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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/02 20060101AFI20231020BHJP
   F25D 17/08 20060101ALI20231020BHJP
   H05B 6/54 20060101ALI20231020BHJP
   F24C 7/04 20210101ALI20231020BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
F25D11/02 L
F25D17/08 310
H05B6/54
F24C7/04 301Z
A23L3/365 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018199433
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020067217
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】南部 桂
(72)【発明者】
【氏名】森 貴代志
(72)【発明者】
【氏名】平井 剛樹
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0071234(US,A1)
【文献】特開平05-001880(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068127(WO,A1)
【文献】特開2018-004228(JP,A)
【文献】特開2005-351543(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108072230(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
H05B 6/54
F24C 7/04
A23L 3/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を冷却および加熱可能な冷却/加熱室を備える冷蔵庫であって、
前記冷却/加熱室内を加熱して前記食品を加熱する加熱部と、
前記食品の加熱終了後、加熱済み食品が前記冷却/加熱室内に存在するか否かを検出する加熱済み食品検出部と、を有し、
前記加熱部は、対向するように配置された発振電極および対向電極と、前記発振電極と前記対向電極との間に交流電圧を印加してこれらの間の食品を加熱する発振部とを備え、
前記加熱済み食品検出部の検出結果に基づいて、前記冷却/加熱室の冷却運転の冷却温度を変更し、
前記冷却/加熱室が、加熱対象の食品が配置される空間である加熱ゾーンと、前記加熱ゾーンに対して連続する空間であって非加熱対象の食品が配置される非加熱ゾーンとに区分され、
前記発振電極と前記対向電極が、前記冷却/加熱室の加熱ゾーンを挟んで対向するように配置され、
前記加熱済み食品検出部によって前記加熱済み食品が検出されない場合には、前記冷却/加熱室の冷却運転の冷却温度を第1冷却保存温度で維持する通常運転を実行し、
前記加熱済み食品検出部によって前記加熱済み食品が検出された場合には、前記冷却/加熱室を前記第1冷却保存温度で維持しつつ、前記加熱部によって前記加熱済み食品を加熱することにより、前記加熱済み食品を前記第1冷却保存温度に比べて高い第2冷却保存温度で維持する、冷蔵庫。
【請求項2】
加熱終了から所定の時間経過すると、前記第2冷却保存温度で維持する第2冷却保存運転から前記通常運転に切り替わる、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記加熱済み食品検出部が、前記発振部に戻る反射波を検出する反射波検出部と、前記発振部から出力された入射波に対する反射波の割合である反射率を算出する反射率算出部とを含み、
前記加熱済み食品検出部は、前記反射率が、前記発振電極と前記対向電極との間に前記加熱済み食品が存在しないときの値に比べて小さい値である第1のしきい値に比べて小さい場合に、前記加熱済み食品を検出する、請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記冷却/加熱室を開閉する扉と、
前記扉の開閉を検出する扉センサと、を有し、
前記加熱済み食品検出部は、加熱終了後に前記扉開閉センサが開扉を検出しない場合に、前記加熱済み食品を検出する、請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記加熱部が前記食品を加熱している間、前記反射率が上昇して前記第1のしきい値に比べて小さい値である第2のしきい値に達すると、前記発振電極と前記対向電極との間のインピーダンス整合をとる整合部を有し、
前記インピーダンス整合によって前記反射率が前記第2のしきい値に比べて小さい値である第3のしきい値を超えて低下しない場合、当該インピーダンス整合の実行タイミングを前記食品の加熱終了タイミングとする、請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
ユーザの加熱の開始指示を受けるとともに前記ユーザが加熱時間を入力するための操作部を有し、
前記開始指示を受けたタイミングから前記加熱時間が経過したタイミングを前記食品の加熱終了タイミングとする、請求項1から3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記第1冷却保存温度は、冷凍温度である、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記第2冷却保存温度は、微凍結温度である、請求項1に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を解凍可能な冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、冷凍状態の食品を解凍可能な冷凍庫が開示されている。特許文献1の冷凍庫は、解凍対象の食品が収容され、その収容された食品を高周波加熱(誘電加熱)する高周波加熱室を有する。高周波加熱室は冷凍室の冷気を導入可能に構成されている。これにより、解凍に使用しない場合、高周波加熱室は冷凍室として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-147919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された冷凍庫では、解凍済み食品がそのまま高周波加熱室に保存される場合、ユーザが温度調節スイッチを操作して高周波加熱室を保存に適した温度、例えば冷蔵温度に設定する必要がある。そのため、ユーザが食品の解凍を忘れている場合には、温度調節スイッチが操作されず、適温ではない高周波加熱室に解凍済み食品が放置される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、食品を冷却および加熱可能な冷却/加熱室を備える冷蔵庫において、冷却/加熱室内で加熱されてそのまま放置された加熱済み食品を適切に保存することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
食品を冷却および加熱可能な冷却/加熱室を備える冷蔵庫であって、
前記冷却/加熱室内を加熱して前記食品を加熱する加熱部と、
前記食品の加熱終了後、加熱済み食品が前記冷却/加熱室内に存在するか否かを検出する加熱済み食品検出部と、を有し、
前記加熱済み食品検出部の検出結果に基づいて、前記冷却/加熱室の冷却運転の冷却温度を変更する、冷蔵庫が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、食品を冷却および加熱可能な冷却/加熱室を備える冷蔵庫において、冷却/加熱室内で加熱されてそのまま放置された加熱済み食品を適切に保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る一実施の形態の冷蔵庫の縦断面図
図2】冷蔵庫の制御系を示すブロック図
図3】冷凍/解凍室の拡大断面図
図4】冷気の流れを示す冷凍/解凍室の拡大断面図
図5】加熱モジュールの断面図
図6】拡大モジュールを組み込む前の冷蔵庫の本体の一部分の断面図
図7】加熱モジュールの分解断面図
図8図5のA-A線に沿った加熱モジュールの断面図
図9】加熱モジュールの加熱部の制御系を示すブロック図
図10】食品解凍中の反射率の変化を示す図
図11】通常運転のタイミングチャート図
図12】急冷運転のタイミングチャート図
図13】ゾーン解凍運転のタイミングチャート図
図14】全ゾーン解凍運転のタイミングチャート図
図15】ゾーン解凍運転(全ゾーン解凍運転)のフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様に係る冷蔵庫は、食品を冷却および加熱可能な冷却/加熱室を備える冷蔵庫であって、前記冷却/加熱室内を加熱して前記食品を加熱する加熱部と、前記食品の加熱終了後、加熱済み食品が前記冷却/加熱室内に存在するか否かを検出する加熱済み食品検出部と、を有し、前記加熱済み食品検出部の検出結果に基づいて、前記冷却/加熱室の冷却運転の冷却温度を変更する。
【0010】
このような態様によれば、食品を冷却および加熱可能な冷却/加熱室を備える冷蔵庫において、冷却/加熱室内で加熱されてそのまま放置された加熱済み食品を適切に保存することができる。
【0011】
例えば、前記加熱済み食品検出部によって前記加熱済み食品が検出されない場合には、前記冷却/加熱室の冷却運転の冷却温度を第1冷却保存温度で維持する通常運転を実行してもよい。
【0012】
例えば、前記加熱済み食品検出部によって前記加熱済み食品が検出された場合には、前記冷却/加熱室の冷却運転の冷却温度を、前記第1冷却保存温度に比べて高い第2冷却保存温度で維持する第2冷却保存運転を実行してもよい。
【0013】
例えば、加熱終了から所定の時間経過すると、前記第2冷却保存運転から前記通常運転に切り替わってもよい。これにより、加熱済み食品が第2冷却保存温度で長期間保存されることが抑制される。
【0014】
例えば、前記冷却/加熱室が、加熱対象の食品が配置される空間である加熱ゾーンと、前記加熱ゾーンに対して連続する空間であって非加熱対象の食品が配置される非加熱ゾーンとに区分される場合、前記加熱部は、前記冷却/加熱室の加熱ゾーンを挟んで対向するように配置された発振電極および対向電極と、前記発振電極と前記対向電極との間に交流電圧を印加してこれらの間の食品を加熱する発振部とを含んでもよい。この場合、前記加熱済み食品検出部によって前記加熱済み食品が検出されたときには、前記冷却/加熱室を前記第1冷却保存温度で維持しつつ、前記加熱部によって前記加熱済み食品を加熱することにより、前記加熱済み食品を前記第2冷却保存温度で維持する。これにより、非加熱ゾーンの食品を第1冷却保存温度で保存しつつ、加熱済み食品を第2冷却保存温度にすることができる。
【0015】
例えば、前記加熱済み食品検出部が、前記発振部に戻る反射波を検出する反射波検出部と、前記発振部から出力された入射波に対する反射波の割合である反射率を算出する反射率算出部とを含み、前記加熱済み食品検出部は、前記反射率が、前記発振電極と前記対向電極との間に前記加熱済み食品が存在しないときの値に比べて小さい値である第1のしきい値に比べて小さい場合に、前記加熱済み食品を検出してもよい。これにより、加熱済み食品を検出することができる。
【0016】
例えば、冷蔵庫が、前記冷却/加熱室を開閉する扉と、前記扉の開閉を検出する扉センサとを有し、前記加熱済み食品検出部は、解凍終了後に前記扉開閉センサが開扉を検出しない場合に、前記加熱済み食品を検出してもよい。これにより、加熱済み食品を検出することができる。
【0017】
例えば、冷蔵庫が、前記加熱部が前記食品を加熱している間、前記反射率が上昇して前記第1のしきい値に比べて小さい値である第2のしきい値に達すると、前記発振電極と前記対向電極との間のインピーダンス整合をとる整合部を有し、前記インピーダンス整合によって前記反射率が前記第2のしきい値に比べて小さい値である第3のしきい値を超えて低下しない場合、当該インピーダンス整合の実行タイミングを前記食品の加熱終了タイミングとしてもよい。これにより、食品の加熱終了後に、第2冷却保存運転を開始することができる。
【0018】
例えば、冷蔵庫が、ユーザの加熱の開始指示を受けるとともに前記ユーザが加熱時間を入力するための操作部を有し、前記開始指示を受けたタイミングから前記加熱時間が経過したタイミングを前記食品の加熱終了タイミングとしてもよい。これにより、食品の加熱終了後に、第2冷却保存運転を開始することができる。
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係る冷蔵庫について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態の冷蔵庫の縦断面図である。図1において、左側が冷蔵庫の正面側であり、右側が冷蔵庫の背面側である。また、図2は、冷蔵庫の制御系を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、冷蔵庫10は、本体12を備える。本体12は、金属材料から作製されて冷蔵庫10の外側表面を構成する外側筐体14と、例えばABSなどの樹脂材料から作製されて冷蔵庫10の内側表面を構成する内側筐体16と、外側筐体14と内側筐体16との間の空間に充填された、例えば硬質発泡ウレタンなどの断熱材18とから構成されている。
【0021】
冷蔵庫10の本体12は、食品(食材、食材の加工品など)を貯蔵する複数の収容室を備える。本実施の形態の場合、収容室として、一番上から、冷蔵室12a、冷凍/解凍室12b、冷凍室12c、および野菜室12dを備える。なお、図示していないが、冷凍/解凍室12bの右側(図面奥側)には、氷が作られる製氷室が設けられている。また、冷蔵庫10は、食品以外の物品も収容可能である。
【0022】
冷蔵室12aは、食品が凍らない温度帯、例えば1℃~5℃の温度帯で維持される空間である。冷凍室12cは、食品が凍る温度帯、例えば-22℃~-15℃の温度帯で維持される空間である。野菜室12dは、冷蔵室12aに比べて同等または以上の温度帯、例えば2℃~7℃に維持される空間である。冷凍/解凍室12bについては後述する。
【0023】
本実施の形態の場合、冷蔵庫10の本体12の上部に、機械室12eが設けられている。機械室8には、冷蔵庫10の冷凍サイクルを構成し、その冷凍サイクルの冷媒を循環させる圧縮機20などが収容されている。なお、これに代わって、機械室12eは、冷蔵庫10の本体12の下部に設けることも可能である。
【0024】
本実施の形態の場合、冷凍室12cと野菜室12dの背面側には、冷却室12fが設けられている。その冷却室12f内には、冷蔵庫10の冷凍サイクルを構成し、冷媒が通過する冷却器22が配置されている。また、冷却器22によって冷却された冷却室12fの空気(冷気)を、冷蔵室12a、冷凍/解凍室12b、冷凍室12c、および野菜室12dに向かって送風する冷却ファン24が冷却室12fに設けられている。さらに、図2に示すように、各室12a~12dに流入する冷気流量を制御するダンパー26A~26Dが、各室12a~12dと冷却ファン24との間の流路に配置されている(図1には、ダンパー26Bのみが示されている)。
【0025】
さらにまた、図2に示すように、冷蔵室12a、冷凍/解凍室12b、冷凍室12c、および野菜室12dそれぞれには、その内部温度を測定する温度センサ28A~28Dが設けられている。
【0026】
図2に示すように、冷蔵庫10の制御部30が、複数の温度センサ28A~28Dの測定結果に基づいて、冷却制御を実行する、すなわち圧縮機20の出力制御、冷却ファン24の回転数制御、およびダンパー26A~26Dそれぞれの開閉制御を実行することにより、冷蔵室12a、冷凍/解凍室12b、冷凍室12c、および野菜室12d内の温度が適切に維持される。制御部30は、例えばCPUなどのプロセッサ、プログラムなどを記憶するメモリなどの記憶装置、および回路を備えた基板であって、記憶装置に記憶されているプログラムにしたがってプロセッサが圧縮機20、冷却ファン24、およびダンパー26A~26Dを制御する。
【0027】
図2に示すように、本実施の形態の場合、冷蔵庫10は、ユーザが冷蔵庫10を操作するため、特に冷凍/解凍室12bを操作するための操作部32を備える。なお、操作部32は、冷蔵庫10に組み込まれたタッチパネルなどでもよく、および/またはユーザの携帯端末であってもよい。操作部32が携帯端末である場合、冷蔵庫10を操作するためのソフトウェア(アプリケーション)が携帯端末にインストールされる。ここからは、この冷凍/解凍室12bの詳細について説明する。
【0028】
図3は、冷凍/解凍室12bの拡大断面図である。また、図4は、冷気の流れを示す冷凍/解凍室12bの拡大断面図である。なお、冷気の流れは、一点鎖線で示されている。
【0029】
図3に示すように、本実施の形態の場合、冷凍/解凍室12bは、冷蔵庫10の本体12に組み込まれた加熱モジュール40によって構成されている。
【0030】
図5は加熱モジュールの断面図であって、図6は加熱モジュールを組み込む前の冷蔵庫の本体の一部分の断面図である。図7は、加熱モジュールの分解断面図である。図8は、図5のA-A線に沿った加熱モジュールの断面図である。
【0031】
図5および図8に示すように、加熱モジュール40は、直方体形状であって、インナーケース42と、インナーケース42を収容するシールドケース44とを備える二重壁構造体である。シールドケース44は、加熱モジュール40の筐体として機能する。インナーケース42は、食品が収容される収容室、すなわち冷凍/解凍室12bを画定している。
【0032】
インナーケース42は、樹脂などの絶縁材料から作製され、前側に開口を備える箱状である。シールドケース44は、金属を含む材料から構成され、例えばアルミなどの金属材料から作製される。また、シールドケース44は、前側に開口を備え、インナーケース42を格納する箱状である。
【0033】
本実施の形態の場合、図7に示すように、加熱モジュール40は、冷凍/解凍室12bに出し入れされ、食品を収容する引き出し46を備える。具体的には、引き出し46は、食品が収容される収容部46aと、その収容部46aの前側に設けられて冷凍/解凍室12bを開閉する扉部46bを含んでいる。収容部46aは、樹脂材料から作製されている。また、出し入れの際に引き出し46をガイドする金属製のレール48が、インナーケース42の内壁面に設けられている。このような引き出し46により、冷凍/解凍室12bから食品を出し入れしやすくなる。
【0034】
本実施の形態の場合、図3および図4に示すように、加熱モジュール40には、その内部の冷凍/解凍室12bに冷気(一点鎖線)を導入する冷気入口穴と、冷凍/解凍室12b内の冷気を排出する冷気出口穴とが設けられている。具体的には、加熱モジュール40の冷気入口穴として、シールドケース44の天井部に形成された複数の貫通穴44aと、インナーケース42の天井部に形成された貫通穴42aとが設けられている。これらの貫通穴42a、44aにより、冷却ファン24に送風されてダンパー26Bを通過して流路12gを流れる冷気を冷凍/解凍室12b内に導入することができる。
【0035】
加熱モジュール40の冷気出口穴として、インナーケース42の底部に形成された複数の貫通穴42bと、シールドケース44の底部に形成された複数の貫通穴44bとが設けられている。これらの貫通穴42b、44bにより、冷凍/解凍室12b内の冷気を冷却室12fに戻すことができる。
【0036】
なお、本実施の形態の場合、冷気出口穴としての貫通穴42b、44bから流出した冷気は、冷凍室12cを経て、冷却室12fに戻る。そのために、図6に示すように、冷却/解凍室12bが組み込まれる空間12hと冷凍室12cとを隔てる冷蔵庫10の本体12における隔壁部12jには、空間12hと冷凍室12cとを連絡する貫通穴12kが設けられている。
【0037】
また、図4および図8に示すように、引き出し46内の冷気がスムーズに冷却室12f(すなわち冷凍室12c)に流れるように、引き出し46の収容部46aは、その底部および側壁部の少なくとも一方に、引き出し46の内部から外部に向かって貫通する貫通穴46cを備えるのが好ましい。本実施の形態の場合、貫通穴46cとして、引き出し46の後側側壁部に上下方向に延在して左右方向に並んでいる複数のスリット穴46cが設けられている。
【0038】
冷凍/解凍室12b内の冷凍状態の食品を解凍するために、図2に示すように、加熱モジュール40は、加熱部50を備える。
【0039】
図9は、加熱モジュールの加熱部の制御系を示すブロック図である。
【0040】
図5に示すように、加熱モジュール40は、加熱部50の構成要素として、発振電極52と、発振電極52に対向する対向電極(対向電極部)54とを備える。
【0041】
本実施の形態の場合、発振電極52は、図8に示すように金属材料から作製された平板状の電極であって、図5に示すようにインナーケース42の天井部とシールドケース44の天井部との間のスペースに配置されている。また、発振電極52には、冷気が通過する複数の冷気通過穴52aが形成されている。この冷気通過穴52aにより、発振電極52を冷気によって冷却することができるとともに、発振電極52の下方に位置する冷凍/解凍室12bの領域にも冷気を導入することができる。
【0042】
本実施の形態の場合、対向電極54は、シールドケース44の底部の一部分44cである。また、対向電極54(部分44c)は、インナーケース42を挟んで、すなわち冷凍/解凍室12bを挟んで発振電極52に対して上下方向に対向している。発振電極と対向電極は同面積でなくてもよい。
【0043】
加熱部50は、図9に示すように、制御部30に制御されて発振電極52と対向電極54との間に所定のVHF帯の周波数、例えば40.68MHzの交流電圧を印加する発振回路(発振部)56を備える。具体的には、発振回路56は、基板上に形成された回路であって、発振電極52と対向電極54とに電気的に接続されている。また、発振回路56は、商用電源に接続された冷蔵庫10の電源部58からの交流電圧を変換し、その変換した交流電圧を発振電極52と対向電極54との間に印加する。
【0044】
交流電圧が印加されることにより、発振電極52と対向電極54との間に交番電界が発生する。この交番電界により、これらの電極52、54の間に配置されている食品、すなわち冷凍/解凍室12b内の引き出し46に収容されている食品が誘電加熱される。その結果、冷凍状態の食品が解凍される。
【0045】
なお、本実施の形態の場合、図3および図5に示すように、発振電極52と対向電極54は、冷凍/解凍室12b全体を挟んで対向しておらず、その一部を挟んで対向するように配置されている。これにより、冷凍/解凍室12bが、解凍対象(加熱対象)の食品が配置される空間である解凍ゾーン(加熱ゾーン)DZ(破線のクロスハッチングによって示されている領域)と、解凍ゾーンDZに対して連続する空間であって非解凍対象(非加熱対象)の食品が配置される非解凍ゾーン(非加熱ゾーン)NDZに区分される。すなわち、発振電極52と対向電極54との間には、解凍ゾーンDZが存在し、非解凍ゾーンNDZは存在していない。
【0046】
このように冷凍/解凍室12bを解凍ゾーンDZと非解凍ゾーンNDZとに区分することにより、冷凍/解凍室12bに収容されている複数の食品の一部のみを解凍することができる。そのため、解凍を行うとき、解凍を望まない食品を冷凍/解凍室12bから移動させる、例えば冷凍室12cに移動させる必要がない。また、操作部32が解凍の開始時刻を予約できるように構成されている場合、解凍ゾーンDZに配置された食品は、解凍が開始されるまで冷凍状態で維持された後、そのまま自動的に解凍される。
【0047】
また、本実施の形態の場合、解凍ゾーンDZは、非解凍ゾーンNDZに対して冷蔵庫10の前側に位置する。したがって、解凍ゾーンDZで解凍された食品をすぐに取り出すことができる。
【0048】
この解凍ゾーンDZに解凍対象の食品を配置するようにユーザに示すために、解凍ゾーンDZに配置される引き出し46の部分が解凍対象の食品を配置する場所であることをユーザに提示する提示部を設けるのが好ましい。提示部は、例えば引き出し46の底面に印刷された画像や文字であってもよい。また例えば、提示部は、解凍ゾーンDZと非解凍ゾーンNDZとの間の境界を示す、引き出し46に設けられた仕切り壁であってもよい。た解凍ゾーンDZと非解凍ゾーンNDZとの前後位置関係は逆であってもよい。逆であった場合、接続部材64の距離が短くなり、加熱効率が向上する。
【0049】
図8に示すように、発振電極52と対向電極54との対向(冷蔵庫10の上下方向)視で、発振電極52と対向電極54は、レール48に対してオーバーラップしないようにインナーケース42に設けられるのが好ましい。これと異なり、発振電極52と対向電極54との間にレール48が存在する場合、発振電極52とレール48との間に交番電界が発生し、発振電極52と対向電極54との間に発生する交番電界が弱まり、電界の均一性(加熱の均一性)が損なわれる。
【0050】
さらに本実施の形態の場合、対向電極54は、発振電極52に向かって隆起するシールドケース44の隆起部分であって、それにより対向電極54は発振電極52に接近している。これにより、対向電極54が隆起部分ではない場合に比べて、より強い交番電界を発生させることができる。
【0051】
食品の解凍中、すなわち発振電極52と対向電極54との間に交番電界が発生しているとき、シールドケース44は、この交番電界が外部に漏れないようにシールドするシールド部材として機能する。なお、シールドケース44の前側の開口を介して交番電界が外部に漏れないように、図5に示すように、引き出し46の扉部46b内に金属製のシールド板46dが設けられている。このシールド板46dとシールドケース44により、交番電界が発生する冷凍/解凍室12bが囲まれて電磁的にシールドされている。
【0052】
図9に示すように、加熱部50はまた、発振電極52と対向電極54との間のインピーダンス整合をとる整合回路(整合部)60を備える。具体的には、整合回路60は、基板上に形成された回路であって、発振電極52と対向電極54とに電気的に接続されている。本実施の形態の場合、対向電極54は接地されている。
【0053】
整合回路60の役割について説明する。食品の解凍が進むと、食品内の水分子が増加する。水分子が増加すると、インピーダンスが整合状態から変化し、反射率が増加する。なお、反射率は、発振回路56から出力された入射波に対する発振回路56に戻る反射波の割合である。
【0054】
図10は、食品解凍中の反射率の変化を示す図である。
【0055】
図10において、P1~P5は、整合回路60が発振電極52と対向電極54との間のインピーダンス整合を取り直すタイミングである。また、R1~R3は、反射率のしきい値である。また現実的には、反射率の代わりに検知の容易な反射電力のしきい値を設けて判定してもよい。
【0056】
食品の解凍が始まると、時間の経過とともに反射率は増加する。反射率が第2のしきい値R2に達する度に、整合回路60が発振電極52と対向電極54との間のインピーダンス整合をとり直す。その結果、反射率が低下する。このように食品の解凍が終了するまでに、発振電極52と対向電極54との間のインピーダンス整合を繰り返しとり直すことにより、反射による電気エネルギのロスを抑えて効率的に食品を解凍することができる。
【0057】
この反射率を算出するために、図9に示すように、加熱部50は、反射波検出回路62を備える。制御部30が、反射率算出部として、発振回路60から出力された入射波と反射波検出回路62によって検出された反射波とに基づいて反射率を算出する。その算出された反射率が第2のしきい値R2に達する度に、整合回路60が発振電極52と対向電極54との間のインピーダンス整合をとり直す。
【0058】
本実施の形態の場合、図5に示すように、発振回路56、整合回路60、および反射波検出回路62は、加熱モジュール40内に組み込まれている。なお、反射波検出回路62は、整合回路60が形成された基板に形成されている。
【0059】
具体的には、図5に示すように、発振回路56と整合回路60は、シールドケース44に設けられたシールド室44d内に配置されている。このシールド室44dは、隔壁44eによって冷凍/解凍室12bから隔離されている。このようなシールド室44d内に配置されることにより、発振回路56と整合回路60は、冷凍/解凍室12b内に発生した交番電界からシールドされ、誤動作することが抑制される。
【0060】
なお、整合回路60と発振電極52とを電気的接続する接続部材64は、隔壁44eを貫通している。また、図8に示すように、接続部材64は、発振電極52に比べて、左右方向のサイズが小さくされている。これは、接続部材64と冷凍/解凍室12bを挟んで対向するシールドケース44の部分との間に、交番電界が発生することを抑制するためである。すなわち、図3に示すように、接続部材64の下方に位置する非解凍ゾーンNDZに存在する食品が解凍されないようにするためである。
【0061】
また、発振回路56には、図5に示すように、冷蔵庫10の制御部30と接続するためのコネクタ66が設けられている。また、整合回路60にも、制御部30と接続するためのコネクタ68が設けられている。発振回路56のコネクタ66は、図6に示すように、加熱モジュール40が組み込まれる冷蔵庫10の本体12の空間12hに設けられ、制御部30に接続されているコネクタ70と係合する。また、整合回路60のコネクタ68は、同様に空間12hに設けられて制御部30に接続されているコネクタ72と係合する。これらのコネクタの係合作業は、空間12hと冷凍室12cとを連絡する貫通穴12kを介して行われる。すなわち、図4に示すように冷凍/解凍室12bから冷凍室12cに向かう冷気が通過する貫通穴12kが、加熱モジュール40にアクセスするためのアクセス穴として機能する。
【0062】
本実施の形態のように、発振電極52と対向電極54とともに、発振回路56と整合回路60(これに含まれる反射波検出回路62)を、シールドケース44を含む加熱モジュール40に組み込む利点は、冷蔵庫10の外で、これらの加熱テスト、ノイズ(交番電界)漏れチェックなどの検査を行えることである。
【0063】
これと異なり、発振電極、対向電極、発振回路、整合回路、反射波検出回路、およびシールド部品それぞれが冷蔵庫本体の内部に組み込まれる場合、これら全てを冷蔵庫本体に組み込んだ後に加熱テストやノイズ漏れチェックなどの検査を行う必要がある。そのため、例えば加熱テストの結果が良好ではない場合やノイズ漏れが生じた場合、冷蔵庫本体の内部に組み込んだ回路やシールド部品を取り外す必要があり、それは非常に手間である。また、ノイズ漏れが生じた場合、シールド部材を冷蔵庫本体から取り外す必要がある。その結果、検査を含む冷蔵庫の製造作業が煩雑化する可能性がある。
【0064】
したがって、このように、発振電極52、対向電極54、発振回路56、整合回路60、反射波検出回路62、シールドケース44を加熱モジュール40としてモジュール化することにより、冷蔵庫10の外で加熱テストやノイズ漏れチェックなどの検査行うことができるため、冷蔵庫10の製造が容易になる。また、冷蔵庫筐体が金属板で覆われている場合、金属板に遮蔽されて漏れノイズが庫外から検出できない可能性がある。その場合、金属板と加熱モジュール40の間にある電子部品が漏れノイズによる影響で正常に作動しないリスクが見落とされて、冷蔵庫としての品質確認がおこなえない。
【0065】
ここまでは、冷凍/解凍室12bの構成について説明してきた。ここからは、本実施の形態に係る冷蔵庫の冷凍/解凍室12b内の食品に対する動作(運転)について説明する。
【0066】
本実施の形態の場合、冷凍/解凍室12b内の食品に対して、制御部30は、通常運転、急冷運転、ゾーン解凍運転(ゾーン加熱運転)、全ゾーン解凍運転、および微凍結運転を実行する。
【0067】
通常運転は、冷凍/解凍室12b内の食品を冷凍状態で保存するために、冷凍/解凍室12b内の温度を冷凍保存温度(第1冷却保存温度)、例えば、食品が凍る冷凍温度である-16℃~-20℃の温度で維持する運転である。すなわち、冷凍室12cと同程度の温度で維持する運転である。
【0068】
図11は、通常運転のタイミングチャート図である。
【0069】
図11に示すように、通常運転では、冷凍/解凍室12b内の温度を冷凍保存温度Tfで維持するように(食品温度をTfで維持するように)、圧縮機20が断続的に稼動されるとともに、冷却ファン24およびダンパー26Bが制御される。
【0070】
このような圧縮機20の断続的な稼動により、圧縮機20が停止しているとき(OFF時)には食品の水分が蒸発し、圧縮機20が稼動しているとき(ON時)にはその食品に霜が着き、それにより食品温度が大きな幅で変動する。
【0071】
解凍ゾーンDZに配置されている食品に霜が着くと、食品の一部が乾燥して冷凍焼けを生じて劣化するため、解凍が高品位におこなわれたとしても、ユーザに高品位な食品を提供することが出来ない。
【0072】
その対処として、本実施の形態の場合、圧縮機20が稼動しているときには発振回路56をONにして発振電極52と対向電極54との間に交流電圧を印加し、圧縮機20が停止しているときには発振回路56をOFFにして交流電圧の印加を停止することにより食品の温度変動を縮小する。このときの発振回路56の出力は、例えば冷凍能力の3割以上である。
【0073】
このような発振回路56の断続的な稼動(すなわち断続的な誘電加熱)により、解凍ゾーンDZに配置されている食品に霜が発生することが抑制され、その結果、解凍品質のバラツキの発生が抑制される。また、解凍ゾーンDZに配置されている食品内部において、氷結晶の伸張を抑制することができる。食品内部で氷結晶が大きく伸長すると、食品の細胞や組織を傷つけ、解凍時に傷ついた細胞や組織から水分が流出し、食品の品質が低下する。その対処として、誘電加熱することにより氷結晶の先端に電界が集まって結晶の伸長を抑制し、氷結晶サイズを抑制することにより食品の物理的な変質を抑えることが出来る。
【0074】
急冷運転は、これから新たに冷凍される食品が冷凍/解凍室12bの解凍ゾーンDZに配置されると、その食品を通常運転に比べて急速に冷凍する(急冷する)ための運転である。また、その食品が配置されると、急冷運転は自動的に開始される。
【0075】
図12は、急冷運転のタイミングチャートである。
【0076】
これから急速冷凍される食品が冷凍/解凍室12bの解凍ゾーンDZに配置されたことを検出するために、上述で説明した反射率が使用される。図12に示すように、ドア開閉スイッチの信号をトリガーにして発振回路56を弱く作動(小さい発振出力)させて、反射率により投入を判定する。投入判定後は、発振回路56を定期的に作動させて反射率の変化を検知し、その検知した反射率の変化に基づいて凍結状態を判定し、発振回路56の作動を制御する。
【0077】
図12に示すように、冷凍/解凍室12bの解凍ゾーンDZにこれから急速冷凍される食品が配置されると(タイミングP6)、反射率は低下する。これは、急速冷凍される食品が発振電極52と対向電極54との間に配置されることにより、発振電極52と対向電極54との間の誘電率が増加するからである。
【0078】
本実施の形態の場合、反射率が第1のしきい値R1を超えて低下すると、制御部30は、これから急速冷凍される食品が冷凍/解凍室12bの解凍ゾーンDZに配置されたと判断し、通常運転に代わって急冷運転を開始する(タイミングP7)。
【0079】
急冷運転が開始されると、図12に示すように、冷却制御が連続的に実行される。例えば、圧縮機20および冷却ファン24が連続的に稼動され、ダンパー26Bが開いた状態で維持される。なお、余力があれば、圧縮機20の出力と冷却ファン24の回転数を、通常運転時に比べて増加させてもよい。
【0080】
図12に示すように、反射率が低下して第2のしきい値R2に達すると、反射率の変化率が大きくなる。これは、食品温度が、氷結晶が伸長しやすい最大氷結晶生成帯(例えば、-1~-5℃)に突入したからである。
【0081】
食品温度が最大氷結晶生成帯に突入すると(反射率が第2のしきい値R2に達すると)、加熱部50の発振回路56が、発振電極52と対向電極54との間に交流電圧を断続的に印加し始める。このとき、発振回路56の出力は、通常運転時の出力に比べて小さい、例えば1~10Wである。このような加熱部50による誘電加熱により、食品内での氷結晶の伸張を抑制しつつ、その食品を冷凍することができる。
【0082】
反射率がさらに低下して第3のしきい値R3に達すると、反射率の変化率が小さくなる。これは、食品温度が最大氷結晶生成帯を通過する直前の温度に達したからである。第3のしきい値R3に達して所定の時間t1経過すると、制御部30は、食品温度が最大氷結晶生成帯を通過したと判断し、冷却制御が通常運転時の制御に戻るとともに発振回路56による交流電圧の断続的な印加が終了する(タイミングP8)。これにより急冷運転が終了し、通常運転に戻る。
【0083】
ゾーン解凍運転(ゾーン加熱運転)は、解凍ゾーンDZに配置されている食品のみを解凍(加熱)し、非解凍ゾーンNDZに配置されている食品を冷凍保存温度Tfで維持する運転である。ゾーン解凍運転は、急冷運転とは異なり、操作部32が通常運転からゾーン解凍運転に切り替えるユーザの指示を受けると開始される。例えば、ユーザが操作部32の「ゾーン解凍」ボタンを押すと、ゾーン解凍運転が開始される。
【0084】
図13は、ゾーン解凍運転のタイミングチャート図である。
【0085】
図13に示すように、ゾーン解凍運転が開始されると、加熱部50の発振回路56が、発振電極52と対向電極54との間に交流電圧を連続的に印加し始める。これにより、解凍ゾーンDZに配置されている食品Aの解凍が始まり、食品Aの温度が上昇し始める。
【0086】
一方、非解凍ゾーンNDZに配置されている食品Bを冷凍保存温度Tfで維持するように、すなわち冷凍/解凍室12bを通常運転時の冷凍保存温度Tfで維持するように、圧縮機20の出力、冷却ファン24の回転数、およびダンパー26Bの開閉が制御される。例えば、ダンパー26Bが、開いた状態と閉じた状態とが同一時間継続するように、開閉を繰り返す。
【0087】
これにより、非解凍ゾーンNDZに配置されている食品Bは、通常運転時と同様に冷凍保存される。このゾーン解凍運転の場合、加熱部50による誘電加熱によって生じる冷凍/解凍室12b内の温度上昇分を考慮して、通常運転時に比べて、圧縮機20の出力と冷却ファン24の回転数が高く、またダンパー26Bの開時間が長い。
【0088】
また、このようなゾーン解凍運転によれば、解凍中の食品Aから発生した水蒸気は、ダンパー26Bが断続的に開くことによって冷却/解凍室12bの外部に排出される。それにより、冷却/解凍室12bの相対湿度が100%にならず、霜の発生が抑制される。
【0089】
解凍ゾーンDZに配置されている食品Aの解凍が終了すると、ゾーン解凍運転は終了する。
【0090】
なお、本実施の形態の場合、食品の解凍終了は、反射率の変化に基づいて判断される。
【0091】
食品解凍中の反射率の変化を示す図10を見れば、解凍が進行することにより、インピーダンス整合直後の反射率は徐々に上がっていく。例えば、タイミングP1の反射率に比べて、タイミングP2の反射率は高い。タイミングP5では、それ以前のタイミングP1~P4とは異なり、インピーダンス整合後の反射率は、第3のしきい値R3に比べて高い値である。この第3のしきい値R3を適切に設定することにより、インピーダンス整合によって低下した反射率が第3のしきい値R3に比べて高い場合、そのインピーダンス整合の実行タイミングP5を解凍終了タイミングとみなすことができる。したがって、インピーダンス整合によって反射率が第3のしきい値を超えて低下しない場合、制御部30は、そのインピーダンス整合の実行タイミングに食品の解凍は終了したと判断し、ゾーン解凍運転を終了する。ゾーン解凍運転を終了すると、通常運転に戻る。ただし、食品の量や物性によっては、解凍できていなくても整合後の反射率がR3を超えることや、解凍が完了してもR2に達しないことがある。そのため、閾値R2、R3に関わらず最低運転時間および最長運転時間を設定してもよい。
【0092】
全ゾーン解凍運転は、冷凍/解凍室12b内の食品全て、すなわち、解凍ゾーンDZの食品のみならず、非解凍ゾーンNDZの食品も解凍(加熱)する運転である。全ゾーン解凍運転も、ゾーン解凍運転と同様に、操作部32が通常運転から全ゾーン解凍運転に切り替えるユーザの指示を受けて開始する。例えば、ユーザが操作部32の「全ゾーン解凍」ボタンを押すと、全ゾーン解凍運転が開始される。
【0093】
図14は、全ゾーン解凍運転のタイミングチャート図である。
【0094】
図14に示すように、全ゾーン解凍運転は、図12に示すゾーン解凍運転と、ダンパー26Bの開時間を除いて同じである。具体的には、全ゾーン解凍運転中は、加熱部50の誘電加熱によって上昇する冷凍/解凍室12bの温度を維持するために、ダンパー26Bは概ね閉じている。ただ、ダンパー26Bは、冷却/解凍室12b内の湿度を低下させて霜の発生を抑制するために瞬間的に開いて水蒸気を外部に排出している。このような全ゾーン解凍運転により、冷却/解凍室12b内の食品全てが解凍される。全ゾーン解凍運転も、ゾーン解凍運転と同様に終了する。その終了後、通常運転に戻る。
【0095】
微凍結運転は、解凍終了後の食品(解凍済み食品)が冷却/解凍室12bから取り出されることなくそのまま放置されている場合に実行する運転である。
【0096】
ゾーン解凍運転または全ゾーン解凍運転によって解凍された解凍済み食品は、そのまま放置されると、その後の通常運転によって再び冷凍される。したがって、ユーザが、解凍済み食品を再冷凍された状態で冷凍/解凍室12bから取り出す可能性がある。当然ながら、再冷凍された状態であるために硬く、ユーザはその食品をすぐに調理することができない。その対処として、解凍終了後、解凍済み食品の温度を、凍らない温度で維持することが考えられるが、その場合、長期間放置されると解凍済み食品が傷む可能性がある。
【0097】
したがって、本実施の形態の場合、解凍済み食品が冷却/解凍室12bから取り出されることなくそのまま放置されている場合、その解凍済み食品を冷凍保存温度(-16℃~-20℃)に比べて高い冷却保存温度(第2冷却保存温度で維持する、例えば解凍済み食品を微凍結状態になるように微凍結温度(例えば-3℃~-7℃)で維持する微凍結運転(第2冷却保存運転)が実行される。ここで言う「微凍結状態」とは、食品の細胞内の液体は凍らずに、細胞外の液体が凍る状態を言う。
【0098】
なお、ゾーン解凍運転後に行う微凍結運転(ゾーン微凍結運転)と、全ゾーン解凍運転後に行う微凍結運転(全ゾーン微凍結運転)は、内容が異なる。
【0099】
ゾーン解凍運転後には、ゾーン微凍結運転が実行される。この運転は、冷凍/解凍室12b内の温度を冷凍保存温度で維持しつつ、解凍ゾーンDZの解凍済み食品をその温度が微凍結温度で維持されるように加熱部50によって加熱する運転である。これにより、解凍ゾーンDZの解凍済み食品は微凍結温度で維持されつつ、非解凍ゾーンNDZの食品は、通常運転時と同様に冷凍保存温度で維持される。
【0100】
全ゾーン解凍運転後には、全ゾーン解凍運転が実行される。この運転は、加熱部50を停止した状態で、冷凍/解凍室12b内の温度を微凍結温度で維持する運転である。これにより、冷凍/解凍室12b内の解凍済み食品が微凍結温度で維持される。
【0101】
ゾーンおよび全ゾーン微凍結運転を実行するためには、解凍終了後に、解凍済み食品が冷凍/解凍室12b内に存在するか否かを検出する解凍済み食品検出部(加熱済み食品検出部)が必要である。
【0102】
本実施の形態の場合、上述した反射率を用いて解凍済み食品の存在が検出される。すなわち、反射波を検出する反射波検出回路62とその検出した反射波に基づいて反射率を算出する制御部30が、解凍済み食品検出部として機能する。
【0103】
具体的には、急冷運転で説明したように、これから冷凍される食品が解凍ゾーンDZに配置されると、反射率が第1のしきい値R1を超えて低下する。逆の観点から見れば、解凍済み食品が解凍ゾーンDZから取り出されると、反射率は第1のしきい値R1を超えて上昇する。したがって、反射率が第1のしきい値R1を超えて上昇した場合、ゾーン解凍運転によって解凍された解凍済み食品が解凍ゾーンDZから取り出されたと判断することができる、または全ゾーン解凍運転によって解凍された食品が解凍ゾーンDZおよび非解凍ゾーンNDZから取り出されたと判断することができる。
【0104】
解凍終了後の冷凍/解凍室12bにて解凍済み食品の存在が検出されると、ゾーンまたは全ゾーン微凍結運転が実行される。食品の存在が検出されない場合、通常運転が実行される。
【0105】
代わりとして、図3に示すように、冷却/解凍室12bの扉(引き出し46の扉部46b)の開閉を検出する扉センサ34によって解凍済み食品の存在を検出してもよい。
【0106】
解凍済み食品を冷凍/解凍室12bから取り出すためにはその扉をユーザが開ける必要がある。したがって、解凍終了後に扉センサ34が開扉を検出しない場合には、解凍済み食品が冷凍/解凍室12bに存在していると判断することができる。
【0107】
ゾーン微凍結運転および全ゾーン微凍結運転のさらなる詳細について、図15に示すフローチャートを用いて説明する。
【0108】
図15に示すように、まず、ゾーン(全ゾーン)解凍運転が終了すると、ステップS100において、制御部30は、ゾーン(全ゾーン)微凍結運転を開始する。
【0109】
ステップS110において、制御部30は、冷凍/解凍室12b内に食品が存在するか否かを判定する。存在する場合、ステップS120に進む。そうでない場合、ステップS140に進む。
【0110】
ステップS120において、制御部30は、ステップS110で検出された食品が解凍済み食品であるか否かを判定する。これは、ステップS110で検出された食品が冷凍/解凍室12bに収容されてこれから冷凍される食品である可能性があるからである。ただ、ステップS110で検出された食品がこれから冷凍される食品である場合には、解凍終了後に冷凍/解凍室12bの扉がユーザによって開けられている。すなわち、解凍終了後に、扉センサ34が開扉を検出している。したがって、扉センサ34が開扉を検出していない場合、ステップS110で検出された食品は解凍済み食品であると判定し、ステップS130に進む。そうでない場合、ステップS110で検出された食品はこれから冷凍される食品であると判定し、ステップS160に進み、ゾーン(全ゾーン)微凍結運転を終了し、続くステップS170において急冷運転が開始される。
【0111】
ステップS120で解凍済み食品と判定されると、ステップS130において、制御部30は、解凍終了から所定の期間が経過したか否かを判定する。これは、解凍済み食品を微凍結状態で長期間保存すると、品質が低下するからである。全ゾーン解凍運転の場合、所定の期間は、例えば7日間である。ゾーン解凍運転の場合、全ゾーン解凍運転に比べて霜が発生しやすいので、所定の期間は、全ゾーン解凍運転に比べて短い5日間である。解凍終了から所定の期間が経過している場合には、ステップS140に進んでゾーン(全ゾーン)微凍結運転を終了し、続くステップS150において通常運転が開始される。所定の期間が経過していない場合には、ステップS110に戻る。
【0112】
上述したように、本実施の形態によれば、食品を冷凍および解凍可能な冷凍/解凍室を備える冷蔵庫において、冷凍/解凍室内で解凍されてそのまま放置された解凍済み食品を適切に保存することができる。
【0113】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に限らない。
【0114】
例えば、上述の実施の形態の場合、図5に示すように、冷却/解凍室12bは、解凍ゾーンDZと非解凍ゾーンNDZとに区分されている。すなわち、発振電極52と対向電極54は、冷却/解凍室12bの一部を挟んで対向配置されている。しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限らない。発振電極と対向電極が冷却/解凍室全てを挟んで対向配置されてもよい。すなわち、冷却/解凍室全体が食品を誘電加熱して解凍することができる解凍ゾーンであってもよい。
【0115】
また、上述の実施の形態の場合、食品を加熱して解凍する方法は、発振電極と対向電極とを用いた誘電加熱であるが、本発明の実施の形態は、これに限らない。例えば、シーズヒータであってもよい。
【0116】
さらに、上述の実施の形態の場合、食品の解凍終了を反射率に基づいて判断している。しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限らない。例えば、ユーザが解凍時間を設定し、解凍開始から解凍時間が経過したタイミングを食品の解凍終了タイミングとしてもよい。この場合、操作部は、ユーザの解凍の開始指示を受けるとともに、解凍時間を入力できるように構成される。
【0117】
さらにまた、上述の実施の形態の場合、図4に示すように、加熱モジュール40の収容室は、冷気が導入されることにより、冷凍および解凍可能な冷凍/解凍室12bとして機能する。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。加熱モジュールは、その収容室に冷気を導入しない、すなわち解凍専用であってもよい。そして、加熱モジュール40は、冷凍および解凍に使用するだけでなく、温度調節として食品を冷却・加熱するために使用されてもよい。すなわち、加熱モジュール40の収容室が、冷却/加熱室であってもよい。
【0118】
加えて、上記の実施の形態では、冷凍室内で加熱して解凍する例を中心に説明したが、冷蔵庫内のそれ以外の温度帯の部屋で加熱しても構わない。例えば、冷蔵室内で保存されるヨーグルト菌を添加した牛乳や納豆菌を添加した大豆を加熱することにより、発酵を促進して自家製ヨーグルトや自家製納豆などを作ることもできる。
【0119】
そして、ある実施の形態の少なくとも一部に対して別の少なくとも1つの実施の形態を全体としてまたは部分的に組み合わせて本発明に係るさらなる実施の形態とすることが可能であることは、当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、加熱機能を備える冷蔵庫に適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
10 冷蔵庫
12b 冷凍/解凍室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15