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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
G01L19/06 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022571928
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2021040333
(87)【国際公開番号】W WO2022137812
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2020213900
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(73)【特許権者】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】日高 敦志
(72)【発明者】
【氏名】中谷 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】深澤 政紀
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/075600(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/155994(WO,A1)
【文献】特開2013-057512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363499(US,A1)
【文献】特開2005-148002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が形成されたボディに固定される圧力センサであって、
前記流路と連通する受圧室を内側に有する有底筒状のセンサモジュールであって、前記受圧室に接するダイヤフラムを含むセンサモジュールと、
前記ダイヤフラムに固定され、前記ダイヤフラムの歪を圧力として出力する圧力検出素子と、
前記センサモジュールの開放側端部の外縁において固定され、前記センサモジュールの外周側に配置されるベースリングと、
前記ベースリングに固定され、前記ダイヤフラムを挟んで前記受圧室と対向する封止真空室を形成するためのハーメチック部材と、
前記ベースリングと前記ボディの間に挟持されるガスケットと、
前記ガスケットを介して前記ベースリングを前記ボディに押圧する押さえフランジと
を備える、圧力センサ。
【請求項2】
前記ダイヤフラムは、コバルト-ニッケル合金から形成されている、請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記ダイヤフラムは、500℃以上の温度で100分以上熱処理されたコバルト―ニッケル合金から形成されている、請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記ベースリングに、前記押さえフランジを用いた前記ボディへの固定時に前記ダイヤフラムに伝わる応力を緩和させるための溝が形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記溝は、前記ハーメチック部材が固定される側の前記ベースリングの端面において周方向に沿って形成されている、請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記溝は、前記センサモジュールと面する前記ベースリングの内周面において周方向に沿って形成されている、請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記ベースリングの外周部に固定され、前記ベースリングと同径の筒状の外周壁をさらに備え、前記外周壁の内側に間隙を開けて前記ハーメチック部材が配置されている、請求項1から6のいずれかに記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記ハーメチック部材は、前記ベースリングに固定されるハーメチックリングと、前記ダイヤフラムと間隙を開けてこれを覆うように配置され前記ハーメチックリングを封止する蓋とを含む、請求項1から7のいずれかに記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記流路および前記受圧室に流体を封止した後に前記流路および前記受圧室を真空引きしたとき、封止した前記流体の温度が210℃、封止期間120分、封止圧力200kPa abs.の条件下において、前記真空引きしたときに前記圧力検出素子が出力する圧力がゼロを下回る量が、前記封止圧力の0.25%以下である請求項1から8のいずれかに記載の圧力センサ。
【請求項10】
前記ボディへの前記押さえフランジの締め付けトルクが50N・m以下である、請求項1から9のいずれかに記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関し、特に、半導体製造装置等に供給されるガスの圧力測定に好適に用いられるダイヤフラム式の圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造設備又は化学プラント等において、原料ガスやエッチングガスなどの種々のガスがプロセスチャンバへと供給される。供給されるガスの流量を制御する装置としては、マスフローコントローラ(熱式質量流量制御器)や圧力式流量制御装置が知られている。
【0003】
圧力式流量制御装置は、コントロール弁とその下流側の絞り部(例えばオリフィスプレートや臨界ノズル)とを組み合せた比較的簡単な構成によって、各種流体の質量流量を高精度に制御することができる。圧力式流量制御装置は、一次側の供給圧力が大きく変動しても安定した流量制御が行えるという優れた流量制御特性を有している(例えば、特許文献1)。
【0004】
圧力式流量制御装置では、コントロール弁の下流側の圧力を測定するための圧力センサが設けられている。そのような圧力センサとして、例えばダイヤフラムに歪ゲージを取り付けてガスの圧力を検出するタイプのものが用いられている(例えば、特許文献2)。このようなダイヤフラム式の圧力センサは、ダイヤフラムが、測定ガスの圧力に応じて変形または歪むように構成されており、歪ゲージが検出した応力の大きさに基づいて、測定ガスの圧力が測定される。
【0005】
また、近年、圧力式流量制御装置の上流側に接続された気化供給装置を用いて、液体原料を気化して供給する構成が知られている(例えば、特許文献3)。気化供給装置では、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、六塩化二ケイ素(HCDS)等の液体原料が、気化供給装置の気化室に圧送され、ヒータによって加熱される。気化した原料ガスは、気化室の下流側に設けられた圧力式流量制御装置によって流量制御されてプロセスチャンバへと供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3546153号公報
【文献】国際公開第2020/075600号
【文献】国際公開第2019/021948号
【文献】特許第3494594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の気化供給装置を用いる場合などにおいて、圧力式流量制御装置には200℃以上の高温のガスが供給されることがある。また、圧力式流量制御装置の下流側のストップバルブを閉鎖した状態では、例えば一定以上の時間、200kPa abs(絶対圧力)程度の高圧ガスが、負荷として圧力センサに与えられることがある。
【0008】
本願発明者は、特に上記のような高温、高圧での使用環境下では、圧力式流量制御装置が接続された流路において、ガス加圧封止状態からストップバルブを開くとともに真空引きを行ったときに、ゼロを超えてマイナスの値にまで圧力センサの出力(絶対圧)が落ち込む現象(以下、ゼロ点ずれまたはゼロ点ドロップと呼ぶことがある)が生じることを発見した。そして、このように圧力センサがゼロを割り込む出力を示した後は、真空引きを継続した状態であっても、圧力センサの出力がマイナスからゼロに回復するためには、相当な時間、例えば数時間を要する場合があることを確認した。
【0009】
このようなゼロ点ドロップの発生は、圧力センサの出力の信頼性を損なうものであり、ゼロ点ドロップが生じたときには、以降のプロセスを中断して、対処する必要が生じることもある。したがって、高温環境下でも使用可能であり、また、加圧封止後の真空引き時においてもゼロ点ドロップが生じにくい、ダイヤフラム式の圧力センサを提供するという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、高温環境下での使用において、出力がゼロを割り込むゼロ点ドロップが抑制された圧力センサを提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態による圧力センサは、流路が形成されたボディに固定され、前記流路と連通する受圧室を内側に有する有底筒状のセンサモジュールであって、前記受圧室に接するダイヤフラムを含むセンサモジュールと、前記ダイヤフラムに固定され、前記ダイヤフラムの歪を圧力として出力する圧力検出素子と、前記センサモジュールの開放側端部の外縁において固定され、前記センサモジュールの外周側に配置されるベースリングと、前記ベースリングに固定され、前記ダイヤフラムを挟んで前記受圧室と対向する封止真空室を形成するためのハーメチック部材と、前記ベースリングと前記ボディの間に挟持されるガスケットと、前記ガスケットを介して前記ベースリングを前記ボディに押圧する押さえフランジとを備える。
【0012】
ある実施形態において、前記ダイヤフラムは、コバルト-ニッケル合金から形成されている。
【0013】
ある実施形態において、前記ダイヤフラムは、500℃以上の温度で100分以上熱処理されたコバルト―ニッケル合金から形成されている。
【0014】
ある実施形態において、前記ベースリングに、前記押さえフランジを用いた前記ボディへの固定時に前記ダイヤフラムに伝わる応力を緩和させるための溝が形成されている。
【0015】
ある実施形態において、前記溝は、前記ハーメチック部材が固定される側の前記ベースリングの端面において周方向に沿って形成されている。
【0016】
ある実施形態において、前記溝は、前記センサモジュールと面する前記ベースリングの内周面において周方向に沿って形成されている。
【0017】
ある実施形態において、前記ベースリングの外周部に固定され、前記ベースリングと同径の筒状の外周壁をさらに備え、前記外周壁の内側に間隙を開けて前記ハーメチック部材が配置されている。
【0018】
ある実施形態において、前記ハーメチック部材は、前記ベースリングに固定されるハーメチックリングと、前記ダイヤフラムと間隙を開けてこれを覆うように配置され前記ハーメチックリングを封止する蓋とを含む。
【0019】
ある実施形態において、前記流路および前記受圧室に流体を封止した後に前記流路および前記受圧室を真空引きしたとき、封止した前記流体の温度が210℃、封止期間120分、封止圧力200kPa abs.の条件下において、前記真空引きしたときに前記圧力検出素子が出力する圧力がゼロを下回る量が、前記封止圧力の0.25%以下である。
【0020】
ある実施形態において、前記ボディへの前記押さえフランジの締め付けトルクが50N・m以下である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態に係る圧力センサでは、高温環境下で加圧封止後に真空引きしたときに生じるゼロ点ドロップ量が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態による圧力センサを用いるガス供給系を示す図である。
図2】本発明の実施形態による圧力センサを示す図であり、(a)は断面図、(b)は上面から見たときの透過図である。
図3】ボディへの圧力センサの取り付け態様を示す断面図である。
図4】加圧封止後に真空排気したときの圧力センサのゼロ点ドロップを示す図であり、(a)は全体工程を示す図、(b)は時間軸方向に圧縮された拡大図である。
図5】封止時圧力によってゼロ点ドロップ量が変動することを示す図である。
図6】周囲温度に応じてゼロ点ドロップ量(オフセット電圧変動量)が変動することを示す図である。
図7】ダイヤフラムを形成する各材料の組成(重量比率)を示す図である。
図8】ダイヤフラムの材質や溝の有無などによるゼロ点ドロップ量の違いを示す図である。
図9】ボディへの取り付け時にダイヤフラムに生じる応力を緩和させための溝を設けた変形例の圧力センサを示す断面図であり、(a)と(b)は別の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態による圧力センサ10を備える圧力式流量制御装置20およびその上流側に設けられた気化供給装置30を含む高温ガス供給系100を示す。また、図2(a)および(b)は、本実施形態による圧力センサ10を示す。
【0025】
図1に示すように、圧力センサ10は、圧力式流量制御装置20のコントロール弁22と絞り部24との間の流路に設けられ、絞り部24の上流側圧力(以下、上流圧力P1または制御圧力と呼ぶことがある)を検出するために用いられる。圧力センサ10の出力は、コントロール弁22をフィードバック制御するために用いられ、コントロール弁22を用いて上流圧力P1を制御することによって、絞り部24の下流に流れる流体の流量を制御することが可能である。また、絞り部24の下流側にはストップバルブ28が設けられており、これを閉鎖することでガスの供給の停止をより確実に行うことができる。
【0026】
コントロール弁22としては、任意開度に調整可能な種々の弁(比例弁)が用いられ、例えば、ピエゾアクチュエータによってダイヤフラム弁の開度を調整するように構成されたピエゾバルブが好適に用いられる。ストップバルブ28としては、応答性、遮断性に優れた空気駆動弁(AOV)や電磁弁などのオンオフ弁が好適に用いられる。絞り部24としては、オリフィスプレートや臨界ノズルが好適に用いられる。オリフィス径またはノズル径は、例えば10μm~2000μmに設定される。
【0027】
高温ガス供給系100において、気化供給装置30は、液体原料Lを受け取り、これを気化して、ガスGとして圧力式流量制御装置20に送出する。気化供給装置30は、液体原料Lを予め加熱しておくための予加熱部32および液体原料供給弁36を介して予加熱部32に接続される気化部34を有しており、液体原料供給弁36の開閉動作により、気化部34への液体原料Lの供給量を制御可能である。
【0028】
気化供給装置30の予加熱部32は、ヒータにより例えば180℃に加熱され、気化部34は例えば200℃に加熱され、さらに、送出されたガスの再液化の防止のために、圧力式流量制御装置20は、例えば、210℃以上に加熱される。このため、圧力センサ10も、200℃以上の高温に加熱されることになり、このような高温環境下でも正確に圧力を検出することが求められる。なお、本実施形態では、ストップバルブ28もヒータによって加熱されており、ストップバルブ28の出口側は例えば220℃に加熱されている。ヒータの設定温度は、気化させる材料によって任意に選択される。
【0029】
本実施形態では、コントロール弁22の上流側に、供給圧力P0を測定するための流入圧力センサ26も設けられている。流入圧力センサ26の出力は、例えば、気化部34でのガス生成量制御のために用いられる。この流入圧力センサ26も、以下に説明する圧力センサ10と同様の構成を有していてよい。
【0030】
図2(a)および(b)に示すように、本実施形態の圧力センサ10は、片面が受圧室C1に接するダイヤフラム11aを有しており、受圧室C1と反対側の面には歪ゲージを含む圧力検出素子12が固定されている。また、受圧室C1と反対側の面(または、圧力検出素子12が設けられた面)に接するように、真空室C2が設けられている。圧力センサ10は、ダイヤフラム11aに応力が生じていないとき、つまり、受圧室C1と真空室C2の圧力が同等と考えられるときに、絶対圧としてゼロを出力するように構成されている。
【0031】
図3は、圧力センサ10の取り付け例を示す。圧力センサ10は、図2(a)に示した向きとは上下逆向きの態様で、流路が形成されたボディ5の下面に設けられた収容凹部内に収容され固定されている。ボディ5は、図1に示した圧力式流量制御装置20の流路が形成された金属ブロック(例えば、SUS316L製)であり、ボディ5の上面側には、ピエゾバルブ等が取り付けられる。
【0032】
収容凹部の底面中央部には、ボディ5に形成された流路と圧力センサ10の受圧室C1とを連通させる連通路が設けられており、圧力センサ10は、ボディ5の流路を流れる流体の圧力を測定することができる。なお、本例とは異なり、圧力センサ10は、流路と連通する限り、ボディ5の上面側(ピエゾバルブが固定された側)等、他の場所に取り付けられてもよい。
【0033】
圧力センサ10は、ガスケット18によってシール性が保たれながら、ボディ5の収容凹部の底面に押し付けられるようにして固定される。圧力センサ10の固定は、外側から押さえフランジ19(例えば、SUS316L製)を締め付けることによって行われる。このとき、押さえフランジ19の締め付けトルクNの大きさを調整することによって、圧力センサ10の固定具合が変化する。本実施形態では、比較的小さいトルク(例えば、50N・m以下)による固定が行われており、これは、圧力センサ10、特にダイヤフラム11aに固定時に付加される応力を軽減するためである。締め付けトルクNによるセンサ出力の変化については後述する。
【0034】
再び図2(a)および(b)を参照して、圧力センサ10の詳細構成を説明する。上述したように、圧力センサ10は、受圧室C1に流入した流体に接し流体の圧力に応じて歪むダイヤフラム11aを有しているが、ダイヤフラム11aは、有底筒状に形成されたセンサモジュール11の底部として設けられている。
【0035】
また、センサモジュール11は、嵌合固定されるベースリング14によって支持されている。また、ベースリング14の上端面には、ハーメチック部材13(ハーメチックリング13aと蓋15とを含む)が固定されている。ハーメチック部材13(より具体的にはハーメチックリング13a)とベースリング14とは、嵌合する環状段差部を溶接することによって気密に接続されており、これらの内部空間にセンサモジュール11が収容される。
【0036】
本実施形態では、ハーメチック部材13は、筒状のハーメチックリング13aと蓋15とを溶接することによって有底筒状に形成されている。ハーメチック部材13は、センサモジュール11のダイヤフラム11aの上方に設けられている。より詳細には、ハーメチックリング13aは、ダイヤフラム11aの外側周壁としてベースリング14に固定して設けられ、蓋15は、空隙を開けてダイヤフラム11aを覆うようにハーメチックリング13aの開口を封止するように設けられている。この構成において、ハーメチック部材13の内側を真空引きした後に封止することによって、ダイヤフラム11aに接する気密封止状態の真空室(封止真空室)C2が形成される。真空室C2は、ダイヤフラム11aを挟んで、受圧室C1と対向している空間である。
【0037】
また、ハーメチックリング13aには、複数本のリード線13cの先端部が低融点ガラス材13bを介して気密状に挿通されており、各リード線13cの先端部はボンディングワイヤを介して、圧力検出素子12の歪ゲージに接続されている。ボンディングワイヤは、通常、金により形成されるが、金の代わりにアルミニウム、銅等を使用しても良い。ボンディングワイヤのワイヤ径は10~50μmに設計される。歪ゲージは、通常、金属箔の抵抗線によって構成されており、抵抗線の電気抵抗の変化をリード線13cを介してブリッジ回路によって検出することによって、ダイヤフラム11aに生じた歪の大きさを検出することができる。
【0038】
また、本実施形態において、ベースリング14は、センサモジュール11の円筒部11bの外周面と対向する内周面を備えた収容凹部を有している。また、センサモジュール11の開放側端部11cは、円筒部11bよりも小径に形成されるとともにフランジ有しており、ベースリング14の収容凹部も、センサモジュール11の開放側端部11cに適合する形状に形成されている。ベースリング14は、センサモジュール11の開放側端部11cの外縁に溶接されており、ベースリング14とセンサモジュール11とは互いに対してしっかりと固定されている。
【0039】
ベースリング14の外周部下側(ボディ5の収容凹部底面に対向する側)には、リング状のガスケット18を配置するための環状の切り欠きが形成されている。これにより、図3に示したように、ボディ5に圧力センサ10を取り付けたときに、ガスケット18を介して固定が行われ、流路と外部とのシール性が向上する。ガスケット18は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼などの金属から形成されていてもよいが、後述のゼロ点ドロップを抑制するために、より柔軟な材料であるO-リングから形成されていてもよい。ガスケット18は、押さえフランジ19の締め付けに応じて変形し、シール性を向上させることができる。
【0040】
以上の構成において、ベースリング14とボディ5との間にはガスケット18が挟持されているとともに、センサモジュール11が直接的ではなくベースリング14に収容される態様で固定されている。このような態様では、押さえフランジ19を用いてボディ5の凹部に圧力センサ10を取り付ける際に、センサモジュール11にベースリング14からの応力がかかりにくくなっている。したがって、取り付け後の状態において、センサモジュール11のダイヤフラム11aにおける残留応力が小さく、これにより、特に高温、高圧環境下で生じやすい圧力センサ10のゼロ点ドロップを抑制することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、ベースリング14の外周部上側において、ベースリング14と同径の円筒状の外周壁17が固定されている。この構成において、外周壁17の内側には、間隙を開けてハーメチック部材13が配置されている。
【0042】
外周壁17を設けることによって、圧力センサ10をボディ5の収容凹部に気密にガタツキなく固定しやすくなる。また、押さえフランジ19によって、これと当接する外周壁17を介して圧力センサ10の固定が行われるので、押さえフランジ19を締め付けたときにもダイヤフラム11aに応力が生じにくくなる。ただし、十分な気密性や固定具合が確保できるときは、外周壁17は必ずしも必要ではない。また、外周壁17をベースリング14に設ける代わりに、押さえフランジ19に同様の外周壁を設けて、ベースリング14の周縁部を押圧するように構成してもよい。
【0043】
ここで、本実施形態においては、ベースリング14は、耐食性等に優れたニッケル-モリブデン-クロム合金の一つであるハステロイC-22(ハステロイは登録商標)により形成されている。なお、ベースリング14は、ダイヤフラム11aのような変形が求められないので、ハステロイC-22の代わりにステンレス鋼(例えば、SUS316L等)を用いて形成されていても良い。また、ハーメチックリング13aや外周壁17は、耐食性等に優れたオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316LやSUS304などにより形成されている。
【0044】
一方で、ダイヤフラム11aを含むセンサモジュール11は、ベース部材(ハーメチックリング13aおよびベースリング14)とは異なり、ニッケル-コバルト合金であるスプロン510(スプロンは登録商標)から形成されている。これは、ダイヤフラム11aの材質が、圧力センサ10のゼロ点ドロップに大きく影響するからである。このように、圧力センサ10では、各構成部材の材料をそれぞれ適切に選択することによって、シール性を確保しながら、高温・高圧での使用に適合するものである。ダイヤフラム11aの厚さは、例えば、50μm~200μmに設計される。
【0045】
以下、圧力センサ10のゼロ点ドロップ現象に対するさらなる対策について説明する。
【0046】
図4(a)に示すように、2時間など比較的長い期間、圧力センサ10に例えば約200kPa abs(絶対圧)以上の圧力が負荷として与えられる場合がある。これは、例えば、ガス供給の前段階として、下流側のストップバルブ28が閉じられてガス供給を停止している状況で生じる。
【0047】
ガス供給を停止しているとき、コントロール弁22も通常は閉じられているが、バルブのシートからリークが生じることもあり、コントロール弁22の下流側の圧力(すなわち上流圧力P1)も、気化供給装置30のガス圧(すなわち供給圧力P0)と同様に高い圧力になることがある。このため、気化供給装置30とストップバルブ28との間の流路に長時間ガスを封止したときには、圧力センサ10が測定する上流圧力P1も、長時間にわたって高い圧力に維持される。
【0048】
そして、このような高温で高圧に維持された加圧封止状態が長く続くと、図4(b)に時間軸を圧縮するとともに拡大して示すように、その後に、ストップバルブ28を開いて流路内の真空排気を開始したとき、圧力センサ10の出力(すなわち上流圧力P1)が、ゼロを下回ってマイナスの値を示すことがある。また、圧力センサ10の出力は、時間の経過とともにマイナスの値からゼロに回復していくが、回復のために例えば数時間以上もの時間(ここでは4.5時間)を要することもある。
【0049】
このようなゼロ点ドロップ現象が生じる理由は、ダイヤフラム11aに与えられる応力が急激に大きく変化すると、ダイヤフラム11aの材料に応じたクリープ現象(材料に生じる歪みの時間変化)が生じるためと考えられる。クリープ現象は、一般に温度が高いほど顕著であることが知られている。
【0050】
より詳細には、歪ゲージは、ダイヤフラムに生じた応力を電気抵抗の変化として検出する素子であるので、流路が真空圧に維持されているときにも、ダイヤフラム11aに生じたクリープによって、出力が時間に対して変化してしまうことになる。このため、特に高温環境下において、歪が解消するまで、圧力としてもゼロを下回る値を比較的長い時間出力してしまっているものと考えられる。なお、真空排気開始時の出力がゼロを下回る理由としては、圧力変動時にダイヤフラム11aに生じた意図しない応力(例えば、歪みゲージを圧縮させる方向に働く応力)が影響して、歪ゲージの電気抵抗値が、絶対圧ゼロに対応づけられた基準値よりも小さくなっていることが考えられる。
【0051】
図5は、加圧封止時の圧力(以下、封止時圧力と称することがある)の大きさに応じてゼロ点ドロップ量が変化することを示すグラフである。図5からわかるように、同じ時間(ここでは20分)の封止後であっても、封止時圧力が50kPaのときよりも100kPaのときの方がゼロ点ドロップ量は大きく、100kPaのときよりも150kPaのときの方がゼロ点ドロップ量は大きく、150kPaのときよりも200kPaのときの方がゼロ点ドロップ量は大きい。このように、封止時圧力が高いほど、落ち込み時のゼロ点ドロップ量は大きくなり、また、その回復に要する時間も長くなることが観察される。
【0052】
また、図6は、周囲温度と、オフセット電圧変動量(ゼロ点ドロップ量に対応)との関係を示すグラフであり、加圧封止時間が2分、20分、120分の各場合における、真空排気開始直後のオフセット電圧変動量を示す。いずれの場合にも、封止時圧力は、200kPa abs.で統一されている。オフセット電圧変動量は、絶対圧力ゼロのとき(すなわち、歪ゲージに歪みが生じていないとき)にゼロを出力するように校正された圧力センサが真空排気開始直後に示した出力値であり、より具体的には、歪ゲージに接続されたホイートストンブリッジ回路が出力した電圧信号の値(平均値)である。
【0053】
図6からわかるように、オフセット電圧変動量(すなわちゼロ点ドロップ量)は、真空排気前の加圧封止時間が長くなるほど、また、周囲温度が高温であるほど、大きくなる傾向がある。例えば、加圧封止時間が20分以上で周囲温度が200℃以上であるときには、オフセット電圧変動量が比較的大きくなり、加圧封止時間が20分以上で周囲温度250℃のとき、あるいは、加圧封止時間が120分で周囲温度が200℃以上のときには、オフセット電圧変動量が相当に大きくなる。
【0054】
このように、ダイヤフラム11aが、特に高温・高負荷に長時間曝された後には、ゼロ点ドロップ量が大きくなることがわかる。そして、ゼロ点ドロップ現象は、ダイヤフラム11aに生じたクリープ現象によって生じるものであるので、ダイヤフラム11aの機械的性質の制御が、クリープひいてはゼロ点ドロップの抑制のために重要であると考えられる。
【0055】
本願発明者は、以上の知見に基づいて、ゼロ点ドロップ量を抑制できるダイヤフラム11aの材料の選定を行った。その結果、図2に示したような構成を有する圧力センサ10を用いることに加えて、ダイヤフラム11aを従来のハステロイではなく、スプロンから形成することが好適であることを発見した。そして、特に、スプロン製のダイヤフラム11aを適切に熱処理することによって、ゼロ点ドロップをより効果的に抑制できることを発見した。
【0056】
図7は、ダイヤフラム11aとして用いられる可能性がある4種類の金属の組成(重量%)を示す。図7に示すように、従来しばしば用いられていたハステロイは、Niを50wt%以上含む一方でCoの含有量は小さく、MoおよびCrをそれぞれ13wt%、22wt%含む、ニッケル-モリブデン-クロム合金である。
【0057】
また、インコネル600(インコネルは登録商標)は、ニッケルを主体とし、クロム、鉄を含むニッケル-クロム-鉄合金である。さらに、MAT21(登録商標)は、表に示されないTaを約1.8wt%含む、ハステロイ同様のニッケル-モリブデン-クロム合金である。
【0058】
一方、本実施形態におけるダイヤフラム11aの材料であるスプロン510は、コバルト-ニッケル合金(またはコバルト-ニッケル-クロム-モリブデン合金)である。
【0059】
本明細書において、コバルト-ニッケル合金とは、CoとNiの合計が50wt%以上であり、かつ、CoおよびNiをそれぞれ20wt%以上含有する合金を意味する。また、本明細書におけるコバルト-ニッケル合金とは、典型的には、Coの含有量がCrの含有量およびMoの含有量よりも多いものを指す。上記の例では、ハステロイ、インコネル600、および、MAT21は、非コバルト-ニッケル合金に該当し、スプロン510のみがコバルト-ニッケル合金に該当する。
【0060】
本実施形態で用いられるコバルト-ニッケル合金であるスプロン510は、ハステロイ、インコネル600、MAT21よりも変形が生じにくい機械的性質を有しているものと考えられる。ハステロイの室温での0.2%耐力は343MPa、インコネルは347MPa、MAT21は355MPaであるのに対して、後述する熱処理を行った後のスプロン510の0.2%耐力は、1050MPaと格段に大きいことが確認されている。
【0061】
したがって、ダイヤフラム11aを、より変形が生じにくい(または弾性変形する応力範囲が広い)コバルト-ニッケル合金から形成し、高温下でも応力に対する歪を生じにくくさせることによって、ゼロ点ドロップを抑制することが期待できる。
【0062】
図8は、ダイヤフラム11aの材料をハステロイ(非ニッケル-コバルト合金)から形成したとき(サンプルS0、S1)と、スプロン510(ニッケル-コバルト合金)から形成したとき(サンプルS2、S3、S4)でのゼロ点ドロップ量(kPa)の違いを示す図である。図8に示した結果は、図1に示した高温ガス供給系100に、圧力センサ10を組み込み、加圧封止状態からストップバルブ28を開いて真空排気を開始したときの圧力センサ10の出力から得られたものである。
【0063】
ゼロ点ドロップ量としては、真空排気前の加圧封止時間が2分、20分、120分のそれぞれの場合であったときの測定結果が示されている。いずれの場合も、封止時圧力は200kPa absで共通であり、設定温度(周囲温度)は210℃で共通である。
【0064】
また、図8には、ダイヤフラム11aの熱処理の有無(〇が有り、-が無し)、後述する溝加工の有無(〇が有り、-が無し)、押さえフランジ19によるセンサ締め付けトルクの違い(強または弱)による、ゼロ点ドロップ量(kPa)の変化も記載されている。
【0065】
なお、表に示す改善(%)は、封止時間20分の時のサンプルS0(基準となる実施形態)に対するサンプルS1~S4でのゼロ点ドロップ量の抑制率(ドロップ量差分/S0ドロップ量)を示している。なお、表に記載のゼロ点ドロップ量は小数点以下2桁に丸められているため、表に記載のゼロ点ドロップ量から計算できる改善率と、改善(%)として示す値とは多少異なるものとなる。
【0066】
他の条件が同じで、材料がハステロイC-22とスプロン510とで異なるサンプルS1とサンプルS2とを比較すると、スプロン510を用いた場合(サンプルS2)の方が、ゼロ点ドロップ量が改善していることがわかる。すなわち、ダイヤフラム11aをコバルト-ニッケル合金から形成することによって、高温、高圧環境下でのゼロ点ドロップを抑制することができることがわかる。
【0067】
また、図8のサンプルS2およびサンプルS3に示すように、同じスプロン510を用いたときであっても、熱処理を行ったときと、熱処理を行わなかったときとでは、封止時間が20分以上の場合に、熱処理を行った方がゼロ点ドロップ量の改善効果が向上することがわかる。
【0068】
ここで、熱処理は、真空下、温度525℃で2時間の加熱を行い、その後、徐冷する、時効処理により行った。その結果、硬度Hvが、熱処理前に比べて20%弱向上したことが確認された。また、引っ張り強さは、熱処理を行う前に約2400MPaであったのが、熱処理後には2800MPaにまで引き上げられた。また、熱処理後の0.2%耐力は、上述したように1050MPaとなり、従来材料に比べて変形が生じにくい材料となっている。
【0069】
上記の熱処理は、500℃以上の温度で100分以上行うことが好適である。このように熱処理されたコバルト―ニッケル合金から形成されたダイヤフラム11aを用いることによって、熱処理を行わなかった場合に比べて、ゼロ点ドロップ抑制の有意な改善効果が得られる。
【0070】
また、図8のサンプルS3とサンプルS4とを比較してわかるように、押さえフランジ19の締め付けトルクNを、例えば50N・m以下など、比較的弱くにすることによっても、ゼロ点ドロップ改善効果が向上している。これは、押さえフランジ19を強く締めすぎた状態では、ダイヤフラム11aに余計な応力が加わり、ダイヤフラム11aに生じる歪みが増大してしまっているためと考えられる。
【0071】
したがって、圧力センサ10のシール性を高めるには、締め付けトルクNを増加させた方がよいが、シール性はガスケット18を用いることによって確保するとともに、ゼロ点ドロップ抑制のために、なるべく小さい50N・m以下の締め付けトルクNで圧力センサ10をボディ5に固定することが好適である。ただし、締め付けトルクNが小さすぎてもセンサの固定具合やシール性に支障をきたすので、締め付けトルクNは20N・m以上であることが好適である。
【0072】
また、図8に示したサンプルS0以外のサンプルS1~S4の圧力センサでは、センサモジュール11を保持するベースリング14に溝加工が施されている。溝加工は、押さえフランジ19を用いて圧力センサ10の取り付けるときに、ダイヤフラム11aに伝達される応力を緩和させるための応力伝達緩和溝として設けられている。サンプルS0とサンプルS1とを比較してわかるように、溝加工を施すだけでも、ゼロ点ドロップのさらなる改善効果が得られている。
【0073】
図9(a)および(b)は、上記の溝加工が施された変形例の圧力センサ10A、10Bを示す。図9(a)および(b)に示す圧力センサ10A、10Bにおいて、ベースリング14には、それぞれ別の態様の応力伝達緩和溝14Gが形成されている。
【0074】
図9(a)に示す圧力センサ10Aでは、ベースリング14におけるガスケット装着面と反対側の面、すなわち、押さえフランジ19によって押圧される側の面、あるいは、ハーメチック部材13が固定される側の端面において、ハーメチック部材13や外周壁17と同心状の環状の応力伝達緩和溝14Gが形成されている。
【0075】
この応力伝達緩和溝14Gは、ハーメチック部材13の外周面と連続する内側側面を有し、ベースリング14の厚さの半分から8割程度の深さを有する溝として形成されている。このように形成された応力伝達緩和溝14Gによって、応力の伝達が緩和され、押さえフランジ19を締め付けたときにダイヤフラム11aに応力が生じることが抑制される。
【0076】
なお、上記の応力伝達緩和溝14Gは、十分な応力伝達緩和の効果が得られる限り、必ずしも一周にわたって連続的に形成されている必要はなく、一部で溝が途切れていても良い。ここでは、連続的な溝および断続的な溝のいずれも周方向に沿って形成されている溝と称することとする。
【0077】
また、図9(b)に示す圧力センサ10Bでは、ベースリング14のセンサモジュール支持面(すなわち、センサモジュール11の外周面と対向する、ベースリング14の内周面)において、半径方向に深さを有する環状の応力伝達緩和溝14Gが形成されている。このように形成された応力伝達緩和溝14Gによっても、応力の伝達が緩和され、押さえフランジ19を締め付けたときにダイヤフラム11aに応力が生じることが抑制される。
【0078】
なお、特許文献4には、ダイヤフラムを構成するダイヤフラムベースに浅溝を設けた圧力センサの取り付け構造が開示されている。ただし、この圧力センサは、図9(a)および(b)に示したような、ダイヤフラム構成部材とは異なるベースリングに溝を設けたものではないことに留意されたい。
【0079】
以上のように、ベースリング14に応力伝達緩和溝14Gを設けるだけでも、ゼロ点ドロップ抑制の効果を得ることができる。このことは、図8のサンプルS0とサンプルS1との比較によって判る。ただし、サンプルS4のように、ダイヤフラムを熱処理したコバルト-ニッケル合金から形成するとともに、応力伝達緩和の溝加工も施し、さらにセンサ取り付けのトルクを小さいものとすることによって、封止時時間の長さにかかわらず、ゼロ点ドロップ改善率を極めて大きいものとすることができた。
【0080】
上述した種々の態様の圧力センサ10を用いることによって、図1に示したような気化供給装置30の下流側において高温環境下で使用される場合にも、圧力式流量制御装置20を安定的に動作させることが可能になる。本発明の実施形態による圧力センサ10では、流路および受圧室C1に流体を封止した後に受圧室C1を真空引きしたとき、圧力検出素子12が出力する圧力がゼロを下回る量(絶対値)を、封止圧力(例えば、200kPa)の例えば0.25%以下(例えば、0.5kPa以下)にすることができる。
【0081】
より詳細には、設定温度(流体温度)が210℃、封止期間120分、封止圧力200kPa abs.の条件下において、図8のサンプルS4からわかるように、ゼロ点ドロップ量は封止圧力200kPaの0.25%以下である0.5kPa以下にまで改善できている。
【0082】
なお、基準となるサンプルS0では、従来の圧力センサに比べればゼロ点ドロップ量が抑制されたものの、20分の封止時間において、封止圧力(200kPa abs.)の0.25%以下である0.5kPa以下を達成することが困難であった。これに対して、サンプルS1~サンプルS4では、20分の封止時間で封止圧力0.25%以下を達成できている。特に、ダイヤフラム11aの材料として熱処理を行ったコバルト-ニッケル合金(スプロン510)を用いるとともに、ベースリング14に溝加工を施したサンプルS3、S4については、20分の封止時間でも、封止圧力の0.15%以下(ここでは0.3kPa)を達成できており、十分なゼロ点ドロップ抑制効果が得られていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の実施形態にかかる圧力センサは、例えば、半導体製造装置における供給ガスの圧力測定のために好適に利用される。
【符号の説明】
【0084】
5 ボディ
10 圧力センサ
11 センサモジュール
11a ダイヤフラム
12 圧力検出素子
13 ハーメチック部材
13a ハーメチックリング
14 ベースリング
14G 応力伝達緩和溝
15 蓋
17 外周壁
18 ガスケット
19 押さえフランジ
20 圧力式流量制御装置
22 コントロール弁
24 絞り部
26 流入圧力センサ
28 ストップバルブ
30 気化供給装置
100 高温ガス供給系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9