(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】空間浄化システム、及び、空間浄化方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20231020BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20231020BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20231020BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20231020BHJP
F24F 120/14 20180101ALN20231020BHJP
【FI】
F24F11/79
A61L9/00 Z
A61L9/16 F
F24F7/007
F24F120:14
(21)【出願番号】P 2019233829
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】永谷 吉祥
(72)【発明者】
【氏名】櫟原 勉
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174624(JP,A)
【文献】特表2013-511017(JP,A)
【文献】特開2017-026270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
A61L 9/00
A61L 9/16
F24F 7/007
F24F 120/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間において送風を行う送風ユニットと、
前記空間において人が発する感染性物質の排出音を検出する検出ユニットと、
前記空間を浄化する浄化ユニットと、
前記送風ユニットを制御することにより、検出された前記排出音に基づいて推定される前記感染性物質の排出位置から、前記浄化ユニットの設置位置に向かう気流を発生させる制御ユニットとを備え
、
前記検出ユニットは、前記浄化ユニットの動作音を検出し、
前記浄化ユニットの前記設置位置は、検出された前記動作音に基づいて推定される
空間浄化システム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、
前記検出ユニットによって検出される前記動作音に基づいて前記浄化ユニットの動作状態を推定し、
推定される動作状態に基づいて、前記排出位置から前記設置位置に向かう気流を発生させる
請求項
1に記載の空間浄化システム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、
前記浄化ユニットが動作中であると推定される場合には、前記排出位置から前記設置位置に向かう気流を発生させ、
前記浄化ユニットが動作停止中であると推定される場合には、前記排出位置における前記感染性物質を拡散させる気流を発生させる
請求項
2に記載の空間浄化システム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記送風ユニットの設置位置、前記排出位置、及び、前記浄化ユニットの前記設置位置の位置関係に基づいて、前記排出位置から前記設置位置に向かう気流を発生させる
請求項
2に記載の空間浄化システム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記浄化ユニットと通信が可能であり、前記浄化ユニットへ制御信号を送信することにより、前記浄化ユニットの動作状態を制御する
請求項1~
4のいずれか1項に記載の空間浄化システム。
【請求項6】
複数の前記送風ユニットと、
複数の前記検出ユニットとを備える、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の空間浄化システム。
【請求項7】
前記検出ユニットは、前記送風ユニットの近傍に設置される
請求項1~
6のいずれか1項に記載の空間浄化システム。
【請求項8】
前記浄化ユニットは、前記空間内の空気を前記空間外に排出することにより、前記空間を浄化する
請求項1~
7のいずれか1項に記載の空間浄化システム。
【請求項9】
前記浄化ユニットは、前記空間内の空気を回収し、回収した空気をエアフィルタによって濾過して前記空間に放出することにより、前記空間を浄化する
請求項1~
7のいずれか1項に記載の空間浄化システム。
【請求項10】
前記浄化ユニットは、前記空間内の空気を回収し、回収した空気を除菌手段によって除菌して前記空間に放出することにより、前記空間を浄化する
請求項1~
7のいずれか1項に記載の空間浄化システム。
【請求項11】
コンピュータによって実行される空間浄化方法であって、
空間において人が発する感染性物質の排出音を検出し、
検出された前記排出音に基づいて推定される前記感染性物質の排出位置から、前記空間を浄化する浄化ユニットの設置位置に向かう気流を発生させ
、
前記浄化ユニットの動作音を検出し、
前記浄化ユニットの前記設置位置は、検出された前記動作音に基づいて推定される
空間浄化方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の空間浄化方法を
前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染性物質による感染拡大を抑制するための空間浄化システム、及び、空間浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間を浄化するための技術が提案されている。特許文献1には、部屋内での汚染物質の発生後、汚染物質が拡散する前に短時間で汚染物質を除去し、汚染物質の拡散及び汚染物質濃度の上昇を抑制可能な空気清浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空間においてウイルスなどの感染性物質が発生する原因の一つは、人が感染性物質を含む飛沫を排出する(例えば、咳またはくしゃみなどをする)ことである。感染性物質への感染リスクを低下させるためには、このような感染性物質の発生の原因を考慮して、効果的に空間を浄化する必要がある。
【0005】
本発明は、空間を効果的に浄化することができる、空間浄化システム及び空間浄化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る空間浄化システムは、空間において送風を行う送風ユニットと、前記空間において人が発する感染性物質の排出音を検出する検出ユニットと、前記空間を浄化する浄化ユニットと、前記送風ユニットを制御することにより、検出された前記排出音に基づいて推定される前記感染性物質の排出位置から、前記浄化ユニットの設置位置に向かう気流を発生させる制御ユニットとを備える。
【0007】
本発明の一態様に係る空間浄化方法は、空間において人が発する感染性物質の排出音を検出し、検出された前記排出音に基づいて推定される前記感染性物質の排出位置から、前記空間を浄化する浄化ユニットの設置位置に向かう気流を発生させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空間を効果的に浄化することができる、空間浄化システム及び空間浄化方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る空間浄化システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る空間浄化システムの適用対象の空間における、各ユニットの配置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る空間浄化システムの動作例1のフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る空間浄化システムの動作例2のフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る空間浄化システムの動作例3のフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る空間浄化システムの動作例4のフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る空間浄化システムの適用対象の空間における、各ユニットの配置の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0012】
(実施の形態)
[空間浄化システムの構成]
まず、実施の形態に係る空間浄化システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る空間浄化システムの機能構成を示すブロック図である。
図2は、実施の形態に係る空間浄化システムの適用対象の空間における、各ユニットの配置の一例を示す図である。
図2は、空間60を上面視した場合の図(平面図)である。
【0013】
実施の形態に係る空間浄化システム10は、空間60に滞在する人の感染性物質への感染を抑制するための処理(以下、感染抑制処理とも記載される)を行うシステムである。空間60は、例えば、介護施設、病院、または、病院の待合室などの閉空間(部屋など)である。感染性物質とは、例えば、カビ、細菌、または、ウイルスなどである。
図1に示されるように、空間浄化システム10は、2つの検出ユニット20と、制御ユニット30と、2つの送風ユニット40と、浄化ユニット50とを備える。
【0014】
なお、空間浄化システム10が備える検出ユニット20の数、及び、空間浄化システム10が備える送風ユニット40の数は特に限定されず、3つ以上であってもよい。また、空間浄化システム10が備える検出ユニット20の数、及び、空間浄化システム10が備える送風ユニット40の数は、異なってもよい。空間浄化システム10は、少なくとも1つの検出ユニット20、及び、少なくとも1つの送風ユニット40を備えればよい。
【0015】
検出ユニット20は、空間60内に設置され、空間60において人が発する感染性物質の排出音を検出する機器である。感染性物質の排出音とは、例えば、人の咳の音、または、人のくしゃみの音である、検出ユニット20は、具体的には、複数のマイクロフォン、及び、マイクロコンピュータなどによって構成されるマイクアレイユニットである。検出ユニット20は、空間60内に配置される。
【0016】
制御ユニット30は、検出ユニット20から得られる空間60内の排出音の発生位置を示す情報に基づいて、送風ユニット40及び浄化ユニット50を制御する機器である。制御ユニット30は、検出ユニット20、送風ユニット40、及び、浄化ユニット50とは別体のユニットであるが、検出ユニット20、送風ユニット40、及び、浄化ユニット50のいずれかに内蔵されていてもよい。制御ユニット30は、具体的には、通信部31と、気流制御部32と、浄化制御部33と、記憶部34とを備える。
【0017】
通信部31は、制御ユニット30が、2つの検出ユニット20、2つの送風ユニット40、及び、浄化ユニット50のそれぞれと通信を行うための通信回路(言い換えれば、通信インターフェース、通信モジュール)である。通信部31は、無線通信を行ってもよいし、有線通信を行ってもよい。通信部31によって行われる通信の通信規格についても特に限定されない。通信部31は、複数の通信規格に対応していてもよい。
【0018】
気流制御部32は、通信部31を介して送風ユニット40に制御信号を出力することにより2つの送風ユニット40を制御して、空間60内に気流を発生させる。気流制御部32は、具体的には、2つの送風ユニット40のそれぞれの、送風の向き(言い換えれば、気流の向き)、及び、送風の強さ(言い換えれば、気流の強さ)を制御することができる。気流制御部32は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0019】
浄化制御部33は、通信部31を介して浄化ユニット50に制御信号を出力することにより空間60を浄化する。つまり、浄化制御部33は、浄化ユニット50の動作状態(オン、オフ、及び、運転強度(送風量)など)を制御する。浄化制御部33は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0020】
記憶部34は、空間60の形状及び大きさを示す空間情報、2つの検出ユニット20の設置位置P1及びP2を示す情報、2つの送風ユニット40の設置位置P4及びP5を示す情報、及び、浄化ユニット50の設置位置P6を示す情報が記憶される記憶装置である。設置位置を示す情報は、具体的には、空間60内の座標情報などである。また、記憶部34には、気流制御部32、及び、浄化制御部33が実行するコンピュータプログラムなども記憶される。記憶部34は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。なお、空間情報、及び、各設置位置情報は、例えば、空間浄化システム10が備えるユーザインターフェース装置(図示せず)を介して手動入力される。
【0021】
送風ユニット40は、空間60内に設置され、送風を行う機器である。送風ユニット40は、制御ユニット30(例えば、気流制御部32)から出力される制御信号に基づいて動作する。送風ユニット40は、送風の向き、及び、送風の強さを変更できる機能(構造)を有している。送風ユニット40は、例えば、サーキュレータなどの比較的指向性の高い送風機器であるが、扇風機などであってもよい。
【0022】
浄化ユニット50は、空間60の浄化を行う機器である。浄化ユニット50は、制御ユニット30(例えば、浄化制御部33)から出力される制御信号に基づいて動作する。浄化ユニット50は、制御ユニット30とは独立してスタンドアローンで動作してもよい。
【0023】
浄化ユニット50は、具体的には、空間60内の空気を空間60外に排出することにより、空間60を浄化する換気機器である。なお、浄化ユニット50は、空間60内の空気を回収し、回収した空気を、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタなどのエアフィルタによって濾過して空間60に放出することにより、空間60を浄化する空気清浄機であってもよい。また、浄化ユニット50は、空間60内の空気を回収し、回収した空気を除菌手段によって除菌して空間60に放出することにより、空間60を浄化する除菌機器であってもよい。除菌手段は、例えば、次亜塩素酸、アルコール、オゾン、カテキン成分、または、UV(UltraViolet)光などである。
【0024】
[動作例1]
次に、空間浄化システム10の動作例1について、
図2に加えて
図3を参照しながら説明する。
図3は、空間浄化システム10の動作例1のフローチャートである。
【0025】
まず、空間60内に滞在する人が咳またはくしゃみを行うと、2つの検出ユニット20のそれぞれは、これらの音を感染性物質の排出音として検出する(S11)。検出ユニット20のそれぞれは、例えば、機械学習を用いた音声認識処理により、感染性物質の排出音とそれ以外の音とを区別することができる。
【0026】
次に、2つの検出ユニット20のそれぞれは、排出音が発生した方向(言い換えれば、方位または方角)を推定し(S12)、排出音が発生した方向を示す情報を制御ユニット30に送信する。上述のように、2つの検出ユニット20のそれぞれは、例えば、マイクアレイユニットである。マイクアレイを用いて音声(この場合、排出音)の到来方向を推定する技術が知られており、2つの検出ユニット20のそれぞれは、このような技術を用いて排出音が発生した方向を推定することができる。例えば、2つの検出ユニット20によれば、
図2の方向D1及び方向D2を推定することができる。
【0027】
制御ユニット30の通信部31により、2つの検出ユニット20のそれぞれが送信した、排出音が発生した方向を示す情報が受信されると、気流制御部32は、当該情報が受信されたことを契機に、排出音の発生位置、すなわち、感染性物質の排出位置を推定する(S13)。気流制御部32は、例えば、記憶部34に記憶された2つの検出ユニット20の設置位置P1及びP2を示す情報を参照することにより、2つの検出ユニット20の設置位置P1及びP2を特定し、設置位置P1及びP2と、排出音が発生した方向を示す情報とに基づいて感染性物質の排出位置P3を推定することができる。
【0028】
また、浄化制御部33は、通信部31に浄化ユニット50へ制御信号を送信させることにより、浄化ユニット50を動作させる(S14)。なお、浄化ユニット50が既に動作している場合には、ステップS14の処理は省略される。
【0029】
そして、気流制御部32は、2つの送風ユニット40を制御することにより、感染性物質の排出位置P3から、浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させる(S15)。気流制御部32は、例えば、記憶部34に記憶された2つの送風ユニット40の設置位置P4及びP5を示す情報、及び、浄化ユニット50の設置位置P6を示す情報を参照することにより、2つの送風ユニット40の設置位置P4及びP5、及び、浄化ユニット50の設置位置P6を特定する。
【0030】
また、気流制御部32は、設置位置P4、P5、及び、P6の位置関係に基づいて、2つの送風ユニット40から送出される風の向きが、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニット50の設置位置P6に向かうように2つの送風ユニット40を制御する。気流制御部32は、具体的には、通信部31を介して2つの送風ユニット40のそれぞれに制御信号を送信することにより、2つの送風ユニット40の送風の向き、及び、2つの送風ユニット40の送風の強さを制御する。この結果、感染性物質の排出位置P3から、浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流が発生する。なお、この気流は、例えば、2つの送風ユニット40から送出される風が合わさることで生成されるが、感染性物質の排出位置P3によっては2つの送風ユニット40のうち1つが選択的に風を送出することにより生成されてもよい。
【0031】
以上説明したように、動作例1において、空間浄化システム10は、感染性物質の濃度が高いと推定される感染性物質の排出位置P3から、空間60を浄化する浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させる。これにより、感染性物質が浄化ユニット50に誘導され、浄化ユニット50による感染性物質の空間60外への排出が促進される。つまり、空間浄化システム10は、効果的に空間60を浄化することで、感染リスクを低下させることができる。
【0032】
[動作例2]
動作例1では、浄化ユニット50の設置位置P6を示す情報があらかじめ記憶部34に記憶されていたが、浄化ユニット50が空気清浄機などである場合、設置位置P6が変更されてしまう場合がある。そこで、空間浄化システム10は、浄化ユニット50の設置位置P6を推定してもよい。動作例2では、このような場合の動作について説明する。
図4は、空間浄化システム10の動作例2のフローチャートである。なお、以下の動作例2の説明では、浄化ユニット50は動作中であり、動作音を発しているものとして説明が行われる。
【0033】
ステップS11~ステップS13については動作例1と同様である。ステップS13の後、2つの検出ユニット20のそれぞれは、浄化ユニット50の動作音を検出する(S24)。検出ユニット20のそれぞれは、例えば、機械学習を用いた音声認識処理により、浄化ユニット50の動作音とそれ以外の音とを区別することができる。
【0034】
次に、2つの検出ユニット20のそれぞれは、動作音が発生している方向を推定し(S25)、動作音が発生した方向を示す情報を制御ユニット30に送信する。上述のように、2つの検出ユニット20のそれぞれは、例えば、マイクアレイユニットである。マイクアレイを用いて音声(この場合、動作音)の到来方向を推定する技術が知られており、2つの検出ユニット20のそれぞれは、このような技術を用いて動作音が発生した方向を推定することができる。
【0035】
制御ユニット30の通信部31により、2つの検出ユニット20のそれぞれが送信した、動作音が発生した方向を示す情報が受信されると、気流制御部32は、当該情報が受信されたことを契機に、動作音の発生位置、すなわち、浄化ユニット50の設置位置P6を推定する(S26)。気流制御部32は、例えば、記憶部34に記憶された2つの検出ユニット20の設置位置P1及びP2を示す情報を参照することにより、2つの検出ユニット20の設置位置P1及びP2を特定し、設置位置P1及びP2と、動作音が発生した方向を示す情報とに基づいて浄化ユニット50の設置位置P6を推定することができる。
【0036】
そして、気流制御部32は、2つの送風ユニット40を制御することにより、感染性物質の排出位置P3から、浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させる(S27)。ステップS27で行われる処理は、浄化ユニット50の設置位置P6がステップS26で推定されたものである点を除いて、動作例1のステップS15で行われる処理と同様である。
【0037】
以上説明したように、動作例2において、空間浄化システム10は、浄化ユニット50の設置位置P6を、検出された動作音に基づいて推定する。このような空間浄化システム10は、浄化ユニット50が持ち運び可能な機器であるような場合も、感染性物質の排出位置P3から、空間60を浄化する浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させることができる。
【0038】
なお、浄化ユニット50の設置位置P6を推定する方法は、動作音を用いた方法に限定されない。例えば、浄化ユニット50がビーコン信号を発し、制御ユニット30の通信部31がこれを受信すれば、気流制御部32は、ビーコン信号の受信信号強度に基づいて浄化ユニット50の位置を推定することができる。
【0039】
[動作例3]
動作例1では、浄化ユニット50は、制御ユニット30から送信される制御信号に基づいて動作したが、浄化ユニット50が通信機能を有していないような場合(つまり、浄化ユニット50がスタンドアローンで動作するような場合)も考えられる。動作例3では、このような場合の動作について説明する。
図5は、空間浄化システム10の動作例3のフローチャートである。
【0040】
ステップS11~ステップS13については動作例1と同様である。動作例3において、2つの検出ユニット20の少なくとも一方は、浄化ユニット50の動作状態を通知するための通知情報を制御ユニット30に送信している。通知情報は、浄化ユニット50の動作音が検出されている間は、動作中であることを示し、浄化ユニット50の動作音が検出されていない間は、動作停止中であることを示す情報である。2つの検出ユニット20の少なくとも一方は、動作音を検出することにより、このような通知情報を制御ユニット30に送信することができる。なお、動作例2で説明したように、動作音は、例えば、機械学習を用いた音声認識処理により検出できる。
【0041】
制御ユニット30の気流制御部32は、検出ユニット20によって検出される動作音に基づいて、浄化ユニット50が動作中であるか否かを推定する(S34)。気流制御部32は、具体的には、通信部31によって受信される通知情報に基づいて、浄化ユニット50が動作中であるか否かを推定する。
【0042】
気流制御部32は、浄化ユニット50が動作中であると推定される場合には(S34でYes)、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニットの設置位置P6に向かう気流を発生させる(S35)。ステップS35で行われる処理は、動作例1のステップS15で行われる処理と同様である。一方、気流制御部32は、浄化ユニット50が動作停止中であると推定される場合には(S34でNo)、感染性物質の排出位置P3における感染性物質を拡散させる気流を発生させる(S36)。
【0043】
感染性物質を拡散させる気流とは、例えば、送風ユニット40の設置位置(設置位置P4及びP5の少なくとも一方。以下、動作例3において同様)から感染性物質の排出位置P3へ向かう気流であって、かつ、ステップS35における気流よりも風量が多い気流である。風量が多いことで感染性物質は空間60の全体に拡散しやすくなる。感染性物質を拡散させる気流は、ステップS35における気流と異なり、浄化ユニット50へ向かう必要はない。つまり、浄化ユニット50の設置位置P6は考慮されない。これにより、空間60内で感染性物質が空間60の全体に分散することで、空間60内で局所的に感染性物質の濃度が高い領域が形成されることが抑制され、感染リスクが低下する。
【0044】
以上説明したように、動作例3において、空間浄化システム10は、検出ユニット20によって検出される動作音に基づいて浄化ユニット50の動作状態を推定し、推定される動作状態に基づいて、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させる。これにより、浄化ユニット50が独立して動作するような場合であっても、浄化ユニット50が動作中であるときのみ感染性物質が浄化ユニット50に誘導される。したがって、空間浄化システム10は空間60の浄化を効果的に行うことができる。また、空間浄化システム10は、浄化ユニット50が動作停止中である場合には、感染性物質を拡散させる(感染性物質の濃度を希釈する)ことで、感染リスクを低下させることができる。
【0045】
[動作例4]
空間浄化システム10は、送風ユニット40の設置位置(設置位置P4及びP5の少なくとも一方。以下、動作例4において同様)、感染性物質の排出位置P3、及び、浄化ユニット50の設置位置P6の位置関係に基づいて、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させてもよい。
図6は、このような空間浄化システム10の動作例4のフローチャートである。
【0046】
ステップS11~ステップS13については動作例1と同様である。ステップS13の後、気流制御部32は、送風ユニット40の設置位置から感染性物質の排出位置P3までの第一距離が、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニット50の設置位置P6までの第二距離よりも長いか否かを判定する(S44)。なお、空間浄化システム10が送風ユニット40を複数備える場合、送風ユニット40から感染性物質の排出位置P3までの距離は、例えば、複数の送風ユニット40のそれぞれから感染性物質の排出位置P3までの平均距離を意味する。
【0047】
第一距離が第二距離よりも長いと判定される場合(S44でYes)、つまり、排出位置P3が送風ユニット40の設置位置よりも浄化ユニット50の設置位置P6に近いと判定される場合は、発生した感染性物質の浄化ユニット50への誘導が容易な状態である。そこで、浄化制御部33は、通信部31に浄化ユニット50へ制御信号を送信させることにより、浄化ユニット50を動作させ(S45)、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニットの設置位置P6に向かう気流を発生させる(S46)。なお、浄化ユニット50が既に動作している場合には、ステップS45の処理は省略される。
【0048】
一方、第一距離が第二距離以下であると判定される場合(S44でNo)、つまり、排出位置P3が設置位置P6よりも送風ユニット40の設置位置に近いと判定される場合は、発生した感染性物質の浄化ユニット50への誘導がやや難しい。このため、意図せず感染性物質が拡散してしまい、空間60内に局所的に感染性物質の濃度が高い領域が発生してしまう可能性がある。そこで、気流制御部32は、空間60内の感染性物質の濃度を希釈するために、感染性物質の排出位置P3における感染性物質を拡散させる気流を発生させる(S47)。ステップS47で行われる処理は、動作例3のステップS36で行われる処理と同様である。
【0049】
以上説明したように、動作例4において、空間浄化システム10は、送風ユニット40の設置位置、感染性物質の排出位置P3、及び、浄化ユニット50の設置位置P6の位置関係に基づいて、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させる。このような空間浄化システム10は、感染性物質の排出位置P3が浄化ユニット50を用いた浄化に適した位置である場合に、感染性物質の排出位置P3から、空間60を浄化する浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させることができる。
【0050】
[変形例]
図2に示されるような、2つの検出ユニット20、2つの送風ユニット40、及び、浄化ユニット50の配置は一例である。2つの検出ユニット20、2つの送風ユニット40、及び、浄化ユニット50の配置は、
図2のような配置に限定されない。
図7は、2つの検出ユニット20、2つの送風ユニット40、及び、浄化ユニット50の配置の別の一例を示す図である。
【0051】
図7においては、検出ユニット20は、送風ユニット40の近傍に設置される。ここで、検出ユニット20が送風ユニット40の近傍に設置されるとは、例えば、検出ユニット20が送風ユニット40の本体の外表面に接するように設置されること、及び、検出ユニット20が送風ユニット40の本体に内蔵されることなどを意味する。しかしながら、計算上、検出ユニット20と送風ユニット40とを同じ位置とみなせる範囲で、検出ユニット20が送風ユニット40と離れて設置されていてもよい。
【0052】
このように、検出ユニット20が送風ユニット40の近傍に設置されれば、気流制御部32は、検出ユニット20と送風ユニット40とを同じ位置とみなして、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させるための送風ユニット40の風向きを算出することができる。つまり、風向きの算出アルゴリズムを簡素化することができ、風向きの算出における情報処理量が低減される。
【0053】
[効果等]
以上説明したように、空間浄化システム10は、空間60において送風を行う送風ユニット40と、空間60において人が発する感染性物質の排出音を検出する検出ユニット20と、空間60を浄化する浄化ユニット50と、送風ユニット40を制御することにより、検出された排出音に基づいて推定される感染性物質の排出位置P3から、浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させる制御ユニット30とを備える。
【0054】
このような空間浄化システム10は、感染性物質を浄化ユニット50に誘導することで、浄化ユニット50による空間60の浄化(感染性物質の排出、捕集、または無効化など)を促進することができる。つまり、空間浄化システム10は、効果的に空間60を浄化することで、感染リスクを低下させることができる。
【0055】
また、動作例2では、検出ユニット20は、浄化ユニット50の動作音を検出し、浄化ユニットの設置位置P6は、検出された動作音に基づいて推定される。
【0056】
このような空間浄化システム10は、浄化ユニット50の設置位置P6が頻繁に変更されるような場合も、感染性物質の排出位置P3から、空間60を浄化する浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させることができる。
【0057】
また、動作例3では、制御ユニット30は、検出ユニット20によって検出される動作音に基づいて浄化ユニット50の動作状態を推定し、推定される動作状態に基づいて、排出位置P3から設置位置P6に向かう気流を発生させる。
【0058】
このような空間浄化システム10は、浄化ユニット50がスタンドアローンで動作するような場合も、浄化ユニット50が動作中に、感染性物質の排出位置P3から、空間60を浄化する浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させることができる。
【0059】
また、動作例3では、制御ユニット30は、浄化ユニット50が動作中であると推定される場合には、排出位置P3から設置位置P6に向かう気流を発生させ、浄化ユニット50が動作停止中であると推定される場合には、排出位置P3における感染性物質を拡散させる気流を発生させる。
【0060】
このような空間浄化システム10は、浄化ユニット50が動作停止中であっても、感染性物質を拡散させる気流を発生することで感染性物質への感染リスクを低下させることができる。
【0061】
また、動作例4では、制御ユニット30は、送風ユニット40の設置位置、排出位置P3、及び、浄化ユニット50の設置位置P6の位置関係に基づいて、排出位置P3から設置位置P6に向かう気流を発生させる。
【0062】
このような空間浄化システム10は、感染性物質の排出位置P3が浄化ユニット50を用いた浄化に適した位置である場合に、感染性物質の排出位置P3から、空間60を浄化する浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させることができる。
【0063】
また、動作例1では、制御ユニット30は、浄化ユニット50と通信が可能であり、浄化ユニット50へ制御信号を送信することにより、浄化ユニット50の動作状態を制御する。
【0064】
このような空間浄化システム10は、通信によって浄化ユニット50の動作状態を制御することができる。
【0065】
また、例えば、空間浄化システム10は、複数の送風ユニット40と、複数の検出ユニット20とを備える。
【0066】
このような空間浄化システム10は、感染性物質の排出位置P3の推定精度と、気流の向きの自由度を高めることができる。
【0067】
また、変形例では、検出ユニット20は、送風ユニット40の近傍に設置される。
【0068】
このような空間浄化システム10は、検出ユニット20と送風ユニット40とを同じ位置とみなして、感染性物質の排出位置P3から浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させるための送風ユニット40の風向きを算出することができる。つまり、風向きの算出アルゴリズムを簡素化することができ、風向きの算出における情報処理量が低減される。
【0069】
また、例えば、浄化ユニット50は、空間60内の空気を空間60外に排出することにより、空間60を浄化する。
【0070】
このような空間浄化システム10は、感染性物質を浄化ユニット50に誘導することで、浄化ユニット50による感染性物質の空間60外への排出を促進することができる。
【0071】
また、例えば、浄化ユニット50は、空間60内の空気を回収し、回収した空気をエアフィルタによって濾過して空間60に放出することにより、空間60を浄化する。
【0072】
このような空間浄化システム10は、感染性物質を浄化ユニット50に誘導することで、浄化ユニット50による感染性物質の捕集を促進することができる。
【0073】
また、例えば、浄化ユニット50は、空間60内の空気を回収し、回収した空気を除菌手段によって除菌して空間60に放出することにより、空間60を浄化する。除菌手段は、例えば、次亜塩素酸、アルコール、オゾン、カテキン成分、または、UV光などである。
【0074】
このような空間浄化システム10は、感染性物質を浄化ユニット50に誘導することで、浄化ユニット50による感染性物質の除菌(無効化)を促進することができる。
【0075】
また、空間浄化システム10などのコンピュータによって実行される空間浄化方法は、空間60において人が発する感染性物質の排出音を検出し、検出された排出音に基づいて推定される感染性物質の排出位置P3から、空間60を浄化する浄化ユニット50の設置位置P6に向かう気流を発生させる。
【0076】
このような空間浄化システム10は、感染性物質を浄化ユニット50に誘導することで、浄化ユニット50による空間60の浄化(感染性物質の排出、捕集、または無効化など)を促進することができる。つまり、空間浄化システム10は、効果的に空間60を浄化することで、感染リスクを低下させることができる。
【0077】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0078】
例えば、空間浄化システムが浄化する空間は、介護施設、病院、または、病院の待合室などに限定されない。空間浄化システムが浄化する空間は、空港であってもよい。また、空間浄化システムが浄化する空間は、建屋に限らず、鉄道または飛行機など移動体内の空間であってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。上記実施の形態の動作例及び変形例は、任意に組み合わされてよい。
【0080】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0081】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0082】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0083】
例えば、本発明は、空間浄化システムなどのコンピュータによって実行される空間浄化方法として実現されてもよいし、空間浄化方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、空間浄化システムは、複数の装置によって実現されたが。単一の装置として実現されてもよい。空間浄化システムが複数の装置によって実現される場合、上記実施の形態で説明された空間浄化システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
【0085】
また、空間浄化システムは、クライアントサーバシステムとして実現されてもよい。例えば、制御ユニットがサーバ装置として実現され、検出ユニット、送風ユニット、及び、浄化ユニットがクライアント装置として実現されてもよい。
【0086】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
10 空間浄化システム
20 検出ユニット
30 制御ユニット
40 送風ユニット
50 浄化ユニット
60 空間