(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】中皿付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
B65D85/50 100
(21)【出願番号】P 2019207007
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390007537
【氏名又は名称】株式会社ケーピープラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 智之
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-137876(JP,U)
【文献】特開平03-030664(JP,A)
【文献】特開2013-052913(JP,A)
【文献】特開2008-074420(JP,A)
【文献】登録実用新案第3118276(JP,U)
【文献】特開2016-216089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0059578(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 43/08
B65D 77/08-77/20
B65D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開口を画定する環状の第1の外向きフランジ部を含む容器本体と、
前記第1の外向きフランジ部上に載置され、前記第1の外向きフランジ部の外縁に略整合する外縁を画定する環状の第2の外向きフランジ部を含む中皿と、
前記中皿上に配置される上蓋主部及び前記上蓋主部の外縁から垂下し、前記第1の外向きフランジ部の外縁に嵌合する筒状部を含む上蓋とを有する中皿付き容器であって、
前記中皿は前記第2の外向きフランジ部の外縁から外方に延出したタブを有し、
前記タブは、前記第2の外向きフランジ部の外縁との境界部或いはその近傍に、当該タブの他の部分に比して上下方向に曲げ変形容易な線状の折曲部を含み、
前記折曲部は円弧状に湾曲している中皿付き容器。
【請求項2】
前記折曲部は所定間隔をおいて線状に配置された複数の孔を含む請求項
1に記載の中皿付き容器。
【請求項3】
前記中皿は前記タブを一体的に有し、前記上蓋は前記中皿に比して曲げ剛性が低い請求項1
又は2に記載の中皿付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中皿付き容器に関し、更に詳細には、容器本体と上蓋との間に中皿を有する食品の収容に適した中皿付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
牛丼、中華丼、カレーライスやパスタ料理等の持帰り用の販売に用いられる容器として、容器本体と上蓋との間に中皿を有する中皿付き容器が知られている。中皿付き容器は、容器本体に米飯あるいは麺類及びスープ、出汁類を収容し、中皿に具材を収容することにより、米飯あるいは麺類と具材とを分離して収容することができる。
【0003】
この種の中皿付き容器としては、中皿の取扱が容易になるように、中皿に、その外縁から外方に延出して指先で掴まれる舌片状のタブを有するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の中皿付き容器が、上蓋が、容器本体との間に中皿の外縁を挟んで、容器本体の外縁に外側から嵌合することにより、中皿と共に容器本体に取り付けられる外嵌合による中皿付き容器である場合には、上蓋は、容器本体との間にタブを挟み、タブが中皿の外縁から下方に折り曲がった弾性変形した状態で容器本体に嵌合することになる。
【0006】
このため、外嵌合による中皿付き容器では、上蓋を容器本体に嵌合させる際に、タブを弾性変形させなくてはならず、タブの曲げ剛性が高いと、その嵌合に大きい力を要し、容器本体に上蓋を装着する作業性が悪くなる。
【0007】
また、外嵌合による中皿付き容器では、上蓋が容器本体に嵌合した状態では、タブの弾性変形による反発力が、上蓋が容器本体から外れる方向に作用するため、上蓋の容器本体に対する固定強度が低下し、容器本体に対する上皿の装着の確実性が低下する。容器本体に対する上蓋の固定が所要の強度をもって確実に行われるためには、上蓋と容器本体との嵌合を強くする必要が生じ、このことによっても容器本体に上蓋を装着する作業性が悪くなる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、中皿付き容器において、中皿に設けられたタブにより、容器本体に上蓋を装着する作業性が悪くなることを回避し、併せて容器本体に対する上蓋の装着が確実に行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による中皿付き容器は、上方開口を画定する環状の第1の外向きフランジ部(26)を含む容器本体(20)と、前記第1の外向きフランジ部上に載置され、前記第1の外向きフランジ部の外縁(26A)に略整合する外縁(38A)を画定する環状の第2の外向きフランジ部(38)を含む中皿(30)と、前記中皿上に配置される上蓋主部(52)及び前記上蓋主部の外縁から垂下し、前記第1の外向きフランジ部の外縁に嵌合する筒状部(54)を含む上蓋(50)とを有する中皿付き容器(10)であって、前記中皿は前記第2の外向きフランジ部の外縁から外方に延出したタブ(40)を有し、前記タブは、前記第2の外向きフランジ部の外縁との境界部或いはその近傍に、当該タブの他の部分に比して上下方向に曲げ変形容易な線状の折曲部(42)を含む。
【0010】
この構成によれば、中皿に設けられたタブにより、容器本体に上蓋を装着する作業性が悪くなることがなく、容器本体に対する上蓋の装着が確実に行われる。
【0011】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、前記折曲部は直線状に設けられている。
【0012】
この構成によれば、タブが折り曲がり易くなり、タブの弾性変形による反発力が大きくならない。
【0013】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、第1の外向きフランジ部が湾曲形状の輪郭を有し、前記折曲部は前記湾曲形状の輪郭に沿って延在する。
【0014】
この構成によれば、折曲部の曲率によってタブの折り曲がり易さが調整されると共に、容器本体と上蓋との気密性が向上する。
【0015】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、前記折曲部は所定間隔をおいて線状に配置された複数の孔を含む。
【0016】
この構成によれば、折曲部を中皿の外形打抜き加工工程において作成することができ、中皿の加工が折曲部によって煩雑なものになることがない。
【0017】
上記中皿付き容器(10)において、好ましくは、前記中皿は前記タブを一体的に有し、前記上蓋は前記中皿に比して曲げ剛性が低い。
【0018】
この構成によれば、上蓋の容器本体に対する取付性が損なわれることがない。
【発明の効果】
【0019】
本発明による中皿付き容器によれば、中皿に設けられたタブにより、容器本体に上蓋を装着する作業性が悪くなることがなく、容器本体に対する上蓋の装着が確実に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による中皿付き容器の一つの実施形態の組立状態の断面図(
図3の線A-Aに沿った断面図相当)
【
図2】本実施形態による中皿付き容器の分離状態の断面図(
図3の線A-Aに沿った断面図相当)
【
図3】本実施形態による中皿付き容器の中皿の斜視図
【
図4】他の実施形態による中皿付き容器の中皿の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明による中皿付き容器の一つの実施形態を、
図1~
図3を参照して説明する。
【0022】
中皿付き容器10は、牛丼、中華丼、カレーライスやパスタ料理等の持帰り用の販売に用いられる密閉容器であり、容器本体20と、中皿30と、上蓋50とを有する。
【0023】
容器本体20は、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂による真空成形品(熱プレス成形品)であり、上方に向けて開口した上方開口22を有する丼状の容器主部24及び容器主部24の上部から外方に延出して上方開口22を画定する円環状の本体フランジ部(第1の外向きフランジ部)26を含み、容器主部24内に米飯、麺類及びスープ、出汁類等を収容する。
【0024】
中皿30は、ポリスチレンやポリプロピレン等の非発泡の熱可塑性樹脂からなる樹脂シートを熱プレス(真空成形)等によって成形した成形品であり、容器本体20の上方開口22を閉じるように容器本体20の上部に装着され、具材等を収容する。
【0025】
中皿30は、平面視で円形の底部32と、底部32の外縁より立ち上がった略円筒状の側周部34と、側周部34の上縁から外方に延出した円環状の中皿フランジ部(第2の外向きフランジ部)38とを含み、浅皿状をなす。
【0026】
中皿30は、具材等を適切に受け持ち、変形し易いことにより扱われ難くならないように、材質や厚さ等の設定によって上蓋50に比して高い曲げ剛性を有する。
【0027】
中皿フランジ部38は、本体フランジ部26と略同一の外径を有し、本体フランジ部26上に載置され、本体フランジ部26の外縁26Aに上下に略整合する外縁38Aを有する。
【0028】
中皿30は、
図3に示されているように、中皿フランジ部38の外縁38Aから外方に延出したタブ40を一体的に有する。タブ40は、中皿フランジ部38の中心周りに180度回転変位した2箇所に設けられ、各々、平面視で矩形に形成されている。
【0029】
各タブ40は中皿フランジ部38の外縁38Aとの境界部(基部)に折曲部42を含む。折曲部42は、外縁38Aに対して接線方向に直線状に所定間隔をおいて配置されたスリット状の複数の孔44を含み、ミシン目をなす。これにより、折曲部42は、タブ40の他の部分(折曲部42以外の部分)や中皿フランジ部38に比して上下方向に曲げ変形容易な線状をなす。
【0030】
ミシン目による折曲部42は、熱プレス後に行われる中皿30の外形打抜き加工の工具に、ミシン目を加工する刃部が設けられることにより、中皿30の外形打抜き加工工程において加工されてよい。これにより、折曲部42のために加工工程を追加することがなく、中皿30の加工が折曲部42によって煩雑なものになることがない。
【0031】
各タブ40は、
図3に示されているように、折曲部42よりも遊端側の領域に、格子状に配置された多数の点状のエンボス加工部46を有する。エンボス加工部46は、タブ40の指掴みの滑り止めとして作用すると共に、点状リブとしても作用し、タブ40の折曲部42よりも遊端側の領域の曲げ剛性を高める。
【0032】
上蓋50は、ポリスチレンやポリプロピレン等の非発泡の熱可塑性樹脂からなる樹脂シートを熱プレス(真空成形)等によって成形した成形品であり、丸形の浅皿を上下反転したような蓋体をなしている。上蓋50は中皿30に比して曲げ剛性が低い。上蓋50は、中皿30上に配置される平面視で円形の上蓋主部52及び上蓋主部52の外向きフランジ部52Aの外縁から垂下した筒状部54及び筒状部54の遊端から外方に延出した補強フランジ部56を含む。外向きフランジ部52Aは本体フランジ部26及び中皿フランジ部38に対向する。
【0033】
筒状部54の遊端近傍には、内方に膨出した半円形断面による係止部58が周方向の複数箇所に形成されている。係止部58は、本体フランジ部26の外縁26A及び中皿フランジ部38の外縁38Aを乗り越えて本体フランジ部26の下面に係合し、容器本体20に対する上蓋50の抜け止めを行う。
【0034】
容器本体20に対する中皿30及び上蓋50の取り付けは、先ず、上蓋50が容器本体20に取り付けられていない状態で、円筒部36が容器主部24の内側に嵌合し、中皿フランジ部38が本体フランジ部26上に載るように、中皿30を容器本体20に対してセットする。
【0035】
次に、上蓋50の筒状部54が本体フランジ部26及び中皿フランジ部38を外囲すべく、つまり、筒状部54内に本体フランジ部26及び中皿フランジ部38が入り込むように、上蓋50を中皿30の上方から容器本体20に対してセットする。
【0036】
これにより、
図2に示されているように、上蓋50の筒状部54の内周面54Aが本体フランジ部26の外縁26A及び中皿フランジ部38の外縁38Aに嵌合し、外嵌合による容器本体20に対する上蓋50の取り付けが行われる。
【0037】
上蓋50の筒状部54の内周面54Aが本体フランジ部26の外縁26A及び中皿フランジ部38の外縁38Aに嵌合する際には、各タブ40が、筒状部54の内周面54Aと本体フランジ部26の外縁26Aとに挟まれて下方に折り曲げられる。
【0038】
この各タブ40の折り曲がりは、折曲部42を折曲線として折曲部42の曲げ変形のもとに行われる。折曲部42は、複数の孔44を含むミシン目をなしてタブ40の折曲部42以外の部分や中皿フランジ部38に比して上下方向に曲げ変形容易であることにより、上蓋50を容器本体20に嵌合させる際に、大きい力を要することがなく、容器本体20に対して上蓋50を装着する作業性が向上する。
【0039】
また、各タブ40の折り曲がりが、曲げ変形容易な折曲部42の曲げ変形のもとに行われることにより、各タブ40が折り曲がった状態において、各タブ40の弾性変形による反発力が大きくなることがない。これにより、各タブ40が折り曲がりに起因して上蓋50に、容器本体20から外れる方向に作用する力が低減し、容器本体20に対する上蓋50の装着の確実性が向上する。このことにより、容器本体20と上蓋50との嵌合を強くする必要がなくなり、容器本体20に対して上蓋50を装着する作業性が向上する。
【0040】
上蓋50の外向きフランジ部52Aが中皿フランジ部38に当接するまで筒状部54が本体フランジ部26及び中皿フランジ部38の外周囲に押し込まれると、容器本体20に対する上蓋50の取り付けが完了する。この時には、係止部58が、本体フランジ部26の外縁26A及び中皿フランジ部38の外縁38Aを乗り越え、本体フランジ部26の下面に係合する。この係合により、上蓋50が容器本体20に対して抜け止めされる。
【0041】
上蓋50の曲げ剛性は中皿30の曲げ剛性に比し低いので、筒状部54の弾性変形によって、係止部58が本体フランジ部26の外縁26A及び中皿フランジ部38の外縁38Aを乗り越えことが過剰な力を有することなく行われる。
【0042】
上蓋50が容器本体20に対して抜け止めされている状態下において、各タブ40の弾性変形による反発力は係止部58と本体フランジ部26との係合部に作用するが、折曲部42がない場合に比して各タブ40の弾性変形による反発力が小さいので、抜け止めに要する係合力を軽減できる。
【0043】
上述した作用、効果は、上蓋50が中皿30に比して曲げ剛性を有している場合、換言すると、中皿30が上蓋50に比して高い曲げ剛性を有している場合に特に有用である。つまり、中皿30は、折曲部42によるタブ40の折り曲がり易さとは別に、中皿30として必要な曲げ剛性を有していよく、上蓋50の曲げ剛性が中皿30の曲げ剛性より低くても、タブ40の折り曲がり状態での反発力によって上蓋50が不当に変形することが抑制される。
【0044】
これにより、中皿30が上蓋50に比して高い曲げ剛性を有しても、上蓋50の容器本体20に対する固定及び上蓋50による容器本体20及び中皿30の気密性が担保される。
【0045】
次に、中皿30の他の実施形態を、
図4を参照して説明する。なお、
図4において、
図3に対応する部分は、
図3に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0046】
この実施形態では、各タブ40の折曲部42は本体フランジ部26の湾曲形状の輪郭に沿って、つまり本体フランジ部26の外縁26Aに沿う円弧状に延在している。更に換言すると、折曲部42は中皿フランジ部38の外縁38Aに沿って円弧状に湾曲している。
【0047】
折曲部42が円弧状である場合には、直線状である場合に比してタブ40の上下方向の折り曲がり易さは低減するが、本体フランジ部26の外縁26Aに沿う円弧状の折曲線をもってタブ40に折り曲がるから、折曲部42の両端42A、42Bが中皿フランジ部38の外縁38Aが大きく離間することがない。
【0048】
これにより、折曲部42の両端42A、42Bによって上蓋50の筒状部54が外側に大きく押し拡げられることがなくなり、上蓋50と容器本体20及び中皿30との気密性が向上する。また、各タブ40の上下方向の折り曲がり易さを折曲部42の曲率によって調整することができる。これにより、各タブ40の折り曲がり易さを仕様に応じた適正値に容易に設定することができる。
【0049】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0050】
例えば、折曲部42の各孔44の形状は、折曲部42の延在方向に長いスリット形状に限られることはなく、円形、楕円形等であってもよい。折曲部42は、複数の孔44によるミシン目状のもの以外に、他の部分より線状に薄肉化されたものやハーフカット等により構成されていてもよい。折曲部42は中皿フランジ部38の外縁38Aとタブ40との境界部からタブ40の遊端側に少し離れた境界部の近傍に設けられていてもよい。
【0051】
つまり、タブ40は、中皿フランジ部38の外縁38Aとの境界部或いはその近傍に、折曲部42をなすフレキシブルヒンジ或いはフレキシブルヒンジ相当の構成を具備したものであればよい。
【0052】
タブ40の個数は、1個、3個以上等、2個に限定されない。
【0053】
容器本体20、中皿30、上蓋50は、パルプモールド品であってもよい。皿付き容器は、丸形に限られることはなく、楕円形、長円形、角形等の各種形状のものであってもよい。中皿30が角形の場合には、タブ40は中皿30の角部以外に設けられる。
【0054】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 :中皿付き容器
20 :容器本体
22 :上方開口
24 :容器主部
26 :本体フランジ部(第1の外向きフランジ部)
26A :外縁
30 :中皿
32 :底部
34 :側周部
38 :中皿フランジ部(第2の外向きフランジ部)
38A :外縁
40 :タブ
42 :折曲部
44 :孔
46 :エンボス加工部
50 :上蓋
52 :上蓋主部
52A :外向きフランジ部
54 :筒状部
54A :内周面
56 :補強フランジ部
58 :係止部