(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】リペア溶接システム、リペア溶接方法、検査装置およびロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20231020BHJP
B23K 9/095 20060101ALI20231020BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B23K31/00 D
B23K31/00 K
B23K9/095 510D
B23K9/12 331K
(21)【出願番号】P 2021526944
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024242
(87)【国際公開番号】W WO2020262260
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019122372
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】小松 嵩宙
(72)【発明者】
【氏名】毛利 年成
(72)【発明者】
【氏名】門田 隆太郎
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-167666(JP,A)
【文献】特開2006-247663(JP,A)
【文献】特開2010-253538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00 - 31/02、
31/10 - 33/00、
37/00 - 37/08
B23K 9/00、9/06 - 9/133
10/00
B23K 9/12
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と、
前記ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置と、を備え、
前記検査装置は、
前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所の有無を判定するとともに、前記不良個所を検出した場合に前記不良個所に複数の不良ランクのいずれかを設定し、
前記ロボット制御装置は、
前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記不良ランクが設定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示
し、
前記ワークに複数の不良個所が存在しかつそれぞれの前記不良個所に複数の異なる不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記リペア溶接の難易度の高い不良ランクが設定された不良個所を優先した前記リペア溶接プログラムを生成する、
リペア溶接システム。
【請求項2】
ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と、
前記ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置と、を備え、
前記検査装置は、
前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所の有無を判定するとともに、前記不良個所を検出した場合に前記不良個所に複数の不良ランクのいずれかを設定し、
前記ロボット制御装置は、
前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記不良ランクが設定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示し、
前記複数の不良ランクのうち重度の溶接不良を示す第1不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づいて、前記不良個所への複数回の前記リペア溶接の実行を前記ロボットに指示し、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づく複数回の前記リペア溶接の実行により前記第1不良ランクの不良個所が修正された後に、前記第1不良ランクより溶接不良が軽度である第2不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記第2不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づいて、前記不良個所への複数回の前記リペア溶接の実行を前記ロボットに指示する
、
リペア溶接システム。
【請求項3】
前記ロボット制御装置は、
前記リペア溶接の実行後に、前記リペア溶接が実行された前記不良個所の外観の検査を前記検査装置に指示する、
請求項1
又は2に記載のリペア溶接システム。
【請求項4】
前記ロボット制御装置は、
前記複数の不良ランクのうち前記ロボットのリペア溶接による修正が困難を示す第3不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記ワークの前記ロボットによるリペア溶接が困難である旨のアラートを周辺装置に通知する、
請求項1
又は2に記載のリペア溶接システム。
【請求項5】
前記ロボット制御装置は、
前記複数の不良ランクのうち前記ロボットおよび溶接作業者のいずれのリペア溶接による修正が困難を示す第4不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記ワークのリペア溶接が不可である旨のアラートを周辺装置に通知する、
請求項1
又は2に記載のリペア溶接システム。
【請求項6】
前記ロボット制御装置は、
前記検査装置が前記ワークの溶接個所の外観を検査した方向と異なる方向に従って、前記ワークの溶接個所のうち前記不良個所をリペア溶接すると判定する、
請求項1
又は2に記載のリペア溶接システム。
【請求項7】
ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と、前記ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置と、を備えるリペア溶接システムにより実行されるリペア溶接方法であって、
前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所の有無を判定し、
前記不良個所を検出した場合に、前記不良個所に複数の不良ランクのいずれかを付与し、
前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、
前記不良ランクで特定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示
し、
前記ワークに複数の不良個所が存在しかつそれぞれの前記不良個所に複数の異なる不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記リペア溶接の難易度の高い不良ランクが設定された不良個所を優先した前記リペア溶接プログラムを生成する、
リペア溶接方法。
【請求項8】
ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と、前記ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置と、を備えるリペア溶接システムにより実行されるリペア溶接方法であって、
前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所の有無を判定し、
前記不良個所を検出した場合に、前記不良個所に複数の不良ランクのいずれかを付与し、
前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、
前記不良ランクで特定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示し、
前記複数の不良ランクのうち重度の溶接不良を示す第1不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づいて、前記不良個所への複数回の前記リペア溶接の実行を前記ロボットに指示し、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づく複数回の前記リペア溶接の実行により前記第1不良ランクの不良個所が修正された後に、前記第1不良ランクより溶接不良が軽度である第2不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記第2不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づいて、前記不良個所への複数回の前記リペア溶接の実行を前記ロボットに指示する、
リペア溶接方法。
【請求項9】
ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と接続され、ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置であって、
前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所が前記検査装置により検出された場合に、前記不良個所に設定された複数の不良ランクのいずれかに関する情報を受信する通信部と、
前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成する生成部と、
前記不良ランクが設定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示する制御部と、備え
、
前記生成部は、前記ワークに複数の不良個所が存在しかつそれぞれの前記不良個所に複数の異なる不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記リペア溶接の難易度の高い不良ランクが設定された不良個所を優先した前記リペア溶接プログラムを生成する、
ロボット制御装置。
【請求項10】
ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と接続され、ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置であって、
前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所が前記検査装置により検出された場合に、前記不良個所に設定された複数の不良ランクのいずれかに関する情報を受信する通信部と、
前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成する生成部と、
前記不良ランクが設定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示する制御部と、備え、
前記生成部は、前記複数の不良ランクのうち重度の溶接不良を示す第1不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記制御部は、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づいて、前記不良個所への複数回の前記リペア溶接の実行を前記ロボットに指示し、
前記生成部は、前記第1不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づく複数回の前記リペア溶接の実行により前記第1不良ランクの不良個所が修正された後に、前記第1不良ランクより溶接不良が軽度である第2不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記制御部は、前記第2不良ランクに応じたリペア溶接プログラムに基づいて、前記不良個所への複数回の前記リペア溶接の実行を前記ロボットに指示する、
ロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リペア溶接システム、リペア溶接方法、検査装置およびロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、撮像光学系を用いて溶接ビードの形状を検査し、一度のスリット光の走査により、任意の断面線における断面形状を検査する形状検査装置が開示されている。この形状検査装置は、溶接ビードにスリット光を投射し、スリット光の走査により溶接ビード上に順次形成される形状線を撮像し、順次形成された各形状線の撮像データに基づいて、溶接ビードの三次元形状を点群データとして取得する。また、形状検査装置は、点群データに基づいて表示された溶接ビードに、入力に応じてスリット光の走査により形成された形状線とは異なる任意の切断線を設定し、切断線に対応した点群データにより、切断線における溶接ビードの断面形状を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、溶接ビードの不良個所のリペア溶接をより効率的に行うことができるリペア溶接方法、検査装置およびロボット制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と、ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置と、を備え、前記検査装置は、前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所の有無を判定するとともに、前記不良個所を検出した場合に前記不良個所に複数の不良ランクのいずれかを設定し、前記ロボット制御装置は、前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記不良ランクが設定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示し、前記ワークに複数の不良個所が存在しかつそれぞれの前記不良個所に複数の異なる不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記リペア溶接の難易度の高い不良ランクが設定された不良個所を優先した前記リペア溶接プログラムを生成すする、リペア溶接システムを提供する。
【0006】
また、本開示は、ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と、ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置と、を備えるリペア溶接システムにより実行されるリペア溶接方法であって、前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所の有無を判定し、前記不良個所を検出した場合に、前記不良個所に複数の不良ランクのいずれかを付与し、前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、前記不良ランクで特定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示し、前記ワークに複数の不良個所が存在しかつそれぞれの前記不良個所に複数の異なる不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記リペア溶接の難易度の高い不良ランクが設定された不良個所を優先した前記リペア溶接プログラムを生成する、リペア溶接方法を提供する。
【0008】
また、本開示は、ワークの溶接個所の外観を検査する検査装置と接続され、ワークを溶接するロボットを制御するロボット制御装置であって、前記ワークの溶接個所のうち所定の基準に従って不良個所が前記検査装置により検出された場合に、前記不良個所に設定された複数の不良ランクのいずれかに関する情報を受信する通信部と、前記不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成する生成部と、前記不良ランクが設定された不良個所への前記リペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を前記ロボットに指示する制御部と、備え、前記生成部は、前記ワークに複数の不良個所が存在しかつそれぞれの前記不良個所に複数の異なる不良ランクが前記検査装置により設定された場合に、前記リペア溶接の難易度の高い不良ランクが設定された不良個所を優先した前記リペア溶接プログラムを生成する、ロボット制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、溶接ビードの不良個所のリペア溶接をより効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】リペア溶接システムのシステム構成例を示す概略図
【
図2】実施の形態1に係る検査リペア溶接ロボットの制御に関するリペア溶接システムの内部構成例を示す図
【
図3】不良ランクに応じたリペア溶接の処置内容を示す処置判断テーブルの一例を示す図
【
図4A】本溶接後の溶接ビードの溶接個所の不良ランクの第1例を模式的に示す図
【
図4B】本溶接後の溶接ビードの溶接個所の不良ランクの第2例を模式的に示す図
【
図4C】本溶接後の溶接ビードの溶接個所の不良ランクの第3例を模式的に示す図
【
図5】検査する方向とリペア溶接する方向との関係の一例を示す図
【
図6】マスタデータと本溶接後の溶接ビードの形状データとの比較を概念的に示す図
【
図7A】不良種別と特定データとに対応するプログラム生成ロジックテーブルの一例を示す図
【
図7B】不良種別と検査スコアとに対応するプログラム生成ロジックテーブルの一例を示す図
【
図8】実施の形態1に係るリペア溶接システムの処理手順例を示すフローチャート
【
図9】実施の形態2に係る検査ロボットおよびリペア溶接ロボットのそれぞれの制御に関するリペア溶接システムの内部構成例を示す図
【
図10】実施の形態2に係る検査ロボットおよびリペア溶接ロボットのそれぞれの制御に関するリペア溶接システムの内部構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の実施の形態に至る経緯)
特許文献1の技術によれば、形状検査装置は、例えば本溶接が行われた後の溶接個所の形状の良否判定を行える。しかし、溶接個所の形状が良好でなかった場合、再溶接(つまり、不良の溶接個所を修正するために再び行う溶接のことで、以下「リペア溶接」と称する)によって修正を行い得るか否かを判定する可否判定、修正の為のリペア溶接は、人手の作業(つまり、溶接作業者が行っている)が現状である。そのため、溶接作業者の技能レベルの個人差あるいは誤判断により、溶接品質が安定しないという潜在的な課題がある。
【0012】
そこで、以下の実施の形態では、本溶接後の溶接個所(例えば溶接ビード)の不良個所のリペア溶接をより効率的に行うことができる、リペア溶接方法、検査装置およびロボット制御装置の例を説明する。
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るリペア溶接システム、リペア溶接方法、検査装置およびロボット制御装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0014】
(実施の形態1,2に共通のシステム構成例)
図1は、リペア溶接システム1000のシステム構成例を示す概略図である。リペア溶接システム1000は、ユーザ(例えば溶接作業者あるいはシステム管理者。以下同様。)により入力された情報または予め設定された溶接に関する情報に基づいて、本溶接されたワークWk1の溶接個所の外観検査を自動的に行うとともに、溶接個所のうち溶接不良と判定された不良個所の修正溶接(つまり、リペア溶接)を外観検査の結果に応じて自動的に行う。なお、リペア溶接システム1000は、上述した外観検査とリペア溶接とに加えて、上述した本溶接を自動的に行ってもよい。
【0015】
リペア溶接システム1000は、大別すると、溶接(例えば本溶接およびリペア溶接)と溶接結果の外観検査とにそれぞれ用いるロボットと、ロボットの処理を制御したり外観検査の結果を処理したりするコントローラと、コントローラへの各種の指令を送る上位装置とを含む。
【0016】
具体的には、リペア溶接システム1000は、上述したロボットとして、本溶接を行う本溶接ロボットMC1と、本溶接後の溶接個所の外観検査を行う検査ロボットMC2と、本溶接後の溶接個所に不良個所が含まれていた場合のリペア溶接を外観検査の結果に応じて行うリペア溶接ロボットMC3とを有する。また、リペア溶接システム1000は、上述したコントローラとして、ロボット制御装置2,3と、検査装置4とを有する。また、リペア溶接システム1000は、上述した上位装置として、上位装置1を有する。なお、上位装置1には、モニタMN1と、入力インターフェースUI1と、外部ストレージSTとが接続されてよい。
【0017】
なお、図示は省略するが、上位装置1あるいはロボット制御装置2,3は、外部ネットワークとの通信(例えば有線通信あるいは無線通信)を行う通信インターフェースを更に有してもよい。上位装置1あるいはロボット制御装置2,3は、外部ネットワークに接続されている場合、外部ネットワーク上に存在する他の機器(例えばサーバあるいはPC、種々のセンサ装置等)と通信を行える。
【0018】
図1では、本溶接ロボットMC1は、リペア溶接ロボットMC3と別体として示されている。しかし、リペア溶接システム1000とは異なる他のシステムを用いて本溶接を行う場合、あるいは溶接作業者が手作業で本溶接を行った上でリペア溶接システム1000が外観検査およびリペア溶接のそれぞれを実行する場合には、本溶接ロボットMC1は省かれてよい。
【0019】
また、本溶接ロボットMC1は、検査ロボットMC2あるいはリペア溶接ロボットMC3のいずれかと一体で構成されてもよい。例えば、リペア溶接ロボットMC3は、本溶接ロボットMC1として処理でき、ワークWk1を溶接する本溶接と、本溶接によって溶接された溶接個所のうち不良個所を修正するリペア溶接との両方を実行してもよい。同様に、例えば、検査ロボットMC2は、本溶接ロボットMC1として処理でき、ワークWk1を溶接する本溶接と、本溶接によって溶接された溶接個所のうち所定の溶接基準を満たさない不良個所の有無を判定する外観検査との両方を実行してもよい。
【0020】
なお、検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とを1つのロボット(つまり、検査リペア溶接ロボットMC23)に統合してもよい。以下の実施の形態1では、説明を分かり易くするために、検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とが一体化された検査リペア溶接ロボットMC23を例示し、以下の実施の形態2では、検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とが別体となる構成を例示して説明する。また、本溶接ロボットMC1と検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とを1つのロボットに統合してもよい。
【0021】
リペア溶接システム1000では、本溶接ロボットMC1、検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれの台数は、
図1に示す数に限定されない。例えば、本溶接ロボットMC1、検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれの台数は、複数台であってもよく、また同じ台数でもよいし、異なる台数でもよい。例えば、リペア溶接システム1000は、1台の本溶接ロボットMC1と、3台の検査ロボットMC2と、2台のリペア溶接ロボットMC3とを含んでよい。これにより、リペア溶接システム1000は、システム構成の目的(例えば、各種のロボットの処理範囲あるいは処理速度)に応じて適応的に構成できる。
【0022】
上位装置1は、モニタMN1と、入力インターフェースUI1と、外部ストレージSTと、ロボット制御装置2,3のそれぞれとの間で通信可能に接続される。
図1では、上位装置1は、ロボット制御装置3を介して検査装置4と接続されているが、ロボット制御装置3を介さず、検査装置4と直接に通信可能に接続されてもよい。なお、上位装置1は、モニタMN1および入力インターフェースUI1を一体に含む端末装置PZ1でもよく、更に外部ストレージSTを一体に含んでもよい。この場合、端末装置PZ1は、例えば本溶接の実行に先立ってユーザ(上述参照)により使用されるPC(Personal Computer)である。なお、端末装置PZ1は、上述したPCに限らず、例えばスマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistat)などの通信機能を有するコンピュータ装置でよい。
【0023】
上位装置1は、ユーザによる入力操作あるいはユーザによって予め設定された情報に基づいて、ワークWk1の本溶接、ワークWk1の溶接個所の外観検査、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所(上述参照)のリペア溶接のそれぞれを実行するための制御信号を生成する。上位装置1は、ワークWk1の本溶接の実行に関する制御信号をロボット制御装置2に送る。上位装置1は、ワークWk1の溶接個所の外観検査の実行に関する制御信号、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所のリペア溶接の実行に関する制御信号をそれぞれロボット制御装置3に送る。
【0024】
上位装置1は、検査装置4から受信された溶接個所の外観検査結果を、ロボット制御装置3を介して収集してよい。上位装置1は、収集された外観検査結果を外部ストレージSTに蓄積したり、モニタMN1に出力して表示させたりしてよい。なお、
図1に示す検査装置4は、ロボット制御装置3を介して上位装置1と接続されているが、
図1に示す接続形態に限定されなくてよい。つまり、検査装置4と上位装置1とは直接的に通信可能に接続されてもよい。
【0025】
モニタMN1は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)等の表示用デバイスを用いて構成されてよい。モニタMN1は、ロボット制御装置3から送られた溶接個所の外観検査結果あるいは後述するアラート画面を表示する。また、モニタMN1の代わりに、あるいはモニタMN1とともにスピーカ(不図示)が上位装置1に接続されてもよく、アラート画面の内容を音声でスピーカを介して出力してもよい。
【0026】
入力インターフェースUI1は、ユーザの入力操作を検出して上位装置1に出力するユーザインターフェースであり、例えば、マウス、キーボードまたはタッチパネル等を用いて構成されてよい。入力インターフェースUI1は、例えば、ワークWk1への溶接線の指定、溶接線に応じた外観検査基準の設定、リペア溶接システム1000の処理開始あるいは処理終了の操作等を受け付けて上位装置1に出力する。
【0027】
外部ストレージSTは、例えばハードディスク(Hard Disk Drive)またはソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)を用いて構成される。外部ストレージSTは、上位装置1により受信された溶接個所の外観検査結果、あるいはアラート画面の内容を示すデータあるいは情報を記憶してよい。
【0028】
ロボット制御装置2は、上位装置1および本溶接ロボットMC1のそれぞれとの間で通信可能に接続される。ロボット制御装置2は、上位装置1から送られた本溶接の実行に関する制御情報を受信し、その制御情報に基づいて本溶接ロボットMC1を制御してワークWk1に対する本溶接を実行させる。ロボット制御装置2は、ワークWk1の本溶接が終了した旨の通知を上位装置1に送ってよい。これにより、上位装置1は、ロボット制御装置2に基づくワークWk1の本溶接の終了を認識できる。
【0029】
ロボット制御装置3は、上位装置1、検査装置4、検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれとの間で通信可能に接続される。ロボット制御装置3は、上位装置1から送られたワークWk1の溶接個所に関する情報(例えば、溶接個所の位置情報)を受信する。なお、溶接個所は、ワークWk1が本溶接によって溶接された個所と、ワークWk1がリペア溶接によって修正溶接された個所とを含む。ロボット制御装置3は、受信されたワークWk1の溶接個所に関する情報に基づいて検査ロボットMC2を制御して溶接個所の溶接ビードの形状を検出させる。また、ロボット制御装置3は、受信されたワークWk1の溶接個所に関する情報を、溶接個所の形状を外観検査する検査装置4に送る。また、ロボット制御装置3は、検査装置4から受信された外観検査結果を上位装置1に送る。
【0030】
また、ロボット制御装置3は、上位装置1から送られたワークWk1のリペア溶接の実行に関する制御情報を受信し、その制御情報に基づいてリペア溶接ロボットMC3を制御し、ワークWk1の溶接個所のうち検査装置4により溶接不良と判定された不良個所をリペア溶接させる。
【0031】
なお、ロボット制御装置3は、検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれを制御するが、例えば検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれを異なる制御装置を用いて制御してもよい。更に、リペア溶接システム1000は、1つのロボット制御装置で、本溶接ロボットMC1と検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とを制御してもよい。
【0032】
検査装置4は、ロボット制御装置3および検査ロボットMC2のそれぞれとの間で通信可能に接続される。検査装置4は、ロボット制御装置3から送られた溶接個所に関する情報と、形状検出部500(
図2参照)により生成された溶接個所の溶接ビードの形状データとに基づいて、溶接個所における溶接不良の有無を判定する(外観検査)。検査装置4は、溶接個所のうち溶接不良であると判定された不良個所に関する情報(例えば、不良区間、不良区間の位置情報、不良要因を含み得る)を外観検査結果としてロボット制御装置3に送る。また、検査装置4は、不良個所のリペア溶接ロボットMC3によるリペア溶接が可能であると判定された場合に、リペア溶接における修正種別およびリペア溶接を行うための修正パラメータ等の情報も、外観検査結果としてロボット制御装置3に送る。なお、
図1ではロボット制御装置3と検査装置4とを別体として構成しているが、ロボット制御装置3と検査装置4とが単一の装置として構成されてもよい。
【0033】
本溶接ロボットMC1は、ロボット制御装置2との間で通信可能に接続され、ロボット制御装置2により用意される本溶接プログラムに従ってワークWk1に本溶接を実行する。言い換えると、本溶接ロボットMC1は、溶接個所に関する情報と本溶接プログラムとが含まれる、本溶接の実行に関する制御信号をロボット制御装置2から受信すると、この制御信号に基づいて、ワークWk1への本溶接を実行する。
【0034】
検査ロボットMC2は、ロボット制御装置3および検査装置4のそれぞれとの間で通信可能に接続される。検査ロボットMC2は、ロボット制御装置3により用意される外観検査プログラムに従って、本溶接されたワークWk1の溶接個所の外観検査を行う。言い換えると、検査ロボットMC2は、溶接個所に関する情報と外観検査プログラムとが含まれる、外観検査の実行に関する制御信号をロボット制御装置3から受信すると、この制御信号に基づいて、本溶接されたワークWk1の溶接個所の溶接ビードの形状データを取得する。
【0035】
リペア溶接ロボットMC3は、ロボット制御装置2との間で通信可能に接続される。リペア溶接ロボットMC3は、ロボット制御装置2により生成されるリペア溶接プログラムに従って、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所のリペア溶接を行う。言い換えると、リペア溶接ロボットMC3は、不良個所に関する情報とリペア溶接プログラムとが含まれる、リペア溶接の実行に関する制御信号をロボット制御装置2から受信すると、この制御信号に基づいて、ワークWk1の不良個所のリペア溶接を実行する。
【0036】
(実施の形態1)
図2は、実施の形態1に係る検査リペア溶接ロボットMC23の制御に関するリペア溶接システム1000の内部構成例を示す図である。なお、
図2に示す検査リペア溶接ロボットMC23は、
図1の検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3が一体となったロボットである。また、説明を分かり易くするために、モニタMN1、入力インターフェースUI1および外部ストレージSTに関する構成を省略する。
【0037】
[検査リペア溶接ロボットMC23の構成例]
実施の形態1では、検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とが1台のロボット(つまり検査リペア溶接ロボットMC23)により実行される。実施の形態1において、検査リペア溶接ロボットMC23の処理は、ロボット制御装置3により制御されるとして説明する。
【0038】
ロボットの一例としての検査リペア溶接ロボットMC23は、ロボット制御装置3から送られた外観検査の実行に関する制御信号に基づいて、本溶接が行われた後のワークWk1の溶接個所の外観検査を実行する。また、検査リペア溶接ロボットMC23は、ロボット制御装置3から送られたリペア溶接の実行に関する制御信号に基づいて、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所のリペア溶接を自動的に行う。
【0039】
検査リペア溶接ロボットMC23は、例えばアーク溶接を行う。しかし、検査リペア溶接ロボットMC23は、アーク溶接以外の溶接(例えば、レーザ溶接)等を行ってもよい。この場合、図示は省略するが、溶接トーチ400に代わって、レーザヘッドを、光ファイバを介してレーザ発振器に接続してよい。
【0040】
検査リペア溶接ロボットMC23は、マニピュレータ200と、ワイヤ送給装置300と、溶接ワイヤ301と、溶接トーチ400と、形状検出部500とを含む構成である。
【0041】
マニピュレータ200は、多関節のアームを備え、ロボット制御装置3のロボット制御部36からの制御信号に基づいて、それぞれのアームを可動させる。その結果、マニピュレータ200は、溶接トーチ400と形状検出部500との位置を制御できる。なお、ワークWk1に対する溶接トーチ400の角度も、上述したアームの可動によって変更できる。
【0042】
ワイヤ送給装置300は、ロボット制御装置3からの制御信号に基づいて、溶接ワイヤ301の送給速度を制御する。なお、ワイヤ送給装置300は、溶接ワイヤ301の残量を検出可能なセンサを備えてよい。
【0043】
溶接ワイヤ301は、溶接トーチ400に保持されている。溶接トーチ400に溶接電源装置5から電力が供給されることで、溶接ワイヤ301の先端とワークWk1との間にアークが発生し、アーク溶接が行われる。なお、溶接トーチ400にシールドガスを供給するための構成等は、説明の便宜上、これらの図示および説明を省略する。
【0044】
検査リペア溶接ロボットMC23が備える形状検出部500は、ロボット制御装置3からの制御信号に基づいて、溶接個所の溶接ビードの形状を検出(つまり、溶接ビードの外観検査を実行)し、検出結果に基づいて溶接ビードごとの形状データを取得する。検査リペア溶接ロボットMC23は、取得された溶接ビードごとの形状データを検査装置4に送る。
【0045】
形状検出部500は、例えば3次元形状計測センサであり、ロボット制御装置3から送られた溶接個所の位置情報に基づいて、ワークWk1上の溶接個所を走査可能に構成されたレーザ光源(図示略)と、溶接個所の周辺を含む撮像領域を撮像可能に配置され、溶接個所に照射されたレーザ光のうち反射されたレーザ光の反射軌跡(つまり、溶接個所の形状線)を撮像するカメラ(図示略)とにより構成される。形状検出部500は、カメラにより撮像されたレーザ光に基づく溶接個所の形状データ(言い換えると、画像データ)を検査装置4に送る。
【0046】
なお、上述したカメラは、少なくともレンズ(図示略)とイメージセンサ(図示略)とを有して構成される。イメージセンサは、例えばCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の固体撮像素子であり、撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。
【0047】
[上位装置1の構成例]
周辺装置の一例としての上位装置1は、ユーザによる入力操作あるいはユーザによって予め設定された情報に基づいて、ワークWk1の本溶接を実行するための制御信号を生成してロボット制御装置2に送る。また、上位装置1は、ワークWk1の溶接個所の外観検査、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所(上述参照)のリペア溶接のそれぞれを実行するための制御信号を生成してロボット制御装置3に送る。上位装置1は、通信部10と、プロセッサ11と、メモリ12とを含む構成である。
【0048】
通信部10は、ロボット制御装置2,3のそれぞれとの間で通信可能に接続される。通信部10は、ワークWk1の本溶接を実行するための制御信号をロボット制御装置2に送る。また、通信部10は、ワークWk1の溶接個所の外観検査を実行するための制御信号、あるいは、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所(上述参照)のリペア溶接を実行するための制御信号をロボット制御装置3に送信する。なお、ここでいうリペア溶接を実行するための制御信号は、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および溶接電源装置5のそれぞれを制御するための制御信号を含んでよい。
【0049】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成され、メモリ12と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ11は、メモリ12に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、セル制御部13の機能を実現する。
【0050】
セル制御部13は、入力インターフェースUI1を用いたユーザによる入力操作と、ユーザによって予め設定されて外部ストレージSTに記憶された情報とに基づいて、ワークWk1の本溶接を実行するための制御信号、ワークWk1の溶接個所の外観検査を実行するための制御信号、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所(上述参照)のリペア溶接を実行するための制御信号を生成する。セル制御部13によって生成された制御信号は、通信部10を介して、ロボット制御装置2あるいはロボット制御装置3に送られる。
【0051】
メモリ12は、例えばプロセッサ11の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、プロセッサ11の処理を規定したプログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、プロセッサ11により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ11の処理を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ12は、ワークWk1に関する情報種別、ワークWk1ごとに予め付与されたワークS/N(Serial Number)、ユーザによって設定された溶接個所(例えば溶接線)ごとに付与された溶接線IDなどを記憶する。
【0052】
[ロボット制御装置3の構成例]
ロボット制御装置3は、上位装置1から送られた制御信号に基づいて、検査リペア溶接ロボットMC23(具体的には、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および溶接電源装置5のそれぞれ)の処理を制御する。ロボット制御装置3は、通信部30と、プロセッサ31と、メモリ32と、プログラム記憶部33とを含む構成である。プロセッサ31は、メモリ32との協働により、プログラム呼出部34aとプログラム生成部34bと検査装置制御部35とロボット制御部36と演算部37と溶接電源制御部38とを機能的に実現可能である。
【0053】
通信部30は、上位装置1、検査装置4および検査リペア溶接ロボットMC23のそれぞれとの間で通信可能に接続される。通信部30は、上位装置1から送られた各種の制御信号(例えば、ワークWk1の溶接個所の外観検査の実行に関する制御信号、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所のリペア溶接の実行に関する制御信号)を受信する。通信部30は、ワークWk1の溶接個所の外観検査の実行に関する制御信号、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所のリペア溶接の実行に関する制御信号を検査リペア溶接ロボットMC23に送る。また、通信部30は、検査装置4から送られた外観検査結果を受信する。
【0054】
プロセッサ31は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成され、メモリ32と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ31は、メモリ32に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。各部は、プログラム呼出部34a、プログラム生成部34b、検査装置制御部35、ロボット制御部36、演算部37および溶接電源制御部38である。
【0055】
メモリ32は、例えばプロセッサ31の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ31の処理を規定したプログラムおよびデータを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ31により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ31の処理を規定するプログラムが書き込まれている。
【0056】
プログラム記憶部33は、検査リペア溶接ロボットMC23が実行する外観検査プログラム、ならびにリペア溶接基本プログラムを記憶する。リペア溶接基本プログラムとは、ワークWk1の全ての溶接個所を本溶接時と同一の溶接条件(例えば、溶接電流A、溶接電圧V、溶接速度Sとするが、これらに限定されない)で溶接可能な基本的なプログラムであり、本溶接プログラムと同一である。また、プログラム記憶部33は、プログラム生成部34bによりリペア溶接基本プログラムの編集によって生成されたリペア溶接プログラムを保存してよい。
【0057】
プログラム呼出部34aは、プログラム記憶部33あるいはメモリ32のRAMに保存されているリペア溶接基本プログラム、リペア溶接プログラムあるいは外観検査プログラムを呼び出す。
【0058】
生成部の一例としてのプログラム生成部34bは、通信部30を介して検査装置4から受信された不良個所に関する情報(例えば、検査装置4での外観検査結果)に基づいて、プログラム呼出部34aにより呼び出されたリペア溶接基本プログラムを編集し、不良ランクが設定された不良個所に対応するリペア溶接プログラムを生成する。プログラム生成部34bは、不良個所ごとにリペア溶接プログラムを生成してもよいし、同一の不良ランクを有する不良個所が複数検出された場合に、それらの全ての不良個所を纏めてリペア修正可能なリペア溶接プログラムを生成してもよい。つまり、プログラム生成部34bは、不良個所に関する情報(例えば、不良個所の位置、不良ランクおよび不良要因、リペア溶接用の修正パラメータ)を用いて、ワークWk1の全ての溶接個所のうちリペア溶接の実行対象となる不良個所を定めたリペア溶接プログラムを生成する。なお、生成されたリペア溶接プログラムは、プログラム記憶部33に記憶されてもよいし、メモリ32内のRAM等に記憶されてもよい。
【0059】
なお、ここでいうリペア溶接プログラムには、リペア溶接を実行するにあたって、溶接電源装置5、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300、溶接トーチ400、形状検出部500等を制御するための、溶接電流、溶接電圧、オフセット量、溶接速度、溶接トーチ400の姿勢等の各種のパラメータが上述した修正パラメータとして含まれてよく、以下同様である。
【0060】
また、プログラム生成部34bは、通信部30を介して上位装置1から受信された制御信号に基づいて、溶接個所に応じた外観検査を実行するための外観検査プログラムを生成する。プログラム生成部34bは、プログラム呼出部34aによって呼び出された外観検査プログラムを溶接個所ごとに生成する。
【0061】
制御部の一例としての検査装置制御部35は、検査装置4の処理を制御するための制御信号(例えば、ワークWk1の溶接個所の外観検査の実行に関する制御信号)を生成する。この制御信号は、通信部30を介して検査装置4に送られる。また、検査装置制御部35は、検査装置4から各種の情報(例えば検査装置4での外観検査結果)を、通信部30を介して受信して取得し、その取得された情報に基づくデータあるいは情報(例えば、後述するアラート画面)を生成して上位装置1に送る。
【0062】
制御部の一例としてのロボット制御部36は、プログラム生成部34bにより生成されたリペア溶接プログラムあるいは外観検査プログラムに基づいて、検査リペア溶接ロボットMC23(具体的には、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および溶接電源装置5のそれぞれ)を駆動させる。
【0063】
制御部の一例としての演算部37は、各種の演算を行う。例えば、演算部37は、プログラム生成部34bにより生成されたリペア溶接プログラムに基づいて、ロボット制御部36により制御される検査リペア溶接ロボットMC23(具体的には、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および溶接電源装置5のそれぞれ)を制御するための演算等を行う。また、演算部37は、外観検査結果として得られた不良個所の位置に基づいて、不良個所のリペア溶接を行うために加算する余剰のオフセット量(例えば不良個所の範囲より長めにリペア溶接するための余剰分の長さ)を演算してもよい。
【0064】
制御部の一例としての溶接電源制御部38は、プログラム生成部34bにより生成されたリペア溶接プログラムと演算部37の演算結果とに基づいて、溶接電源装置5を駆動させる。
【0065】
[検査装置4の構成例]
検査装置4は、ワークWk1の溶接個所を所定の基準に従って検査を行う。所定の基準は溶接ビードの形状の外観基準などの溶接基準や溶接箇所の強度基準や溶接済ワークの品質基準などを含むが、以下の各実施の形態では、検査装置4は、検査リペア溶接ロボットMC23の形状検出部500により取得された溶接個所ごとの溶接ビードの形状データに基づいて、ワークWk1の溶接個所が所定の溶接基準を満たすか否かの外観検査を行う。以下、本溶接あるいはリペア溶接された溶接個所の中で所定の溶接基準を満たさないと判定された溶接個所を「不良個所」と定義する。検査装置4は、通信部40と、プロセッサ41と、メモリ42と、検査結果記憶部43と、を含む構成である。プロセッサ41は、メモリ42との協働により、形状検出制御部44とデータ処理部45と判定閾値記憶部46と検査結果判定部47とを機能的に実現可能である。
【0066】
通信部40は、ロボット制御装置3および検査リペア溶接ロボットMC23のそれぞれとの間で通信可能に接続される。なお、通信部40は、上位装置1との間を直接に通信可能に接続されてもよい。通信部40は、上位装置1またはロボット制御装置3から、溶接個所に関する情報を受信する。溶接個所に関する情報には、例えば、ワーク種別、ワークS/N、溶接線ID等が含まれていてよい。また、通信部40は、検査装置4での溶接個所の外観検査結果のデータあるいは情報を、ロボット制御装置3またはロボット制御装置3を介して上位装置1に送る。
【0067】
プロセッサ41は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成され、メモリ42と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ41は、メモリ42に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。各部は、形状検出制御部44、データ処理部45、判定閾値記憶部46および検査結果判定部47である。なお、外観検査の処理の実行に先立って機械学習(後述参照)を行う場合、プロセッサ41は、例えば計算能力に優れたGPU(Graphics Processing Unit)を1つ以上備える構成としてよい。この場合、プロセッサ41は、上述のCPU等と併用してもよい。
【0068】
メモリ42は、例えばプロセッサ41の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ41の処理を規定したプログラムおよびデータを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ41により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ41の処理を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ42は、プロセッサ41が算出した溶接個所の検査スコアに応じた不良ランクを設定したり、不良ランクに応じてリペア溶接の処置内容を決定したりする際に参照される処置判断テーブル(
図3参照)のデータを保存している。
【0069】
ここで、不良ランクに応じたリペア溶接の処置内容を示す処置判断テーブルの一例について、
図3を参照して説明する。処置判断テーブルは、例えば検査装置4のメモリ42に保存されるが、ロボット制御装置3のメモリ32にも保存されてよい。
【0070】
図3は、不良ランクに応じたリペア溶接の処置内容を示す処置判断テーブルの一例を示す図である。処置判断テーブルは、
図3に示されるように、検査スコアと、不良ランクと、不良ランクの説明と、リペア溶接の処置内容とを対応付けて保存する。
【0071】
検査スコアは、ワークWk1の溶接個所が所定の溶接基準を満たすか否かの観点で外観検査された時に算出されるスコアを示す。なお、
図3に示される検査スコアと不良ランクとの対応関係はあくまで一例であり、
図3に示される内容に限定されないことは言うまでもない。
【0072】
不良ランクは、検査スコアの値に応じて予め定められ、本明細書では例示的に4段階のランク(具体的には、NG1,NG2,NG3,NG4)を有する。
【0073】
不良ランクの説明は、それぞれの不良ランクNG1,NG2,NG3,NG4を記載している。
【0074】
第2不良ランクの一例としての不良ランクNG1は、検査スコアが「60~79」と算出された溶接個所が軽微な不良の不良個所となったことを示す。言い換えると、不良ランクNG1の不良個所は、検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接による修正が可能であることを示す。
【0075】
第1不良ランクの一例としての不良ランクNG2は、検査スコアが「40~59」と算出された溶接個所が重度な不良の不良個所となったことを示す。言い換えると、不良ランクNG2の不良個所は、検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接による修正が困難であることを示す。
【0076】
第3不良ランクの一例としての不良ランクNG3は、検査スコアが「20~39」と算出された不良個所に設定され、検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接による修正が困難であることを示す。実施の形態1では、検査装置4は、不良ランクNG3の不良個所のリペア溶接を、検査リペア溶接ロボットMC23ではなく溶接作業者による人手のリペア溶接に委ねる旨のアラート画面を生成して上位装置1に報告(通知)する。
【0077】
第4不良ランクの一例としての不良ランクNG4は、検査スコアが「0~19」と算出された不良個所に設定され、検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接による修正が不可能な不良となったことを示す。実施の形態1では、検査装置4は、外観検査結果として不良ランクNG4の不良個所が検出された場合には、その不良個所を有するワークのリペア溶接自体を実行しない旨のアラート画面を生成して上位装置1に報告(通知)する。
【0078】
リペア溶接の処置は、不良ランクに対応するリペア溶接の処置内容を示す。
【0079】
不良ランクNG1の不良個所には、ロボット制御装置3において生成される不良ランクNG1用のリペア溶接プログラムに従って、通常のリペア溶接が実行される。
【0080】
不良ランクNG2の不良個所には、ロボット制御装置3において生成される不良ランクNG2用のリペア溶接プログラムに従って、通常のリペア溶接が実行される。なお、実施の形態1では、ワークWk1の溶接線上に複数の不良ランク(例えば不良ランクNG1,NG2)の不良個所が検出された場合、修正の難易度の高い不良ランクNG2の不良個所から優先的(先行的)にリペア溶接が実行される。
【0081】
不良ランクNG3の不良個所には、上述したように、検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接は実行されない。言い換えると、同一のワークWk1の溶接線上に不良ランクNG3以外の他の不良ランク(例えば不良ランクNG1,NG2)が検出された場合には、不良ランクNG1,NG2の不良個所のみが検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接の対象となり、不良ランクNG3の不良個所は検査リペア溶接ロボットMC23によりリペア溶接されない。
【0082】
不良ランクNG4の不良個所には、上述したように、ワークWk1の溶接線上に一つでも検出された場合には、他の不良ランク(つまり、不良ランクNG1,NG2,NG3)の不良個所が検出されたとしても、そのワークWk1は検査リペア溶接ロボットMC23にも溶接作業者にもリペア溶接されない。
【0083】
検査結果記憶部43は、例えばハードディスク(HDD)あるいはソリッドステートドライブ(SSD)を用いて構成される。検査結果記憶部43は、プロセッサ41により生成あるいは取得されるデータあるいは情報の一例として、ワークWk1の溶接個所の外観検査結果を示すデータあるいは情報を記憶する。
【0084】
処理部の一例としての形状検出制御部44は、形状検出部500から送られた溶接個所における溶接ビードの形状データと、ロボット制御装置3から送られたワークWk1の溶接個所の外観検査の実行に関する制御信号とに基づいて、形状検出部500を制御する。形状検出制御部44は、形状検出部500が溶接個所を撮像可能(言い換えると、溶接個所の3次元形状を検出可能)な位置に位置すると、例えばレーザ光線を形状検出部500から照射させて溶接個所における溶接ビードの形状データを取得させる。形状検出制御部44は、形状検出部500により取得された形状データを受信すると、この形状データをデータ処理部45に渡す。
【0085】
処理部の一例としてのデータ処理部45は、形状検出制御部44からの溶接個所における溶接ビードの形状データを、溶接個所の3次元形状を示す画像データに変換する。形状データは、例えば、溶接ビードの表面に照射されたレーザ光線の反射軌跡からなる形状線の点群データである。データ処理部45は、入力された形状データに対して統計処理を実行し、溶接個所における溶接ビードの3次元形状に関する画像データを生成する。なお、データ処理部45は、溶接ビードの位置および形状を強調するために、溶接ビードの周縁部分を強調したエッジ強調補正を行ってもよい。
【0086】
判定閾値記憶部46は、溶接個所に応じて検査結果判定部47による判定処理において用いられる閾値(例えば、溶接個所に応じて設定されたそれぞれの閾値を)記憶する。それぞれの閾値は、例えば溶接個所の位置ずれに関する許容範囲(閾値)、溶接ビードの高さに関する閾値、溶接ビードの幅に関する閾値である。また、判定閾値記憶部46は、リペア溶接後の外観検査時の各閾値として、顧客等から要求される最低限の溶接品質を満たす許容範囲(例えば、溶接ビードの高さに関する最小許容値、最大許容値など)を記憶してよい。
【0087】
また、判定閾値記憶部46は、溶接個所あるいは不良ランクごとに外観検査の回数上限値を記憶してよい。これにより、検査装置4は、リペア溶接によって不良個所を修正する際に所定の回数上限値を上回る場合に、検査リペア溶接ロボットMC23による自動リペア溶接による不良個所の修正が困難あるいは不可能と判定して、リペア溶接システム1000の稼動率の低下を抑制できる。
【0088】
処理部の一例としての検査結果判定部47は、判定閾値記憶部46に記憶された閾値を用いて、形状検出制御部44により取得された溶接個所における溶接ビードの形状データに基づいて、溶接個所が所定の溶接基準を満たすか否かの判定を行う。検査結果判定部47は、不良個所の位置(例えば、不良個所の開始位置と終了位置や、溶接ビードに生じた穴あきの位置や、アンダーカットの位置等)を計測し、不良内容を分析して不良要因を推定する。
【0089】
検査結果判定部47は、上述した判定において、溶接線上の溶接個所の溶接ビードの形状データに基づいて、溶接個所ごとに検査スコアを算出する。また、検査結果判定部47は、処置判断テーブル(
図3参照)に基づいて、溶接個所ごとの検査スコアに対応する不良ランクを決定して設定する。検査結果判定部47は、計測された不良個所の位置、検査スコア、不良ランク、推定された不良要因のそれぞれを溶接個所に対する外観検査結果(判定結果)として生成し、生成された外観検査結果を、ロボット制御装置3を介して、上位装置1に送る。
【0090】
なお、検査結果判定部47は、不良個所がないと判定した場合には、不良個所がないことを通知するアラート画面を生成し、生成されたアラート画面を、ロボット制御装置3を介して、上位装置1に送ってよい。上位装置1に送られたアラート画面は、モニタMN1に送信されて表示される。
【0091】
また、データ処理部45は、溶接個所あるいは不良個所ごとに外観検査回数をカウントし、外観検査回数が判定閾値記憶部46に記憶された回数を超えても溶接検査結果が良好にならない場合、自動リペア溶接による不良個所の修正が困難あるいは不可能と判定する。この場合、検査結果判定部47は、不良個所の位置および不良要因を含むアラート画面を生成し、生成されたアラート画面を、ロボット制御装置3を介して、上位装置1に送る。上位装置1に送られたアラート画面は、モニタMN1に表示される。
【0092】
なお、検査装置4は、上記以外の内容のアラート画面を生成してもよい。このアラート画面もまた、ロボット制御装置3を介して、上位装置1に送られる。上位装置1に送られたアラート画面は、モニタMN1に表示される。
【0093】
図4Aは、本溶接後の溶接ビードWDB1の溶接個所の不良ランクの第1例を模式的に示す図である。
図4Bは、本溶接後の溶接ビードWDB2の溶接個所の不良ランクの第2例を模式的に示す図である。
図4Cは、本溶接後の溶接ビードWDB3の溶接個所の不良ランクの第3例を模式的に示す図である。
図4A~
図4Cの説明を分かり易くするために、溶接ビードの形状は略直線状を例示して説明する。
【0094】
検査装置4は、例えば
図4Aに示される本溶接後の溶接線WDL1上の溶接ビードWDB1の形状データに基づいて、溶接ビードWDB1に複数の不良個所NGD11,NGD12,NGD13,NGD14を検出し、それぞれの不良個所の検査スコアを算出する。検査装置4は、
図3の処置判断テーブルを参照し、それぞれの不良個所の検査スコアに対応する不良ランクを決定して不良個所に対応付けて設定する。例えば、不良個所NGD11は不良ランクNG1が設定され、不良個所NGD12は不良ランクNG2が設定され、不良個所NGD13は不良ランクNG3が設定され、不良個所NGD14は不良ランクNG4が設定される。
【0095】
検査装置4は、例えば
図4Bに示される本溶接後の溶接線WDL2上の溶接ビードWDB2の形状データに基づいて、溶接ビードWDB2に複数の不良個所NGD21,NGD22,NGD23,NGD24を検出し、それぞれの不良個所の検査スコアを算出する。検査装置4は、
図3の処置判断テーブルを参照し、それぞれの不良個所の検査スコアに対応する不良ランクを決定して不良個所に対応付けて設定する。例えば、不良個所NGD21は不良ランクNG2が設定され、不良個所NGD22は不良ランクNG1が設定され、不良個所NGD23は不良ランクNG1が設定され、不良個所NGD24は不良ランクNG3が設定される。
【0096】
検査装置4は、例えば
図4Cに示される本溶接後の溶接線WDL3上の溶接ビードWDB3の形状データに基づいて、溶接ビードWDB3に複数の不良個所NGD31,NGD32,NGD33を検出し、それぞれの不良個所の検査スコアを算出する。検査装置4は、
図3の処置判断テーブルを参照し、それぞれの不良個所の検査スコアに対応する不良ランクを決定して不良個所に対応付けて設定する。例えば、不良個所NGD31は不良ランクNG2が設定され、不良個所NGD32は不良ランクNG2が設定され、不良個所NGD33は不良ランクNG1が設定される。
【0097】
図5は、検査する方向とリペア溶接する方向との関係の一例を示す図である。
図5の説明を分かり易くするために、
図4Cの略直線状の溶接ビードWDB3を例示する。
【0098】
図5に示されるように、検査装置4は、外観検査を行う方向として、例えば本溶接を行う方向とは異なる方向(より正確には反対方向)に外観検査を行う。2019年6月20日の14時30分15秒における外観検査結果として、検査装置4は、不良個所NGD23について、不良ランクNG1、NG要因とも称される不良要因AAAを判定する。なお、この外観検査結果を受けて、ロボット制御装置3は、不良個所NGD23に対応するリペア溶接を行うリペア溶接範囲P1~P2とするリペア溶接プログラムを生成する。
【0099】
同様に、検査装置4は、不良個所NGD22について、不良ランクNG2、NG要因とも称される不良要因BBBを判定する。なお、この外観検査結果を受けて、ロボット制御装置3は、不良個所NGD22に対応するリペア溶接を行うリペア溶接範囲P3~P4とするリペア溶接プログラムを生成する。
【0100】
同様に、検査装置4は、不良個所NGD21について、不良ランクNG2、NG要因とも称される不良要因CCCを判定する。なお、この外観検査結果を受けて、ロボット制御装置3は、不良個所NGD21に対応するリペア溶接を行うリペア溶接範囲P5~P6とするリペア溶接プログラムを生成する。
【0101】
図5に示されるように、実施の形態1において、ロボット制御装置3は、検査装置4により外観検査がなされる方向とは異なる方向(より正確には反対方向)にリペア溶接を行うようにリペア溶接プログラムを生成する。これは、検査リペア溶接ロボットMC23が外観検査とリペア溶接との両方を実行するために、外観検査が終了した後に検査リペア溶接ロボットMC23を再び外観検査の開始位置まで戻す必要が無く、外観検査の終了位置からリペア溶接を迅速に開始できるので、検査リペア溶接ロボットMC23の稼動率の劣化を抑制できるためである。
【0102】
図6は、マスタデータと本溶接後の溶接ビードの形状データとの比較を概念的に示す図である。
図6の一方は、検査装置4のメモリ42に保存された溶接ビードのマスタデータを示している。ここで、マスタデータとは、良好に本溶接が行われたワークの溶接個所を、形状検出部500で検出して画像化した画像データである。
図6の他方は、外観検査の対象となったワークWk1の溶接ビードの形状データを示している。
【0103】
ワークWk1の溶接個所に例えばアーク溶接が行われた場合、その溶接個所には、種々の形状不良が生じ得る。例えば、溶接個所の一部が溶け落ちてできる穴あきあるいはアンダーカットが生じることがある。また、溶接線に沿った溶接ビードの長さ、溶接線に直交する方向の溶接ビード幅、溶接ビードの高さが、基準値と比較して許容範囲以上にずれる場合もある。これらの「穴あき」,「アンダーカット」,「ビードの長さ」,「ビードの幅」,「ビードの高さ」等が、溶接の不良要因に相当する。ただし、不良要因は、上述したものに限定されない。
【0104】
検査装置4において、データ処理部45は、これらの不良要因ごとに、マスタデータと、検査対象のワークWk1の溶接ビードの形状データとに基づいて、特性データを算出する。特性データは、上述した不良要因ごとに、溶接の良あるいは不良を識別する為のデータである。例えば
図6には、ビード切れ601と、穴あき602とが例示されている。ビード切れ601は、溶接線に沿った溶接ビードの長さが、マスタデータと比較して短くなっている。すなわち、ワークWk1の溶接ビードの開始位置および終了位置のそれぞれが、マスタデータの溶接ビードの開始位置および終了位置のそれぞれからずれている。データ処理部45は、このずれの量を特性データとして算出する。なお、データ処理部45は、溶接ビードの長さ自体を特性データとして算出してもよい。
【0105】
同様に、穴あき602は、溶接ビードに穴が開いた状態である。データ処理部45は、例えばこの穴の直径を、特性データとして算出する。その他、データ処理部45は、ビード幅あるいはアンダーカットの大きさ等を、特性データとして算出してよい。なお、特性データの種類は、上述のものには限定されない。
【0106】
検査結果判定部47は、上述のようにして算出された特性データと、判定閾値記憶部46に記憶された閾値とを比較する。この特性データと閾値との比較により、不良個所の検査スコアの算出を行える。
【0107】
例えば、検査結果判定部47は、上述した複数の特性データのそれぞれを総合的に用いて、検査スコアを算出してもよい。例えば、外観検査の対象となったワークWk1の形状データにおける溶接ビードの長さと、マスタデータにおける溶接ビードの長さとの差をΔLとする。また、外観検査の対象となったワークWk1の形状データにおける溶接ビードの幅と、マスタデータにおける溶接ビードの長さとの差をΔWとする。また、外観検査の対象となったワークWk1の形状データにおける溶接ビードの高さと、マスタデータにおける溶接ビードの高さとの差をΔHとする。また、外観検査の対象となったワークWk1の形状データに、穴あきを検出した場合は、穴あきの直径をrとする。この時、検査結果判定部47は、例えば検査スコアScを次式のように計算してよい。
【0108】
検査スコアSc=(w1×ΔL)+(w2×ΔW)+(w3×ΔW)+(w4×r)
【0109】
上述した数式において、w1,w2,w3,w4のそれぞれは、重み付け(言い換えると、対応する特性データの重要度)を示す係数である。
【0110】
検査結果判定部47は、例えば上述した計算により得られた検査スコアを、特性データとして算出してよい。なお、上述した数式は一例であり、検査結果判定部47は、上述した数式以外の計算式を用いて検査スコアを算出してもよい。また、検査スコアは、単一の値でなくともよい。例えば、溶接ビードの寸法(長さ、幅、高さ等)についての検査スコアと、穴あきやアンダーカット等についての検査スコアを別々に計算して、これらを合わせて、検査スコアのグループとして用いてもよい。
【0111】
検査結果判定部47は、他の特性データを算出してもよい。例えば、検査装置4によって既に検査済みの複数のワークについての形状データや、それらの形状データから算出した特性データをメモリ42等に蓄積しておき、この蓄積データに対する標準偏差の値や、分散値などを特性データとして検査結果判定部47が算出してもよい。
【0112】
検査装置4は、不良個所の不良要因を示す情報および特性データを、前述の形状データに更に紐づけて管理してよい。即ち、検査装置4は、外観検査の対象となったワークWk1の形状データに、ワーク種別、ワークS/N、溶接線ID、不良要因、および検査スコアおよび不良ランクを含む特性データを紐づけて管理できる。検査装置4は、これらのデータを、メモリ42等に記憶してよい。
【0113】
図7Aは、不良種別と特定データとに対応するプログラム生成ロジックテーブルの一例を示す図である。
図7Bは、不良種別と検査スコアとに対応するプログラム生成ロジックテーブルの一例を示す図である。
【0114】
実施の形態1において、検査装置4(例えばデータ処理部45)は、検査結果判定部47の判定結果に基づいて、不良個所をリペア溶接する時の修正種別および修正パラメータを生成する。修正種別は、不良個所の適切な修正方法(例えば、本溶接と同じ溶接方法、あるいは本溶接とは異なる種々の溶接方法)等である。修正パラメータは、溶接電源装置5からの溶接電流Aあるいは溶接電圧V、不良個所の位置情報、リペア溶接の開始位置またはリペア終了位置のオフセット量、溶接速度S、溶接トーチ400の姿勢、ウィービングの有無等であるが、これらは例示的に列挙されたものでこれらに限定されなくてよい。
【0115】
データ処理部45は、修正方法および修正パラメータを生成する際、
図7Aおよび
図7Bに示されるプログラム生成ロジックテーブルをメモリ42から参照する。
【0116】
図7Aのプログラム生成ロジックテーブルには、修正種別と修正パラメータとが、例えば検査結果判定部47により推定された不良個所の不良要因および特性データの値の範囲等に応じて登録されてよい。データ処理部45は、不良要因および特性データとプログラム生成ロジックテーブルとに基づいて、修正種別と修正パラメータとの組を抽出する。例えば、不良種別が「穴あき」で、特性データ(例えば直径)の値が2~4の場合は、修正の種別は「リペア溶接を2回行う」、修正パラメータは「1回目のリペア溶接はデータセットdata6を用い、2回目のリペア溶接はデータセットdata7を用いる」という修正種別と修正パラメータとの組を抽出できる。なお、あくまで一例であるが、データセットに含まれているA,V,Sはそれぞれ「溶接電流」,「溶接電圧」,「溶接速度」である。
【0117】
図7Bのプログラム生成ロジックテーブルには、修正種別と修正パラメータとが、例えば検査結果判定部47により判定された不良個所の不良種別(言い換えると、不良要因)および検査スコアに応じて登録されてよい。例えば、不良種別が「穴あき」で、検査スコアの値が40~59の場合は、修正種別は「リペア溶接を2回行う」、修正パラメータは「1回目のリペア溶接はデータセットdata6を用い、2回目のリペア溶接はデータセットdata7を用いる」という修正種別と修正パラメータとの組を抽出できる。
【0118】
上述のプログラム生成ロジックテーブルは、データそのものを保持していてよい。また、データを他の記憶領域(ロボット制御装置3の記憶領域でも可)等に保存しておき、プログラム生成ロジックテーブルは、そのデータへの参照情報(リンク情報)を保持していてもよい。
【0119】
なお、データ処理部45による修正種別および修正パラメータを生成する方法は、プログラム生成ロジックテーブルを用いた方法に限られない。例えば、溶接方法(修正種別)は、本溶接における溶接方法と同じものを用いた上で、修正パラメータについては、本溶接の時に用いたパラメータに対して、検査スコアの値に基づいた係数を乗算したものを用いてもよい。より具体的な一例を挙げると、検査スコアが一定以下である場合には、溶接方法は変えずに、本溶接の際の電流値の0.6倍(係数0.6)の電流を用いてリペア溶接を行う等である。
【0120】
[リペア溶接システム1000の処理例]
次に、実施の形態1に係るリペア溶接システム1000の処理手順例について、
図8を参照して説明する。
図8は、実施の形態1に係るリペア溶接システム1000の処理手順例を示すフローチャートである。
【0121】
図8において、ロボット制御装置2は、上位装置1からの本溶接の開始指令を受信すると、予め生成されて保存しておいた本溶接基本プログラムに従って、本溶接ロボットMC1によりワーク(例えばワークWk1)に本溶接が実行される(St1)。本溶接基本プログラムは、上述したリペア溶接基本プログラムと同様に、ワークWk1の全ての溶接個所を本溶接の溶接条件(例えば、溶接電流A、溶接電圧V、溶接速度Sとするが、これらに限定されない)で溶接可能に予め準備された基本的なプログラムである。本溶接が終了すると、ロボット制御装置2から上位装置1に終了報告が送られる。本溶接が終了したワークWk1は、検査リペア溶接ロボットMC23による外観検査が可能となるように所定のワーク設置台(図示略)に載置される。
【0122】
検査装置4は、上位装置1からの外観検査の開始指令(例えばワークWk1の溶接個所の外観検査の実行に関する制御信号)を受信すると、ワークWk1の溶接個所の外観検査を実行する(St2)。外観検査が終了すると、ロボット制御装置3から上位装置1に終了報告が送られる。
【0123】
また、検査装置4は、ワークWk1の溶接個所のうち所定の溶接基準を満たさない不良個所の有無を判定する。検査装置4は、不良個所を検出した場合に、不良個所の位置(例えば、不良個所の開始位置と終了位置や、溶接ビードに生じた穴あきの位置や、アンダーカットの位置等)を計測し、不良内容を分析して不良要因を推定するとともに、処置判断テーブル(
図3参照)に基づいて、溶接個所ごとの検査スコアに対応する不良ランクを決定して設定する。
【0124】
検査装置4は、ワークWk1の溶接個所に一つも不良個所を検出しない場合に(St3、NO)、不合格個所が存在しない旨の外観検査結果を生成し、ロボット制御装置3を介して上位装置1に送る。この場合、リペア溶接システム1000の処理は終了する。なお、上述したように、検査スコア(例えば0点~100点)が80点~100点である場合に外観検査は合格とし、79点以下は不合格としているが、外観検査の合否の閾値は80点以上であることに限定されなくてよい。
【0125】
一方、検査装置4は、ワークWk1の溶接個所に不合格個所を検出した場合(St3、YES)、その不合格個所(不良個所)の検査スコアに対応する不良ランクがNG4であるか否かを判定する(St4)。不良個所の不良ランクがNG4であると判定された場合(St4、YES)、検査リペア溶接ロボットMC23および溶接作業者のいずれがそのワークWk1にリペア溶接を施しても修正は不可能であるため(
図3参照)、検査装置4は、そのワークWk1のリペア溶接を実行しない旨のアラート画面を生成し、ロボット制御装置3を介して上位装置1に報告する(St5)。この場合、リペア溶接システム1000の処理は終了する。
【0126】
一方、検査装置4は、不良個所の不良ランクがNG4でないと判定した場合(St4、NO)、その不合格個所(不良個所)の検査スコアに対応する不良ランクがNG3であるか否かを判定する(St6)。検査装置4は、不良個所の不良ランクがNG3であると判定した場合(St6、YES)、不良ランクNG3の不良個所のリペア溶接を、検査リペア溶接ロボットMC23ではなく溶接作業者による人手のリペア溶接に委ねる旨のアラート画面を生成し、ロボット制御装置3を介して上位装置1に報告する(St7)。
【0127】
一方、検査装置4は、不良個所の不良ランクがNG3でないと判定した場合(St6、NO)、その不合格個所(不良個所)の検査スコアに対応する不良ランクがNG2であるか否かを判定する(St8)。検査装置4は、不良個所の不良ランクがNG2であると判定した場合(St8、YES)、不良ランクNG2の不良個所の外観検査回数が所定回数N(N:2以上の既定値)以下であるか否かを判定する(St9)。検査装置4は、不良ランクNG2の不良個所の外観検査回数が所定回数Nよりも多いと判定した場合(St9、NO)、不良ランクNG2の不良個所のリペア溶接をN回実行したが不合格となったとして、その不良個所の検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接を実行しない旨のアラート画面を生成し、ロボット制御装置3を介して上位装置1に報告する(St13)。
【0128】
一方、検査装置4は、不良ランクNG2の不良個所の外観検査回数が所定回数N以下であると判定した場合(St9、YES)、不良ランクNG2の不良個所のリペア溶接をN回実行するまで繰り返すため、外観検査の対象となったワークWk1の溶接線上の溶接ビードにおいて不良ランクNG2だけの不良個所をリペア溶接するためのリペア溶接プログラムの生成指示を生成し、ロボット制御装置3に送る。ロボット制御装置3は、検査装置4から送られた生成指示に基づいて、外観検査の対象となったワークWk1の溶接線上の溶接ビードにおいて不良ランクNG2だけの不良個所をリペア溶接するためのリペア溶接プログラムを生成する(St10)。ロボット制御装置3は、このリペア溶接プログラムに従い、検査リペア溶接ロボットMC23の処理を制御し、不良ランクNG2だけの不良個所をリペア溶接する(St14)。リペア溶接が終了すると、ロボット制御装置3から上位装置1に終了報告が送られる。リペア溶接の実行後、リペア溶接システム1000の処理は、ステップSt2に戻り、不良ランクNG2の不良個所の外観検査結果として合格が得られるまで最大N回、リペア溶接が繰り返される。
【0129】
一方、検査装置4は、不良個所の不良ランクがNG2でないと判定した場合(St8、NO)、その不良個所の不良ランクはNG1であると判定でき、その不良ランクNG1の不良個所の外観検査回数が所定回数N(N:2以上の既定値)以下であるか否かを判定する(St12)。検査装置4は、不良ランクNG1の不良個所の外観検査回数が所定回数Nよりも多いと判定した場合(St12、NO)、不良ランクNG1の不良個所のリペア溶接をN回実行したが不合格となったとして、その不良個所の検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接を実行しない旨のアラート画面を生成し、ロボット制御装置3を介して上位装置1に報告する(St13)。
【0130】
一方、検査装置4は、不良ランクNG1の不良個所の外観検査回数が所定回数N以下であると判定した場合(St12、YES)、不良ランクNG1の不良個所のリペア溶接をN回実行するまで繰り返すため、外観検査の対象となったワークWk1の溶接線上の溶接ビードにおいて不良ランクNG1だけの不良個所をリペア溶接するためのリペア溶接プログラムの生成指示を生成し、ロボット制御装置3に送る。ロボット制御装置3は、検査装置4から送られた生成指示に基づいて、外観検査の対象となったワークWk1の溶接線上の溶接ビードにおいて不良ランクNG1だけの不良個所をリペア溶接するためのリペア溶接プログラムを生成する(St11)。ロボット制御装置3は、このリペア溶接プログラムに従い、検査リペア溶接ロボットMC23の処理を制御し、不良ランクNG1だけの不良個所をリペア溶接する(St14)。リペア溶接が終了すると、ロボット制御装置3から上位装置1に終了報告が送られる。リペア溶接の実行後、リペア溶接システム1000の処理は、ステップSt2に戻り、不良ランクNG1の不良個所の外観検査結果として合格が得られるまで最大N回、リペア溶接が繰り返される。
【0131】
なお、
図8の説明において、ステップSt3~St9,St12,St13までの一連の処理は、検査装置4により実行されるとして説明したが、検査装置4から外観検査結果のデータあるいは情報を受信したロボット制御装置3により実行されても構わない。
【0132】
以上により、実施の形態1に係るリペア溶接システム1000は、ワーク(例えばワークWk1)の溶接個所の外観を検査する検査装置4と、ワークWk1を溶接する検査リペア溶接ロボットMC23を制御するロボット制御装置3、を備える。検査装置4は、ワークWk1の溶接個所のうち所定の基準(上述参照)に従って不良個所の有無を判定するとともに、不良個所を検出した場合に不良個所に複数の不良ランク(例えばNG1~NG4)のいずれかを設定する。ロボット制御装置3は、不良ランクに応じたリペア溶接プログラムを生成し、不良ランクが設定された不良個所へのリペア溶接プログラムに従うリペア溶接の実行を検査リペア溶接ロボットMC23に指示する。
【0133】
これにより、リペア溶接システム1000は、本溶接が施されたワークWk1の溶接線上における溶接ビードの外観検査結果に基づいて、検査リペア溶接ロボットMC23による自動リペア溶接をより効率的に行える。つまり、従来のような溶接作業者等の人手でリペア溶接を行う頻度が極小化されるので、リペア溶接システム1000は、要求されるワークWk1のリペア溶接をより効率的に行うことができる。
【0134】
また、ロボット制御装置3は、リペア溶接の実行後に、リペア溶接が実行された不良個所の外観の検査を検査装置4に指示する。これにより、リペア溶接が実行された不良個所の外観検査が検査装置4により実行されるので、ワークWk1に存在している不良個所が良好にリペア溶接されて適切に修正されたか否かの判別が迅速になり、ワークWk1のリペア溶接をより効率的に行うことができる。
【0135】
また、ロボット制御装置3は、ワークWk1に複数の不良個所が存在しかつそれぞれの不良個所に複数の異なる不良ランク(例えばNG1,NG2)が検査装置4により設定された場合に、リペア溶接の難易度の高い不良ランク(例えばNG2)が設定された不良個所を優先したリペア溶接プログラムを生成する。これにより、リペア溶接システム1000は、難易度の高い(言い換えると、復旧確率の低い)不良個所だけを先行してリペア溶接することで、修正による不良個所の復旧可否を早期に判断でき、短時間で復旧することができる等、総合的にワークWk1のリペア溶接を効率化できる。
【0136】
また、ロボット制御装置3は、複数の不良ランク(例えばNG1~NG4)のうち重度の溶接不良を示す不良ランクNG2が検査装置4により設定された場合に、不良ランクNG2に応じたリペア溶接プログラムを生成する。ロボット制御装置3は、不良ランクNG2に応じたリペア溶接プログラムに基づいて、不良個所への複数回(例えば所定回数N回)のリペア溶接の実行を検査リペア溶接ロボットMC23に指示する。これにより、リペア溶接システム1000は、例えば複数の不良個所に異なる不良ランク(例えばNG1とNG2)が混在する場合、重度の溶接不良を示す不良ランクNG2が設定された不良個所のリペア溶接だけを集中的に実行できるので、検査リペア溶接ロボットMC23の稼動効率を向上でき、総合的にワークWk1のリペア溶接を効率化できる。
【0137】
また、ロボット制御装置3は、不良ランクNG2に応じたリペア溶接プログラムに基づく複数回のリペア溶接の実行により不良ランクNG2の不良個所が修正された後に、不良ランクNG2より溶接不良が軽度である不良ランクNG1に応じたリペア溶接プログラムを生成する。ロボット制御装置3は、不良ランクNG1に応じたリペア溶接プログラムに基づいて、不良個所への複数回のリペア溶接の実行を検査リペア溶接ロボットMC23に指示する。これにより、リペア溶接システム1000は、例えば複数の不良個所に異なる不良ランク(例えばNG1とNG2)が混在する場合、重度の溶接不良を示す不良ランクNG2の不良個所がリペア溶接によって修正された後に、軽度の溶接不良を示す不良ランクNG1が設定された不良個所のリペア溶接だけを集中的に実行できるので、検査リペア溶接ロボットMC23の稼動効率を向上でき、総合的にワークWk1のリペア溶接を効率化できる。
【0138】
また、ロボット制御装置3は、複数の不良ランクのうち軽度の溶接不良を示す不良ランクNG1が検査装置4により設定された場合に、不良ランクNG1に応じたリペア溶接プログラムを生成する。ロボット制御装置3は、不良ランクNG1に応じたリペア溶接プログラムに基づいて、不良個所への複数回のリペア溶接の実行を検査リペア溶接ロボットMC23に指示する。これにより、リペア溶接システム1000は、軽度の溶接不良を示す不良ランクNG1が設定された不良個所のリペア溶接だけを集中的に実行できるので、検査リペア溶接ロボットMC23の稼動効率を向上でき、総合的にワークWk1のリペア溶接を効率化できる。
【0139】
また、ロボット制御装置3は、複数の不良ランクのうち検査リペア溶接ロボットMC23のリペア溶接による修正が困難を示す不良ランクNG3が検査装置4により設定された場合に、ワークWk1の検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接が困難である旨のアラート(例えばアラート画面)を上位装置1に通知する。これにより、リペア溶接システム1000は、不良ランクNG3の不良個所が検出された場合には、検査リペア溶接ロボットMC23ではなく溶接作業者によるリペア溶接に委ねるためのアラート画面を通知できるので、検査リペア溶接ロボットMC23によるリペア溶接の対象から敢えて除外することで、検査リペア溶接ロボットMC23の稼動効率を上げてリペア溶接を効率の向上に資することができる。
【0140】
また、ロボット制御装置3は、複数の不良ランクのうち検査リペア溶接ロボットMC23および溶接作業者のいずれのリペア溶接による修正が困難を示す不良ランクNG4が検査装置4により設定された場合に、ワークWk1のリペア溶接が不可である旨のアラート(例えばアラート画面)を上位装置1に通知する。これにより、リペア溶接システム1000は、不良ランクNG4の不良個所が検出された場合には、検査リペア溶接ロボットMC23および溶接作業者によるリペア溶接を実行させず、そのワークWk1のリペア溶接を積極的に諦めることで、検査リペア溶接ロボットMC23の稼動効率の向上に資することができる。
【0141】
また、ロボット制御装置3は、検査装置4がワークWk1の溶接個所の外観を検査した方向と異なる方向に従って、ワークWk1の溶接個所のうち不良個所をリペア溶接すると判定する。これにより、ロボット制御装置3は、外観検査が終了した後に検査リペア溶接ロボットMC23を再び外観検査の開始位置まで戻す必要が無く、外観検査の終了位置からリペア溶接を検査リペア溶接ロボットMC23に迅速に開始させることができるので、検査リペア溶接ロボットMC23の稼動率の劣化を抑制できるためである。
【0142】
(実施の形態2)
実施の形態1では、本溶接後のワークの外観検査を行うための第1ロボットと、外観検査が行われたワークの不良個所をリペア溶接するための第2ロボットとが同一のロボット(つまり、検査リペア溶接ロボットMC23)により実行される例を説明した。しかし、第1ロボットと第2ロボットとが異なるロボットとして構成されてもよい。そこで、実施の形態2では、上述した第1ロボットと第2ロボットとが異なるロボットにより構成されるリペア溶接システム1001の例を説明する。
【0143】
図9は、実施の形態2に係る検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれの制御に関するリペア溶接システム1001の内部構成例を示す図である。
図10は、実施の形態2係る検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれの制御に関するリペア溶接システム1001の内部構成例を示す図である。
図9および
図10の説明において、
図1あるいは
図2に示した構成と同一のものには同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0144】
図9に示されるように、検査ロボットMC2は、ロボット制御装置3aから送られる各種の制御信号に従って、検査座標系ΣW1に基づく位置情報を用いてマニピュレータ201を稼動することで形状検出部501を走査してワークWk2の外観検査を行う。また、リペア溶接ロボットMC3は、ロボット制御装置2から送られる各種の制御信号に従って、リペア溶接座標系ΣW2に基づく位置情報を用いてマニピュレータ202を稼動することでワークWk2のリペア溶接を行う。
【0145】
実施の形態2では、検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とは、共通のワーク設置台に載置されたワークWk2を対象としてそれぞれの処理(つまり、外観検査、リペア溶接)を実行する。実施の形態1では、検査リペア溶接ロボットMC23から見たワークWk1の位置は外観検査およびリペア溶接の処理時において同一の座標系を用いて特定可能であった。しかし、実施の形態2では、検査ロボットMC2から見たワークWk2の位置(言い換えると、座標系)とリペア溶接ロボットMC3から見たワークWk2の位置(言い換えると、座標系)とは異なっている点が実施の形態1と異なる。
【0146】
そこで、実施の形態2では、リペア溶接ロボットMC3は、検査ロボットMC2の検査座標系ΣW1に従って得られた不良個所の位置情報をそのまま用いてリペア溶接を実行できない。つまり、リペア溶接ロボットMC3は、検査ロボットMC2の検査座標系ΣW1に従って得られた不良個所の位置情報を、リペア溶接ロボットMC3のリペア溶接座標系ΣW2において特定可能な位置情報に変換する必要がある。なお、この位置情報(言い換えると、座標系)の変換は、ロボット制御装置3aにより実行されてもよいし、ロボット制御装置2により実行されてもよい。
【0147】
[ロボット制御装置2の構成例]
ロボット制御装置2は、本溶接およびリペア溶接のそれぞれを実行するためのリペア溶接ロボットMC3を制御するための制御装置である。つまり、実施の形態2に係る本溶接は、リペア溶接ロボットMC3を用いて実行されてよい。なお、本溶接とリペア溶接とが、別体のロボット(つまり、本溶接ロボットMC1,リペア溶接ロボットMC3)で実行されてもよい。
【0148】
ロボット制御装置2は、上位装置1から送られた制御信号に基づいて、マニピュレータ202、ワイヤ送給装置300、および溶接電源装置5をそれぞれ制御する。ロボット制御装置2は、通信部20と、プロセッサ21と、メモリ22と、プログラム記憶部23とを含む構成である。プロセッサ21は、メモリ22との協働により、プログラム呼出部24aとプログラム生成部24bと溶接電源制御部25とロボット制御部26と演算部27と変換行列記憶部28と座標変換部29とを機能的に実現可能である。
【0149】
通信部20は、上位装置1との間で通信可能に接続される。通信部20は、上位装置1から送られた各種の制御信号(例えば、ワークWk2の本溶接の実行に関する制御信号、ワークWk2の溶接個所のうち不良個所のリペア溶接の実行に関する制御信号)、本溶接およびリペア溶接を行うために必要となる情報(例えば、溶接個所ごとの溶接方法、位置情報等)を受信する。
【0150】
プロセッサ21は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成され、メモリ22と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ21は、メモリ22に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。各部は、プログラム呼出部24a、プログラム生成部24b、溶接電源制御部25、ロボット制御部26、演算部27、変換行列記憶部28および座標変換部9である。
【0151】
メモリ22は、例えばプロセッサ21の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ21の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ21により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ21の動作を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ22は、リペア溶接ロボットMC3に予め設定されたリペア溶接座標系ΣW2の情報を記憶する。
【0152】
プログラム記憶部23は、予め準備された本溶接基本プログラムおよびリペア溶接基本プログラムのそれぞれを記憶する。なお、本溶接基本プログラムは、本溶接を実行するための基本的なプログラムであり、溶接電源装置5、マニピュレータ202、ワイヤ送給装置300および溶接トーチ401等を制御するための制御プログラムである。また、プログラム記憶部23は、本溶接の溶接順序およびリペア溶接のリペア順序を記憶してよい。これにより、リペア溶接システム1001は、リペア溶接の実行をより効率化できる。
【0153】
プログラム呼出部24aは、通信部20を介して上位装置1から送られた制御信号に基づいて、本溶接基本プログラムあるいはリペア溶接基本プログラムをプログラム記憶部23から呼び出す。
【0154】
プログラム生成部24bは、通信部20を介して上位装置1から受信された不良個所に関する情報(例えば、検査装置4での外観検査結果)に基づいて、プログラム呼出部24aにより呼び出されたリペア溶接基本プログラムを編集し、特定の不良ランクを有する不良個所に対応するリペア溶接プログラムを生成する。つまり、プログラム生成部24bは、不良個所に関する情報(例えば、不良個所の位置、不良ランクおよび不良要因、リペア溶接用の修正パラメータ)を用いて、ワークWk2の全ての溶接個所のうちリペア溶接の実行対象となる不良個所を定めたリペア溶接プログラムを生成する。なお、生成されたリペア溶接プログラムは、プログラム記憶部23に記憶されてもよいし、メモリ22内のRAM等に記憶されてもよい。
【0155】
また、プログラム生成部24bは、リペア溶接プログラムを生成する際、座標変換部29あるいは通信部20から入力されたリペア溶接座標系ΣW2における不良個所の位置情報を用いて生成する。なお、プログラム生成部24bは、リペア溶接を実行するためのリペア順序を、溶接個所の検査順序と異なる順序に設定したリペア溶接プログラムを生成する。これにより、リペア溶接システム1001は、不良個所の数および位置に応じて、効率的にリペア溶接を実行できる。従って、リペア溶接システム1001は、溶接個所のリペア溶接をより効率化できる。
【0156】
演算部27は、プログラム生成部24bから入力された本溶接基本プログラムあるいはリペア溶接プログラムに基づいて、ロボット制御部26によって制御されるマニピュレータ202およびワイヤ送給装置300を制御するための演算と、溶接電源制御部25によって制御される溶接電源装置5を制御するための演算とを実行する。例えば、演算部27は、不良個所の位置情報に基づいて、リペア溶接に必要なオフセット量を演算する。演算部27は、演算結果を含むリペア溶接プログラムを溶接電源制御部25およびロボット制御部26に出力する。
【0157】
ロボット制御部26は、演算部27からの本溶接プログラムあるいはリペア溶接プログラムに基づいて、マニピュレータ202およびワイヤ送給装置300を制御するための制御信号を生成する。ロボット制御部26は、生成された制御信号に基づいて、マニピュレータ202およびワイヤ送給装置300を制御する。
【0158】
変換行列記憶部28は、検査装置4によって取得された検査座標系ΣW1に基づく不良個所の位置情報(座標情報)を、リペア溶接ロボットMC3がリペア溶接可能なリペア溶接座標系ΣW2に基づく位置情報(座標情報)に変換するための変換行列を記憶している。この変換行列は、予め導出されて変換行列記憶部28にて記憶されている。具体的には、変換行列記憶部28は、共通のワーク設置台上に載置されたワークWk2に対して異なる3点のそれぞれの位置(制御点)にリペア溶接ロボットMC3が保持する溶接トーチ401および検査ロボットMC2が保持する形状検出部501を位置させた状態で、リペア溶接座標系ΣW2と検査座標系ΣW1とによって得られるそれぞれの座標系に基づく位置情報(座標情報)に基づいて、変換行列を導出する。記憶された変換行列は、座標変換部29によって参照される。
【0159】
座標変換部29は、変換行列記憶部28に記憶された変換行列を参照して、検査装置4によって取得された不良個所の位置情報(座標情報)をリペア溶接ロボットMC3がリペア溶接可能なリペア溶接座標系ΣW2に基づく位置情報(座標情報)に変換する。座標変換部29は、変換されたリペア溶接座標系ΣW2に基づく不良個所の位置情報を、プログラム生成部24bに出力する。なお、変換行列記憶部28および座標変換部29は、ロボット制御装置3によって検査座標系ΣW1に基づく不良個所の位置情報(座標情報)をリペア溶接ロボットMC3がリペア溶接可能なリペア溶接座標系ΣW2に基づく位置情報(座標情報)に変換される場合には、省略されてよい。
【0160】
[ロボット制御装置3aの構成例]
ロボット制御装置3aは、実施の形態1と同様に、上位装置1から送られた制御信号に基づいて、検査装置4を制御する。ロボット制御装置3aは、通信部30と、プロセッサ31aと、メモリ32と、プログラム記憶部33とを含む構成である。プロセッサ31aは、メモリ32との協働により、プログラム呼出部34aとプログラム生成部34bと検査装置制御部35とロボット制御部36と演算部37と変換行列記憶部39aと座標変換部39bとを機能的に実現可能である。ロボット制御装置3aの説明において、実施の形態1に係るロボット制御装置3の構成と同一の構成については同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0161】
プロセッサ31aは、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成されて、メモリ32と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ31aは、メモリ32に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。各部は、プログラム呼出部34a、プログラム生成部34b、検査装置制御部35、ロボット制御部36、演算部37、変換行列記憶部39aおよび座標変換部39bである。
【0162】
メモリ32は、例えばプロセッサ31aの各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ31aの動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ31aにより生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ31aの動作を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ32は、検査ロボットMC2に予め設定された検査座標系ΣW1の情報を記憶する。
【0163】
演算部37は、プログラム生成部34bから入力された検査用プログラムに基づいて、検査装置制御部35によって制御される検査装置4および形状検出部501のそれぞれを制御するための演算を実行する。例えば、演算部37は、溶接個所の位置情報に基づいて、溶接個所および溶接個所の周辺を含む撮像領域を撮像可能な撮像位置、撮像距離を演算する。
【0164】
ロボット制御部36は、演算部37の演算結果とプログラム生成部34bにより生成された検査用プログラムに基づいて、検査ロボットMC2に予め設定された検査座標系ΣW1に基づく制御を実行する。ロボット制御部36aは、マニピュレータ201を制御するための制御信号を生成し、制御を実行する。
【0165】
ロボット制御装置2によって、検査座標系ΣW1に基づく不良個所の位置情報(座標情報)をリペア溶接ロボットMC3がリペア溶接可能なリペア溶接座標系ΣW2に基づく位置情報(座標情報)に変換されない場合、ロボット制御装置3aは、変換行列記憶部39aおよび座標変換部39bを含んで構成されてよい。
【0166】
変換行列記憶部39aは、検査座標系ΣW1に基づく不良個所の位置情報(座標情報)をリペア溶接ロボットMC3がリペア溶接可能なリペア溶接座標系ΣW2に基づく位置情報(座標情報)に変換するための変換行列を導出して、記憶する。具体的には、変換行列記憶部39aは、同一のワークWk2に対して異なる3点のそれぞれの位置にリペア溶接ロボットMC3が保持する溶接トーチ401および検査ロボットMC2が保持する形状検出部501を位置した状態で、リペア溶接座標系ΣW2と検査座標系ΣW1とによって得られるそれぞれの座標系に基づく位置情報(座標情報)に基づいて、変換行列を導出する。記憶された変換行列は、座標変換部39bによって参照される。
【0167】
座標変換部39bは、変換行列記憶部39aに記憶された変換行列を参照して、検査装置4によって取得された不良個所の位置情報(座標情報)をリペア溶接ロボットMC3がリペア溶接可能なリペア溶接座標系ΣW2に基づく位置情報(座標情報)に変換する。座標変換部39bは、変換されたリペア溶接座標系ΣW2に基づく不良個所の位置情報に基づく検査結果を生成し、上位装置1を介してロボット制御装置2に送信する。
【0168】
実施の形態2に係るリペア溶接システム1001の処理手順は、
図8に示す実施の形態1の処理手順と同様であるため、説明を省略する。なお、実施の形態2においては、検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とが別体であるため、不良ランクNG2,NG1に対応したリペア溶接プログラムの生成の際に、ロボット制御装置2あるいはロボット制御装置3において、外観検査結果として得られた不良個所の検査座標系ΣW1の位置情報は、リペア溶接の対象となる不良個所のリペア溶接座標系ΣW2の位置情報に変換される(ステップSt10,St11)。
【0169】
以上により、実施の形態2に係るリペア溶接システム1001は、本溶接後の溶接ビードの外観検査と不良個所のリペア溶接とが別体のロボットで実行される場合であっても、実施の形態1と同様に、溶接個所の外観検査および不良個所のリペア溶接を効率化できるので、ワークWk2のリペア溶接を効率化できる。
【0170】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0171】
なお、本出願は、2019年6月28日出願の日本特許出願(特願2019-122372)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本開示は、溶接ビードの不良個所のリペア溶接をより効率的に行うことができる、リペア溶接方法、検査装置およびロボット制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0173】
1 上位装置
2、3 ロボット制御装置
4 検査装置
5 溶接電源装置
10、30、40 通信部
11、31、41 プロセッサ
12、32、42 メモリ
13 セル制御部
33 プログラム記憶部
34a プログラム呼出部
34b プログラム生成部
35 検査装置制御部
36 ロボット制御部
37 演算部
38 溶接電源制御部
43 検査結果記憶部
44 形状検出制御部
45 データ処理部
46 判定閾値記憶部
47 検査結果判定部
200、201、202 マニピュレータ
300 ワイヤ送給装置
301 溶接ワイヤ
400、401 溶接トーチ
500、501 形状検出部
1000、1001 リペア溶接システム
MC1 本溶接ロボット
MC2 検査ロボット
MC3 リペア溶接ロボット
MC23 検査リペア溶接ロボット
Wk1、Wk2 ワーク