(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニル系成形体、アクチュエータおよびポリ塩化ビニル系成形体製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20231020BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20231020BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/11
H02N11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020067908
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518385899
【氏名又は名称】AssistMotion株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(72)【発明者】
【氏名】橋本 稔
(72)【発明者】
【氏名】堀井 辰衛
(72)【発明者】
【氏名】鉄矢 美紀雄
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-096470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
C08K 5/11
H02N 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニルおよび可塑剤を含有して誘電性を有すると共に常温においてゲル状態を呈するポリ塩化ビニル系成形体であって、
前記ポリ塩化ビニル100重量部に対して、
セバシン酸ジエチルを前記可塑剤として400~600重量部含有することを特徴とするポリ塩化ビニル系成形体。
【請求項2】
請求項
1記載のポリ塩化ビニル系成形体を備え、当該ポリ塩化ビニル系成形体の変形に伴って発生する力を駆動力として出力するアクチュエータ。
【請求項3】
ポリ塩化ビニルおよび可塑剤を含有して誘電性を有すると共に常温においてゲル状態を呈するポリ塩化ビニル系成形体を製造するポリ塩化ビニル系成形体製造方法であって、
前記ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テトラヒドロフランおよびシクロヘキサンのいずれか1種類を溶剤として600~1000重量部混合すると共に、
セバシン酸ジエチルを前記可塑剤として400~600重量部混合し、当該混合物を乾燥して前記ポリ塩化ビニル系成形体を製造するポリ塩化ビニル系成形体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニルおよび可塑剤を含有するポリ塩化ビニル系成形体、そのポリ塩化ビニル系成形体を備えたアクチュエータ、並びにそのポリ塩化ビニル系成形体を製造するポリ塩化ビニル系成形体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のポリ塩化ビニル系成形体およびアクチュエータとして、下記特許文献1において出願人が開示した誘電体用ポリ塩化ビニル系成形体(以下、単に「ポリ塩化ビニル系成形体」ともいう)および電圧駆動装置が知られている。このポリ塩化ビニル系成形体は、ペースト加工用ポリ塩化ビニル100重量部、および可塑剤としてのアジピン酸ジブチル50~1,400重量部を含有して誘電率が少なくとも5,000ファラデー/メートルとなるように形成されている。また、この電圧駆動装置は、上述したポリ塩化ビニル系成形体を含んで構成され、電圧を供給したときのポリ塩化ビニル系成形体の変形によって駆動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来のポリ塩化ビニル系成形体および電圧駆動装置には、解決すべき以下の課題がある。具体的には、上述したポリ塩化ビニル系成形体を変形させて電圧駆動装置を駆動させる際には、400V程度の高電圧を駆動電圧として供給する必要がある。一方、この種の電圧駆動装置は、その柔軟性を生かして、人が装着する機器等への応用が期待されている。このような機器への応用するためには、駆動電圧の低電圧化が必須である。しかしながら、従来のポリ塩化ビニル系成形体では、上述したように400V程度の高電圧を駆動電圧として供給する必要があり十分な低電圧化を達成できておらず、したがってさらなる低電圧化が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、駆動電圧の低電圧化を実現し得るポリ塩化ビニル系成形体、アクチュエータおよびそのポリ塩化ビニル系成形体を製造するポリ塩化ビニル系成形体製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のポリ塩化ビニル系成形体は、ポリ塩化ビニルおよび可塑剤を含有して誘電性を有すると共に常温においてゲル状態を呈するポリ塩化ビニル系成形体であって、前記ポリ塩化ビニル100重量部に対して、セバシン酸ジエチルを前記可塑剤として400~600重量部含有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載のアクチュエータは、請求項1記載のポリ塩化ビニル系成形体を備え、当該ポリ塩化ビニル系成形体の変形に伴って発生する力を駆動力として出力する。
【0010】
また、請求項3記載のポリ塩化ビニル系成形体製造方法は、ポリ塩化ビニルおよび可塑剤を含有して誘電性を有すると共に常温においてゲル状態を呈するポリ塩化ビニル系成形体を製造するポリ塩化ビニル系成形体製造方法であって、前記ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テトラヒドロフランおよびシクロヘキサンのいずれか1種類を溶剤として600~1000重量部混合すると共に、セバシン酸ジエチルを前記可塑剤として400~600重量部混合し、当該混合物を乾燥して前記ポリ塩化ビニル系成形体を製造する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るポリ塩化ビニル系成形体およびアクチュエータによれば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチルおよびコハク酸ジエチルのうちの1種類または複数種類を可塑剤として含有させてポリ塩化ビニル系成形体を構成することにより、可塑剤としてのアジピン酸ジブチルを含有して高電圧を駆動電圧として供給する必要がある従来のポリ塩化ビニル系成形体と比較して、駆動電圧を十分に低電圧化することができる。このため、このポリ塩化ビニル系成形体を用いたアクチュエータによれば、人が装着する機器等への応用を確実に実現することができる。
【0012】
また、本発明に係るポリ塩化ビニル系成形体およびアクチュエータによれば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチルおよびコハク酸ジエチルのうちの1種類または複数種類を可塑剤として合計で100~1000重量部含有させてポリ塩化ビニル系成形体を構成することにより、駆動電圧をより低電圧化することができる。このため、このポリ塩化ビニル系成形体を用いたアクチュエータによれば、人が装着する機器等への応用をより確実に実現することができる。
【0013】
また、本発明に係るポリ塩化ビニル系成形体およびアクチュエータによれば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジエチルおよびコハク酸ジエチルのうちの1種類または複数種類を可塑剤として合計で400~800重量部含有させてポリ塩化ビニル系成形体を構成することにより、駆動電圧をさらに低電圧化することができる。このため、このポリ塩化ビニル系成形体を用いたアクチュエータによれば、人が装着する機器等への応用をさらに確実に実現することができる。
【0014】
また、本発明に係るポリ塩化ビニル系成形体製造方法によれば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テトラヒドロフランおよびシクロヘキサンのいずれか1種類を溶剤として600~1000重量部混合すると共に、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチルおよびコハク酸ジエチルのうちの1種類または複数種類を可塑剤として合計で100~1000重量部混合し、混合物を乾燥してポリ塩化ビニル系成形体を製造することにより、ポリ塩化ビニルを溶剤に溶解させた状態で可塑剤を加えることで、ポリ塩化ビニルと可塑剤とを均一に混合させることができる結果、均質なポリ塩化ビニル系成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】アクチュエータ10の構成を示す構成図である。
【
図2】PVCゲルシート13の製造方法50を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ポリ塩化ビニル系成形体、アクチュエータおよびポリ塩化ビニル系成形体製造方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
最初に、
図1に示すアクチュエータ10の構成について説明する。アクチュエータ10は本発明に係るアクチュエータの一例であって、同図に示すように、陽電極11、陰電極12およびPVCゲルシート13を備えて構成されている。
【0018】
陽電極11は、導電性を有するメッシュシート(一例として、ステンレスメッシュシート)で構成されている。また、本実施例では、陰電極12は、一例として長方形に形成されている。
【0019】
陰電極12は、導電性を有するシート(一例として、アルミシート)で構成されている。また、本実施例では、陰電極12は、陽電極11と同様の長方形に形成されている。
【0020】
PVCゲルシート13は、本発明に係るポリ塩化ビニル系成形体の一例であって、ポリ塩化ビニル(PVC)および可塑剤を含有して構成され、誘電性を有すると共に常温においてゲル状態を呈している。また、PVCゲルシート13は、後述する製造方法50(ポリ塩化ビニル系成形体製造方法:
図2参照)によって製造される。この場合、PVCゲルシート13には、アジピン酸ジエチル(DEA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)およびコハク酸ジエチル(DESU)のうちの1種類または複数種類が、ポリ塩化ビニル100重量部に対して合計で100~1000重量部含有される。また、本実施例では、PVCゲルシート13は、陽電極11と同様の長方形に形成されている。このPVCゲルシート13は、電圧の供給によって厚さ方向に変形する特性を有している。
【0021】
また、本実施例では、アクチュエータ10は、
図1に示すように、1枚の陽電極11と、2枚の陰電極12と、各電極11,12の上面および下面に配置された4枚のPVCゲルシート13とを積層することによって形成されている。
【0022】
このアクチュエータ10では、電極11,12間に挟まれたPVCゲルシート13に対して電極11,12を介して電圧を供給しているときに、PVCゲルシート13が陽電極11を構成するメッシュの隙間に進入するように変形することで厚み方向に収縮する。また、PVCゲルシート13に対する電圧の供給を停止したときにPVCゲルシート13の復元(変形の解除)による力を伴ってPVCゲルシート13が厚み方向に伸長する。つまり、このアクチュエータ10では、PVCゲルシート13の変形に伴って発生する力を駆動力F(
図1参照)として出力することが可能となっている。ここで、アクチュエータ10が発生する駆動力Fは、陽電極11、陰電極12およびPVCゲルシート13の面積に比例(または、ほぼ比例)し、アクチュエータ10の変位量(伸縮量)は、1枚の陽電極11、1枚の陰電極12および電極11,12間の1枚のPVCゲルシート13を1ユニットとしたときのユニットの積層数に比例(または、ほぼ比例)する。
【0023】
次に、アクチュエータ10の製造方法について説明する。
【0024】
最初にPVCゲルシート13の製造方法を、
図2に示す製造方法50のフローチャートを参照して説明する。この製造方法50では、まず、溶剤を計量して、攪拌容器に投入する(ステップ51)。溶剤としては、テトラヒドロフランおよびシクロヘキサンのいずれか1種類を用いることができる。また、溶剤は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して600~1000重量部の範囲内で用いるのが好ましく、本実施例では、ポリ塩化ビニル100重量部に対して溶剤を800重量部用いる。
【0025】
次いで、ポリ塩化ビニルを計量して、溶剤が投入されている攪拌容器に攪拌しつつ投入する(ステップ52)。本実施例では、溶剤800重量部に対して100重量部のポリ塩化ビニルを計量して投入する。また、本実施例では、一例として、粒子径(一次粒子径)が0.1~200μm程度の粉末状のポリ塩化ビニルを用いる。
【0026】
続いて、ポリ塩化ビニルと溶剤とが十分に混合(溶解)した状態で、可塑剤を計量して、ポリ塩化ビニルおよび溶剤が投入されている攪拌容器に攪拌しつつ投入する(ステップ53)。可塑剤としては、アジピン酸ジエチル(DEA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)およびコハク酸ジエチル(DESU)のうちの1種類または複数種類を用いることができる。また、可塑剤は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して100~1000重量部の範囲内で用いるのが好ましく、本実施例では、ポリ塩化ビニル100重量部に対して可塑剤を600重量部用いる。
【0027】
次いで、ポリ塩化ビニル、溶剤および可塑剤(これらの混合物)が収容された攪拌容器を脱泡装置にセットして脱泡処理を実行する(ステップ54)。続いて、成膜機を用いて脱泡処理の終了した混合物をシート状に加工するシート化処理を実行する(ステップ55)。次いで、シート状に加工したシート体を乾燥して溶剤を蒸発させる乾燥処理を実行する(ステップ56)。続いて、シート体を長方形状に裁断する(ステップ57)。これに応じて以上により製造方法50が終了し、PVCゲルシート13が製造される。
【0028】
続いて、
図1に示すように、1枚の陽電極11、2枚の陰電極12、および4枚のPVCゲルシート13を積層する。以上により、アクチュエータ10の製造が完了する。
【0029】
次に、本発明に係るポリ塩化ビニル系成形体およびアクチュエータの特性試験1および特性試験2の結果について説明する。
【0030】
まず、特性試験1では、実施例1として、ポリ塩化ビニル100重量部に対して600重量部のアジピン酸ジエチル(DEA)を可塑剤として用いたPVCゲルシート13を上述した製造方法50で製造し、そのPVCゲルシート13を用いてアクチュエータ10を製造した。また、実施例2として、ポリ塩化ビニル100重量部に対して600重量部のセバシン酸ジエチル(DESeb)を可塑剤として用いたPVCゲルシート13を上述した製造方法50で製造し、そのPVCゲルシート13を用いてアクチュエータ10を製造した。また、比較例1として、ポリ塩化ビニル100重量部に対して600重量部のアジピン酸ジブチル(DBA)を可塑剤として用いたPVCゲルシート13を上述した製造方法50に準じた方法で製造し、そのPVCゲルシート13を用いてアクチュエータ10を製造した。
【0031】
また、この特性試験1では、実施例1,2および比較例1の各アクチュエータ10に対して電圧値を変更しつつ駆動電圧を供給したときの各アクチュエータ10の厚み方向の変位量(歪み)を測定した。この結果を
図3に示す。同図から、可塑剤としてアジピン酸ジエチル(DEA)を用いた実施例1のアクチュエータ10、および可塑剤としてセバシン酸ジエチル(DESeb)を用いた実施例2のアクチュエータ10は、可塑剤としてアジピン酸ジブチル(DBA)を用いた比較例1のアクチュエータ10と比較して、同じ電圧値における変位量が十分に大きいことが明らかである。つまり、アジピン酸ジブチル(DBA)に代えて、アジピン酸ジエチル(DEA)およびセバシン酸ジエチル(DESeb)をポリ塩化ビニル100重量部に対して600重量部含有させてPVCゲルシート13を構成することで、同じ変位量を得るための駆動電圧を十分に低電圧化可能なことが明らかである。
【0032】
また、特性試験1の追加試験として、ポリ塩化ビニル100重量部に対して600重量部のコハク酸ジエチル(DESU)を含有するPVCゲルシート13を用いたアクチュエータ10を実施例3として製造し、各アクチュエータ10に対して電圧値を変更しつつ駆動電圧を供給したときの各アクチュエータ10の厚み方向の変位量(歪み)を測定した(図示を省略する)。この実施例3のアクチュエータ10についても、比較例1のアクチュエータ10と比較して、同じ電圧値における変位量が十分に大きかった。つまり、アジピン酸ジブチル(DBA)に代えて、コハク酸ジエチル(DESU)をポリ塩化ビニル100重量部に対して600重量部含有させてPVCゲルシート13を構成することで、同じ変位量を得るための駆動電圧を十分に低電圧化可能なことが明らかである。
【0033】
次に、特性試験2では、ポリ塩化ビニル100重量部に対して400重量部のアジピン酸ジエチル(DEA)を含有するPVCゲルシート13を用いたアクチュエータ10、ポリ塩化ビニル100重量部に対して400重量部のセバシン酸ジエチル(DESeb)を含有するPVCゲルシート13を用いたアクチュエータ10、およびポリ塩化ビニル100重量部に対して400重量部のコハク酸ジエチル(DESU)を含有するPVCゲルシート13を用いたアクチュエータ10を製造し、それぞれ実施例4~6とした。また、ポリ塩化ビニル100重量部に対して400重量部のアジピン酸ジブチル(DBA)を含有するPVCゲルシート13を用いてアクチュエータ10を製造し、比較例2とした。
【0034】
また、この特性試験2では、各実施例4~6および比較例2の各アクチュエータ10に対して電圧値を変更しつつ駆動電圧を供給したときの各アクチュエータ10の厚み方向の変位量(歪み)を測定した。この結果を
図4に示す。同図から、実施例4~6のアクチュエータ10についても、比較例2のアクチュエータ10と比較して、同じ電圧値における変位量が十分に大きかった。つまり、アジピン酸ジブチル(DBA)に代えて、アジピン酸ジエチル(DEA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)およびコハク酸ジエチル(DESU)をポリ塩化ビニル100重量部に対して400重量部含有させてPVCゲルシート13を構成することで、同じ変位量を得るための駆動電圧を十分に低電圧化可能なことが明らかである。
【0035】
また、ポリ塩化ビニル100重量部に対するアジピン酸ジエチル(DEA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、コハク酸ジエチル(DESU)および比アジピン酸ジブチル(DBA)の重量比率を100~1000重量部の範囲内で400重量部および600重量部とは異なる重量比率に変更して、上述した特性試験1,2と同様の特性試験を行った(図示を省略する)。その結果、いずれの重量比率においても駆動電圧を十分に低電圧化可能なことが明らかとなった。
【0036】
また、ポリ塩化ビニル100重量部に対するアジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)およびアジピン酸ジブチル(DBA)の重量比率を100~1000重量部の範囲内に規定して上述した特性試験1,2と同様の特性試験を行った(図示を省略する)。その結果、これらの可塑剤を含有するPVCゲルシート13を用いたアクチュエータ10においても駆動電圧を十分に低電圧化可能なことが明らかとなった。
【0037】
一方、ポリ塩化ビニル100重量部に対する上述した各可塑剤の重量比率が100重量部未満のときにはポリ塩化ビニルの可塑化が困難となり、ポリ塩化ビニル100重量部に対する上述した各可塑剤の重量比率が1000重量部を超えたときにはポリ塩化ビニルのゲル化が困難であった。これらのことから、ポリ塩化ビニル100重量部に対する上述した各可塑剤の重量比率は、100~1000重量部の範囲が好ましく、400~800重量部の範囲内がより好ましいことが理解される。
【0038】
このように、このPVCゲルシート13およびアクチュエータ10によれば、アジピン酸ジエチル(DEA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)およびコハク酸ジエチル(DESU)のうちの1種類または複数種類を可塑剤として含有させてPVCゲルシート13を構成することにより、可塑剤としてのアジピン酸ジブチル(DBA)を含有して高電圧を駆動電圧として供給する必要がある従来のPVCゲルシート13と比較して、駆動電圧を十分に低電圧化することができる。このため、このPVCゲルシート13を用いたアクチュエータ10によれば、人が装着する機器等への応用を確実に実現することができる。
【0039】
また、このPVCゲルシート13およびアクチュエータ10によれば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、アジピン酸ジエチル(DEA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)およびコハク酸ジエチル(DESU)のうちの1種類または複数種類を可塑剤として合計で100~1000重量部含有させてPVCゲルシート13を構成することにより、可塑剤としてのアジピン酸ジブチル(DBA)を含有して高電圧を駆動電圧として供給する必要がある従来のPVCゲルシート13と比較して、駆動電圧をより低電圧化することができる。このため、このPVCゲルシート13を用いたアクチュエータ10によれば、人が装着する機器等への応用をより確実に実現することができる。
【0040】
また、このPVCゲルシート13およびアクチュエータ10によれば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)およびコハク酸ジエチル(DESU)のうちの1種類または複数種類を可塑剤として合計で400~800重量部含有することにより、駆動電圧をさらに低電圧化することができる。このため、このPVCゲルシート13を用いたアクチュエータ10によれば、人が装着する機器等への応用をさらに確実に実現することができる。
【0041】
また、この製造方法50によれば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テトラヒドロフランおよびシクロヘキサンのいずれか1種類を溶剤として600~1000重量部混合すると共に、アジピン酸ジエチル(DEA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)およびコハク酸ジエチル(DESU)のうちの1種類または複数種類を可塑剤として合計で100~1000重量部混合し、混合物を乾燥してPVCゲルシート13を製造することにより、ポリ塩化ビニルを溶剤に溶解させた状態で可塑剤を加えることで、ポリ塩化ビニルと可塑剤とを均一に混合させることができる結果、均質なPVCゲルシート13を製造することができる。
【0042】
なお、上述したPVCゲルシート13、アクチュエータ10および製造方法50は、本発明に係るポリ塩化ビニル系成形体、アクチュエータおよびポリ塩化ビニル系成形体製造方法の一例であって、適宜変更した構成および方法を採用することができる。例えば、上述したPVCゲルシート13では、アジピン酸ジエチル(DEA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)およびコハク酸ジエチル(DESU)のうちの1種類を可塑剤として用いているが、これらの可塑剤のうちの複数種類を用いる構成および方法を採用することもできる。また、上述した製造方法50では、溶剤としてテトラヒドロフランを用いたが、シクロヘキサンを溶剤として用いる方法を採用することもできる。
【0043】
また、上述したアクチュエータ10は、1枚の陽電極11、2枚の陰電極12および4枚のPVCゲルシート13を備えて構成されているが、アクチュエータ10を構成する陽電極11、陰電極12およびPVCゲルシート13の数(上述したユニットの積層数)は任意に規定することができる。
【0044】
また、上述したアクチュエータ10の構成では、陽電極11、陰電極12およびPVCゲルシート13が長方形に形成されているが、他の平面視形状(例えば、円形、楕円形、四角形以外の多角形)の陽電極11、陰電極12およびPVCゲルシート13を採用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
10 アクチュエータ
11 陽電極
12 陰電極
13 PVCゲルシート
50 製造方法