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特許7369905実装基板製造システムおよび実装基板製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】実装基板製造システムおよび実装基板製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20231020BHJP
   H05K 13/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
H05K13/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019127277
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021012979
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】西中 輝明
(72)【発明者】
【氏名】永冶 利彦
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 勝彦
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004129(JP,A)
【文献】特開2013-168539(JP,A)
【文献】特開2015-152943(JP,A)
【文献】特開2019-003460(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049872(WO,A1)
【文献】特開2003-110288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のランドにはんだ部を形成するはんだ部形成装置と前記はんだ部が形成された基板に部品を搭載する部品搭載装置とを含む複数の実装用設備が配置された実装基板製造ラインと、
前記実装基板製造ラインで実装基板の製造に使用された基板および部品の情報ならびに前記実装用設備で生じたエラーの情報を含むトレース情報を前記実装用設備から収集して蓄積するトレース情報収集手段と、
前記トレース情報収集手段で収集された前記エラーの情報を含むトレース情報の一部または全部を利用して、前記実装基板製造ラインにおける実装基板の製造品質が将来どのように変化するかの予測または前記実装用設備の状態が将来どのように変化するかの予測のうち少なくとも1つを行う人工知能部と、を備えた、実装基板製造システム。
【請求項2】
前記トレース情報収集手段で収集されたトレース情報の一部または全部を利用して、前記人工知能部の学習用のデータセットを作成する学習部を備えた、請求項1に記載の実装基板製造システム。
【請求項3】
前記学習部は、前記実装基板製造ラインの実装用設備で使用される生産用データに含まれる情報と前記トレース情報とを組み合わせて前記データセットを作成する、請求項2に記載の実装基板製造システム。
【請求項4】
前記人工知能部は、実装基板の製造品質の変動を予測する製造品質変動予測部である、請求項1から3のいずれかに記載の実装基板製造システム。
【請求項5】
前記人工知能部は、前記実装用設備の状態の変動を予測する設備状態変動予測部である、請求項1から3のいずれかに記載の実装基板製造システム。
【請求項6】
前記人工知能部は、前記実装用設備で使用される設備パラメータに関する分析もしくは設備パラメータを求める設備パラメータ管理部である、請求項1から3のいずれかに記載の実装基板製造システム。
【請求項7】
基板のランドにはんだ部を形成するはんだ部形成装置と前記はんだ部が形成された基板に部品を搭載する部品搭載装置とを含む複数の実装用設備が配置された実装基板製造ラインによって基板に部品を装着した実装基板を製造する実装基板製造方法であって、
前記実装基板製造ラインで実装基板の製造に使用された基板および部品の情報ならびに前記実装用設備で生じたエラーの情報を含むトレース情報を前記実装用設備から収集して蓄積するトレース情報収集工程と、
前記トレース情報収集工程において収集された前記エラーの情報を含むトレース情報の一部または全部を利用して、前記実装基板製造ラインにおける実装基板の製造品質が将来どのように変化するかの予測または前記実装用設備の状態が将来どのように変化するかの予測のうち少なくとも1つを人工知能部によって行う分析工程と、を含む、実装基板製造方法。
【請求項8】
前記トレース情報収集工程において収集されたトレース情報の一部または全部を利用して、前記人工知能部の学習用のデータセットを作成する学習工程を含む、請求項7に記載の実装基板製造方法。
【請求項9】
前記学習工程において、前記実装基板製造ラインの実装用設備で使用される生産用データに含まれる情報と前記トレース情報とを組み合わせて前記データセットを作成する、請求項8に記載の実装基板製造方法。
【請求項10】
前記分析工程において、前記人工知能部は実装基板の製造品質の変動を予測する、請求項7から9のいずれかに記載の実装基板製造方法。
【請求項11】
前記分析工程において、前記人工知能部は前記実装用設備の状態の変動を予測する、請求項7から9のいずれかに記載の実装基板製造方法。
【請求項12】
前記分析工程において、前記人工知能部は前記実装用設備で使用される設備パラメータに関する分析もしくは設備パラメータを求める設備パラメータ管理を行う、請求項7から9のいずれかに記載の実装基板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を実装した実装基板を製造する実装基板製造システムおよび実装基板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装した実装基板を製造する実装基板製造システムでは、基板のランドに部品接合用のはんだペーストを印刷する印刷工程、印刷工程後の基板に部品を搭載する部品搭載工程、部品搭載後の基板を加熱してはんだを溶融させて部品を基板のランドにはんだ接合するリフロー工程などの実装作業工程が実行される。これらの実装作業工程において使用された部品、基板、設備および各作業工程において適用されたマシンパラメータなどに関する生産用データは、生産された基板毎に収集されて当該基板の生産履歴を示すトレース情報として記憶されるこれらのトレース情報は、生産された製品について品質不良などの問題が発生した場合に参照される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-168539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの実装作業工程においては、微細な部品を対象として精細な動作を高精度・高効率で実行することが求められるため、各作業動作を良好な動作態様で実行するためのパラメータが部品の種類に応じて予め設定される。これらのパラメータの設定は経験に基づく熟練度などの専門性が求められる作業であるため、近年この作業を人工知能に実行させる試みが検討されている。人工知能を有効に機能させて、実装基板製造分野における実装用設備のパラメータの設定を適切に行い良好な製造品質を得るには、製造品質や設備状態の変動を予測して適切な対処が可能なように、予め高精度の学習用データを作成しておく必要がある。
【0005】
高精度の学習用データを作成するには極力多量のデータを取得することが求められるため、前述のトレース情報を学習用データを作成するためのデータソースとして用いることが考えられる。しかしながら前述の特許文献例を含め従来技術においては、トレース情報は生産された製品について品質不良などの問題が発生した場合に原因究明などの目的で参照される場合がほとんどで、トレース情報の有効利用がなされているとは言い難いものであった。
【0006】
そこで本発明は、トレース情報の有効利用を図るとともに、製造品質や設備状態の変動を予測して実装用設備のパラメータの設定を適切に行い良好な製造品質を得ることができる実装基板製造システムおよび実装基板製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実装基板製造システムは、基板のランドにはんだ部を形成するはんだ部形成装置と前記はんだ部が形成された基板に部品を搭載する部品搭載装置とを含む複数の実装用設備が配置された実装基板製造ラインと、前記実装基板製造ラインで実装基板の製造に使用された基板および部品の情報ならびに前記実装用設備で生じたエラーの情報を含むトレース情報を前記実装用設備から収集して蓄積するトレース情報収集手段と、前記トレース情報収集手段で収集された前記エラーの情報を含むトレース情報の一部または全部を利用して、前記実装基板製造ラインにおける実装基板の製造品質が将来どのように変化するかの予測または前記実装用設備の状態が将来どのように変化するかの予測のうち少なくとも1つを行う人工知能部と、を備えた。
【0008】
本発明の実装基板製造方法は、基板のランドにはんだ部を形成するはんだ部形成装置と前記はんだ部が形成された基板に部品を搭載する部品搭載装置とを含む複数の実装用設備が配置された実装基板製造ラインによって基板に部品を装着した実装基板を製造する実装基板製造方法であって、前記実装基板製造ラインで実装基板の製造に使用された基板および部品の情報ならびに前記実装用設備で生じたエラーの情報を含むトレース情報を前記実装用設備から収集して蓄積するトレース情報収集工程と、前記トレース情報収集工程において収集された前記エラーの情報を含むトレース情報の一部または全部を利用して、前記実装基板製造ラインにおける実装基板の製造品質が将来どのように変化するかの予測または前記実装用設備の状態が将来どのように変化するかの予測のうち少なくとも1つを人工知能部によって行う分析工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トレース情報の有効利用を図るとともに、製造品質や設備状態の変動を予測して実装用設備のパラメータの設定を適切に行い良好な製造品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態の実装基板製造システムの構成説明図
図2】本発明の一実施の形態の実装基板製造システムにより生産される実装基板の構成説明図
図3】本発明の一実施の形態の実装基板製造システムにおける部品供給の説明図
図4】本発明の一実施の形態の実装基板製造システムのスクリーン印刷工程において設定されるパラメータの説明図
図5】本発明の一実施の形態の実装基板製造システムの部品搭載工程において設定されるパラメータの説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に図1を参照して、本実施の形態の実装基板製造システム1の構成について説明する。実装基板製造システム1は、基板に部品を実装した実装基板を製造する機能を有しており、複数の実装用設備が連結して配置された実装基板製造ラインLを備えている。さらに実装基板製造システム1は、上位システム2および実装プロセス支援装置3を備えている。
【0012】
上位システム2は、生産作業に使用される基板や部品などのワークについてのライブラリデータである生産用データや、実装基板製造ラインLで実際に製造に使用された基板や部品などの構成部品情報、使用された設備に関する使用設備情報、各作業過程で実行された検査の結果を示す検査情報、実装基板の製造に適用されたプロセス条件などの諸情報を管理する機能を有する。実装プロセス支援装置3は、これら諸情報に基づき、ディープラーニングの手法で構築された学習モデルによる実装品質の分析やパラメータ設定等の支援を目的とした処理を行う機能を有している。
【0013】
実装基板製造ラインLについて説明する。実装基板製造ラインLは、上流側(図1において左側)から、基板供給装置M1、スクリーン印刷装置M2、はんだ部検査装置M3、部品搭載装置M4、M5、M6、搭載部品検査装置M7、リフロー装置M8、リフロー後検査装置M9、基板回収装置M10の各装置を直列に配置した構成となっている。各装置が備えた基板搬送コンベアは相互に連結され、作業対象の基板を上流側装置から下流側装置へ、または下流側装置から上流側装置へ逆順に搬送できるようになっている。すなわち実装基板製造ラインLには、はんだ部形成装置であるスクリーン印刷装置M2と部品搭載装置M4、M5、M6とを含む複数の実装用設備が配置された構成となっている。
【0014】
基板供給装置M1は部品実装作業前の基板を複数収納し、下流側装置へ供給する。これら複数の基板には、各基板を個別に特定する基板識別情報が付与されており、基板供給装置M1から供給された基板は基板識別情報読み取り装置14によって読み取り対象となる。これにより実装基板製造ラインLに供給される各基板を個別に特定することができる。
【0015】
スクリーン印刷装置M2ははんだ部形成装置であり、印刷ステージにセットされた基板のランドにはんだペーストを印刷してはんだ部を形成する印刷工程を実行する。これらのランドは基板の実装点に形成され、後工程にて部品がはんだ付けされる。はんだ部検査装置M3は、スクリーン印刷装置M2によって印刷による形成されたはんだ部の状態を検査する。
【0016】
部品搭載装置M4、M5、M6は、はんだ部検査装置M3ではんだ部の検査を終えた基板を受け取って、部品をはんだ部が形成された基板に装着する部品搭載工程を実行する。これらの部品搭載装置M4、M5、M6では、はんだ部が形成された基板をサポート部材で支持し、その状態で部品をはんだ部が形成された基板に装着するようになっている。
【0017】
搭載部品検査装置M7は、基板に搭載された部品の状態を検査する。リフロー装置M8は、部品が搭載された基板を加熱してはんだ部に含まれるはんだ成分を溶融するリフロー工程を実行する。リフロー後検査装置M9は、リフロー工程後の基板における部品のはんだ付け状態を検査する。リフロー後検査装置M9としては、二次元情報や三次元情報を取得可能な計測手段を有するものや、X線による計測手段を有するもの等が使用できる。基板回収装置M10は、リフロー後検査済みの基板を回収する。
【0018】
これらの各装置は通信ネットワーク4によって相互に接続されており、さらに通信ネットワーク4は情報管理装置6を介して上位システム2が備えた情報記憶部5と接続されている。また上位システム2は前述の生産用データを記憶した生産用データ記憶部9から基板設計情報9a、部品諸元情報9bを取り込むことが可能となっている。
【0019】
基板設計情報9aは実装基板を製造するための設計データである。図2は、基板21に部品22が実装された実装基板20の一例を示している。基板21には、位置の基準となる基準マークとしての認識マーク21a、識別用の二次元バーコード23が形成されている。この実装基板20に関する基板設計情報9aでは、実装基板20を構成する基板21のCADデータ、基板21に実装される部品22の実装点の座標、部品接合用のランドの配置・寸法・形状、基板21に形成される認識マーク21aに関する情報などが含まれる。
【0020】
部品諸元情報9bは、複数品種の実装基板20を生産するのに必要な部品22の個別情報を収集したライブラリデータである。すなわち実装基板20に実装される部品22の詳細を示す情報、例えば部品22の形状・寸法、さらに部品22に形成された接合用のリードや電極の数や配置に関する情報などが含まれる。
【0021】
情報記憶部5には、構成部品情報記憶部5a、使用設備情報記憶部5b、検査情報記憶部5c、プロセス情報記憶部5dが設けられている。構成部品情報記憶部5aは、トレーサビリティのための最も基本的な情報である構成部品情報を記憶する。構成部品情報には、少なくとも当該基板を特定するための情報(基板ID)とその基板に実装された部品を特定するための情報(部品ID、部品名、ロット番号、メーカ名など)、さらに基板に部品を搭載した日付や時刻に関する情報が含まれる。図2に示す例では、二次元バーコード23によって当該基板を特定するための基板IDが示されるようになっている。
【0022】
図3は、構成部品情報に含まれる部品22の供給形態を示している。ここに示す例では、部品22は部品供給テープ30に保持された状態で部品搭載装置M4、M5、M6に供給される。図3(a)に示すように、部品供給テープ30は、部品22を保持するベーステープ31の上面にカバーテープ32を貼着した構成となっている。
【0023】
ベーステープ31には部品22を収納する部品ポケット31aおよびベーステープ31をスプロケットによってテープ送りするための送り孔31bが形成されている。部品搭載装置M4、M5、M6では、部品供給テープ30はテープフィーダによってテープ送り方向(Y方向--矢印a)に送られる。そして搭載ヘッドによる部品取り出し位置において、カバーテープ32をベーステープ31から剥離することにより露呈された部品22が、部品ポケット31aから取り出される。
【0024】
図3(b)、図3(c)は、それぞれ部品供給テープ30の供給形態を示している。図3(b)に示す例では、部品供給テープ30は2枚の円板を対向させた供給リール33に卷回されて収納され、供給リール33に付された二次元バーコード34によって識別される。供給リール33をテープフィーダに装着した状態で、部品供給テープ30を供給リール33から引き出す(矢印b)ことにより、部品供給テープ30に保持された部品22が部品搭載装置M4、M5、M6に供給される。
【0025】
図3(c)に示す例では、部品供給テープ30は同心状に卷回したテープ卷回体30aの状態で矩形状の供給カセット35の内部に収納され、供給カセット35に付された二次元バーコード34によって識別される。供給カセット35をテープフィーダに装着した状態で、部品供給テープ30を供給カセット35から引き出す(矢印c)ことにより、部品供給テープ30に保持された部品22が部品搭載装置M4、M5、M6に供給される。
【0026】
使用設備情報記憶部5bは、使用設備情報、すなわち実装基板を製造する際に使用された生産設備やユニットを特定するための情報を記憶する。使用設備情報には、使用された生産設備のシリアル番号、設備製造メーカによって付与された製造番号、工場における識別情報などが含まれる。これらの使用設備情報は、基板IDや部品IDに紐付けて記憶される。
【0027】
図4は、使用設備が基板21のランド21bにはんだSを印刷してはんだ部を形成するスクリーン印刷装置M2である例を示している。スクリーン印刷装置M2では、ランド21bに合わせてパターン孔40aが形成され、上面にはんだSが供給されたスクリーンマスク40の下面に基板21を位置合わせする。そしてこの状態で、スキージ41をスクリーンマスク40の上面に摺接させて、印刷方向に移動させるスキージング動作が実行される。これにより、はんだSはパターン孔40aを介してランド21bに印刷される。スクリーン印刷装置M2の例では、使用設備情報としてスクリーン印刷装置M2の本体、スクリーンマスク40、スキージ41などを特定するための情報が記憶される。
【0028】
図5は、使用設備がはんだSが印刷された基板21のランド21bに部品22を搭載する部品搭載装置M4、M5、M6である例を示している。図5(a)に示すように、部品搭載装置M4、M5、M6は部品22を吸着保持して移動可能な部品保持ノズル50を備えている。部品22を保持した部品保持ノズル50を、はんだSが印刷されたランド21bに対して位置合わせして下降させることにより、図5(b)に示すように、部品22は基板21に搭載される。この例では、使用設備情報として部品搭載装置M4、M5、M6の本体、テープフィーダなどの部品供給ユニット、部品保持ノズル50や部品保持ノズル50が装着される搭載ヘッドなどを特定するための情報が記憶される。
【0029】
使用設備情報には、その設備が使用された日時、設備で生じたイベントの種類や日時を含めることができる。部品搭載装置M4、M5、M6のイベントとしては、部品切れ、部品供給テープ30の切り替わりタイミング、部品交換や部品供給において発生した部品のピックアップミス、各種のエラーなどがある。またスクリーン印刷装置M2のイベントとしては、スクリーンマスク40の下面を清掃するマスククリーニング、スクリーンマスク40にはんだSを供給するはんだ補給動作などがある。
【0030】
検査情報記憶部5cは、検査装置(はんだ部検査装置M3、搭載部品検査装置M7、リフロー後検査装置M9など)による検査結果に関する情報を記憶する。検査結果は、基板IDや部品IDに紐付けて記憶される。これにより、特定の基板や部品の検査結果を個別に参照することが可能となっている。
【0031】
プロセス情報記憶部5dは、実装基板を製造する際に適用されたプロセス条件、すなわち設備を作動させるためのパラメータなどを記憶する。記憶するプロセス条件としては、予め設定された設定値あるいは実際の動作時に計測によって得られた計測値のどちらを用いてもよい。プロセス条件の例は以下の通りである。
【0032】
まず図4に示すスクリーン印刷装置M2の場合では、パラメータとしてスキージ41をスクリーンマスク40に押しつけてはんだSをパターン孔40a内に押し込む圧力である印圧F、スキージ41がスクリーンマスク40となす角度であるアタック角θ、スキージ41が摺動する速度であるスキージ速度VSなどがある。そのほか、スキージング後に基板21をスクリーンマスク40から離隔させる版離れ動作に関するパラメータなどを含めるようにしてもよい。
【0033】
また図5に示す部品搭載装置M4、M5、M6の場合では、まず部品保持ノズル50の昇降動作に関するパラメータが含まれる。すなわち図5(a)に示す部品保持ノズル50の下降時における下降パラメータDP(下降速度v、下降加速度α)図5(b)に示す下降停止高さH、押圧荷重Wなどがある。
【0034】
また部品保持ノズル50の停止位置[P]に関するパラメータとして、実装データで示される実装点座標MPに加味される部品装着動作の補正値ΔP1やオフセット値ΔP2などがある。さらに、部品認識カメラの画像や部品保持ノズル50に保持された部品22の位置や状態を示す部品認識結果などの画像情報を含めるようにしてもよい。
【0035】
上述の構成部品情報、使用設備情報、検査情報、プロセス情報は、情報管理装置6によって通信ネットワーク4を介して実装基板製造ラインLの各装置から収集される。収集された情報は情報記憶部5の各記憶部に伝達されて記憶される。上記構成において、情報記憶部5および情報管理装置6は、実装基板製造ラインLで実装基板の製造に使用された基板および部品の情報を含むトレース情報を、実装用設備である実装基板製造ラインLの各装置から収集して蓄積するトレース情報収集手段を構成する。
【0036】
なお本実施の形態に示すトレース情報収集手段において、構成部品情報記憶部5aに記憶される情報は必須であるが、その他は必ずしも必須ではない。すなわち、使用設備情報記憶部5b、検査情報記憶部5c、プロセス情報記憶部5dに記憶される情報は、ユーザにより情報収集を行うか否かを設定することができる。これにより、ユーザが求める水準のトレース情報の収集が可能となっている。
【0037】
上位システム2には、検索用端末装置8が設けられており、収集したトレース情報について条件を入力して追跡したい基板IDを検索することが可能となっている。例えば、ある部品に製造上の不具合があった場合、その部品IDで検索を実行してその部品が搭載された実装基板20の基板IDを取得することが可能である。またその逆に、不具合等が検出された実装基板20の基板IDを入力して検索することにより、当該実装基板20に使用された部品を特定することもできる。
【0038】
次に実装プロセス支援装置3の構成および機能について説明する。実装プロセス支援装置3は、複数のAI(Artificial intelligence)よりなる人工知能部11と、情報記憶部5に蓄積された情報を使用して人工知能部11のAIに学習を行わせる機能を有する学習部12よりなる。本実施の形態の実装基板製造システム1では、人工知能部11は以下に示す3種類(製造品質変動予測部11a、設備状態変動予測部11b、設備パラメータ管理部11c)の機能をそれぞれ有する学習済みのAIを備えた構成となっている。
【0039】
学習部12は、各AIに適合する学習用のデータセットを準備して学習させる。学習部12による学習においては、トレース情報収集手段7によって収集されたトレース情報を取り込んでデータセットに含めるようにしている。さらに、必要に応じ生産用データ記憶部9から取り込んだ生産用データに含まれるランドの寸法や形状等もデータセットに含めることができる。これにより、実際に使用するワークや実装用設備特有の傾向を反映させた分析が可能になる。なお、人工知能部11を構成する各AIは、必ずしも学習部12で学習したものだけでなく、予め他の学習部で学習されたものを使用してもよい。
【0040】
製造品質変動予測部11aは、情報記憶部5に記憶された情報から品質変動の予測に役立つ情報を入力値として入力し、将来どのように変化するかを予測する。品質変動の予測に役立つ情報の例としては、検査装置(はんだ部検査装置M3、搭載部品検査装置M7、リフロー後検査装置M9)による検査結果、部品装着動作の補正値、部品装着動作において発生した吸着ミスなどのイベント情報など、さらには生産用データから基板や部品の寸法に関するデータを入力値とすることもできる。
【0041】
設備状態変動予測部11bは、情報記憶部5に記憶された情報から設備変動の予測に役立つ情報を入力値として入力し、将来どのように変化するかを予測する。設備変動の予測に役立つ情報の例としては、検査装置(はんだ部検査装置M3、搭載部品検査装置M7、リフロー後検査装置M9)による検査結果、部品装着動作の補正値、部品装着動作において発生した吸着ミスなどのイベント情報などが挙げられる。
【0042】
設備パラメータ管理部11cは、情報記憶部5に記憶された情報から設備パラメータの設定に役立つ情報を入力値として入力し、最適と考えられる設備パラメータを算出する。また現在の生産で使用中の設備パラメータを評価し、調整が必要か否かを判断する。設備パラメータの設定に役立つ情報の例としては、検査装置(はんだ部検査装置M3、搭載部品検査装置M7、リフロー後検査装置M9)による検査結果、部品装着動作の補正値、部品装着動作において発生した吸着ミスなどのイベント情報などが挙げられる。
【0043】
実装プロセス支援装置3は管理者用端末13を備えており、製造品質変動予測部11a、設備状態変動予測部11b、設備パラメータ管理部11cによって取得された分析結果は、管理者用端末13に表示される。管理者は、この表示に基づき、人工知能部11による分析結果の適否を判断する。これにより、人工知能部11による分析結果に人間の経験知を加味することができ、より適確な予測や評価を行うことが可能となっている。
【0044】
次に上述構成の実装基板製造システム1において、実装基板製造ラインLによって基板に部品を装着した実装基板を製造する実装基板製造方法について説明する。この実装基板製造方法では、実装基板の製造を実行する生産に先立って、予め実装基板製造ラインLで実装基板の製造に使用された基板および部品の情報を含むトレース情報を、実装用設備であるスクリーン印刷装置M2~リフロー後検査装置M9から収集して蓄積する(トレース情報収集工程)。
【0045】
次いでトレース情報収集工程において収集されたトレース情報の一部または全部を利用して、実装基板製造ラインLにおける実装基板の製造品質に関する分析または実装用設備であるスクリーン印刷装置M2~リフロー後検査装置M9に関する分析の少なくとも1つを人工知能部11によって行う(分析工程)。この分析工程では、トレース情報収集工程において収集されたトレース情報の一部または全部を利用して、人工知能部11の学習用のデータセットを作成する(学習工程)。
【0046】
本実施の形態では前述の分析工程において、人工知能部11が備えた製造品質変動予測部11a、設備状態変動予測部11bは、それぞれ実装基板の製造品質の変動、実装用設備の状態の変動を予測する。さらに人工知能部11が備えた設備パラメータ管理部11cは、実装用設備で使用される設備パラメータに関する分析もしくは設備パラメータを求める設備パラメータ管理を行う。これにより、製造品質や設備状態の変動を予測して実装用設備のパラメータの設定を適切に行い良好な製造品質を得ることができる。
【0047】
上記説明したように、本実施の形態に示す実装基板製造システムおよび実装基板製造方法では、前述構成の実装基板製造ラインLによって基板に部品を装着した実装基板を製造する実装基板製造において、実装基板製造ラインLで実装基板の製造に使用された基板21および部品22の情報を含むトレース情報を実装基板製造ラインLを構成する実装用設備から収集して蓄積するトレース情報収集手段としての情報記憶部5および情報管理装置6と、トレース情報収集手段で収集されたトレース情報の一部または全部を利用して、実装基板製造ラインLにおける実装基板の製造品質に関する分析または実装用設備に関する分析の少なくとも1つを行う人工知能部11とを備えた構成としている。
【0048】
そしてこの構成により、トレース情報収集手段で集めた情報をトレース以外の目的である製造品質や実装用設備の分析に使用することができる。これにより、トレース情報の有効利用を図るとともに、製造品質や設備状態の変動を予測して実装用設備のパラメータの設定を適切に行い良好な製造品質を得ることができる。さらに、トレース情報収集手段で製造品質や実装用設備の分析のためのデータも収集できるので、その分の設備投資を抑えることができるという効果を得る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の実装基板製造システムおよび実装基板製造方法は、トレース情報の有効利用を図るとともに、製造品質や設備状態の変動を予測して実装用設備のパラメータの設定を適切に行い良好な製造品質を得ることができるという効果を有し、基板に部品を実装した実装基板を製造する分野において有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 実装基板製造システム
2 上位システム
3 実装プロセス支援装置
7 トレース情報収集手段
9 生産用データ記憶部
11 人工知能部
20 実装基板
21 基板
22 部品
30 部品供給テープ
M2 スクリーン印刷装置
M4、M5、M6 部品搭載装置
図1
図2
図3
図4
図5