(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】電解液体生成装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20231020BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20231020BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C25B9/00 A
C25B13/02 301
(21)【出願番号】P 2020023386
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】今堀 修
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 友宏
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-501243(JP,A)
【文献】特開2020-011179(JP,A)
【文献】特開2020-011180(JP,A)
【文献】特開2010-119990(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168475(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 - 1/48
C25B 1/00 - 9/77
13/00 - 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣り合う電極間に導電性膜が介在するように積層された積層体を有し、液体を電解処理する電解部と、
前記電解部が内部に配置されるハウジングと、
を備え、
前記ハウジングには、前記電解部に供給される液体が流入する流入口と、前記電解部で生成される電解液体が流出する流出口とが設けられ、
前記積層体は、一方の前記電極と、前記導電性膜の反対側で接触する給電体を有し、
前記導電性膜は、前記給電体と離間して配置され、
前記導電性膜には、流路の幅方向側の側面から前記ハウジングの内面に向けて突出し、前記ハウジングと接触して前記ハウジングに対して前記導電性膜を位置決めする凸部が設けられ、
前記凸部は、前記流路の幅方向と直交する流路の通液方向に複数設けられている電解液体生成装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記流路の通液方向の上流端側と下流端側とにそれぞれ設けられている請求項1に記載の電解液体生成装置。
【請求項3】
前記導電性膜には、前記凸部に対して前記流路の幅方向の反対側の位置に凹部が設けられている請求項1または2に記載の電解液体生成装置。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記ハウジングの内面から内部に向けて突出し、前記凸部と前記流路の通液方向にて対向するように配置され、前記導電性膜を前記流路の通液方向に対して位置決めする規制部が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の電解液体生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解液体生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解液体生成装置としては、互いに隣り合う電極間に導電性膜が介在するように積層された積層体を有し液体を電解処理する電解部と、電解部が内部に配置されるハウジングとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この電解液体生成装置では、ハウジングに、電解部に供給される液体が流入する流入口と電解部で生成される電解液体が流出する流出口とが設けられている。このような電解液体生成装置では、電解部に、液体としての水を供給し、電解部への電圧の印加によって水を電解処理し、電解生成物としてのオゾンを生成している。そして、生成されたオゾンを水に溶解し、電解液体としてのオゾン水を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のような電解液体生成装置では、積層体を構成する導電性膜が、外縁部をハウジングの内面に接触するように配置することによって、ハウジングに対して位置決めされている。
【0006】
しかしながら、このようなハウジングに対する導電性膜の位置決めでは、導電性膜を小型化してしまうと、導電性膜の外縁部をハウジングの内面に接触させることができず、導電性膜の小型化と位置決めとを両立することができなかった。
【0007】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、導電性膜を小型化することができ、ハウジングに対して導電性膜を位置決めすることができる電解液体生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様に係る電解液体生成装置は、互いに隣り合う電極間に導電性膜が介在するように積層された積層体を有し、液体を電解処理する電解部と、前記電解部が内部に配置されるハウジングとを備え、前記ハウジングには、前記電解部に供給される液体が流入する流入口と、前記電解部で生成される電解液体が流出する流出口とが設けられ、前記導電性膜には、前記ハウジングの内面に向けて突出し、前記ハウジングに対して前記導電性膜を位置決めする凸部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、導電性膜を小型化することができ、ハウジングに対して導電性膜を位置決めすることができる電解液体生成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る電解液体生成装置の分解斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る電解液体生成装置の断面図である。
【
図3】本実施形態に係る電解液体生成装置の断面図である。
【
図5】本実施形態に係る電解液体生成装置の導電性膜の上面図である。
【
図6】本実施形態に係る電解液体生成装置のハウジングの電極ケースに導電性膜を収容したときの上面図である。
【
図7】本実施形態に係る電解液体生成装置の給電体に陽極を積層したときの上面図である。
【
図8】本実施形態に係る電解液体生成装置の給電体および陽極に導電性膜を積層したときの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0012】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
以下では、電解液体生成装置として、電解生成物としてのオゾンを発生させ、オゾンを液体としての水に溶解させることで、電解液体としてのオゾン水を生成するオゾン水生成装置を例示する。なお、オゾン水は、殺菌や有機物分解に有効であるため、水処理分野や食品、医学分野において広く利用されており、残留性がないことや、副生成物を生成しないという利点を有するものである。
【0014】
なお、以下では、流路の延在方向を通液方向(液体が流れる方向)X、流路の幅方向を幅方向(通液方向を横切る方向)Y、電極や導電性膜が積層される方向を積層方向Zとして説明する。なお、本実施形態では、積層方向Zを上下方向とし、ハウジングにおいて、電極ケース蓋側を上側としている。
【0015】
図1~
図8に示すように、電解液体生成装置1は、電解部11と、ハウジング13と、弾性体27とを備えている。なお、以下では、電極3を陰極3とし、電極5を陽極5とする。
【0016】
図1~
図4に示すように、電解部11は、積層体9を有し、積層体9は、陰極3と、陽極5と、導電性膜7と、給電体23とを備えている。
【0017】
陰極3は、例えば、チタンを用いて形成されている。この陰極3は、通液方向Xを長手方向とし、幅方向Yを短手方向とし、積層方向Zを厚み方向とする長方形の板状に形成されている。このような陰極3の長手方向の一端(通液方向Xの下流側)には、渦巻き状のバネ部3aを介して陰極用の給電シャフト3bが電気的に接続されている。この給電シャフト3bは、電力供給部(不図示)の負極に電気的に接続される。
【0018】
この陰極3には、厚み方向(積層方向Z)に貫通した陰極側孔3cが複数形成されている。この複数の陰極側孔3cは、それぞれが長手方向(通液方向X)に向けてV字状になるように、ほぼ同一の形状をしている。このような複数の陰極側孔3cは、長手方向(通液方向X)に沿って所定のピッチで一列に並ぶように設けられている。なお、陰極側孔3cの形状および配列は、別の形態であってもよい。また、陰極側孔3cは、陰極3に少なくとも1つ形成されていればよい。
【0019】
陽極5は、例えば、シリコンを用いて形成した導電性基板に導電性ダイヤモンド膜を成膜することで形成されている。なお、導電性ダイヤモンド膜は、ボロンドーブ導電性を有し、プラズマCVD法によって、導電性基板上に形成される。この陽極5は、通液方向Xを長手方向とし、幅方向Yを短手方向とし、積層方向Zを厚み方向とする長方形の板状に形成されている。また、陽極5は、長手方向(通液方向X)に沿って2枚並べて配置されている。このような陽極5は、導電性膜7を積層方向Zに挟んで陰極3と積層される。
【0020】
導電性膜7は、例えば、プロトン導電型のイオン交換フィルムを用いて形成されている。この導電性膜7は、通液方向Xを長手方向とし、幅方向Yを短手方向とし、積層方向Zを厚み方向とする長方形の板状に形成されている。このような導電性膜7には、厚み方向(積層方向Z)に貫通した導電性膜側孔7aが複数形成されている。
【0021】
この複数の導電性膜側孔7aは、それぞれが短手方向(幅方向Y)に沿って長孔状になるように、ほぼ同一の形状をしている。このような複数の導電性膜側孔7aは、長手方向(通液方向X)に沿って所定のピッチで一列に並ぶように設けられている。なお、複数の導電性膜側孔7aのピッチは、陰極側孔3cと同じピッチとしてもよいし、陰極側孔3cと異なるピッチとしてもよい。また、導電性膜側孔7aの形状および配列は、別の形態であってもよい。さらに、導電性膜側孔7aは、導電性膜7に少なくとも1つ形成されていればよい。
【0022】
給電体23は、例えば、チタンを用いて形成されている。この給電体23は、通液方向Xを長手方向とし、幅方向Yを短手方向とし、積層方向Zを厚み方向とする長方形の板状に形成されている。このような給電体23の長手方向の他端(通液方向Xの上流側)には、渦巻き状のバネ部23aを介して陽極用の給電シャフト23bが電気的に接続されている。この給電シャフト23bは、電力供給部(不図示)の正極に電気的に接続される。この給電体23は、陽極5の積層方向Zの一面側に積層されて陽極5に接触され、陽極5と電気的に接続される。
【0023】
このような積層体9は、積層方向Zの下側から、給電体23、陽極5、導電性膜7、陰極3の順に積層される。この積層体9では、陰極3と陽極5の間に導電性膜7が積層された部分で、陰極3および陽極5と導電性膜7との間に界面29,31が形成される。また、積層体9では、陰極3と導電性膜7とが積層された部分で、陰極側孔3cと導電性膜側孔7aとが積層方向Zに連通し、溝部33が形成される。この溝部33には、界面29,31の少なくとも一部が露出している。このような溝部33は、液体としての水が流れる流路35に開口し、水が流通される。
【0024】
このような積層体9を有する電解部11では、流路35に水を流通させ、溝部33に水を流通させた状態で、電源供給部によって、陰極3と陽極5との間に電圧を印可すると、陰極3と陽極5との間には導電性膜7を介して電位差が生じる。この電位差により、陰極3と陽極5と導電性膜7とが通電し、主に溝部33内の水中で電解処理がなされ、陽極5と導電性膜7との界面31の近傍で電解生成物としてのオゾンが発生する。このオゾンは、水の流れに沿って流路35の下流側へと運ばれながら水に溶解し、電解液体としてのオゾン水が生成される。このような電解部11は、ハウジング13内に配置されている。
【0025】
図1~
図4に示すように、ハウジング13は、例えば、PPSなどの非導電性の樹脂を用いて形成されている。このハウジング13は、電極ケース37と、電極ケース蓋39とを備えている。
【0026】
電極ケース37は、積層方向Zの下側に位置する底壁部41と、底壁部41の周縁部から積層方向Zの上側に向けて立設され周方向に連続して形成された周壁部43とを備えている。この電極ケース37は、周壁部43の上側が開口された長方形の筐体状に形成されている。なお、周壁部43の上端には、外方に向けて通液方向Xおよび幅方向Yと平行な平面方向に延設され周方向に連続してフランジ部45が形成されている。このような電極ケース37は、収容凹部47と、一対の貫通孔49,49と、嵌合凸部51と、流入口15と、流出口17とを備えている。
【0027】
収容凹部47は、底壁部41の内面41aと周壁部43の内面43aとによって区画された電極ケース37の内部空間となっており、周壁部43の上側が開口されている。この収容凹部47には、開口側から電解部11と弾性体27とが収容される。なお、周壁部43の内面43aには、ハウジング13に対して陰極3を位置決めする位置決め突起53が通液方向Xに沿って複数形成されている。
【0028】
一対の貫通孔49,49は、収容凹部47の底壁部41の通液方向Xの下流側と上流側とにそれぞれ設けられている。この一対の貫通孔49,49は、それぞれ底壁部41を積層方向Zに貫通して形成されている。このような一対の貫通孔49,49には、電解部11を収容凹部47に収容した状態で、それぞれ陰極3の給電シャフト3bと給電体23の給電シャフト23bとが挿通して配置される。そして、一対の貫通孔49,49の下側には、給電シャフト3bおよび給電シャフト23bに対して、Oリング55、ワッシャ57、バネ座金59、六角ナット61が組付けられる。この組付けにより、収容凹部47が止水されつつ、給電シャフト3bおよび給電シャフト23bが一対の貫通孔49,49に固定される。
【0029】
嵌合凸部51は、周壁部43の上面から積層方向Zの上側に向けて立設され周方向に連続して形成されている。この嵌合凸部51には、電極ケース蓋39の嵌合凹部67が嵌合され、電極ケース37に対して電極ケース蓋39が位置決めされる。なお、嵌合凸部51は、周方向に不連続に複数形成してもよい。
【0030】
流入口15は、電極ケース37の周壁部43のうち通液方向Xの上流側に位置する周壁部43に設けられ、通液方向Xの上流側に向けて筒状に延設されている。この流入口15の中央部には、周壁部43を通液方向Xに貫通し、収容凹部47に連通された長穴状の孔が形成されている。このような流入口15には、液体としての水を供給する配管(不図示)が接続され、収容凹部47内に水を導入させる。
【0031】
流出口17は、電極ケース37の周壁部43のうち通液方向Xの下流側に位置する周壁部43に設けられ、通液方向Xの下流側に向けて筒状に延設されている。この流出口17の中央部には、周壁部43を通液方向Xに貫通し、収容凹部47に連通された長穴状の孔が形成されている。このような流出口17には、電解液体としてのオゾン水を排出する配管(不図示)が接続され、収容凹部47内の電解部11で生成されたオゾン水を導出させる。
【0032】
電極ケース蓋39は、積層方向Zの上側に位置する長方形状の蓋部本体63と、蓋部本体63の中央部の下面から積層方向Zの下側に向けて長方形状に立設された流路凸部65とを備えている。
【0033】
蓋部本体63は、収容凹部47の開口を閉塞可能なように、外形形状が電極ケース37のフランジ部45とほぼ同一に形成されている。この蓋部本体63の下面の外縁部には、嵌合凸部51と嵌合可能な嵌合凹部67が周方向に連続して形成されている。このような蓋部本体63は、下面がフランジ部45の上面と接触し、嵌合凹部67が嵌合凸部51に嵌合された状態で、互いの接触面が溶着される。この溶着により、ハウジング13の内部が止水されつつ、電極ケース蓋39が電極ケース37に固定される。
【0034】
なお、電極ケース37と電極ケース蓋39との固定は、電極ケース37と電極ケース蓋39との間にシール材を介在させ、ねじ止めなどの固定手段によって固定してもよい。また、嵌合凹部67は、嵌合凸部51が周方向に不連続に複数形成されている場合には複数の嵌合凸部51に合わせて、周方向に不連続に複数形成させればよい。さらに、蓋部本体63の上面には、電解液体生成装置1を組付ける際に、位置決め、引っ掛かり、逆入れ防止などに活用される溝69が形成されている。
【0035】
流路凸部65は、外形形状が収容凹部47の開口の内縁部とほぼ同一形状に形成されている。この流路凸部65の外面は、収容凹部47に挿入可能なように、周壁部43の内面43aとの間にわずかな隙間を有するように設定されている。このような流路凸部65は、電極ケース蓋39が電極ケース37に組付けられた状態で、収容凹部47に挿入され、下面が電解部11の陰極3の表面に当接して積層体9を積層方向Zの下側に向けて押圧する。この流路凸部65の下面の中央部には、流路溝71が通液方向Xに沿って形成されている。
【0036】
流路溝71は、流路凸部65の中央部に通液方向Xに沿って複数配置された円柱状の突起部で区画されるように、流路凸部65の幅方向Yに対して2本設けられ、それぞれ陰極3側が開口し、通液方向Xの両側が開口されている。この流路溝71は、幅方向Yの幅が、電解部11の溝部33の幅方向Yの幅とほぼ同一に設定されている。この設定により、流路溝71を流れる液体としての水を、溝部33に安定して導入させることができる。このような流路溝71は、流路凸部65が陰極3に当接された状態で、陰極3の表面との間に液体としての水が流通する流路35を形成する。
【0037】
この流路35には、流入口15からハウジング13内に導入された液体としての水が流入される。この流路35に流入された水は、電解部11の溝部33を流通して電解処理され、電解生成物としてのオゾンが生成される。この生成されたオゾンは、流路35を流れる水に溶解し、電解液体としてのオゾン水が生成される。この生成されたオゾン水は、流路35を流れ、流出口17からハウジング13外に導出される。このような流路35が形成されたハウジング13内には、弾性体27が配置されている。
【0038】
図1~
図4に示すように、弾性体27は、例えば、ゴム、プラスチック、金属ばねなどの弾性力を有する弾性体を用いて形成されている。この弾性体27は、収容凹部47に収容可能なように、外面形状が収容凹部47の底壁部41側の内面形状とほぼ同一な直方体状に形成されている。このような弾性体27は、収容凹部47に収容された状態で、積層方向Zの上側に電解部11が積層される。この状態で、電極ケース蓋39を電極ケース37に組付けることによって、流路凸部65が電解部11を積層方向Zの下側に向けて押圧し、弾性体27が積層方向Zの下側に向けて押圧された状態となる。
【0039】
このとき、弾性体27には、積層方向Zの上側に向けて復元しようとする反発力が発生する。この弾性体27の反発力によって、電解部11に積層方向Zの上側に向けた付勢力が付与され、積層体9が積層方向Zに密着された状態となる。このため、積層体9の接触が安定し、通電面積が保持され、電流密度を均等化して電解部11での電解処理性能を安定化することができる。なお、弾性体27の自由状態において、弾性体27の外面と収容凹部47の内面との間には、隙間が形成されている。このような隙間を形成することにより、弾性体27が弾性変形したときの弾性体27の変形を許容することができる。
【0040】
このような弾性体27には、積層方向Zに貫通して形成され、通液方向Xに沿って複数配置された位置決め凹部73が設けられている。この位置決め凹部73には、収容凹部47の底壁部41に複数立設された位置決め凸部75が挿入される。このように位置決め凹部73に位置決め凸部75を挿入することにより、弾性体27がハウジング13に対して通液方向Xおよび幅方向Yと平行な平面方向に位置決めされる。なお、弾性体27の自由状態において、位置決め凹部73の内面と位置決め凸部75の外面との間には、弾性体27の変形を許容する隙間が形成されている。また、位置決め凹部73は、弾性体27を積層方向Zに貫通して形成させなくともよい。
【0041】
このような電解液体生成装置1において、陰極3の幅方向Yの幅は、流路凸部65の幅方向Yの幅とほぼ同一に設定されている。このように陰極3の幅を設定することにより、流路凸部65との間に形成された流路35に対して、溝部33の開口を安定して配置することができる。また、流路凸部65によって、陰極3を積層方向Zの下側に向けて安定して押圧することができる。
【0042】
陽極5の幅方向Yの幅は、陰極3の幅方向Yの幅より狭く、導電性膜7の幅方向Yの幅とほぼ同一に設定されている。このように陽極5および導電性膜7の幅を設定することにより、高価な陽極5および導電性膜7を小型化することができる。
【0043】
給電体23の幅方向Yの幅は、陽極5の幅方向Yの幅とほぼ同一に設定されている。このように給電体23の幅を設定することにより、給電体23を小型化しつつ、陽極5に対する通電面積を確保することができる。このため、陽極5への通電を安定化することができ、電解部11での電解処理性能を保持することができる。
【0044】
弾性体27の幅方向Yの幅は、陽極5および給電体23の幅方向Yの幅より広く設定されている。このように弾性体27の幅を設定することにより、陽極5および給電体23の外周部に弾性体27の外縁部を配置することができる。また、給電体23から付与される流路凸部65からの押圧力を安定して受けることができ、積層体9に対して付勢力を安定して付与することができる。
【0045】
ここで、電解液体生成装置1では、電解部11の外周部とハウジング13の内面との間に、微小な隙間が形成されていると、この微小な隙間に液体としての水が侵入して滞留することがある。電解部11の周囲に水が滞留された状態で水を電解処理して電解生成物としてのオゾンを生成すると、電解部11の周囲に滞留した水のpH値が上昇し、主にカルシウム成分からなるスケールが発生し易くなる。スケールが発生すると、微小な隙間にスケールが堆積してしまうおそれがある。電解部11の周囲にスケールが堆積してしまうと、電解部11やハウジング13がスケールに圧迫されて変形してしまうおそれがある。
【0046】
そこで、電解部11の外周部とハウジング13の内面との間には、液体としての水の滞留を抑制する空間部77が形成されている。
【0047】
図4に示すように、空間部77は、周壁部43の内面43aと積層体9の幅方向Yの両側の側面との間に形成されている。詳細には、空間部77は、周壁部43の内面43aと陰極3の側面3dとの間に形成されている。また、空間部77は、周壁部43の内面43aと陽極5の側面5aとの間に形成されている。また、空間部77は、周壁部43の内面43aと導電性膜7の側面7bとの間に形成されている。また、空間部77は、周壁部43の内面43aと給電体23の側面23cとの間に形成されている。
【0048】
この空間部77は、ハウジング13の内部において、積層体9の幅方向Yの両側にそれぞれ通液方向Xに沿って形成され、流入口15と流出口17とにそれぞれ連通されている。このような空間部77には、流入口15から導入される液体としての水が流通され、流出口17から水が導出される。このため、電解部11の周囲では、水が滞留することが抑制される。このように電解部11の周囲に水が滞留することを抑制することにより、スケールの発生を抑制することができる。このため、スケールの堆積による電解部11やハウジング13の変形を抑制することができる。なお、空間部77は、流路35の途中に連通するようにしてもよい。
【0049】
このような空間部77が設けられた電解液体生成装置1では、電解部11において、陽極5の幅方向Yの幅が、陰極3の幅方向Yの幅より狭く形成されている。このように陽極5の幅を狭めることで陽極5を小型化している。しかしながら、陽極5を小型化してしまうと、陽極5を直接的にハウジング13に対して位置決めすることができない。
【0050】
そこで、ハウジング13に対して位置決めされた弾性体27は、電解部11の積層体9のうち少なくとも陽極5を位置決めしている。このため、陽極5は、弾性体27を介してハウジング13に位置決めされている。このように弾性体27で陽極5を位置決めすることにより、陽極5を小型化しても、陽極5をハウジング13に対して位置決めすることができる。
【0051】
図1~
図4,
図6に示すように、弾性体27の上面の周縁部には、上面から積層方向Zの上側に向けて複数の突起部79が立設されている。この複数の突起部79の積層方向Zの高さは、弾性体27に積層された陽極5まで到達するように、給電体23と陽極5との厚さの合計とほぼ同一に設定されている。このように複数の突起部79の高さを設定することにより、複数の突起部79によって陽極5を位置決めすることができる。
【0052】
このような複数の突起部79は、幅方向Yの両側にそれぞれ通液方向Xに沿って複数配置された突起部79が、陽極5および給電体23の幅方向Yの両側の側面に対して、幅方向Yに対向している。このため、陽極5および給電体23が幅方向Yに向けて移動しようとすると、陽極5および給電体23は突起部79と接触し、幅方向Yへの移動が規制される。
【0053】
また、複数の突起部79は、通液方向Xの両側にそれぞれ配置された突起部79が、陽極5および給電体23の通液方向Xの両側の側面に対して、通液方向Xに対向している。このため、陽極5および給電体23が通液方向Xに向けて移動しようとすると、陽極5および給電体23は突起部79と接触し、通液方向Xへの移動が規制される。
【0054】
このように複数の突起部79は、陽極5および給電体23の通液方向Xおよび幅方向Yと平行な平面方向の移動を規制し、陽極5および給電体23を弾性体27に対して平面方向に位置決めしている。このため、陽極5と給電体23との接触を安定化することができ、電解部11での電解処理性能を保持することができる。また、陽極5および給電体23の空間部77側への移動を規制することができ、空間部77を保持することができる。
【0055】
このように弾性体27に位置決めされた陽極5は、積層方向Zの給電体23と接触する反対側の面が導電性膜7と接触されている。この導電性膜7の幅方向Yの幅は、陽極5の幅方向Yの幅とほぼ同一に設定されており、陽極5と同様に小型化されている。しかしながら、単に導電性膜7を小型化してしまうと、導電性膜7をハウジング13に対して位置決めすることができなかった。
【0056】
そこで、導電性膜7には、導電性膜7をハウジング13に対して位置決めするために、
図5,
図6に示すように、ハウジング13の内面に向けて突出する凸部19が設けられている。
【0057】
なお、以下では、導電性膜7の厚さ方向を積層方向Zとし、積層方向Zと直交する平面方向を通液方向Xおよび幅方向Yと平行な平面方向とする。また、この平行方向のうち所定の一方向を導電性膜7の短手方向である幅方向Yとする。さらに、所定の一方向と直交する他方向を導電性膜7の長手方向である通液方向Xとする。
【0058】
凸部19は、導電性膜7の短手方向(幅方向Y)の両側の側面からそれぞれハウジング13の内面である周壁部43の内面43aに向けて突設されている。この導電性膜7の短手方向(幅方向Y)の両側に設けられた凸部19,19は、導電性膜7の長手方向(通液方向X)に対する配置位置が、短手方向でほぼ対向するように、近接している。また、凸部19は、導電性膜7の長手方向(通液方向X)の両側にそれぞれ配置されている。このように凸部19は、導電性膜7に対して複数(ここでは4つ)設けられている。
【0059】
このような凸部19の突出方向の先端は、導電性膜7がハウジング13に収容された状態で、周壁部43の内面43aに接触されている。この凸部19とハウジング13の内面との接触により、導電性膜7が幅方向Yに向けて移動、或いは通液方向Xおよび幅方向Yと平行な平面上で回転することがない。このため、ハウジング13に対して導電性膜7を位置決めすることができ、電解部11で発生する電解液体としてのオゾン水濃度を狙い通り高精度に発生することができる。なお、凸部19の突出方向の先端と周壁部43の内面43aとの間に、微小な隙間を形成してもよい。
【0060】
このような凸部19に対して、ハウジング13には、導電性膜7を通液方向Xに対して位置決めする規制部25が設けられている。規制部25は、周壁部43の幅方向Yに対向する内面43aにそれぞれ設けられている。この規制部25,25は、それぞれ周壁部43の内面43aから内部に向けて突出し、積層方向Zに沿って連続して形成されている。
【0061】
このような規制部25,25は、通液方向X側の異なる側面が、導電性膜7の短手方向(幅方向Y)の両側に設けられた凸部19,19の通液方向X側の異なる側面に対して、それぞれ通液方向Xに対向して配置される。このため、導電性膜7が通液方向Xに移動しようとすると、凸部19,19と規制部25,25とが接触し、導電性膜7の通液方向Xへの移動が規制される。従って、ハウジング13に対して導電性膜7を位置決めすることができ、電解部11で発生する電解液体としてのオゾン水濃度を狙い通り高精度に発生することができる。
【0062】
ここで、導電性膜7には、凸部19が設けられた短手方向(幅方向)の反対側の位置に凹部21が設けられている。この凹部21の内面形状は、凸部19の外面形状とほぼ同一、或いは凸部19の外面形状よりわずかに大きく形成されている。このような凹部21は、導電性膜7を母材から切り出して加工する際に、導電性膜7に凸部19を形成させたときに、母材で隣り合う導電性膜7に形成される。このように導電性膜7に凹部21を設けることにより、導電性膜7の母材の使用量を低減することができる。
【0063】
このような導電性膜7は、
図7,
図8に示すように、陽極5に積層したときに、陽極5から大きく張り出さないように設定されており、陽極5を挟んで積層方向Zに対向する給電体23と接触しないように、給電体23と離間して配置されている。このように導電性膜7を配置することにより、導電性膜7と給電体23とが接触して、陽極5を通らない電流経路ができることがない。このため、電解部11での電解液体としてのオゾン水の発生効率の低下を防止することができる。
【0064】
このような電解液体生成装置1では、互いに隣り合う電極3,5間に導電性膜7が介在するように積層された積層体9を有し、液体を電解処理する電解部11と、電解部11が内部に配置されるハウジング13とを備えている。
【0065】
また、ハウジング13には、電解部11に供給される液体が流入する流入口15と、電解部11で生成される電解液体が流出する流出口17とが設けられている。
【0066】
そして、導電性膜7には、ハウジング13の内面に向けて突出し、ハウジング13に対して導電性膜7を位置決めする凸部19が設けられている。
【0067】
このため、導電性膜7を小型化しても、導電性膜7をハウジング13に位置決めすることができる。従って、電解部11で発生する電解液体の電解生成物濃度を狙い通り高精度に発生することができる。
【0068】
従って、このような電解液体生成装置1では、導電性膜7を小型化することができ、ハウジング13に対して導電性膜7を位置決めすることができる。
【0069】
また、凸部19は、導電性膜7の厚さ方向(積層方向Z)と直交する平面方向のうち所定の一方向(幅方向Y)の両側にそれぞれ設けられている。そして、所定の一方向(幅方向Y)の両側の凸部19,19は、平面方向のうち所定の一方向(幅方向Y)と直交する他方向(通液方向X)に対する配置位置が近接されている。このため、ハウジング13に対する導電性膜7の回転方向の位置バラツキを低減することができる。従って、電解部11で発生する電解液体の電解生成物濃度を狙い通り高精度に発生することができる。
【0070】
さらに、凸部19は、導電性膜7の厚さ方向(積層方向Z)と直交する平面方向のうち所定の一方向(幅方向Y)と直交する他方向(通液方向X)の両側にそれぞれ設けられている。このため、ハウジング13に対する導電性膜7の回転方向の位置バラツキを低減することができる。従って、電解部11で発生する電解液体の電解生成物濃度を狙い通り高精度に発生することができる。
【0071】
また、導電性膜7には、凸部19が設けられた導電性膜7の厚さ方向(積層方向Z)と直交する平面方向のうち所定の一方向(幅方向Y)の反対側の位置に凹部21が設けられている。このため、母材で隣り合う導電性膜7,7の所定の一方向(幅方向Y)の同一位置に、それぞれ凸部19と凹部21とを設けることができる。従って、母材の少ない使用量で、効率よく電解部11で電解液体を発生することができる。
【0072】
さらに、積層体9は、少なくとも一方の電極と導電性膜7と反対側で接触する給電体23を有する。そして、導電性膜7は、給電体23と離間して配置されている。このため、導電性膜7と給電体23とが接触して、電極を通らない電流経路ができることがない。従って、電解部11での電解液体の発生効率の低下を防止することができる。
【0073】
また、ハウジング13には、凸部19と対向して配置され、導電性膜7を導電性膜7の厚さ方向(積層方向Z)と直交する平面方向のうち所定の一方向(幅方向Y)と直交する他方向(通液方向X)に対して位置決めする規制部25が設けられている。このため、ハウジング13に対する導電性膜7の他方向(通液方向X)の位置バラツキを低減することができる。従って、電解部11で発生する電解液体の電解生成物濃度を狙い通り高精度に発生することができる。
【0074】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0075】
例えば、凸部は、導電性膜に4つ設けられているが、これに限らず、凸部を、1つ~3つ、或いは5つ以上導電性膜に設けてもよい。
【0076】
また、導電性膜の短手方向の両側にそれぞれ設けられた凸部は、導電性膜の長手方向の配置位置が近接している、詳細には長手方向に凹部が隣接しているが、これに限るものではない。例えば、導電性膜に凹部を設けないのであれば、導電性膜の短手方向の両側にそれぞれ設けられた凸部を、導電性膜の長手方向の配置位置が同一の位置になるように配置してもよい。
【0077】
さらに、給電体は、陽極に接触されているが、これに限らず、陰極に接触するようにしてもよい。この場合には、陰極と接触する給電体に対して、導電性膜を離間して配置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、導電性膜を小型化し、電解処理した液中の電解生成物の濃度を高めることができる電解液体生成装置に適用可能である。具体的には、浄水装置などの水処理機器、洗濯機、食洗器、温水洗浄便座、冷蔵庫、給湯給水装置、殺菌装置、医療用機器、空調機器、厨房機器などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 電解液体生成装置
3,5 電極
7 導電性膜
9 積層体
11 電解部
13 ハウジング
15 流入口
17 流出口
19 凸部
21 凹部
23 給電体
25 規制部
X 通液方向(他方向)
Y 幅方向(所定の一方向)
Z 積層方向(導電性膜の厚さ方向)