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特許7370055半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020021599
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021128982
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】富山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】手井 森介
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-537812(JP,A)
【文献】特開昭57-154852(JP,A)
【文献】特開2001-156100(JP,A)
【文献】特開2007-329491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリを用いて電極にワイヤを接合した後に、前記ワイヤの接合部よりも上方の位置であって、前記接合部を通る前記電極の表面の法線上からずれた位置である第1位置に、前記ワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを移動させることにより、前記ワイヤを所定の長さ引き出す第1工程と、
前記キャピラリを前記第1位置に移動させた後、前記第1位置よりも上方の位置であって、前記法線が延びる法線方向から見て前記第1位置に対して前記接合部側にずれた位置である第2位置に、前記ワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを移動させることにより、曲げ部を前記ワイヤに形成する第2工程と、
前記曲げ部を形成した後、前記法線方向に沿った前記キャピラリの下降及び上昇を複数回繰り返すことにより、前記曲げ部を切断予定部に加工する第3工程と、
前記キャピラリの下降及び上昇を複数回繰り返した後、ピンワイヤを形成するために、ワイヤクランパを閉じた状態で前記キャピラリを上昇させることにより、前記ワイヤを前記切断予定部において切断する第4工程と、を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記キャピラリを前記第2位置に移動させたときに、前記曲げ部は、前記接合部を通る前記法線上からずれた位置に位置する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記法線方向から見た場合に、前記第1位置から前記第2位置までの前記キャピラリの移動距離は、前記キャピラリの先端面の半径よりも長い、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記法線方向から見た場合に、前記第1位置から前記第2位置までの前記キャピラリの移動距離は、前記接合部から前記第1位置までの前記キャピラリの移動距離と同一である、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記キャピラリを前記第2位置に移動させたときに、前記キャピラリの先端面は前記接合部の直上に位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
基板上において、複数の半導体チップが、各前記半導体チップの主面が露出面として露出するように階段状に積層され、
前記電極は、各前記半導体チップの前記露出面に設けられ、
前記第1工程から前記第4工程までの一連の工程を前記半導体チップ毎に行うことにより、前記ピンワイヤを前記半導体チップ毎に形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程から前記第4工程までの一連の工程を、上段の前記半導体チップから下段の前記半導体チップの順に、又は、下段の前記半導体チップから上段の前記半導体チップの順に行う、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
電極に対して相対移動可能に構成されたキャピラリを含むボンディングユニットと、
前記ボンディングユニットの動作を制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、
前記キャピラリを用いて前記電極にワイヤを接合させた後に、前記ワイヤの接合部よりも上方の位置であって、前記接合部を通る前記電極の表面の法線上からずれた位置である第1位置に、前記ワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを移動させることにより、前記ワイヤを所定の長さ引き出させる第1制御信号と、
前記キャピラリを前記第1位置に移動させた後、前記第1位置よりも上方の位置であって、前記法線が延びる法線方向から見て前記第1位置に対して前記接合部側にずれた位置である第2位置に、前記ワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを移動させることにより、曲げ部を前記ワイヤに形成させる第2制御信号と、
前記曲げ部を形成させた後、前記法線方向に沿った前記キャピラリの下降及び上昇を複数回繰り返させることにより、前記曲げ部を切断予定部に加工させる第3制御信号と、
前記キャピラリの下降及び上昇を複数回繰り返させた後、ピンワイヤを形成するために、ワイヤクランパを閉じた状態で前記キャピラリを上昇させることにより、前記ワイヤを前記切断予定部において切断させる第4制御信号と、を前記ボンディングユニットに提供する、ワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際、例えば半導体部品同士をボンディングによって上下に接続するために、半導体部品の電極表面に対して、当該電極表面から立ち上がる方向に延びるピンワイヤを形成することがある。このようなピンワイヤは、例えば特許文献1に記載された方法によって形成することができる。この方法では、キャピラリを用いてワイヤを電極表面に接合した後、キャピラリを移動させてキャピラリの内部エッジ部を用いてワイヤに傷部分を形成する。その後、ワイヤの接合部から傷部分までの部分を電極表面から直立させた状態にした後に、キャピラリを下降させることにより、ワイヤは傷部分によって折り曲げられる。その後、ワイヤクランパを閉じた状態でキャピラリを上昇させることにより、ワイヤを傷部分において切断する。これにより、電極表面から立ち上がるピンワイヤが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-220699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなピンワイヤに対しては、電極表面からのピンワイヤの高さをより高くすることが要求されている。特許文献1に記載された方法によって高いピンワイヤを形成する場合、接合部から傷部分までのワイヤ部を長くする必要がある。しかし、この方法では、ワイヤを傷部分によって折り曲げる際、ワイヤ部を電極表面から直立させた状態でキャピラリを下降させているので、キャピラリの下降に応じてワイヤ部の軸方向に大きな力が作用し得る。このため、ワイヤ部を長くすると、当該力によってワイヤ部が座屈する等の不具合が生じやすくなる。この場合、傷部分よりも切れやすい部分が生じるので、ワイヤを傷部分において確実に切断することが難しくなる。従って、上記の方法では、所望の高さのピンワイヤを形成することは困難である。
【0005】
本開示は、所望の高さのピンワイヤを容易に形成できる半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態である半導体装置の製造方法は、キャピラリを用いて電極にワイヤを接合した後に、ワイヤの接合部よりも上方の位置であって、接合部を通る電極の表面の法線上からずれた位置である第1位置に、ワイヤを繰り出しながらキャピラリを移動させることにより、ワイヤを所定の長さ引き出す第1工程と、キャピラリを第1位置に移動させた後、第1位置よりも上方の位置であって、法線が延びる法線方向から見て第1位置に対して接合部側にずれた位置である第2位置に、ワイヤを繰り出しながらキャピラリを移動させることにより、曲げ部をワイヤに形成する第2工程と、曲げ部を形成した後、法線方向に沿ったキャピラリの下降及び上昇を複数回繰り返すことにより、曲げ部を切断予定部に加工する第3工程と、キャピラリの下降及び上昇を複数回繰り返した後、ピンワイヤを形成するために、ワイヤクランパを閉じた状態でキャピラリを上昇させることにより、ワイヤを切断予定部において切断する第4工程と、を備える。
【0007】
上記の製造方法によれば、ワイヤを切断予定部において確実に切断することができるので、所望の高さのピンワイヤを容易に形成することができる。
【0008】
キャピラリを第2位置に移動させたときに、曲げ部は、接合部を通る法線上からずれた位置に位置してもよい。この場合、ピンワイヤ形成予定部に座屈等の不具合が生じる事態をより確実に抑制でき、ワイヤを切断予定部においてより確実に切断することができる。
【0009】
法線方向から見た場合に、第1位置から第2位置までのキャピラリの移動距離は、キャピラリの先端面の半径よりも長くてもよい。この場合、切断予定部においてワイヤをより確実に切断することができる。
【0010】
法線方向から見た場合に、第1位置から第2位置までのキャピラリの移動距離は、接合部から第1位置までのキャピラリの移動距離と同一であってもよい。この場合、切断予定部においてワイヤをより一層確実に切断することができる。
【0011】
キャピラリを第2位置に移動させたときに、キャピラリの先端面は接合部の直上に位置してもよい。この場合、電極の表面から直立した状態のピンワイヤを容易に得ることができる。
【0012】
基板上において、複数の半導体チップが、各半導体チップの主面が露出面として露出するように階段状に積層され、電極は、各半導体チップの露出面に設けられ、第1工程から第4工程までの一連の工程を半導体チップ毎に行うことにより、ピンワイヤを半導体チップ毎に形成してもよい。第1工程から第4工程までの一連の工程を、上段の半導体チップから下段の半導体チップの順に、又は、下段の半導体チップから上段の半導体チップの順に行ってもよい。この場合、押付動作によるワイヤの切断が困難な状況下においても、ピンワイヤを半導体チップ毎に容易に形成することができる。
【0013】
本開示の別の形態であるワイヤボンディング装置は、電極に対して相対移動可能に構成されたキャピラリを含むボンディングユニットと、ボンディングユニットの動作を制御する制御ユニットと、を備え、制御ユニットは、キャピラリを用いて電極にワイヤを接合させた後に、ワイヤの接合部よりも上方の位置であって、接合部を通る電極の表面の法線上からずれた位置である第1位置に、ワイヤを繰り出しながらキャピラリを移動させることにより、ワイヤを所定の長さ引き出させる第1制御信号と、キャピラリを第1位置に移動させた後、第1位置よりも上方の位置であって、法線が延びる法線方向から見て第1位置に対して接合部側にずれた位置である第2位置に、ワイヤを繰り出しながらキャピラリを移動させることにより、曲げ部をワイヤに形成させる第2制御信号と、曲げ部を形成させた後、法線方向に沿ったキャピラリの下降及び上昇を複数回繰り返させることにより、曲げ部を切断予定部に加工させる第3制御信号と、キャピラリの下降及び上昇を複数回繰り返させた後、ピンワイヤを形成するために、ワイヤクランパを閉じた状態でキャピラリを上昇させることにより、ワイヤを切断予定部において切断させる第4制御信号と、をボンディングユニットに提供する。
【0014】
上記のワイヤボンディング装置によれば、ワイヤを切断予定部において確実に切断することができるので、所望の高さのピンワイヤを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、所望の高さのピンワイヤを容易に形成できる半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係るワイヤボンディング装置の構成を示す図である。
図2図2は、図1に示されたワイヤボンディング装置を用いて製造される半導体装置の構成を示す図である。
図3図3は、図2に示されたピンワイヤの形状とキャピラリの目標点とを示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法における工程を示すフロー図である。
図5図5の(a)部、(b)部及び(c)部は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法における工程を示す図である。
図6図6の(a)部、(b)部及び(c)部は、図5に続く工程を示す図である。
図7図7の(a)部、(b)部及び(c)部は、図6に続く工程を示す図である。
図8図8は、図6の(a)部の工程におけるワイヤの形状を示す図である。
図9図9の(a)部及び(b)部は、第1比較例に係る半導体装置の製造方法における工程を示す図である。
図10図10の(a)部、(b)部及び(c)部は、第2比較例に係る半導体装置の製造方法における工程を示す図である。
図11図11の(a)部、(b)部及び(c)部は、図10に続く工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0018】
〔ワイヤボンディング装置〕
図1に示すワイヤボンディング装置1は、例えば、半導体装置10に設けられた電極にワイヤ20を接合した後、ワイヤ20を所定の長さで切断することによって、当該電極の表面から立ち上がる方向に延びるピンワイヤ21(図3参照)を形成する。ワイヤボンディング装置1は、例えば、搬送ユニット2と、ボンディングユニット3と、制御ユニット4と、を備える。
【0019】
搬送ユニット2は、被処理部品である半導体装置10をボンディングエリアに搬送する。ボンディングユニット3は、例えば、移動機構6と、ボンディングツール7と、キャピラリ8と、ワイヤクランパ9と、を含む。移動機構6は、半導体装置10に対してキャピラリ8を相対移動させる。ボンディングツール7の先端には、ワイヤ20を繰り出すキャピラリ8が着脱可能に設けられている。キャピラリ8は、先鋭な円筒状をなしている。キャピラリ8の内部には、ワイヤ20が挿通されている。キャピラリ8は、ワイヤ20に対して熱、超音波又は圧力を提供する。
【0020】
ワイヤクランパ9は、キャピラリ8の上方に配置されている。ワイヤクランパ9は、ワイヤ20を把持可能に構成されている。ワイヤクランパ9が開いた状態では、ワイヤ20がワイヤクランパ9に把持されず、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しが許可される。ワイヤクランパ9が閉じた状態では、ワイヤ20がワイヤクランパ9に把持され、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しが停止される。ワイヤ20は、細径の金属ワイヤである。例えば、ワイヤ20は、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又は、これらの合金により形成されている。ワイヤ20の直径は、例えば20μm(マイクロメートル)である。
【0021】
制御ユニット4は、ボンディングユニット3の動作を含むワイヤボンディング装置1の全体の動作を制御する。制御ユニット4は、いくつかの制御信号をボンディングユニット3に提供する。例えば、制御信号は、半導体装置10に対するキャピラリ8の位置を制御するための信号と、熱、超音波又は圧力の提供の開始及び停止のための信号と、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しの許可及び停止のための信号と、を含む。制御ユニット4の具体的な制御動作については、後述する。
【0022】
〔半導体装置〕
図2に示す半導体装置10は、例えば、回路基板11と、複数の半導体チップ12A、12B、12C、及び12Dを有する半導体部品12と、複数のピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dと、を有する。半導体部品12は、例えば、回路基板11の主面11aに対してダイボンドなどにより固定されている。半導体部品12は、例えば、複数の半導体チップ12A、12B、12C、及び12Dが多段に積層された構成を有する。一例として、半導体部品12は、多段チップメモリデバイスである。
【0023】
各半導体チップ12A、12B、12C、及び12Dは、階段状にずれるように積層されている。半導体チップ12Aは、回路基板11の主面11a上に配置されている。半導体チップ12Bは、半導体チップ12Aの主面上に配置され、回路基板11の主面11aに沿った一方向に沿って半導体チップ12Aからずれるように配置されている。半導体チップ12Cは、半導体チップ12Bの主面上に配置され、当該一方向に沿って半導体チップ12Bからずれるように配置されている。半導体チップ12Dは、半導体チップ12Cの主面上に配置され、当該一方向に沿って半導体チップ12Cからずれるように配置されている。
【0024】
半導体チップ12Aの主面のうち半導体チップ12Bから露出する一部は、半導体チップ12Bから露出する露出面12aとなっている。半導体チップ12Bの主面のうち半導体チップ12Cから露出する一部は、半導体チップ12Cから露出する露出面12bとなっている。半導体チップ12Cの主面のうち半導体チップ12Dから露出する一部は、半導体チップ12Dから露出する露出面12cとなっている。半導体チップ12Dの主面は、半導体部品12の外面に露出する露出面12dとなっている。露出面12a、12b、12c、及び12dには、電極31A、31B、31C、及び31Dがそれぞれ設けられている。電極31Aの表面は露出面12aを構成し、電極31Bの表面は露出面12bを構成し、電極31Cの表面は露出面12cを構成し、電極31Dの表面は露出面12dを構成する。
【0025】
ピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dは、電極31A、31B、31C、及び31D上にそれぞれ設けられている。各ピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dは、所定の長さで切断されたワイヤ20の一部である。ピンワイヤ21Aは、電極31Aの表面に接合され、電極31Aの表面から立ち上がる方向に延びている。ピンワイヤ21Bは、電極31Bの表面に接合され、電極31Bの表面から立ち上がる方向に延びている。ピンワイヤ21Cは、電極31Cの表面に接合され、電極31Cの表面から立ち上がる方向に延びている。ピンワイヤ21Dは、電極31Dの表面に接合され、電極31Dの表面から立ち上がる方向に延びている。
【0026】
各ピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dの上端は、回路基板11の主面11aを基準としたときの同一の高さHに位置するように揃えられている。従って、各ピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dの長さは、互いに異なっている。最下段の半導体チップ12Aに設けられたピンワイヤ21Aの長さが最も長く、次段の半導体チップ12Bに設けられたピンワイヤ21Bの長さがピンワイヤ21Aの長さよりも短く、次段の半導体チップ12Cに設けられたピンワイヤ21Cの長さがピンワイヤ21Bの長さよりも短く、最上段の半導体チップ12Dに設けられたピンワイヤ21Dの長さが最も短い。各ピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dの上端は、半導体部品12上に設けられる別の図示しない半導体部品の電極に接続される。これにより、半導体部品12と当該別の半導体部品とが、ピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dを介して互いに電気的に接続される。
【0027】
以下、ピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dをそれぞれ区別して説明する必要がない場合には、これらを総称して「ピンワイヤ21」といい、電極31A、31B、31C、及び31Dをそれぞれ区別して説明する必要がない場合には、これらを総称して「電極31」という。
【0028】
図3は、ピンワイヤ21の形状を示している。図3に示すように、ピンワイヤ21は、ボンディング部21aと、ワイヤ部21bとを含む。ボンディング部21aは、ピンワイヤ21の下端部を構成する部分であり、後述するワイヤ20のボンディング部20a(接合部)に相当する。ボンディング部21aは、電極31に対して物理的及び電気的に接続されている。ここでいう物理的に接続されている状態とは、ピンワイヤ21と電極31とが互いに接合されている状態をいう。例えば、ボンディング部21aは、引っ張り力に対する抵抗力(反力)を生じさせる部分としてもよい。また、電気的に接続されている状態とは、ピンワイヤ21と電極31との間の電気抵抗が極めて小さい状態をいう。ボンディング部21aは、ワイヤ20の先端に形成される球状のFAB(FreeAir Ball)をキャピラリ8が電極31に押圧されることによって形成される。従って、ボンディング部21aは、FABが半分程度潰れた変形半球状をなしている。
【0029】
ワイヤ部21bは、ピンワイヤ21の本体部分であり、後述するワイヤ20のワイヤ部20bに相当する。ワイヤ部21bは、ボンディング部21aから上方に延在している。本実施形態では、ワイヤ部21bは、電極31の表面の法線が延びる法線方向D1に沿って延びている。換言すると、ワイヤ部21bは、電極31の表面に対して直立した状態となっている。ワイヤ部21bの断面は、円形状をなしており、ワイヤ20の断面形状を保っている。ワイヤ部21bの上端部21cは、ワイヤ部21bの上端にかけて先細る形状をなしている。上端部21cは、ピンワイヤ21が形成される際のワイヤ20の切断部であり、後述するワイヤ20の曲げ部20cに相当する。電極31の表面からピンワイヤ21の上端までの高さ、すなわちピンワイヤ21の全長は、例えば、100μm以上としてよい。
【0030】
〔半導体装置の製造方法〕
上述した半導体装置10は、ワイヤボンディング装置1によって製造される。以下、ワイヤボンディング装置1における制御ユニット4の制御動作、及び、半導体装置10の製造方法を説明する。
【0031】
まず、図3を参照しながら、キャピラリ8の先端が移動する第1目標点P1~第7目標点P7について具体的に説明する。図3は、ピンワイヤ21の形状と併せて第1目標点P1~第7目標点P7を示している。制御ユニット4は、予め設定された第1目標点P1~第7目標点P7に関する情報を有する。制御ユニット4は、第1目標点P1~第7目標点P7にキャピラリ8の先端が順次移動するように、ボンディングユニット3に制御信号を提供する。更に、制御ユニット4は、移動中におけるワイヤ20の繰り出しの許可及び停止を制御する制御信号をボンディングユニット3に提供する。更に、制御ユニット4は、キャピラリ8からの超音波などの提供の許可及び停止を制御する制御信号をボンディングユニット3に提供する。なお、キャピラリ8の先端とは、キャピラリ8の先端面8a(図8参照)の位置を示している。先端面8aは、例えば、電極31の表面と平行な平面となっており、法線方向D1から見て円形をなしている。従って、キャピラリ8の先端は、例えば、法線方向D1から見た場合の先端面8aの中心位置としてよい。
【0032】
なお、以下の説明では、半導体部品12が固定され、キャピラリ8が移動する場合を例示する。しかし、第1目標点P1~第7目標点P7が描く軌跡は、半導体部品12とキャピラリ8との相対的な位置関係によって描けられればよい。つまり、以下の説明のように、キャピラリ8のみを移動させて軌跡を描いてもよい。また、半導体部品12及びキャピラリ8の両方を移動させて軌跡を描いてもよい。例えば、上下方向の移動はキャピラリ8の移動によって対応し、左右方向の移動は半導体部品12の移動によって対応してもよい。
【0033】
第1目標点P1は、ワイヤ20を電極31にボンディングする位置を示す。換言すると、第1目標点P1は、ピンワイヤ21のボンディング部21aが形成される位置、すなわち、ボンディング部21aの位置を示している。第1目標点P1は、電極31の表面上の位置であって、法線方向D1から見た場合のボンディング部21aの中心の位置としてよい。
【0034】
第2目標点P2は、第1目標点P1の直上の位置である。換言すると、第2目標点P2は、第1目標点P1を通る電極31の表面の法線上の位置である。以下の説明において、電極31の表面の法線に沿って電極31から離れる方向を「上方向」と呼び、当該法線に沿って電極31に近づく方向を「下方向」と呼ぶ。そうすると、第2目標点P2は、第1目標点P1に対して上方向にずれた位置であるとも言える。
【0035】
第3目標点P3(第1位置)は、第1目標点P1及び第2目標点P2を通る電極31の法線上からずれた位置である。つまり、第3目標点P3は、電極31の法線に直交する平行軸線が延びる方向(以下、「平行軸線方向D2」と呼ぶ)に沿って第2目標点P2に対して所定距離だけ離間した位置に設定される。以下の説明において、平行軸線方向D2に沿って電極31Aから電極31Bに向かう方向を「右方向」と呼び、平行軸線方向D2に沿って電極31Bから電極31Aに向かう方向を「左方向」と呼ぶ。そうすると、第3目標点P3は、第2目標点P2に対して左方向に所定距離だけ離間した位置であるとも言える。第1目標点P1から第2目標点P2までの距離、及び第2目標点P2から第3目標点P3までの距離は、電極31の表面からのピンワイヤ21の高さ(ピンワイヤ21の全長)に基づいて決定してよい。第2目標点P2から第3目標点P3までの距離は、第1目標点P1から第2目標点P2までの距離と同等であってもよいし、長くてもよいし、短くてもよい。
【0036】
第4目標点P4(第2位置)は、第3目標点P3よりも上方の位置であって、法線方向D1から見た場合に第3目標点P3に対して第1目標点P1側にずれた位置である。つまり、第4目標点P4は、第3目標点P3に対して法線方向D1に沿って上方にずれた位置であって、第3目標点P3に対して平行軸線方向D2に沿って第1目標点P1側にずれた位置に設定される。第4目標点P4は、第3目標点P3に対して上方向及び右方向のそれぞれに所定距離だけ離間した位置に設定されるとも言える。本実施形態では、第4目標点P4は、第1目標点P1及び第2目標点P2の直上の位置に設定される。換言すると、第4目標点P4は、第1目標点P1及び第2目標点P2を通る電極31の法線上の位置に設定される。従って、第1目標点P1、第2目標点P2、及び第4目標点P4は、同一の線上に設定される。第4目標点P4の位置は、第1目標点P1及び第2目標点P2の直上である必要は無く、第1目標点P1及び第2目標点P2を通る電極31の法線上からずれた位置に設定されてもよい。例えば、第4目標点P4の位置は、法線方向D1から見た場合に、第3目標点P3と第1目標点P1及び第2目標点P2との間の位置であってもよいし、第3目標点P3に対して第1目標点P1及び第2目標点P2よりも遠い位置であってもよい。
【0037】
第5目標点P5は、第4目標点P4に対して下方向にずれた位置である。従って、第5目標点P5は、法線方向において、第1目標点P1、第2目標点P2、第4目標点P4と同一の線上に設定される。本実施形態では、第5目標点P5は、第2目標点P2よりも上方の位置に設定される。具体的には、第5目標点P5は、法線方向D1における第2目標点P2と第4目標点P4との間の位置に設定される。第5目標点P5は、第2目標点P2よりも下方の位置に設定されてもよい。例えば、第5目標点P5は、法線方向D1における第1目標点P1と第2目標点P2との間の位置に設定されてもよい。
【0038】
第6目標点P6は、第4目標点P4に対して上方向にずれた位置である。第7目標点P7は、第6目標点P6に対して上方向にずれた位置である。従って、法線方向において、第1目標点P1、第2目標点P2、第4目標点P4、第5目標点P5、第6目標点P6、及び第7目標点P7は、同一の線上に設定される。キャピラリ8が第7目標点P7に移動したときに、ワイヤ20が切断され、これにより、ピンワイヤ21が形成される。
【0039】
続いて、図4図5図6、及び図7を参照しながら、制御ユニット4の制御動作、及び半導体装置10の製造方法を説明する。以下では、最下段の半導体チップ12Aから最上段の半導体チップ12Dの順にピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dを形成する場合について説明する。但し、各ピンワイヤ21A、21B、21C、及び21Dの形成工程は同一であるため、ここでは、半導体チップ12Aの電極31Aにピンワイヤ21Aを形成する例を代表して説明する。
【0040】
<第1工程>
制御ユニット4は、ボンディングユニット3に第1制御信号を提供する。第1制御信号は、キャピラリ8を第1目標点P1に移動させる動作(工程S11)と、キャピラリ8を第2目標点P2に移動させる動作(工程S12)と、キャピラリ8を第3目標点P3に移動させる動作(工程S13)と、キャピラリ8から所定期間だけ超音波を放射させる動作と、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する動作と、を含む。
【0041】
第1制御信号を受けたボンディングユニット3は、キャピラリ8から繰り出されるワイヤ20の先端に球状のFAB(図7の(c)部参照)を形成した後、キャピラリ8を第1目標点P1に移動させる(工程S11、図5の(a)部参照)。このとき、キャピラリ8は、ワイヤ20を電極31に対して押圧する。次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8から所定期間だけ超音波を放射する。これにより、ワイヤ20のFABが変形して電極31Aに接合され、ボンディング部20aが形成される。
【0042】
次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8を第1目標点P1から第2目標点P2に移動させる(工程S12、図5の(b)部参照)。更に、ボンディングユニット3は、ワイヤクランパ9を開いた状態にすることにより、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する。つまり、ボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第1目標点P1から第2目標点P2に移動させる。
【0043】
次に、ボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第2目標点P2から第3目標点P3に移動させる(工程S13、図5の(c)部参照)。このとき、ワイヤ20が所定の長さ引き出され、ボンディング部20aからキャピラリ8まで延びるワイヤ部20bが形成される。ワイヤ部20bは、上述したように、ピンワイヤ21の本体部であるワイヤ部21bに相当する。従って、ワイヤ部20bは、ピンワイヤ21が形成される予定のピンワイヤ形成予定部とも言える。
【0044】
工程S12及びS13では、キャピラリ8を第1目標点P1から第3目標点P3に移動させることができればよい。例えば、工程S12及びS13に代えて、第1目標点P1から第3目標点P3に直接に移動させる工程を行ってもよい。換言すると、キャピラリ8は、第2目標点P2を経由しなくてもよい。例えば、第1目標点P1と第3目標点P3とを結ぶ直線軌跡に沿ってキャピラリ8を移動させてもよいし、第1目標点P1と第3目標点P3とを通る円弧軌跡に沿ってキャピラリ8を移動させてもよい。
【0045】
<第2工程>
制御ユニット4は、第2制御信号をボンディングユニット3に提供する。第2制御信号は、キャピラリ8を第4目標点P4に移動させる動作と、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する動作と、を含む(工程S14)。
【0046】
第2制御信号を受けたボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第3目標点P3から第4目標点P4に移動させる(工程S14、図6の(a)部参照)。このとき、ワイヤ部20bの上方に曲げ部20cが形成されると共に、曲げ部20cの上方にワイヤ部20dが形成される(工程S15)。曲げ部20cは、ワイヤ部20bとワイヤ部20dとの間に位置し、曲げ部20cからキャピラリ8まで延びるワイヤ部20dの軸方向(延在方向)を、ボンディング部20aから曲げ部20cまで延びるワイヤ部20bの軸方向(延在方向)から変化させる。曲げ部20cは、ワイヤ20における曲げの程度が大きくなることによって形成される。つまり、曲げ部20cにおける曲げの程度が大きくなると、曲げ部20cの変形が弾性変形から塑性変形に移行する。そして、曲げ部20cが塑性変形すると、曲げ部20cは、元の形状(直線状)に戻ることなく、曲げられた形状(円弧状)を維持する。
【0047】
工程S14及び工程S15では、第3目標点P3から第4目標点P4へのキャピラリ8の移動に応じて、曲げ部20cは、第3目標点P3に留まらず、第3目標点P3から第4目標点P4側に僅かに移動する。この移動後の曲げ部20cは、ボンディング部20aを通る電極31の法線上には位置しない。つまり、曲げ部20cは、ボンディング部20aを通る当該法線上からずれた位置に位置する。従って、ボンディング部20aから曲げ部20cまで延びるワイヤ部20bの軸方向、及び、曲げ部20cからキャピラリ8まで延びるワイヤ部20dの軸方向のそれぞれは、法線方向D1からから傾斜した状態となる。工程S14及び工程S15におけるワイヤ20のより具体的な形状については、後述する。
【0048】
工程S14では、第3目標点P3と第4目標点P4とを結ぶ直線軌跡に沿ってキャピラリ8を移動させてもよいし、第3目標点P3と第4目標点P4とを通る円弧軌跡に沿ってキャピラリ8を移動させてもよい。また、工程S14では、キャピラリ8を第3目標点P3から第4目標点P4に直接に移動させなくてもよい。つまり、キャピラリ8を第3目標点P3から別の目標点を経由させた後に第4目標点P4に移動させてもよい。例えば、第3目標点P3から別の目標点へキャピラリ8を右方向に移動させた後、当該別の目標点から第4目標点P4へキャピラリ8を上方向に移動させてもよい。
【0049】
<第3工程>
制御ユニット4は、第3制御信号をボンディングユニット3に提供する。第3制御信号は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを停止する動作と、キャピラリ8を第5目標点P5に移動させる動作(工程S15)と、キャピラリ8を第5目標点P5と第6目標点P6との間で往復移動させる動作(工程S16)と、を含む。
【0050】
第3制御信号を受けたボンディングユニット3は、ワイヤクランパ9を閉じた状態にすることにより、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを停止する。更に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8を第4目標点P4から第5目標点P5に下降させる(工程S16、図6の(b)部参照)。このとき、曲げ部20cを起点としてワイヤ部20bとワイヤ部20dとが互いに折り曲げられる。換言すると、ワイヤ部20bとワイヤ部20dとの間の角度が小さくなり、曲げ部20cの曲げの程度が更に大きくなる。そして、曲げ部20cの外側(左側)に引張力が作用する一方、曲げ部20cの内側(右側)に圧縮力が作用する。その結果、曲げ部20cの軸方向と垂直な方向に潰れるように曲げ部20cの一部が変形し、当該一部が曲げ部20cの他の部分に比べて細くなる。つまり、曲げ部20cの機械的強度は、ワイヤ20の他の部分の機械的強度よりも低くなる。
【0051】
次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを停止した状態で、キャピラリ8を第4目標点P4と第5目標点P5との間で往復移動させる(工程S17、図6の(c)部参照)。つまり、キャピラリ8は、第5目標点P5から第4目標点P4への移動と、第4目標点P4から第5目標点P5への移動とを繰り返す。このように、工程S16及び工程S17において、第4目標点P4から第5目標点P5へのキャピラリ8の下降と、第5目標点P5から第4目標点P4へのキャピラリ8の上昇とを複数回繰り返す。キャピラリ8の下降及び上昇の繰り返し動作によって、曲げ部20cを起点とするワイヤ部20bとワイヤ部20dとの折り曲げ動作が複数回行なわれる。この折り曲げ動作によって曲げ部20cには、繰り返し応力が作用する。
【0052】
繰り返し応力は、曲げ部20cに疲労を生じさせる。この疲労は、曲げ部20cの機械的強度を更に低下させる。その結果、曲げ部20cの機械的強度は、ボンディング部20aにおけるワイヤ部20bとの接続部分の機械的強度よりも低くなる。つまり、曲げ部20cは、ボンディング部20aよりも機械的強度が低い切断予定部Cに加工される。切断予定部Cは、後述する工程S19及び工程S20(図7の(b)部参照)においてワイヤ20が切断される予定の部分である。工程S16及び工程S17では、キャピラリ8の下降及び上昇の繰り返し動作は、切断予定部Cの機械的強度がボンディング部20aの機械的強度よりも低くなるまで複数回行われる。
【0053】
ボンディング部20aにおけるワイヤ部20bとの接続部分の機械的強度は、ワイヤ20の他の部分と比べて低くなる傾向がある。ボンディング部20aは、上述したように、ワイヤ20の先端に形成されたFABをキャピラリ8が電極31Aを押圧することによって形成される。ここで、FABが電極31Aに接合される際にFABの中の金属結晶の大きさが変化するため、FABとFAB以外のワイヤ20の部分とで金属結晶の大きさが異なった状態となる。金属結晶の大きさが変化する境となるワイヤ20の境界部分では、機械的強度が低下しやすい。この境界部分は、ボンディング部20aにおけるワイヤ部20bとの接続部分に相当する。従って、当該接続部分の機械的強度は、ワイヤ20の他の部分と比べて低くなりやすい。このため、当該接続部分以外のワイヤ20の他の部分の機械的強度を低下させることなく単にワイヤ20を上方向に引っ張ると、当該接続部分においてワイヤ20が切断されやすくなる。そこで、切断予定部Cの機械的強度を、ボンディング部20aの当該接続部分の機械的強度よりも低くすることにより、当該接続部分においてワイヤ20が切断されることなく、切断予定部Cにおいてワイヤ20が確実に切断されるようにしている。
【0054】
本実施形態では、キャピラリ8を第4目標点P4と第5目標点P5との間で往復移動させているので、第4目標点P4から第5目標点P5へのキャピラリ8の移動距離と、第5目標点P5から第4目標点P4へのキャピラリ8の移動距離とは互いに同一になっている。しかし、これら移動距離は、互いに同一になっている必要はなく、互いに異なってもよいし、キャピラリ8の下降及び上昇を繰り返す度に変化してもよい。本実施形態では、キャピラリ8の下降及び上昇を繰り返す際に、ワイヤクランパ9を閉じた状態としている。つまり、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを停止した状態で、キャピラリ8の下降及び上昇の繰り返しを行っている。これにより、繰り返し応力を曲げ部20cに効率的に作用させることができるので、曲げ部20cをボンディング部20aよりも機械的強度が低い切断予定部Cへとより確実に加工することができる。
【0055】
<第4工程>
制御ユニット4は、第4制御信号をボンディングユニット3に提供する。第4制御信号は、キャピラリ8を第6目標点P6に移動させる動作(工程S18)と、キャピラリ8を第7目標点P7に移動させる動作(工程S19)と、を含む。
【0056】
第4制御信号を受けたボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを停止した状態で、キャピラリ8を第5目標点P5から第6目標点P6に移動させる(工程S18、図7の(a)部参照)。このとき、ワイヤ部20b、切断予定部C、及びワイヤ部20bは、キャピラリ8の上昇に応じて上方向に引っ張られ、法線方向D1に沿った状態となる。
【0057】
次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを停止した状態で、キャピラリ8を第6目標点P6から第7目標点P7に移動させる(工程S19、図7の(b)部参照)。つまり、図7の(a)部に示す状態からキャピラリ8の上昇を更に上昇させる。このとき、キャピラリ8の上昇に応じてワイヤ20が軸方向(上方向)に引っ張られる。ここで、切断予定部Cの機械的強度は、ボンディング部20aの機械的強度よりも低くなっている。つまり、切断予定部Cの機械的強度は、ワイヤ20の他の部分に比べて最も低下した状態となっている。このため、ワイヤ20が軸方向に引っ張られると、ワイヤ20は、機械的強度が最も低い切断予定部Cにおいて切断される。これにより、電極31A上にピンワイヤ21Aが形成される(工程S20)。
【0058】
次に、制御ユニット4は、ワイヤ20の先端にFABを形成した後、次段の半導体チップ12Bの電極31Bの直上の第8目標点P8にキャピラリ8を移動させる。その後、工程S11~工程S20の一連の工程を電極31Bに対して再度行うことにより、電極31B上にピンワイヤ21Bが形成される。その後、工程S11~工程S20の一連の工程を電極31Cに対して再度行うことにより、電極31C上にピンワイヤ21Cが形成される。その後、工程S11~工程S20の一連の工程を電極31Dに対して再度行うことにより、電極31D上にピンワイヤ21Dが形成される。以上の工程を経て、図2に示す半導体装置10が得られる。ピンワイヤ21を形成する順番は、上述した例に限られない。例えば、最上段の半導体チップ12Dから最下段の半導体チップ12Aの順にピンワイヤ21D、21C、21B、及び21Aを形成してもよいし、任意の順番でピンワイヤ21を形成してもよい。
【0059】
ここで、図8を参照して、工程S14及び工程S15におけるワイヤ20の形状について詳細に説明する。キャピラリ8が第4目標点P4に位置する状態において、ワイヤ20は、ボンディング部20aと、ワイヤ部20bと、曲げ部20cと、ワイヤ部20dとを含む。
【0060】
ワイヤ部20bは、ボンディング部20aから曲げ部20cまで連続して延びるワイヤ20の部分である。ワイヤ部20bの軸方向D3は、法線方向D1及び平行軸線方向D2に対して傾斜している。つまり、ワイヤ部20bの軸方向D3は、法線方向D1の成分と平行軸線方向D2の成分とを含む。ワイヤ部20bの軸方向D3と法線方向D1とがなす角度θ1は、0°よりも大きく且つ90°よりも小さい範囲内である。換言すると、角度θ1は鋭角である。角度θ1は、例えば、15°以上且つ65°以下の範囲内、好ましくは、25°以上且つ40°以下の範囲内としてよい。ワイヤ部20bの軸方向D3と平行軸線方向D2とがなす角度θ2も、0°よりも大きく且つ90°よりも小さい範囲内である。角度θ2は、例えば、25°以上且つ75°以下の範囲内、好ましくは、25°以上且つ40°以下の範囲内としてよい。角度θ2は、角度θ1と異なってもよいし、角度θ1と同一であってもよい。
【0061】
ワイヤ部20dは、曲げ部20cからキャピラリ8まで連続して延びるワイヤ20の部分である。ワイヤ部20dの軸方向D4は、法線方向D1及び平行軸線方向D2に対して傾斜している。つまり、ワイヤ部20dの軸方向D4は、法線方向D1の成分と平行軸線方向D2の成分とを含む。ワイヤ部20dの軸方向D4と法線方向D1とがなす角度θ3は、0°よりも大きく且つ90°よりも小さい範囲内である。角度θ3は、例えば、15°以上且つ65°以下の範囲内、好ましくは、25°以上且つ40°以下の範囲内としてよい。ワイヤ部20dの軸方向D4と平行軸線方向D2とがなす角度θ4も、0°よりも大きく且つ90°よりも小さい範囲内である。角度θ4は、例えば、25°以上且つ75°以下の範囲内、好ましくは、25°以上且つ40°以下の範囲内としてよい。角度θ4は、角度θ3と異なってもよいし、角度θ3と同一であってもよい。
【0062】
ワイヤ部20dの軸方向D4は、ワイヤ部20bの軸方向D3と交差する。つまり、ワイヤ部20dの軸方向D4は、ワイヤ部20bの軸方向D3とは異なる。ワイヤ部20dの軸方向D4とワイヤ部20bの軸方向D3とがなす角度θ5は、角度θ2と角度θ4との合計の値によって表される。角度θ5は、0°よりも大きく且つ180°よりも小さい範囲内である。角度θ5は、例えば、50°以上且つ150°以下の範囲内、好ましくは、50°以上且つ80°以下の範囲内としてよい。
【0063】
本実施形態では、角度θ1は角度θ3と同一であり、角度θ2は、角度θ4と同一である。つまり、曲げ部20cの中心を通る平行軸線に関して、ワイヤ部20dの形状はワイヤ部20bの形状と対称となっている。従って、ワイヤ部20bの軸方向D3の長さは、ワイヤ部20dの軸方向D4の長さと同一となる。この場合、曲げ部20cの上下方向の中心を通る平行軸線から電極31Aの表面までの長さL1は、当該平行軸線からキャピラリ8の先端面8aまでの長さL2と同一となる。つまり、長さL1と長さL2との比(L1/L2)は、1(すなわち、L1:L2=1:1)となる。一例として、長さL1及び長さL2のそれぞれは、300μmである。長さL1及び長さL2は、互いに同一である必要は無く、互いに異なってもよい。長さL1と長さL2との比(L1/L2)は、0.5以上且つ2.0以下の範囲内であってもよいし、好ましくは、0.7以上且つ1.5以下の範囲内であってもよい。長さL1及び長さL2のそれぞれは、例えば、200μm以上且つ400μm以上の範囲内であってもよいし、好ましくは、250μm以上且つ350μm以上の範囲内であってもよい。
【0064】
ワイヤ部20bの軸方向D3の長さは、第1目標点P1から第3目標点P3までの距離に対応する。つまり、ワイヤ部20bの軸方向D3の長さは、第1目標点P1から第3目標点P3までの法線方向D1に沿ったキャピラリ8の移動距離d1と、第1目標点P1から第3目標点P3までの平行軸線方向D2に沿ったキャピラリ8の移動距離d2とに基づいて決定される。移動距離d1は、平行軸線方向D2から見た場合の第1目標点P1から第3目標点P3までキャピラリ8の移動距離ということもできる。移動距離d2は、法線方向D1から見た場合の第1目標点P1から第3目標点P3までキャピラリ8の移動距離ということもできる。
【0065】
ワイヤ部20dの軸方向D4の長さは、第3目標点P3から第4目標点P4までの距離に対応する。つまり、ワイヤ部20dの軸方向D4の長さは、第3目標点P3から第4目標点P4までの法線方向D1に沿ったキャピラリ8の移動距離d3と、第3目標点P3から第4目標点P4までの平行軸線方向D2に沿ったキャピラリ8の移動距離d4とに基づいて決定される。移動距離d3は、平行軸線方向D2から見た場合の第3目標点P3から第4目標点P4までキャピラリ8の移動距離ということもできる。移動距離d4は、法線方向D1から見た場合の第3目標点P3から第4目標点P4までキャピラリ8の移動距離ということもできる。
【0066】
本実施形態では、移動距離d2と移動距離d4と同一であり、移動距離d2及び移動距離d4のそれぞれは、キャピラリ8の先端面8aの半径Rよりも長い。先端面8aの半径Rは、例えば、20μmである。また、移動距離d3は、移動距離d1よりも僅かに長い。上述したように、キャピラリ8を第3目標点P3から第4目標点P4に移動させたときに、曲げ部20cは、第3目標点P3から第4目標点P4側に僅かにずれる。このときの第3目標点P3から上方への曲げ部20cのずれ量を考慮して、移動距離d3は、移動距離d1よりも長く設定されている。移動距離d3は、移動距離d1と同一であってもよいし、短くてもよい。移動距離d2は、移動距離d4と同一でなくてもよく、移動距離d4よりも長くてもよいし、短くてもよい。移動距離d2は、移動距離d1よりも長くてもよい。この場合、角度θ2を小さくすることができる。つまり、曲げ部20cにおける曲げの程度を大きくすることができる。これにより、曲げ部20cを容易に形成することが可能となる。
【0067】
キャピラリ8が第4目標点P4に位置する状態において、キャピラリ8の先端面8aは、ボンディング部20aの直上に位置している。先端面8aがボンディング部20aの直上に位置する状態とは、法線方向D1から見た場合に、先端面8aの内部にボンディング部20aの全体が収まっている状態、すなわち、ボンディング部20aを通る電極31の法線の全てが先端面8aの内部を通る状態をいう。本実施形態では、法線方向D1から見た場合に、先端面8aの中心軸線CLがボンディング部20aの中心を通るようにキャピラリ8の位置が設定されているが、先端面8aがボンディング部20aの直上に位置する状態であれば、先端面8aの中心軸線CLはボンディング部20aの中心からずれていてもよい。
【0068】
以上に説明した、本実施形態に係る半導体装置10の製造方法及びワイヤボンディング装置1の作用効果について、比較例が有する課題と共に説明する。
【0069】
図9は、第1比較例に係る半導体装置の製造方法における工程を示す。この製造方法は、ワイヤに曲げ部を形成しない点で、本実施形態に係る半導体装置10の製造方法とは異なる。第1比較例に係る製造方法では、まず、キャピラリ108を用いてワイヤ120を半導体部品112の電極131にボンディングさせることにより、ボンディング部120aを形成した後、ワイヤ120を繰り出しながらキャピラリ108を上昇させることにより、ボンディング部120aから上方に延びるワイヤ部120bを形成する(図9の(a)部参照)。次に、ワイヤクランパを閉じた状態でキャピラリ108を上昇させることにより、ワイヤ120を切断する(図9の(b)部参照)。ここで、上述したように、ボンディング部120aとワイヤ部120bとの接続部分は、金属結晶の大きさが変化する部分であるので、当該接続部分の機械的強度は、ワイヤ120の他の部分の機械的強度に比べて低い。このため、この状態でキャピラリ108を単に上昇させると、図9の(b)部に示すように、当該接続部分においてワイヤ120が切断されてしまう。従って、第1比較例に係る半導体装置の製造方法では、電極131から立ち上がる方向に延びるピンワイヤを形成することは難しい。
【0070】
図10は、第2比較例に係る半導体装置の製造方法における工程を示す。図11は、図10に示す工程に続く工程を示す。この製造方法は、ワイヤに曲げ部(傷部分)を形成する点においては本実施形態に係る製造方法と共通する。しかし、この製造方法は、ワイヤを電極から直立させた状態でワイヤを折り曲げている点で、本実施形態に係る製造方法とは異なる。第2比較例に係る製造方法では、まず、キャピラリ108を用いてワイヤ120を半導体部品112の電極131にボンディングさせることにより、ボンディング部120aを形成した後、ワイヤ120を繰り出しながらキャピラリ108を上昇させることにより、ボンディング部120aから上方に延びるワイヤ部120bを形成する(図10の(a)部参照)。次に、キャピラリ108を左方向に移動させた後に下降させる(図10の(b)部参照)。このとき、キャピラリ108の先端の内部エッジによってワイヤ120に傷部分120cを形成する(図10の(c)部参照)。そして、ワイヤ120を繰り出しながらキャピラリ108を上昇させた後、キャピラリ108を右方向に移動させる。このとき、ワイヤ部120bは、電極131の表面の法線方向に沿った状態となる。換言すると、ワイヤ部120bは、電極131の表面から直立した状態となる。
【0071】
次に、キャピラリ108を下降させることによって、ワイヤ120を傷部分120cにおいて折り曲げる(図11の(a)部参照)。つまり、ワイヤ部120dを傷部分120cを起点としてワイヤ部120b側に折り曲げる。このとき、ワイヤ部120bの軸方向は、電極131の表面の法線方向に沿った状態となっている。つまり、ワイヤ部120bの軸方向は、法線方向に沿って下降するキャピラリ108の下降方向(すなわち、キャピラリ108の押圧方向)と同方向である。この場合、キャピラリ108の押圧力に応じて生じるワイヤ部120bの軸力が大きくなる。ワイヤ部120bの軸力が大きくなると、ワイヤ部120bに座屈が生じやすくなる(図11の(b)部参照)。ワイヤ部120bに座屈が生じると、当該座屈によりワイヤ部120bに曲げ部120eが形成される。このとき、キャピラリ108の下降に応じて曲げ部120eに応力が作用し、当該応力によって曲げ部120eの機械的強度が低下する。この状態で、ワイヤクランパを閉じてキャピラリ108を上昇させると、傷部分120cではなく曲げ部120eにおいてワイヤ120が切断されてしまうことがある(図11の(c)部参照)。つまり、ワイヤ120を狙いの位置(傷部分120c)で切断することができなくなるおそれがある。この場合、狙いの高さよりも低いピンワイヤ121が形成されてしまう。従って、第2比較例に係る半導体装置の製造方法では、所望の高さのピンワイヤを形成することは難しい。
【0072】
本実施形態に係る半導体装置10の製造方法及びワイヤボンディング装置1では、ワイヤ20に曲げ部20cを形成する際、キャピラリ8を第3目標点P3を経由させた後に第4目標点P4に移動させている。これにより、キャピラリ8を第4目標点P4に移動させたときに、ワイヤ部20bの軸方向D3を法線方向D1から傾斜させた状態にすることができる。この場合、ワイヤ部20bの軸方向D3と、キャピラリ8による押圧方向(すなわち、キャピラリ8が下降する法線方向D1)とが異なるので、キャピラリ8を下降させたときにワイヤ部20bに座屈等の不具合が生じにくくなる。つまり、ワイヤ部20bの軸方向D3とキャピラリ8による押圧方向とが異なる状態では、キャピラリ8の押圧力に応じて生じるワイヤ部20bの軸力が小さくなるので、ワイヤ部20bに座屈が生じにくくなる。このような座屈等の不具合が抑制されれば、キャピラリ8を上昇させたときにワイヤ20が切断予定部C以外の部分で切断されてしまう事態が抑制される。その結果、ワイヤ20を切断予定部Cにおいて確実に切断することができるので、所望の高さのピンワイヤ21を容易に形成することができる。
【0073】
更に、本実施形態に係る半導体装置10の製造方法及びワイヤボンディング装置1では、ワイヤ20を周囲の押付部に押し付けることによってワイヤ20を切断する方法を用いた場合とは異なり、空中におけるキャピラリ8の下降及び上昇の繰り返し動作によってワイヤ20を切断している。つまり、押付部へのワイヤ20の押付動作を行うことなく、空中でのキャピラリ8の移動動作のみによってワイヤ20を切断している。押付部へのワイヤの押付動作を行う場合、キャピラリによってワイヤを押付部に押し付けることで、ワイヤに薄肉部を形成する。この薄肉部では、ワイヤの他の部分と比べて機械的強度が低下するので、薄肉部を形成した後にキャピラリを上昇させることによって、ワイヤを薄肉部において切断することができる。このような押付動作を行う場合、ワイヤを押し付けるために或る程度広い面積を有する押付部をワイヤの接合部の周囲に確保する必要がある。しかし、押付部を確保できる位置が限られている場合には、押付動作を行うことが困難となり得る。例えば、ワイヤの接合部から押付部までの距離が或る程度離れてしまうと、ワイヤの接合部と押付部との間に設けられる部品が妨げとなって、接合部から押付部への押付動作を行うことができなくなってしまうことがある。更に、押付部の位置が限られてしまうと、押付部において形成する薄肉部の位置が限られてしまうことになるので、所望の高さのピンワイヤを形成することが困難となる。これに対し、本実施形態に係る半導体装置10の製造方法及びワイヤボンディング装置1では、上述したように、空中でのキャピラリ8の動作のみによってワイヤ20を切断することが可能であるため、押付部へのワイヤ20の押付動作を行うことが困難な状況下においても、所望の高さのピンワイヤ21を容易に形成することができる。
【0074】
本実施形態では、キャピラリ8を第4目標点P4に移動させたときに、曲げ部20cは、ボンディング部20aを通る電極31の法線上からずれた位置に位置している。この場合、キャピラリ8を第4目標点P4に移動させたときに、ワイヤ部20bの軸方向D3が法線方向D1から傾斜している状態をより確実に維持できる。換言すると、ワイヤ部20bの軸方向D3とキャピラリ8による押圧方向とが異なる状態をより確実に維持できる。その結果、ワイヤ部20bに座屈等の不具合が生じる事態をより確実に抑制でき、切断予定部Cにおいてワイヤ20をより確実に切断することができる。
【0075】
本実施形態では、法線方向D1から見た場合に、第3目標点P3から第4目標点P4までのキャピラリ8の移動距離は、キャピラリ8の先端面8aの半径よりも長い。この場合、キャピラリ8から曲げ部20cまでのワイヤ部20dの長さが極端に短くなる事態を抑制できる。これにより、曲げ部20cに生じる繰り返し応力が極端に小さくなる事態を抑制できる。その結果、曲げ部20cをボンディング部20aよりも機械的強度が低い切断予定部Cへとより確実に加工することができるので、切断予定部Cにおいてワイヤ20をより確実に切断することができる。
【0076】
本実施形態では、法線方向D1から見た場合に、第3目標点P3から第4目標点P4までのキャピラリ8の移動距離は、ボンディング部20aから第3目標点P3までのキャピラリ8の移動距離と同一である。この場合、キャピラリ8から曲げ部20cまでのワイヤ部20dの長さを、ボンディング部20aから曲げ部20cまでのワイヤ部20bの長さと同一にすることができる。これにより、曲げ部20cに生じる繰り返し応力が小さくなる事態を抑制できる。その結果、曲げ部20cをボンディング部20aよりも機械的強度が低い切断予定部Cへとより一層確実に加工することができるので、ワイヤ20を切断予定部Cにおいてより一層確実に切断することができる。
【0077】
本実施形態では、キャピラリ8を第4目標点P4に移動させたときに、キャピラリ8はボンディング部20aの直上に位置している。この場合、ワイヤ部20bを電極31の表面に対して直立させた状態にすることができる。この状態でワイヤクランパ9を閉じてキャピラリ8を上昇させることによって、電極31の表面から直立した状態のピンワイヤ21を容易に得ることができる。
【0078】
本実施形態では、工程S11から工程S20までの一連の工程を半導体部品12の半導体チップ12A、12B、12C、及び12D毎に行うことにより、ピンワイヤ21を半導体チップ12A、12B、12C、及び12D毎に形成している。また、工程S11から工程S20までの一連の工程を、最下段の半導体チップ12Aから最上段の半導体チップ12Dの順に行っている。半導体部品12において、仮に、ワイヤ20を周囲の押付部に押し付けるキャピラリ8の押付動作によってワイヤ20を切断する方法を用いる場合、或る程度広い面積を有する回路基板11の主面11aを押付部として利用することが考えられる。しかし、この方法では、半導体チップ12Aにピンワイヤ21Aを形成した後、その上段の半導体チップ12Bにピンワイヤ21Bを形成しようとすると、半導体チップ12Bから回路基板11の主面11aへのキャピラリ8の移動が、その途中の半導体チップ12Aに形成されたピンワイヤ21Aによって妨げられてしまい、キャピラリ8の押付動作によるワイヤ20の切断を行うことができなくなってしまうことがある。これに対し、本実施形態に係る半導体装置10の製造方法及びワイヤボンディング装置1によれば、このような押付動作を行うことなく、キャピラリ8の空中での移動動作のみによってワイヤ20を切断することができるので、押付動作によるワイヤ20の切断が困難な状況下においても、ピンワイヤ21を半導体チップ12A、12B、12C、及び12D毎に容易に形成することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施してよい。
【符号の説明】
【0080】
1…ワイヤボンディング装置、3…ボンディングユニット、4…制御ユニット、8…キャピラリ、8a…先端面、9…ワイヤクランパ、10…半導体装置、11a…主面、12…半導体部品、12A,12B,12C,12D…半導体チップ、12a,12b,12c,12d…露出面、20…ワイヤ、20a…ボンディング部(接合部)、20b…ワイヤ部、20c…曲げ部、21,21A,21B,21C,21D…ピンワイヤ、31,31A,31B,31C,31D…電極、C…切断予定部、D1…法線方向、d2,d4…移動距離、P3…第3目標点(第1位置)、P4…第4目標点(第2位置)、R…半径。
図1
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図11