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  • 特許-スキージおよび印刷装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】スキージおよび印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/44 20060101AFI20231020BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20231020BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B41F15/44 B
B41F15/08 303E
H05K3/34 505D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019184874
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021059070
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】河内 満
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲矢
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-505273(JP,A)
【文献】特開平02-310310(JP,A)
【文献】特開2002-012916(JP,A)
【文献】特開平01-312028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/44
B41F 15/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の開口が設けられたマスク上を摺動して、基板上にペーストを印刷するスキージであって、
前記ペーストを前記開口に充填する金属のブレードと、
前記ブレードを前記マスクに対して傾斜させて保持する保持部と、を備え、
前記ブレードの一部には、前記ブレードの幅方向に沿って線状の軟化部が設けられ
前記ブレードが前記マスク上に接触してから、さらに前記ブレードを押し下げると、前記ブレードは前記軟化部を支点として屈曲し、前記ブレードの前記軟化部より下方が前記マスクとなす傾き角が、前記ブレードが前記保持部に保持された傾き角よりも小さくなる、スキージ。
【請求項2】
前記軟化部は、印刷の際、前記ペーストに接触する第1の主面と、
前記第1の主面と対向する第2の主面の少なくとも一方に設けられる、請求項1に記載のスキージ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスキージを備え、前記基板上にペーストを印刷する印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを介して基板にペーストを印刷する印刷装置に用いられるスキージおよびこのスキージが用いられた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置は、マスク上に供給された半田ペーストを、マスク上を摺動するスキージによってマスクに設けられた開口に充填させて基板上に印刷している。スキージは、マスクに接触して半田ペーストをマスクの開口に充填させる板状のブレードと、ブレードをマスクに対して傾斜させて保持する保持部とを備えている。印刷時は、ブレードに対してマスクの方向に押し込む適度な押し込み圧力を加えながらマスク上を摺動させることで、半田ペーストを基板に適切に印刷することができる。
【0003】
このようなブレードの材料として、ウレタンや金属が知られている。ウレタン製のブレードは柔軟性があるため、ブレードをマスクに押し込む量を増減することでブレードの下端部のしなり量を変更してマスクに対するブレードの傾き(アタック角)を変更することが可能であり、押し込み圧力の調整が容易である。一方で、ウレタン製のブレードは、繰り返し使用できる寿命が短いという欠点がある。金属製のブレードは寿命が長いという特徴があるが、一方で柔軟性に欠けるためしなり量の変化は小さく、アタック角を小さくして充填力を増すことが困難という欠点がある。そこで、特許文献1では、金属製ブレードの欠点を補うために金属製ブレードの下端の一部に厚みを薄くした帯状の凹部を形成し、押し込み圧力により凹部を湾曲させることでブレードの下端部を印刷に適した角度に傾斜させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-45839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ブレードの寿命が凹部の厚さによって制限されてしまうため、凹部の湾曲を大きくするために凹部の厚さを薄くすると寿命が短くなってしまうという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、繰り返し使用できる寿命が長くて基板に半田ペーストを適切に印刷することができるスキージおよび印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスキージは、所定の開口が設けられたマスク上を摺動して、基板上にペーストを印刷するスキージであって、前記ペーストを前記開口に充填する金属のブレードと、前記ブレードを前記マスクに対して傾斜させて保持する保持部と、を備え、前記ブレードの一部には、前記ブレードの幅方向に沿って線状の軟化部が設けられ、前記ブレードが前記マスク上に接触してから、さらに前記ブレードを押し下げると、前記ブレードは前記軟化部を支点として屈曲し、前記ブレードの前記軟化部より下方が前記マスクとなす傾き角が、前記ブレードが前記保持部に保持された傾き角よりも小さくなる
【0008】
本発明の印刷装置は、請求項1または2に記載のスキージを備え、前記基板上にペーストを印刷する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繰り返し使用できる寿命が長くて基板に半田ペーストを適切に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態の印刷装置の構造説明図
図2】本発明の一実施の形態の印刷装置の構造を示す正面図
図3】(a)(b)本発明の一実施の形態のスキージの構造説明図
図4】本発明の一実施の形態のスキージの構造を示す正面図
図5】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態の印刷装置による印刷工程の説明図
図6】(a)(b)本発明の一実施の形態の第2のスキージの構造と機能を説明する図
図7】(a)(b)本発明の一実施の形態の第3のスキージの構造と機能を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、印刷装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。以下、基板の搬送方向(図2における左右方向)をX方向、X方向と水平面内において直交する方向(図1における左右方向)をY方向、水平面に直交する方向(図1における上下方向)をZ方向と定義する。
【0012】
まず図1図2を参照して、印刷装置1の構造を説明する。印刷装置1の基台上には、基板搬送機構2がX方向に設置されている。印刷装置1は、制御部Cを備えている。基板搬送機構2は制御部Cによって制御され、上流側から搬入された基板3をX方向へ搬送し、所定のクランプ位置で基板3を保持して昇降させる。また、基板搬送機構2は、印刷作業が完了した基板3を下流側に搬出する。基板3は、半田ペースト、フラックス、導電性接着剤、銀ペースト、インク等のペーストPが転写される被印刷物である。
【0013】
クランプ位置に保持された基板3の上方には、基板3の上面に形成された電極3a(図5参照)に対応する位置に設けられた複数の開口4a(図5参照)を有するマスク4が設置されている。マスク4の上方には、印刷ヘッド移動機構5によってY方向に移動する印刷ヘッド6が備えられている。印刷ヘッド移動機構5は、Y方向に延伸する送りねじ7と、送りねじ7を回転駆動するモータ8を備えている。印刷ヘッド6は、送りねじ7のネジ山と係合するネジ山を有して送りねじ7の回転によってY方向に移動する移動ベース9を備えている。モータ8は制御部Cによって制御され、送りねじ7を正方向または逆方向に回転駆動することにより、移動ベース9を備える印刷ヘッド6がY方向に往復移動する。
【0014】
図1図2において、印刷ヘッド6は、移動ベース9の上部にY方向に並ぶ2つの昇降シリンダ10を備えている。昇降シリンダ10は、それぞれ移動ベース9を貫いて下方に延伸している昇降軸11を昇降させる。昇降軸11の下端には、それぞれ保持部12が設けられている。保持部12は、それぞれブレード13をマスク4に対して傾斜させて保持している。各ブレード13は、それぞれマスク上を摺動する方向に傾斜している。
【0015】
2つの昇降シリンダ10は、制御部Cによって制御されている。ペーストPを基板3に印刷する際は、制御部Cは昇降シリンダ10をそれぞれ制御して、一方の保持部12を下降させてブレード13をマスク4上に当接させる(図1参照)。その後、制御部Cは印刷ヘッド移動機構5を制御して、印刷ヘッド6をマスク4に当接したブレード13が傾斜する方向に移動させる。これにより、ブレード13はマスク4上を摺動してペーストPをマスク4の開口4aに充填させる(図5(a)参照)。
【0016】
このように、保持部12とブレード13は、所定の開口4aが設けられたマスク4上を摺動して、基板3上にペーストPを印刷するスキージ14を構成する。その後、基板3をマスク4から離反させることで基板3の電極3aにペーストPが転写(印刷)される(図5(c)参照)。
【0017】
次に図3~5を参照して、スキージ14の詳細な構造について説明する。図3(a)、図3(b)はスキージ14の側面図であり、図3(b)はスキージ14の下端付近の拡大図である。図4は、後述するブレード13の第2の主面13b側から見たスキージ14の正面図である。図5(a)は、ブレード13がマスク4の開口4aにペーストPを充填している様子を模式的に表している。
【0018】
図3図4において、ブレード13は金属材料(例えばステンレス)から構成された板材であり、マスク4に対して第1の傾き角θ1(θ1<90°)だけ傾けた状態で上端側を保持部12に固定されている。印刷時には、スキージ14はブレード13が有する2つの面のうち、マスク4に向いた第1の主面13aの方向(印刷方向)に移動する(図5(a)の矢印b)。すなわち、印刷の際、金属の板材であるブレード13が有する2つの面のうち、マスク4に向いた第1の主面13aがペーストPに接触して、ペーストPを印刷方向に移動させる。
【0019】
ブレード13が有する2つの面のうち第1の主面13aに対向する第2の主面13bは、上方を向いておりペーストPを移動させない。第2の主面13bには、ブレード13がマスク4に接触する接触端部13c(ブレード13の下端)から保持部12の間に、第2の主面13bからブレード13の内部の途中まで軟化部13dが形成されている。すなわち、保持部12に保持されずに露出しているブレード13の第2の主面13bの一部には、軟化部13dが形成されている。
【0020】
図4において、軟化部13dは、接触端部13cと平行に、ブレード13の左右の側面13eまでブレード13の幅方向(X方向)に沿って第2の主面13bに形成されている。軟化部13dは、ブレード13の第2の主面13bをレーザ光や電磁加熱装置によって線状に加熱することで形成される。金属であるブレード13を加熱することで、軟化部13dの性質が変化して硬度が加熱前より低くなっている。すなわち、軟化部13dは、ブレード13の剛性が他の部分より低くなった低剛性部である。このように、ブレード13の一部には、ブレード13の幅方向に沿って線状の軟化部13dが設けられている。
【0021】
図5(a)に示すように、印刷時にスキージ14を下降させてブレード13の接触端部13cがマスク4に接触してから、さらにスキージ14を押し下げると(矢印a)、ブレード13は低剛性部である軟化部13dを支点として屈曲する。この時の、ブレード13の軟化部13dより下方の下端部13fがマスク4と成す第2の傾き角θ2がアタック角であり、ブレード13が保持部12に保持された第1の傾き角θ1より小さい(θ2<θ1)。そして、第1の傾き角θ1から第2の傾き角θ2を引いた残りの第3の傾き角θ3が、軟化部13dを支点としてブレード13が屈曲する角度である。
【0022】
次に図5(a)~図5(c)を参照して、スキージ14を使用して基板3上にペーストPを印刷する工程について説明する。図5(a)において、スキージ14は、ブレード13が軟化部13dを支点として屈折して所定の印圧がマスクに加わる状態まで押し下げられる(矢印a)。所定の印圧になると、スキージ14は第1の主面13aの方向に移動する(矢印b)。これにより、マスク4に当接したブレード13はペーストPを掻き寄せながらマスク4上を摺動する。この過程で屈曲したブレード13の下端部13fが開口4aを通過するとき、その開口4aにペーストPが押し込まれて充填される。
【0023】
1枚の基板3に対するマスク4上の移動が終了すると、スキージ14は元の高さまで上昇する。スキージ14が上昇してブレード13がマスク4から離れると、ブレード13はブレード13の有する復元力により図3(a)に示す屈曲していない状態に戻る。図5(b)は、スキージ14の摺動が終了し、マスク4の各開口4aにペーストPが充填されている状態を示している。図5(c)において、次いで基板3を下降させてマスク4から離反させると(矢印c)、基板3の電極3a上にペーストPが転写(印刷)される。
【0024】
上記説明したように、スキージ14は、ペーストPを開口4aに充填する金属のブレード13と、ブレード13をマスク4に対して傾斜させて保持する保持部12と、を備えている。そして、ブレード13の一部には、ブレード13の幅方向に沿って線状の軟化部13dが設けられている。これによって、基板3に半田ペースト(ペーストP)を適切に印刷することができ、スキージ14を繰り返し使用できる寿命も長くすることができる。
【0025】
なお、ブレード13の接触端部13cから軟化部13dまでの長さ(すなわち、ブレード13の下端部13fの長さ)、軟化部13dの形状(大きさ、深さなど)は、印刷時の印圧、ペーストPの粘度、マスク4の開口4aの形状などを考慮して設計される。
【0026】
次に図6を参照して、印刷装置1に装着される第2のスキージ15の構造について説明する。図6(a)、図6(b)は第2のスキージ15の側面図であり、図6(b)は第2のスキージ15の下端付近の拡大図である。第2のスキージ15は、図3~5に示すスキージ14と保持部12は同じで、ブレード16の構造が異なっている。以下、同じ構造には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
図6(a)、図6(b)において、ブレード16は、印刷の際にペーストPに接触する第1の主面16aと、第1の主面16aと対向する第2の主面16bを有している。第2のスキージ15のブレード16には、線状の軟化部16cが第1の主面16aにブレード16の幅方向に沿って形成されている。軟化部16cは、第1の主面16aからブレード16の内部の途中まで形成されている。これにより、ブレード13と同様に、印刷時にブレード16は低剛性部である軟化部16cを支点として屈曲する。
【0028】
次に図7を参照して、印刷装置1に装着される第3のスキージ17の構造について説明する。図7(a)、図7(b)は第3のスキージ17の側面図であり、図7(b)は第3のスキージ17の下端付近の拡大図である。第3のスキージ17は、図3~5に示すスキージ14と保持部12は同じで、ブレード18の構造が異なっている。
【0029】
図7(a)、図7(b)において、ブレード18は、印刷の際にペーストPに接触する第1の主面18aと、第1の主面18aと対向する第2の主面18bを有している。第3のスキージ17のブレード18は、線状の軟化部18cがブレード18の幅方向に沿って形成されている。軟化部18cは、第1の主面18aから第2の主面18bに至るまでのブレード18の内部に形成されている。これにより、ブレード13と同様に、印刷時にブレード18は低剛性部である軟化部18cを支点として屈曲する。
【0030】
このように、印刷装置1には、スキージ14、第2のスキージ15、第3のスキージ17のいずれかが装着され、基板3上にペーストPを印刷する。ブレード13、16、18には、印刷の際、ペーストPに接触する第1の主面13a、16a、18aと、第1の主面13a、16a、18aと対向する第2の主面13b、16b、18bの少なくとも一方に、軟化部13d、16c、18cが設けられている。これによって、基板3に半田ペースト(ペーストP)を適切に印刷することができ、スキージを繰り返し使用できる寿命も長くすることができる。
【0031】
なお、上記は印刷装置1がペーストPを印刷する被印刷物として、部品が実装されるプリント基板などの基板3を例に説明したが、被印刷物は基板3に限定されることはない。例えば、被印刷物はインクなどのペーストPが印刷されるTシャツなどの衣類であっても、ガラス、陶磁器などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のスキージおよび印刷装置は、繰り返し使用できる寿命が長くて基板に半田ペーストを適切に印刷することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 印刷装置
3 基板
4 マスク
4a 開口
12 保持部
13、16、18 ブレード
13a、16a、18a 第1の主面
13b、16b、18b 第2の主面
13d、16c、18c 軟化部
14 スキージ
15 第2のスキージ(スキージ)
17 第3のスキージ(スキージ)
P ペースト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7