を形成するために使用され、Al2O3およびY2O3は、この網目構造を調節するために使用され、MoSi2は導電性発熱材料を形成するために使用されている。
【0004】
この特許文献に記載されている素材を用いて製造されたセラミック電気発熱体は、速い反応速度、高温への対応、短時間での所望の温度への到達、高耐用性、高収率な製造方法および低い製造コストを達成することができる。
【0005】
しかし、この特許文献に記載の製造材料を用いて製造された複合材料は、特定の使用状況下では、抵抗温度係数および突入電流が大きいことから電力コストが直接的に増加するという問題や、電流/抵抗が急激な速度で変化することから電力制御用アルゴリズムが複雑になるという問題が生じる。
【0006】
また、中国特許第105072718号(A)には、2層のセラミック電気発熱体であって、外側絶縁層で完全に覆われた内側抵抗層と、該セラミック電気発熱体の両端部に設けられた導電性被膜とを備えるセラミック電気発熱体が開示されている(
図1参照)。このような構造を有するセラミック電気発熱体は、絶縁層で完全に覆われており、体積が大きく、高温を扱う分野で使用することができる。しかし、このような構造を有するセラミック電気発熱体は、スペースが極めて限られている分野の多くでは使用できない。
【0007】
現在世界中で使用されている電気発熱体の中でも、スペインのJBC社により製造されている金属製発熱管は、直径が最も小さく、組み立てられた製品の直径は1.4mmである。JBC社の製品では、このような直径の小さい金属管内に金属製発熱ワイヤが配置されており、高密度の高伝熱性絶縁粉末によりケーシングパイプと金属製発熱ワイヤが隔てられている。このような製品の製造は難しく、製造コストも非常に高い。
【0008】
また、既存の電気はんだごてでは、磁器製の中空管に電気発熱ワイヤを並行に巻き付けることによって発熱部品が構成されている。このような既存の電気はんだごてでは、発熱部品の構造に制限があるため、電気はんだごての大きさをさらに小さくすることはできない。一方で、大型の既存の電気はんだごてでは、緻密な電子部品を正確に溶接することができず、近くの電子部品に容易に損傷を与えることから、緻密化が進んでいる電子部品の溶接には適さない。したがって、既存の電子部品の溶接に適するように電気はんだごてをさらに小型化できるように、小型化された発熱部品を提供することが当技術分野において求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、製造コストの削減が可能であり、容易な製造工程により製造することができ、小さな直径と信頼性の高い構造を有する2層のセラミック電気発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本開示は、2層のセラミック構造を有するセラミック電気発熱体であって、内側導電層と外側絶縁層を備え、該導電層が該絶縁層で覆われており、該セラミック電気発熱体の先端部および尾部において該導電層が該絶縁層から露出していることを特徴とするセラミック電気発熱体を提案する。このような構造とすることによって、容易な製造工程により低コストで製造でき、信頼性の高い構造を有する小型のオールセラミック電気発熱体を得ることができる。このような構造を有する電気発熱体であれば、その直径を1mm未満とすることができる。
【0011】
製造工程をさらに容易なものとするため、前記導電層の尾部は、前記絶縁層の尾部と同一平面上にある。
【0012】
操作の信頼性をさらに向上させるため、前記導電層の尾部に、ブラインドホールまたは溝が設けられている。
【0013】
前記導電層の尾部には、V字形のブラインドホールを設けることが好ましい。
【0014】
操作中の突入電流をさらに低下させるため、前記導電層の製造材料は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(200~700):(100~700):(600~1500):(40~80):(10~70):(5~50)の割合で調製される。
【0015】
突入電流をさらに低下させるため、前記導電層の製造材料は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(300~600):(200~500):(800~1200):(50~70):(30~60):(20~30)の割合で調製される。
【0016】
突入電流をさらに低下させるため、前記導電層の製造材料は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=500:450:900:50:45:25の割合で調製される。
【0017】
操作中の突入電流をさらに低下させるため、前記絶縁層の製造材料は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(400~900):(50~200):(500~800):(40~90):(30~80):(5~60)の割合で調製される。
【0018】
突入電流をさらに低下させるため、前記絶縁層の製造材料は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(600~700):(100~150):(600~700):(50~70):(50~60):(20~40)の割合で調製される。
【0019】
突入電流をさらに低下させるため、前記絶縁層の製造材料は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=550:120:650:55:60:40の割合で調製される。
【0020】
また、本開示は、セラミック電気発熱体であって、前記2層のセラミック構造を有する電気発熱体を備え、該電気発熱体の先端部に、導電層と絶縁層を覆う金属被膜が設けられていることを特徴とするセラミック電気発熱体を提供する。このような2層構造を有する小型のオールセラミック電気発熱体に金属被膜を設けない場合、極めて小さい発熱電気部品(例えば、電気はんだごてなど)に使用することができる。
【0021】
構造の信頼性と発熱性能の信頼性をさらに向上させるため、前記金属被膜は、銀銅合金とチタンで構成される。
【0022】
操作の信頼性をさらに向上させるため、前記セラミック電気発熱体の先端部は、金属筐体に挿入されて負極として機能し、該セラミック電気発熱体の尾部において露出している前記導電層は、電極に溶接されて正極として機能する。
【0023】
さらに、本開示は、小型の電気はんだごてを提供することを目的とする。
【0024】
本開示は、電気はんだごてであって、先端部が金属被膜で覆われたセラミック電気発熱体を備え、該セラミック電気発熱体の先端部が、はんだごてのこて先のブラインドホール内に挿入されて負極として機能し、該セラミック電気発熱体の尾部が中心電極に溶接されて正極として機能することを特徴とする電気はんだごてを提供する。
【0025】
また、本開示は、電気はんだごてであって、先端部が金属被膜で覆われていないセラミック電気発熱体と、はんだごてのこて先とを備え、該はんだごてのこて先の一端にブラインドホールが設けられており、該ブラインドホールの内部に金属層が設けられており、該金属層の材料が銀銅合金とチタンであり、前記セラミック電気発熱体の先端部が、前記はんだごてのこて先に設けられたブラインドホールに挿入されて、前記金属層に溶接されており、該セラミック電気発熱体の尾部が電極に溶接されていることを特徴とする電気はんだごてを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本開示による2層構造を有するセラミック電気発熱体は以下の利点を持つ。
【0027】
1.本開示による2層構造を有するセラミック電気発熱体は、オールセラミックの階層構造を採用しており、直径が1mm未満の小型の電気発熱体を得ることができる。最も小型の既存の電気発熱体と比べて、その直径は0.4mm以上も小さい。さらに、本開示による2層構造を有するオールセラミック電気発熱体は、最も小型の既存の電気発熱体と比べて、構造の信頼性が高く、容易な製造工程により低コストで製造でき、直径をさらに小さくすることができるという利点がある。
【0028】
2.本開示による2層構造を有するセラミック電気発熱体は、その先端部に金属被膜を設けない場合、熱電対として使用してもよい。このセラミック電気発熱体の尾部に溶接された中心電極は、熱電対として使用してもよい。また、この中心電極は、熱電対の一方の接点として使用してもよく、セラミック電気発熱体の先端部において導電層と接続された金属材料またはそこから延長された材料を、熱電対のもう一方の接点として使用してもよい。先端部の発熱領域の温度は正確に制御してもよく、セラミック電気発熱体の温度を検出してもよい。
【0029】
3.先端部に金属被膜が形成された本開示による電気発熱体は、800℃未満の小型の電気発熱体に適しており、起動が速いという利点を有していてもよい。スペースが限られている電気部品の多くに対しては、速い起動性や高い信頼性などの様々な利点を備えた電気発熱体が提供される。例えば、本開示による電気発熱体は、電気はんだごてとして使用してもよい。
【0030】
5.様々な抵抗温度係数(TCR)を得ることができ、TCR=-500といった数値だけでなく、TCR=5000という数値も達成可能なように、負の温度係数から正の温度係数まで任意の転換が可能であり、これと同時に、速い起動性、高耐熱性、耐腐食性、高強度などの、従来のセラミック材料の様々な性能の利点が確保されている。
【0031】
6.小さな突入電流:抵抗温度係数(TCR)が大きいと、突入電流は小さくなり、抵抗温度係数(TCR)が小さくても、突入電流は小さくなる。負のTCRまたは小さいTCRであると、起動電流が小さくなるため、電源および制御部品の制御にかかるコストを大幅に削減できる可能性がある。このようにすれば、実際の使用に際し、電子部品の制御に高いコストがかかり、その制御も難しいという従来のセラミック構造材が抱える問題を効率的に解決することができ、国際基準のセラミック構造体と同程度の性能指数を達成することができる。例えば、本開示による材料を使用することにより、過去に使用されていた100Wの電源を60Wの電源に置き換えて、電源容量の要件を緩和してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】既存の2層のセラミック電気発熱体の構造を示す。
【
図2】実施形態1の2層のセラミック電気発熱体(成形体)の構造を示す。
【
図3】実施形態2の2層のセラミック電気発熱体(成形体)の構造を示す。
【
図4】実施形態1の(金属筐体に挿入された)2層のセラミック電気発熱体の構造を示す。
【
図5】実施形態2の(金属筐体に挿入された)2層のセラミック電気発熱体の構造を示す。
【
図6】実施形態3の電気はんだごての構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に示す実施形態を参照することにより、本開示について説明するが、本開示は、以下に記載の実装形態に限定されない。以下の実施形態の要旨の範囲内の改良または置換も、本開示の請求項の保護範囲に含まれる。
【0034】
実施形態1:
図2および
図4に示すように、2層構造を有するセラミック電気発熱体が提供される。このセラミック電気発熱体は、内側導電層1と外側絶縁層2を備え、この導電層の外面は該絶縁層により覆われており、該セラミック電気発熱体の先端部3および尾部4において該導電層が該絶縁層から露出している。さらに、本実施形態のセラミック電気発熱体では、導電層の尾部と絶縁層の尾部は同一平面上にある。本実施形態の技術的解決法により、直径が1mm未満の2層構造を有するオールセラミック電気発熱体が得られる。
【0035】
本実施形態において、2層構造を有するセラミック電気発熱体は、熱電対として使用してもよい。セラミック電気発熱体の尾部にある導電層は、中心電極7に溶接される。この中心電極を熱電対として使用してもよい。また、この中心電極は、熱電対の一方の接点として使用してもよく、セラミック電気発熱体の先端部において導電層と接続された金属材料またはそこから延長された材料を、熱電対のもう一方の接点として使用してもよい。先端部の発熱領域の温度は正確に制御してもよく、これと同時に、セラミック電気発熱体の温度を検出してもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、2層構造を有する前記セラミック電気発熱体の、電気発熱体としての使用が提供される。より具体的には、このセラミック電気発熱体の先端部は、導電層と絶縁層を覆う金属被膜6で被覆されている。この金属被膜は、高耐熱性材料で構成されている。本実施形態において、金属被膜に使用される金属材料は、銀銅合金とチタンである。
【0037】
先端部に金属被膜が設けられ、尾部が中心電極7に溶接された本実施形態のセラミック電気発熱体は、顧客の要求に応えられるように、従来よりも小型の電気発熱体としてもよい。既存のセラミック電気発熱体と比較して、本発明による2層のオールセラミック電気発熱体では側方電極が省かれており、その先端部が負極と接続されており、尾部が正極と接続されていることから、その直径をより小さくすることができ、制御が容易となっている。したがって、本発明による2層のオールセラミック電気発熱体は、800℃未満の小型の電気発熱体に特に適しており、起動が速いという利点を持つことができる。
【0038】
例えば、セラミック電気発熱体の製造業者により、2層構造のオールセラミック電気発熱体(すなわち、セラミック電気発熱体の成形体)が単体で製造販売されることがある。この場合、このオールセラミック電気発熱体を購入した顧客の手によって、中心電極が溶接されることにより、このオールセラミック電気発熱体を熱電対として使用することができ、あるいは、先端部に金属被膜を形成することによって、このオールセラミック電気発熱体を電気発熱体として使用することもできる。
図2および
図3を参照されたい。
【0039】
また、セラミック電気発熱体の製造業者により、販売前にセラミック電気発熱体の成形体に金属被膜があらかじめ形成され、かつ/またはその尾部に中心電極が溶接されていることも当然ありうる。この場合、このようなセラミック電気発熱体を購入した顧客は、
図4に示すように、先端部に金属被膜が形成されたセラミック電気発熱体を金属筐体8に挿入するだけで使用することができる。
【0040】
あるいは、セラミック電気発熱体の製造業者により、セラミック電気発熱体の先端部に金属被膜が形成され、尾部に中心電極が溶接されるだけではなく、金属被膜が形成されたセラミック電気発熱体が金属筐体8に挿入されて、一体型の製品(例えば電気はんだごて)として販売される場合もある。
【0041】
本実施形態において、導電層の製造材料は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(200~700):(100~700):(600~1500):(40~80):(10~70):(5~50)の割合で調製される。絶縁層の製造材料は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(400~900):(50~200):(500~800):(40~90):(30~80):(5~60)の割合で調製される。
【0042】
また、導電層は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(200~700):(100~700):(600~1500):(40~80):(10~70):(5~50)の割合で調製された複合材料で製造してもよい。
【0043】
導電層の製造における各材料の割合は、前記とは異なる割合を選択してもよく、例えば、以下の割合であってもよいが、これらに限定されない。
【0044】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=200:100:600:40:10:5であってもよい。
【0045】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=400:300:800:60:30:15であってもよい。
【0046】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=600:500:1000:70:50:30であってもよい。
【0047】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=500:600:1300:50:60:45であってもよい。
【0048】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=700:700:1500:80:70:50であってもよい。
【0049】
また、絶縁層は、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=(400~900):(50~200):(500~800):(40~90):(30~80):(5~60)の割合で調製された複合材料を使用して製造してもよい。
【0050】
絶縁層の製造における各材料の割合は、前記とは異なる割合を選択してもよく、例えば、以下の割合であってもよいが、これらに限定されない。
【0051】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=400:50:500:40:30:5であってもよい。
【0052】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=500:100:600:60:70:35であってもよい。
【0053】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=700:150:700:50:40:30であってもよい。
【0054】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=800:90:650:70:40:50であってもよい。
【0055】
例えば、窒化ケイ素:炭化ケイ素:二ケイ化モリブデン:酸化イットリウム:酸化ランタン:酸化アルミニウム=900:200:800:90:80:60であってもよい。
【0056】
本実施形態の別の一実装形態として、導電層の製造材料および/または絶縁層の製造材料は、炭化タングステン(WC)をさらに含む。
【0057】
本実施形態の別の一実装形態として、導電層の製造材料および/または絶縁層の製造材料は、酸化イッテルビウム(Yb2O3)をさらに含む。
【0058】
また、本実施形態の2層のセラミック電気発熱体は、以下の工程を含む鋳込成形法により製造される。
【0059】
工程1:混合スラリーの調製:
窒化ケイ素、炭化ケイ素、二ケイ化モリブデン、酸化イットリウム、酸化ランタンおよび酸化アルミニウムの粉末を重量比に従って水と混合し、均一に攪拌して、容器に入れる。多層セラミック電気発熱体の様々な層に応じて様々な種類の混合スラリーを調製し、別々の容器に入れて準備しておく。
【0060】
本実施形態の一実装形態では、前記材料組成物と水の総重量比を1:(1~4)とする。
【0061】
工程2:鋳込成形:
両端が開放された内径0.8mmの鋳込成形型を鋳込成形機に配置し、セラミックスラリー混合物を鋳込成形機に投入して、鋳込成形を開始する。鋳込成形は、セラミック電気発熱体が備える層の数に応じて段階的に実施し、外側層から内側層へと連続的に行う。
【0062】
工程3:焼結:
水分を失って乾燥したセラミック生材を鋳込成形型から取り出し、焼結金型に入れる。次に、セラミック生材を入れた焼結金型を焼結炉に入れ、2000~5000Kpaの圧力下、1400℃で7~12時間焼結を行う。
【0063】
工程4:
セラミック焼結体を焼結金型から取り出し、外形研削を行ってセラミック電気発熱体の成形体を得る。
【0064】
本実施形態で得られる2層構造を有するセラミック電気発熱体の直径は0.8mmである。本実施形態のセラミック電気発熱体は、最も小型の既存の電気発熱体と比較して、サイズが小さいだけでなく、信頼性の高い構造を有し、容易な製造工程により低コストで製造することができ、直径をさらに小さくすることができる。
【0065】
本明細書に記載の方法により得られた2層構造を有するセラミック電気発熱体の成形体は、そのまま販売してもよく、あるいは、その先端部に金属被膜を形成し、尾部に中心電極を溶接してから販売してもよい。また、先端部に金属被膜が形成されたセラミック電気発熱体を金属筐体に挿入してから販売することもできる。
【0066】
本実施形態の複合材料を用いて製造されたセラミック電気発熱体を使用することによって、様々な抵抗温度係数(TCR)を得ることができ、TCR=-500といった数値だけでなく、TCR=5000という数値も達成可能なように、負の温度係数から正の温度係数まで任意の転換が可能であり、これと同時に、速い起動性、高耐熱性、耐腐食性、高強度などの、従来のセラミック材料の様々な性能の利点が確保されている。
【0067】
小さな突入電流:
抵抗温度係数(TCR)が大きいと、突入電流は小さくなり、抵抗温度係数(TCR)が小さくても、突入電流は小さくなる。負のTCRまたは小さいTCRであると、起動電流が小さくなるため、電源および制御部品の制御にかかるコストを大幅に削減できる可能性がある。このようにすれば、実際の使用に際し、電子部品の制御に高いコストがかかり、その制御も難しいという従来のセラミック構造材が抱える問題を効率的に解決することができ、国際基準のセラミック構造体と同程度の性能指数を達成することができる。
【0068】
実施形態2:
図3および
図5に示すように、本実施形態は、実施形態1に変更を加えたものである。
【0069】
本実施形態のセラミック電気発熱体は、内側導電層1と外側絶縁層2を備え、該導電層の外面が該絶縁層で覆われており、該セラミック電気発熱体の先端部3および尾部4において該導電層が該絶縁層から露出している。さらに、本実施形態のセラミック電気発熱体の導電層の尾部には、溝またはブラインドホールが設けられている。四角溝、円形溝、多角形溝、円形のブラインドホール、先細りのブラインドホール、V字形のブラインドホールなどを設けてもよい。本実施形態において、導電層の尾部には、V字形のブラインドホール5が設けられている。本実施形態による技術的解決法により、2層構造を有する直径1mm未満のオールセラミック電気発熱体を得てもよい。
【0070】
本実施形態による2層構造を有するオールセラミック電気発熱体では、導電層の尾部に設けられたV字形のブラインドホールに中心電極を溶接してもよい。この中心電極の一部がブラインドホールに挿入されて、残りの部分は電気発熱体から露出している。さらに、中心電極とV字形のブラインドホールの間の隙間には、はんだなどの別の材料が充填される。これによって、中心電極と電気発熱体の間の接続の安定性をさらに確保することができる。
【0071】
実際の操作において、中心電極が溶接された電気発熱体は、熱電対として使用してもよい。2層構造を有し、中心電極が溶接されたオールセラミック電気発熱体は、その先端部に金属被膜をさらに形成して電気発熱体として使用してもよい。金属被膜の形成は、導電層と絶縁層が同時に金属被膜で覆われるように先端部を金属被膜で被覆することによって行う。本実施形態の一実装形態において、金属材料は、銀銅合金とチタンからなる合金である。また、金属被膜が形成された電気発熱体の先端部を金属筐体に挿入して負極として使用し、金属筐体から露出している中心電極を正極として使用することも当然可能である。
【0072】
例えば、セラミック電気発熱体の製造業者により、2層構造のオールセラミック電気発熱体(すなわち、セラミック電気発熱体の成形体)が単体で製造販売されることがある。この場合、このオールセラミック電気発熱体を購入した顧客の手によって、中心電極が溶接されることにより、このオールセラミック電気発熱体を熱電対として使用することができ、あるいは、先端部に金属被膜を形成することによって、このオールセラミック電気発熱体を電気発熱体として使用することもできる。
図2および
図3を参照されたい。
【0073】
また、セラミック電気発熱体の製造業者により、販売前にセラミック電気発熱体の成形体に金属被膜があらかじめ形成され、かつ/またはその尾部に中心電極が溶接されていることも当然ありうる。この場合、このようなセラミック電気発熱体を購入した顧客は、
図4に示すように、先端部に金属被膜が形成されたセラミック電気発熱体を金属筐体に挿入するだけで使用することができる。
【0074】
あるいは、セラミック電気発熱体の製造業者により、セラミック電気発熱体の先端部に金属被膜が形成され、尾部に中心電極が溶接されるだけではなく、金属被膜が形成されたセラミック電気発熱体が金属筐体に挿入されて、一体型の製品(例えば電気はんだごて)として販売される場合もある。
【0075】
さらに、本実施形態の2層のセラミック電気発熱体の絶縁層および導電層の製造材料は、実施形態1と同様である。本実施形態における鋳込成形型の内径を1mmとすること以外は前記製造方法と同様にして製造し、鋳込成形により直径1mmのセラミック電気発熱体を得る。
【0076】
実施形態3:
図6および
図7に示すように、本実施形態では、実施形態1または実施形態2のセラミック電気発熱体を、電気はんだごてなどの小型の発熱部品に使用している。
【0077】
2層のセラミック電気発熱体の成形体が使用されており、その先端部に金属被膜が被覆され、この金属被膜の材料は銀銅合金とチタンからなる。
【0078】
さらに、本実施形態のセラミック電気発熱体は、一実装形態として、先端部に近い前方部と尾部に近い後方部に分割され、前方部の直径が後方部の直径よりも小さくなっている。
【0079】
この電気はんだごては、はんだごてのこて先11を備え、はんだごてのこて先の一端は作業端であり、他端にはブラインドホールが設けられている。セラミック電気発熱体の前方部10は、ブラインドホールに部分的に挿入されて、金属被膜が形成された先端部が、はんだごてのこて先に接している。セラミック電気発熱体の尾部の導電層は、金属ワイヤ12に軸方向に溶接されており、該金属ワイヤの他端は金属電極18に溶接されている。さらに、この熱電対ワイヤ(金属ワイヤ)の外壁は絶縁スリーブ13で覆われており、この金属ワイヤに近接する金属電極の外面は、上側絶縁スリーブ14で覆われている。このステンレス鋼電極の他端は、尾部チューブ15で覆われている。絶縁スリーブと上側絶縁スリーブの外壁は、外側チューブ16で覆われており、金属スリーブ17は、外側チューブの外壁とはんだごてのこて先の間に嵌合しており、金属スリーブの一端は、はんだごてのこて先を覆っており、他端は外側チューブを覆っている。
【0080】
金属ワイヤ12と金属スリーブ17を異なる材料から製造することにより、熱電対の2つの接点を形成し、電極および構造部材として機能させることにより、温度の測定を行えるようにしてもよい。
【0081】
本実施形態の別の一実装形態として、電気はんだごてのブラインドホールにセラミック電気発熱体を一体化させる。銀銅合金とチタンからなる金属材料をブラインドホールの内部に設け、金属被膜を形成していないセラミック電気発熱体の先端部を、このブラインドホールに直接挿入し、溶接して、セラミック電気発熱体の先端部を、銀銅合金とチタンからなる金属層に接触させる。
【0082】
本実施形態の電気はんだごてを使用することによって、緻密化が進んでいる電子部品の溶接産業に適合するように電気はんだごてをさらに小型化することができる。また、本実施形態の電気はんだごてにより、はんだ付け中に温度測定と温度制御を行うことが容易になる。