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特許7369961コレステロール上昇抑制剤、コレステロール上昇抑制用飲食品、高コレステロール血症の予防剤、高コレステロール血症の予防用飲食品、およびコレステロール上昇抑制剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】コレステロール上昇抑制剤、コレステロール上昇抑制用飲食品、高コレステロール血症の予防剤、高コレステロール血症の予防用飲食品、およびコレステロール上昇抑制剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/899 20060101AFI20231020BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231020BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231020BHJP
【FI】
A61K36/899
A61P3/06
A23L33/105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019165019
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021042160
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】松田 博行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼石 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】福家 正志
(72)【発明者】
【氏名】笠岡 英司
(72)【発明者】
【氏名】今城 丈治
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 究
(72)【発明者】
【氏名】平本 茂
(72)【発明者】
【氏名】大平 辰朗
(72)【発明者】
【氏名】松井 直之
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】Biomed. Environ. Sci.,2015年,Vol. 28, No. 8,pp. 595-605
【文献】森林総合研究所 平成21年度版 研究成果選集,2009年,pp. 50-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波減圧蒸留法により得られた、竹に含まれる揮発成分の凝縮液である竹の留分を有効成分とする、コレステロール上昇抑制剤。
【請求項2】
前記留分は、セスキテルペン類を40mg/L以上含有する、請求項1に記載のコレステロール上昇抑制剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコレステロール上昇抑制剤を含有することを特徴とする、コレステロール上昇抑制用飲食品。
【請求項4】
マイクロ波減圧蒸留法により得られた、竹に含まれる揮発成分の凝縮液である竹の留分を有効成分とする、高コレステロール血症の予防剤。
【請求項5】
マイクロ波減圧蒸留法により得られた、竹に含まれる揮発成分の凝縮液である竹の留分を有効成分として含有する、高コレステロール血症の予防用飲食品。
【請求項6】
破砕した、水分を外部から加えることなく、前記竹が含む水分のみを用いてそのままマイクロ波減圧蒸留法により蒸留し、竹に含まれる揮発成分の凝縮液である竹の留分を回収することを特徴とする、コレステロール上昇抑制剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロール上昇抑制剤、コレステロール上昇抑制用飲食品、高コレステロール血症の予防剤、高コレステロール血症の予防用飲食品、およびコレステロール上昇抑制剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、竹廃材をそのまま焼却処分するのではなく、竹廃材を有効活用する技術の開発が進められている。このような中で、竹が含有する特定の成分のコレステロール抑制効果に着目した技術が知られている。たとえば、特許文献1では、竹の稈を0.1~2.0μm程度に粉砕した微粉末を服用することで、竹由来植物繊維が血漿コレステロール濃度の上昇を抑制することが開示されている。また、特許文献2では、竹の葉および茎を小さく切り70%エタノールと混合し、80℃で7時間、3度繰り返して加熱して得た抽出物を濾紙で濾過し、減圧濃縮した後に乾燥させた、トリシン及びp-クマル酸を有効成分とする最終抽出物を、経口投与することにより、コレステロール沈着を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-139982号公報
【文献】特表2006-515007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、竹の稈の微粉末を経口摂取する必要があり、生体内への吸収効率が低くなり、十分なコレステロール抑制効果を期待できないという問題があった。また、特許文献2では、最終抽出物を得るまでに必要とされる工数とエネルギー量が多く、コストが増大してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、竹を主原料とし、コレステロール上昇抑制効果が良好な、コレステロール上昇抑制剤、コレステロール上昇抑制用飲食品、高コレステロール血症の予防剤、高コレステロール血症の予防用飲食品、およびコレステロール上昇抑制剤の製造方法を、低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の(1)または(2)のコレステロール上昇抑制剤を要旨とする。
(1)マイクロ波減圧蒸留法により得られた、竹に含まれる揮発成分の凝縮液である竹の留分を有効成分とするコレステロール上昇抑制剤。
)前記留分は、セスキテルペン類を40mg/L以上含有する、上記(1)のコレステロール上昇抑制剤。
【0007】
本発明は以下の(3)のコレステロール上昇抑制用飲食品を要旨とする。
上記(1)または(2)に記載のコレステロール上昇抑制剤を含有することを特徴とする、コレステロール上昇抑制用飲食品。
【0008】
本発明は以下の()の高コレステロール血症の予防剤を要旨とする。
)マイクロ波減圧蒸留法により得られた、竹に含まれる揮発成分の凝縮液である竹の留分を有効成分とする、高コレステロール血症の予防剤。
【0009】
本発明は以下の()の高コレステロール血症の予防用飲食品を要旨とする。
)マイクロ波減圧蒸留法により得られた、竹に含まれる揮発成分の凝縮液である竹の留分を有効成分として含有する、高コレステロール血症の予防用飲食品。
【0010】
本発明は以下の()のコレステロール上昇抑制剤の製造方法を要旨とする。
)破砕した、水分を外部から加えることなく、前記竹が含む水分のみを用いてそのままマイクロ波減圧蒸留法により蒸留し、竹に含まれる揮発成分の凝縮液である竹の留分を回収することを特徴とする、コレステロール上昇抑制剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マイクロ波減圧蒸留法により、コレステロール上昇抑制効果が良好な竹の留分を得ることができ、当該留分を有効成分とするコレステロール上昇抑制剤、コレステロール上昇抑制用飲食品、高コレステロール血症の予防剤、高コレステロール血症の予防用飲食品、およびコレステロール上昇抑制剤の製造方法を、低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態にマイクロ波減圧蒸留装置の概要図である。
図2】本実施例におけるマウスの食餌量を示すグラフである。
図3】本実施例におけるマウスの体重の推移を示すグラフである。
図4】本実施例における血中コレステロール濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、図に基づいて説明する。本発明に係るコレステロール上昇抑制剤は、竹を主原料とし、竹を粉砕した竹片をマイクロ波減圧蒸留して得られた留分を有効成分とする。以下においては、主原料である竹について説明をした後、当該竹から留分を得るための破砕機およびマイクロ波減圧蒸留装置について説明し、その後、得られた留分を有効成分とするコレステロール上昇抑制剤について説明する。
【0014】
本発明に用いる竹は、特に限定されないが、生育期間が2年以上10年以下であることが好ましく、2年以上8年以下であることがより好ましく、3年以上6年以下であることがさらに好ましい。生育期間が10年を超えた竹は、水分が抜け含水率が低くなることにより、竹からの留分の採取効率が低くなってしまうためである。原料としての竹の生育期間は、正確に把握することが好ましいが、その生育期間を正確に把握することは困難であるため、簡易的にその生育期間を判別しても良い。例えば、竹は毎年葉替わりする際に古い葉はほんの数ミリ小枝を付けたまま落葉するため、落葉の落ち跡(枝が二股となっている)の数を数えることでその生育期間を把握することができる。具体的には、竹稈の節から生えている枝の根元から先端の間にある落葉の落ち跡の数を数えればよく、落ち跡のないものは1年目、落ち跡が一つのものは2年目、落ち跡が二つのものは3年目であり、落ち跡が二つ以上あるものは生育期間が2年以上であると判断することができる。また、生育期間が2年未満の竹は節に白い粉(アミノ酸の一種であるチロシンとされている)が付着し、節が白く見えるが、年数を重ねるごとに竹の節が黒く変色していく為、竹の節が黒く変色しているものは生育期間が2年以上であると判断することができる。
【0015】
本発明に用いられる竹は、イネ科マダケ属の植物である。イネ科マダケ属の植物としては、例えば、モウソウチク、マダケ、ハチク、ホテイチク、キンメイチク、カシロダケ、ヒウガハンチク、シボチク、カタシボ、キッコウチク、ヒメハチク、タイワンマダケ、クロチク、ニタグロチク、ウンモウチク、ウサンチク、インヨウチク等を挙げることができ、これらを単独或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、マダケ、モウソウチク、ハチクであることが好ましく、入手が容易であることからモウソウチクであることが最も好ましい。
【0016】
本発明において、原料として用いる竹の部位は、特に制限されるものではなく、竹の全部または一部(竹稈、竹皮(表皮)、枝、葉)を用いることができる。竹は、蒸留しやすいように適当な長さに切ったもの、割ったもの、破片、粉末にしたものなどを使用することができ、例えば竹稈を適当な長さに切った後、縦方向に適当な幅で、例えば1~5cmの幅で割った竹片を原料として用いることができる。本発明においては、特に竹稈部位を好ましく使用することができる。
【0017】
本実施形態では、伐採した竹の竹稈を破砕機で破砕して竹片とし、破砕した竹片をマイクロ波減圧蒸留することで、本発明に係るコレステロール上昇抑制剤の有効成分である竹の留分を得る。竹稈を破砕するための破砕機は、特に限定されず、たとえば公知の樹木粉砕機を用いることができる。また、破砕した竹片をマイクロ波減圧蒸留するマイクロ波蒸留装置も、特に限定されず、公知のマイクロ波減圧蒸留装置を用いることができる。図1は、本発明に係るマイクロ波減圧蒸留装置1の一例を説明するための概要図である。以下に、図1を参照して、本実施形態に係るマイクロ波減圧蒸留装置1の一例について説明する。
【0018】
本実施形態に係るマイクロ波減圧蒸留装置1は、図1に示すように、蒸留槽11、トレイ12、マイクロ波照射部13、マイクロ波発振部14、制御部15、配管16、冷却塔17、減圧ポンプ18、および回収容器19を有する。
【0019】
マイクロ波発振部14は、マグネトロンや半導体素子などのマイクロ波の発振源を有しており、制御部15の制御により、使用者が設定した強度のマイクロ波を発振する。マイクロ波発振部14により発振されたマイクロ波は、マイクロ波照射部13を介して蒸留槽11の内部へと照射される。そして、蒸留槽11の内部に照射されたマイクロ波は、蒸留槽11の内部に配置されたトレイ12に収容された竹片を加熱(誘電加熱)し、竹片の内部に含有されている揮発性成分(水を含む)を蒸発させる。本実施形態では、減圧ポンプ18により蒸留槽11内を減圧状態にして、マイクロ波照射により加熱を行うため、蒸留槽11内の温度が60℃程度であっても、竹片の内部の揮発成分を有効に蒸発させることができる。蒸発した竹の揮発成分は、配管16を通って冷却塔17にまで移送され、冷却塔17において冷却され凝集液となり、回収容器19により留分として回収される。
【0020】
本実施形態では、水やエタノールなどの有機溶媒に竹片を浸漬させることなく、粉砕した竹片のみをそのままトレイ11に収容し、マイクロ波減圧蒸留を行う。そのため、マイクロ波減圧蒸留により得られる竹の留分は、竹の含有物のみに由来する成分からなり、竹に含まれる揮発成分の凝集液となる。
【0021】
また、当該留分は、竹が含有する水を含む水性成分と、油性成分とを含む。本実施形態では、上記留分に含まれる水性成分と油性成分とを、特に分離することなく用いるが、留分のうちの水性成分と油性成分とを分離して用いることもできる。
【0022】
このように竹をマイクロ波減圧蒸留することで得られた留分は、後述するように、コレステロール上昇抑制効果を有することが分かった。言い換えれば、当該留分を用いて、コレステロール上昇抑制剤を提供することができることが分かった。なお、当該留分を、そのままコレステロール上昇抑制剤として提供してもよいし、当該留分を凍結乾燥などすることで粉末化し、コレステロール上昇抑制剤として提供することもできる。また、当該留分またはそれを粉末にしたものに、他の成分を加えて、コレステロール上昇抑制剤として提供とすることもできる。
【0023】
さらに、本実施形態に係るコレステロール上昇抑制剤を、医薬品として提供することもできる。医薬品として提供する場合には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などにより経口投与を行うことができる。また、上記留分、または、留分を加工した液体または固体の状態で、飲料組成物、食品組成物、あるいは、家畜やペットの飼料組成物として提供することもできる。
【実施例
【0024】
本実施形態に係るコレステロール上昇抑制剤の実施例について説明する。
【0025】
まず、コレステロール上昇抑制剤の製造例について説明する。まず、伐採したモウソウチクの竹稈を樹木破砕機で破砕し、竹片を得た。なお、実施例で使用したモウソウチクは、生育期間が2年以上10年以内のものであり、伐採から1週間以内のものとした。
【0026】
そして、破砕した竹片(40Kg)を投入したトレイ12をマイクロ波減圧蒸留装置1の蒸留槽11内に入れて蒸留槽1を密閉した。減圧ポンプ18により蒸留槽11内を25kPaまで減圧し、12Kwの出力でマイクロ波を50分間連続して照射した。次いで、蒸発した竹の揮発性成分の蒸気を冷却した。なお、蒸気の温度は約61℃であった。そして、マイクロ波減圧蒸留により竹片から得られた留分を回収した。
【0027】
次に、得られた留分をマウスに与えて、当該留分のコレステロール上昇抑制効果を試験した。具体的には、まず、C57BL/6JJcl系統のオスのマウス16匹を、4匹ずつ4つのグループに分けた。
(A)水と普通食とを与えたグループ
(B)竹から得た留分(竹留分)と普通食とを与えたグループ
(C)水と高脂肪食とを与えたグループ
(D)竹から得た留分(竹留分)と高脂肪食とを与えたグループ
なお、上記(A),(B),(D)のグループのマウスは8週齢のマウスとし、上記(C)のグループのマウスは15週齢のマウスとした。
【0028】
本試験においては、全てのグループ(A)~(D)のマウスについて、水または竹から得た留分、並びに、普通食または高脂肪食を特に制限することなく自由に与えた。なお、下記表1に、普通食および高脂肪食の100g当たりの組成とエネルギー量とを示す。また、下記表2に、高脂肪食における脂肪酸組成を表示する。
【表1】
【表2】
【0029】
各グループのマウスを各グループに応じた食餌を与えて、3週間飼育した。ここで、図2および表3は、各グループのマウスの飼育前後の平均食餌量を示すグラフおよび表である。また、図3および表4は、各グループのマウスの飼育前後の平均体重を示すグラフおよび表である。
【表3】
【表4】
【0030】
図2および表3、並びに、図3および表4から、(A)~(D)の各グループとも、試験開始時(0週目)から試験終了時(3週間目)まで、食餌量はほぼ同程度であった。また、体重も、高脂肪食を与えたグループ(C),(D)では、普通食を与えたグループ(A),(B)よりも増加割合が大きくなったが、(C)と(D)では、ほぼ同様の割合で体重が増加した。
【0031】
そして、本試験では、(A)~(D)の各グループのマウスについて、試験開始時(0週目)の平均血中コレステロール濃度と、試験終了後(3週目)の平均血中コレステロール濃度を測定した。図4および表5にそれぞれの測定結果を示す。
【表5】
【0032】
図4および表5に示すように、普通食を与えたマウス((A)グループおよび(B)グループのマウス)では、水を与えたか、竹から得た上記留分を与えたかに関わらず、平均血中コレステロール濃度はほとんど上昇しなかった。これに対して、高脂肪食を与えたマウス((C)グループおよび(D)グループのマウス)では、水を与えた(C)グループのマウスの平均血中コレステロール濃度は大幅に上昇したのに対して、竹から得た留分を与えた(D)グループのマウスの平均血中コレステロール濃度はほとんど上昇しなかった。
【0033】
このことから、本実施形態にかかる竹の留分を与えることで、血中コレステロール濃度の上昇を抑制することができることが分かった。また、表2に示すように、本試験でマウスに与えた食餌に含まれる脂肪分はコレステロールを含むものではないため、本実施形態に係る竹の留分は、生体内でのコレステロールの合成を抑制するものであると考えられる。また、血中コレステロール濃度の上昇を抑制することで、高脂血症、動脈硬化症、メタボリックシンドロームなどの治療または予防剤として利用できるものと考えられる。
【0034】
また、本試験で得られた竹の留分を、ガスクロマトグラフ質量分析法により、成分分析を行った。下記表6に、当該留分の成分分析結果を表示する。
【表6】
【0035】
上記表6に示すように、含有量の多い成分として、インドールおよびインドールの一種である2-メチルナフタレンが30mg/L含まれ、オキシベンゾンが40mg/L含まれ、セスキテルペン類が合計で40mg/L含まれていた。どの物質がどのような機構でコレステロール上昇抑制効果を奏しているのかの詳細は不明であるが、今までの知見から、特定の単一の物質がコレステロール上昇抑制効果を奏しているのではなく、当該竹の留分に含まれる複数の物質が協働して、コレステロール上昇抑制効果を奏しているものと考えられる。
【0036】
また、別試験として、水と高脂肪食とを与えたグループ(C)のマウスに、食物繊維を投与しても、血中コレステロール濃度の上昇は抑えることができなかった。このことから、本実施形態に係る竹の留分は、食物繊維とは異なる作用で、血中コレステロール濃度の上昇は抑えるものであることが推測される。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
たとえば、上述した実施形態では、コレステロール上昇抑制剤について説明したが、本発明は、コレステロール上昇抑制剤に限定されず、コレステロール上昇を抑制するための飲食品、飼料、ペットフード、医薬品などに適用することができる。飲食品の態様としては、食品、飲料、ドレッシングなどの調味料、ゼリー菓子などの食品が含まれる。また、本発明に係る竹の留分は、血中コレステロールの上昇を抑制することができ、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂肪肝、心血管疾患、高尿酸血症などの生活習慣病を予防または治療することが期待される。そのため、本発明は、これら症状を予防または治療するための組成物として提供することができ、また、これら症状を予防または治療するための飲食品、飼料、ペットフード、医薬品などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…マイクロ波減圧蒸留装置
11…蒸留槽
12…トレイ
13…マイクロ波照射部
14…マイクロ波発振部
15…制御部
16…配管
17…冷却部
18…減圧ポンプ
19…回収容器
図1
図2
図3
図4