(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】トレーラの連動ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 13/04 20060101AFI20231020BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20231020BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B60T13/04
B60T13/74 H
B60T7/04 C
(21)【出願番号】P 2020092661
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390010928
【氏名又は名称】株式会社デリカ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】吉原 元
(72)【発明者】
【氏名】服部 浩
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-147457(JP,A)
【文献】特開2015-006828(JP,A)
【文献】特開2009-248942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00-7/10
B60T 13/00-13/74
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーラのカム式のドラムブレーキのブレーキレバーをブレーキ作用位置およびブレーキ解除位置に移動させる電動シリンダと、
前記ブレーキレバーを、前記ブレーキ解除位置から前記ブレーキ作用位置に向かう方向に常に付勢している付勢部材と、
前記トレーラを牽引するトラクタのブレーキペダルが踏み込まれるとオンに切り替わり、踏み込みが解除されるとオフに切り替わる前記トラクタの側で発生するブレーキ操作信号に連動して、前記電動シリンダを駆動する駆動回路と、
を備えており、
前記駆動回路は、前記ブレーキ操作信号がオンに切り替わると、前記ブレーキレバーを前記ブレーキ解除位置からブレーキ作用位置に移動させる方向に、前記電動シリンダを駆動し、前記ブレーキ操作信号がオフに切り替わると、前記ブレーキレバーを前記ブレーキ作用位置から前記ブレーキ解除位置に戻す方向に、前記電動シリンダを駆動することを特徴とするトレーラの連動ブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のトレーラの連動ブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキ操作信号は、前記ブレーキペダルの操作に連動して前記トラクタのブレーキランプを点滅させる通電信号であるトレーラの連動ブレーキシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトレーラの連動ブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキレバーに対する前記電動シリンダの伸縮方向の位置を調整する位置調整機構を備えているトレーラの連動ブレーキシステム。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載のトレーラの連動ブレーキシステムにおいて、
前記付勢部材の付勢力を調整する付勢力調整機構を備えているトレーラの連動ブレーキシステム。
【請求項5】
請求項1または2に記載のトレーラの連動ブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキレバーに対する前記電動シリンダの伸縮方向の位置を調整する位置調整機構と、
前記付勢部材の付勢力を調整する付勢力調整機構と、
を備えており、
前記電動シリンダは、上下方向に揺動可能な状態で、前記位置調整機構を介して、前記トレーラの車体フレームに取り付けられており、
前記ブレーキレバーの先端部は、前記電動シリンダの作動ロッドの先端部に対して、当該作動ロッドの伸縮方向にスライド可能な状態で連結されており、
前記付勢部材は、前記伸縮方向に配置され、前記ブレーキ作用位置で所定のブレーキ力を発生するに足る引張バネ力を前記ブレーキレバーに与える引張コイルバネであり、
前記引張コイルバネの一端部は、上下方向に揺動可能な状態で、前記付勢力調整機構を介して、前記車体フレームに取り付けられており、
前記引張コイルバネの他端部は、前記作動ロッドの先端部に連結されているトレーラの連動ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタのブレーキに連動して動作するトレーラの連動ブレーキシステムに関し、特に、ブレーキ油圧取出し機構が備わっていない農用トラクタ等によって牽引されるトレーラに搭載される連動ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
トレーラの連動ブレーキシステムとして、トラクタの側のブレーキペダルの踏み込みにより生じる作動油圧を、トレーラの側に伝達して、そのブレーキシステムをトラクタの側のブレーキ操作に連動させるものが知られている。農用トラクタ等においてはブレーキ油圧取出し機構が備わっていない場合がある。このような場合には、ブレーキペダルの踏み込みにより生じる電気信号等を利用して、トレーラのブレーキシステムの動作を、トラクタの側のブレーキ動作に連動させている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平11-147457号公報)に記載のトレーラの制動装置においては、トラクタのブレーキペダルの踏み込みによりオンする制動灯の通電信号を利用して、トラクタのブレーキ動作に連動させて、トレーラの側のブレーキ動作を行うようにしている。そのために、トレーラの側に搭載したコントローラは、制動灯がオンすると、電動シリンダを駆動して、トレーラに搭載されているブレーキシステムのマスターシリンダのピストンロッドを押し込み、マスターシリンダで発生する油圧をブレーキ装置のホイールシリンダに供給してブレーキ装置を作動させるようにしている。
【0004】
電動シリンダは、他の駆動機構に比べて安価であり、トレーラの駐車ブレーキに利用されている。例えば、特許文献2(実公平8-5883号公報)には、バネ力によって制動力を発生する駐車ブレーキを、電動シリンダを用いて、制動力を解除する解除状態に切り替える構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-147457号公報
【文献】実公平8-5883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電動シリンダは安価であるが、一般に動作速度が十分でない。特許文献2に記載の駐車ブレーキに用いる場合はよいが、特許文献1に記載されているようなトレーラの連動ブレーキシステムに用いる場合には問題が生じる。すなわち、トラクタの側においてブレーキペダルの踏み込みによって発生する電気信号をトリガーとしてトレーラの側の電動シリンダを駆動しても、電動シリンダの作動ロッドの移動速度に限界があるので、ドラムブレーキをブレーキ作用状態に移行させるまでに時間を要する。
【0007】
このため、トラクタの側において車輪にブレーキが効き始める時点から、トレーラの側の車輪にブレーキが効き始めるまでに、実用上において無視できないタイムラグが生じる。具体的には、電動シリンダを用いた従来のトレーラの連動ブレーキシステムは、道路運送車両の保安基準である、20km/hの速度での走行状態でブレーキを踏み込んだ場合の停止距離が5m以内という基準を満たすことが困難である。
【0008】
本発明の目的は、この点に鑑みて、電動シリンダを用いて、トラクタのブレーキ操作に連動して応答性良くトレーラの車輪にブレーキを掛けることができるように構成されたトレーラの連動ブレーキシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のトレーラの連動ブレーキシステムは、
トレーラのカム式のドラムブレーキのブレーキレバーをブレーキ作用位置およびブレーキ解除位置に移動させる電動シリンダと、
ブレーキレバーを、ブレーキ解除位置からブレーキ作用位置に向かう方向に常に付勢している引張コイルバネ等の付勢部材と、
トレーラを牽引するトラクタのブレーキペダルが踏み込まれるとオンに切り替わり、踏み込みが解除されるとオフに切り替わるトラクタ側で発生するブレーキ操作信号に連動して、電動シリンダを駆動する駆動回路と、
を備えており、
駆動回路は、ブレーキ操作信号がオンに切り替わると、ブレーキレバーをブレーキ解除位置からブレーキ作用位置に移動させる方向に、電動シリンダを駆動する。逆に、ブレーキ操作信号がオフに切り替わると、ブレーキレバーをブレーキ作用位置からブレーキ解除位置に戻す方向に、電動シリンダを駆動することを特徴としている。
【0010】
ここで、トラクタの側においてブレーキペダルの踏み込みに応じて発生するブレーキ操作信号としては、トラクタに標準装備されているブレーキランプをオンオフさせる通電信号を用いることができる。
【0011】
電動シリンダがブレーキレバーをブレーキ作用位置に移動させる際には、付勢力は電動シリンダに対してアシスト力として作用するので、電動シリンダの作動ロッドは、無負荷状態の場合よりも速い速度で移動する。この結果、トラクタの側においてブレーキが効き始める時点から実質的に遅れることなく、トレーラの側においてもブレーキを車輪に加えることができる。
【0012】
なお、ブレーキ解除動作においては、付勢力は電動シリンダに対して負荷となって作用し、作動ロッドの移動速度が低下する。しかし、ブレーキ解除動作においては、ブレーキ作用時におけるようなトラクタの側のブレーキ動作に対する即応性は要求されない。ブレーキ解除動作に多少の遅延が生じても実用上、支障は生じない。
【0013】
よって、本発明によれば、トラクタの側のブレーキ操作に対して応答性良くトレーラの車輪にブレーキを作用させることのできる連動ブレーキシステムを廉価に構成できる。特に、本発明の連動ブレーキシステムは、油圧取り出し機構が備わっていない農用トラクタ等のトラクタに用いるのに適している。また、本発明によれば、トレーラに、マスターシリンダ、油圧供給配管等のブレーキ作動用の油圧機構を搭載する必要がないので、簡単かつ廉価に、トレーラの連動ブレーキシステムを構築できる。
【0014】
ここで、本発明のトレーラの連動式ブレーキシステムは、ブレーキレバーに対する電動シリンダの伸縮方向の位置を調整するネジ付きロッドエンド等の位置調整機構と、引張コイルバネ等の付勢部材の付勢力を調整するネジ付きロッドエンド等の付勢力調整機構とを備えていることが望ましい。
【0015】
位置調整機構によってブレーキレバーに対する電動シリンダの位置を微調整することで、ブレーキが効き始める電動シリンダの作動ロッドの移動位置等を容易に調整できる。換言すると、作動ロッドの必要ストローク量を短くし、ブレーキランプの点灯時点からブレーキが効き始めるまでの時間を短縮できる。また、付勢力調整機構によって付勢部材の付勢力を調整することで、電動シリンダの作動ロッドの移動速度を調整でき、各連動部材の間の遊びを詰め、応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明を適用したトレーラをトラクタに連結した状態を示す側面図であり、(b)はトラクタのブレーキシステムとトレーラの連動ブレーキシステムを示す説明図である。
【
図2】
図1の連動ブレーキシステムの構成例を示す説明図であり、(a)はブレーキレバーがブレーキ解除位置にある状態を示し、(b)はブレーキレバーがブレーキ作用位置にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したトレーラの連動ブレーキシステムの実施の形態を説明する。なお、以下の実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明を実施の形態の構成に限定することを意図したものではない。
【0018】
図1(a)は本発明を適用した連動ブレーキシステムが搭載された被牽引農作業機などのトレーラを農用トラクタに連結した状態を示す説明図である。トラクタ1は、車体フレーム2、左右一対の前輪3および左右一対の後輪4、車体フレーム2の後端部に取り付けた牽引用連結機構5、後輪4にブレーキを掛けるブレーキシステム10等が備わっている。トレーラ20は、車体フレーム21、左右一対のトレーラ車輪22、車体フレーム21の前端部に取り付けた被牽引用連結機構23、トラクタ1の側のブレーキ操作に連動してトレーラ車輪22にブレーキを掛ける連動ブレーキシステム30等が備わっている。
【0019】
図1(b)は、トラクタ1の側のブレーキシステム10およびトレーラ20の側の連動ブレーキシステム30を示す説明図である。トラクタ1の側のブレーキシステム10は、ブレーキペダル11と、マスターシリンダ等を含む油圧回路12と、トラクタ1の左右の後輪4に配置した油圧駆動式のドラムブレーキ13とを備えている。ブレーキペダル11の踏み込みにより油圧回路12で生じる油圧によってドラムブレーキ13が作動して左右の後輪4に所定のブレーキ力が加わる。ブレーキペダル11の踏み込み、踏み込み解除に連動して、ブレーキランプ点灯回路14を介して、ブレーキランプ15がオンオフ駆動される。
【0020】
トレーラ20の側の連動ブレーキシステム30は、トラクタ側のブレーキペダル11の踏み込み、踏み込みの解除に連動してトレーラ車輪22に対するブレーキ力の作用、解除を行う。連動ブレーキシステム30は、各トレーラ車輪22に取り付けたカム式のドラムブレーキ31と、各ドラムブレーキ31のカム駆動用のブレーキレバー32を操作するための一対の電動シリンダ33と、各電動シリンダ33の駆動回路34(通電制御回路)と、ブレーキレバー32に対して常に一方向に付勢力を与えている付勢部材としての一対の引張コイルバネ35とを備えている。
【0021】
駆動回路34は、トラクタ1の側のブレーキランプ点灯回路14から、引出用配線36を介して、ブレーキランプ15に対する通電信号Sを取り込む。通電信号Sがオンに切り替わると、駆動回路34は、電動シリンダ33を駆動して、その作動ロッド33aを引込位置から突出位置に移動させる。通電信号Sがオフに切り替わると、駆動回路34は、電動シリンダ33を逆方向に駆動して、作動ロッド33aを突出位置から引込位置に戻す。
【0022】
作動ロッド33aは、ドラムブレーキ31のブレーキレバー32の先端部に連結されている。作動ロッド33aが引込位置から突出位置に移動すると、ブレーキレバー32がブレーキ解除位置からブレーキ作用位置に旋回させられる。これにより、ドラムブレーキ31のブレーキシューが移動させられて、トレーラ車輪22にブレーキが加わる。作動ロッド33aが突出位置から引込位置に戻ると、ブレーキレバー32がブレーキ作用位置からブレーキ解除位置に戻り、トレーラ車輪22に対するブレーキが解除される。
【0023】
ブレーキレバー32には、引張コイルバネ35によって、常に、ブレーキ解除位置からブレーキ作用位置に向かう方向に引張力が作用している。電動シリンダ33が引込位置から突出位置に向かう方向に駆動する場合には、引張力がアシスト力として電動シリンダ33に作用する。電動シリンダ33の作動ロッド33aは、無負荷状態よりも速い速度で移動し、作動ロッド33aに連結されているブレーキレバー32も速い移動速度で、ブレーキ解除位置からブレーキ作用位置に切り替わる。逆に、電動シリンダ33を、突出位置から引込位置に向かう方向に駆動する場合には、引張力が負荷となって電動シリンダ33に作用する。電動シリンダ33の作動ロッドは、無負荷状態よりも遅い速度で駆動される。ブレーキレバー32は遅い移動速度で突出位置から引込位置に戻る。
【0024】
なお、電動シリンダ33の駆動回路34は、リレー回路などから構成したシーケンス回路またはPLAなどから構成できる。例えば、駆動回路34は、トラクタ1に搭載されているバッテリ電源16から給電用配線37を介して電動シリンダ駆動用の直流電流を取り込む。駆動回路34は、例えば、ブレーキランプ15の通電信号Sのオンオフによって切り替わるc接点リレーによって、a接点リレーを切り替えて、電動シリンダ33に対する給電方向を切り替える。
【0025】
このように構成した連動ブレーキシステム30の動作をまとめて説明する。トラクタ1の運転中に、操作者がブレーキペダル11を踏み込み、トラクタ1にブレーキを掛けると、ランプ通電信号Sがオフからオンに切り替わり、ブレーキランプ15が点灯する。通電信号Sがオンに切り替わると、トレーラ20の側の駆動回路34は、電動シリンダ33を引込位置から突出位置に向かう方向に駆動する。ドラムブレーキ31のブレーキレバー32は、ブレーキ作用位置に向かう方向に引張コイルバネ35の引張力によって付勢されているので、ブレーキレバー32は速い速度でブレーキ作用位置に移動する。この結果、トラクタ1の側におけるブレーキを掛ける時点から僅かのタイムラグで、トレーラ20の側にもブレーキを掛けることができる。
【0026】
トラクタ1の側のブレーキペダル11の踏み込みを止めてブレーキを解除すると、通電信号Sがオフに切り替わり、トレーラ20の側の駆動回路34は、電動シリンダ33を突出位置から引込位置に向かう方向に駆動する。この場合には、引張コイルバネ35の引張力が負荷として電動シリンダ33に作用するので、ブレーキレバー32は遅い移動速度でブレーキ作用位置からブレーキ解除位置に戻る。ブレーキの掛かりが遅れる場合とは異なりブレーキが解除される動作が遅くても、実用上において安全面での問題はない。
【0027】
このように、安価な駆動源である電動シリンダ33を用いて、トラクタ1の側のブレーキ操作に応じて、応答性良くトレーラ20の車輪にブレーキを掛けることのできるトレーラの連動ブレーキシステム30を実現できる。
【0028】
次に、
図2(a)、(b)は、
図1に示す連動ブレーキシステム30の具体的な構成例を示す説明図である
図2(a)はブレーキレバー32がブレーキ解除位置にある状態を示し、
図2(b)はブレーキレバー32がブレーキ作用位置にある状態を示す。
【0029】
図2(a)を参照して説明すると、トレーラ20の車体フレーム21の下面には、車幅方向に水平に延びる左右の車軸(図示せず)が支持され、車軸にトレーラ車輪22が取り付けられている。左右の車軸には、カム式のドラムブレーキ31が取り付けられている。ドラムブレーキ31からは、ブレーキレバー32が車体フレーム21の底面近傍位置まで上方に向けて延びている。
【0030】
車体フレーム21の底面部分には、車体前後方向において、所定の間隔の位置に、後側取付用ブラケット41および前側取付用ブラケット42が締結固定されている。後側取付用ブラケット41および前側取付用ブラケット42の間に、電動シリンダ33および引張コイルバネ35が車体前後方向に配列されている。電動シリンダ33の作動ロッド33aの先端部には連結板45を介して、ドラムブレーキ31のブレーキレバー32の上端部32aが車体前後方向に僅かにスライド可能な状態で連結されている。また、作動ロッド33aの先端部には連結板45を介して、引張コイルバネ35の後端部35aが連結されている。引張コイルバネ35によって電動シリンダ33の作動ロッド33aは、常に、車体後方に向けて引っ張られている。
【0031】
さらに説明すると、電動シリンダ33は、その後端部が、ピン支点43およびネジ付きロッドエンド44を介して、上下方向に揺動可能な状態で、後側取付用ブラケット41によって支持されている。また、ネジ付きロッドエンド44を回すことで、電動シリンダ33の車体前後方向の位置を微調整できる。電動シリンダ33の前端部からは、車体前方に向けて作動ロッド33aが突出している。作動ロッド33aの先端部には、連結板45が固定されている。連結板45は車体前方に延びている。
【0032】
連結板45には、ドラムブレーキ31のブレーキレバー32が車体前後方向にスライド可能に連結されている。連結板45には車体前後方向に長いスライド穴45aが形成されている。ドラムブレーキ31のブレーキレバー32の上端部32aには、車幅方向に水平に延びるスライドピン46が取り付けられている。このスライドピン46が連結板45のスライド穴45aにスライド可能に挿入されている。
【0033】
作動ロッド33aに取り付けた連結板45の先端部には、引張コイルバネ35の後端部35aが上下に揺動可能な状態で連結されている。引張コイルバネ35の前端部35bは、ピン支点47およびネジ付きロッドエンド48を介して、上下方向に揺動可能な状態で、前側取付用ブラケット42によって支持されている。ブレーキ作用位置32Bにおいて、ブレーキレバー32に、十分なブレーキ力を発生するに足る力が作用するように、引張コイルバネ35の引張バネ力が設定される。ネジ付きロッドエンド48を回すことで、引張コイルバネ35の張り具合、したがって、その引張バネ力を微調整できる。
【0034】
図2(a)に示す状態において、トラクタ1(
図1参照)の側でブレーキが掛けられると、電動シリンダ33が駆動され、作動ロッド33aが図示の引き込み位置Aから、
図2(b)に示す突出位置Bに移動する。作動ロッド33aは突出位置Bに向かう方向に、引張コイルバネ35によって常に引っ張られているので、無負荷状態よりも速い速度で、引き込み位置Aから突出位置Bに移動する。
【0035】
作動ロッド33aが引き込み位置Aから突出位置Bに移動すると、ブレーキレバー32は、その下端の回動支点32bを中心として車体後方の側に倒され、
図2(a)に示すブレーキ解除位置32Aから
図2(b)に示すブレーキ作用位置32Bに移動する。なお、ブレーキレバー32は、その下端部の回動支点32bを中心として、その上端部32aが円弧状に移動する。この動きに追従して、上端部32aが連結されている連結板45の部分が上下に僅かに揺動するので、ブレーキレバー32を円滑に移動させることができる。
【0036】
図2(b)に示すブレーキが作用している状態において、トラクタ1(
図1参照)の側でブレーキが解除されると、電動シリンダ33が駆動され、その作動ロッド33aが、引張コイルバネ35の引張バネ力に逆らって、
図2(b)に示す突出位置Bから
図2(a)に示す引き込み位置Aに戻される。これに連動して、ブレーキレバー32も、
図2(b)に示すブレーキ作用位置32Bから
図2(a)に示すブレーキ解除位置32Aに戻り、トレーラ車輪22に掛かっていたブレーキが解除される。
【0037】
なお、上記の実施の形態では、トラクタ1のブレーキランプ15のオンオフに連動して、トレーラ20の電動シリンダ33を駆動して、ドラムブレーキ31を動作させている。トラクタ1のブレーキペダル11の踏み込みによりオンオフするリミットスイッチ等から発生する電気信号を利用して、電動シリンダ33を駆動することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 トラクタ
2 車体フレーム
3 前輪
4 後輪
5 牽引用連結機構
10 ブレーキシステム
11 ブレーキペダル
12 油圧回路
13 ドラムブレーキ
14 ブレーキランプ点灯回路
15 ブレーキランプ
16 バッテリ電源
20 トレーラ
21 車体フレーム
22 トレーラ車輪
23 被牽引用連結機構
30 連動ブレーキシステム
31 ドラムブレーキ
32 ブレーキレバー
32a 上端部
32A ブレーキ解除位置
32b 回動支点
32B ブレーキ作用位置
33 電動シリンダ
33a 作動ロッド
34 駆動回路
35 引張コイルバネ
35a 後端部
35b 前端部
36 引出用配線
37 給電用配線
41 後側取付用ブラケット
42 前側取付用ブラケット
43 ピン支点
44 ネジ付きロッドエンド
45 連結板
45a スライド穴
46 スライドピン
47 ピン支点
48 ネジ付きロッドエンド
A 引き込み位置
B 突出位置
S 通電信号