(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】調節眼内レンズのための表面処理ならびに関連する方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2019566348
(86)(22)【出願日】2018-05-29
(86)【国際出願番号】 US2018034858
(87)【国際公開番号】W WO2018222579
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-26
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512052029
【氏名又は名称】シファメド・ホールディングス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルジェント, クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】アスカリ, サイード ハサン
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ, アリンダム
(72)【発明者】
【氏名】ラケット, ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ソール, トム
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0058553(US,A1)
【文献】特表2004-502510(JP,A)
【文献】特開2002-372688(JP,A)
【文献】特表2016-507298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0176628(US,A1)
【文献】特開2013-214069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0258277(US,A1)
【文献】特表2011-516134(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0264209(US,A1)
【文献】米国特許第04997442(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節眼内レンズシステムであって、
第1のコンポーネントと、前記第1のコンポーネントの後方の第2のコンポーネントと、前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントとの間の内側流体チャンバと、前記内側流体チャンバに流体的に連結された外側流体チャンバと、を含む、調節構造
を備え、
前記第1のコンポーネントおよび前記第2のコンポーネントは、親水性構造であり、前記調節構造の1つ以上の表面は、表面処理を含むことにより、前記表面処理で処理された前記調節構造の前記1つ以上の表面の領域の表面粗さを減少させ、
前記表面処理を含む前記調節構造の前記1つ以上の表面は、約75%の疎水性要素に対して約25%のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)要素の割合を含む、調節眼内レンズシステム。
【請求項2】
前記表面処理で処理された前記調節構造の
少なくとも前記領域は、
前記表面処理とは異なる割合で前記表面処理と同じ構成要素を有する基材
から形成されている、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項3】
少なくとも部分的に前記内側流体チャンバを画定する内側表面は、前記表面処理を含む、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項4】
前記調節構造は、前記第1のコンポーネントおよび前記第2のコンポーネントの周囲によって、少なくとも部分的に画定される外側表面を備え、前記外側表面の少なくとも一部は、前記表面処理を含む、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項5】
前記表面処理は、前記調節構造の前記1つ以上の表面に塗布されたコーティングを含む、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項6】
前記表面処理は、前記表面処理で処理された前記調節構造の前記1つ以上の表面の前記領域内の親水性末端基の密度を低減するように適合されている、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項7】
前記表面処理は、前記表面処理で処理された前記調節構造の前記1つ以上の表面の前記領域内の親水性末端基をマスクするように適合されている、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項8】
前記外側流体チャンバは、前記内側流体チャンバの少なくとも一部の周りにあり、流体が前記外側流体チャンバと前記内側流体チャンバとの間を流れ、調節を提供するために前記第1のコンポーネントを移動させるように、ヒト対象の生来の眼の嚢と接合するように構成される、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項9】
前記内側流体チャンバ内の流体をさらに含み、前記流体は、疎水性液体を含む、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項10】
前記第1および第2のコンポーネントは、互いに結合されている、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項11】
前記第1および第2のコンポーネントは、1つ以上の結合部位で互いに結合され、前記1つ以上の結合部位は、前記表面処理を含まない、請求項10に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項12】
前記第1および第2のコンポーネントは、低減断面送達構成に折り畳まれるのに十分な柔軟性を有する、請求項1に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項13】
対象の水晶体嚢内に移植するための調節眼内レンズシステムであって、
第1の光学コンポーネントおよび境界面に沿って前記第1の光学コンポーネントに連結された第2の光学コンポーネントと、前記第1の光学コンポーネントと前記第2の光学コンポーネントとの間の内側流体チャンバと、前記内側流体チャンバに流体的に連結された外側流体チャンバと、を含む、調節構造であって、
前記調節構造は、前記内側流体チャンバおよび前記外側流体チャンバによって画定される、実質的親水性外側表面および実質的疎水性内側表面を備える、調節構造と、
前記第1の光学コンポーネントおよび前記第2の光学コンポーネントの少なくとも1つの上のコーティングであって、前記コーティングが、前記第1および第2の光学コンポーネントの未処理領域と比較して、前記コーティングで処理された前記調節構造の前記第1および第2の光学コンポーネントの領域の疎水性を変化させる、コーティングと
を備え、前記調節構造の前記実質的親水性外側表面は、第1の材料で構成され、前記コーティングは、前記第1の材料のプレポリマーを含む、調節眼内レンズシステム。
【請求項14】
前記第1の材料は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2-エトキシエチルメタクリレート(EOEMA)とのコポリマーを含む、請求項13に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項15】
前記コーティングは、2-エトキシエチルメタクリレート(EOEMA)を含む、請求項13に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項16】
前記コーティングは、前記第1および第2の光学コンポーネントの前記未処理領域と比較して、前記コーティングで処理された前記調節構造の前記第1および第2の光学コンポーネントの前記領域の表面粗さを低減する、請求項13に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項17】
前記コーティングは、前記未処理領域と比較して、前記コーティングで処理された前記調節構造の前記第1および第2の光学コンポーネントの前記領域の疎水性を増加させる、請求項13に記載の調節眼内レンズシステム。
【請求項18】
対象の水晶体嚢内に配置するための調節眼内レンズであって、前記調節眼内レンズは、
第1の光学領域および第1のベローズ領域を有する第1のコンポーネントと、
第2の光学領域および第2のベローズ領域を有する第2のコンポーネントであって、前記第2のコンポーネントは、前記第1のコンポーネントに連結された、第2のコンポーネントと、
前記第1の光学領域と前記第2の光学領域との間の第1の流体チャンバと、
前記第1のベローズ領域と前記第2のベローズ領域との間の第2の流体チャンバであって、前記調節眼内レンズに屈折力の変化を提供するよう、前記水晶体嚢の形状変化に応じて前記第1の流体チャンバと前記第2の流体チャンバとの間で流体を移送するために前記第1の流体チャンバと流体連通する第2の流体チャンバと、
第1の材料で構成された実質的親水性外側表面と、
前記第1のコンポーネントの第1の処理領域および前記第2のコンポーネントの第2の処理領域に施された表面処理であって、前記表面処理は、前記第1および第2の処理領域の疎水性を増加させ、
前記表面処理は、前記第1の材料のプレポリマーを含む、表面処理と
を備える、調節眼内レンズ。
【請求項19】
対象の水晶体嚢内に配置するための調節眼内レンズであって、前記調節眼内レンズは、概して親水性の表面を含み、
前記概して親水性の表面は、第1の材料で構成され、前記調節眼内レンズは、前記概して親水性の表面の少なくとも一部にコーティングを含み、さらに、前記調節眼内レンズの前記概して親水性の表面の前記コーティングされた領域は、前記概して親水性の表面の未処理領域よりも疎水性であり、
前記コーティングは、前記第1の材料のプレポリマーを含む、調節眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年5月30日に出願された「SURFACE TREATMENTS FOR HYDROPHILIC AIOL」と題された米国仮出願第62/512,536号、および2017年9月19日に出願された「SURFACE TREATMENTS FOR HYDROPHILIC AIOL」と題された62/560,527号の優先権を主張し、これらの内容の両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、医療デバイスおよび方法に関する。特に、本開示の実施形態は、調節眼内レンズ(以下、「AIOLs」または単数形については「AIOL」)のための表面処理に向ける。
【背景技術】
【0003】
白内障は、世界中の成人人口の大部分に影響を及ぼし、生来の水晶体が混濁し、視力が失われる可能性がある。白内障に罹患する患者は、生来の水晶体除去および人工眼内レンズ(「IOL」)の外科移植によって治療することができる。世界中で、毎年何百万ものIOL移植手技が実施されている。米国では、350万件の白内障手技が実施されているが、世界中では、年間2000万件を超える手技が実施されている。
【0004】
IOL移植手技は、視力の回復に効果的であるが、従来のIOLにはいくつかの欠点がある。例えば、従来のIOLの多くは、自然なレンズのように焦点を変える(調節として知られている)ことができない。従来のIOLの他の欠点には、移植後に発生する屈折異常が含まれ、遠方視力を矯正するために眼鏡が必要であり、または、他の場合、IOLは、良好な遠方視力を提供するのに効果的であるが、患者は中間および近方視力のために眼鏡が必要である。
【0005】
AIOLは、患者に調節可能な屈折力を提供するために提案されている。特に、水晶体嚢内の生来のレンズの交換に使用するAIOLは、脳が生来の手法で眼の網膜上の外部画像の自然な焦点を制御することを可能にする。AIOLは、典型的には、中央の光学部分と周辺の非光学部分を備える。光学部分は、眼の中の網膜に画像の焦点を合わせるために使用され、非光学構造部分は、光学部分を所定の位置に保持する支持構造と、水晶体嚢に接合する焦点調節機構または調節制御機構を提供する。生来の調節は、小帯を介して嚢の周囲につながる毛様筋を締めたり緩めたりすることにより、水晶体嚢内の水晶体(この場合は自然または人工)の焦点距離を変更することにより生じる。よって、脳は、制御フィードバックループと毛様体筋への作用を介して、AIOLの屈折力を制御して、網膜に焦点を合わせている物体の距離に調節する。
【0006】
しかしながら、従来のAIOLは、概して未だ開発中であり、様々な欠点がある。例えば、従来のAIOLでは、移植後の十分な調節を提供できず、または眼の最適ではない屈折矯正を生む。従来のAIOLの調節量も、少なくともいくつかの例では、移植後に減少する可能性がある。従来のAIOLは、大きすぎて眼の小さな切開部に挿入できない場合があり、理想よりも幾分大きい切開部を必要とし得る。また、従来のAIOLの少なくとも一部は、眼に入れたときに不安定になる可能性があり、これにより不正確な調節やその他のエラーが発生する可能性がある。多くの従来のAIOLは、AIOL構造の非光学部分が、異常光視症と呼ばれる光学視野に散乱することに関連する内部反射の影響も受けやすい。本開示の目的のために、そのような内部反射は全て「異常光視症」と称される。
【0007】
上記の欠陥の少なくともいくつかを克服する、眼の焦点調節を制御する自然な機構で調節する改善された移植可能な眼内レンズが望ましい。理想的には、このような改良されたAIOLは、移植時に調節量の増加を提供し、屈折の安定性を提供し、いくらかの知覚可能な視覚的人工物があったとしても僅かしか導入せず、患者が見る物体の距離に応じて、眼の屈折力を遠方視から近方視に変化させることを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の実施形態は、改善されたAIOL、およびAIOLを作製および使用するための方法を提供する。多くの実施形態において、AIOLは、実質的親水性外側構造と実質的疎水性流体内部とを含む調節構造を含む。親水性構造は、生来のレンズの焦点調節機構によって維持可能な最小限の力を介して変形を制御できる、安定した非常に柔軟な構造を提供することが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
疎水性流体は、浸透圧効果を最小化しながら高い屈折率を提供する。良好な屈折力を提供する高屈折率。実質的親水性構造材料は、典型的には、アクリルのコポリマー、親水性アクリルと疎水性アクリルのコポリマー、または他の光学的に透明な高分子材料から製造され、または製作される。材料の親水性は、材料を作製するために重合された親水性モノマーと疎水性モノマーの相対的割合の関数として変化する。
【0010】
多くの実施形態において、親水性外側構造は、比較的乾燥した形態の親水性材料から機械加工された、乾燥形態で組み立てられたコンポーネントを備え、この構造は、組み立て後に水和されており、屈折油が水和後に導入されている。
【0011】
機械加工ステップは、表面の部分に異なる程度の粗さおよび/または親水性を残し得る。
【0012】
実質的疎水性流体内部は、シリコン、シリコンのコポリマー、および炭化水素油のいずれかに限定されないが選択された疎水性油からなる。
【0013】
AIOLが嚢袋に配置される(移植される)と、従来の白内障手術の後、実質的親水性外側構造および実質的疎水性流体内部を備えるAIOLは、親水性材料と疎水性流体の接合面として画定された境界面で水が癒合するのを防ぐ。別の実施形態において、実質的親水性外側構造および実質的疎水性流体内部を備えるAIOLは、親水性材料と疎水性流体との接合面として画定された境界面で水が癒合するのを遅らせる。しかしながら、場合によっては、境界面で水が癒合し得る。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、水癒合の可能性は、疎水性流体と親水性構造の境界での親水性構造の表面粗さまたは表面不規則性の関数として増加し得ると考えられる。同様に、いかなる特定の理論にも束縛されることなく、水和親水性構造の平衡含水量が温度の変化とともに変化すると、水癒合の可能性が増加すると考えられる。このような温度変化は、AIOLが室温の保管場所から眼内に存在する温度まで置かれると発生する可能性がある。再び、いかなる特定の理論にも束縛されることなく、内部から外部への圧力が変化すると、水が癒合する可能性が増加すると考えられる。
【0014】
経時的に、そのような癒合した水は、内側チャンバから強制的に親水性構造に押し出され得る。一実施形態では、このプロセスは、内部環境から外部環境への正の圧力勾配によって強化される。別の実施形態では、AIOLが経時的に平衡化するにつれて、疎水性流体は、水を境界面から押し戻し、眼に存在する親水性環境に囲まれているために追加の水分拡散のシンクとして機能する、より適合性の高い親水性外側構造に押し戻す。
【0015】
可能性のある1つのシナリオにおいて、隣接する癒合した水は、妥当な時間内に内部または境界面から追い出されるまでに時間がかかる場合がある、凝集体または水滴を形成し得る。このような水滴は、AIOLの光学品質にも悪影響を与える可能性がある。さらに、いくつかの例において、水は、表面で小滴になり得る。加えて、いくつかの例において、これらの小滴は、ミセルを含み得る。本技術の一実施形態において、流体内部または親水性材料と疎水性流体との接合面で水滴が癒合する可能性は、境界面の疎水性を増加させる(すなわち、表面エネルギーを減少させる)表面処理を提供することにより低減し、それにより、これらの表面の「湿潤性」が減少する。いくつかの実施形態において、本技術は、境界面の疎水性を増加させる表面処理を提供することにより、流体内部または親水性材料と疎水性流体との接合面で水滴が癒合する可能性が低減し、それにより、疎水性流体に対する適合性が高まることが予想される。さらなる実施形態において、本技術は、親水性材料に固着して、親水性材料と疎水性流体との間の接合面への水分拡散を遅延または最小化またはブロックすることできる、疎水性表面処理または疎水性コーティングの塗布または追加により、流体内部または親水性材料と疎水性流体との接合面で水滴が癒合する可能性が低減することが予想される。
【0016】
いくつかの実施形態において、本技術に従った表面処理は、親水性構造材料の境界体積を、境界面でおよび境界面に隣接する、構造材料へのある深さに入って修正する。そのような実施形態において、親水性分子および/または末端基またはペンダント基に対する疎水性の相対的割合は、この境界体積内で増加する。本開示の目的のために、「分子」および「末端またはペンダント基」という用語は、互換的に使用される。
【0017】
いくつかのそのような実施形態において、処理後の体積内の疎水性分子の割合は、深さの関数として変化する。そのような実施形態において、疎水性分子の割合は、境界面で最大であり、構造材料のより奥深くでは減少する。そのような濃度の分布または勾配は、厳密にはコーティングではないが、本開示の目的のために、「コーティング」は、互いの上にある両方の材料、およびコーティングされた表面に隣接する材料における分子分布の勾配の形成、または両方の組み合わせを記述するのに使用される。
【0018】
コーティング材料を選択する場合、親水性材料と疎水性材料との比率に応じて、コーティングの膨潤は、両方の材料の水和時のベース材料の膨潤とは異なることができることが理解されよう。そのような差次的な膨張は、AIOLの機能に有害であることのある内部応力、ひずみ、およびまたは層間剥離を引き起こし得る。
【0019】
本明細書に記載された多くの実施形態において、処理は、モノマー(および/またはいくつかの例ではオリゴマー)の溶液、架橋剤、ならびにモノマーの架橋を開始する触媒を含む、コーティング材料の塗布を含む。本明細書に記載された処理は、典型的には、表面または材料の疎水性を増加させるが、そのような処理およびコーティング材料は、親水性が増加され得るように修正され得る。
【0020】
本技術の他の態様において、機械加工表面の表面粗さを低減、最小化するように、同じまたは類似の表面処理がAIOLデバイスの内部表面に適用される。本技術の別の態様において、AIOL構造へのタンパク質の移動およびまたはAIOL構造の外側表面への細胞の取り付けを最小化するように、同じまたは類似の表面処理がAIOLデバイスの外部表面に適用される。
【0021】
本明細書に記載された材料および方法の別の塗布において、コーティングは、AIOLを備える構造の表面または表面付近の反射特性を修正するために使用され得る。そのような材料および方法は、AIOLシステムの非光学部分によって捕捉され、およびまたは透過され、およびまたは複数の内部反射から生じる、網膜に送達される光の低減およびまたは排除を提供することができる。このような光は、AIOL構造の非光学部分に関連する内部反射から生じることがしばしがある。そのような処理は、AIOL移植に伴うそのような内部反射に起因する異常光視症の発生を低減または排除する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
調節眼内レンズシステムであって、
第1のコンポーネントと、前記第1の光学コンポーネントの後方の第2のコンポーネントと、前記第1と第2の光学コンポーネント間の内側流体チャンバと、前記内側流体チャンバに流体的に連結された外側流体チャンバと、を含む、調節構造、を備え、
前記第1のコンポーネントおよび前記第2のコンポーネントは、親水性構造であり、前記調節構造の1つ以上の表面は、対応する処理領域の粗さを減少させる表面処理を含む、調節眼内レンズシステム。
(項目2)
前記処理された表面は、前記基材と同じ割合の疎水性要素および親水性要素を含む、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目3)
前記処理された表面は、約75%の疎水性要素に対して約25%の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)要素の割合を含む、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目4)
少なくとも部分的に前記内側流体チャンバを画定する内側表面は、前記表面処理を含む、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目5)
前記調節構造は、前記第1のコンポーネントおよび前記第2のコンポーネントの周囲によって、少なくとも部分的に画定される外側表面を備え、前記外側表面の少なくとも一部は、前記表面処理を含む、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目6)
前記表面処理は、前記調節構造の前記対応する1つ以上の表面に塗布されたコーティングを含む、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目7)
前記表面処理は、前記処理された領域からの親水性末端基の前記密度を低減するように適合されている、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目8)
前記表面処理は、前記処理された領域から親水性末端基をマスクするように適合されている、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目9)
前記外側流体チャンバは、前記内側流体チャンバの少なくとも一部の周りにあり、流体が前記外側流体チャンバと前記内側流体チャンバとの間を流れ、調節を提供するために前記第1の光学素子を移動させるように、ヒト対象の生来の眼の嚢と接合するように構成される、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目10)
前記内側流体チャンバ内の流体をさらに含み、前記流体は、疎水性液体を含む、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目11)
前記第1および第2のコンポーネントは、互いに結合されている、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目12)
前記第1および第2のコンポーネントは、1つ以上の結合部位で互いに結合され、前記1つ以上の結合部位は、前記表面処理を含まない、項目11に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目13)
前記第1および第2のコンポーネントは、低減断面送達構成に折り畳まれるのに十分な柔軟性を有する、項目1に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目14)
対象の水晶体嚢内に移植するための調節眼内レンズシステムであって、
第1の光学コンポーネントおよび境界面に沿って前記第1の光学コンポーネントに連結された第2の光学コンポーネントと、前記第1と第2の光学コンポーネント間の内側流体チャンバと、前記内側流体チャンバに流体的に連結された外側流体チャンバと、を含む、調節構造であって、
前記調節構造は、前記内側流体チャンバおよび前記外側流体チャンバによって画定される、実質的親水性外側表面および実質的疎水性内側表面を備える、調節構造と、
前記第1の光学コンポーネントおよび前記第2の光学コンポーネントの少なくとも1つの上のコーティングであって、前記コーティングが、前記第1および第2の光学コンポーネントの未処理領域と比較して、前記処理された領域の疎水性を変化させる、コーティングと、を備える、調節眼内レンズシステム。
(項目15)
前記調節構造の前記親水性外側表面は、第1の材料で構成され、前記コーティングは、前記第1の材料のプレポリマーを含む、項目14に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目16)
第1の材料は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2-エトキシエチルメタクリレート(EOEMA)とのコポリマーを含む、項目15に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目17)
前記コーティングは、EOEMAを含む、項目15に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目18)
前記コーティングは、前記第1および第2の光学コンポーネントの未処理領域と比較して、前記処理領域の表面粗さを低減する、項目14に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目19)
前記コーティングは、未処理領域と比較して前記処理領域の疎水性を増加させる、項目14に記載の調節眼内レンズシステム。
(項目20)
対象の水晶体嚢内に配置するための調節眼内レンズであって、前記調節眼内レンズは、
第1の光学領域および第1のベローズ領域を有する第1のコンポーネントと、
第2の光学領域および第2のベローズ領域を有する第2のコンポーネントであって、前記第2のコンポーネントは、前記第1のコンポーネントに連結された、第2のコンポーネントと、
前記第1の光学領域と前記第2の光学領域との間の第1の流体チャンバと、
前記第1のベローズ領域と前記第2のベローズ領域との間の第2の流体チャンバであって、前記調節眼内レンズに屈折力の変化を提供するよう、前記水晶体嚢の形状変化に応じて前記第1の流体チャンバと前記第2の流体チャンバとの間で流体を移送するために前記第1流体チャンバと流体連通する前記第2の流体チャンバと、
前記第1のコンポーネントの第1の処理領域および前記第2のコンポーネントの第2の処理領域に施された表面処理であって、前記表面処理は、前記対応する第1および第2の処理領域の前記疎水性を増加させる表面処理と、を備える、調節眼内レンズ。
(項目21)
対象の水晶体嚢内に配置するための調節眼内レンズであって、前記調節眼内レンズは、概して親水性表面を含み、前記調節眼内レンズは、前記表面の少なくとも一部にコーティングを含み、さらに、前記調節眼内レンズの前記表面の前記コーティングされた領域は、前記表面の未処理領域よりもより疎水性である、調節眼内レンズ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本技術の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本技術の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される図示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することにより得られるであろう。
【0023】
【
図1A】本技術の実施形態に従って構成されたベローズ構造および表面処理を備える流体充填調節レンズシステムの等角図を示す。
【
図1B】
図1Aの流体充填調節レンズシステムの断面図を示す。
【
図1C】線A-Aに沿った、
図1Aの流体充填調節レンズシステムの断面図を示す。
【
図2A】本技術の実施形態に従って構成された代替の調節レンズシステムの断面図を示す。
【
図2B】(
図2Bおよび
図2C)それぞれ、本技術の実施形態に従って構成された調節レンズシステムの第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントの上面図を図示する。
【
図2C】(
図2Bおよび
図2C)それぞれ、本技術の実施形態に従って構成された調節レンズシステムの第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントの上面図を図示する。
【
図3A】本技術の実施形態に従って構成された調節レンズシステムの機械加工表面の一部のレーザ形状測定画像を図示する。
【
図3B】調節レンズシステムの機械加工表面の一部のプロファイルを図示している表示図である。
【
図4A】(
図4Aおよび4B)本技術の実施形態に従って、ベース層および光減衰層またはコーティング層を含む親水性調節レンズ構造の断面を図示する。
【
図4B】(
図4Aおよび4B)本技術の実施形態に従って、ベース層および光減衰層またはコーティング層を含む親水性調節レンズ構造の断面を図示する。
【
図5A】本開示のなお別の実施形態に従って構成された調節レンズ構造の表面処理部分の断面図を示す。
【
図5B】
図5Aの断面の所与の深さにおける材料に関連する相対表面エネルギーをグラフで表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、AIOLならびに関連するシステム、方法、およびデバイスの表面処理に関する。本明細書に記載されたAIOLは、典型的には、実質的に疎水性の流体内部をアセンブリに組み込む前に水和され、製造後に結果として得られるアセンブリが水和状態に維持される、乾燥親水性コンポーネントから製作される。本明細書に記載された表面処理は、典型的には、乾燥水和前コンポーネントまたはアセンブリに適用される。しかしながら、他の実施形態において、本明細書に記載された表面処理は、より高い表面領域(水和状態でアクセス可能)を活用するように、完全に水和状態のコンポーネントまたはアセンブリに適用され得る。いくつかの例において、処理されない表面は、マスクすることができる。他の例において、処理は、マスクなしで適用され得る。
【0025】
本明細書に記載されたAIOLは、典型的には、レンズの光軸と同心の支持構造などによって、光軸に沿って間隔を空けて配置された少なくとも1つの変形可能な光学コンポーネント(例えば、光学素子)から成る中央光学構造を備える。いくつかの実施形態は、第1の光学コンポーネントおよび第2の光学コンポーネントを含み、第1および第2の光学コンポーネントの少なくとも一方は変形可能であることができると同時に、第1および第2の光学コンポーネントの他方は変形可能または剛性であることができる。第1および第2の光学コンポーネントによって境界付けられた体積、および選択的なレンズ支持構造は、生理食塩水などのイオン溶液、またはデキストランまたはシリコン油などの非イオン溶液で充填され得る、流体チャンバまたは流体リザーバを画定し得る。本明細書に記載されたAIOLのいくつかの実施形態において、AIOLコンポーネントは、乾燥水和前親水性材料から機械加工される。次いで、機械加工コンポーネントは、組み立てられたAIOLが外側表面と、内側表面によって境界付けられた内側体積とを備えるように組み立てられる。次いで、組み立てられたデバイスが水和された後、内側体積は、疎水性光学流体で充填される。いくつかの実施形態において、表面処理は、境界面の機械加工表面の粗さを減少させ、それにより境界面で癒合する水の量を減少させることが予想される。
【0026】
本明細書に記載された他の実施形態において、好適なコーティングは、異常光視症を最小化するよう使用され得る。そのようなコーティングは、例えば、コーティングを透過する光の量を最小化する薬剤を含み得る。透過は、コーティングの表面またはコーティング内部での光の散乱の増加、コーティングの表面またはコーティング内部での光の反射およびまたは吸収、またはいくつかの組み合わせによって変更され得る。このような光の相互作用は、コーティング材料内部での粒子の組み込みによって実現することができる。少しのそのような添加物の非包括的なリストは、TiO2などの不透明な粒子、気泡、および糖または塩などの水溶性(またはその他の溶媒可溶性)粒子である。
【0027】
本明細書に記載された親水性アクリルは、親水性コンポーネントおよび疎水性コンポーネントの両方のコポリマーを含み得る。以下は、いくつかのそのようなコンポーネント材料の一部のリストである。2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-エトキシエチルメタクリレート(EOEMA)、エチレングリコールジメチルアクリレート(EGDMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、およびヘキサフルオロイソプロピルアクリレート。
【0028】
本明細書に記載されたAIOLが製作され得る1つの好適な親水性コポリマーアクリルは、HEMAとEOEMAとのコポリマーである。そのような材料は、Benz Research & Development、米国フロリダ州34243、サラソタ、Parkland通り6447、から購入され得る、BENZ IOL 25 UVXである。
【0029】
いくつかの実施形態において、表面処理は、水の癒合を最小化、遅延、または防止することを目的とし、親水性材料と疎水性流体との接合面として記載される境界面に適用される。
【0030】
有機分子またはタンパク質の移動を最小化するためにAIOLの外部表面に適用される処理は、典型的には、実質的疎水性流体を囲むチャンバの内側境界面に適用されるものよりも、疎水性のより小さい増加、または親水性のより小さい減少、または表面エネルギーのより小さい減少を含む。
【0031】
本技術に従って適用される表面処理の性質および量は、制御することができる。一実施形態において、例えば、表面処理は、表面エネルギーを僅かに減少させ、親水性材料の表面疎水性を僅かに増加させる。別の実施形態において、表面処理は、表面エネルギーを減少させ、親水性材料の表面疎水性を増加させる。そのうえ別の実施形態において、表面処理は、表面エネルギーを実質的に減少させ、親水性材料の表面疎水性を実質的に増加させる。
【0032】
いくつかの実施形態において、疎水性は、実質的疎水性流体を囲むチャンバの内部に別の疎水性部分が存在しながら、親水性材料に付着する部分を備える表面処理剤で境界面、または境界面の部分を処理することによって達成される。境界面に適用される疎水性部分は、実質的疎水性流体を囲むチャンバの内部に適用されるものとは異なる化学組成および異なる疎水性度を有し得る。
【0033】
いくつかのそのような処理において、疎水性末端基を有する分子は、疎水性末端基が外部に提示されるように、関心のある表面に化学的に付着させることができる。化学的に付着されたものは、共有結合、水素結合、または化学的架橋のいずれかを含み得る。別のそのような表面処理において、疎水性分子は、関心のある表面に、水素結合によって共有結合、化学的架橋、または固着させることができる。化学的架橋のためには、アミン、三官能性または多官能性ヒドロキシル化合物、グリセリン、アクリル、エチレングリコールジメタクリレート[EGDMA]などの生体適合性架橋剤を使用できる。
【0034】
表面処理の塗布領域は、連続、半連続、またはつぎはぎ状にすることができる。親水性および疎水性組成で構成されるコポリマーで使用する代替処理において、表面処理は、疎水性部分をそのまま残しながら親水性部分を優先的にエッチングすることが適用され得る。
【0035】
なお別の代替形態では、表面処理は、AIOLアセンブリまたは外側構造材料よりもはるかに低い親水性またははるかに低い飽和含水量を有するコポリマーの層を関心のある表面に適用することを含む。代替的に、または組み合わせで、表面処理は、外側構造材料の水和使用状態で表面層を通る水分の拡散を防止または抵抗するために、外側構造材料のチャネルまたは通路を実質的に覆う。いくつかのそのような実施形態において、コポリマーは、コーティングされる親水性ベース材料と同じ組成を含み得るが、親水性アクリルおよび疎水性アクリルの割合が異なる。一実施形態において、表面処理は、少なくとも50重量%の疎水性アクリルを含む。別の実施形態において、表面処理は、少なくとも70重量%の疎水性アクリルを含む。別の実施形態において、表面処理は、少なくとも90重量%の疎水性アクリルを含む。いくつかの実施形態において、表面処理は、製造プロセスから生じる表面の粗さを低減するような手法で適用される構造と同じ表面エネルギーの材料の薄いコーティングを含む。
【0036】
表面処理は、刷毛塗り(brush coating)、スプレー塗装(spray coating)、浸漬塗装(dip coating)、蒸着、プラズマ蒸着、またはそれらの組み合わせなどの様々な方法により実現することができる。コーティング材料が溶媒中で送達される実施形態において、有用な生体適合性溶媒は、NMP、DMSO、TCE、酢酸エチル、THF、DMFおよびDMACを含むが、これらに限定されない。
【0037】
一実施形態において、関心のある表面は、1つの表面処理を受け得る。別の実施形態において、関心のある表面は、2つの表面処理を受け得る。なお別の実施形態において、関心のある表面は、3つ以上の表面処理を受け得る。
【0038】
いくつかの例において、処理される表面は、UV照射、プラズマ、コロナ放電、アルコールエッチング溶剤洗浄および酸性エッチング、による処理などの表面改質または表面活性化によって調製または前処理される。
【0039】
いくつかの例において、処理される表面は、OH基を親水性が低い表面の他の基で置き換える処理などの表面改質または表面活性化によって調製される。
【0040】
表面処理に含まれる材料は、次のいずれかから選択することができるが、これらに限定されない。シリコン、ポリウレタン、およびアクリル。
【0041】
一実施形態において、表面処理のためのシリコンは、線状シリコンポリマーを含む。別の実施形態において、表面処理のためのシリコンは、架橋シリコンポリマーを含む。
【0042】
一実施形態において、表面処理のためのポリウレタンは、芳香族ハードセグメントを含む。別の実施形態において、表面処理のためのポリウレタンは、脂肪族ハードセグメントを含む。そのうえ他の実施形態において、表面処理のためのポリウレタンは、ポリカーボネートポリウレタン、ポリ(カーボネート-コ-シロキサン)ポリウレタン、ポリシロキサンポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリ(エーテル-コ-カーボネート)ポリウレタン、またはポリ(エーテル-コ-シロキサン)、線状ウレタンポリマー、および/または架橋ウレタンポリマーなどの疎水性ポリウレタンを含み得る。
【0043】
一実施形態において、アクリルは、疎水性アクリルを含む。別の実施形態において、アクリルは、親水性アクリルと疎水性アクリルのコポリマーを含む。例示的な親水性アクリルは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含むが、これに限定されない。例示的な疎水性アクリルは、2-エトキシエチルメタクリレート(EOEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレートおよびヘキサフルオロイソプロピルアクリレートを含むが、これらに限定されない。一実施形態において、アクリルは、架橋剤を含む。一実施形態において、アクリルは、架橋アクリルポリマーを含む。
【0044】
表面処理の平均厚さは、20マイクロメートル未満、好ましくは10マイクロメートル未満、より好ましくは2マイクロメートル未満である。表面処理は、親水性外側構造との実質的な化学的適合性があり、親水性外側構造との接着性が向上する。表面処理は、水性環境で減成または分解せず、加水分解的に安定している。表面処理は、延性があり、かつ光学的に透明なので、AIOLの機能を妨げない。表面処理は、生体適合性がある。
【0045】
いくつかの可能なアクリルベースの配合表を以下の表Aと表Bに示す。いくつかのさらに可能な処理材料の配合表と手技を以下の実施例にリストする。
【表1A】
【表1B】
【0046】
本明細書に記載されたコーティングは、例えば、塗装、噴霧、蒸着プロセス、および/またはミストチャンバを介した塗布を含む任意の好適な手段によって塗布され得る。1つの有用な塗布方法は、構造材料の表面および隣接する体積を、未重合配合または部分重合(オリゴマーを含む)配合の体積にさらすことを含む。処理の塗布と重合の開始(または再開始)との間の時間、処理時間は、処理方法のうちのいずれに対しても変更され得る。処理時間は、重合前のコーティング材料を含むモノマーおよびマルチマーの浸透の深さに影響する。コーティング材料の体積は、塗布表面に近づくほど大きくなり、コーティング表面からの距離が増加するにつれて減少する。
【0047】
図1A~1Cは、本技術の実施形態に従って構成された表面処理を含むAIOL100の様々な図を図示する。最初に
図1Aおよび1Bを参照すると、例えば、AIOL100は、(a)固定レンズアセンブリ150、(b)第1のコンポーネント110、および(c)第2のコンポーネント120を含む3つの主要な構造を備える。第1のコンポーネント110は、第2のコンポーネント120と対になり、結合される。固定レンズアセンブリ150は、機械的接合面を介して第1および第2のコンポーネント110および120に対して適所に保持され、適所に結合されない。
【0048】
図1Cは、線A-Aに沿った、
図1BのAIOL100の断面図である。
図1Cに最もよく見られるように、第1および第2のコンポーネント110および120は、第1および第2のコンポーネント110および120を互いに連結するために、継ぎ目または結合ジョイント104、105、および106で共に結合される。結合されると、第1のコンポーネント110の外側または周辺部分113および第2のコンポーネント120の外側または周辺部分123は、AIOL100の外側表面103を画定する。
【0049】
第1のコンポーネント110は、第1のコンポーネント110の様々な部分を画定する1つ以上の内側表面領域を有する第1の内側表面111を含む。図示された実施形態において、例えば、第1のコンポーネント110は、第1の内側表面領域111aおよび第2の内側表面領域111bを含む。第2のコンポーネント120はまた、第2のコンポーネントの様々な部分を画定する1つ以上の内側表面領域を有する第2の内側表面121を備える。例えば、第2のコンポーネント120は、第3の内側表面領域121aおよび第4の内側表面領域121bを含む。
図1Cに示された実施形態において、(第1のコンポーネント110の)第1内側表面領域111aおよび(第2のコンポーネント120の)第3内側表面領域121aは、少なくとも部分的に第1のベローズ領域140aを画定する。同様に、(第1のコンポーネント110の)第2の内側表面領域111bおよび(第2のコンポーネント120の)第4の内側表面領域121bは、少なくとも部分的に、第2のベローズ領域140b(集合的に、ベローズ領域140)を画定する。
【0050】
AIOL100は、第1の光学コンポーネント132と第2の光学コンポーネント134との間に境界付けられた流体チャンバまたはリザーバ130により画定される流体調節レンズ112を有する。第1および第2の光学コンポーネント132および134は、それぞれ第1および第2のコンポーネント110および120の平面部材(例えば、光学膜)であり得る。例えば、第1および第2の光学コンポーネント132および134は、第1および第2のコンポーネント110および120の他の部分で光学膜として一体的に形成され得る。代替の実施形態において、第1および第2の光学コンポーネント132および134の膜のいずれかまたは両方は、レンズであり得る(すなわち、屈折力を有する)。
【0051】
流体チャンバ130は、ベローズ領域140と流体連通しており、水晶体嚢の形状変化に応じて流体チャンバ130とベローズ領域140との間で流体(例えば、疎水性流体)を移送し、調節眼内レンズに屈折力を提供する。いくつかの実施形態において、例えば、流体チャンバ130およびベローズ領域140は、それらの間に移送される実質的疎水性流体で充填され得る。
【0052】
図1Aおよび1Cを共に参照すると、固定レンズアセンブリ150は、光学部分151および通路152を含む。非対称倍率レンズまたは他の好適なレンズを含み得る、光学部分151は、固定倍率を有し、通路152は、固定レンズアセンブリ150の一部を通過して延在する孔、スロット、オリフィスなどであるが、光学部分151ではない。固定レンズアセンブリ150は、固定レンズアセンブリ150が連結される第1のコンポーネント110および/または第2のコンポーネント120の係合面に面し、隣接する内側表面154をさらに含む。
【0053】
前述したように、AIOL100は、AIOL100の1つ以上のコンポーネントの様々な部分の表面処理を含み得る。いくつかの実施形態において、例えば、ベローズ領域140を囲む内側表面111および121の部分は、表面エネルギーを低減するか、表面疎水性を増加させるよう処理され得る。いくつかの実施形態において、対になる面のいくつかまたは全ては、未処理のままにされる。代替の実施形態において、内側表面(内側表面111および121を含む)の全ては、それらの表面エネルギーが低減するよう、または表面疎水性が増加するよう処理される。
【0054】
いくつかの実施形態において、内側表面111および121の選択された部分のみは、表面層を通る水分の拡散を低減、防止、または抵抗するよう処理される。代替の実施形態において、内側表面111および121の全てまたは実質的に全ては、外側構造材料の水和使用状態で表面層を通る水分の拡散に抵抗するよう処理される。
【0055】
いくつかの実施形態において、流体調節領域112を囲む外側表面113の部分のみは、表面エネルギーを低減し、および/または表面層を通る水分の拡散を低減、防止、または抵抗するよう処理され得る。代替の実施形態において、外側表面113および123の全ては、それらの表面エネルギーを低減し、表面層の細孔サイズを低減し、および/または表面疎水性を増加させるように処理することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、表面を通る水分の拡散に抵抗する表面処理は、表面を通る水分の拡散を防止または抵抗するために、AIOL100の外側構造材料のチャネルまたは通路を実質的に覆うことを含む。
【0057】
本技術に従って構成された、
図1A~1CのAIOL100および他のAIOLでの使用に好適な表面処理は、上記の表AにリストされたEOEMAファミリーの配合4のバリエーションを利用する。そのような実施形態において、AIOL100(
図1A~1C)の第1および第2のコンポーネント110および120の内側機械加工表面は、コーティング材料を噴霧することにより、組み立て前に乾燥状態で処理され得る。いくつかの実施形態において、結合ジョイント104、105、106を含む表面のいくつかの組み合わせは、コーティングプロセス中にマスクすることができる。
【0058】
代替の手技では、第1および第2のコンポーネント110および120は、コーティング材料で充填することができ、コーティング材料は、1分から1日の間の期間、より好ましくは重合の開始前5分から20分の間、構造材料に拡散することができる。特定の実施形態において、第1のコンポーネント110および第2のコンポーネント120の選択された表面(例えば、結合ジョイント104、105、106および/または他の選択された表面)は、マスクされ得る。
【0059】
図2A、2B、および2Cは、本技術の別の実施形態に従って構成されたAIOL200を図示する。AIOL200は、
図1A~1Cを参照して上述したAIOL100の実施形態と同様である。例えば、AIOL200は、(a)固定レンズアセンブリ250、(b)第1のコンポーネント210、および(c)第2のコンポーネント220を含む3つの主要な構造を備える。第1および第2のコンポーネント210および220は、第1および第2のコンポーネント210および220を互いに連結するために、継ぎ目または結合ジョイント204、205、および206で共に結合される。結合後、第1のコンポーネント210の外側または周辺部分213および第2のコンポーネント220の外側または周辺部分223は、AIOL200の外側表面203を画定する。AIOL200は、内側表面211をさらに含む。
【0060】
図2Aに最もよく見られるように、固定レンズアセンブリ250は、第1コンポーネント210の連続厚肉領域253を固定レンズアセンブリ250の係合特徴255と係合させることにより、AIOL200の流体調節レンズ260と係合および整列することができる。
【0061】
図2Bおよび2Cは、それぞれ、互いに合体される前の第1のコンポーネント210および第2のコンポーネント220の上面図である。
図2Bおよび2Cに最もよく見られるように、AIOL200の特定の部分は、表面処理またはコーティングプロセスの前/最中にマスクされ得る。そのようなマスクされた領域207は、典型的には、例えば、第1のコンポーネント210および第2のコンポーネント220が継ぎ目/結合ジョイント204(
図2A)、205(
図2C)、および206を互いに含んで結合される領域である。多くの好適な結合剤は、親水性基材のために設計されている。したがって、表面処理またはコーティングプロセスの前に選択された領域をマスクすることは、そのような領域が表面処理を受けないことが保証され、それによってマスクされた領域が第1と第2のコンポーネント210および220との間の強化された結合を提供することを可能にする。他の実施形態において、第1のコンポーネント210および/または第2のコンポーネント220の追加の領域または異なる領域が表面処理の前にマスクされ得ることが理解されよう。さらに、いくつかの実施形態において、表面処理またはコーティング最中にはマスキングを使用しなくてもよい。
【0062】
図3Aは、BENZ材料の機械加工表面309の一部のレーザ形状測定画像を図示する。図面の左側にはコーティングされた表面301があり、図面の右側にはコーティングされていない表面302がある。要素308は、表面の任意の断面を図示する。
図3Bは、距離および高さ(d,h)ならびにその一次微分(d,dh/dd)の関数としてのプロファイル308のグラフ表示である。
図3Aの表面図および
図3Bの断面図の両方に見られるように、表面処理またはコーティングは表面粗さを低減する。特に、コーティングされた部分のプロファイルの一次微分は、比較的小さな範囲内に収まることがわかるが、コーティングされていない領域のプロファイルの一次微分は、劇的に変化する。
【0063】
図4Aは、ベース層436と、光減衰層またはコーティング層431と、を含む、親水性AIOL構造435aの断面を図示する。光減衰層431は、本明細書に記載された技術のうちのいずれかにより透明度が低くなる。
図4Bは、光減衰層431がベース層436とコーティング層433との間に挟まれたベース層436を備える、親水性AIOL構造435bの断面の別の配置を図示する。コーティング層433は、透明層であってもよく、または染料または他の何らかの材料を含むことができる。
図4Aおよび4Bに示された処理は、光学視界外のAIOLの領域に適用される場合、異常光視症を最小化するために使用することができる。そのような手法で適用された場合、光学視野に入射する迷光(コーティングされた表面へ入射する、またはそこから反射された)の量は、低減または最小化されることが予想される。
【0064】
図5Aは、本明細書に記載されたAIOLの表面処理部分の任意の断面を図示する。開示された構成は、本体材料を覆うコーティング材料の薄層を備える。
図5Bは、
図5Aの断面の所与の深さにおける材料に関連する相対表面エネルギーをグラフで表す。表面エネルギーは、親水性末端基と疎水性末端基との割合で記載される。
図5Bに最もよく見られるように、コーティングは本体材料よりも疎水性が高い。表面処理プロセスの結果として、
図5Bの曲線の対角部分で示されたように、追加の疎水性末端基が組み込まれた、本体材料内に遷移領域がある。
追加の実施例:
1.コーティング組成
a.Benz型製剤
b.フッ素製剤
c.シラノールコーティング
2.コーティング方法
a.浸漬:ほぼ全てのモノマー
b.蒸着:パリレン
c.塗料:厚いモノマー/粘性ポリマー
3.コーティング開始方法
a.熱:アゾビスおよびEsperox
b.光化学:アゾビス
4.高粘度ソリューション
5.予想される成果のコーティング
a.コーティング厚
b.コーティングの疎水性
c.表面の質感の変化
6.測定方法
a.FTIR:ATR
b.EDX:オーガ(Auger)
c.接触角
7.方法
実施例1:アゾビス熱開始剤
【0065】
xxグラム(gm)の2-HEMA、yyグラム(gm)のEOEMA、zzグラム(gm)の2,2-アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて調製された。混合物は、マグネチックスターラを使用して完全に混合し、未溶解の固体粒子がなく、シュリーレン(schlerian)線が見えないようにした。その後、混合物は、クリーンルームで0.2ミクロンのフィルターを通して濾過され、いかなる可能な浮遊粒子なども除去した。
【0066】
コーティングされたレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされた側は露出しており、他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングされた部品を表1の混合物に約1~60秒間浸漬し、コーティング混合物のフィルムが堆積したことを確認して取り除いた。レンズを、60℃のオーブンに入れて、約18時間硬化された。FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0067】
xx、yy、zzの値を有する正確な配合組成が表1に示される。
実施例2:UV開始剤
【0068】
xxグラム(gm)の2-HEMA、yyグラム(gm)のEOEMA、zzグラム(gm)の2,2-アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて調製された。混合物は、マグネチックスターラを使用して完全に混合し、未溶解の固体粒子がなく、シュリーレン(schlerian)線が見えないようにした。その後、混合物は、クリーンルームで0.2ミクロンのフィルターを通して濾過され、いかなる可能な浮遊粒子なども除去した。
【0069】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングされた部品を表1の混合物に約1~60秒間浸漬し、コーティング混合物のフィルムが堆積したことを確認して取り除いた。レンズは、350nmを超える波長で約2~6分間発光するUV中圧水銀ランプで処理された。ランプが消灯し、部品が取り外された。FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0070】
xx、yy、zzの値を有する正確な配合組成を表1に示される。
【表1】
実施例3:Esperox熱開始剤
【0071】
xxグラム(gm)の2-HEMA、yyグラム(gm)のEOEMA、zzグラム(gm)のEsperox33(Akzo Nobel Industries製のペルオキシネオデカン酸三級ブチル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて調製された。混合物は、マグネチックスターラを使用して完全に混合し、未溶解の固体粒子がなく、シュリーレン(schlerian)線が見えないようにした。その後、混合物は、クリーンルームで0.2ミクロンのフィルターを通して濾過され、いかなる可能な浮遊粒子なども除去した。
【0072】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングされた部品を表2の上記混合物に約1~60秒間浸漬し、コーティング混合物のフィルムが堆積したことを確認して取り除いた。レンズは、40℃のオーブンに入れられて約18時間硬化された。FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0073】
xx、yy、zzの値を有する正確な配合組成を表2に示される。
【表2】
実施例4:UV開始剤
【0074】
xxグラム(gm)の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(gm)、yyグラム(gm)のブチルアクリレート(gm)、および/またはxyグラム(gm)の4-ヒドロキシブチルアクリレート(gm)、zzグラム(gm)の2,2-アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて調製された。混合物は、マグネチックスターラを使用して完全に混合し、未溶解の固体粒子がなく、シュリーレン(schlerian)線が見えないようにした。その後、混合物は、クリーンルームで0.2ミクロンのフィルターを通して濾過され、いかなる可能な浮遊粒子なども除去した。
【0075】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングされた部品を表3の上記混合物に約1~60秒間浸漬し、コーティング混合物のフィルムが堆積したことを確認して取り除いた。レンズは、350nmを超える波長で約2~6分間発光するUV中圧水銀ランプで処理された。ランプが消灯し、部品が取り外された。FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0076】
xx、yy、xy、zzの値を有する正確な配合組成を表3に示される。
【表3】
実施例5:アゾビス熱開始剤
【0077】
xxグラム(gm)の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(gm)、yyグラム(gm)のブチルアクリレート(gm)、および/またはxyグラム(gm)の4-ヒドロキシブチルアクリレート(gm)、zzグラム(gm)の2,2-アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて調製された。混合物は、マグネチックスターラを使用して完全に混合し、未溶解の固体粒子がなく、シュリーレン(schlerian)線が見えないようにした。その後、混合物は、クリーンルームで0.2ミクロンのフィルターを通して濾過され、いかなる可能な浮遊粒子なども除去した。
【0078】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングされた部品を表3の上記混合物に約1~60秒間浸漬し、コーティング混合物のフィルムが堆積したことを確認して取り除いた。レンズは、60℃のオーブンに入れられて約18時間硬化された。FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0079】
xx、yy、xy、zzの値を有する正確な配合組成を表3に示される。
実施例6:Esperox熱開始剤
【0080】
xxグラム(gm)の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(gm)、yyグラム(gm)のブチルアクリレート(gm)、および/またはxyグラム(gm)の4-ヒドロキシブチルアクリレート(gm)、zzグラム(gm)のEsperox33(ペルオキシネオデカン酸三級ブチル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて調製された。
【0081】
混合物は、マグネチックスターラを使用して完全に混合し、未溶解の固体粒子がなく、シュリーレン(schlerian)線が見えないようにした。その後、混合物は、クリーンルームで0.2ミクロンのフィルターを通して濾過され、いかなる可能な浮遊粒子なども除去した。
【0082】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングされた部品を表3の上記混合物に約1~60秒間浸漬し、コーティング混合物のフィルムが堆積したことを確認して取り除いた。レンズは、40℃のオーブンに入れられて約18時間硬化された。FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0083】
xx、yy、xy、zzの値を有する正確な配合組成を表4に示される。
【表4】
実施例7:シロキサンコーティング
【0084】
95%エタノール水溶液は、約2mlの酢酸と混合され、pHが4.5~5.5で測定された。温度を周囲(20℃)に維持した。必要に応じて、pHを調整して、4.5~5.5の範囲に維持した。オクチルトリエトキシシランの2.0ml溶液をフード内で測定し、液体にゆっくりと加えた。オクチルトリエトキシシランの混合開始からの合計時間は、5分であった。
【0085】
別のプロセスにおいて、コーティングするレンズ部品を調製した。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングされる部品は、上記の混合物と約60~90秒間接触させられた。90秒後に部品を取り外し、室温で約24時間またはオーブンで60℃で6~8時間硬化させた。
【0086】
FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
実施例8:UV重合を使用するより厚いコーティングの調製
【0087】
xxグラム(gm)の2-HEMA、yyグラム(gm)のEOEMA、zzグラム(gm)の2,2-アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて表1につき調製された。混合物の総体積を約30mlに調整した。混合物を40mlのガラスバイアルに入れた。マグネチックスターラを混合物の内側に配置し、約8~10分間80~90℃に加熱した。モノマー溶液を綿密に監視した。攪拌棒によって生成された渦が完全に消えたとき(例えば、液体の表面が完全に平らになったとき)、モノマーを攪拌プレートからすばやく取り除き、氷水に入れた。完全に冷却されるまでモノマーを水平に攪拌した。
【0088】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングする部品を上記混合物に浸漬するか、粘性溶液をその上に塗る。レンズは、350nmを超える波長で約2~6分間発光するUV中圧水銀ランプで処理された。ランプが消灯し、部品が取り外された。
【0089】
FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0090】
xx、yy、xy、zzの値を有する正確な配合組成を表1に示される。
実施例9:厚いコーティングの調製および熱重合
【0091】
xxグラム(gm)の2-HEMA、yyグラム(gm)のEOEMA、zzグラム(gm)の2,2-アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて表1につき調製された。混合物の総体積を約30mlに調整した。混合物を40mlのガラスバイアルに入れた。マグネチックスターラを混合物の内側に配置し、約8~10分間80~90℃に加熱した。モノマー溶液を綿密に監視した。攪拌棒によって生成された渦が完全に消えたとき(例えば、液体の表面が完全に平らになったとき)、モノマーを攪拌プレートからすばやく取り除き、氷水に入れた。完全に冷却されるまでモノマーを水平に攪拌した。
【0092】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングする部品を上記混合物に浸漬するか、粘性溶液をその上に塗る。コーティングされた部品をオーブンに60℃で最低18時間置いた。
【0093】
FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0094】
xx、yy、zzの値を有する正確な配合組成を表1に示される。
実施例10:より厚いコーティングおよびEsperox33重合の調製
【0095】
xxグラム(gm)の2-HEMA、yyグラム(gm)のEOEMA、zzグラム(gm)のEsperox33(ペルオキシネオデカン酸三級ブチルおよび0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて表1につき調製された。混合物の総体積を約30mlに調整した。混合物を40mlのガラスバイアルに入れた。マグネチックスターラを混合物の内側に配置し、約8~10分間80~90℃に加熱した。モノマー溶液を綿密に監視した。攪拌棒によって生成された渦が完全に消えたとき(例えば、液体の表面が完全に平らになったとき)、モノマーを攪拌プレートからすばやく取り除き、氷水に入れた。完全に冷却されるまでモノマーを水平に攪拌した。
【0096】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングする部品を上記混合物に浸漬するか、粘性溶液をその上に塗る。コーティングされた部品をオーブンに40℃で最低18時間置いた。
【0097】
FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
【0098】
xx、yy、zzの値を有する正確な配合組成を表2に示される。
実施例11:パリレンコーティング
【0099】
コーティングされるレンズ部品のサンプルが調製された。コーティングされる側は露出しており、全ての他の領域はコーティング剤との接触から保護された。コーティングは、ベンダーのサイトで適用された。基本的に、固体二量体は真空下で加熱され、蒸発して二量体ガスになった。次いで、ガスを熱分解して、二量体をその単量体形態に切断した。
【0100】
室温堆積チャンバにおいて、モノマーガスが薄い透明なポリマーフィルムとして全ての表面に堆積した。
【0101】
FTIR-ATR、接触角の値およびEDXによって特徴付けられた。
実施例12:UV開始剤
【0102】
xxグラム(gm)の2-HEMA、yyグラム(gm)のEOEMA、zzグラム(gm)の2,2-アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)および0.3重量%(全混合物重量)のエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含む混合物は、きれいなバイアルに入れて調製された。混合物は、マグネチックスターラを使用して完全に混合し、未溶解の固体粒子がなく、シュリーレン(schlerian)線が見えないようにした。混合物を加熱(90℃)し、攪拌してオリゴマーを形成した。粘度が選択されたレベル(例えば、約150~250cps、約200cps)になったらプロセスを終了し、混合物を冷却して反応を停止する。次に、得られた混合物は使用するために保管される。
【0103】
混合物は、デジタルシリンジまたは本明細書に開示される方法のうちのいずれかを介して、処理のために選択された表面に分配することができる。処理された表面は、室温で30分間、その後アルゴン下で18時間40℃で静置することにより後処理される。
特徴キー-図
【0104】
以下は、本明細書に記載された図で指定された特徴のキーコードである。特定の図形特徴には、以下にリストされているコードのいずれか1つに先行する図番を使用して番号付けられている。例えば、
図1のAIOLの特徴番号は100である。特徴のサブセットは、特徴番号の最後にアルファ指定子を受け取ることもでき、例えば、ベローズ領域140は、それぞれ140aおよび140bとして指定される第1および第2のベローズ領域で構成される。
【表5】
(実施例)
【0105】
本技術のいくつかの態様は、以下の実施例に記載されている。
1.調節眼内レンズシステムであって、
第1のコンポーネントと、上記第1の光学コンポーネントの後方の第2のコンポーネントと、上記第1と第2の光学コンポーネント間の内側流体チャンバと、上記内側流体チャンバに流体的に連結された外側流体チャンバと、を含む、調節構造、を備え、
上記第1のコンポーネントおよび上記第2のコンポーネントは、親水性構造であり、上記調節構造の1つ以上の表面は、対応する処理領域の粗さを減少させる表面処理を含む、調節眼内レンズシステム。
2.上記処理された表面は、上記基材と同じ割合の疎水性要素および親水性要素を含む、実施例1に記載の調節眼内レンズシステム。
3.上記処理された表面は、約75%の疎水性要素に対して約25%の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)要素の割合を含む、実施例1に記載の調節眼内レンズシステム。
4.少なくとも部分的に上記内側流体チャンバを画定する内側表面は、上記表面処理を含む、実施例1~3のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
5.上記調節構造は、上記第1のコンポーネントおよび上記第2のコンポーネントの周囲によって、少なくとも部分的に画定される外側表面を備え、上記外側表面の少なくとも一部は、上記表面処理を含む、実施例1~4のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
6.上記表面処理は、上記調節構造の上記対応する1つ以上の表面に塗布されたコーティングを含む、実施例1~5のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
7.上記表面処理は、上記処理された領域からの親水性末端基の上記密度を低減するように適合されている、実施例1に記載の調節眼内レンズシステム。
8.上記表面処理は、上記処理された領域から親水性末端基をマスクするように適合されている、実施例1に記載の調節眼内レンズシステム。
9.上記外側流体チャンバは、上記内側流体チャンバの少なくとも一部の周りにあり、流体が上記外側流体チャンバと上記内側流体チャンバとの間を流れ、調節を提供するために上記第1の光学素子を移動させるように、ヒト対象の生来の眼の嚢と接合するように構成される、実施例1~8のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
10.上記内側流体チャンバ内の流体をさらに含み、上記流体は、疎水性液体を含む、実施例1~9のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
11.上記第1および第2のコンポーネントは、互いに結合されている、実施例1~10のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
12.上記第1および第2のコンポーネントは、1つ以上の結合部位で互いに結合され、上記1つ以上の結合部位は、上記表面処理を含まない、実施例1~11のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
13.上記第1および第2のコンポーネントは、低減断面送達構成に折り畳まれるのに十分な柔軟性を有する、実施例1~12のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
14.対象の水晶体嚢内に移植するための調節眼内レンズシステムであって、
第1の光学コンポーネントおよび境界面に沿って上記第1の光学コンポーネントに連結された第2の光学コンポーネントと、上記第1と第2の光学コンポーネント間の内側流体チャンバと、上記内側流体チャンバに流体的に連結された外側流体チャンバと、を含む、調節構造であって、
上記調節構造は、上記内側流体チャンバおよび上記外側流体チャンバによって画定される、実質的親水性外側表面および実質的疎水性内側表面を備える、調節構造と、
上記第1の光学コンポーネントおよび上記第2の光学コンポーネントの少なくとも1つの上のコーティングであって、上記コーティングが、上記第1および第2の光学コンポーネントの未処理領域と比較して、上記処理された領域の疎水性を変化させる、コーティングと、を備える、調節眼内レンズシステム。
15.上記調節構造の上記親水性外側表面は、第1の材料で構成され、上記コーティングは、上記第1の材料のプレポリマーを含む、実施例14に記載の調節眼内レンズシステム。
16.第1の材料は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2-エトキシエチルメタクリレート(EOEMA)とのコポリマーを含む、実施例15に記載の調節眼内レンズシステム。
17.上記コーティングは、EOEMAを含む、実施例15に記載の調節眼内レンズシステム。
18.上記コーティングは、上記第1および第2の光学コンポーネントの未処理領域と比較して、上記処理領域の表面粗さを低減する、実施例14~17のいずれか1つに記載の調節眼内レンズシステム。
19.上記コーティングは、未処理領域と比較して上記処理領域の疎水性を増加させる、実施例14に記載の調節眼内レンズシステム。
20.対象の水晶体嚢内に配置するための調節眼内レンズであって、上記調節眼内レンズは、
第1の光学領域および第1のベローズ領域を有する第1のコンポーネントと、
第2の光学領域および第2のベローズ領域を有する第2のコンポーネントであって、上記第2のコンポーネントは、上記第1のコンポーネントに連結された、第2のコンポーネントと、
上記第1の光学領域と上記第2の光学領域との間の第1の流体チャンバと、
上記第1のベローズ領域と上記第2のベローズ領域との間の第2の流体チャンバであって、上記調節眼内レンズに屈折力の変化を提供するよう、上記水晶体嚢の形状変化に応じて上記第1の流体チャンバと上記第2の流体チャンバとの間で流体を移送するために上記第1流体チャンバと流体連通する上記第2の流体チャンバと、
上記第1のコンポーネントの第1の処理領域および上記第2のコンポーネントの第2の処理領域に施された表面処理であって、上記表面処理は、上記対応する第1および第2の処理領域の上記疎水性を増加させる表面処理と、を備える、調節眼内レンズ。
21.対象の水晶体嚢内に配置するための調節眼内レンズであって、上記調節眼内レンズは、概して親水性表面を含み、上記調節眼内レンズは、上記表面の少なくとも一部にコーティングを含み、さらに、上記調節眼内レンズの上記表面の上記コーティングされた領域は、上記表面の未処理領域よりもより疎水性である、調節眼内レンズ。
結論
【0106】
本技術の実施形態の上記の詳細な説明は、網羅的であること、または本技術を上記に開示された正確な形態に限定することを意図していない。本技術の特定の実施形態、およびその実施例は、図示目的のために上記で記載されているが、当業者が認識するように、本技術の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、本明細書に記載された眼内レンズシステムの特徴のいずれかを、本明細書に記載された他の眼内レンズの特徴のいずれかと組み合わせてもよく、逆も同様である。さらに、ステップは所与の順序で提示されたが、代替の実施形態は異なる順序でステップを実行してもよい。本明細書に記載された様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされてもよい。
【0107】
上記から、本技術の特定の実施形態が図示の目的で本明細書に記載されているが、本技術の実施形態の記載を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造および機能は詳細に図示または記載されていないことが理解されよう。文脈が許容する場合、単数または複数の用語はまた、それぞれ、複数または単数の用語を含み得る。
【0108】
さらに、「または」という語が、2つ以上の項目のリストに関して他の項目から排他的な単一の項目のみを意味するように明確に制限されていない限り、そのようなリストでの「または」の使用は、(a)リスト内の任意の単一の項目、(b)リスト内の全ての項目、または(c)リスト内の項目の任意の組み合わせを含むとして解釈されるべきである。加えて、「含む」という用語は、少なくとも列挙された特徴を含むことを意味するために全体を通して使用され、それにより、任意のより多くの数の同じ特徴および/または他の特徴の追加タイプが排除されない。また、図示の目的で特定の実施形態は本明細書に記載されたが、本技術から逸脱することなく様々な修正を行うことができることも理解されよう。さらに、本技術のいくつかの実施形態に関連する利点をそれらの実施形態の文脈で記載したが、他の実施形態もそのような利点を示す可能性があり、全ての実施形態が技術の範囲内に入るために必ずしもそのような利点を示す必要はない。したがって、開示および関連技術は、本明細書に明示的に図示または記載されていない他の実施形態を包含することができる。