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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】抗がん剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20231020BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20231020BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20231020BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231020BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20231020BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20231020BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K31/337
A61K31/475
A61K31/519
A61K31/522
A61K31/5377
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019562125
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2018047937
(87)【国際公開番号】W WO2019131794
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2017252178
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000173588
【氏名又は名称】公益財団法人がん研究会
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清宮 啓之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】八代田 陽子
(72)【発明者】
【氏名】村松 由起子
(72)【発明者】
【氏名】白井 文幸
(72)【発明者】
【氏名】鷲塚 健一
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526676(JP,A)
【文献】特表2015-535831(JP,A)
【文献】特表2017-521439(JP,A)
【文献】特表2015-506965(JP,A)
【文献】特表2004-520299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
A61K 31/00-31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(11)で示される化合物及びこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤とを組み合わせた、抗がん剤。
【化1】
[一般式(1)中、
、A、A及びAは、A及びAがいずれも単結合を示すか、A及びAのうちのいずれかが単結合を示しかつ他方がCHを示すか、又は、Aが単結合を示しかつAがCHを示し、
及びAがいずれも単結合を示す場合又はAがCHかつAが単結合を示す場合には、A及びAのうちのいずれかがCH若しくはCOであり他方がO若しくはNRであり、Aが単結合かつAがCHを示す場合には、A及びAのうちのいずれかがNRであり他方がCH若しくはCOであり、Aが単結合かつAがCHを示す場合には、A及びAのうちのいずれかがNRであり他方がCH又はCOであり、
ここでRは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-メトキシエチル基、3-メトキシプロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2,3-ジフルオロエチル基、2-クロロエチル基、3-クロロプロピル基、2-ブロモエチル基、2-ヨードエチル基、シアノメチル基、2-シアノエチル基、ベンジル基、2-フルオロフェニルメチル基、2-ピリジルメチル基、3-ピロジルメチル基、4-ピリジルメチル基、6-クロロ-3-ピロジル基、2-ピリミジルメチル基、5-ピリミジルメチル基、シクロプロピルメチル基、2-テトラヒドロフリルメチル基、アミジノメチル基、又はカルバモイルメチル基を示し;
、E、E及びEからなる構造は、次式:-E-E-E-E-(ただし、この式においてE、E、E及びEの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示される基であり、かつEがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであるか、Eが単結合を示し、次式:-E-E=E-で示される基であり、かつEがO若しくはSでありE及びEがCHであるか、又は、Eが単結合を示し、次式:-E=E-E-で示される基であり、かつE及びEがCHでありEがO又はSであり、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-メトキシエトキシ基、カルボキシメトキシ基、5-テトラゾリルメトキシ基、シアノメトキシ基、4-ピペリジルメトキシ基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ基、3-オキセタニルメトキシ基、2-モルホリノエトキシ基、2-(N-メチルピペラジノ)エトキシ基、2-ピロリジノエトキシ基、2-ピペリジノエトキシ基、3-ピロリジノプロポキシ基、3-テトラヒドロフリルオキシ基、4-テトラヒドロピラニルオキシ基、4-(N-メチルピペリジル)メトキシ基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ基、カルバモイルメトキシ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、4-シアノピペリジノ基、4-メトキシカルボニルピペラジノ基、3,5-ジメチルモルホリノ基、3,5-ジメチルピペラジノ基、4-メトキシピペリジノ基、4-カルボキシピペリジノ基、N-メチルスルホニルピペラジノ基、4-メチルスルホニルピペリジノ基、N-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルピペラジノ基、N-ヒドロキシアセチルピペラジノ基、N-アセチルピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基、N-(3-オキセタニル)ピペラジノ基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、1-メチルピラゾール-4-イル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-エトキシカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-(N-メチルピペラジノ)フェニル基、エトキシカルボニル基、N-(2-モルホリノエチル)カルバモイル基、2-オキサゾリル基、4-モルホリノカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-ピロリジノメチルオキサゾール-2-イル基、又は4-カルボキシオキサゾール-2-イル基であり;
、G、G及びGからなる構造は、次式:-G-G-G-G-(ただし、この式においてG、G、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-CH=CR-(ただし、A及びAがいずれも単結合を示す場合であって、AがOでありAがCOである場合を除く。)、次式:-CH=CH-CH=N-(ただし、A及びAがいずれも単結合を示す場合であって、AがOでありAがCOである場合を除く。)、次式:-CH-CH-CH-CH-、次式:-CO-CH-CH-N(R)-、次式:-CH-CF-CH-CH-、次式:-CH-O-CH-CH-、次式:-CH-S-CH-CH-、次式:-CH-CH-N(R)-CH-、次式:-CH-CH-CH-O-、次式:-CH-CH-CH-N(R)-、若しくは次式:-O-CH-CH-N(R)-で示される基であるか、又は、Gが単結合を示し、次式:-G-G-G-(ただし、G、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-N(R)-、次式:-CH-CH-N(R)-、次式:-N=CH-N(R)-、若しくは次式:-N(R)-CH=N-で示される基であり、
は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C1-6アルキル基、又はC1-6アルキルオキシ基であり、
は、水素原子、又は、水酸基、C1-6アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びシアノ基からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいC1-6アルキル基(ここで、前記置換基が2個以上の場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。)である。]
【化2】
[一般式(11)中、
及びJは、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J及びJがいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示し、
111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、前記アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、C1-6アルキル基で置換されていてもよいピペラジニル基、ピペラジニルC1-6アルキル基、モルホリニル基、次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-R136-C(=O)-O-R137[式中、R136は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R137は水素原子又はC1-3アルキル基を示す]から選ばれる基であり、
113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基、次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基、次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基、次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基、次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基、次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成しており、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基、次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示し、
101が8位の位置にある場合には当該R101とR103とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
【請求項2】
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(11)で示される化合物及びこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤。
【化3】
[一般式(1)中、
、A 、A 及びA は、A 及びA がいずれも単結合を示すか、A 及びA のうちのいずれかが単結合を示しかつ他方がCH を示すか、又は、A が単結合を示しかつA がCH を示し、
及びA がいずれも単結合を示す場合又はA がCH かつA が単結合を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがCH 若しくはCOであり他方がO若しくはNR であり、A が単結合かつA がCH を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがNR であり他方がCH 若しくはCOであり、A が単結合かつA がCH を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがNR であり他方がCH 又はCOであり、
ここでR は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-メトキシエチル基、3-メトキシプロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2,3-ジフルオロエチル基、2-クロロエチル基、3-クロロプロピル基、2-ブロモエチル基、2-ヨードエチル基、シアノメチル基、2-シアノエチル基、ベンジル基、2-フルオロフェニルメチル基、2-ピリジルメチル基、3-ピロジルメチル基、4-ピリジルメチル基、6-クロロ-3-ピロジル基、2-ピリミジルメチル基、5-ピリミジルメチル基、シクロプロピルメチル基、2-テトラヒドロフリルメチル基、アミジノメチル基、又はカルバモイルメチル基を示し;
、E 、E 及びE からなる構造は、次式:-E -E -E -E -(ただし、この式においてE 、E 、E 及びE の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示される基であり、かつE がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であるか、E が単結合を示し、次式:-E -E =E -で示される基であり、かつE がO若しくはSでありE 及びE がCHであるか、又は、E が単結合を示し、次式:-E =E -E -で示される基であり、かつE 及びE がCHでありE がO又はSであり、
、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-メトキシエトキシ基、カルボキシメトキシ基、5-テトラゾリルメトキシ基、シアノメトキシ基、4-ピペリジルメトキシ基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ基、3-オキセタニルメトキシ基、2-モルホリノエトキシ基、2-(N-メチルピペラジノ)エトキシ基、2-ピロリジノエトキシ基、2-ピペリジノエトキシ基、3-ピロリジノプロポキシ基、3-テトラヒドロフリルオキシ基、4-テトラヒドロピラニルオキシ基、4-(N-メチルピペリジル)メトキシ基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ基、カルバモイルメトキシ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、4-シアノピペリジノ基、4-メトキシカルボニルピペラジノ基、3,5-ジメチルモルホリノ基、3,5-ジメチルピペラジノ基、4-メトキシピペリジノ基、4-カルボキシピペリジノ基、N-メチルスルホニルピペラジノ基、4-メチルスルホニルピペリジノ基、N-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルピペラジノ基、N-ヒドロキシアセチルピペラジノ基、N-アセチルピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基、N-(3-オキセタニル)ピペラジノ基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、1-メチルピラゾール-4-イル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-エトキシカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-(N-メチルピペラジノ)フェニル基、エトキシカルボニル基、N-(2-モルホリノエチル)カルバモイル基、2-オキサゾリル基、4-モルホリノカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-ピロリジノメチルオキサゾール-2-イル基、又は4-カルボキシオキサゾール-2-イル基であり;
、G 、G 及びG からなる構造は、次式:-G -G -G -G -(ただし、この式においてG 、G 、G 及びG の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-CH=CR -(ただし、A 及びA がいずれも単結合を示す場合であって、A がOでありA がCOである場合を除く。)、次式:-CH=CH-CH=N-(ただし、A 及びA がいずれも単結合を示す場合であって、A がOでありA がCOである場合を除く。)、次式:-CH -CH -CH -CH -、次式:-CO-CH -CH -N(R )-、次式:-CH -CF -CH -CH -、次式:-CH -O-CH -CH -、次式:-CH -S-CH -CH -、次式:-CH -CH -N(R )-CH -、次式:-CH -CH -CH -O-、次式:-CH -CH -CH -N(R )-、若しくは次式:-O-CH -CH -N(R )-で示される基であるか、又は、G が単結合を示し、次式:-G -G -G -(ただし、G 、G 及びG の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-N(R )-、次式:-CH -CH -N(R )-、次式:-N=CH-N(R )-、若しくは次式:-N(R )-CH=N-で示される基であり、
は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C 1-6 アルキル基、又はC 1-6 アルキルオキシ基であり、
は、水素原子、又は、水酸基、C 1-6 アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びシアノ基からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいC 1-6 アルキル基(ここで、前記置換基が2個以上の場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。)である。]
【化4】
[一般式(11)中、
及びJ は、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J 及びJ がいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101 は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC 1-6 アルキル基、OR 111 、又は次式:-N(R 112a )-R 112b で示される基を示し、
111 、R 112a 及びR 112b は、それぞれ独立して、水素原子又はC 1-6 アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102 は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C 1-6 アルキル基、OR 113 、次式:-N(R 114a )-R 114b で示される基、次式:-NH-C(=O)-R 115 で示される基、次式:-C(=O)-R 116 で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、前記アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、C 1-6 アルキル基で置換されていてもよいピペラジニル基、ピペラジニルC 1-6 アルキル基、モルホリニル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-R 136 -C(=O)-O-R 137 [式中、R 136 は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R 137 は水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す]から選ばれる基であり、
113 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
114a 及びR 114b は、それぞれ独立して、水素原子又はC 1-6 アルキル基であり、
115 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R 121 で示される基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
116 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR 122 、又は次式:-N(R 123a )-R 123b で示される基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
121 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
122 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
123a 及びR 123b は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R 123a 及びR 123b が一体となって環状アミンを形成しており、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
103 は、水素原子、C 1-6 アルキル基、C 3-6 シクロアルキル基、又はC 3-6 シクロアルキルC 1-6 アルキル基を示し、
101 が8位の位置にある場合には当該R 101 とR 103 とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
【請求項3】
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(11)で示される化合物及びこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、微小管阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤。
【化5】
[一般式(1)中、
、A 、A 及びA は、A 及びA がいずれも単結合を示すか、A 及びA のうちのいずれかが単結合を示しかつ他方がCH を示すか、又は、A が単結合を示しかつA がCH を示し、
及びA がいずれも単結合を示す場合又はA がCH かつA が単結合を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがCH 若しくはCOであり他方がO若しくはNR であり、A が単結合かつA がCH を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがNR であり他方がCH 若しくはCOであり、A が単結合かつA がCH を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがNR であり他方がCH 又はCOであり、
ここでR は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-メトキシエチル基、3-メトキシプロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2,3-ジフルオロエチル基、2-クロロエチル基、3-クロロプロピル基、2-ブロモエチル基、2-ヨードエチル基、シアノメチル基、2-シアノエチル基、ベンジル基、2-フルオロフェニルメチル基、2-ピリジルメチル基、3-ピロジルメチル基、4-ピリジルメチル基、6-クロロ-3-ピロジル基、2-ピリミジルメチル基、5-ピリミジルメチル基、シクロプロピルメチル基、2-テトラヒドロフリルメチル基、アミジノメチル基、又はカルバモイルメチル基を示し;
、E 、E 及びE からなる構造は、次式:-E -E -E -E -(ただし、この式においてE 、E 、E 及びE の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示される基であり、かつE がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であるか、E が単結合を示し、次式:-E -E =E -で示される基であり、かつE がO若しくはSでありE 及びE がCHであるか、又は、E が単結合を示し、次式:-E =E -E -で示される基であり、かつE 及びE がCHでありE がO又はSであり、
、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-メトキシエトキシ基、カルボキシメトキシ基、5-テトラゾリルメトキシ基、シアノメトキシ基、4-ピペリジルメトキシ基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ基、3-オキセタニルメトキシ基、2-モルホリノエトキシ基、2-(N-メチルピペラジノ)エトキシ基、2-ピロリジノエトキシ基、2-ピペリジノエトキシ基、3-ピロリジノプロポキシ基、3-テトラヒドロフリルオキシ基、4-テトラヒドロピラニルオキシ基、4-(N-メチルピペリジル)メトキシ基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ基、カルバモイルメトキシ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、4-シアノピペリジノ基、4-メトキシカルボニルピペラジノ基、3,5-ジメチルモルホリノ基、3,5-ジメチルピペラジノ基、4-メトキシピペリジノ基、4-カルボキシピペリジノ基、N-メチルスルホニルピペラジノ基、4-メチルスルホニルピペリジノ基、N-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルピペラジノ基、N-ヒドロキシアセチルピペラジノ基、N-アセチルピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基、N-(3-オキセタニル)ピペラジノ基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、1-メチルピラゾール-4-イル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-エトキシカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-(N-メチルピペラジノ)フェニル基、エトキシカルボニル基、N-(2-モルホリノエチル)カルバモイル基、2-オキサゾリル基、4-モルホリノカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-ピロリジノメチルオキサゾール-2-イル基、又は4-カルボキシオキサゾール-2-イル基であり;
、G 、G 及びG からなる構造は、次式:-G -G -G -G -(ただし、この式においてG 、G 、G 及びG の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-CH=CR -(ただし、A 及びA がいずれも単結合を示す場合であって、A がOでありA がCOである場合を除く。)、次式:-CH=CH-CH=N-(ただし、A 及びA がいずれも単結合を示す場合であって、A がOでありA がCOである場合を除く。)、次式:-CH -CH -CH -CH -、次式:-CO-CH -CH -N(R )-、次式:-CH -CF -CH -CH -、次式:-CH -O-CH -CH -、次式:-CH -S-CH -CH -、次式:-CH -CH -N(R )-CH -、次式:-CH -CH -CH -O-、次式:-CH -CH -CH -N(R )-、若しくは次式:-O-CH -CH -N(R )-で示される基であるか、又は、G が単結合を示し、次式:-G -G -G -(ただし、G 、G 及びG の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-N(R )-、次式:-CH -CH -N(R )-、次式:-N=CH-N(R )-、若しくは次式:-N(R )-CH=N-で示される基であり、
は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C 1-6 アルキル基、又はC 1-6 アルキルオキシ基であり、
は、水素原子、又は、水酸基、C 1-6 アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びシアノ基からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいC 1-6 アルキル基(ここで、前記置換基が2個以上の場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。)である。]
【化6】
[一般式(11)中、
及びJ は、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J 及びJ がいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101 は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC 1-6 アルキル基、OR 111 、又は次式:-N(R 112a )-R 112b で示される基を示し、
111 、R 112a 及びR 112b は、それぞれ独立して、水素原子又はC 1-6 アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102 は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C 1-6 アルキル基、OR 113 、次式:-N(R 114a )-R 114b で示される基、次式:-NH-C(=O)-R 115 で示される基、次式:-C(=O)-R 116 で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、前記アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、C 1-6 アルキル基で置換されていてもよいピペラジニル基、ピペラジニルC 1-6 アルキル基、モルホリニル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-R 136 -C(=O)-O-R 137 [式中、R 136 は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R 137 は水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す]から選ばれる基であり、
113 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
114a 及びR 114b は、それぞれ独立して、水素原子又はC 1-6 アルキル基であり、
115 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R 121 で示される基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
116 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR 122 、又は次式:-N(R 123a )-R 123b で示される基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
121 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
122 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
123a 及びR 123b は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R 123a 及びR 123b が一体となって環状アミンを形成しており、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
103 は、水素原子、C 1-6 アルキル基、C 3-6 シクロアルキル基、又はC 3-6 シクロアルキルC 1-6 アルキル基を示し、
101 が8位の位置にある場合には当該R 101 とR 103 とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
【請求項4】
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(11)で示される化合物及びこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物及び微小管阻害化合物を有効成分として配合した抗がん剤。
【化7】
[一般式(1)中、
、A 、A 及びA は、A 及びA がいずれも単結合を示すか、A 及びA のうちのいずれかが単結合を示しかつ他方がCH を示すか、又は、A が単結合を示しかつA がCH を示し、
及びA がいずれも単結合を示す場合又はA がCH かつA が単結合を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがCH 若しくはCOであり他方がO若しくはNR であり、A が単結合かつA がCH を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがNR であり他方がCH 若しくはCOであり、A が単結合かつA がCH を示す場合には、A 及びA のうちのいずれかがNR であり他方がCH 又はCOであり、
ここでR は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-メトキシエチル基、3-メトキシプロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2,3-ジフルオロエチル基、2-クロロエチル基、3-クロロプロピル基、2-ブロモエチル基、2-ヨードエチル基、シアノメチル基、2-シアノエチル基、ベンジル基、2-フルオロフェニルメチル基、2-ピリジルメチル基、3-ピロジルメチル基、4-ピリジルメチル基、6-クロロ-3-ピロジル基、2-ピリミジルメチル基、5-ピリミジルメチル基、シクロプロピルメチル基、2-テトラヒドロフリルメチル基、アミジノメチル基、又はカルバモイルメチル基を示し;
、E 、E 及びE からなる構造は、次式:-E -E -E -E -(ただし、この式においてE 、E 、E 及びE の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示される基であり、かつE がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であり、E がN若しくはCR であるか、E が単結合を示し、次式:-E -E =E -で示される基であり、かつE がO若しくはSでありE 及びE がCHであるか、又は、E が単結合を示し、次式:-E =E -E -で示される基であり、かつE 及びE がCHでありE がO又はSであり、
、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-メトキシエトキシ基、カルボキシメトキシ基、5-テトラゾリルメトキシ基、シアノメトキシ基、4-ピペリジルメトキシ基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ基、3-オキセタニルメトキシ基、2-モルホリノエトキシ基、2-(N-メチルピペラジノ)エトキシ基、2-ピロリジノエトキシ基、2-ピペリジノエトキシ基、3-ピロリジノプロポキシ基、3-テトラヒドロフリルオキシ基、4-テトラヒドロピラニルオキシ基、4-(N-メチルピペリジル)メトキシ基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ基、カルバモイルメトキシ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、4-シアノピペリジノ基、4-メトキシカルボニルピペラジノ基、3,5-ジメチルモルホリノ基、3,5-ジメチルピペラジノ基、4-メトキシピペリジノ基、4-カルボキシピペリジノ基、N-メチルスルホニルピペラジノ基、4-メチルスルホニルピペリジノ基、N-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルピペラジノ基、N-ヒドロキシアセチルピペラジノ基、N-アセチルピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基、N-(3-オキセタニル)ピペラジノ基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、1-メチルピラゾール-4-イル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-エトキシカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-(N-メチルピペラジノ)フェニル基、エトキシカルボニル基、N-(2-モルホリノエチル)カルバモイル基、2-オキサゾリル基、4-モルホリノカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-ピロリジノメチルオキサゾール-2-イル基、又は4-カルボキシオキサゾール-2-イル基であり;
、G 、G 及びG からなる構造は、次式:-G -G -G -G -(ただし、この式においてG 、G 、G 及びG の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-CH=CR -(ただし、A 及びA がいずれも単結合を示す場合であって、A がOでありA がCOである場合を除く。)、次式:-CH=CH-CH=N-(ただし、A 及びA がいずれも単結合を示す場合であって、A がOでありA がCOである場合を除く。)、次式:-CH -CH -CH -CH -、次式:-CO-CH -CH -N(R )-、次式:-CH -CF -CH -CH -、次式:-CH -O-CH -CH -、次式:-CH -S-CH -CH -、次式:-CH -CH -N(R )-CH -、次式:-CH -CH -CH -O-、次式:-CH -CH -CH -N(R )-、若しくは次式:-O-CH -CH -N(R )-で示される基であるか、又は、G が単結合を示し、次式:-G -G -G -(ただし、G 、G 及びG の間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-N(R )-、次式:-CH -CH -N(R )-、次式:-N=CH-N(R )-、若しくは次式:-N(R )-CH=N-で示される基であり、
は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C 1-6 アルキル基、又はC 1-6 アルキルオキシ基であり、
は、水素原子、又は、水酸基、C 1-6 アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びシアノ基からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいC 1-6 アルキル基(ここで、前記置換基が2個以上の場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。)である。]
【化8】
[一般式(11)中、
及びJ は、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J 及びJ がいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101 は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC 1-6 アルキル基、OR 111 、又は次式:-N(R 112a )-R 112b で示される基を示し、
111 、R 112a 及びR 112b は、それぞれ独立して、水素原子又はC 1-6 アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102 は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C 1-6 アルキル基、OR 113 、次式:-N(R 114a )-R 114b で示される基、次式:-NH-C(=O)-R 115 で示される基、次式:-C(=O)-R 116 で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、前記アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、C 1-6 アルキル基で置換されていてもよいピペラジニル基、ピペラジニルC 1-6 アルキル基、モルホリニル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-R 136 -C(=O)-O-R 137 [式中、R 136 は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R 137 は水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す]から選ばれる基であり、
113 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
114a 及びR 114b は、それぞれ独立して、水素原子又はC 1-6 アルキル基であり、
115 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R 121 で示される基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
116 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR 122 、又は次式:-N(R 123a )-R 123b で示される基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
121 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
122 は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基で、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
123a 及びR 123b は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R 123a 及びR 123b が一体となって環状アミンを形成しており、該アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基に置換し得る基は、ハロゲン原子、水酸基、C 1-3 アルキル基、次式:-N(R 133a )-R 133b [式中、R 133a 及びR 133b は、それぞれ独立に、水素原子又はC 1-3 アルキル基を示す。]で示される基、及び次式:-OR 138 [式中、R 138 は、C 1-3 アルキル基を示す。]で示される基から選ばれる基であり、
103 は、水素原子、C 1-6 アルキル基、C 3-6 シクロアルキル基、又はC 3-6 シクロアルキルC 1-6 アルキル基を示し、
101 が8位の位置にある場合には当該R 101 とR 103 とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
【請求項5】
前記タンキラーゼ阻害化合物が、タンキラーゼのニコチンアミド結合ポケット及びタンキラーゼのアデノシン結合ポケットのうちの少なくとも一方のポケットに作用する、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項6】
前記微小管阻害化合物が、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドセタキセル、カバジタキセル、エリブリン、及びこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項7】
前記がんが、大腸がんである請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項8】
がんを予防・治療するためのキットであって、請求項1に記載の抗がん剤からなる、キット。
【請求項9】
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、請求項1に記載の抗がん剤と、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、抗がん性抗生物質、及びプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤とを組み合わせたことを特徴とする、抗がん剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを予防・治療するための抗がん剤及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ADP-リボシル)化は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質としてタンパク質のグルタミン酸若しくはアスパラギン酸残基にADP-リボースを連鎖付加する生化学反応である。生成されるポリ(ADP-リボース)鎖は、最長で200個近くのADP-リボースで構成される。ポリ(ADP-リボシル)化反応を触媒する酵素として、ポリ(ADP-リボシル)化酵素(PARP)ファミリーが知られている。
【0003】
PARPファミリーのうち、PARP-5a及びPARP-5bは、それぞれタンキラーゼ-1(tankyrase-1)及びタンキラーゼ-2(tankyrase-2)と呼ばれる。通常は、両者の総称として単にタンキラーゼと呼ばれることが多い。タンキラーゼは、ポリ(ADP-リボシル)化するタンパク質を認識するアンキリン領域、自己多量体化に関わるsterile alpha motif(SAM)領域、ポリ(ADP-リボシル)化反応を司るPARP触媒領域で構成される。
【0004】
タンキラーゼは、分子内のアンキリン領域を介してさまざまなタンパク質と結合し、これらをポリ(ADP-リボシル)化する。タンキラーゼ結合タンパク質としては、TRF1、NuMA、Plk1、Miki、Axin、TNKS1BP1、IRAP、Mcl-1、3BP2などが挙げられる。タンキラーゼはこれらのタンパク質をポリ(ADP-リボシル)化することにより、当該タンパク質の生理機能を調節している。よって、タンキラーゼの阻害は、当該タンパク質の生理機能である細胞増殖、細胞分化、組織形成などの制御に有用であると考えられている。
【0005】
タンキラーゼ阻害活性を有するタンキラーゼ阻害化合物としては、例えば、非特許文献1(Huang SM.et al.,Nature,Vol.461,pp.614-620,2009)に記載の化合物XAV939、特許文献1(国際公開第2013/117288号)及び特許文献2(国際公開第2013/182580号)に記載の化合物、非特許文献2(Michael D.Shultz et al.,Journal of Medicinal Chemistry,56,pp.6495-6511,2013)に記載のNVP-TNKS656、非特許文献3(Andrew Voronkov.et al.,Journal of Medicinal Chemistry,56,pp.3012-3023,2013)及び特許文献3(国際公開第2012/076898号)に記載のG007-LK、などが知られている。
【0006】
微小管は、細胞骨格を形成するタンパク質であり、細胞分裂期における紡錘体の形成、細胞形態の形成・維持、細胞内小器官の配置・物質輸送、神経細胞での軸索輸送などに関与している。微小管はαサブユニット及びβサブユニットから構成されるチューブリン二量体からなり、この二量体が集合して微小管が形成される過程を重合、微小管がチューブリンに戻る過程を脱重合という。
【0007】
微小管を阻害する微小管阻害剤としては、前記重合を促進して微小管を安定化・過剰形成させる微小管脱重合阻害剤と、前記重合を阻害する微小管重合阻害剤とが知られており、これらはいずれも、微小管重合の動的平衡状態を破壊することによって細胞周期をM期に停止させて細胞増殖を抑制する。このような微小管阻害剤としては、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドセタキセル、カバジタキセル、エリブリンなどが知られており、これらは白血病や悪性リンパ腫、悪性腫瘍に対して抗腫瘍効果を示す薬剤として市販されている。
【0008】
このようなタンキラーゼ阻害剤や微小管阻害剤は、線維肉腫、卵巣がん、グリオブラストーマ、膵臓がん、乳がん、アストロサイトーマ、肺がん、胃がん、肝細胞がん、多発性骨髄腫、大腸がん、膀胱がん、白血病、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)やエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)などの感染症、肺線維症などの線維症、ケルビズム症、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、皮膚・軟骨損傷、代謝性疾患などに効果を示したり、がんの転移抑制に効果を示すと考えられている。このような疾患、特にがんなどの増殖性疾患については、これを予防・治療するための新たな医薬品(抗がん剤)の開発が望まれている。
【0009】
また、例えば、非特許文献4(Oriol Arques et al.,Clinical Cancer Research,22(3),pp.644-656,2016)、非特許文献5(Kevin S.Quackenbush et al.,Oncotarget,Vol.7,No.19,pp.28273-28285,2016)、及び非特許文献6(Hannah A.Scarborough et al.,Clinical Cancer Research,23(6),pp.1531-1541,2017)には、それぞれ、タンキラーゼ阻害化合物を、生存シグナルキナーゼであるPI3キナーゼ又はAKTの阻害剤(非特許文献4)や、トポイソメラーゼ阻害薬であるイリノテカン(非特許文献5)、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(非特許文献6)と共に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2013/117288号
【文献】国際公開第2013/182580号
【文献】国際公開第2012/076898号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Huang SM.et al.,Nature,Vol.461,pp.614-620,2009
【文献】Michael D.Shultz et al.,Journal of Medicinal Chemistry,56,pp.6495-6511,2013
【文献】Andrew Voronkov.et al.,Journal of Medicinal Chemistry,56,pp.3012-3023,2013
【文献】Oriol Arques et al.,Clinical Cancer Research,22(3),pp.644-656,2016
【文献】Kevin S.Quackenbush et al.,Oncotarget,Vol.7,No.19,pp.28273-28285,2016
【文献】Hannah A.Scarborough et al.,Clinical Cancer Research,23(6),pp.1531-1541,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、がんなどの増殖性疾患の治療及び予防に有用な新たな抗がん剤及びキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、タンキラーゼ阻害化合物と微小管阻害化合物とを組み合わせて用いることががんなどの増殖性疾患の治療及び予防に有用であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤とを組み合わせた、抗がん剤。
[2]
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤。
[3]
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、微小管阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤。
[4]
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、タンキラーゼ阻害化合物及び微小管阻害化合物を有効成分として配合した抗がん剤。
[5]
前記タンキラーゼ阻害化合物が、タンキラーゼのニコチンアミド結合ポケット及びタンキラーゼのアデノシン結合ポケットのうちの少なくとも一方のポケットに作用する、[1]~[4]のうちのいずれかに記載の抗がん剤。
[6]
前記タンキラーゼ阻害化合物が、
下記一般式(1):
【0015】
【化1】
【0016】
[一般式(1)中、
、A、A及びAは、A及びAがいずれも単結合を示すか、A及びAのうちのいずれかが単結合を示しかつ他方がCHを示すか、又は、Aが単結合を示しかつAがCHを示し、
及びAがいずれも単結合を示す場合又はAがCHかつAが単結合を示す場合には、A及びAのうちのいずれかがCH若しくはCOであり他方がO若しくはNRであり、Aが単結合かつAがCHを示す場合には、A及びAのうちのいずれかがNRであり他方がCH若しくはCOであり、Aが単結合かつAがCHを示す場合には、A及びAのうちのいずれかがNRであり他方がCH又はCOであり、
ここでRは、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいC3-8シクロアルキルC1-3アルキル基、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1-3アルキル基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基、次式:-(CH-C(=O)-Lで示される基、又は次式:-S(=O)-R13で示される基を示し、
mは、0、1、2又は3であり、mが0の場合LはR11であり、mが1、2又は3の場合LはR12であり、
11は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR51、次式:-C(=O)-OR52で示される基、又は次式:-N(R53a)-R53bで示される基であり、
51は、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基であり、
52は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基であり、
53a及びR53bは、それぞれ独立して、水素原子若しくは置換されていてもよいC1-6アルキル基であるか、又は、R53a及びR53bが一体となって、酸素原子、硫黄原子、及びNR81からなる群から選択される少なくとも1種の原子又は基を含んでいてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基を形成しており、
81は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基であり、
12は、置換されていてもよいアリール基、OR54、又は次式:-N(R55a)-R55bで示される基であり、
54は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリールC1-3アルキル基であり、
55a及びR55bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1-3アルキル基、若しくは次式:-(C=O)-R82で示される基であるか、又は、R55a及びR55bが一体となって、酸素原子、硫黄原子、及びNR83からなる群から選択される少なくとも1種の原子又は基を含んでいてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基を形成しているか、置換されていてもよい6,8-ジヒドロ-5H-イミダゾロ[1,2-a]ピラジン-7-イル基を形成しており、
82は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基であり、
83は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基であり、
13は、置換されていてもよいC1-6アルキル基であり;
、E、E及びEからなる構造は、次式:-E-E-E-E-(ただし、この式においてE、E、E及びEの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示される基であり、かつEがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであるか、Eが単結合を示し、次式:-E-E=E-で示される基であり、かつEがO若しくはSでありE及びEがCHであるか、又は、Eが単結合を示し、次式:-E=E-E-で示される基であり、かつE及びEがCHでありEがO又はSであり、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基、又は次式:-Q-(CH-R14で示される基であり、
nは、0、1、2又は3であり、
Qは、次式:-CH=CH-で示される基、O、CO、次式:-C(=O)-O-で示される基、次式:-C(=O)-N(R56)-で示される基、NR56、次式:-N(R56)-C(=O)-で示される基、又は次式:-N(R56)-C(=O)-O-で示される基であり、
56は、水素原子、置換されていてもよいC1-3アルキル基、又は次式:-C(=O)-R84で示される基であり、
84は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいC1-6アルキルオキシ基、又は置換されていてもよいアリールオキシ基であり、
14は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいC3~8シクロアルキル基、又は置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基であり;
、G、G及びGからなる構造は、次式:-G-G-G-G-(ただし、この式においてG、G、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-CH=CR-(ただし、A及びAがいずれも単結合を示す場合であって、AがOでありAがCOである場合を除く。)、次式:-CH=CH-CH=N-(ただし、A及びAがいずれも単結合を示す場合であって、AがOでありAがCOである場合を除く。)、次式:-CH-CH-CH-CH-、次式:-CO-CH-CH-N(R)-、次式:-CH-CF-CH-CH-、次式:-CH-O-CH-CH-、次式:-CH-S-CH-CH-、次式:-CH-CH-N(R)-CH-、次式:-CH-CH-CH-O-、次式:-CH-CH-CH-N(R)-、若しくは次式:-O-CH-CH-N(R)-で示される基であるか、又は、Gが単結合を示し、次式:-G-G-G-(ただし、G、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-N(R)-、次式:-CH-CH-N(R)-、次式:-N=CH-N(R)-、若しくは次式:-N(R)-CH=N-で示される基であり、
は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいC1-6アルキルオキシ基であり、
は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいC3-8シクロアルキル基、置換されていてもよいC3-8シクロアルキルC1-3アルキル基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基、次式:-C(=O)-R15で示される基、又は次式:-(CH-C(=O)-OR16で示される基であり、
pは、0、1、2又は3であり、
15は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又はOR57であり、
57は、置換されていてもよいC1-6アルキル基又は置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基であり、
16は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基である。]
で示される化合物;
下記一般式(11):
【0017】
【化2】
【0018】
[一般式(11)中、
及びJは、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J及びJがいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示し、
111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、
113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり、
116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基であり、
121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成しており、
103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示し、
101が8位の位置にある場合には当該R101とR103とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
で示される化合物;及び
これらの薬理学的に許容される塩
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、[1]~[5]のうちのいずれか一項に記載の抗がん剤。
[7]
前記微小管阻害化合物が、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドセタキセル、カバジタキセル、エリブリン、及びこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、[1]~[6]のうちのいずれか一項に記載の抗がん剤。
[8]
前記がんが、大腸がんである[1]~[7]のうちのいずれか一項に記載の抗がん剤。
[9]
がんを予防・治療するためのキットであって、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤とからなる、キット。
[10]
タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤とを組み合わせて患者に投与するがんの予防・治療方法。
[11]
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、前記一般式(1)又は一般式(11)で示される化合物及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、抗がん性抗生物質、及びプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤とを組み合わせた、抗がん剤。
[12]
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、抗がん性抗生物質、及びプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、前記一般式(1)又は一般式(11)で示される化合物及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤。
[13]
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、前記一般式(1)又は一般式(11)で示される化合物及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、抗がん性抗生物質、及びプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤を有効成分として含有する抗がん剤。
[14]
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、前記一般式(1)又は一般式(11)で示される化合物及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物と、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、抗がん性抗生物質、及びプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤とを有効成分として配合した抗がん剤。
[15]
がんを予防・治療するためのキットであって、前記一般式(1)又は一般式(11)で示される化合物及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、抗がん性抗生物質、及びプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤とからなる、キット。
[16]
前記一般式(1)又は一般式(11)で示される化合物及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種のタンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、抗がん性抗生物質、及びプラチナ製剤からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤とを組み合わせて患者に投与する、がんの予防・治療方法。
【0019】
なお、本発明により上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、タンキラーゼ阻害化合物と、微小管阻害化合物とを組み合わせて用いるが、タンキラーゼに関し、Haら(Ha et al.,Cell Death Differ.,19:321-332,2012)によると、タンキラーゼは細胞分裂期においてキナーゼPlk1によってリン酸化されることにより、タンパク質安定性及びポリ(ADPーリボシル)化活性(PARP活性)を上昇させる。Plk1のリン酸化部位と想定される4つのスレオニン及び1つのセリンを全てアラニンに置換した変異型タンキラーゼは、Plk1によるリン酸化を受けず、タンパク質安定性及びPARP活性を低下させる。タンキラーゼは細胞周期の全期間を通して染色体末端のテロメアに、さらに細胞分裂期には紡錘体極に局在化するが、この変異型タンキラーゼはテロメア及び紡錘体極のいずれにも局在化しない。他方、細胞分裂期において、タンキラーゼは姉妹染色分体間でのテロメアコヒージョンの解消に必須であることが報告されている(Dynek and Smith,Science,304:97-100,2004)。また、タンキラーゼの紡錘体極への局在化及びPARP活性は、紡錘体の正常な構造形成及び機能発現に必須であることが報告されている(Chang et al.,Nat Cell Biol.,7:1133-1139,2005)。そこで、本発明者らは、前記タンキラーゼ阻害化合物に阻害されるタンキラーゼは、細胞分裂期に選択的なリン酸化を介して自身の安定性及びPARP活性を上昇させ、テロメア及び紡錘体極で固有の機能を発揮することにより、細胞分裂の進行に寄与するものと推定する。
【0020】
一方、前記微小管阻害化合物は、微小管の重合又は脱重合を阻害することにより、細胞の有糸分裂を妨げ、殺細胞効果を発揮する。微小管の阻害は細胞周期を分裂期に留めるため、微小管阻害化合物で処理された細胞ではタンキラーゼのリン酸化、安定化、及びPARP活性の亢進が認められる(Haら)。したがって、本発明に係るタンキラーゼ阻害化合物と微小管阻害化合物との組み合わせによれば、前記微小管阻害化合物によりがん細胞の細胞周期を分裂期に留めて紡錘体極及びテロメアにおけるタンキラーゼの機能的必要性を高める一方で、かかるタンキラーゼの機能を前記タンキラーゼ阻害化合物により阻害するため、各々を単剤で処理した場合と比べて相乗的な殺細胞効果が奏され、がんなどの増殖性疾患の治療及び予防に効果を発揮することができるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、がんなどの増殖性疾患の治療及び予防に有用な新たな抗がん剤及びキットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】実施例1についてMTTアッセイ(ドセタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図1B】実施例1についてMTTアッセイ(パクリタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図1C】実施例1についてMTTアッセイ(ビンクリスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図1D】実施例1についてMTTアッセイ(ビンブラスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図2A】実施例2についてMTTアッセイ(ドセタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図2B】実施例2についてMTTアッセイ(パクリタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図2C】実施例2についてMTTアッセイ(ビンクリスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図2D】実施例2についてMTTアッセイ(ビンブラスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図3A】実施例3についてMTTアッセイ(ドセタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図3B】実施例3についてMTTアッセイ(パクリタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図3C】実施例3についてMTTアッセイ(ビンクリスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図3D】実施例3についてMTTアッセイ(ビンブラスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図4A】実施例4についてMTTアッセイ(ドセタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図4B】実施例4についてMTTアッセイ(パクリタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図4C】実施例4についてMTTアッセイ(ビンクリスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図4D】実施例4についてMTTアッセイ(ビンブラスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図5A】実施例5についてMTTアッセイ(ドセタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図5B】実施例5についてMTTアッセイ(パクリタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図5C】実施例5についてMTTアッセイ(ビンクリスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図5D】実施例5についてMTTアッセイ(ビンブラスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図6A】実施例6についてMTTアッセイ(ドセタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図6B】実施例6についてMTTアッセイ(パクリタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図6C】実施例6についてMTTアッセイ(ビンクリスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図6D】実施例6についてMTTアッセイ(ビンブラスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図7A】実施例7についてMTTアッセイ(ドセタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図7B】実施例7についてMTTアッセイ(パクリタキセル)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図7C】実施例7についてMTTアッセイ(ビンクリスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図7D】実施例7についてMTTアッセイ(ビンブラスチン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図8A】実施例8についてMTTアッセイ(テモゾロミド(a)、メルファラン(b)、ゲムシタビン(c)、シタラビン(d)、フルオロウラシル(e)、ペメトレキセド(f))を実施して得られた結果を示すグラフである。
図8B】実施例8についてMTTアッセイ(メルカプトプリン(g)、メトトレキサート(h)、イリノテカン(i)、エトポシド(j)、アクチノマイシンD(k)、ダウノルビシン(l))を実施して得られた結果を示すグラフである。
図8C】実施例8についてMTTアッセイ(ドキソルビシン(m)、ブレオマイシン(n)、ミトキサントロン(o)、オキサリプラチン(p)、カルボプラチン(q)、シスプラチン(r))を実施して得られた結果を示すグラフである。
図9】実施例9についてMTTアッセイ(イリノテカン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図10】実施例10についてMTTアッセイ(イリノテカン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図11】実施例11についてMTTアッセイ(イリノテカン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図12】実施例12についてMTTアッセイ(イリノテカン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図13】実施例13についてMTTアッセイ(イリノテカン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
図14】実施例14についてMTTアッセイ(イリノテカン)を実施して得られた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、がんを予防・治療するための抗がん剤であって、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤とを組み合わせた、抗がん剤;
微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤;
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、微小管阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤;
がんを予防・治療するための抗がん剤であって、タンキラーゼ阻害化合物及び微小管阻害化合物を有効成分として配合したことを特徴とする抗がん剤;及び
がんを予防・治療するためのキットであって、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤とからなる、キットである。
【0024】
本発明において、「がんの治療及び予防」及び「抗がん」には、がん細胞の直接的な細胞傷害効果、細胞増殖抑制効果による治療のみならず、がん細胞の浸潤・転移の抑制、腫瘍血管新生の抑制といった広義の意味での抗がん作用を含み、「抗がん剤」とは、これらの作用のうちの少なくとも1つを奏する薬剤のことをいう。前記増殖性疾患としては、様々な固形腫瘍や血液腫瘍、例えば、線維肉腫、卵巣がん、グリオブラストーマ、膵臓がん、乳がん、アストロサイトーマ、肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、膀胱がん、白血病などの悪性腫瘍が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。また、前記増殖性疾患の治療及び予防には、前記悪性腫瘍の腫瘍細胞の殺細胞;前記腫瘍細胞の増殖及び転移の抑制、予防、及び遅延が含まれる。
【0025】
本発明において、「薬理学的に許容される」とは、薬理学的使用に適していることを意味し、本発明に係る薬理学的に許容される塩としては、ナトリウム、カリウム及びカルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩;フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸などのハロゲン化水素酸塩;硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、炭酸などの無機酸塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、マンデル酸、酪酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸及びリンゴ酸などの有機カルボン酸塩;アスパラギン酸及びグルタミン酸などの酸性アミノ酸塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸などのスルホン酸塩;アセトン、メチルエチルケトン、エーテル、酢酸エチルなどの付加物;並びに水和物及びアルコール和物などの溶媒和物を含むが、別段これに限定されるものではない。
【0026】
本発明において、各一般式中の「水素原子」には、特に断りがない場合、重水素原子(D)も含まれる。また、各一般式において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0027】
本発明に係る一般式において、「アルキル基」とは、炭素数が1~8の直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基を表し、「C1-3アルキル基」及び「C1-6アルキル基」とは、それぞれ、炭素数が1~3個及び1~6個であることを示す。前記直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基としては、一般的に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びn-ヘキシルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。
【0028】
本発明に係る一般式において、「アリール基」とは、炭素のみで構成された6員環単環式の芳香族炭化水素基又はそれらが2以上縮合した縮合環式の芳香族炭化水素基を表す。前記アリール基としては、一般的に、フェニル及びナフチルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。
【0029】
本発明に係る一般式において、「ヘテロアリール基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環の単環式芳香族複素環から誘導される基;1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環の単環式芳香族複素環と、炭素のみで構成された6員環単環式芳香族環とが縮合した縮合環式芳香族複素環から誘導される基;又は1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環の単環式芳香族複素環と、1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環の単環式芳香族複素環とが縮合した縮合環式芳香族複素環から誘導される基を表す。前記ヘテロアリール基としては、一般的に、可能な任意の箇所に結合位置を有するピロリル、ピラゾリル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、テトラゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジル、ピリミジル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、フタラジニル、イミダゾ[5,1-b]チアゾリル、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジニルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。
【0030】
本発明に係る一般式において、「シクロアルキル基」とは、炭素数が3~8である環状の飽和炭化水素基(環状炭化水素基)を表し、この環状炭化水素基は、単環であっても、縮環、架橋環又はスピロ環を形成していてもよい。「C3-8シクロアルキル基」とは、炭素数が3~8であることを示す。前記環状の飽和炭化水素基としては、一般的に、可能な任意の箇所に結合位置を有するシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、ビシクロ[4.2.0]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、スピロ[2.3]ヘキシル、スピロ[2.4]ヘプチル、スピロ[2.5]オクチル、スピロ[3.3]ヘプチル及びスピロ[3.4]オクチルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。
【0031】
本発明に係る一般式において、「ヘテロシクロアルキル基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~7員環の飽和複素環又は芳香族環以外の不飽和複素環を表し、この複素環は、単環であっても、架橋環又はスピロ環を形成していてもよく、本明細書で定義される1つ以上の任意の置換基で任意に置換されていてもよい。前記へテロシクロアルキル基としては、可能な任意の箇所に結合位置を有するオキセタニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル、ジオキソピペラジニル、ジアゼパニル、モルホリニル、1,3-ジオキソラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピロリニル、オキサチオラニル、ジチオラニル、1,3-ジチアニル、1,4-ジチアニル、オキサチアニル、チオモルホリニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプチル、8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクチル、3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクチル、3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノニル、2-オキサ-7-アザスピロ[3.5]ノニルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではない。
【0032】
本発明に係る一般式において、「ヘテロ環」という場合には、これは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~4個のヘテロ原子を有する芳香族環以外の不飽和複素環を表し、5~7員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。この複素環は、単環であっても、架橋環又はスピロ環を形成していてもよい。前記ヘテロ環としては、可能な任意の箇所に結合位置を有する2,3-ジヒドロ-1H-ピロール、2,3-ジヒドロオキサゾール、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール、1,2,3,4-テトラヒドロピリジン、2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-アゼピン、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジン、1,2,3,4-テトラヒドロピラジン、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-チアジン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1,4-オキサゼピンなどの環を含むが、別段これに限定されるものではない。
【0033】
本発明に係る一般式において、「アリールアルキル基」、「ヘテロアリールアルキル基」、「シクロアルキルアルキル基」及び「ヘテロシクロアルキルアルキル基」とは、それぞれ、本明細書で定義されるアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、又はヘテロシクロアルキル基(これらを次式:-Arで示す)の可能な任意の箇所の結合位置と、本明細書で定義されるアルキル基(これを次式:-Akで示す)の可能な任意の箇所とが結合したもの(次式:-Ak1-Arで示される基)を表す。例えば、「アリールC1-3アルキル基」、「ヘテロアリールC1-3アルキル基」、「C3-8シクロアルキルC1-3アルキル基」及び「ヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基」における「C1-3アルキル」とは、前記アルキル基の炭素数が1~3であることを示し、「C3-8シクロアルキルC1-3アルキル基」における「C3-8シクロアルキル」とは、前記シクロアルキル基の炭素数が3~8であることを示す。
【0034】
本発明に係る一般式において、「C1-3アルキルオキシ基」及び「アリールオキシ基」とは、それぞれ、本明細書で定義されるC1-3アルキル基(これを次式:-Akで示す)及びアリール基(これを次式:-Arで示す)が酸素原子に結合したもの(次式:-O-Akで示される基又は-O-Arで示される基)を表す。
【0035】
本発明に係る一般式において、「ジC1-3アルキルアミノ基」とは、本明細書で定義される同一又は異なっていてもよいC1-3アルキル基(これらを次式:-Ak及び-Akで示す)が窒素原子に二つ結合したもの(次式:-N(-Ak)-Akで示される基)を表し、「アリールアミノ基」とは、本明細書で定義されるアリール基(これを次式:-Arで示す)がアミノ基に結合したもの(次式:-N-Arで示される基)を表す。
【0036】
本発明に係る一般式において、「環状アミン」という場合には、これは、原子数が3~8である含窒素複素環を表し、この含窒素複素環は、単環であっても、縮環、架橋環又はスピロ環を形成していてもよい。前記環状アミンとしては、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、アゼパン、アゼピン、アゾカンなどを含むが、別段これに限定されるものではない。
【0037】
本発明に係る一般式において、「置換されていてもよい」とは、特に断りがない場合、置換されていてもよいと記された基に結合している任意の水素原子が他の原子又は基からなる群から選択される置換基(原子又は基)で置換されていることを表し、当該置換をされている箇所は1か所であっても2か所以上であってもよく、置換されている箇所が2箇所以上の場合、各置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
また、本発明に係る化合物は、1又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、1又は2個以上の不斉炭素に基づく光学活性体、鏡像異性体、それらの任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。また、不飽和二重結合を有する基においては、シス-又はトランス-体で存在し得る。さらに、本発明に係る化合物は、上述する異性体の他、可能な異性体(回転異性体、アトロプ異性体、互変異生体など)のうちの1つの形態を表しており、これらは単一の異性体として存在していてもこれらの混合物として存在していてもよい。本明細書中において、上記の異性体や同位体が存在する化合物であって、その名称において特に断りがない場合、その化合物はこれらの異性体や同位体うちの1種であっても2種以上の混合物であってもラセミ体であってもよい。
【0039】
<タンキラーゼ阻害化合物>
本発明において、タンキラーゼ阻害化合物とは、タンキラーゼ阻害活性を有する化合物であり、タンキラーゼの基質であるNAD+が結合する部位である、ニコチンアミド結合ポケット及びアデノシン結合ポケットのうちの少なくとも一方のポケットに結合することでタンキラーゼ活性を阻害する化合物であることが好ましい。本発明に係るタンキラーゼ阻害化合物としては、前記ニコチンアミド結合ポケット及び前記アデノシン結合ポケットのうちの少なくとも一方のポケットに作用するものを用いることができ、より具体的には、前記ニコチンアミド結合ポケットに作用するニコチンアミド型、前記アデノシン結合ポケットに作用するアデノシン型、及び前記ニコチンアミド結合ポケット及びアデノシン結合ポケットの両方に作用するデュアル型のいずれであってもよい。
【0040】
なお、本発明において、前記タンキラーゼ阻害化合物がニコチンアミド型又はアデノシン型であることは、X線回折によって確認することができ、より具体的には、あらかじめ調製したタンキラーゼ結晶と前記タンキラーゼ阻害化合物との混合液から複合体を結晶化させて、それをX線回折する方法(ソーキング法)、又は、前記結晶化前の状態のタンキラーゼとタンキラーゼ阻害化合物とが共存した混合液から結晶化させて、X線回折する方法(共結晶法)により確認することができる。また、前記タンキラーゼ阻害化合物がデュアル型であることは、上記どちらかの条件で結晶を調製し、X線回折することで確認することができる。
【0041】
前記ニコチンアミド型のタンキラーゼ阻害化合物としては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物及びその薬理学的に許容される塩(以下、場合により「スピロ化合物」という)、並びに、下記一般式(11)で示される化合物及びその薬理学的に許容される塩(以下、場合により「ジヒドロキナゾリノン系化合物」という)が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(スピロ化合物)
本発明に係るニコチンアミド型のタンキラーゼ阻害化合物としては、下記一般式(1):
【0043】
【化3】
【0044】
[一般式(1)中、
、A、A及びAは、A及びAがいずれも単結合を示すか、A及びAのうちのいずれかが単結合を示しかつ他方がCHを示すか、又は、Aが単結合を示しかつAがCHを示し、
及びAがいずれも単結合を示す場合又はAがCHかつAが単結合を示す場合には、A及びAのうちのいずれかがCH若しくはCOであり他方がO若しくはNRであり、Aが単結合かつAがCHを示す場合には、A及びAのうちのいずれかがNRであり他方がCH若しくはCOであり、Aが単結合かつAがCHを示す場合には、A及びAのうちのいずれかがNRであり他方がCH又はCOであり、
ここでRは、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいC3-8シクロアルキルC1-3アルキル基、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1-3アルキル基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基、次式:-(CH-C(=O)-Lで示される基、又は次式:-S(=O)-R13で示される基を示し、
mは、0、1、2又は3であり、mが0の場合LはR11であり、mが1、2又は3の場合LはR12であり、
11は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR51、次式:-C(=O)-OR52で示される基、又は次式:-N(R53a)-R53bで示される基であり、
51は、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基であり、
52は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基であり、
53a及びR53bは、それぞれ独立して、水素原子若しくは置換されていてもよいC1-6アルキル基であるか、又は、R53a及びR53bが一体となって、酸素原子、硫黄原子、及びNR81からなる群から選択される少なくとも1種の原子又は基を含んでいてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基を形成しており、
81は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基であり、
12は、置換されていてもよいアリール基、OR54、又は次式:-N(R55a)-R55bで示される基であり、
54は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリールC1-3アルキル基であり、
55a及びR55bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1-3アルキル基、若しくは次式:-(C=O)-R82で示される基であるか、又は、R55a及びR55bが一体となって、酸素原子、硫黄原子、及びNR83からなる群から選択される少なくとも1種の原子又は基を含んでいてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基を形成しているか、置換されていてもよい6,8-ジヒドロ-5H-イミダゾロ[1,2-a]ピラジン-7-イル基を形成しており、
82は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基であり、
83は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基であり、
13は、置換されていてもよいC1-6アルキル基であり;
、E、E及びEからなる構造は、次式:-E-E-E-E-(ただし、この式においてE、E、E及びEの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示される基であり、かつEがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであるか、Eが単結合を示し、次式:-E-E=E-で示される基であり、かつEがO若しくはSでありE及びEがCHであるか、又は、Eが単結合を示し、次式:-E=E-E-で示される基であり、かつE及びEがCHでありEがO又はSであり、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基、又は次式:-Q-(CH-R14で示される基であり、
nは、0、1、2又は3であり、
Qは、次式:-CH=CH-で示される基、O、CO、次式:-C(=O)-O-で示される基、次式:-C(=O)-N(R56)-で示される基、NR56、次式:-N(R56)-C(=O)-で示される基、又は次式:-N(R56)-C(=O)-O-で示される基であり、
56は、水素原子、置換されていてもよいC1-3アルキル基、又は次式:-C(=O)-R84で示される基であり、
84は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいC1-6アルキルオキシ基、又は置換されていてもよいアリールオキシ基であり、
14は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいC3~8シクロアルキル基、又は置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基であり;
、G、G及びGからなる構造は、次式:-G-G-G-G-(ただし、この式においてG、G、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-CH=CR-(ただし、A及びAがいずれも単結合を示す場合であって、AがOでありAがCOである場合を除く。)、次式:-CH=CH-CH=N-(ただし、A及びAがいずれも単結合を示す場合であって、AがOでありAがCOである場合を除く。)、次式:-CH-CH-CH-CH-、次式:-CO-CH-CH-N(R)-、次式:-CH-CF-CH-CH-、次式:-CH-O-CH-CH-、次式:-CH-S-CH-CH-、次式:-CH-CH-N(R)-CH-、次式:-CH-CH-CH-O-、次式:-CH-CH-CH-N(R)-、若しくは次式:-O-CH-CH-N(R)-で示される基であるか、又は、Gが単結合を示し、次式:-G-G-G-(ただし、G、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ次式:-CH=CH-N(R)-、次式:-CH-CH-N(R)-、次式:-N=CH-N(R)-、若しくは次式:-N(R)-CH=N-で示される基であり、
は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又は置換されていてもよいC1-6アルキルオキシ基であり、
は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいC3-8シクロアルキル基、置換されていてもよいC3-8シクロアルキルC1-3アルキル基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基、次式:-C(=O)-R15で示される基、又は次式:-(CH-C(=O)-OR16で示される基であり、
pは、0、1、2又は3であり、
15は、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、又はOR57であり、
57は、置換されていてもよいC1-6アルキル基又は置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基であり、
16は、水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基である。]
で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩(スピロ化合物)であることが好ましい。
【0045】
前記スピロ化合物は、下記の微小管阻害化合物以外の他の抗がん剤、より具体的には、アルキル化剤(テモゾロミド、メルファランなど)、代謝拮抗剤(ゲムシタビン、シタラビン(Ara-C)、フルオロウラシル(5-FU)、ペメトレキセド、メルカプトプリン、メトトレキサートなど)、植物アルカロイド(本発明における「植物アルカロイド」には、植物アルカロイドの原子の一部が別の原子に置換されたアナログ(イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)など)を含む)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)などはまた、これにも含まれる)、植物アルカロイドかつトポイソメラーゼ阻害薬である薬剤(植物アルカロイドのアナログかつトポイソメラーゼ阻害薬である薬剤を含む(イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)など))、抗がん性抗生物質(アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロンなど)、プラチナ製剤(オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチンなど)と組み合わせて用いても互いの抗がん作用を阻害することなく、優れた抗がん作用を奏するが、下記の微小管阻害化合物と組み合わせた場合には、より優れた相乗的な抗がん作用を奏する。
【0046】
一般式(1)において、A、A、A及びAは、A及びAがいずれも単結合を示すか、A及びAのうちのいずれかが単結合を示しかつ他方がCHを示すか、又は、Aが単結合を示しかつAがCHを示す。A及びAが単結合を示す場合、AはCH若しくはCOでありかつAはO又はNRであるか、AはO又はNRでありかつAはCH若しくはCOである。AがCHを示しAが単結合を示す場合、AはCH若しくはCOでありかつAはO又はNRであるか、AはO又はNRでありかつAはCH若しくはCOである。Aが単結合を示しAがCHを示す場合、AはNRでありかつAはCH若しくはCOであるか、AはCH若しくはCOでありかつAはNRである。さらに、Aが単結合を示しAがCHを示す場合、AはNRでありかつAはCH若しくはCOであるか、AはCH若しくはCOでありかつAはNRである。
【0047】
一般式(1)において、A、A、A及びAからなる構造としては、A及びAがいずれも単結合を示すことが好ましく、A及びAのうちのいずれかがCH若しくはCOであり他方がO若しくはNRであることがより好ましく;AがO、CH又はCOであり、かつAがCO又はNRである(ただし、A及びAのいずれもCOである場合、AがCHでありかつAがCOである場合、及びAがOでありかつAがNRである場合を除く。)ことがさらに好ましく;A及びAの組み合わせが、O及びCO、CH及びNR、並びに、CO及びNRのうちのいずれかであることが特に好ましい。
【0048】
また、一般式(1)において、E、E、E及びEからなる構造は、次式:-E-E-E-E-(ただし、この式においてE、E、E及びEの間の結合は単結合又は二重結合を示す)で示される基であるか、Eが単結合を示し、次式:-E-E=E-又は次式:-E=E-E-で示される基である。本明細書において、特に断りがない場合、構造式中の原子及び/又は基を結合する記号「-」は単結合を示し、「=」は二重結合を示すが、前記式:-E-E-E-E-で示される基において、E、E、E及びEの間の結合は、E、E、E及びEに相当する原子又は基の組み合わせに応じて、単結合又は二重結合を示す。
【0049】
一般式(1)において、E、E、E及びEからなる構造としては、前記式:-E-E-E-E-(ただし、この式においてE、E、E及びEの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示される基であることが好ましく;EがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであり、EがN若しくはCRであり、かつEがN若しくはCRであることがより好ましく;EがCR、EがCR、EがCR、かつEがCRであることがさらに好ましく;E、E、E及びE(CR、CR、CR、CRのC)が隣接する炭素原子2つと共に6員環の芳香族炭化水素基を形成していることが特に好ましい。
【0050】
さらに、一般式(1)において、G、G、G及びGからなる構造は、次式:-G-G-G-G-(ただし、この式においてG、G、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す)で示される基であるか、Gが単結合を示し、次式:-G-G-G-(ただし、G、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す)で示される基である。前記式:-G-G-G-G-で示される基及び前記式:-G-G-G-においても、G、G、G及びGの間の結合は、G、G、G及びGに相当する原子又は基の組み合わせに応じて、単結合又は二重結合を示す。
【0051】
一般式(1)において、G、G、G及びGからなる構造としては、前記式:-G-G-G-G-で示され、かつ前記式:-CH-CH-CH-CH-、前記式:-CH-CF-CH-CH-、前記式:-CH-O-CH-CH-、前記式:-CH-S-CH-CH-、前記式:-CH-CH-CH-O-、前記式:-CH-CH-CH-N(R)-、若しくは前記式:-O-CH-CH-N(R)-で示される基であるか、又は、Gが単結合を示し、前記式:-G-G-G-(ただし、この式においてG、G及びGの間の結合は単結合又は二重結合を示す。)で示され、かつ前記式:-CH=CH-N(R)-若しくは前記式:-CH-CH-N(R)-で示される基であることが好ましく;前記式:-G-G-G-G-で示され、かつ前記式:-CH-CH-CH-CH-又は前記式:-CH-CH-CH-N(R)-で示されることがより好ましい。
【0052】
一般式(1)において、「広義のアシル基」とは、一般式(1)中の、水素原子、アミノ基、本明細書で定義されるC1-6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、C3-8シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基(これらを次式:-Arで示す)がカルボニル基に結合したもの(次式:-C(=O)-Arで示される基);及び、水素原子、本明細書で定義されるC1-6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、C3-8シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基(これらを次式:-Arで示す)が酸素原子を介してカルボニル基に結合したもの(次式:-C(=O)-O-Arで示される基)を含み、本明細書で定義される1つ以上の任意の置換基で任意に置換されていてもよい。このような広義のアシル基としては、一般的に、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチロイル、バレロイル、ピバロイル、トリフルオロアセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、ヒドロキシアセチル、フェニルアセチル、ベンゾイル、ナフトイル、フロイル、テノイル、ニコチノイル、イソニコチノイル、メトキシカルボニル、トリクロロメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、及び4-ニトロベンジルオキシカルボニルなどの基を含むが、別段これに限定されるものではなく、例えば、次式:-C(=O)-N(R58a)-R58b[式中、R58a及びR58bは、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル基、又は次式:-S(=O)-CHで示される基を示す。]で示される基や、カルボキシ基(-COOH)もこれに含まれる。
【0053】
一般式(1)において、置換されていてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、チオール基、ニトロ基、前記広義のアシル基、C1-6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、C3-8シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリールC1-3アルキル基、ヘテロアリールC1-3アルキル基、C3-8シクロアルキルC1-3アルキル基、及びヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基などの置換基;酸素原子又は硫黄原子を介して、前記広義のアシル基、C1-6アルキル基(アルコキシ基、アルキルチオ基)、アリール基、アリールC1-3アルキル基、ヘテロアリール基、C3-8シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基、又は次式:-SiR31a31b31c[式中、R31a、R31b及びR31cは、それぞれ独立に、C1-6アルキル基又はアリール基を表す。]で示される基が結合した置換基;次式:-N(R32a)-R32b[式中、R32a及びR32bは、それぞれ独立に、水素原子、前記広義のアシル基、C1-6アルキル基、次式:-S(=O)-N(CHで示される基、若しくは次式:-S(=O)-CHで示される基であるか、又はR32a及びR32bが一体となって、酸素原子、硫黄原子、SO、S(=O)、及びNR33[R33は、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。]からなる群から選択される少なくとも1種の原子又は基を含んでいてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基を形成している。]で示される置換基;次式:-C(NH)=NHで示される置換基;次式:-S(=O)-N(R59a)-R59b[式中、R59a及びR59bは、それぞれ独立に、水素原子、前記広義のアシル基、又はC1-6アルキル基を示す。]で示される置換基;次式:-S(=O)-CHで示される置換基;並びに、次式:-P(=O)-OHで示される置換基が挙げられる。これらの置換基及び置換基の形成に関与する基のうち、前記広義のアシル基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、さらに前述の定義のごとく任意の置換基によって置換されていてもよい。
【0054】
一般式(1)において、置換される基が、Rが示すC1-6アルキル基、ヘテロアリール基、C3-8シクロアルキルC1-3アルキル基、アリールC1-3アルキル基、ヘテロアリールC1-3アルキル基、3~7員環のヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基である場合、前記置換基としては、メトキシ基(-OCH)、シアノ基、ハロゲン原子、水酸基、であることが特に好ましい。
【0055】
また、一般式(1)において、置換される基が、R、R、R又はRが示すC1-6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、3~7員環のヘテロシクロアルキル基である場合、前記置換基としては、シアノ基;水酸基;ヘテロシクロアルキル基;ヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基;アリールC1-3アルキル基;カルボキシ基;C1-3アルコキシ基;1級アミド基;メトキシカルボニル基;水酸基で置換されていてもよいアセチル基;ハロゲン原子、水酸基、若しくはC1-3アルコキシ基で置換されていてもよいC1-6アルキル基;次式:-C(=O)-R60[式中、R60は、C1-3アルキル基又はヘテロシクロアルキル基]で示される置換基;前記式:-N(R32a)-R32b[式中、R32a及びR32bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基であることがより好ましい。]で示される置換基であることが特に好ましい。
【0056】
一般式(1)において、Rとしては、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいアリールC1-3アルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1-3アルキル基、又は、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基であることが好ましく;水素原子、又は、水酸基、C1-6アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、C3-8シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、及び前記広義のアシル基からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいC1-6アルキル基であることが好ましい(置換基が2個以上の場合は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、前記C3-8シクロアルキル基、前記ヘテロシクロアルキル基はさらに置換されていてもよい。)。
【0057】
として、さらに具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基、2-メトキシエチル基、3-メトキシプロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2,3-ジフルオロエチル基、2-クロロエチル基、3-クロロプロピル基、2-ブロモエチル基、2-ヨードエチル基、シアノメチル基、2-シアノエチル基、ベンジル基、2-フルオロフェニルメチル基、2-ピリジルメチル基、3-ピロジルメチル基、4-ピリジルメチル基、6-クロロ-3-ピロジル基、2-ピリミジルメチル基、5-ピリミジルメチル基、シクロプロピルメチル基、2-テトラヒドロフリルメチル基、アミジノメチル基、カルバモイルメチル基が挙げられる。
【0058】
一般式(1)において、R、R、R及びRとしては、いずれも水素原子であるか、1つ又は2つがハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)及びシアノ基からなる群から選択される少なくとも1種であるか、又は、いずれか1つが置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基、若しくは前記式:-Q-(CH-R14で示される基であることが好ましい。
【0059】
また、前記式:-Q-(CH-R14で示される基としては、次式:-O-R14で示される基、又は、次式:-C(=O)-O-R14で示される基であることが好ましく、前記式:-O-R14で示される基であることがより好ましい。さらに、R、R、R及びRのいずれか1つが前記式:-Q-(CH-R14で示される基である場合、R14としては、水素原子(すなわち、例えば、前記式:-O-R14で示される場合、R、R、R及びRのいずれかが水酸基を示す。)、1つの置換基で置換されていてもよいC1-2アルキル基、置換されていてもよい3~7員環のヘテロシクロアルキル基であることが好ましい。前記置換されていてもよいC1-2アルキル基の置換基としては、次式:-C(=O)-R61で示される置換基、前記式:-S(=O)-N(R59a)-R59bで示される置換基、前記式:-S(=O)-CHで示される置換基、前記式:-P(=O)-OHで示される置換基が好ましい。
【0060】
、R、R及びRとして、さらに具体的には、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-メトキシエトキシ基、カルボキシメトキシ基、5-テトラゾリルメトキシ基、シアノメトキシ基、4-ピペリジルメトキシ基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ基、3-オキセタニルメトキシ基、2-モルホリノエトキシ基、2-(N-メチルピペラジノ)エトキシ基、2-ピロリジノエトキシ基、2-ピペリジノエトキシ基、3-ピロリジノプロポキシ基、3-テトラヒドロフリルオキシ基、4-テトラヒドロピラニルオキシ基、4-(N-メチルピペリジル)メトキシ基、2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ基、カルバモイルメトキシ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、4-シアノピペリジノ基、4-メトキシカルボニルピペラジノ基、3,5-ジメチルモルホリノ基、3,5-ジメチルピペラジノ基、4-メトキシピペリジノ基、4-カルボキシピペリジノ基、N-メチルスルホニルピペラジノ基、4-メチルスルホニルピペリジノ基、N-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルピペラジノ基、N-ヒドロキシアセチルピペラジノ基、N-アセチルピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基、N-(3-オキセタニル)ピペラジノ基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、1-メチルピラゾール-4-イル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-エトキシカルボニルォサゾール-2-イル基、4-(N-メチルピペラジノ)フェニル基、エトキシカルボニル基、N-(2-モルホリノエチル)カルバモイル基、2-オキサゾリル基、4-モルホリノカルボニルオキサゾール-2-イル基、4-ピロリジノメチルオキサゾール-2-イル基、4-カルボキシオキサゾール-2-イル基が挙げられる。
【0061】
一般式(1)において、Rとしては、水素原子、又は、水酸基、C1-6アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びシアノ基からなる群から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよいC1-6アルキル基であることが好ましい(置換基が2個以上の場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。)。Rとして、さらに具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-シアノエチル基、2-メトキシエチル基が挙げられる。
【0062】
本発明の一般式(1)で示される化合物の好ましい態様としては、例えば、前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(1-1):
【0063】
【化4】
【0064】
で示される態様が挙げられる。一般式(1-1)において、AはO、CH又はCOであり、AはCO又はNRである。ただし、A及びAのいずれもCOである場合、AがCHでありかつAがCOである場合、及びAがOでありかつAがNRである場合を除く。Rとしては、前記式(1)で述べたとおりである。
【0065】
また、一般式(1-1)において、GはCH又はNRであり、かつ、Rは水素原子又は置換されていてもよいC1-6アルキル基である。
【0066】
本発明の一般式(1)で示される化合物のより好ましい態様としては、特にこれに制限されるものではないが、例えば、一般式(1-1)において、さらに、AがCO又はCHであり、AがNR(より好ましくはRが水素原子又はC1-6アルキル基)であり、Rがハロゲン原子であり、GがNR(より好ましくはRがC1-6アルキル基)である化合物が挙げられる。
【0067】
前記一般式(1)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩(スピロ化合物)は以下に例示する方法を以て製造することができるが、本発明に係るスピロ化合物の製造方法はこれらに限定されるものではなく、本発明に係るスピロ化合物の範囲についても下記の製造方法によって製造された化合物に限定されるものではない。
【0068】
本発明に係るスピロ化合物の製造方法は、市販の入手可能な、又は当業者によって認知される方法により合成可能な、出発原料、前駆体及び試薬及び溶媒などを用いて、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法及び必要に応じて当該合成法に改良などを加えた方法などを組み合わせることによって実施することができる。
【0069】
また、本発明において、任意の置換基などの導入、修飾又は変換の方法は,原料段階、中間物質の段階、又は最終形態の物質の段階で、目的とする任意の置換基それ自体か又はそれに変換可能な基を、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法及び必要に応じて当該合成法に改良などを加えた方法を組み合わせることによって導入、修飾又は変換することができ、反応工程の順序などを適宜変えることによって行うこともできる。また、反応の都合上必要に応じて有機合成化学で通常用いられる官能基の保護及び脱保護などの一般的な手段など(例えば、Greene Wuts著,PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION,John Wiley & Sons,Inc.などに記載された方法)を適宜採用して実施することができる。
【0070】
製造する際の反応装置は、通常のガラス製反応容器、グラスライニングを施したものを含む金属製反応槽のほか、フローリアクターなども使用することができる。また、反応を行う際の冷却又は加熱に際しては、空冷、水冷、氷冷又は寒剤と冷媒との組み合わせなどの他、冷凍機によって冷却された冷媒を介した反応容器又は反応液の冷却、温水又は蒸気による加熱、電熱器による直接又は熱媒体を介した反応容器の加熱、及び極超短波の電磁波を照射することによる加熱(いわゆるマイクロ波加熱)などが挙げられ、さらにはペルチェ素子を応用した冷却又は加熱なども利用され得る。
【0071】
本発明に係るスピロ化合物は、例えば、下記の製造法1又は製造法2に示す方法によって得ることができる。
【0072】
【化5】
【0073】
上記式(2)~(6)中、A、A、A、A、E、E、E、E、G、G、G及びGは、それぞれ上記一般式(1)中のA、A、A、A、E、E、E、E、G、G、G及びGと同義である。また、上記式(3)及び(4)中、Y及びYは、それぞれ独立に脱離基(当業者によって認知されている脱離能を有する官能基を意味する。例えば、Greene Wuts著,PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION,John Wiley & Sons,Inc.などに記載される保護基が挙げられる)を示す。さらに、上記式(4)及び(5)中、R34a及びR34bは、それぞれ独立に、水素原子又は前記保護基を示す。さらに、上記式(2)中、R35は水素原子又は前記保護基を示し、上記式(6)中、R36は置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。
【0074】
製造法1における式(2)で示される化合物(以下、「中間体(2)」という)及び式(3)で示される化合物(以下、「原料(3)」という)、並びに製造法2における中間体(2)、式(4)及び(6)で示される化合物(以下、それぞれ「原料(4)」及び「原料(6)」という)は、市販の試薬又は公知の方法若しくはそれに準じた方法により合成することができる。また、中間体(2)には必要に応じて保護基が存在していてもよく、該保護基は必要に応じて任意の段階で脱保護することができる。
【0075】
製造法1においては、中間体(2)及び原料(3)を適切な溶媒に溶解又は懸濁し、金属触媒及びその配位子の存在下又は非存在下、塩基存在下又は非存在下において反応させることにより、本発明に係るスピロ化合物(式(1)で示される化合物又はその塩、以下、場合により「化合物(1)」という)を製造することができる。
【0076】
製造法1において、中間体(2)と原料(3)とは、一般に1対1~3のモル比の範囲で用いられ、好ましくは1対1~1.5のモル比の範囲で用いられる。
【0077】
製造法1において、前記溶媒としては、例えば、水及びアルコール(例えばエタノール)などのプロトン性溶媒;石油エーテル、非芳香族系炭化水素(例えばn-ヘキサン)、及び芳香族系炭化水素(例えばトルエン)などの炭化水素系溶媒;ハロゲン化(例えば、塩化又はフッ化)芳香族系(例えばクロロベンゼン)若しくは非芳香族系炭化水素(例えば1,2-ジクロロエタン)などのハロゲン系溶媒;鎖状(例えば1,2-ジメトキシエタン)若しくは環状のエーテル系(例えば1,4-ジオキサン)溶媒;エステル系溶媒(例えば酢酸エチル);並びに非プロトン性極性溶媒(例えば、アセトニトリル及びN,N-ジメチルホルムアミド)などを単独で又は2種以上を適宜の比率で混合して用いることができる。これらの中でも、前記溶媒としては、トルエン、エタノール、1,4-ジオキサン及びN,N-ジメチルホルムアミドのうちの少なくとも1種が好ましい。
【0078】
製造法1において、前記金属触媒存在下で実施する際の金属触媒としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)などの0価のパラジウム触媒類;酢酸パラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジパラジウム(II)(などの2価のパラジウム触媒類;並びにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム・ホスフィン錯体類などが用いられる。また、この時に配位子存在下で実施する際の配位子としては、ジ-tert-ブチルホスフィンなどが用いられる。前記金属触媒とその配位子とは通常1対0.5~2、好ましくは1対1のモル比で用いられ、前記金属触媒及びその配位子の使用量は、中間体(2)に対して、0.01~1モル%の範囲、好ましくは0.1~0.5モル%の範囲である。
【0079】
製造法1において、前記塩基存在下で実施する際の塩基としては、例えば、炭酸カリウムやリン酸カリウムなどの塩類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのアミン類;水素化リチウム、水素化ナトリウムなどの金属水素化物;ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、及びカリウムtert-ブトキシドなどの金属アルコキシド類;並びにリチウムアミド、リチウムジイソプロピルアミドなどの金属アミド類などを単独で又は2種以上を適宜の比率で混合して用いることができる。これらの中でも、前記塩基としては、好ましくはリン酸カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びナトリウムtert-ブトキシドのうちの少なくとも1種が用いられる。前記塩基の使用量は、中間体(2)に対して、0.01~20当量の範囲、好ましくは0.1~10当量の範囲、さらに好ましくは1~5当量の範囲である。
【0080】
製造法1において、反応温度は0~250℃の範囲であり、好ましくは30~200℃であり、さらに好ましくは60~160℃である。また、製造法1において、反応時間は、1分間~2日間の範囲であり、好ましくは5分間~12時間であり、さらに好ましくは10分間~6時間である。
【0081】
製造法1において、A、A、A、A、G、G、G、G、E、E、E及びEにおいて置換されるべき任意の置換基は、中間体(2)及び原料(3)の段階で目的とする置換基が備わっていてもよく、その場合は、得られた化合物(1)は目的とする置換基を有する。また、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法を組み合わせて、目的とする置換基の前駆的な基を中間体(2)及び/又は原料(3)に導入、修飾又は変換することによって、目的とする置換基を有する化合物(1)を製造することができる。なお、これらの合成法の組み合わせについては任意に組み合わせることができ、必要に応じて適宜保護及び脱保護などを実施してもよい。
【0082】
製造法2においては、中間体(2)及び原料(4)を適切な溶媒に溶解又は懸濁し、塩基存在下で反応させて式(5)で示される化合物(以下、「中間体(5)」という)を合成し、次いで中間体(5)と原料(6)とを適切な溶媒に溶解又は懸濁し、塩基存在下で反応させることにより本発明のスピロ化合物(化合物(1))を製造することができる。当該反応は、中間体(5)を精製単離した後に次工程に用いることもできるが、1容器反応として連続して実施することもできる。また、必要に応じて適宜保護及び脱保護などの工程を加えることもできる。
【0083】
製造法2において、中間体(2)と原料(4)、並びに中間体(5)と原料(6)とは、一般に1対1~3のモル比の範囲で用いられ、好ましくは1対1~2のモル比の範囲で用いられる。
【0084】
製造法2において、前記溶媒としては、例えば、製造法1において溶媒として挙げたものと同様の溶媒が挙げられ、これらの中でも、前記溶媒としては好ましくは水、エタノール、アセトニトリル及びN,N-ジメチルホルムアミドのうちの少なくとも1種が用いられる。
【0085】
製造法2において、前記塩基としては、例えば、製造法1において塩基として挙げたものと同様の塩基が挙げられ、これらの中でも、前記塩基としては好ましくはナトリウムエトキシド、トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミンのうちの少なくとも1種が用いられる。前記塩基の使用量は、中間体(2)又は中間体(5)に対して、0.01~20当量の範囲、好ましくは0.1~10当量の範囲、さらに好ましくは1~5当量の範囲である。
【0086】
製造法2において、反応温度は-30~200℃の範囲であり、好ましくは0~150℃であり、さらに好ましくは20~120℃である。また、製造法2において、反応時間は、1分間~2日間の範囲であり、好ましくは5分間~12時間であり、さらに好ましくは30分間~6時間である。
【0087】
製造法2において、A、A、A、A、G、G、G、G、E、E、E及びEにおいて置換されるべき任意の置換基は、中間体(2)及び原料(6)の段階で目的とする置換基が備わっていてもよく、その場合は、得られた化合物(1)は目的とする置換基を有する。また、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法を組み合わせて、目的とする置換基の前駆的な基を中間体(2)及び/又は原料(6)に導入、修飾又は変換することによって、目的とする置換基を有する化合物(1)を製造することができる。なお、これらの合成法の組み合わせについては任意に組み合わせることができ、必要に応じて適宜保護及び脱保護などを実施してもよい。
【0088】
上記の方法で合成されるスピロ化合物、中間体、及び原料などは、反応溶液の状態又は粗生成物の状態で次工程に用いても、当業者が認知する通常の精製方法によって単離してから用いてもよい。単離にかかる精製方法については、例えば、各種クロマトグラフィー(カラム又は薄層、並びに、順相系又は逆相系など)、蒸留、昇華、沈殿化、結晶化及び遠心分離などを適宜選択又は組み合わせた方法が挙げられる。
【0089】
(ジヒドロキナゾリノン系化合物)
本発明に係るニコチンアミド型のタンキラーゼ阻害化合物としては、下記一般式(11):
【0090】
【化6】
【0091】
[一般式(11)中、
及びJは、それぞれ、CH又はNを示し、ただし、J及びJがいずれもCHを示すことはなく、
rは、0~4を示し、
101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示し、
111、R112a及びR112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
sは、0~5を示し、
102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示し、
113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり、
116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基であり、
121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり、
123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成しており、
103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示し、
101が8位の位置にある場合には当該R101とR103とが一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。]
で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩(ジヒドロキナゾリノン系化合物)であることも好ましい。
【0092】
前記ジヒドロキナゾリノン系化合物は、下記の微小管阻害化合物以外の他の抗がん剤、より具体的には、アルキル化剤(テモゾロミド、メルファランなど)、代謝拮抗剤(ゲムシタビン、シタラビン(Ara-C)、フルオロウラシル(5-FU)、ペメトレキセド、メルカプトプリン、メトトレキサートなど)、植物アルカロイド(イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)など)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)などはまた、これにも含まれる)、植物アルカロイドかつトポイソメラーゼ阻害薬である薬剤(イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)など)、抗がん性抗生物質(アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロンなど)、プラチナ製剤(オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチンなど)と組み合わせて用いても互いの抗がん作用を阻害することなく、優れた抗がん作用を奏するが、下記の微小管阻害化合物と組み合わせた場合には、より優れた相乗的な抗がん作用を奏する。
【0093】
一般式(11)において、「位」で示される数字は、特に断りがない場合、前記ジヒドロキナゾリノン系化合物においてR101が置換される位置番号を示し、前記位置番号はキナゾリノンの位置番号をそのまま使用する。さらに、一般式(11)において、「位」で示されるアルファベット(o、m、p)は、特に断りがない場合、R102が置換されるベンゼン置換体の位置番号を示す。
【0094】
一般式(11)において、「アルキル基」としては、炭素数が1~6の「C1-6アルキル基」であることが好ましく、炭素数が1~3の「C1-3アルキル基」であることがより好ましい。
【0095】
一般式(11)において、「アリール基」としては、単環式(フェニル基)であることが好ましい。
【0096】
一般式(11)において、「ヘテロアリール基」としては、任意の箇所に結合位置を有するキノリル、イソキノリル、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジニルであることが好ましい。
【0097】
一般式(11)において、「シクロアルキル基」としては、単環であることが好ましく、炭素数が3~8の「C3-8シクロアルキル基」であることがより好ましく、炭素数が3~6の「C3-6シクロアルキル基」であることがさらに好ましい。
【0098】
一般式(11)において、「ヘテロ環」としては、5~7員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましく、可能な任意の箇所に結合位置を有する2,3-ジヒドロ-1H-ピロール、1,2,3,4-テトラヒドロピラジン、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジンであることがさらに好ましい。
【0099】
一般式(11)において、「ヘテロシクロアルキル基」としては、可能な任意の箇所に結合位置を有するピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニルであることが好ましい。
【0100】
一般式(11)において、「アリールアルキル基」としては、前記アルキル基の炭素数が1~6である「アリールC1-6アルキル基(アリールC1-6アルキレン基)」であることが好ましく、炭素数が1~3である「アリールC1-3アルキル基(アリールC1-3アルキレン基)」であることが好ましい。また、「シクロアルキルアルキル基」としては、前記アルキル基の炭素数が1~6である「シクロアルキルC1-6アルキル基(シクロアルキルC1-6アルキレン基)」であることが好ましく、前記アルキル基の炭素数が1~3である「シクロアルキルC1-3アルキル基(シクロアルキルC1-3アルキレン基)」であることがより好ましく、前記シクロアルキル基の炭素数が3~6である「C3-6シクロアルキルC1-6アルキル基(C3-6シクロアルキルC1-6アルキレン基)」又は「C3-6シクロアルキルC1-3アルキル基(C3-6シクロアルキルC1-3アルキレン基)」であることが好ましい。さらに、「ヘテロシクロアルキルアルキル基」としては、前記アルキル基の炭素数が1~6である「ヘテロシクロアルキルC1-6アルキル基(ヘテロシクロアルキルC1-6アルキレン基)」であることが好ましく、前記アルキル基の炭素数が1~3である「ヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基(ヘテロシクロアルキルC1-3アルキレン基)」であることがより好ましい。
【0101】
一般式(11)において、「環状アミン」としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンであることが好ましい。
【0102】
一般式(11)において、置換されていてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、チオール基、ニトロ基、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、ヘテロシクロアルキル基、アリールアルキル基(好ましくはアリールC1-3アルキル基)、ヘテロアリールアルキル基(好ましくはヘテロアリールC1-3アルキル基)、シクロアルキルアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基)、ヘテロシクロアルキルアルキル基(好ましくはヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基);次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、アリール基、ヘテロアリール基、若しくは次式:-C(=O)-R133c[式中、R133cはC1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、アリール基、ヘテロアリール基を示す。]で示される基であるか、又は、R133a及びR133bが一体となって4~7員環の環状アミンを形成している。]で示される基;次式:-R134-C(=O)-R135[式中、R134は、単結合、炭素数1~3のアルキレン基を示し、R135は、水素原子、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。]で示される基;次式:-R136-C(=O)-O-R137[式中、R136は、単結合、炭素数1~3のアルキレン基を示し、R137は、水素原子、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。]で示される基;次式:-OR138[式中、R138は、C1-6アルキル基(好ましくはC1-3アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキル基)、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基(好ましくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基)、ヘテロシクロアルキルアルキル基(好ましくはヘテロシクロアルキルC1-3アルキル基)、アリールアルキル基(好ましくはアリールC1-3アルキル基)、ヘテロアリールアルキル基(好ましくはヘテロアリールC1-3アルキル基)を示す。]で示される基が挙げられる。これらの置換基及び置換基の形成に関与する基のうち、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、さらに前述の定義のごとく任意の置換基によって置換されていてもよい。
【0103】
一般式(11)において、置換される基が、R102が示すアリール基、ヘテロアリール基である場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、置換されていてもよいピペラジニル(より好ましくはC1-6アルキル基で置換されていてもよいピペラジニル)、置換されていてもよいピペラジニルメチル等のピペラジニルC1-6アルキル(より好ましくはC1-6アルキル基で置換されてもよいピペラジニルメチル等のピペラジニルC1-6アルキル)、モルホリニル;次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基;次式:-R136-C(=O)-O-R137[式中、R136は炭素数1~3のアルキレン基を示し、R137は水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基であることが特に好ましい。
【0104】
また、一般式(11)において、置換される基がR113が示すアリールアルキレン基、R113又はR122が示すアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基;次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基;次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基であることが特に好ましい。
【0105】
さらに、一般式(11)において、置換される基がR115又はR116が示すアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基;次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基;次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基であることが特に好ましい。
【0106】
また、一般式(11)において、置換される基がR121、R123a、又はR123bが示すアルキル基、アリール基、アリールアルキレン基、ヘテロアリール基である場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、C1-3アルキル基;次式:-N(R133a)-R133b[式中、R133a及びR133bは、それぞれ独立に、水素原子又はC1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基;次式:-OR138[式中、R138は、C1-3アルキル基を示すことが好ましい。]で示される基であることが特に好ましい。
【0107】
一般式(11)において、rはR101の数を示し、0~4である。rとしては、0(すなわち、R101に相当する4つの基が全て水素原子)であるか、又は、1~2であることが好ましい。また、R101の位置としては、rが1~2である場合、7位又は8位であることが好ましい。
【0108】
一般式(11)において、R101は、rが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、OR111、又は次式:-N(R112a)-R112bで示される基を示す。ここで、R111、R112a及び-R112bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基である。
【0109】
このようなR101としては、無置換のC1-6アルキル基;ハロゲン原子で置換されたC1-6アルキル基;R111が水素原子又はC1-3アルキル基であるOR111であることが好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、水酸基、トリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0110】
一般式(11)において、sはR102の数を示し、0~5である。sとしては、0(すなわち、R102に相当する5つの基が全て水素原子)であるか、又は、1~3であることが好ましい。また、R102の位置としては、rが1~3である場合にはm位及び/又はp位であることが好ましく、rが1である場合にはp位であることが好ましい。
【0111】
一般式(11)において、R102は、sが2以上の場合には互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、OR113、次式:-N(R114a)-R114bで示される基、次式:-NH-C(=O)-R115で示される基、次式:-C(=O)-R116で示される基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、ニトロ基、又はシアノ基を示す。
【0112】
ここで、R113は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;R114a及びR114bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基であり;R115は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は次式:-NH-R121で示される基であり;R116は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、OR122、又は次式:-N(R123a)-R123bで示される基である。
【0113】
さらに、R121は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;R122は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;R123a及びR123bは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、若しくは置換されていてもよいヘテロアリール基であるか、又は、R123a及びR123bが一体となって環状アミンを形成する。
【0114】
このようなR102としては、ハロゲン原子;R113が置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアリールアルキル基であるOR113;R114a及びR114bが、それぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基である次式:-N(R114a)-R114bで示される基;R116がOR122である次式:-C(=O)-R116で示される基;置換されていてもよいアリール基;置換されていてもよいヘテロアリール基;ニトロ基;シアノ基であることが好ましく、ハロゲン原子;R113が置換されていてもよいアルキル基であるOR113;置換されていてもよいアリール基;置換されていてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、より具体的には、ハロゲン原子;メトキシ基;エトキシ基;水酸基、4-メチルピペラジン-1-イル基、(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル基、4-モルホリン-4-イル基、ジメチルアミノ基で置換されていてもよいフェニル基であることがより好ましい。
【0115】
一般式(11)において、R103は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、又はC3-6シクロアルキルC1-6アルキル基を示す。
【0116】
このようなR103としては、水素原子、C1-3アルキル基、C3-6シクロアルキルC1-3アルキル基であることが好ましく、より具体的には、水素原子、メチル基、シクロプロピルメチル基であることがより好ましい。
【0117】
また、一般式(11)において、R101が8位の位置にある場合には当該R101と1位の位置にあるR103とは、一体となって5~7員環のヘテロ環を形成していてもよい。このような5~7員環のヘテロ環としては、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルであることが好ましく、ピロリジニル、モルホリニルであることがより好ましい。
【0118】
本発明の一般式(11)で示される化合物の好ましい態様としては、例えば、以下の(I)~(III)の態様及びこれらの態様のうちの2つ又は3つの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0119】
(I)
前記一般式(11)中、
rが0であるか、又は、rが1であり、かつR101が7位若しくは8位の位置にあり、かつ当該R101がハロゲン原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基若しくはヒドロキシ基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している化合物。
【0120】
(II)
前記一般式(11)中、
103が、水素原子、C1-3アルキル基、若しくはC3-6シクロアルキルC1-3アルキル基を示すか、又は、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している化合物。
【0121】
(III)
前記一般式(11)中、
sが0であるか、又は、sが1であり、かつR102が、ハロゲン原子、R113が置換されていてもよいC1-3アルキル基であるOR113、若しくは置換されていてもよいアリール基を示す、化合物。
【0122】
前記一般式(11)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩(ジヒドロキナゾリノン系化合物)は、以下に例示する方法を以て製造することができるが、本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物の製造方法はこれらに限定されるものではなく、本発明の化合物の範囲についても下記の製造方法によって製造された化合物に限定されるものではない。
【0123】
また、本発明の一般式(11)で示される化合物の例には、前記一般式(11)中、J及びJがいずれもNの化合物が含まれる。また、その例として、rが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつR103が水素原子である化合物;及びrが1であり、かつR101が8位の位置にあり、かつ当該R101とR103とが一体となって5~6員環のヘテロ環を形成している化合物が挙げられる。
【0124】
本発明に係るジヒドロキナゾリノン系化合物の製造方法は、市販の入手可能な、又は当業者によって認知される方法により合成可能な、出発原料、前駆体及び試薬及び溶媒などを用いて、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法及び必要に応じて当該合成法に改良などを加えた方法などを組み合わせることによって実施することができる。任意の置換基、反応装置、冷却・加熱については、前記スピロ化合物の製造方法で述べたとおりである。
【0125】
本発明に係るジヒドロキナゾリノン系化合物は、例えば、下記の製造法3によって得ることができる。
【0126】
【化7】
【0127】
上記式(12)、(13)中、J、J、r、R101、s、R102、及びR103は、それぞれ独立して、上記一般式(11)中のJ、J、r、R101、s、R102、及びR103と同義である。
【0128】
製造法3における式(12)で示される化合物(以下、「原料(12)」という)及び式(13)で示される化合物(以下、「原料(13)」という)は、市販の試薬として入手可能であるか、公知の方法若しくはそれに準じた方法により合成することができる。
【0129】
製造法3においては、原料(12)及び原料(13)を適切な溶媒に溶解又は懸濁し、酸触媒の存在下又は非存在下において反応させることにより、本発明のジヒドロキナゾリノン系化合物(一般式(11)で示される化合物又はその塩、以下場合により「化合物(11)」という)を製造することができる。
【0130】
製造法3において、原料(12)と原料(13)とは、一般に1対1~3のモル比の範囲で用いられ、好ましくは1対1~1.2のモル比の範囲で用いられる。
【0131】
製造法3において、前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブチルアルコールなどのプロトン性溶媒;石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの炭化水素系溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン及びジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチルなどのエステル系溶媒;並びにアセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒などを単独で又は2種以上を適宜の比率で混合して用いることができる。これらの中でも、前記溶媒としては、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミドのうちの少なくとも1種が用いられる。
【0132】
製造法3において、前記酸触媒存在下で実施する際の酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸及び硝酸などの鉱酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸及びトリフルオロ酢酸などのカルボン酸類;並びに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化亜鉛、塩化第二スズ、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン及び四塩化ジルコニウムなどのルイス酸などが用いられる。これらの中でも、前記酸としては、好ましくは塩酸、ギ酸、酢酸及びプロピオン酸のうちの少なくとも1種であり、さらに好ましくは酢酸である。前記酸の使用量は、原料(12)に対して、0.01~20当量の範囲であり、好ましくは0.05~5当量の範囲であり、さらに好ましくは0.1~1当量の範囲である。或いは、0.01~20当量の範囲であり、好ましくは0.1~10当量の範囲であり、さらに好ましくは1~5当量の範囲である。
【0133】
製造法3において、反応温度は0~250℃の範囲であり、好ましくは30~200℃であり、さらに好ましくは60~160℃である。また、製造法3において、反応時間は、1分間~2日間の範囲であり、好ましくは5分間~12時間であり、さらに好ましくは10分間~6時間である。
【0134】
製造法3において、R102において置換されるべき任意の置換基は、原料(13)の段階で目的とする置換基が備わっていてもよく、その場合には、得られた化合物(11)は目的とする置換基を有する。また、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法を組み合わせて、目的とする置換基の前駆的な基を原料(13)に導入、修飾又は変換することによって、目的とする置換基を有する化合物(11)を製造することができる。なお、これらの合成法の組み合わせについては任意に組み合わせることができ、必要に応じて適宜保護及び脱保護などを実施してもよい。
【0135】
製造法3に係る原料(13)は、例えば、以下に示すスキーム1~2に示す方法などによっても製造することができる。
【0136】
【化8】
【0137】
上記式(14)、(15)、及び(13-1)中、s及びR102は、それぞれ独立して、上記一般式(11)中のs及びR102と同義である。
【0138】
スキーム1における式(14)で示される化合物(以下、「原料(14)」という)は、市販の試薬として入手可能であるか、公知の方法若しくはそれに準じた方法により合成することができる。
【0139】
スキーム1において、式(13-1)で示される化合物(以下、「原料(13-1)」という)は、原料(13)の1種である。原料(13-1)は、原料(14)とセミカルバジド塩酸塩とによる縮合反応により合成することができる式(15)で示される化合物(化合物(15))を、Synthesis,1998,10,1140.に記載の方法など既知の方法を利用することにより製造することができる。これら一連の全ての合成法は、有機化学の一般的な成書などに幅広く記載されている方法論であり、記載された方法そのまま又は改良を加えた方法などにより実施が可能である。
【0140】
【化9】
【0141】
上記式(16)、(17)、(18)、(19)、及び(13-2)中、s及びR102は、それぞれ独立して、上記一般式(11)中のs及びR102と同義である。
【0142】
スキーム2における式(16)で示される化合物(以下、「原料(16)」という)及び式(19)で示される化合物(以下、「原料(19)」という)は、市販の試薬として入手可能であるか、公知の方法若しくはそれに準じた方法により合成することができる。
【0143】
スキーム2において、式(13-2)で示される化合物(以下、「原料(13-2)」という)は、原料(13)の1種である。原料(13-2)は、式(18)で示される化合物(化合物(18))にアジ化ナトリウムを付加させて合成することができ(stepC:Tetrahedron Letters,2001,42,9117.)、化合物(18)は、原料(16)から2工程(step A及びstep B)で、或いは原料(19)から1工程(step D)で、合成することができる(stepA及びB:Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2008,184932.に記載の方法など;stepD:Tetrahedron Letters,2001,42,9117.に記載の方法など)。これら一連の全ての合成法は、有機化学の一般的な成書などに幅広く記載されている方法論であり、記載された方法そのまま又は改良を加えた方法などにより実施が可能である。
【0144】
上記の製造法で合成されるジヒドロキナゾリノン系化合物、中間体、及び原料などは、反応溶液の状態又は粗生成物の状態で次工程に用いても、当業者が認知する通常の精製方法によって単離してから用いてもよい。単離にかかる精製方法については、例えば、各種クロマトグラフィー(カラム又は薄層、並びに、順相系又は逆相系クロマトグラフィー;ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)など)、蒸留、昇華、沈殿化、結晶化、及び遠心分離などを適宜選択又は組み合わせた方法が挙げられる。
【0145】
本発明に係るニコチンアミド型のタンキラーゼ阻害化合物としては、他に、G-631などの化合物も用いることができる。
【0146】
前記アデノシン型のタンキラーゼ阻害化合物としては、例えば、特許文献3に記載の化合物及びその薬理学的に許容される塩(以下、場合により「トリアゾール誘導体」という)、IWR-1、WIKI4、JW55が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
(トリアゾール誘導体)
本発明に係るアデノシン型のタンキラーゼ阻害化合物としては、特許文献3に記載の一般式(I)で示される化合物又は一般式(II)示される化合物、それらの異性体、及びそれらの薬理学的に許容される塩(トリアゾール誘導体)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。このようなトリアゾール誘導体としては、特許文献3に記載の一般式(Ia)で示される化合物、一般式(IIb)で示される化合物、一般式(IIc)で示される化合物、一般式(IId)で示される化合物、それらの異性体、及びそれらの薬理学的に許容される塩のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。このようなトリアゾール誘導体としては、例えば、「G007-LK」としても知られている、下記式で示される化合物が挙げられる。
【0148】
【化10】
【0149】
前記トリアゾール誘導体は、特許文献3に記載の方法や、市販の入手可能な、又は当業者によって認知される方法により合成可能な、出発原料、前駆体及び試薬及び溶媒などを用いて、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法及び必要に応じて当該合成法に改良などを加えた方法などを組み合わせることによって製造することができる。
【0150】
前記デュアル型のタンキラーゼ阻害化合物としては、例えば、非特許文献2に記載のNVP-TNKS656が挙げられる。
【0151】
かかるデュアル型のタンキラーゼ阻害化合物は、市販の入手可能な、又は当業者によって認知される方法により合成可能な、出発原料、前駆体及び試薬及び溶媒などを用いて、当業者によって認知される幅広い様々な種類の合成法及び必要に応じて当該合成法に改良などを加えた方法などを組み合わせることによって製造することができる。
【0152】
<微小管阻害化合物>
本発明において、微小管阻害化合物とは、微小管阻害活性を有する化合物であり、細胞分裂の際に紡錘体形成をしたり、細胞内小器官の配置や物質輸送など、細胞の正常機能の維持に重要な役割を果たしている微小管に作用して抗腫瘍効果を示す微小管阻害剤の有効成分として含有される化合物であり、前記微小管阻害剤は、微小管阻害薬、抗微小管剤、微小管標的剤、微小管阻害活性剤、微小管指向薬剤、微小管-標的指向薬剤、微小管毒微小管機能攪乱物質、微小管に作用する成分、微小管作用抗がん薬、又は微小管機能を阻害する医薬ともいわれ、微小管重合阻害剤、微小管脱重合阻害剤、微小管形成阻害剤、微小管不安定化剤、微小管脱安定化剤、微小管破壊薬、微小管崩壊薬、微小管分裂剤、微小管の分解を促進する分子、及び微小管の重合を阻害若しくは破壊する化合物を包含する。
【0153】
本発明に係る微小管阻害化合物としては、チューブリンの重合を促進して微小管を安定化・過剰形成させる微小管脱重合阻害剤であっても、前記重合を阻害する微小管重合阻害剤であっても、これらの混合物であってもよい。
【0154】
本発明に係る微小管阻害化合物として、より具体的には、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドセタキセル、カバジタキセル、及びエリブリンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明に係る微小管阻害化合物としては、硫酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、アセトン付加物等の酸付加物、水和物などの薬理学的に許容される塩であってもよい。また、これらの化合物は、商品名:タキソール(パクリタキセル)、エクザール(ビンブラスチン)、オンコビン(ビンクリスチン硫酸塩)、フィルデシン(ビンデシン硫酸塩)、ナベルビン(ビノレルビン酒石酸塩)、タキソテール(ドセタキセル水和物)、ワンタキソテール(ドセタキセル水和物)、ジェブタナ(カバジタキセル アセトン付加物)、ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩)などの市販のものを適宜用いてもよい。
【0155】
これらの中でも、本発明に係る微小管阻害化合物としては、前記タンキラーゼ阻害化合物と組み合わせた際に特に優れた殺細胞効果が奏される傾向にある観点から、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、及びビンブラスチンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0156】
<抗がん剤>
本発明の抗がん剤が対象とするがんとしては、例えば、大腸がん、胃がん、食道がん、結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がん、肺がん、胆嚢がん、胆管がん、胆道がん、直腸がん、卵巣がん、子宮がん、腎がん、膀胱がん、前立腺がん、骨肉腫、脳腫瘍、白血病、筋肉腫、皮膚がん、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、舌がん、骨髄腫、甲状腺がん、皮膚転移がん、皮膚黒色腫が挙げられ、これらの中でも、下部消化器がんであることが好ましく、大腸がんであることがより好ましい。
【0157】
本発明の抗がん剤は、前記タンキラーゼ阻害化合物と前記微小管阻害化合物とを組み合わせて用いる。本発明において、かかる組み合わせは、前記タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、前記微小管阻害化合物を有効成分として含有する微小管阻害剤とを、同時に用いる又は投与する形態(同時別剤)であっても、両者を別々に用いる又は投与する形態(異時別剤)であっても、これらの配合剤の形態(同剤)のいずれであってもよい。
【0158】
したがって本発明は、前記タンキラーゼ阻害剤と、前記微小管阻害剤とを組み合わせた抗がん剤;前記微小管阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、タンキラーゼ阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤;前記タンキラーゼ阻害剤と組み合わせて投与されるように用いられ、かつ、微小管阻害化合物を有効成分として含有する抗がん剤;タンキラーゼ阻害化合物及び微小管阻害化合物を有効成分として配合した抗がん剤;及び前記タンキラーゼ阻害剤と、前記微小管阻害剤とからなるキットを提供する。
【0159】
本発明に係るタンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び抗がん剤は、それぞれ独立に、その他の治療剤をさらに含有していてもよく、また、その他の治療剤を同時又は異時に組み合わせて用いてもよい。前記他の治療剤としては、例えば、他の抗がん剤(抗細胞増殖、抗悪性腫瘍、DNA損傷剤、及びこれらの組み合わせ、より具体的には、上記のアルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗がん性抗生物質、プラチナ製剤;有糸分裂阻害薬;トポイソメラーゼ阻害薬;植物アルカロイドかつトポイソメラーゼ阻害薬である薬剤;細胞分裂阻害薬、EGFR抗体などの成長因子機能阻害薬;VEGF抗体、VEGFR抗体などの血管新生阻害作用薬;メタロプロテアーゼインヒビターなどのがん細胞転移抑制作用薬;Rasアンチセンスなどのアンチセンス療法薬;抗PD-1抗体、T細胞などによる免疫療法薬などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
本発明に係るタンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び抗がん剤は、吸入投与、点鼻投与、点眼投与、皮下投与、静注投与、筋注投与、直腸投与及び経皮投与など、経口及び非経口のいずれの投与経路で投与されるものであってよく、ヒト又はヒト以外の動物に投与することができる。したがって、本発明に係るタンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び抗がん剤は、それぞれ独立に、投与経路に応じた適当な剤型とすることができる。
【0161】
本発明に係るタンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び抗がん剤の剤型の例としては、それぞれ独立に、具体的には、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、トローチ錠、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤などの経口剤;吸入剤、点鼻液、点眼液などの外用液剤;静注、筋注などの注射剤;直腸投与剤、坐剤、ローション剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤などの非経口剤が挙げられる。
【0162】
本発明に係るタンキラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、及び抗がん剤は、前記剤型に応じて、薬学の分野において通常用いられている賦形剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、滑沢剤、着色剤などの添加剤をさらに含有していてもよく、これらを用いて常法により製造することができる。前記添加剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アラビアゴム、オリーブ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0163】
本発明に係るタンキラーゼ阻害剤及びタンキラーゼ阻害化合物を含有する抗がん剤において、本発明に係るタンキラーゼ阻害化合物の含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その剤型に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、通常、前記タンキラーゼ阻害剤又は前記抗がん剤の全質量を基準として、フリー体換算で、0.01~70質量%、好ましくは0.05~50質量%である。本発明に係るタンキラーゼ阻害化合物の投与量は、用法、患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、通常、成人1日当り0.1~2000mg、好ましくは1~1000mgであり、これを1日1回又は数回に分けて投与する。
【0164】
本発明に係る微小管阻害剤及び微小管阻害剤化合物を含有する抗がん剤において、本発明に係る微小管阻害化合物の含有量(混合物である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その剤型に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、通常、前記微小管阻害剤又は前記抗がん剤の全質量を基準として、フリー体換算で、0.01~70質量%、好ましくは0.05~50質量%である。本発明に係る微小管阻害化合物の投与量は、用法、患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、通常、成人1日当り0.1~2000mg、好ましくは1~1000mgであり、これを1日1回又は数回に分けて投与する。
【0165】
本発明に係るタンキラーゼ阻害化合物及び微小管阻害剤化合物をいずれも含有する抗がん剤(同剤)において、前記タンキラーゼ阻害化合物の含有量と前記微小管阻害剤化合物の含有量との質量比(タンキラーゼ阻害化合物:微小管阻害剤化合物)としては、適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、例えば、フリー体換算で、1:20000~20000:1、好ましくは1:1000~1000:1であり、より好ましくは1:100~100:1である。
【0166】
また、本発明に係るタンキラーゼ阻害化合物及び微小管阻害剤化合物を別剤として用いる場合、前記タンキラーゼ阻害化合物の投与量と前記微小管阻害剤化合物の投与量との質量比(タンキラーゼ阻害化合物:微小管阻害剤化合物)としては、適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、例えば、フリー体換算で、1:20000~20000:1、好ましくは1:1000~1000:1であり、より好ましくは1:100~100:1である。
【0167】
なお、前記同剤と前記別剤とを併用することもできるし、また前記同剤及び/又は前記別剤と、前記タンキラーゼ阻害剤及び/又は前記微小管阻害剤の単剤とを併用することもできる。例えば、最初の1回ないし数回は前記同剤として調製した静脈注射用の薬剤を点滴静注して、その後数日は前記タンキラーゼ阻害剤のみを経口で投与してもよい。
【実施例
【0168】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、当該実施例によって本発明の範囲が制限されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の応用、変形及び修正などが可能である。また、実施例で使用した各化合物の製造法を化合物例として説明するが、これらも本発明の実施について具体的に説明するための例示であって、当該例示によって本発明の範囲が制限されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の応用、変形及び修正などが可能である。
【0169】
以下、実施例及び化合物例において使用される略語は、下記の意味で用いられる。
M:mol/L
H-NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトル(270MHz、400MHz又は500MHz)
MS(ESI):質量スペクトル(電子スプレーイオン化法)
DMSO:ジメチルスルホキシド
Bzl及びBn:ベンジル
MPM:4-メトキシフェニルメチル、4-メトキシベンジル
TBS:tert-ブチルジメチルシリル
Cbz:ベンジルオキシカルボニル
Boc:tert-ブチルオキシカルボニル
Ts:パラトルエンスルホニル。
【0170】
(化合物例1)
2-(4,6-ジフルオロ-1-(2-ヒドロキシエチル)スピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-1’-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4(3H)-オン
a)1’-ベンジルオキシカルボニル-1-tert-ブチルオキシカルボニル-4,6-ジフルオロスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]
【0171】
【化11】
【0172】
1-ベンジルオキシカルボニル-4-ホルミルピペリジン278.9mgをクロロホルム5mlに溶解し、3,5-ジフルオロフェニルヒドラジン塩酸塩244.4mg、トリフルオロ酢酸0.26mlを加え、加熱還流で1時間撹拌した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム358.5mgを加えて、室温でさらに1時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をクロロホルム5mlに溶解し、二炭酸ジ-tert-ブチル295.4mg、ジメチルアミノピリジン165.4mgを加えて室温で1時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=80/20)で精製し、標題化合物82.8mgを得た。
MS(ESI)m/z:459[M+H]
b)2-(1-tert-ブチルオキシカルボニル-4,6-ジフルオロスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-1’-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4(3H)-オン
【0173】
【化12】
【0174】
1’-ベンジルオキシカルボニル-1-tert-ブチルオキシカルボニル-4,6-ジフルオロスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]275.6mgをメタノール3mlに溶解し、10%パラジウム炭素64.0mg、ギ酸アンモニウム189.5mgを加え、1時間加熱還流を行った。反応溶液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をアセトニトリル3mlに溶解し、1-アミジノピラゾール塩酸塩105.7mg、トリエチルアミン0.251mlを加え、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮して得られた残渣をエタノール5mlに溶解し、2-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル0.12ml、21%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.58mlを加え、加熱還流で3時間撹拌した。反応液に塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム=10/90)で精製し、標題化合物48.5mgを得た。
MS(ESI)m/z:473[M+H]
c)2-(4,6-ジフルオロスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-1’-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4(3H)-オン
【0175】
【化13】
【0176】
2-(1-tert-ブチルオキシカルボニル-4,6-ジフルオロスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-1’-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4(3H)-オン48.5mgをクロロホルム1mlに溶解し、トリフルオロ酢酸1mlを加え、室温で1時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=90/10)で精製し、標題化合物2.0mgを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.66-1.78(m,6H),1.80-1.86(m,2H),2.19-2.28(m,2H),2.36-2.41(m,2H),2.45-2.50(m,2H),2.93-3.02(m,2H),3.60(s,2H),3.98(br.s,1H),4.32-4.39(m,2H),6.07-6.14(m,2H),10.71(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:373[M+H]
d)2-(4,6-ジフルオロ-1-(2-ヒドロキシエチル)スピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-1’-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4(3H)-オン
【0177】
【化14】
【0178】
2-(4,6-ジフルオロスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-1’-イル)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-4(3H)-オン31.8mgをクロロホルムに溶解し、グリコールアルデヒドダイマー15.4mg、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム54.3mg、酢酸を加えて室温で14時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム=10/90)で精製し、標題化合物12.4mgを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.64-1.83(m,6H),2.20-2.30(m,2H),2.33-2.38(m,2H),2.45-2.50(m,2H),2.91-3.00(m,2H),3.30(t,J=5.4Hz,2H),3.54(s,2H),3.84(t,J=5.4Hz,2H),4.42-4.49(m,2H),6.00-6.09(m,2H),11.69(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:417[M+H]
【0179】
(化合物例5)
4-フルオロ-1-メチル-1’-(8-メチル-4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2-イル)-6-(4-メチルピペラジン-1-イル)スピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2-オン
a)2-シアノ-2-(2,6-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)酢酸 tert-ブチル
【0180】
【化15】
【0181】
4-ブロモ-3,5-ジフルオロアニソール1.1151g、ナトリウム tert-ブトキシド1.2013g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)45.8mg、テトラフルオロほう酸トリ-tert-ブチルホスフィン29.0mgを1,4-ジオキサンに溶解し、シアノ酢酸tert-ブチル0.856mlを加え、マイクロウェーブ照射下180℃で30分撹拌した。反応液に水を加えてセライト濾過を行い、濾液を酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80)で精製し、標題化合物1.2791gを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.50(s,9H),3.81(s,3H),4.92(br.s,1H),6.50-6.55(m,2H).
MS(ESI)m/z:284[M+H]
b)2-(2,6-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)アセトニトリル
【0182】
【化16】
【0183】
2-シアノ-2-(2,6-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)酢酸 tert-ブチル1.2791gをトルエンに溶解し、パラトルエンスルホン酸一水和物85.9mgを加え、加熱還流で1時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80)で精製し、標題化合物698.8mgを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:3.64(s,2H),3.80(s,3H),6.48-6.54(m,2H).
MS(ESI)m/z:184[M+H]
c)1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-(2,6-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)ピペリジン-4-カルボニトリル
【0184】
【化17】
【0185】
2-(2,6-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)アセトニトリル698.8mgをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-N,N-ビス(2-クロロエチル)アミン1.1086g、水素化ナトリウム457.8 mgを加え、80℃で3時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80)で精製し、標題化合物881.4mgを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.48(s,9H),2.11-2.20(m,2H),2.30-2.36(m,2H),3.17-3.29(m,2H),3.79(s,3H),4.10-4.27(m,2H),6.46-6.51(m,2H).
MS(ESI)m/z:353[M+H]
d)1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-(2,6-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【0186】
【化18】
【0187】
1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-(2,6-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)ピペリジン-4-カルボニトリル2.0886gをジメチルスルホキシドに溶解し、5N水酸化ナトリウム2.5ml、30%過酸化水素水溶液2.5mlを加え、80℃で14時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80)で精製し、標題化合物2.1733gを得た。
MS(ESI)m/z:371[M+H]
e)1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-フルオロ-6-メトキシ-1-メチルスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2-オン
【0188】
【化19】
【0189】
1-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-(2,6-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)ピペリジン-4-カルボキサミド2.1733gをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、水素化リチウム139.9mgを加え、120℃で14時間撹拌した後、ヨードメタン1.1mlを加えてさらに1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80)で精製し、標題化合物1.8156gを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.50(s,9H),1.69-1.76(m,2H),2.05-2.14(m,2H),3.16(s,3H),3.66-3.98(m,7H),6.22-6.28(m,2H).
MS(ESI)m/z:365[M+H]
f)1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-フルオロ-6-ヒドロキシ-1-メチルスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2-オン
【0190】
【化20】
【0191】
1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-フルオロ-6-メトキシ-1-メチルスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2-オン27.7mgをクロロホルムに溶解し、三臭化ほう素(17%ジクロロメタン溶液、約1mol/l)1.5mlをを加え、室温で14時間撹拌した。反応液にメタノール、5N水酸化ナトリウム水溶液、二炭酸-ジ-tert-ブチル0.026mlを加え、1時間撹拌した。反応液に1N塩酸水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=50/50)で精製し、標題化合物26.6mgを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.51(s,9H),1.70-1.77(m,2H),2.03-2.12(m,2H),3.68-3.94(m,4H),6.23-6.28(m,2H),8.05(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:351[M+H]
g)トリフルオロメタンスルホン酸 1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-フルオロ-1-メチル-2-オキソスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-6-イル
【0192】
【化21】
【0193】
1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-フルオロ-6-ヒドロキシ-1-メチルスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2-オン175.2mgをクロロホルムに溶解し、トリエチルアミン0.21ml、トリフルオロメタンスルホン酸無水物0.12mlを加え、室温で1時間撹拌した。反応液に飽和水酸化ナトリウム水溶液を加えて、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80)で精製し、標題化合物159.2mgを得た。
MS(ESI)m/z:483[M+H]
h)4-フルオロ-1-メチル-1’-(8-メチル-4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2-イル)-6-(4-メチルピペラジン-1-イル)スピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2-オン
【0194】
【化22】
【0195】
トリフルオロメタンスルホン酸 1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-フルオロ-1-メチル-2-オキソスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-6-イル48.2mg、炭酸セシウム48.9mg、酢酸パラジウム2.2mg、rac-2,2‘-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル12.5mgをトルエンに溶解し、N-メチルピペラジン0.013mlを加え、加熱還流で14時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム=10/90)で精製した。得られた生成物をクロロホルムに溶解し、トリフルオロ酢酸を加えて室温で1時間撹拌した。反応液に飽和水酸化ナトリウム水溶液を加えて、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をエタノールに溶解し、2-クロロ-8-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4(3H)-オン24.0mg、トリエチルアミン0.017mlを加え、マイクロウェーブ照射下150℃で30分撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム=10/90)で精製し、標題化合物31.5mgを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.80-1.87(m,4H),2.11-2.20(m,2H),2.36(s,3H),2.44-2.49(m,2H),2.55-2.60(m,4H),3.07(s,3H),3.17(s,3H),3.21-3.27(m,6H),3.89-3.98(m,2H),4.10-4.17(m,2H),6.19-6.25(m,2H),10.32(br.s,1H).
MS(ESI)m/z:496[M+H]
【0196】
(化合物例19)
6-(cis-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル)-4-フルオロ-1-メチル-1’-(8-メチル-4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2-イル)スピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2(1H)-オン
a)1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)-4-フルオロ-1-メチルスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2-オン
【0197】
【化23】
【0198】
トリフルオロメタンスルホン酸 1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-4-フルオロ-1-メチル-2-オキソスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-6-イル48.2mg、炭酸セシウム48.9mg、酢酸パラジウム2.2mg、rac-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル6.2mgをトルエンに溶解し、cis-2,6-ジメチルモルホリン0.015mlを加え、加熱還流で14時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=50/50)で精製し、標題化合物18.2mgを得た。
H-NMR(400MHz,CHCl)δ:1.27(d,J=6.2Hz,6H),1.49(s,9H),1.70-1.77(m,2H),2.01-2.11(m,2H),2.41-2.49(m,2H),3.17(s,3H),3.40-3.45(m,2H),3.68-3.94(m,6H),6.15-6.23(m,2H).
MS(ESI)m/z:448[M+H]
b)6-(cis-2,6-ジメチルモルホリン-4-イル)-4-フルオロ-1-メチル-1’-(8-メチル-4-オキソ-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-2-イル)スピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2(1H)-オン
【0199】
【化24】
【0200】
1’-(tert-ブチルオキシカルボニル)-6-(cis-2,6-ジメチルモルホリノ)-4-フルオロ-1-メチルスピロ[インドリン-3,4’-ピペリジン]-2-オン29.9mgをクロロホルム1mlに溶解し、トリフルオロ酢酸1mlを加えて室温で1時間撹拌した。反応液に飽和水酸化ナトリウム水溶液を加えて、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をエタノールに溶解し、2-クロロ-8-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4(3H)-オン16.0mg、トリエチルアミン0.028mlを加え、マイクロウェーブ照射下150℃で30分撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム=10/90)で精製し、標題化合物22.6mgを得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.27(d,J=6.2Hz,6H),1.79-1.87(m,4H),2.11-2.20(m,2H),2.42-2.49(m,4H),3.07(s,3H),3.19(s,3H),3.23-3.27(m,2H),3.40-3.45(m,2H),3.73-3.82(m,2H),3.89-3.97(m,2H),4.07-4.15(m,2H),6.16-6.23(m,2H).
MS(ESI)m/z:511[M+H]
【0201】
上記化合物例1、5、19の方法及びその応用による方法、並びに、文献既知の方法及びその応用による方法を利用して、化合物例2~4、6~18、20~24の化合物を得た。化合物例1~24の化合物を以下の表1~7に示す。また、化合物例1で得られた化合物について、タンキラーゼのニコチンアミド結合ポケットに結合するニコチンアミド型であることを下記のX線回折により確認した。
<X線回折>
化合物例1で得られた化合物をソークさせたTankyrase-2結晶のX線回折データを、大型放射光施設SPring-8(兵庫県佐用郡)のBL26B2ビームラインで測定した。X線の波長は1.000Å、検出器はMX-225(Rayonix社)を使用した。回折データはXDS(Kabsch,2010)及びCCP4プログラム(Winn et al.,2011)を用いて処理した。
【0202】
【表1】
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
【表4】
【0206】
【表5】
【0207】
【表6】
【0208】
【表7】
【0209】
(化合物例101)
(2R)-2-[5-(4-エトキシフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル]-8-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン
【0210】
【化25】
【0211】
<工程1>
2-アミノ-3-メチルベンズアミド(1.00g)と5-(4-エトキシフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルバルデヒド(1.74g)とをエタノール(30mL)に懸濁し、酢酸(100μL)を加えた。この懸濁液を、マイクロウェーブ反応装置で150℃に加熱し、3時間反応させた。室温まで冷却して10時間攪拌し、析出した固体を濾取した。エタノール(3mL)で3回洗浄後、減圧下加熱乾燥(45℃)して、2-[5-(4-エトキシフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル]-8-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン(1.45g)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:1.33(t,J=6.9Hz,3H),2.04(s,3H),4.06(q,J=6.9Hz,2H),6.06(s,1H),6.34(brs,1H),6.69(t,J=7.4Hz,1H),7.01(d,J=8.6Hz,2H),7.15(d,J=6.9Hz,1H),7.56(d,J=7.3Hz,1H),7.72(d,J=8.6Hz,2H),8.23(brs,1H).
MS(ESI)m/z:350.36[M+H]
【0212】
<工程2>
2-[5-(4-エトキシフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル]-8-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン(136mg)をキラルカラム(CHIRALPAC-IC,DAICEL)を用いた高速液体クロマトグラフィー(メタノール/TFA=100/0.05)により光学分割し、表題化合物(59.4mg)を白色固体として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d)δ:1.33(brt,J=6.9Hz,3H),2.03(brs,3H),3.96-4.16(m,2H),6.07(brs,1H),6.32(brs,1H),6.68(brs,1H),7.01(brd,J=7.3Hz,2H),7.15(brd,J=6.9Hz,1H),7.56(brd,J=6.9Hz,1H),7.62-7.86(m,2H),8.20(brs,1H),14.84(brs,1H).
MS(ESI)m/z:350.26[M+H]
[α] 24=-148°(C=0.1,MeOH)。
【0213】
上記化合物例101の方法及びその応用による方法、並びに、文献既知の方法及びその応用による方法を利用して、化合物例102~108及び113の化合物を得た。化合物例101~108及び113の化合物を以下の表8~10に示す。また、化合物例101で得られた化合物について、タンキラーゼのニコチンアミド結合ポケットに結合するニコチンアミド型であることを上記と同様の条件でX線回折により確認した。
【0214】
【表8】
【0215】
【表9】
【0216】
【表10】
【0217】
(化合物例109)
2-[5-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1-メチル-2,3-ジヒドロキナゾリン-4-オン(CAS No.1252133-21-3)
【0218】
【化26】
【0219】
表題化合物を上記化合物例101の方法を利用して得た。
【0220】
(化合物例110)
4-(5-((E)-2-(4-(2-クロロフェニル)-5-(5-(メチルスルホニル)ピリジン-2-イル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)エテニル)-1,3,4-オキサゾール-2-イル)ベンゾニトリル[4-(5-((E)-2-(4-(2-Chlorophenyl)-5-(5-(methylsulfonyl)pyridin-2-yl)-4H-1,2,4-triazol-3-yl)ethenyl)-1,3,4-oxadiazol-2-yl)benzonitrile;G007-LK]
表題化合物を特許文献3等に記載の合成方法にしたがって得た。なおこの化合物は、タンキラーゼのアデノシン結合ポケットに結合するアデノシン型である。
【0221】
(化合物例111)
N-(8-キノリル)-4-[[(3aR,7aS)-1,3-ジオキソ-4β,7β-メタノ-1,3,3a,4,7,7a-ヘキサヒドロ-2H-イソインドール]-2-イル]ベンズアミド(IWR-1)
表題化合物を従来公知の文献等に記載の合成方法にしたがって得た。なおこの化合物は、タンキラーゼのアデノシン結合ポケットに結合するアデノシン型である。
【0222】
(化合物例112)
N-(シクロプロピルメチル)-4-(4-メトキシベンゾイル)-N-[(3,5,7,8-テトラヒドロ-4-オキソ-4H-ピラノ[4,3-d]ピリミジン-2-イル)メチル]-1-(ピペリジンアセトアミド) (NVP-TNKS656)
表題化合物を非特許文献2等に記載の合成方法にしたがって得た。なおこの化合物は、タンキラーゼのニコチンアミド結合ポケット及びアデノシン結合ポケットの両方に作用するデュアル型である。
【0223】
(試験例1) タンキラーゼ阻害活性試験
タンキラーゼ1の酵素活性及びタンキラーゼ2の酵素活性を、自己ポリADPリボシル化を指標にELISA法で測定することにより、各化合物例で得られた化合物(被験化合物)のタンキラーゼ阻害活性(タンキラーゼ1に対する阻害活性(TNKS1)及びタンキラーゼ2に対する阻害活性(TNKS2))を評価した。先ず、Flagタグ融合型タンキラーゼ1(1,024-1,327aa、SAM+PARP)及びタンキラーゼ2(613-1,116aa、ANK5+SAM+PARP)を無細胞タンパク質合成システムにより合成し、Tris緩衝液(50mMTris-HCl(pH8.0)、150mMNaCl、10%glycerol)で希釈した。希釈した50μLのタンキラーゼ1或いはタンキラーゼ2を抗FLAGM2モノクローナル抗体を固相化したプレート(Anti-FLAG高感度M2コートプレート)(Sigma社)に添加し、4℃にて一晩静置した。その後、プレートを0.1%TritonX-100を含むPBS(PBST)バッファーで4回洗浄した。
【0224】
次いで、アッセイバッファー(50mMTris-HCl(pH8.0)、4mMMgCl、0.2mMDTT)で希釈した被験化合物(コントロールとしてDMSOを用いた)を前記プレートの各ウェルに加え、室温にて10分間静置した。その後、ビオチン標識したNAD溶液(225μMNAD、25μM6-Biotin-17-NAD(Trevigen社))をドナー基質として加えて混和させ、30℃にて45分間反応させた。ブランク用のウェルにはビオチン標識したNAD溶液ではなく、蒸留水を添加した。反応後、プレートをPBSTバッファーで4回洗浄した。その後、HRP(horseradish peroxidase)標識したストレプトアビジン(Trevigen社)をPBSバッファーで1,000倍希釈して各ウェルに添加し、室温にて20分間反応させた。プレートをPBSTバッファーで4回洗浄した後、化学発光基質溶液TACS-Sapphire(Trevigen社)を各ウェルに添加し、室温にて20分間反応させ、化学発光強度は化学発光測定装置を用いて測定した。
【0225】
被験化合物存在下での残存酵素活性を以下の式で求めた。被験化合物の複数濃度での残存酵素活性をもとに、データ分析ソフトウェアOrigin(LightStone社)を用いて酵素阻害活性を50%阻害濃度(IC50値)として算出した。
残存活性(%)={(被験化合物添加時の化学発光強度)-(ブランクの化学発光強度)}/{(コントロールの化学発光強度)-(ブランクの化学発光強度)}
当該方法にて測定した各被験化合物のタンキラーゼ1に対する阻害活性(TNKS1)及びタンキラーゼ2に対する阻害活性(TNKS2)について、IC50値が0.02μM未満を評価“A”、0.02μM以上0.2μM未満を評価“B”、0.2μM以上1μM未満を評価“C”及び1μM以上を評価“D”とした。結果を下記の表11~12に示す。
【0226】
(試験例2) 細胞増殖抑制活性試験
各化合物例で得られた化合物のヒト大腸がん細胞株COLO-320DMに対する細胞増殖抑制活性をCelltiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega社、G7573)により評価した。COLO-320DM細胞は10%ウシ胎児血清、グルタミン2mMを含むRPMI-1640培地(和光純薬、189-02025)で培養した。培養細胞をPBSで洗浄後、トリプシン/EDTAで剥離させ、3×10cells/mLになるように細胞液を調製した。
【0227】
次いで、細胞液を96穴マイクロプレート(Thermo/Nunc社、136101)に70μL/wellずつ播種し、37℃、5%CO条件下で一晩培養した。翌日、被験化合物(DMSO溶液)を細胞培養用培地で希釈した被験化合物溶液(DMSO終濃度を1%とした)10μL/wellを添加し、37℃、5%CO条件下で96時間反応させた(コントロールとして1%DMSO溶液を用いた)。その後、Celltiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay試薬(Promega社、G7573)を80μL/wellずつ添加し、アルミホイルで遮光しながらシェイカーで2分間攪拌した後、室温で10分間静置反応させた。
【0228】
その後、発光シグナルをルミノメーター(Biotech社、Synergy)にて測定した。細胞増殖抑制活性は被験化合物溶液を添加しないコントロール群の細胞増殖量を100%としたときに各化合物添加群の細胞増殖量の割合を求め、残存細胞量をコントロールの50%に抑制するのに必要な化合物濃度(GI50)値を算出した。当該方法にて測定した各被験化合物のCOLO-320DMに対する細胞増殖抑制活性(COLO-320DM)について、GI50値が1μM未満を評価“A”、1μM以上10μM未満を評価“B”、10μM以上を評価“C”とし、未評価の被験化合物については”NT”とした。結果をタンキラーゼ阻害活性試験の結果と合わせて以下の表11~12に示す。
【0229】
【表11】
【0230】
【表12】
【0231】
表11~12に示すように、各化合物例で得られた所定の化合物において十分なタンキラーゼ阻害活性が確認され、これらが十分なタンキラーゼ阻害活性を有するタンキラーゼ阻害化合物であることが確認された。
【0232】
(試験例3) MTTアッセイ
ヒト大腸がん細胞株DLD-1に対して各化合物例で得られた化合物(被験化合物、タンキラーゼ阻害化合物)と微小管阻害化合物とを組み合わせて処理した際の残細胞率を測定することにより、各組み合わせにおけるヒト大腸がん細胞株DLD-1の殺細胞効果を評価した。被験化合物と微小管阻害化合物との組み合わせは以下のとおりである。
(実施例1):化合物例1で得られた化合物と、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、又はビンブラスチンとの組み合わせ。
(実施例2):化合物例5で得られた化合物と、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、又はビンブラスチンとの組み合わせ。
(実施例3):化合物例19で得られた化合物と、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、又はビンブラスチンとの組み合わせ。
(実施例4):化合物例101で得られた化合物と、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、又はビンブラスチンとの組み合わせ。
(実施例5):化合物例110の化合物(G007-LK)と、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、又はビンブラスチンとの組み合わせ。
(実施例6):化合物例111の化合物(IWR-1)と、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、又はビンブラスチンとの組み合わせ。
(実施例7):化合物例112の化合物(NVP-TNKS656)と、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、又はビンブラスチンとの組み合わせ。
【0233】
なお、ドセタキセルとしてはタキソテール(ドセタキセル水和物、シグマ社製)を、パクリタキセルとしてはタキソール(シグマ社製)を、ビンクリスチンとしてはオンコビン(ビンクリスチン硫酸塩、シグマ社製)を、ビンブラスチンとしてはビンブラスチン硫酸塩(和光純薬工業社製)を、それぞれ用いた。
【0234】
先ず、非働化済みの10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640メディウム(以下、培地)にてヒト大腸がん細胞株DLD-1を懸濁し、96穴マイクロプレートに1ウェルあたり250個(75μL)の細胞を播種した。これを37℃のCOインキュベーターで一晩静置培養した後、各被験化合物及び各微小管阻害化合物を上記実施例の組み合わせで含む培地(25μL)を、各被験化合物の最終濃度が0,1,3μMとなるように、微小管阻害化合物の最終濃度が0,0.0412,0.123,0.37,1.11,3.3,10,30,90nMとなるように、それぞれ、3連(triplicate)で添加した。対照としては、溶媒のジメチルスルフォキシド(DMSO)のみを含む培地を25μL添加した。これらを37℃のCOインキュベーターで120時間培養した後、MTT([3-(4,5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド])/リン酸緩衝生理食塩水を最終濃度が0.5mg/mLとなるように添加し、37℃のCOインキュベーター内に4時間静置した。培地を除去後、1ウェルあたり100μLのジメチルスルフォキシドを添加した。これを室温で1時間攪拌した後、各ウェルの吸光度(570nm-630nm)をxMarkマイクロプレートスペクトロフォトメーター(バイオラッド社)で測定した。被験化合物の各濃度において、微小管阻害化合物非添加時と比較して相対的細胞数が50%となる微小管阻害剤の濃度をIC50値とした。
【0235】
被験化合物の最終濃度が0μM(単剤),1μM,3μMであるときの、各微小管阻害化合物の濃度と相対的細胞数との関係(IC50曲線)を図1A図7Dにそれぞれ示す。また、以下の表13に、被験化合物の最終濃度が0μM(単剤),1μM,3μMであるときの、IC50値をそれぞれ示す。なお、各図のうち、被験化合物の最終濃度が1μM及び3μMである系のIC50曲線は、ドセタキセル等の各微小管阻害化合物の濃度が0μM(即ち非添加)の時のIC50値を100%として換算した曲線である。よって、仮に各被験化合物と各微小管阻害化合物との組み合わせによって奏される効果が、単に相加効果であるのであれば、被験化合物の最終濃度が1μM及び3μMである系の各微小管阻害化合物の濃度に対するIC50曲線は、被験化合物の最終濃度が0μM(単剤)である系のIC50曲線と一致する。言い換えれば、被験化合物の最終濃度が0μM(単剤)のときと比較して、被験化合物の最終濃度が1μM,3μMであるときの方が、微小管阻害剤のIC50値が小さいことにより、被検化合物と微小管阻害化合物との組み合わせによるヒト大腸がん細胞株DLD-1の殺細胞効果は、これらの相加効果ではなく、相乗効果によるものであるといえる。
【0236】
【表13】
【0237】
図1A図7D及び表13に示すように、被検化合物と微小管阻害化合物との組み合わせにより、ヒト大腸がん細胞株DLD-1に対して相乗的な殺細胞効果が奏されることが確認され、本発明の組み合わせは、がんなどの増殖性疾患の治療及び予防に有用な抗がん剤として有用であることが確認された。
【0238】
なお、微小管阻害化合物に代えて、他の抗がん剤(テモゾロミド、メルファラン、ゲムシタビン、シタラビン(Ara-C)、フルオロウラシル(5-FU)、ペメトレキセド、メルカプトプリン、メトトレキサート、イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン)を用いた場合には、これらの抗がん剤のみをそれぞれ所定の濃度で添加したときの細胞生存率を100%とすると、これにさらに化合物例5で得られた被験化合物をそれぞれ所定の濃度で添加したときの細胞生存率は、いずれも50%程度まで低下し、かかる組み合わせでは、互いに作用を相殺することなく、少なくとも相加的な殺細胞効果が奏されることが確認された(具体例の結果を下記の実施例8に示す)。
【0239】
すなわち、本発明は、前記一般式(1)又は(11)で表される少なくとも1種を有効成分として含有するタンキラーゼ阻害剤と、アルキル化剤(例えば、テモゾロミド、メルファラン)、代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビン、シタラビン(Ara-C)、フルオロウラシル(5-FU))、ペメトレキセド、メルカプトプリン、メトトレキサート)、植物アルカロイド(ただし微小管阻害化合物を除く。例えば、イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16))、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16))、植物アルカロイドかつトポイソメラーゼ阻害薬である薬剤(例えば、イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)など)、抗がん性抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン)、及びプラチナ製剤(例えば、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン)からなる群から選択される抗がん剤の少なくとも1種とを組み合わせた、抗がん剤、にも関する。
【0240】
(試験例4) MTTアッセイ
ヒト大腸がん細胞株COLO-320DMに対して各化合物例で得られた化合物(被験化合物、タンキラーゼ阻害化合物)と種々の抗がん剤とを組み合わせて処理した際の残細胞率を測定することにより、各組み合わせにおけるヒト大腸がん細胞株COLO-320DMの殺細胞効果を評価した。被験化合物と抗がん剤との組み合わせは以下のとおりである。
(実施例8):化合物例5で得られた化合物と、テモゾロミド、メルファラン、ゲムシタビン、シタラビン(Ara-C)、フルオロウラシル(5-FU)、ペメトレキセド、メルカプトプリン、メトトレキサート、イリノテカン(SN-38)、エトポシド(VP-16)、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、カルボプラチン、又はシスプラチンとの組み合わせ。
(実施例9):化合物例110で得られた化合物(G007-LK)と、イリノテカン(SN-38)との組み合わせ。
(実施例10):化合物例11で得られた化合物と、イリノテカン(SN-38)との組み合わせ。
(実施例11):化合物例19で得られた化合物と、イリノテカン(SN-38)との組み合わせ。
(実施例12):化合物例101で得られた化合物と、イリノテカン(SN-38)との組み合わせ。
(実施例13):化合物例1で得られた化合物と、イリノテカン(SN-38)との組み合わせ。
(実施例14):化合物例113で得られた化合物と、イリノテカン(SN-38)との組み合わせ。
【0241】
なお、テモゾロミド(シグマ社製)、メルファラン(シグマ社製)、ゲムシタビン(Gemcitabine hydrochloride、シグマ社製)、シタラビン(Cytosine β-D-arabinofuranoside(Ara-C)、シグマ社製)、フルオロウラシル(5-Fluorouracil(5-FU)、シグマ社製)、ペメトレキセド(Pemetrexed disodium heptahydrate、シグマ社製)、メルカプトプリン(6-Mercaptopurine monohydrate、シグマ社製)、メトトレキサート(Methotrexate hydrate、シグマ社製)、イリノテカン(7-Ethyl-10-hydroxycamptothecin(SN-38)、シグマ社製)、エトポシド(Etoposide(VP-16)、Enzo Life Sciences社製)、アクチノマイシンD(ナカライテスク社製)、ダウノルビシン(Daunorubicin hydrochloride、カルビオケム)、ドキソルビシン(Doxorubicin hydrochloride、シグマ社製)、ブレオマイシン(Bleomycin sulfate、Enzo Life Sciences社製)、ミトキサントロン(Mitoxantrone dihydrochloride、シグマ社製)、オキサリプラチン(シグマ社製)、カルボプラチン(シグマ社製)、又はシスプラチン(Enzo Life Sciences社製)については、それぞれ市販のものを使用した。
【0242】
先ず、非働化済みの10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640メディウム(以下、培地)にてヒト大腸がん細胞株COLO-320DMを懸濁し、96穴マイクロプレートに1ウェルあたり350個(75μL)の細胞を播種した。これを37℃のCOインキュベーターで一晩静置培養した後、実施例8では、化合物例5で得られた化合物と各抗がん剤とを各組み合わせで含む培地(25μL)を、被験化合物(化合物例5で得られた化合物)の最終濃度が0,30nMとなるように、及び、各抗がん剤の最終濃度が下記の表14に示す各濃度となるように、それぞれ、3連(triplicate)で添加した。また、実施例9~14では、各化合物例で得られた化合物と各抗がん剤とを各組み合わせで含む培地(25μL)を、被験化合物の最終濃度が0μM又は下記の図9~14に記載の濃度となるように、それぞれ、3連(triplicate)で添加した。対照としては、溶媒のジメチルスルフォキシド(DMSO)のみを含む培地を25μL添加した。これらを37℃のCOインキュベーターで120時間培養した後、MTT([3-(4,5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド])/リン酸緩衝生理食塩水を最終濃度が0.5mg/mLとなるように添加し、37℃のCOインキュベーター内に4時間静置した。培地を除去後、1ウェルあたり100μLのジメチルスルフォキシドを添加した。これを室温で1時間攪拌した後、各ウェルの吸光度(570nm-630nm)をxMarkマイクロプレートスペクトロフォトメーター(バイオラッド社)で測定した。被験化合物の各濃度において、各抗がん剤非添加時と比較して相対的細胞数が50%となる各抗がん剤の濃度をIC50値とした。
【0243】
被験化合物の最終濃度が0μM(単剤)又は所定濃度であるときの、各抗がん剤の濃度と相対的細胞数との関係(IC50曲線)を図8A図8C図9図14にそれぞれ示す。
【0244】
【表14】
【0245】
図8A図8Cに示すように、各抗がん剤のみを30nM添加したときの細胞生存率を100%とすると、これにさらに化合物例5で得られた被験化合物を30nM添加したときの細胞生存率は、いずれも50%程度まで低下し、かかる組み合わせでは、互いに作用を相殺することなく、少なくとも相加的な殺細胞効果が奏されることが確認された。また、図9図14に示すように、抗がん剤(イリノテカン)のみを30nM添加したときの細胞生存率を100%とすると、これにさらに各化合物例110、11、19、101、1、113で得られた被験化合物をそれぞれ図中に記載の濃度で添加したときの細胞生存率は、いずれも50%程度まで低下し、かかる組み合わせでも、互いに作用を相殺することなく、少なくとも相加的な殺細胞効果が奏されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0246】
以上説明したように、本発明によれば、がんなどの増殖性疾患の治療及び予防に有用な新たな抗がん剤及びキットを提供することが可能となる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14