(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B62B 1/26 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
B62B1/26 Z
(21)【出願番号】P 2022143415
(22)【出願日】2022-09-09
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
(72)【発明者】
【氏名】浜野 明大
(72)【発明者】
【氏名】中尾 祥太
(72)【発明者】
【氏名】千葉 直樹
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209535169(CN,U)
【文献】特開2019-128034(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1951145(KR,B1)
【文献】中国実用新案第215851359(CN,U)
【文献】特開2019-207092(JP,A)
【文献】特許第7146199(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する搬送装置であって、
前記設置対象物において互いに平行な2つの側面に取り付けられ、前記設置対象物を支持する支持部材と、
前記設置対象物を保持した状態で移動可能な台車と、
を備え、
前記支持部材は、前記2つの側面の外側に向けて突出する軸部を有し、
前記台車は、
互いに対向する状態で立設する一対の支柱部と、
前記一対の支柱部のそれぞれに設けられ、前記支持部材
の前記軸部に係合して前記設置対象物を保持する保持部と、
前記保持部を前記支柱部に沿って上下方向に昇降させる昇降駆動部と、
を備え、
前記保持部は、前記支持部材
の前記軸部を回転可能に
軸支する軸受部を有し、
前記軸受部は、上部を切り欠いたU字状の切欠部によって形成され、前記支持部材の前記軸部が前記切欠部の上から差し込まれることによって前記軸部を軸支し、前記軸部を回転させることにより、前記設置対象物を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
建築物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する搬送装置であって、
台車と、
前記台車の上面において、前記設置対象物を内側に配置可能な間隔を隔てて互いに対向する状態で立設する一対の支柱部と、
前記一対の支柱部のそれぞれに設けられ、前記一対の支柱部の間に前記設置対象物が配置された状態で前記設置対象物に設けられた支持部材に係合して前記設置対象物を保持する保持部と、
前記保持部を前記支柱部に沿って上下方向に昇降させる昇降駆動部と、
を備え、
前記支持部材は、前記設置対象物の外側に向けて突出する軸部を有し、
前記保持部は、前記支持部材
の前記軸部を回転可能に
軸支する軸受部を有し、
前記軸受部は、上部を切り欠いたU字状の切欠部によって形成され、前記支持部材の前記軸部が前記切欠部の上から差し込まれることによって前記軸部を軸支し、前記軸部を回転させることにより、前記設置対象物を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
建築物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する搬送装置であって、
台車と、
前記台車の上面において、前記設置対象物を内側に配置可能な間隔を隔てて互いに対向する状態で立設する一対の支柱部と、
前記一対の支柱部のそれぞれに設けられ、前記一対の支柱部の間に前記設置対象物が配置された状態で前記設置対象物に設けられた支持部材に係合して前記設置対象物を保持する保持部と、
前記保持部を前記支柱部に沿って上下方向に昇降させる昇降駆動部と、
を備え、
前記保持部は、前記支持部材を回転可能に保持
するフックを有し、前記フックが前記設置対象物を持ち上げることにより、前記設置対象物を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であることを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機や各種配管などの設置対象物を建築中の建物の設置現場に搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、上階床スラブの下面側の下フロアの天井空間には、例えば特許文献1に開示されるような空気調和機が設置される。この空気調和機は、空気調和機本体の前後方向に吹出チャンバーと吸気チャンバーとが組み付けられた構成である。そして空気調和機本体の前後方向に吹出チャンバーと吸気チャンバーとが組み付けられた状態の空気調和機が、天井空間に吊り下げられた状態に設置される。
【0003】
従来、上記のような空気調和機を設置する作業において、空気調和機本体に対して吹出チャンバーや吸気チャンバーを組み付ける作業は、空気調和機の設置現場で行われるのが一般的であった。しかし、チャンバーを組み付ける作業は、煩雑であり、熟練度を要する。そのため、設置現場における作業効率を低下させる要因となっている。例えば、新規に普請される建築現場では、各フロアに空気調和機を設置するための工期が予め定められており、空気調和機本体にチャンバーを組み付ける作業に要する時間が長くなると、予定された工期で作業を終えることが難しくなる。また、近年は、建築現場における労働者の確保が難しい傾向にあるため、設置現場における作業を軽減することが望まれている。
【0004】
そこで、従来は設置現場で行われていたチャンバーの組み付け作業を予め工場で行い、チャンバーが組み付けられた空気調和機を工場から設置現場へ搬送することが提案されている。例えば特許文献2には、工場において、空気調和機本体の前後方向に吹出チャンバーと吸気チャンバーとを組み付け、更に空気調和機本体とチャンバーとを一体的に保持するフレームを組み付けた空気調和機を作成し、工場から設置現場へ搬送することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6709485号公報
【文献】特開2021-76367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、空気調和機本体の前後方向に吹出チャンバーと吸気チャンバーとが組み付けられると、空気調和機の平面サイズが大きくなる。一方、建築現場に設置される資材搬入用の仮設エレベータには、その幅が1メートル程度しかない狭いタイプのものがある。また、各フロアの通路の中にも、通路幅が1メートル程度しかない狭い通路が存在することもある。そのため、工場で空気調和機本体にチャンバーを組み付けてしまうと、上記のような狭小箇所を如何にして搬送するかが課題となる。
【0007】
この課題に対し、特許文献2では、前後方向にチャンバーが組み付けられた空気調和機を、水平姿勢ではなく、左右の側面を上下に向けた縦置き姿勢で台車に載せることが提案されている。空気調和機を縦置き姿勢とすることにより、空気調和機が占有する平面サイズを小さくすることが可能である。それ故、上記のような狭小箇所であっても空気調和機を搬送することができるようになる。
【0008】
一方、空気調和機を工場から建築現場へ搬送する際に、空気調和機を縦置き姿勢で輸送車両に積載すると、搬送時の振動によって内部の冷媒配管や熱交換器等を破損してしまう可能性がある。これを防止するためには、工場から建築現場へ搬送する際に、空気調和機を水平姿勢のままで輸送車両に積載することが望まれる。
【0009】
したがって、特許文献2のような台車を用いて建築現場の狭小箇所を搬送しようとすると、水平姿勢で搬入される空気調和機を建築現場において台車に載せ替える作業を行わなければならない。この場合、空気調和機を台車に載せ替える作業には、少なくとも水平姿勢の空気調和機の平面サイズと台車の平面サイズとを合わせた作業スペースが必要となる。しかし、建築現場によっては、輸送車両の積み荷を仮置きしておくスペースの他に十分な作業スペースを確保することが困難なことがある。そのような場合、建築現場において、輸送車両から降ろされる水平姿勢の空気調和機を縦置き姿勢に変換して台車に載せ替える作業を行うことは極めて難しいという問題がある。
【0010】
また、上述した問題は、空気調和機に限られるものではなく、冷媒配管や鋼管などの各種配管、大きさが一定サイズを超えるもの、或いは、作業者が手で持ち上げることができない重量物など、建築中の建物内に設置される設置対象物の全般について同様に起こり得る問題である。
【0011】
そこで本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、上述した載せ替え作業を不要とし、建築中の建物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する際に好適に用いることができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、建築物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する搬送装置であって、前記設置対象物において互いに平行な2つの側面に取り付けられ、前記設置対象物を支持する支持部材と、前記設置対象物を保持した状態で移動可能な台車と、を備え、前記支持部材は、前記2つの側面の外側に向けて突出する軸部を有し、前記台車は、互いに対向する状態で立設する一対の支柱部と、前記一対の支柱部のそれぞれに設けられ、前記支持部材の前記軸部に係合して前記設置対象物を保持する保持部と、前記保持部を前記支柱部に沿って上下方向に昇降させる昇降駆動部と、を備え、前記保持部は、前記支持部材の前記軸部を回転可能に軸支する軸受部を有し、前記軸受部は、上部を切り欠いたU字状の切欠部によって形成され、前記支持部材の前記軸部が前記切欠部の上から差し込まれることによって前記軸部を軸支し、前記軸部を回転させることにより、前記設置対象物を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であることを特徴とする構成である。
【0013】
第2に、本発明は、建築物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する搬送装置であって、台車と、前記台車の上面において、前記設置対象物を内側に配置可能な間隔を隔てて互いに対向する状態で立設する一対の支柱部と、前記一対の支柱部のそれぞれに設けられ、前記一対の支柱部の間に前記設置対象物が配置された状態で前記設置対象物に設けられた支持部材に係合して前記設置対象物を保持する保持部と、前記保持部を前記支柱部に沿って上下方向に昇降させる昇降駆動部と、を備え、前記支持部材は、前記設置対象物の外側に向けて突出する軸部を有し、前記保持部は、前記支持部材の前記軸部を回転可能に軸支する軸受部を有し、前記軸受部は、上部を切り欠いたU字状の切欠部によって形成され、前記支持部材の前記軸部が前記切欠部の上から差し込まれることによって前記軸部を軸支し、前記軸部を回転させることにより、前記設置対象物を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であることを特徴とする構成である。
第3に、本発明は、建築物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する搬送装置であって、台車と、前記台車の上面において、前記設置対象物を内側に配置可能な間隔を隔てて互いに対向する状態で立設する一対の支柱部と、前記一対の支柱部のそれぞれに設けられ、前記一対の支柱部の間に前記設置対象物が配置された状態で前記設置対象物に設けられた支持部材に係合して前記設置対象物を保持する保持部と、前記保持部を前記支柱部に沿って上下方向に昇降させる昇降駆動部と、を備え、前記保持部は、前記支持部材を回転可能に保持するフックを有し、前記フックが前記設置対象物を持ち上げることにより、前記設置対象物を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による搬送装置は、設置対象物を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能である。そのため、搬送装置は、設置対象物を水平姿勢と起立姿勢との間で適宜姿勢変化させつつ、設置対象物を搬送することが可能であり、従来のような載せ替え作業が不要である。特に、搬送装置は、設置対象物の長手方向を上下に向けた起立姿勢とした状態で設置対象物を搬送することができるため、設置対象物を搬送しながら狭小箇所を通過させることが可能であり、搬送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】空気調和機を搬送する搬送装置を示す斜視図である。
【
図5】支柱部に設けられる保持部を拡大して示す図である。
【
図6】空気調和機の左右両側面に支持部材を取り付けた状態を示す図である。
【
図7】搬送装置に空気調和機を積載する例を示す図である。
【
図8】保持部と支持部材との係合状態を例示する図である。
【
図9】空気調和機が水平姿勢で搬送装置に積載された状態を示す図である。
【
図10】空気調和機を起立姿勢とした状態を示す図である。
【
図11】搬送装置から空気調和機を降ろす作業工程の例を示す図である。
【
図12】配管ユニットの一構成例を示す斜視図である。
【
図15】架台に設置される配管の構成例を示す図である。
【
図16】配管ユニットの施工方法の概念を示す図である。
【
図17】配管ユニットに第1施工具及び第2施工具を取り付けた例を示す図である。
【
図18】配管ユニットを施工する際に使用される作業用台車の一例を示す図である。
【
図19】設置対象フロアに配管ユニットを搬入する例を示す図である。
【
図20】配管ユニットに作業用台車を組み付ける例を示す図である。
【
図21】配管ユニットを持ち上げた状態を示す図である。
【
図22】配管ユニットを横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる例を示す図である。
【
図23】配管ユニットを床スラブの開口の上方位置へ移動させる例を示す図である。
【
図25】配管ユニットを床スラブの開口の上方位置へ移動させた例を示す図である。
【
図26】第1施工具が配管ユニットを支持している状態を示す図である。
【
図27】配管ユニットに第2施工具を取り付けた状態を例示する図である。
【
図28】配管ユニットから第1施工具を取り外した状態を例示する図である。
【
図29】配管ユニットを床スラブの開口に設置した状態を例示する図である。
【
図30】下階フロアの床スラブに配管ユニットを設置した後、上階フロアの床スラブに配管ユニットを設置した状態を示す図である。
【
図31】配管ユニットの一構成例を示す斜視図である。
【
図35】第1保持部材をレール部の上部へ移動させた状態を示す図である。
【
図36】第2保持部材を第1保持部材の下方位置へ移動させた状態を示す図である。
【
図37】配管ユニットを施工する際に用いられる作業用台車を示す図である。
【
図38】配管ユニットを施工する際に用いられる作業用台車を示す図である。
【
図39】横倒し姿勢の配管ユニットに作業用台車を装着する前の状態を示す図である。
【
図40】作業用台車を配管ユニットに装着した状態及び配管ユニットを持ち上げた状態を示す図である。
【
図41】配管ユニットを回転させて起立姿勢とした状態を示す図である。
【
図42】配管ユニットを持ち上げて設置箇所へ移動させる状態を示す図である。
【
図43】揚重手段のフックを第1保持部材に取り付けた状態を示す図である。
【
図44】揚重手段が第1保持部材をレール部の上部へ持ち上げた状態を示す図である。
【
図45】基台に歩廊床を取り付けた状態を示す図である。
【
図46】歩廊床を取り付けた配管ユニットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0017】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、建築中の建物の内部に設置される設置対象物9として天井吊り下げ型の空気調和機50を例示し、空気調和機50を設置現場へ搬送するために使用される搬送装置1について説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態における搬送装置1を示す斜視図である。
図1に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする座標系であり、本実施形態で参照する他の図においても共通する座標系である。この搬送装置1は、設置対象物9である天井吊り下げ型の空気調和機50を設置現場へ搬送するためのものである。また、搬送装置1は、複数の空気調和機50A,50Bを積載して搬送することが可能な構成である。尚、本実施形態では、
図1に示すX軸に平行な方向を空気調和機50A,50Bの左右方向とし、Y軸に平行な方向を空気調和機50A,50Bの前後方向と定義する。
【0019】
図2は、搬送装置1によって搬送される空気調和機50(50A,50B)の一構成例を示す図である。空気調和機50は、空気調和機本体60と、吹出チャンバー70と、吸気チャンバー80とを備えている。すなわち、空気調和機50は、空気調和機本体60の前後方向(Y方向)に吹出チャンバー70と吸気チャンバー80とが組み付けられることによって構成される。
【0020】
空気調和機本体60の前面側には、吹出チャンバー70を装着するための装着部61が設けられている。例えば、装着部61は、空気調和機本体60の前面側に形成される吹出口の周縁部を前方側に向かってスリーブ状に突出させた形態を有している。一方、吹出チャンバー70の空気調和機本体60と対向する面(後面)には、同様の装着部が設けられている。そして吹出チャンバー70の装着部を空気調和機本体60の装着部61に嵌め込み、装着部61の周囲に多数のビスを打ち付けることにより、吹出チャンバー70が空気調和機本体60の前方側に組み付けられる。この吹出チャンバー70には、温度調整された空気を室内に導くダクトを接続するための複数のダクト接続部71が設けられている。
【0021】
また、空気調和機本体60の後面側には、吸気チャンバー80を装着するための装着部62が設けられている。例えば、装着部62は、装着部61と同様、空気調和機本体60の後面側に形成される吸気口の周縁部を後方側に向かってスリーブ状に突出させた形態を有している。一方、吸気チャンバー80の空気調和機本体60と対向する面(前面)には、同様の装着部が設けられている。そして吸気チャンバー80の装着部を空気調和機本体60の装着部62に嵌め込み、装着部62の周囲に多数のビスを打ち付けることにより、吸気チャンバー80が空気調和機本体60の後方側に組み付けられる。
【0022】
また、空気調和機本体60は、右側面63及び左側面64のそれぞれに吊りボルトなどのボルト部材を接続するための接続部65を有している。例えば、左側面64には、前後方向(Y方向)に所定間隔離れた2箇所の位置に2つの接続部65,65が設けられている。また、図示を省略しているが、右側面63においても、左側面64と同じ2箇所の位置に2つの接続部65,65が設けられている。また、空気調和機本体60は、左側面64に、冷媒配管やドレン配管などを接続するための管継手部66が設けられている。
【0023】
そして空気調和機本体60は、上述のように前後方向に吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80が組み付けられることにより、吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80が一体となった空気調和機50を構成する。空気調和機本体60に吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80を組み付ける作業は煩雑であり、一定の熟練度を要する。そのため、本実施形態では、空気調和機本体60に吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80を組み付けて空気調和機50を作成する作業を工場で行う。尚、空気調和機50は、空気調和機本体60の後面側に吸気チャンバー80が組み付けられないこともある。そして工場において作成した空気調和機50を、
図1に示すように搬送装置1に積載し、設置現場へと搬送する。以下、搬送装置1について詳しく説明する。
【0024】
図3は、搬送装置1の構成例を示す図である。
図3に示すように、搬送装置1は、支持部材2と、台車3とを備えている。この搬送装置1は、2つの空気調和機50A,50Bの左右両側面63,64を支持部材2で支持し、台車3がその支持部材2を保持するように構成される。
【0025】
図3に示すように、支持部材2は、空気調和機50の右側面63及び左側面64のそれぞれを支持する2つの支持部材2a,2bを備えている。すなわち、支持部材2aが空気調和機50の左側面64を支持し、支持部材2bが空気調和機50の右側面63を支持する。これら2つの支持部材2a,2bは、台車3の左右方向(X方向)における中心線Mを基準として左右対称な構造を有している。また、これらの支持部材2a,2bは、2つの空気調和機50A,50Bの左右両側面63,64を一括支持できるように構成される。
【0026】
図4は、支持部材2aを拡大して示す図である。支持部材2aは、上下方向に配置される2つの空気調和機50A,50Bの左側面64に対向するように配置され、それら2つの空気調和機50A,50Bの左側面64を一括支持する。支持部材2aは、所定間隔離れた位置で互いに平行に配置される支持部11,11と、それら支持部11,11を相互に連結する連結部12とを有する概略H型の構造体として形成される。
【0027】
支持部11,11は、形鋼又は鋼管によって形成され、その両端に、空気調和機50A,50Bに取り付けられる取付部13a,13bを有している。例えば、取付部13a,13bは、支持部11の長手方向に対して直交する方向に延設された平板部と、その平板部に設けられるボルト部材を挿通可能な挿通部とによって構成される。尚、
図4では、取付部13a,13bに設けられる挿通部をU字状の切り欠きとして設けた例を示している。また、互いに平行な2つの支持部11,11の一端側に設けられる取付部13a,13aの間隔は、空気調和機50Aの左側面64に設けられている接続部65,65の間隔に一致する。更に、2つの支持部11,11の他端側に設けられる取付部13b,13bの間隔は、空気調和機50Bの左側面64に設けられている接続部65,65の間隔に一致する。そして取付部13a,13aは、上側に配置される空気調和機50Aの接続部65,65に接合した状態に配置され、ボルトとナットが締結されることによって接続部65,65に固定される。また、取付部13b,13bは、下側に配置される空気調和機50Bの接続部65,65に接合した状態に配置され、ボルトとナットが締結されることによって接続部65,65に固定される。
【0028】
連結部12は、形鋼又は鋼管によって形成され、2つの支持部11,11間を横断するように配置され、その両端が2つの支持部11,11に接続されている。また、連結部12は、空気調和機50A,50Bに対向する面の反対側の面に、回転軸14が突出した状態に設けられている。この回転軸14は、所定の外径を有する軸部14aと、軸部14aよりも大径の頭部14bとを有している。また、連結部12は、回転軸14から後方側(+Y方向側)に向かって所定間隔離れた位置に、第1の回動規制部16が設けられている。例えば、第1の回動規制部16は、後述する姿勢保持部34の棒状体37と嵌合する孔16aによって構成される。更に、連結部12は、回転軸14から前方側(-Y方向側)に向かって所定間隔離れた位置に支持部材2aの回転を規制するストッパー18が設けられている。
【0029】
また、連結部12には、金属板15が取り付けられており、その金属板15の先端には第2の回動規制部17が設けられている。例えば、第2の回動規制部17は、第1の回動規制部16と同様に、後述する姿勢保持部34の棒状体37と嵌合する孔17aによって構成される。そして、第1の回動規制部16及び第2の回動規制部17は、回転軸14を中心とする同心円上に設けられ、互いに約90度の角度を成す位置に設けられている。尚、ここでは、支持部材2aについて説明したが、支持部材2bについてもこれと同様の構成である。
【0030】
図3に戻り、台車3は、基台20と、その基台20から互いに対向する状態で立設する一対の支柱部24a,24bとを備えている。基台20は、下面に車輪22が取り付けられた一対の移動基台21,21と、それら一対の移動基台21,21を所定間隔離れた位置で互いに平行な状態に連結する一対の連結基台23,23とを備えている。基台20は、一対の移動基台21,21と、一対の連結基台23,23とが組み付けられることにより、平面視略矩形状に形成されている。また、基台20に設けられる2つの連結基台23,23のうち、1つの連結基台23は、基台20から取り外し可能である。1つの連結基台23を台車3から取り外すと、基台20は、平面視略コ字状の形態となる。尚、連結基台23,23の長さは空気調和機50の左右方向の長さよりも若干大きい長さである。
【0031】
支柱部24a,24bは、移動基台21,21の長手方向中央の位置に設けられている。これら一対の支柱部24a,24bの間の空間には、空気調和機50を配置可能である。支柱部24a,24bの内部には、滑車によって支持された金属製のチェーン25が配置されている。このチェーン25は、昇降部材26を支柱部24a,24bに沿って上下方向に昇降可能に支持している。また、チェーン25は、回転操作可能な操作ハンドル27によって回転する巻取部(図示省略)に係止した状態に接続されている。そのため、例えば操作ハンドル27を所定方向に回転させることにより、巻取部がチェーン25を所定方向に巻き取り、昇降部材26を支柱部24a,24bに沿って上昇させることができる。また、操作ハンドル27を所定方向と反対方向に回転させることにより、巻取部がチェーン25を反対方向に巻き取り、昇降部材26を支柱部24a,24bに沿って下降させることができる。つまり、操作ハンドル27及びチェーン25は、昇降部材26を上下方向に昇降動作させる昇降駆動部として設けられている。尚、本実施形態の昇降駆動部は、手動式の駆動部として構成される例を示しているが、これに限られるものではなく、電動式の駆動部として構成されるものであっても構わない。
【0032】
支柱部24a,24bは、基台20上において昇降部材26,26を互いに対向させた状態に配置されている。そして支柱部24aの昇降部材26には、支持部材2aに係合して空気調和機50A,50Bを保持する保持部30aが設けられている。また、支柱部24bの昇降部材26には、支持部材2bに係合して空気調和機50A,50Bを保持する保持部30bが設けられている。これら2つの保持部30a,30bは、台車3の左右方向(X方向)における中心線Mを基準として左右対称な構造を有している。
【0033】
図5は、支柱部24aに設けられる保持部30aを拡大して示す図である。
図5(a)に示すように、保持部30aは、昇降部材26の上部に固定され、昇降部材26と一体的に昇降移動する。保持部30aは、台車3の前後方向(Y方向)に沿って立設した係止板32を有している。係止板32の中央には、支持部材2aの回転軸14を保持する軸受け部31が設けられる。例えば、軸受け部31は、係止板32をU字状に切り欠いた切欠部として形成される。この切欠部の幅は、回転軸14の軸部14aの外径よりも大きく、頭部14bの外径よりも小さい。そのため、軸受け部31は、回転軸14の軸部14aを保持することが可能である。
【0034】
また、係止板32は、軸受け部31から空気調和機50の後方側(+Y方向側)に向かって所定間隔離れた位置に、姿勢保持部34が設けられている。姿勢保持部34は、係止板32と平行なレバー保持板36を有している。そして姿勢保持部34は、係止板32に形成した孔35と、レバー保持板36に形成した孔とに挿通される棒状体37を有している。この棒状体37にはフランジ部38が設けられ、フランジ部38とレバー保持板36との間にはコイルバネ39が配置されている。そしてレバー保持板36から外側に突出する棒状体37の基端部には操作レバー40が装着されている。このように構成される姿勢保持部34は、コイルバネ39の付勢力によって棒状体37の先端を係止板32の孔35から突出させた状態に配置される。この姿勢保持部34は、
図5(b)に示すように、操作レバー40がコイルバネ39の付勢力に抗して矢印F1方向に引っ張られると、棒状体37の先端を係止板32とレバー保持板36との間に引き込んだ状態となる。このような構成を有する姿勢保持部34は、棒状体37の先端を支持部材2aにおける第1の回動規制部16又は第2の回動規制部17に係合させることにより、支持部材2aが回転軸14を中心に回転することを規制し、空気調和機50A,50Bの姿勢を保持する。
【0035】
次に、搬送装置1に空気調和機50A,50Bを積載する例について説明する。搬送装置1に空気調和機50A,50Bを積載する際には、まず、空気調和機50A,50Bを上下方向に配置し、空気調和機50A,50Bの左右両側面63,64に支持部材2を取り付ける。
図6は、空気調和機50A,50Bの左右両側面63,64に支持部材2を取り付けた状態を示す図である。工場において、空気調和機本体60に吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80が組み付けられることによって作成された空気調和機50A,50Bは、フォークリフトなどの昇降機を用いて上下方向に配置される。
図6では、空気調和機50Aが昇降機によって持ち上げられ、床面に載置されている空気調和機50Bの上方に配置された例を示している。その状態で、2つの空気調和機50A,50Bの左右両側面63,64に、支持部材2a,2bが取り付けられる。すなわち、支持部材2a,2bの支持部11,11の一端側に設けられている取付部13a,13aを空気調和機50Aの接続部65,65に接合させ、ボルトとナットを用いて締結し、他端側に設けられている取付部13b,13bを空気調和機50Bの接続部65,65に接合させ、ボルトとナットを用いて締結する。2つの空気調和機50A,50Bの左右両側面63,64に支持部材2a,2bが取り付けられると、2つの空気調和機50A,50Bは、所定間隔を隔てて上下方向に配置された状態に固定される。すなわち、2つの空気調和機50A,50Bは、支持部材2a,2bによって一体的に支持された状態となる。そして空気調和機50Aを持ち上げている昇降機を撤去することができる。
【0036】
次に、支持部材2a,2bによって一体的に支持された空気調和機50A,50Bを台車3に積載する。
図7は、台車3に空気調和機50A,50Bを積載する例を示す図である。
図7(a)に示すように、支持部材2a,2bによって一体化された空気調和機50A,50Bをフォークリフトなどの昇降機を用いて持ち上げ、台車3の上方位置に配置する。このとき、支柱部24a,24bの保持部30a,30bは同じ高さ位置となるように、予め支柱部24a,24bの操作ハンドル27を操作して高さ位置を調整しておく。そして
図7(a)において矢印で示すように、空気調和機50A,50Bを、一対の支柱部24a,24bの間に下降させていき、支柱部24a,24bに設けられた保持部30a,30bを支持部材2a,2bに係合させる。このとき、支持部材2a,2bの回転軸14の直下に、保持部30a,30bの軸受け部31が位置するように調整を行い、空気調和機50A,50Bを下降させる。そして、支持部材2a,2bの回転軸14を保持部30a,30bの軸受け部31に差し込むことによって保持部30a,30bと支持部材2a,2bとを互いに係合させる。
【0037】
図8は、保持部30aと支持部材2aとの係合状態を例示する図である。
図8に示すように、支持部材2aの回転軸14を保持部30aに設けられているU字状の軸受け部31に差し込むことによって、軸受け部31が回転軸14の軸部14aを保持した状態となる。このとき、軸受け部31は、回転軸14の頭部14bと連結部12との間に差し込まれる。そのため、回転軸14は、保持部30aから離脱しない状態で保持部30aによって保持される。
【0038】
また、回転軸14を軸受け部31に差し込む際には、
図8に示すように操作レバー40を矢印F1方向に引き込んでおく。これにより、姿勢保持部34に設けられている棒状体37の先端が矢印F1方向に引き込まれるため、棒状体37の先端が支持部材2aに当たることなく、スムーズに回転軸14を軸受け部31に差し込むことができる。そして回転軸14を軸受け部31に差し込むことができると、操作レバー40を矢印F1方向に引き込む操作を止める。これにより、棒状体37は、コイルバネ39の付勢力によって係止板32から支持部材2aに向かって突出する。そして、支持部材2aの連結部12に設けられている第1の回動規制部16の孔16aの位置が棒状体37の先端の位置に下降すると、棒状体37の先端が孔16aに嵌入する。これにより、支持部材2aは、回転軸14と第1の回動規制部16との2箇所の位置が保持部30aと係止した状態となり、回転軸14を中心に回動することが規制される。また、このとき、ストッパー18も係止板32に接合した状態となり、支持部材2aの姿勢が保持される。尚、
図8では、保持部30aと支持部材2aとの関係を示しているが、保持部30bと支持部材2bとの関係もこれと同様である。
【0039】
図9は、支持部材2a,2bが保持部30a,30bによって支持され、空気調和機50A,50Bが搬送装置1に積載された状態(水平姿勢)を示す図である。上記のようにして支持部材2a,2bが保持部30a,30bによって支持された状態になると、
図9に示すように、空気調和機50A,50Bは、水平姿勢で支柱部24a,24bの所定高さ位置に保持される。このとき、姿勢保持部34の棒状体37が第1の回動規制部16の孔16aに係合しているため、支持部材2a,2bは回転軸14周りに回転しないようになっており、空気調和機50A,50Bの水平姿勢が保持される。
【0040】
そして空気調和機50A,50Bを水平姿勢に保持した状態で搬送装置1を移動させるときには、支柱部24a,24bに設けられている操作ハンドル27を回転させることにより、空気調和機50A,50Bを下降させる。つまり、
図1に示すように、空気調和機50A,50Bを台車3に近接する位置まで下降させることにより、搬送装置1の重心位置を下げる。これにより、搬送装置1は、空気調和機50A,50Bを安定して保持できるようになる。また、搬送装置1の重心位置を下げることにより、車輪22を転がして搬送装置1を移動させる際、空気調和機50A,50Bの振動を抑制することもできる。このように空気調和機50A,50Bを搬送装置1に積載する作業は、工場において行われる。
【0041】
そして
図1に示すように、水平姿勢の空気調和機50A,50Bを保持した状態の搬送装置1を輸送車両に積載し、工場から設置現場のある建築物へ搬送する。このとき、搬送装置1は、空気調和機50A,50Bを水平姿勢で保持しているため、搬送時に比較的大きな振動が作用したとしても、空気調和機50A,50Bを破損させることがない。また、空気調和機50A,50Bを保持する搬送装置1の重心位置が低いため、輸送車両に積載して搬送しても搬送装置1が横転することはない。したがって、搬送装置1は、2つの空気調和機50A,50Bを、同時に、且つ、安全に、工場から接地現場のある建築物へ搬送することができる。
【0042】
輸送車両が設置現場のある建築物へ到着すると、空気調和機50A,50Bを水平姿勢で保持した状態の搬送装置1を輸送車両から降ろす。そして搬送装置1の台車3に設けられている車輪22を接地させ、台車3を移動させることによって、搬送装置1を設置現場へと搬送する。
【0043】
建築現場において、空気調和機50A,50Bを保持した状態の搬送装置1を設置現場へ搬送する際には、搬送装置1を、資材搬入用の仮設エレベータに載せて設置現場があるフロアへ搬送することがある。また、搬送装置1を、幅の狭い通路を通過させなければならないこともある。したがって、輸送車両から降ろした搬送装置1を設置現場へ搬送する際には、上記のような狭小箇所を正常に通過させる必要がある。
【0044】
本実施形態の搬送装置1は、保持部30a,30bが回転軸14を中心に支持部材2a,2bを回動可能に軸支している。そのため、搬送装置1は、保持部30a,30bに対して支持部材2a,2bを回動させることにより、空気調和機50A,50Bを水平姿勢から起立姿勢へと姿勢変化させることが可能である。そのような姿勢変化を行うためには、まず、
図1に示すように水平姿勢の空気調和機50A,50Bを台車3に近接する位置まで下降させた状態から持ち上げる。すなわち、支柱部24a,24bに設けられている操作ハンドル27を回転させることにより、空気調和機50A,50Bを、
図9に示すように所定の高さ位置まで持ち上げる。そして、操作レバー40を引き込む操作を行うことで、姿勢保持部34が第1の回動規制部16に係合している状態を解除する。これにより、空気調和機50A,50Bが水平姿勢で保持された状態が解除される。すると、支持部材2a,2bによって支持される空気調和機50A,50Bは、回転軸14を中心にして矢印R方向に回動可能となり、水平姿勢から起立姿勢へと姿勢変化する。
【0045】
図10は、空気調和機50A,50Bを起立姿勢とした状態を示す図である。
図10に示すように、空気調和機50A,50Bは、水平姿勢から回転軸14を中心に約90度回転することにより、吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80を上下方向に配置した起立姿勢となる。また、支持部材2a,2bが約90度回転することにより、金属板15に設けられている第2の回動規制部17が姿勢保持部34の位置へと回転する。その結果、姿勢保持部34の棒状体37の先端が第2の回動規制部17に設けられている孔17aに嵌入する。これにより、支持部材2a,2bは、回転軸14と第2の回動規制部17との2箇所の位置で保持部30a,30bと係合した状態となり、回転軸14を中心に回動することが規制される。つまり、搬送装置1は、空気調和機50A,50Bを起立姿勢とした状態で保持することができる。そして、搬送装置1は、空気調和機50A,50Bを起立姿勢で保持した状態で移動することができる。
【0046】
図10に示す起立姿勢は、吹出チャンバー70等が組み付けられる空気調和機本体60の前後の面を上下に向けた縦置き姿勢である。例えば、空気調和機本体60には、左右の側面を上下に向けた縦置き姿勢とすると、内部の冷媒配管や熱交換器等が破損してしまう機種が存在する。これに対し、本実施形態の搬送装置1は、空気調和機本体60の左右の側面を上下に向けるのではなく、空気調和機本体60の前後の面を上下に向けた起立姿勢とする。そのため、
図10に示す起立姿勢のままで搬送装置1を移動させたとしても、搬送時の振動によって空気調和機本体60の内部に設けられている冷媒配管や熱交換器等を破損してしまうことがない。それ故、
図10に示した状態で搬送装置1を移動させることにより、空気調和機50A,50Bに損傷を与えることなく、上述した狭小箇所を正常に通過させることが可能である。
【0047】
また、
図10に示す起立姿勢では、吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80が床面から浮いた状態に保持される。そのため、吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80のそれぞれに過度な荷重が加わることを抑制することができる。それ故、脆弱な吹出チャンバー70や吸気チャンバー80が変形して破損してしまうことを防止することができる。
【0048】
このように搬送装置1は、空気調和機50A,50Bを保持した状態で空気調和機50A,50Bを水平姿勢から起立姿勢に簡単に姿勢変化させ、仮設エレベータや通路などの狭小箇所を通過させることが可能である。そのため、狭小箇所を通過させる際に、空気調和機50A,50Bを搬送装置1から降ろす必要がなく、搬送効率に優れている。そして狭小箇所を通過した後、空気調和機50A,50Bを保持する姿勢を起立姿勢から再び水平姿勢に戻し、
図1に示すように重心位置を下げた状態で搬送装置1を移動させるようにしても良い。
【0049】
また、搬送装置1は、輸送車両が設置現場のある建築物へ到着し、輸送車両から降ろす際にも空気調和機50A,50Bを水平姿勢から起立姿勢に姿勢変化させることで輸送車両から降ろす作業を行い易くできるという利点もある。上述したように輸送車両によって搬送される搬送装置1は、空気調和機50A,50Bを水平姿勢で保持している。そのため、空気調和機50A,50Bを保持する搬送装置1の平面サイズが大きくなっており、フォークリフトを用いて搬送装置1を輸送車両から降ろそうとすると、フォークリフトによって搬送装置1を安定させた状態に支持することが難しい。そのような場合、搬送装置1による空気調和機50A,50Bの保持姿勢を水平姿勢から起立姿勢に変化させることにより、搬送装置1の平面サイズを小さくすることができるため、フォークリフトが搬送装置1を安定した状態で支持し、輸送車両から正常に降ろすことができるようになる。また、輸送車両にパワーゲート(登録商標)などの昇降装置が搭載されている場合にも、空気調和機50A,50Bを起立姿勢に変化させることにより、搬送装置1を昇降装置に載せることができるようになり、安全かつ効率的に搬送装置1を輸送車両から降ろすことができるという利点もある。したがって、搬送装置1を輸送車両から降ろす際にも、空気調和機50A,50Bの姿勢を水平姿勢から起立姿勢に変化させるようにしても良い。そして、空気調和機50A,50Bを起立姿勢にした状態で搬送装置1を輸送車両から降ろした後には、設置現場へ到着するまで空気調和機50A,50Bの姿勢を起立姿勢のままで搬送するようにしても良い。
【0050】
搬送装置1が設置現場に到着すると、搬送装置1から空気調和機50A,50Bを降ろす作業が行われる。ただし、建築現場において空気調和機50A,50Bを設置する各フロアには、フォークリフトなどの昇降機が存在しないことがある。その場合、搬送装置1とは別に、もう1つの台車5を用意することで空気調和機50A,50Bを搬送装置1から降ろすことができる。
【0051】
図11は、別の台車5を用いて搬送装置1から空気調和機50A,50Bを降ろす例を示す図である。まず、搬送装置1から空気調和機50A,50Bを降ろす際には、
図11(a)に示すように、空気調和機50A,50Bを水平姿勢とし、空気調和機50A,50Bを所定の高さ位置まで上昇させる。また、このとき、台車3から1つの連結基台23を取り外し、基台20を平面視略コ字状の形態とする。そして
図11(b)に示すように、台車5を、搬送装置1の支柱部24a,24bの間に挿入する。これにより、台車5は、空気調和機50Bの下方に位置する。そして支柱部24a,24bに設けられている操作ハンドル27,27を同時に回転させつつ、空気調和機50A,50Bを下降させていく。これにより、
図11(c)に示すように、台車5が空気調和機50Bの下面を支持した状態とすることができる。台車5が空気調和機50Bの下面を支持した状態になると、空気調和機50Bの左右両側面63,64の接続部65,65と、支持部材2a,2bの取付部13b,13bとを固定しているボルトとナットを外し、空気調和機50Bが支持部材2a,2bによって支持されている状態を解除する。その後、操作ハンドル27を回転させ、支持部材2a,2bを上昇させると、
図11(d)に示すように、空気調和機50Aのみが上昇し、空気調和機50Bが台車5に載置された状態で残る。そのため、
図11(e)に示すように、支柱部24a,24bの間に差し込まれた台車5を引き出せば、空気調和機50Bを取り出すことが可能であり、搬送装置1から空気調和機50Bを降ろすことができる。続いて、空気調和機50Aを搬送装置1から取り外す際には、上記と同様の作業を繰り返し行えば良い。
【0052】
その後、搬送装置1から取り外した空気調和機50A,50Bのそれぞれを上階床スラブの下面近傍位置まで持ち上げ、左右両側面63,64の接続部65,65に吊りボルトを接続固定することにより、空気調和機50A,50Bは、天井空間に吊り下げ足られた状態に設置される。以上で、空気調和機50A,50Bを設置作業が完了する。
【0053】
このように本実施形態の搬送装置1は、天井吊り下げ型の空気調和機50を設置現場に搬送する際に好適に用いることができる。特に、この搬送装置1は、空気調和機50の左右両側面63,64に取り付けられ、空気調和機50を支持する支持部材2a,2bと、支持部材2a,2bに係合して空気調和機50を保持する保持部30a,30bを有し、空気調和機50を保持した状態で移動可能な台車3とを備えている。そして、保持部30a,30bは、支持部材2a,2bを、空気調和機50の左右両側面63,64に直交する回転軸14を中心に回動可能に保持しており、空気調和機50を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能な構成である。このような構成によれば、搬送装置1は、空気調和機本体60に対して吹出チャンバー70及び吸気チャンバー80が組み付けられた空気調和機50を、水平姿勢と起立姿勢との間で適宜姿勢変化させることが可能である。そのため、建築現場の狭い仮設エレベータに載せて搬送することが必要な場合には、空気調和機50を起立姿勢に保持して搬送することができる。また、設置現場に至るまでに狭い通路を搬送することが必要な場合にも、空気調和機50を起立姿勢に保持して搬送することができる。
【0054】
また、空気調和機50の起立姿勢は、上述のように、空気調和機本体60の前後の面を上下に向けた姿勢であるため、起立姿勢のままで搬送装置1を移動させたとしても、搬送時の振動によって空気調和機本体60の内部に設けられている冷媒配管や熱交換器等を破損してしまうことがない。つまり、本実施形態の搬送装置1は、空気調和機50を破損することなく、工場から設置現場へ空気調和機50を適切に搬送することが可能である。したがって、空気調和機本体60に対して吹出チャンバー70や吸気チャンバー80を組み付ける作業を予め工場で行っておき、それによって作成された空気調和機50を適切に設置現場へ搬送することが可能であり、設置現場における作業負担を軽減することができるという利点がある。
【0055】
特に、本実施形態の搬送装置1は、工場において空気調和機50を水平姿勢で載せると、その後は設置現場に到着するまで空気調和機50を載せたままで空気調和機50を搬送することができる。それ故、工場から設置現場に至るまでの間に空気調和機50の載せ替え作業は必要でなく、搬送効率に優れている。
【0056】
尚、上記においては、主として工場から設置現場まで空気調和機50を搬送する際に搬送装置1を利用する場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、上述した搬送装置1は、建築現場のみにおいて使用されるものであっても構わない。すなわち、上述した搬送装置1を建築現場に準備しておき、工場から建築現場へ搬送されてきた空気調和機50を設置現場へ搬送する際に空気調和機50を搬送装置1に積載し、搬送装置1による空気調和機50の姿勢変化機能を利用しつつ設置現場へと搬送するようにしても構わない。
【0057】
また、上記においては、搬送装置1が2つの空気調和機50A,50Bを積載可能である構成例を説明したが、これに限られるものではない。すなわち、搬送装置1は、1つの空気調和機50のみを積載可能な構成を採用しても良いし、3つ以上の空気調和機50を積載可能な構成を採用しても構わない。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、建築中の建物の内部に設置される設置対象物9として、複数の配管を保持する配管ユニット101を例示し、配管ユニット101を設置現場へ搬送するための使用される搬送装置1について説明する。また、本実施形態の搬送装置1は、配管ユニット101を設置対象箇所へ設置する際にも利用し得るものである。
【0059】
図12は、本実施形態において搬送装置1による搬送対象となる配管ユニット101を示す斜視図である。この配管ユニット101は、建築物の複数フロアに渡って縦方向に配置される複数の配管(竪配管)を集約したユニットであり、複数の配管をフロアごとに設置可能としたものである。例えば、この配管ユニット101は、新築工事中の建築物において下階フロアから上階フロアに向かって1フロアずつ順に設置可能とされている。
【0060】
この配管ユニット101は、山形鋼や溝形鋼などの複数の鋼材を溶接等によって直方体状に組み付けて形成される架台102と、その架台102に取り付けられ、架台102に保持される複数の配管110とを備えている。架台102は、上部に設けられる箱形のベース部103と、ベース部103の下面四隅から下方に延びる支持部104とを備えた耐震架台として構成される。複数の配管110は、架台102の内側において所定間隔を隔てた状態で縦方向(鉛直方向)に配置され、ベース部103の上面及び下面を貫通するように設置される。これら複数の配管110は、上部がベース部103に固定され、下部が支持部104に固定される。
【0061】
図13は、架台102を示す斜視図である。ベース部103は、その上面側に複数の孔127が形成された上板125を有する。また、ベース部103は、下面側にも、上板125と同じ位置に複数の孔127が形成された下板126を有している。複数の配管110は、上板125と下板126に形成された複数の孔127に挿通され、ベース部103の内側を上下に貫通するように設置される。
【0062】
また、ベース部103の周囲側面には、水平方向に突出するフランジ部121が形成されている。このフランジ部121は、複数フロアのうちの設置対象フロアにおいて躯体(床スラブなど)に形成される開口190(
図16参照)の周縁部よりも更に外側に突出するように形成される。また、フランジ部121は、ベース部103に対して一体形成されており、配管ユニット101の全重量を支持できるように十分な強度を有している。
【0063】
ベース部103の上板125の左右両側には、例えば溝形鋼で形成された一対の支持壁105,105が所定間隔を隔てて立設している。これら一対の支持壁105,105の上端には、上板125の上方位置を左右方向に横断する複数の取付金具108が取り付けられる。取付金具108は、配管110の上部をベース部103に固定するための金具であり、例えば断面L形のアングル材によって構成される。複数の取付金具108のそれぞれには、U字状の配管バンド109(
図12参照)を取り付けるための複数の孔108aが形成されている。上板125の孔127から上方に突出する配管110の上部を配管バンド109で拘束し、配管バンド109の両端をボルトとナットで孔108aに固定することにより、配管110の上部がベース部103に固定される。
【0064】
支持部104は、ベース部103の下面四隅から下方に延びる複数の支柱106を有している。複数の支柱106は、例えば、架台102の前方左右両側に配置される支柱106a,106bと、架台102の後方左右両側に配置される支柱106b,106cとを有する。また、支持部104は、架台102の左右両側の下部において前後方向に延びる連結部107,107を有している。これら連結部107,107は、架台102の左側前後2箇所に配置される支柱106a,106cの下端を相互に連結すると共に、架台102の右側前後2箇所に配置される支柱106b,106dの下端を相互に連結する。つまり、連結部107,107は、支持部104の下端において互いに平行な状態に配置される。そして連結部107,107の上面側には、ベース部103の下方位置を左右方向に横断する複数の取付金具108が取り付けられる。これら複数の取付金具108は、ベース部103に取り付けられる上述した取付金具108と同様であり、配管110の下部を支持部104に固定するための金具である。すなわち、一対の連結部107,107間を横断する複数の取付金具108のそれぞれには、U字状の配管バンド109(
図12参照)を取り付けるための複数の孔108aが形成されている。そしてベース部103から下方に延びる配管110の下部を配管バンド109で拘束し、配管バンド109の両端をボルトとナットで孔108aに固定することにより、配管110の下部が支持部104に固定される。
【0065】
また、支持部104には、支柱106の所定高さ位置に、後述する第1施工具130を取り付けるための取付部122が設けられている。例えば、取付部122は、ボルトとナットから成る締結部材を取り付け可能な孔として形成される。
【0066】
更に、ベース部103に設けられた一対の支持壁105には、前後方向の両端位置に、後述する第2施工具140を取り付けるための取付部123が設けられている。例えば、取付部123は、ボルトとナットから成る締結部材を取り付け可能な孔として形成される。
【0067】
図14は、架台102に配管110が取り付けられた状態のベース部103の内部構造を示す図である。
図14に示すように、配管110は、ベース部103を上下方向に貫通するように設置される。また、ベース部103の内側には、複数の配管110の隙間に、不燃材129が充填されている。不燃材129は、冷媒用被覆銅管貫通処理材として用いられるものであり、例えば熱膨張耐火材を含んでおり、火災時の高温によって熱膨張し、ベース部103の内部を完全に隠蔽できる特性を有している。この不燃材129は、上板125及び下板126の孔127を閉鎖している。このようにベース部103の内側に充填される不燃材129によってベース部103には防火処理が施される。したがって、ベース部103は、耐火機能を備えた構造となる。
【0068】
図15は、架台102に設置される配管110の構成例を示す図である。例えば、配管110は、空調用の3つの冷媒配管111,112,113を1つに束ねることで形成される。冷媒配管111,112,113は、建築物の屋上に設置される室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間で冷媒を循環させるための配管である。そのため、冷媒配管111,112,113を1つに束ねて形成される配管110は、建築物のいずれかのフロアに設置された空気調和機に接続される配管である。言い換えると、1つの配管110に含まれる3つの冷媒配管111,112,113は、同じフロアの空気調和機に接続される。冷媒配管111,112,113はいずれも銅管であり、その外周面が筒状の断熱材114によって被覆されている。各冷媒配管111,112,113は、例えば設置対象フロアにおける床面から天井面までの長さと同程度若しくはそれよりも短い長さに予め形成され、粘着テープ118などによって1つに束ねられる。尚、図例では、3本の冷媒配管111,112,113を1つに束ねた場合を例示しているが、1つに束ねる冷媒配管の本数は3本に限られない。
【0069】
また、配管110には、電気ケーブル116が付設される。具体的には、配管110は、冷媒配管111,112,113と共に、電気ケーブル116を挿通可能なスリーブ115を束ねた構成となっている。そのスリーブ115には、建築物の屋上に設置される室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間で電気信号を送受信するための電気ケーブル116が挿通され、配管110に付設される。
図15の拡大
図Aに示すように、電気ケーブル116の上端は、スリーブ115の上端開口から上方に延びており、その先端にコネクタ117aが装着されている。また、
図15の拡大
図Bに示すように、電気ケーブル116の下端は、スリーブ115の下端開口から下方に延びている。電気ケーブル116がスリーブ115よりも長い場合は、結束バンドなどを用いて電気ケーブル116を巻いた状態で保持しておくことが好ましい。そして電気ケーブル116の下端には、コネクタ117bが装着されている。
【0070】
架台102には、上記のような構成を有する複数の配管110が左右方向及び前後方向に並設される。それら複数の配管110は、それぞれ異なるフロアの空気調和機に接続される。したがって、架台102は、複数フロアのそれぞれに配置される複数の配管110を保持することが可能である。
【0071】
上記のような配管ユニット101は、工場において
図12に示す状態に組み付けられ、建築現場へと搬送され、建築現場に設置される仮設エレベータを用いて設置対象フロアへと搬入される。つまり、配管ユニット101は、建築工事中に設置されるクレーンを使用することなく、設置対象フロアへ搬入することが可能であるため、搬送効率に優れている。そして設置対象フロアへ搬入されると、配管ユニット101は、設置箇所に据え付けられる。
【0072】
図16は、配管ユニット101の施工方法の概念を示す図である。
図16に示すように、建築中の建造物において各フロアの床スラブ180には、縦方向の配管110を通すための開口190が形成されている。配管ユニット101は、その開口190の内側に対して下降させることにより、設置対象フロアの床スラブ180に設置される。上述したように、架台102のベース部103に設けられたフランジ部121は開口190の周縁部よりも更に外側に突出するように形成される。そのため、開口190の上方から開口190の内側に向けて配管ユニット101を下降させていくと、フランジ部121が開口190の周縁部に当接し、ベース部103を開口190に嵌め込んだ状態で配管ユニット101を床スラブ180に設置することができる。したがって、配管ユニット101を開口190に向けて下降させる際には、フランジ部121が床スラブ180に当接するまで下降させれば良いため、配管ユニット101の微妙な高さ調整を行う必要はなく、作業効率を向上させることができる。
【0073】
ここで、
図16に示す例では、配管110の下端が支柱106の下端よりも更に下方に延びている。配管110に含まれる冷媒配管111,112,113は脆弱であり、破損しやすい。そのため、
図16に示すように配管110の下端が支柱106の下端よりも更に下方に延設されている場合には、配管110に対して負荷を掛けないことに配慮しながら配管ユニット101を設置対象フロアに設置することが必要となる。
【0074】
そこで本実施形態では、配管110の下端が支柱106の下端よりも更に下方に延設されている場合であっても、後述する搬送装置1を用いることにより、小人数で効率的に配管ユニット101を設置対象フロアに設置することが可能となっている。以下、その施工方法について詳しく説明する。
【0075】
図17は、配管ユニット101に対して第1施工具130及び第2施工具140を取り付けた例を示す図である。第1施工具130は、架台102の支持部104の前面側及び後面側の2箇所に取り付けられる。また、第2施工具140は、ベース部103の上面において前方側及び後方側の2箇所に取り付けられる。これら第1施工具130及び第2施工具140は、第1実施形態で説明した支持部材2に相当し、設置対象物9である配管ユニット101を支持するための部材である。
【0076】
第1施工具130は、左右方向に配置された一対の支柱106,106間を水平方向に配置される連結部材131と、連結部材131の両端部に固着された脚部132,132とを有し、架台102の前面側及び後面側のそれぞれに着脱可能である。連結部材131の両端上面側には、取付金具133,133が設けられている。取付金具133,133は、ボルトとナットから成る締結部材によって、支柱106,106の所定高さ位置に設けられている取付部122,122に取り付けられる。脚部132,132は、支柱106の前面又は後面に沿うように配置され、取付金具133,133が支柱106,106の取付部122,122に取り付けられることにより、脚部132,132の下端が概ね支持部104の中央の高さ位置となるように設置される。このような第1施工具130は、水平方向に配置される連結部材131の中央位置に、外側に向かって突出する軸部135を有している。例えば、軸部135は、例えば頭部を有するボルトによって構成され、ボルトの頭部が連結部材131の表面から所定間隔離れた位置に設けられることによって頭部と連結部材131との間に露出するボルトの軸部で形成される。この軸部135は、第1実施形態で説明した回転軸14に対応している。
【0077】
第2施工具140は、ベース部103の上方位置を左右方向に配置される連結部材141と、連結部材141の両端部に固着された脚部142,142とを有する。この第2施工具140は、脚部142,142の下端が、ボルトとナットから成る締結部材によって、ベース部103の支持壁105に設けられた取付部123に取り付けられる。このような第2施工具140は、水平方向に配置される連結部材141の中央位置に、外側に突出する軸部145を有している。例えば、軸部145は、例えば頭部を有するボルトによって構成され、ボルトの頭部が連結部材141の表面から所定間隔離れた位置に設けられることによって頭部と連結部材141との間に露出するボルトの軸部で形成される。
【0078】
配管ユニット101は、設置対象フロアに設置される際、
図17に示すように第1施工具130及び第2施工具140が装着される。ただし、後述するように、第1施工具130は配管ユニット101の施工中において前段の工程で使用され、第2施工具140は後段の工程で使用される。そのため、はじめに第1施工具130のみを配管ユニット101に装着して前段の工程を行い、後段の工程に移るときに第2施工具140を配管ユニット101に装着するようにしても構わない。
【0079】
次に、
図18は、配管ユニット101の搬送時及び施工時に使用される搬送装置1の一例を示す図である。この搬送装置1は、作業用台車150として構成される。作業用台車150は、配管ユニット101の架台102を挟み込むように配置可能であり、下面にキャスター155が取り付けられた台車本体151と、台車本体151の上面側に互いに対向するように配置される一対の揚重手段152,152とを備えている。
【0080】
台車本体151は、配管ユニット101の架台102の前後方向の幅よりも広い間隔で互いに対向するように配置される一対のビーム153,153と、それら一対のビーム153,153の両端を相互に連結する一対の連結ビーム154,154とを備えている。一対のビーム153,153の両端には、下面側にキャスター155が取り付けられている。キャスター155は、鉛直軸周りに旋回可能な車輪を備えており、作業用台車150を任意の方向に移動可能に支持している。
【0081】
連結ビーム154,154は、例えばボルトとナットによる締結部材156を用いて一対のビーム153,153の両端を連結するように取り付けられる。2つの連結ビーム154,154が一対のビーム153,153の両端に取り付けられると、台車本体151は、平面視矩形状のフレーム枠となる。また、締結部材156は取り外し可能であるため、2つの連結ビーム154,154のうちの少なくとも一方は、台車本体151から取り外すことができる。2つの連結ビーム154,154のうちの一方が台車本体151から取り外されると、台車本体151は、平面視コ字状のフレーム枠となる。
【0082】
台車本体151は、一対のビーム153,153のそれぞれの上面中央に立設する揚重手段152,152を備えている。揚重手段152,152は、例えば第1実施形態と同様に手動式のリフト装置によって構成される昇降駆動部である。揚重手段152,152は、所定高さを有する支柱部157を有し、その支柱部157に架台102を支持して昇降させる昇降機構を搭載している。揚重手段152,152は、台車本体151の上面側において、互いに対向するように配置された支柱部157の正面側に上下方向に開口した開口部が設けられると共に、支柱部157の背面側に操作ハンドル158が設けられている。操作ハンドル158は、支柱部157の内部に設けられた巻取器165を動作させるものである。巻取器165には、チェーンやワイヤーロープなどの索条164の端部が接続されている。そのため、操作ハンドル158が回転軸L1を中心に所定方向に回転操作されると、巻取器165は、操作ハンドル158と共に内部の巻取ドラムを回転させ、索条164を巻き取ったり、繰り出したりする。例えば操作ハンドル158には、切り替え可能なワンウェイクラッチが設けられており、巻き取り操作や繰り出し操作の途中で操作ハンドル158から手が離されたとしても逆方向に回転しない構造となっている。巻取器165から延びる索条164は、支柱部157内部の上部に取り付けられた滑車163に架けられており、その先端には支柱部157の正面側の開口部に沿って上下方向に移動する保持部161が取り付けられている。保持部161は、架台102を保持する部材である。
図18の拡大
図Cに示すように、保持部161は、例えば水平方向に所定長さを有する金属板によって構成され、その長手方向の中央部に、上向きにU字状に切り欠いた係止部162を有している。この係止部162は、第1施工具130の軸部135及び第2施工具140の軸部145のそれぞれを受け入れて係止することにより、軸部135,145のそれぞれを軸支する。
【0083】
次に、上記のような作業用台車150を用いて配管ユニット101を設置対象フロアに施工する手順について説明する。まず、配管ユニット101は、工場で組み付けられた後、架台102の前後両面に第1施工具130が取り付けられる。そして、
図129に示すように架台102の側面にキャスター119が取り付けられ、架台102を横倒し姿勢にしてキャスター139を接地させる。配管ユニット101は、
図19に示す横倒し姿勢で輸送車両に積載され、工場から建築現場へと搬送される。建築現場に到着すると、配管ユニット101は横倒し姿勢のままで輸送車両から降ろされ、建築現場の仮設エレベータを利用して設置対象フロアへと搬入される。つまり、本実施形態の配管ユニット101は、建築現場のクレーンを用いることなく、設置対象フロアへ搬入することが可能である。そのため、クレーンを用いる場合に比べて少ない人数で配管ユニット101を設置対象フロアへ搬入することができる。尚、
図19では、架台102の側面にキャスター139を取り付けた例を示しているが、これに限られるものではない。例えば、架台102を横倒し姿勢にして作業用台車150とは別の台車に積載した状態で工場から設置対象フロアへ搬入しても構わない。
【0084】
設置対象フロアに配管ユニット101が搬入されると、
図20に示すように、作業用台車150を準備する。このとき、作業用台車150の1つの連結ビーム154を台車本体151から取り外しておく。そして一対のビーム153,153の間に架台102を挿入し、台車本体151から取り外していた連結ビーム154を台車本体151に装着する。その結果、
図20に示すように、作業用台車150に設けられている一対の揚重手段152,152(支柱部157,157)の間に配管ユニット101が配置された状態となる。その後、操作ハンドル158を所定方向に回転させて揚重手段152,152の保持部161を第1施工具130に設けられた軸部135の高さ位置に合わせ、保持部161の係止部162に軸部135を係止させる。
【0085】
続いて揚重手段152,152の操作ハンドル158を同時に所定方向に回転させて索条174を巻き取っていく。その結果、保持部161が上昇し、
図21に示すように、配管ユニット101は、作業用台車150の揚重手段152,152によって持ち上げられた状態となる。
【0086】
配管ユニット101を所定高さまで持ち上げると、次に
図22に示すように配管ユニット101をR方向に回転させ、配管ユニット101を横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる。すなわち、保持部161に設けられたU字状の係止部162は、第1施工具130の軸部135を回動可能に軸支しているため、軸部135を中心に配管ユニット101を回転させることにより、配管ユニット101を横倒し姿勢から起立姿勢に変化させることができる。配管ユニット101の側面にキャスター139が取り付けられている場合、配管ユニット101を起立姿勢にした後にキャスター139を配管ユニット101から簡単に取り外すことができる。
【0087】
その後、作業用台車150は、配管ユニット101を起立姿勢で持ち上げたまま、
図23の矢印F2で示すように配管ユニット101を設置対象フロアの設置箇所へ移動させる。
図23に示すように、設置対象フロアにおいて配管ユニット101の設置箇所には、床スラブ180に開口190が形成されている。作業用台車150は、配管ユニット101を床スラブ180に形成された開口190の上方位置へと搬送することができる。
【0088】
また、配管ユニット101を持ち上げたままで作業用台車150を移動させるときには、配管ユニット101が軸部135を中心に揺動することを防止するために、
図24に示すような補助部材170を取り付けるようにしても良い。
図24に示す補助部材170は、概略コ字状の形状を有する金具であり、架台102の支持部104の左右両側面に取り付けられる。この補助部材170は、架台102の側面において前後方向に延びる架台接続金具171と、その架台接続金具171の前後方向両端において下方に延びる脚部172,172とを備えている。架台接続金具171は、支持部104の下端部に、ボルトとナットから成る締結部材によって固定される。脚部172,172は、その下端部がボルトとナットから成る締結部材によって一対のビーム153,153に固定される。このような補助部材170が架台102の左右両側面に取り付けられることにより、配管ユニット101の下部が作業用台車150に固定される。したがって、作業用台車150が配管ユニット101を持ち上げたままで移動するとき、配管ユニット101が軸部135を中心に揺動することを防止でき、安全に配管ユニット101を移動させることができるようになる。この補助部材170は、配管ユニット101が開口190の上方位置へ移動すると、配管ユニット101及び架台102から取り外される。尚、配管ユニット101を持ち上げたままで作業用台車150を移動させる際に、
図24に示した補助部材170を取り付けるか否かは任意である。
【0089】
図25に示すように、配管ユニット101を床スラブ180の開口190の上方位置へ移動させると、作業用台車150に設けられた揚重手段152,152の操作ハンドル158を所定方向へ回転させ、配管ユニット101を下降させていく。これに伴い、架台102は、複数の配管110を保持した状態で支持部104を開口190の内側へ進入させ、下階フロアに向かって下降する。架台102の前面側及び後面側に取り付けられている第1施工具130の脚部132,132は、開口190の周縁部よりも外側に突出している。そのため、配管ユニット101を開口190に向かって下降させていくと、
図26に示すように、第1施工具130の脚部132,132が開口190の周縁部の床スラブ180に接触し、配管ユニット101の下降が止まる。このとき、配管ユニット101は、第1施工具130によって所定高さ位置に保持される。
【0090】
図26に示すように、配管ユニット101が第1施工具130によって支持された状態になると、
図27に示すように、ベース部103の上面の前面側及び後面側の2箇所に第2施工具140を取り付ける。ただし、第2施工具140は、これまでの工程においてベース部103に取り付けても構わない。例えば、第2施工具140は工場において予めベース部103に取り付けるようにしても良い。
【0091】
そして配管ユニット101が第1施工具130によって支持された状態において、揚重手段152,152の保持部161を第1施工具130の軸部135から取り外し、保持部161の高さ位置を第2施工具140に設けられた軸部145に合わせ、保持部161の係止部162に軸部145を係止させる。
【0092】
その後、揚重手段152,152の操作ハンドル158を所定方向に回転させることにより、第2施工具140を介して配管ユニット101を持ち上げる。これにより、第1施工具130の脚部132,132は、開口190周辺の床スラブ180から浮いた状態となる。第1施工具130の脚部132,132が床スラブ180から浮いた状態となると、
図28に示すように、第1施工具130を配管ユニット101から取り外す。これにより、配管ユニット101は開口190に対して更に下降させることが可能な状態となる。
【0093】
第1施工具130を取り外した後、揚重手段152,152の操作ハンドル158を所定方向に回転させ、配管ユニット101を開口190に対して下降させていく。これに伴い、架台102は、複数の配管110を保持した状態で支持部104を開口190に対して深く進入し、ベース部103の下部が開口190に嵌まる。そしてベース部103に設けられたフランジ部121が開口190の周縁に当接すると、配管ユニット101の下降が止まる。すなわち、フランジ部121が開口190の周縁に当接して配管ユニット101を下降させることができなくなると、配管ユニット101を適切に位置決めできたことになる。このとき、配管ユニット101の微妙な高さ調整を行う必要がない。
【0094】
その後、保持部161を第2施工具140の軸部145から取り外し、作業用台車150を撤去する。また、配管ユニット101のベース部103に取り付けられた第2施工具140も配管ユニット101から取り外す。そしてアンカーボルトなどを用いてフランジ部121を床スラブ180に固定すれば、配管ユニット101の設置が完了する。フランジ部121がアンカーボルトなどによって床スラブ180に固定されることにより、配管ユニット101の架台102は、建築物の躯体と一体構造物となる。
【0095】
図29は、設置対象フロアの床スラブ180に配管ユニット101を設置した状態を示す図である。上述したように配管ユニット101は、上階フロアの床スラブ180に形成された開口190から下降させて設置されるため、支持部104が下階フロアの天井スペースに突出した状態に設置される。支持部104は、架台102によって支持される配管110と略同等の長さを有しており、配管110の下部を保持している。そのため、配管ユニット101に設けられている配管110は、上部及び下部が架台102によって躯体に固定された状態に設置される。したがって、架台102は、地震発生時において配管110の振動を抑制することが可能であり、脆弱な配管110の破損を防ぐことができる。
【0096】
また、
図29に示すように配管ユニット101が設置されると、ベース部103が床スラブ180の開口190に嵌め込まれた状態となり、床スラブ180の開口190がベース部103によって閉塞される。加えて、ベース部103の内部には防火処理が施されている。そのため、配管ユニット101が開口190に設置されると、上階フロアと下階フロアとの間に防火区画を実現することができると共に、火災時の煙突化現象を防止することもできる。つまり、本実施形態の配管ユニット101は、上階フロアの床スラブ180の開口190に対して下降させて設置するだけで防火区画を実現できると共に、開口190を閉塞して煙突化現象を防止できるため、作業効率に優れている。
【0097】
また、配管ユニット101は、架台102に保持されている複数の配管110のそれぞれに室内機と室外機とを電気的に接続する電気ケーブル116が付設されている。そのため、配管ユニット101を床スラブ180の開口190に設置した後に電気ケーブル116を配線する作業を別途行う必要がない。それ故、上階フロアと下階フロアとの間に電気ケーブル116を配線する作業を省略できる点においても作業効率を向上させることができる。
【0098】
図30は、下階フロアの床スラブ180bに配管ユニット101を設置した後、上階フロアの床スラブ180aに配管ユニット101を設置した状態を示す図である。例えば、下階フロアの床スラブ180bに配管ユニット101が設置されると、その配管ユニット101に保持されている配管110の上端は、床スラブ180bから高さh1の位置にある。ここで、高さh1は、例えば500~1000mm程度である。ただし、配管ユニット101が設置されるフロアによっては、高さh1が1000mmを超えることもある。一方、上階フロアの床スラブ180aに設置される配管ユニット101は、下階フロアのフロア高Hよりも短い長さの配管110を保持しており、上階の床スラブ180aに設置されると、その配管110の下端と、下階フロアに設置された配管110の上端との間に、隙間h2を生じさせる。この隙間h2は、例えば500~1000mm程度である。ただし、配管ユニット101が設置されるフロアによっては、隙間h2が1000mmを超えることもある。そして上階フロアの床スラブ180aに配管ユニット101が設置された後、隙間h2の長さに相当する短管(冷媒配管)を隙間h2に挿入し、メカニカル継手などの継手を用いて上側の配管110と下側の配管110とを相互に接続する。これにより、各フロアに設置される複数の配管ユニット101によって保持される配管110が相互に連結される。
【0099】
また、電気ケーブル116についても、下階フロアの床スラブ180bに設置した配管ユニット101に保持されている電気ケーブル116のコネクタ117aと、上階フロアの床スラブ180aに設置した配管ユニット101に保持されている電気ケーブル116のコネクタ117bとを接続する。これにより、各フロアに設置される複数の配管ユニット101によって保持されている電気ケーブル116を相互に連結し、導通させることができる。
【0100】
また、配管ユニット101を設置する際に使用する作業用台車150は、台車本体151の上面側において互いに対向するように配置される一対の揚重手段152,152を備えており、一対の揚重手段152,152が配管ユニット101を持ち上げた状態で台車本体151を移動させることにより配管ユニット101を設置対象フロアの床スラブ180に形成された開口190の上方位置へ移動させることが可能であると共に、配管ユニット101を開口190の上方位置へ移動させた後には、一対の揚重手段152,152が配管ユニット101を開口190の内側に下降させることにより、開口190の周縁部にフランジ部121を当接させた状態に設置することが可能である。このような作業用台車150を用いれば、建築現場のクレーンを用いることなく、小人数で配管ユニット101を設置することが可能であり、低コストで効率的に施工できるという利点がある。
【0101】
したがって、本実施形態の搬送装置1は、配管ユニット101を設置現場へ搬送する際に好適に使用できるだけでなく、配管ユニット101を設置対象箇所へ設置する際にも好適に使用可能となっており、設置現場における作業を効率的に行えるようにした機能を有している。
【0102】
尚、上記においては、揚重手段152,152として設けられる昇降駆動部が手動式である場合を例示した。しかし、揚重手段152,152は、手動式に限られるものではなく、電動式のものを採用しても構わない。
【0103】
また、上記においては、配管ユニット101を工場から建築現場へ搬送する際には、本実施形態の搬送装置1を用いない例を説明したが、これに限られるものではない。すなわち、工場から建築現場へ搬送する際にも上述した搬送装置1を使用し、配管ユニット201を搬送装置1に積載した状態で搬送するようにしても構わない。
【0104】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第2実施形態と同様に、建築中の建物の内部に設置される設置対象物9として、複数の配管を保持する配管ユニット201を例示し、配管ユニット201を設置現場へ搬送するための使用される搬送装置1について説明する。また、本実施形態の搬送装置1は、第2実施形態と同様に、配管ユニット201を設置対象箇所へ設置する際にも利用し得るものである。ただし、本実施形態における施工方法は、第2実施形態とは異なる。以下、本発明の第3実施形態について詳しく説明する。
【0105】
図31は、本実施形態における設置対象物9である配管ユニット201を示す斜視図である。この配管ユニット201は、建築物の複数フロアに渡って縦方向に配置される複数の配管(竪配管)を集約したユニットであり、複数の配管をフロアごとに設置可能としたものである。例えば、この配管ユニット201は、新築工事中の建築物において下階フロアから上階フロアに向かって1フロアずつ順に設置可能とされている。
【0106】
この配管ユニット201は、複数のフレーム材211が溶接等によって直方体状に形成された基台210と、その基台210に取り付けられて互いに平行な状態で基台210の上方に延設される一対のレール部221,222と、基台210の内側に配置される第1保持部材230と、基台210の内側において第1保持部材230に隣接して配置される第2保持部材240とを備えている。第1保持部材230及び第2保持部材240は、建築物の内部において縦方向に設置される複数の配管208,209を保持する部材である。これら配管208,209は、空調用の冷媒配管であり、建築物の屋上に設置される室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間で冷媒を循環させるための配管である。第1保持部材230及び第2保持部材240によって保持される配管208,209のそれぞれの長さは、例えば設置対象フロアの床スラブから上階フロアの床スラブまでの長さを2分割した長さとして形成される。第1保持部材230及び第2保持部材240は、複数の配管208,209を左右方向に並設した状態で保持することが可能である。また、第1保持部材230及び第2保持部材240は、配管208,209と共に、電気ケーブル239,249を保持している。これら電気ケーブル239,249は、建築物の屋上に設置される室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間で電気信号を送受信するためのケーブルである。
【0107】
図32は、基台210と一対のレール部221,222とを示す図である。基台210は、例えば山形鋼や溝形鋼などの鋼材である複数のフレーム材211が溶接等によって直方体状に組み付けられ、上部開口212と下部開口213とを有している。基台210の前後方向の奥行き寸法は、左右方向の幅寸法よりも小さく形成され、例えば建築現場に設置される仮設エレベータの奥行き寸法よりも小さく、仮設エレベータに積載可能なサイズとして形成される。基台210の高さ寸法は、例えば第1保持部材230及び第2保持部材240によって保持される配管208,209の長さの半分程度であれば良い。
【0108】
このような基台210は、設置対象フロアの床スラブに固定された状態に設置される。基台210は、剛性が高いため、例えば地震発生時において配管208,209が横方向に大きく振動することを抑制する振れ止め機能を有している。
【0109】
一対のレール部221,222は、基台210の内側において後方の左右両側に溶接等によって基台210に固着されており、基台210の上部開口212から更に上方に向かって延びている。これら一対のレール部221,222の高さは、設置対象フロアの天井高さにもよるが、例えば基台210の高さの約1.5~3倍程度の高さとして形成される。そのため、基台210の上方の所定高さ位置には、一対のレール部221,222を相互に連結する連結部材225が設置され、一対のレール部221,222を平行な状態に保持している。また、各レール部221,222の前面側には、上下方向に延びるスリット223が形成されている。スリット223は、レール部221,222の下端から上端まで連続形成されている。更に、一対のレール部221,222の上端部には、リング状の係合部224,224が設けられている。
【0110】
基台210の左右両側面には、水平方向(前後方向)に配置されるガイド部215が設けられる。例えば、ガイド部215は、中央の高さ位置に水平方向(前後方向)に長尺のガイド孔215aが形成された金属板によって構成される。このようなガイド部215は、基台210の左右両側面において、第1の高さ位置と、第1の高さ位置よりも高い位置の第2の高さ位置との2箇所に設置される。また、第1の高さ位置に設置されるガイド部215の上部には、リング状の係合部216が設けられている。このリング状の係合部216は、後述する搬送装置1が配管ユニット201を支持して持ち上げるために設けられた支持部材に相当する。
【0111】
基台210の左右両側面のうちの一方の側面には、後述するキャスター219(
図39参照)を取り付け可能なキャスター取付部214が設けられる。尚、
図32では、キャスター取付部214が基台210の右側面に設けられている例を示している。
【0112】
更に、基台210の前後両面には、左右方向に横断する支持部材217が取り付けられている。例えば支持部材217は、基台210の中央の高さ位置に取り付けられている。支持部材217は、その左右両端が基台210の支柱に固定されており、左右方向中央位置にリング状の係合部218が設けられている。このリング状の係合部218も、後述する搬送装置1が配管ユニット201を支持して持ち上げるために設けられている。
【0113】
図33は、第1保持部材230を示す図である。第1保持部材230は、基台210の内部において左右方向に所定間隔で配置される一対の保持部231,232を有する。一対の保持部231,232は、例えば断面コ字状の鋼材によって構成され、互いに対向するように配置される。また、一対の保持部231,232は、縦方向に長尺であり、上部、中央部、及び、下部の3箇所に、水平方向(左右方向)に延びる連結部材233が連結されており、それら連結部材233によって互いに所定間隔で平行な状態を保持するように一体化されている。尚、連結部材233の配置箇所は3箇所に限られるものではなく、2箇所以上であれば良い。
【0114】
第1保持部材230は、一対の保持部231,232間に横架される複数の連結部材233に配管208(第1の配管)を取り付けることにより、配管208を保持する。すなわち、第1保持部材230は、配管208を連結部材233に添接した状態で、配管208の外周面に配管バンド234を装着し、その配管バンド234の両端を連結部材233に固定することで配管208を保持する。また、第1保持部材230は、一対の保持部231,232間に、複数の配管208を保持することが可能である。例えば1つのフロアには、3つの冷媒配管208a,208b,208cが設置されるため、第1保持部材230は、それら3つの冷媒配管208a,208b,208cを1つに束ねた状態で配管バンド234によって連結部材233に固定される。尚、各冷媒配管208a,208b,208cは、銅管の外周面に断熱材を被覆した構成となっている。そして第1保持部材230は、そのような冷媒配管208a,208b,208cの束を左右方向に並設することが可能であり、複数フロア分の配管208を保持することができる。
【0115】
また、第1保持部材230は、配管208と共に電気ケーブル239(第1の電気ケーブル)を保持する。すなわち、第1保持部材230は、配管208と共に筒状のスリーブ238を配管バンド234によって連結部材233に固定しており、そのスリーブ238の内側に電気ケーブル239を挿通した状態で保持する。この電気ケーブル239は、配管バンド234によって束ねられた配管208が接続される空気調和機(例えば室内機)と室外機とを電気的に接続するケーブルである。
図33の拡大
図A1に示すように、電気ケーブル239の上端は、スリーブ238の上端開口から延びており、その先端にコネクタ239aが設けられている。また、
図33の拡大
図A2に示すように、電気ケーブル239の下端は、スリーブ238の下端開口から延びている。電気ケーブル239が配管208よりも長い場合は、結束バンドなどを用いて電気ケーブル239を巻いた状態で保持しておくことが好ましい。そして電気ケーブル239の下端には、コネクタ239bが設けられている。
【0116】
更に、第1保持部材230は、一対の保持部231,232の中央部及び下部の2箇所の位置に係合金具235,236を備えている。これら係合金具235,236は、一対の保持部231,232の外側の側面に取り付けられる。
【0117】
係合金具235は、一対の保持部231,232の中央部に取り付けられる。この係合金具235は、レール部221,222の前面に接合する平板状の接合部235aを有し、その接合部235aにはレール部221,222の前面に形成されたスリット223に係合する係合部235bが設けられている。この係合部235bは、例えばボルトとナットから成る締結部材によって構成される。すなわち、係合部235bは、接合部235aの後方側に突出する軸部を有し、その軸部がレール部221,222のスリット223に挿通され、軸部の先端にナットが装着されることにより、レール部221,222に係合する。ボルトとナットの締め付けが緩い状態のとき、係合金具235はレール部221,222に固定されていない。そのため、係合金具235は、レール部221,222のスリット223の長手方向に沿ってスライド移動可能である。また、ボルトとナットがきつく締め付けられると、係合金具235は、レール部221,222に対して固定される。
【0118】
係合金具236は、一対の保持部231,232の下部に取り付けられる。この係合金具236も、レール部221,222の前面に接合する平板状の接合部236aを有し、その接合部236aにはレール部221,222の前面に形成されたスリット223に係合する係合部236bが設けられている。この係合部236bは、上記と同様、例えばボルトとナットから成る締結部材によって構成される。すなわち、係合部236bは、接合部236aの後方側に突出する軸部を有し、その軸部がレール部221,222のスリット223に挿通され、軸部の先端にナットが装着されることにより、レール部221,222に係合する。ボルトとナットの締め付けが緩い状態のとき、係合金具236はレール部221,222に固定されていない。そのため、係合金具236は、レール部221,222のスリット223の長手方向に沿ってスライド移動可能である。また、ボルトとナットがきつく締め付けられると、係合金具236は、レール部221,222に対して固定される。この係合金具236には、リング状の係合部237が設けられている。
【0119】
図34は、第2保持部材240を示す図である。第2保持部材240は、基台210の内部において左右方向に所定間隔で配置される一対の保持部241,242を有する。一対の保持部241,242は、例えば断面コ字状の鋼材によって構成され、互いに対向するように配置される。また、一対の保持部241,242は、縦方向に長尺であり、上部、中央部、及び、下部の3箇所に、水平方向(左右方向)に延びる連結部材243が連結されており、それら連結部材243によって互いに所定間隔で平行な状態を保持するように一体化されている。尚、連結部材243の配置箇所は3箇所に限られるものではなく、2箇所以上であれば良い。
【0120】
第2保持部材240は、一対の保持部241,242間に横架される複数の連結部材243に配管209(第2の配管)を取り付けることにより、配管209を保持する。すなわち、第2保持部材240は、配管209を連結部材243に添接した状態で、配管209の外周面に配管バンド244を装着し、その配管バンド244の両端を連結部材243に固定することで配管209を保持する。また、第2保持部材240は、一対の保持部241,242間に、複数の配管209を保持することが可能である。すなわち、第1保持部材230と同様、第2保持部材240は、1つのフロアに設置される3つの冷媒配管209a,209b,209cを1つに束ねた状態で配管バンド244によって連結部材243に固定する。そして第2保持部材240は、そのような冷媒配管209a,209b,209cの束を左右方向に並設することが可能であり、複数フロア分の配管209を保持することができる。尚、冷媒配管209a,209b,209cの管径はそれぞれ冷媒配管208a,208b,208cの管径と同一である。
【0121】
また、第2保持部材240は、配管209と共に電気ケーブル249(第2の電気ケーブル)を保持する。すなわち、第2保持部材240は、配管209と共に筒状のスリーブ248を配管バンド244によって連結部材243に固定しており、そのスリーブ248の内側に電気ケーブル249を挿通した状態で保持する。この電気ケーブル249は、配管バンド244によって束ねられた配管209が接続される空気調和機(例えば室内機)と室外機とを電気的に接続するケーブルである。
図34の拡大
図B1に示すように、電気ケーブル249の上端は、スリーブ248の上端開口から延びており、その先端にコネクタ249aが設けられている。また、
図34の拡大
図B2に示すように、電気ケーブル249の下端は、スリーブ248の下端開口から延びている。電気ケーブル249が配管209よりも長い場合は、結束バンドなどを用いて電気ケーブル249を巻いた状態で保持しておくことが好ましい。そして電気ケーブル249の下端には、コネクタ249bが設けられている。
【0122】
更に、第2保持部材240は、一対の保持部241,242の中央部及び下部の2箇所の位置に係合金具245,246を備えている。これら係合金具245,246は、一対の保持部241,242の外側の側面に取り付けられる。
【0123】
係合金具245は、一対の保持部241,242の中央部に取り付けられる。また、係合金具246は、一対の保持部241,242の下部に取り付けられる。これら係合金具245,246は、同一形状を有し、基台210の左右両側面に設けられたガイド部215に係合する。すなわち、係合金具245は、基台210の左右両側面の上部に設けられたガイド部215の内面に接合する平板状の接合部245aを有し、その接合部245aにはガイド部215に形成された前後方向のガイド孔215aに係合する係合部245bが設けられている。また、係合金具246は、基台210の左右両側面の下部に設けられたガイド部215の内面に接合する平板状の接合部246aを有し、その接合部246aにはガイド部215に形成された前後方向のガイド孔215aに係合する係合部246bが設けられている。これら係合部245b,246bは、例えばボルトとナットから成る締結部材によって構成される。すなわち、係合部245b,246bは、接合部245a,246aの外側に突出する軸部を有し、その軸部がガイド部215のガイド孔215aに挿通され、軸部の先端にナットが装着されることにより、ガイド部215に係合する。ボルトとナットの締め付けが緩い状態のとき、係合金具245,246はガイド部215に固定されていない。そのため、係合金具245,246は、ガイド部215のガイド孔215aの長手方向(前後方向)に沿ってスライド移動可能である。また、ボルトとナットがきつく締め付けられると、係合金具245,246は、ガイド部215に対して固定される。
【0124】
上記のように構成される配管ユニット201は、
図31に示すように、配管208を保持する第1保持部材230を基台210の後方側に配置しており、第1保持部材230の左右両側に設けた係合金具235,236を一対のレール部221,222のスリット223に係合させている。また、配管ユニット201は、配管209を保持する第2保持部材240を基台210の前方側に配置しており、第2保持部材240の左右両側に設けた係合金具245,246を基台210のガイド部215に係合させている。
【0125】
このような配管ユニット201は、工場において
図31に示す状態に組み付けられ、建築現場へと搬送され、建築現場に設置される仮設エレベータを用いて設置対象フロアへと搬入される。設置対象フロアへ搬入されると、配管ユニット201は、設置箇所に据え付けられる。そして配管ユニット201は、
図35に示すように、第1保持部材230が一対のレール部221,222に沿って一対のレール部221,222の上部へ移動した状態に固定される。
図35に示すように、第1保持部材230が一対のレール部221,222の上部へ移動すると、第1保持部材230の下方には第2保持部材240を収容可能な空間が形成される。そこで、配管ユニット201は、第1保持部材230が一対のレール部221,222の上部に固定された後、第2保持部材240をガイド部215に沿って基台210の後方側へ移動させることが可能である。そして、配管ユニット201は、
図36に示すように、第2保持部材240が第1保持部材230の下方へ移動した状態に固定されることにより、第1保持部材230によって保持される配管208と第2保持部材240によって保持される配管209とを鉛直方向の直線上に配置することができ、配管209の上端を配管208の下端に接合させることが可能な状態となる。
【0126】
次に、上記のような作業を施工現場で効率良く行えるようにするために形成された、本実施形態の搬送装置1について説明する。
図37及び
図38は、上述した配管ユニット201の搬送及び施工の際に用いられる搬送装置1を示す図である。この搬送装置1は、作業用台車202によって構成される。作業用台車202は、配管ユニット201の基台210を囲繞するように配置可能であり、下面にキャスター263が取り付けられた台車本体260と、台車本体260の上面側に互いに対向するように配置される一対の揚重手段271,272とを備えている。
【0127】
台車本体260は、配管ユニット201の基台210の前面側及び後面側のそれぞれに対向するように配置される一対のビーム261,262と、それら一対のビーム261,262の一端同士を相互に連結する第1連結ビーム264と、一対のビーム261,262の他端同士を相互に連結する第2連結ビーム265とを備えている。一対のビーム261,262は、その両端の下面にキャスター263が取り付けられている。キャスター263は、鉛直軸周りに旋回可能な車輪を備えており、作業用台車202を任意の方向に移動可能に支持している。
【0128】
例えば、第1連結ビーム264は、一対のビーム261,262の一端に溶接等によって固定され、一対のビーム261,262に対して着脱不可能な状態に取り付けられる。これに対し、第2連結ビーム265は、ボルトとナットから成る締結部材266によって一対のビーム261,262の他端に取り付けられるため、一対のビーム261,262に対して着脱可能である。第2連結ビーム265が一対のビーム261,262の他端に取り付けられたとき、台車本体260は平面視で矩形状となる。また、第2連結ビーム265が一対のビーム261,262の他端から取り外されると、一対のビーム261,262の他端が開放されるため、台車本体260は平面視でコ字状となる。
【0129】
また、一対のビーム261,262のうちの一方のビーム262は、アーチ型(門型)のビームとして構成される。すなわち、ビーム262は、中央部262aが両端部262b,262bよりも高い位置に設けられている。尚、
図37及び
図38では、一対のビーム261,262のうち、一方のビーム262だけをアーチ型とした例を示しているが、双方のビーム261,262をアーチ型として構成しても構わない。
【0130】
そして、台車本体260は、一対のビーム261,262、第1連結ビーム264、及び、第2連結ビーム265のそれぞれの上面中央に、揚重手段271,272を嵌め込んで装着することが可能なスリーブ268を備えている。一対の揚重手段271,272は、それらのスリーブ268に嵌め込んだ状態でビスなどによって台車本体260に固定される。
【0131】
一対の揚重手段271,272は、例えば第1及び第2実施形態と同様に手動式のリフト装置によって構成される昇降駆動部であり、それぞれ支柱部270に搭載されている。揚重手段271,272は、所定高さを有する支柱部270の正面側上部に開口273が設けられ、支柱部270の背面側に操作ハンドル279が設けられている。操作ハンドル279は、支柱部270の内部に設けられた巻取器278をR方向に回転させるものである。巻取器278には、チェーンやワイヤーロープなどの索条274の端部が接続されている。そのため、操作ハンドル279がR方向に回転操作されると、巻取器278は、操作ハンドル279と共に回転し、索条274を巻き取ったり、繰り出したりする。例えば操作ハンドル279には、切り替え可能なワンウェイクラッチが設けられており、巻き取り操作や繰り出し操作の途中で操作ハンドル279から手が離されたとしても逆方向に回転しない構造となっている。巻取器278から延びる索条274は、支柱部270の内側上部に取り付けられた滑車277に架けられており、その先端にはフック275が設けられている。そしてフック275は、支柱部270の開口273から揚重手段271,272の正面側に垂下している。このフック275は、配管ユニット201を保持する保持部として機能する。また、滑車277は、支柱部270の上部に設けられた係合部276に対して着脱可能となっている。
【0132】
上記のような揚重手段271,272は、その下部が台車本体260に設けられたスリーブ268に嵌め込み可能となっており、台車本体260の上面側において、開口273が設けられた正面を互いに対向させた状態に設置される。例えば、揚重手段271,272は、
図37に示すように、それぞれの正面側を作業用台車202の内側に向けた状態で、一対のビーム261,262の上面に設けられたスリーブ268に嵌め込んだ状態に固定可能である。また、揚重手段271,272は、
図38に示すように、それぞれの正面側を作業用台車202の内側に向けた状態で、第1連結ビーム264及び第2連結ビーム265の上面に設けられたスリーブ268に嵌め込んだ状態に固定することも可能である。すなわち、作業用台車202は、台車本体260に対する揚重手段271,272の設置位置を、
図37に示す位置と、
図38に示す位置とで簡単に付け替えることができる構成となっている。
【0133】
次に、上記のような作業用台車202を用いて配管ユニット201を施工する手順について説明する。まず、配管ユニット201は、工場で組み付けられた後、基台210の側面に設けられたキャスター取付部214にキャスター219が取り付けられる。そして配管ユニット201は、
図39に示すように、基台210を横倒し姿勢にしてキャスター219を接地させた状態に姿勢変化される。この配管ユニット201は横倒し姿勢でトラックに積載され、建築現場へと搬送される。建築現場に到着すると、配管ユニット201は横倒し姿勢のままでトラックから降ろされ、建築現場の仮設エレベータを利用して設置対象フロアへと搬入される。つまり、本実施形態の配管ユニット201は、建築現場のクレーンを用いることなく、設置対象フロアへ搬入することが可能である。そのため、クレーンを用いる場合に比べて少ない人数で配管ユニット201を設置対象フロアへ搬入することができる。
【0134】
設置対象フロアに配管ユニット201が搬入されると、
図39に示すように、作業用台車202を準備する。このとき、作業用台車202の第2連結ビーム265を台車本体260から取り外しておく。また、揚重手段271,272は、
図39に示すように一対のビーム261,262の上面に設置しておく。そして作業用台車202を矢印F3で示す方向に移動させ、一対のビーム261,262のうちの開放された端部の内側に配管ユニット201を挿入する。これにより、一対のビーム261,262の間に配管ユニット201の基台210が収容された状態となる。
【0135】
図40(a)は、配管ユニット201の基台210が作業用台車202の一対のビーム261,262間に収容された状態を示している。このとき、作業用台車202の揚重手段271,272のそれぞれが基台210の前面及び後面のそれぞれに対向した状態となっている。その状態で台車本体260に第2連結ビーム265を取り付け、作業用台車202の剛性を高める。
【0136】
続いて、揚重手段271,272のフック275を、基台210の前後両面に設けられた係合部218に係合させる。すなわち、互いに対向する一対の支柱部270,270の間に配管ユニット201が配置された状態で基台210に設けられた係合部218(支持部材)に対してフック275を係合させるのである。そして揚重手段271,272の操作ハンドル279を同時に所定方向に回転させて索条274を巻き取っていく。その結果、
図40(b)に示すように、配管ユニット201は、作業用台車202の揚重手段271,272によって持ち上げられた状態となる。作業用台車202は、この状態で配管ユニット201を任意の場所へ搬送することが可能である。
【0137】
また、配管ユニット201を所定高さまで持ち上げると、
図41に示すように配管ユニット201を回転させ、配管ユニット201を横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させることができる。作業用台車202は、配管ユニット201を起立姿勢とした状態で配管ユニット201を任意の場所へ搬送することも可能である。
【0138】
作業用台車202は、配管ユニット201を所定の場所へ搬送した後、配管ユニット201の起立姿勢を保持したままで、揚重手段271,272の操作ハンドル279を上記とは逆方向に回転させることにより、索条274を繰り出して配管ユニット201を降下させ、床面に仮置きする。配管ユニット201を床面に仮置きすると、基台210の側面に取り付けられているキャスター219を取り外す。また、揚重手段271,272を一対のビーム261,262から取り外し、第1連結ビーム264及び第2連結ビーム265の上面に設置する。そして揚重手段271,272のフック275を、基台210の左右両側面に設けられた係合部216に係合させる。このとき、先にキャスター219を取り外しておけば、フック275を係合部216に係合させる際にキャスター219が邪魔にならず、作業効率が向上する。
【0139】
その後、揚重手段271,272の操作ハンドル279を同時に所定方向に回転させて再び索条274を巻き取っていく。その結果、
図42に示すように、配管ユニット201は、作業用台車202の揚重手段271,272によって再び持ち上げられた状態となる。そして配管ユニット201を持ち上げた状態のまま、作業用台車202を矢印F4で示すように配管ユニット201の設置箇所290へ移動させる。
【0140】
図42に示すように、設置対象フロアにおいて配管ユニット201の設置箇所290には、床スラブに開口291が形成されており、下階フロアに設置された配管293の上端が開口291から上方に突出している。配管ユニット201の基台210は、その開口291の周囲に設置されたアンカー292に固定される。
【0141】
ここで、作業用台車202の台車本体260において、アーチ型に形成されるビーム262は、その中央部262aが開口291から上方に突出する配管293の上端位置よりも高い位置に設けられる。そして揚重手段271,272が配管ユニット201を持ち上げる際には、基台210の底部がアーチ型のビーム262の中央部262aよりも更に高い位置となるまで持ち上げる。これにより、作業用台車202を矢印F4方向へ移動させる際には、ビーム262及び基台210が開口291から上方に突出する配管293に干渉しない。すなわち、アーチ型のビーム262及び基台210は、配管293の上方を矢印F4方向へ移動する。そして、配管ユニット201を開口291の上方位置へ移動させることができる。
【0142】
配管ユニット201を開口291の上方位置へ移動させると、揚重手段271,272の操作ハンドル279を操作し、配管ユニット201を設置箇所290へ降ろす。そして基台210の底部周縁をアンカー292に固定する。これにより、基台210は、開口291を囲繞するように設置される。また、基台210がアンカー292によって床スラブに固定されることにより、基台210は、躯体(床スラブ)と一体構造物となる。
【0143】
配管ユニット201の基台210を設置箇所290へ据え付けた後、
図43に示すように、揚重手段271,272の滑車277を取り外し、レール部221,222の上端に設けられている係合部224に滑車277を取り付ける。また、揚重手段271,272のフック275は、第1保持部材230の左右両側の係合金具236に設けられている係合部237に係止される。そして係合部235b,236bのボルトとナットを緩めた後、揚重手段271,272の操作ハンドル279を同時に所定方向に回転させて索条274を巻き取っていく。これにより、揚重手段271,272は、第1保持部材230をレール部221,222に沿って上昇させることができる。
【0144】
図44は、第1保持部材230を所定高さ位置へ上昇させた状態を示している。
図44に示すように、揚重手段271,272は、係合金具235がレール部221,222の上端近傍位置に達するまで第1保持部材230をレール部221,222に沿って上昇させることができる。
図44に示すように、第1保持部材230を上昇させると、係合部235b,236bのボルトとナットを締め付け、第1保持部材230をレール部221,222に固定する。これにより、第1保持部材230に保持されている配管208は、レール部221,222の上部に固定されると共に、振れ止め効果も付与される。すなわち、配管208は、十分な耐震性能を備えた状態でレール部221,222に固定される。
【0145】
第1保持部材230をレール部221,222の上部に固定することができると、フック275を係合部237から取り外すと共に、滑車277をレール部221,222の係合部224から取り外す。そして作業用台車202の第2連結ビーム265を台車本体260から取り外し、作業用台車202を配管ユニット201の周囲から撤去する。これにより、配管ユニット201は、
図35に示した状態となる。その後、第2保持部材240の左右両側に設けられた係合部245b,246bのボルトとナットを緩め、第2保持部材240をガイド部215に沿って基台210の後方側へ移動させることにより、第2保持部材240は、
図36に示したように第1保持部材230の下方に配置される。そして係合部245b,246bのボルトとナットを締め付け、第2保持部材240を基台210に固定する。第2保持部材240が基台210に固定されることにより、第2保持部材240に保持されている配管209も基台210に固定されると共に、振れ止め効果も付与される。すなわち、配管209は、十分な耐震性能を備えた状態で基台210に固定される。
【0146】
第2保持部材240を第1保持部材230の下方位置に固定すると、基台210の上部前方側には空きスペースができる。この空きスペースには歩廊床を取り付けることが可能である。
図45は、基台210の上部前方側に歩廊床281を取り付けた例を示す斜視図である。また、
図46は、歩廊床281を取り付けた配管ユニットを示す側面図である。
図45及び
図46に示すように、歩廊床281は、基台210の上端部に配置されたフレーム材211に固定される。基台210の上部に歩廊床が取り付けられることにより、配管208の下端部と配管209の上端部とをロウ付け等によって接続する際、
図46に示すように、作業者は歩廊床281に乗って作業を行うことができる。また、電気ケーブル239の下端に設けられたコネクタ239bと、電気ケーブル249の上端に設けられたコネクタ249aとの接続作業を行う際も歩廊床281に乗って行うことができる。そのため、配管208,209の接続作業、及び、電気ケーブル239,249の接続作業を効率良く行うことができるという利点がある。また、歩廊床281に乗って行う作業は高所作業となるため、歩廊床281には手摺282を取り付けることが好ましい。
【0147】
一方、配管209の下端部は、下階フロアに設置された配管293の上端部に接続される。また、電気ケーブル249の下端に設けられたコネクタ249bは、下階フロアに設置された配管293と共に束ねられている電気ケーブルの上端に設けられたコネクタに接続される。
【0148】
上記のようにして配管ユニット201が設置箇所290に設置されると、配管208の上端は、上階フロアの床スラブ295に形成された開口296に差し込まれた状態となり、その開口296から更に上方に突出している。また、電気ケーブル239の上端に設けられたコネクタ239aも上階フロアの床スラブ295に形成された開口296から上方に突出した状態となる。したがって、上階フロアにおいて上記と同様の工程で作業を進めることにより、上階フロアにも同様の配管ユニット201を据え付けることができる。
【0149】
以上のように、本実施形態における作業用台車202は、一対の揚重手段271,272が配管ユニット201を持ち上げた状態で台車本体260を移動させることにより配管ユニット201を設置箇所290へ搬送することが可能であると共に、配管ユニット201を横倒し姿勢(水平姿勢)と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能である。更に、上述した作業用台車202は、配管ユニット201を設置箇所290へ設置する際にも使用することが可能である。このような作業用台車202を用いれば、配管ユニット201を設置する際に必要な人数を最小限に抑えることができるため、低コストで効率的に施工できるという利点がある。
【0150】
尚、上記においては、昇降駆動部として設けられた揚重手段271,272が手動式である場合を例示したが、手動式に限られるものではなく、電動式のものを採用しても構わない。
【0151】
また、上記においては、配管ユニット201を工場から建築現場へ搬送する際には、作業用台車202を用いない例を説明したが、これに限られるものではない。すなわち、工場から建築現場へ搬送する際にも上述した作業用台車202を使用し、配管ユニット201を作業用台車202に積載した状態で搬送するようにしても構わない。
【0152】
(変形例)
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0153】
例えば、上記実施形態では、搬送装置1による搬送対象物として、空気調和機及び配管ユニットを例示したが、搬送装置1による搬送対象物は、上記以外のものであっても構わない。例えば、搬送装置1は、建築中の建物内に設置される鋼管などの配管を設置現場へ搬送する際にも好適に利用し得るものである。この場合の配管の本数は、複数本であっても良いし、1本であっても良い。特に建築物に設置される鋼管は上述した冷媒配管に比べると重量があるため、上述した搬送装置1を利用することで搬送効率を向上させることができる。更に、建築物に設置される鋼管は竪管として設置されるものであっても良いし、水平方向に設置されるものであっても良い。鋼管が竪管として設置される場合は、上述した搬送装置1の姿勢変化機能によって鋼管を水平姿勢の状態で搬送でき、設置現場では鋼管を鉛直方向に立てることができるため、作業効率も向上させることが可能である。
【0154】
また、上述した搬送装置1は、その他にも、大きさが一定サイズを超えるもの、或いは、作業者が手で持ち上げることができない重量物など、建築中の建物内に設置される設置対象物の全般について適用し得るものである。
【符号の説明】
【0155】
1…搬送装置、2(2a,2b)…支持部材、3…台車、9…設置対象物、24a,24b…支柱部、26…昇降部材、27…操作ハンドル(昇降駆動部)、30a,30b…保持部、50(50A,50B)…空気調和機(設置対象物)、101…配管ユニット(設置対象物)、150…作業用台車(搬送装置)、201…配管ユニット(設置対象物)、202…作業用台車(搬送装置)。
【要約】
【課題】建築中の建物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する際に好適に用いることができる搬送装置を提供する。
【解決手段】建築物に設置される設置対象物を設置現場に搬送する搬送装置1は、設置対象物9において互いに平行な2つの側面に取り付けられ、設置対象物9を支持する支持部材2と、設置対象物9を保持した状態で移動可能な台車3と、を備える。台車3は、互いに対向する状態で立設する一対の支柱部24a,24bと、一対の支柱部24a,24bのそれぞれに設けられ、支持部材2に係合して設置対象物9を保持する保持部30a,30bと、保持部30a,30bを支柱部24a,24bに沿って上下方向に昇降させる昇降駆動部と、を備える。保持部30a,30bは、支持部材2を回転可能に保持しており、設置対象物9を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能である。
【選択図】
図3