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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/00 20220101AFI20231020BHJP
   H04L 45/42 20220101ALI20231020BHJP
【FI】
H04L45/00
H04L45/42
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020109339
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022006832
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 晃
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0082941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 45/00
H04L 61/00
H04L 45/42
H04L 65/1066
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1NATの配下にありIPv4プライベートアドレスを保持する第1端末と、第2NATの配下にありIPv4プライベートアドレスを保持する第2端末と、の間で行われる通信方法であって、
前記第1端末による経路指示装置宛てのトンネル通信開始要求に基づいて、
トンネルスイッチに対して第1ホールパンチパケットを送信させる指示と、
前記第1NATのアドレス/ポート番号に対して第2ホールパンチパケットを送信させる指示と、
を含む第1経路指示パケットを前記経路指示装置から前記第2端末に送信し、
前記第2端末は、
前記第1経路指示パケットの受信に基づいて、前記トンネルスイッチに対して前記第1ホールパンチパケットを送信し、
前記第1NATのアドレス/ポート番号に対して前記第2ホールパンチパケットを送信するとともに、前記経路指示装置に対して、前記第1ホールパンチパケット及び前記第2ホールパンチパケットの送信が完了したことを伝えるための確認パケットを送信し、
前記経路指示装置は、前記確認パケットの受信に基づいて、前記第1端末に対して前記第2NATのアドレス/ポート番号を伝える第2経路指示パケットを送信し、
前記第1端末は、
前記経路指示装置から受信する前記第2経路指示パケットに基づいて前記第2NATのアドレス/ポート番号に対してトンネル経路の生成を指示する直接トンネル要求パケットを送信し、
前記第1端末が前記第2ホールパンチパケットを受信した場合、または前記第2端末が前記直接トンネル要求パケットを受信した場合において、前記第1端末と前記第2端末との間で直接トンネル通信が行われることを特徴とする通信方法。
【請求項2】
前記第1端末は、前記第2端末から前記第2ホールパンチパケットを受信しない場合に、前記トンネルスイッチに対してトンネル経路の生成を指示する間接トンネル要求パケットを送信し、
前記第1端末が前記第2ホールパンチパケットを受信しない場合、及び前記第2端末が前記直接トンネル要求パケットを受信しない場合において、前記トンネルスイッチを介して前記第1端末と前記第2端末との間でトンネル通信が行われることを特徴とする請求項1に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンド端末同士が通信を行う現状のネットワークには、IPv4グローバルアドレスとIPv4プライベートアドレスが存在している。これらアドレス空間の間にはNAT(Network Address Translation)装置が介在する。そこで、グローバルアドレス側からプライベートアドレス側に向けて通信の開始ができないという制約があり、NAT越え問題と言われている。NAT越え問題の解決方法は、様々存在している。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される通信装置は、WAN(Wide Area Network)を経由して通信を行う相手装置との通信可能性を判定する通信テスト部を有する。通信可能性判定の動作として、STUN(Simple Traversal Of User Datagram Protocol (UDP) through Network Address Translators (NATs))サーバに対して予めテストパケットを送信する。STUNサーバは、これを受けて、当該端末に対応したNATのIPアドレスとポート番号を記憶しておく。通信開始端末は、通信開始時にSTUNサーバに対して、通信相手のNATのIPアドレスとポート番号を問い合わせ、そこに向かって最初のパケットを送る。このパケットが相手に届くと、直接通信に成功する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-283594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2台のエンド端末がいずれもNAT配下に存在すると、これらエンド端末間において、NATの種類によって直接通信が可能な場合と、中継装置を経由しないと通信できない場合が生じる。このような場合、既存の方式では、中継装置を経由する経路を先に確立する場合と、直接通信経路を先に確立しようとする場合がある。例えば、前述のSTUNサーバの場合は、先に直接通信経路を確立しようとする。既存のNTMobile(Network Traversal with Mobility)を適用した通信システムでは、中継装置を経由する経路を先に確立するようになっている。その後、エンド端末間で直接通信が可能か否か調べ、直接通信が可能である場合には直接通信に切り替えることになる。そのため、利用する経路が確定するまでに時間が浪費されることになってしまう。そこで、通信経路の最適化を効率良く行うことができる技術が求められている。
【0006】
本発明は、通信経路の最適化を効率良く行い得る通信方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通信方法は、
第1NATの配下にありIPv4プライベートアドレスを保持する第1端末と、第2NATの配下にありIPv4プライベートアドレスを保持する第2端末と、の間で行われる通信方法であって、
前記第1端末によるトンネル通信開始要求に基づいて、
トンネルスイッチに対して第1ホールパンチパケットを送信させる指示と、
前記第1NATのアドレス/ポート番号に対して第2ホールパンチパケットを送信させる指示と、
を含む第1経路指示パケットを前記経路指示装置から前記第2端末に送信し、
前記第2端末は、
前記第1経路指示パケットの受信に基づいて、前記トンネルスイッチに対して前記第1ホールパンチパケットを送信し、
前記第1NATのアドレス/ポート番号に対して前記第2ホールパンチパケットを送信するとともに、前記経路指示装置に確認パケットを送信し、
前記経路指示装置は、前記確認パケットの受信に基づいて、前記第1端末に対して前記第2NATのアドレス/ポート番号を伝える第2経路指示パケットを送信し、
前記第1端末は、
前記経路指示装置から受信する前記第2経路指示パケットに基づいて前記第2NATのアドレス/ポート番号に対してトンネル経路の生成を指示する直接トンネル要求パケットを送信し、
前記第1端末が前記第2ホールパンチパケットを受信した場合、または前記第2端末が前記直接トンネル要求パケットを受信した場合において、前記第1端末と前記第2端末との間で直接トンネル通信が行われることを特徴とする。
【0008】
本発明の通信方法は、第1端末によるトンネル通信開始要求に基づいて、経路指示装置から第2端末に第1経路指示パケットを送信する。この第1経路指示パケット内には、トンネルスイッチに対して第1ホールパンチパケットを送信させる指示と、第1NATのアドレス/ポート番号に対して第2ホールパンチパケットを送信させる指示と、が含まれている。そのため、トンネルスイッチを介してトンネル通信を行う通信経路の確立と、トンネルスイッチを介さず直接的に第1端末と第2端末との間でトンネル通信を行う通信経路の確立と、をともに試行することができる。そして、本発明の通信方法は、第1端末が第2ホールパンチパケットを受信した場合、または第2端末が直接トンネル要求パケット(経路指示装置から受信する第2経路指示パケットに基づいて第2端末に対して送信されるパケット)を受信した場合において、第1端末と第2端末との間で直接トンネル通信が行われる。そのため、トンネルスイッチを介した通信経路の確立の試行によって通信経路の確保を担保しつつ、直接通信の確立を試行することができる。したがって、通信経路の最適化を効率良く行い得る通信方法を実現することができる。
【0009】
本発明の通信方法において、
前記第1端末は、前記第2端末から前記第2ホールパンチパケットを受信しない場合に、前記トンネルスイッチに対してトンネル経路の生成を指示する間接トンネル要求パケットを送信し、
前記第1端末が前記第2ホールパンチパケットを受信しない場合、及び前記第2端末が前記直接トンネル要求パケットを受信しない場合において、前記トンネルスイッチを介して前記第1端末と前記第2端末との間でトンネル通信が行われる。
【0010】
このような構成によって、第1端末と第2端末との間の直接通信経路の確立が不成立(第1端末が第2ホールパンチパケットを受信しない場合、及び第2端末が直接トンネル要求パケットを受信しない場合)となっても、トンネルスイッチを介した通信経路の確立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施例1の通信システムの構成を概略的に例示する説明図である。
図2図2は、図1の通信システムにおいて、第1端末が第2ホールパンチパケットを受信し、第2端末が直接トンネル要求パケットを受信した場合における、経路最適化処理の制御シーケンスを概略的に説明する説明図である。
図3図3は、図1の通信システムにおいて、第1端末が第2ホールパンチパケットを受信せず、第2端末が直接トンネル要求パケットを受信した場合における、経路最適化処理の制御シーケンスを概略的に説明する説明図である。
図4図4は、図1の通信システムにおいて、第1端末が第2ホールパンチパケットを受信せず、第2端末が直接トンネル要求パケットを受信しない場合における、経路最適化処理の制御シーケンスを概略的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の通信方法を具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<実施例1>
(通信システム)
図1に示す通信システム1は、仮想ネットワーク通信を行うシステムである。本発明の通信方法は、通信システム1に適用される。通信システム1は、図1に示すように、第1端末10と、第2端末20と、第1NAT11と、第2NAT21と、経路指示装置30と、トンネルスイッチ40と、を備えている。通信システム1は、例えば、NTMobile(Network Traversal with Mobility)を実現するシステムに適用される。NTMobileは、実ネットワーク上に仮想のIPネットワークを構築し、相互の通信接続性(NAT越え)および移動透過性(移動しながらの通信の開始・継続)を実現する技術である。
【0014】
第1端末10および第2端末20は、トンネルスイッチ40を経由して通信する場合と、トンネルスイッチ40を経由せず直接通信を行う場合がある。各端末10,20は、ネットワーク接続時に経路指示装置30に対して位置情報の登録を行う。このとき、各端末10,20には経路指示装置30から仮想IPアドレスが割り当てられ、各端末10,20のアプリケーションは仮想IPアドレスで通信を識別する。各端末10,20は、通信開始時に経路指示装置30の指示にしたがって相手端末との間にトンネル経路を構築する。
【0015】
第1端末10は、例えばMN(Mobile Node)、NTM Nodeとも称される。第1端末10は、スマートフォン等の情報処理装置であり、OS(オペレーティングシステム)上でアプリケーションを起動して情報処理を行う。第1端末10は、NTMobileを実現するネットワークアプリケーションソフトウェアをダウンロード可能に構成されている。第1端末10は、後述する第1NAT11の配下にあり、IPv4プライベートアドレスを保持している。
【0016】
第1NAT11は、例えばNATmnとも称される。第1NAT11は、第1端末10と経路指示装置30との間の通信経路上に設けられるアドレス変換装置として構成されている。第1NAT11は、第1端末10を含む複数の端末を配下に備え、これらの端末で構成されるローカルネットワークと広域通信ネットワークとの間でデータを中継し、両ネットワーク間でアドレスおよびポート番号を変換するように機能する。第1NAT11は、適当に割り振られた各ローカルネットワークでのみ適用するローカルなアドレスおよびポート番号と、広域通信ネットワーク上のグローバルなアドレスおよびポート番号とを自動的に相互変換する。
【0017】
第2端末20は、例えばCN(Correspondent Node)とも称される。第2端末20は、スマートフォン等の情報処理装置であり、OS(オペレーティングシステム)上でアプリケーションを起動して情報処理を行う。第2端末20は、NTMobileを実現するネットワークアプリケーションソフトウェアをダウンロード可能に構成されている。第2端末20は、後述する第2NAT21の配下にあり、IPv4プライベートアドレスを保持している。
【0018】
第2NAT21は、例えばNATcnとも称される。第2NAT21は、第2端末20と経路指示装置30との間の通信経路上に設けられるアドレス変換装置として構成されている。第2NAT21は、第2端末20を含む複数の端末を配下に備え、これらの端末で構成されるローカルネットワークと広域通信ネットワークとの間でデータを中継し、両ネットワーク間でアドレスおよびポート番号を変換するように機能する。第2NAT21は、適当に割り振られた各ローカルネットワークでのみ適用するローカルなアドレスおよびポート番号と、広域通信ネットワーク上のグローバルなアドレスおよびポート番号とを自動的に相互変換する。
【0019】
経路指示装置30は、DC(Direction Coordinator)とも称される。経路指示装置30は、各端末10,20からのアクセスが可能なネットワーク上に接続されるコンピュータである。経路指示装置30は、端末10,20を含む各端末の位置情報などを管理し、各端末にトンネル構築に関わる各種処理の指示を出す装置である。経路指示装置30は、通信を行う2台の端末(端末10,20)の関係から、どの経路を取れば直接通信の経路となるのか、またどの経路を取ればトンネルスイッチ40経由の経路となるのか把握している。経路指示装置30は、自身に割り当てられた仮想IPアドレス空間を管理し、各端末に対して仮想IPアドレスを割り当てる。経路指示装置30は、自身のデータベースに各端末のFQDN(Fully Qualified Domain Name)、実IPアドレス、仮想IPアドレス、NATの外側の実IPアドレスおよびポート番号を記録している。
【0020】
トンネルスイッチ(TS)40は、各端末10,20からのアクセスが可能なネットワーク上に接続されるコンピュータである。トンネルスイッチ40は、各端末10,20がNAT越え問題やIPv4/IPv6ネットワークの混在により、直接通信を行うことができない場合に、通信の中継を行う。
【0021】
(仮想ネットワーク通信制御)
次に、通信システム1において、仮想ネットワーク通信を行う際の制御について説明する。なお、以下の説明では、第1端末10から第2端末20に向けて通信要求を行う例を示すが、第2端末20から第1端末10に向けて通信要求を行う場合も同様である。
【0022】
各端末10,20は、端末起動時及びネットワーク切り替え時に、登録要求パケット(Registration Request)を経路指示装置30に送信する。経路指示装置30は、登録要求パケットによって各端末10,20の実IPアドレス、NATの外側IPアドレス/ポート番号を取得し、仮想IPアドレスを割り当てる。割り当てた仮想IPアドレスは、登録応答パケット(Registration Response)によって各端末10,20に通知される。各端末10,20は、登録応答パケットを受信した後、経路指示装置30との通信経路を確保するために、経路指示装置30に対して定期的にキープアライブパケットを送信する。
【0023】
各端末10,20は、通信中に実IPアドレスが変化した場合に、経路指示装置30へ新しい実IPアドレス、NATの外側IPアドレス/ポート番号を登録するとともに、シグナリング処理によりトンネル経路を再構築する。通信パケットは全てカプセル化されているため、各端末10,20のアプリケーションは、通信経路が切り替わったことに気付くことなく通信を継続することができる。
【0024】
各端末10,20がともにIPv4プライベートアドレスを保持している場合には、経路最適化処理が行われる。各端末10,20がパケット(後述する直接トンネル要求パケット、第2ホールパンチパケット)を送り合った結果、どちらかが相手側に到達すると、経路最適化(各端末10,20の直接通信)が成功する。経路最適化ができない場合は、トンネルスイッチ40経由の経路が生成される。
【0025】
以下では、経路最適化処理を行う3つのケースについて説明する。ケース1は、後述する第2ホールパンチパケット(第2NAT21の外側のアドレス/ポート番号を伝達する情報を含むパケット)が端末10に到達したケースである。ケース2は、後述する直接トンネル要求パケット(第2NAT21の外側のアドレス/ポート番号を伝達する情報を含む)が端末20に到達したケースである。ケース3は、第2ホールパンチパケットが端末10に到達せず、かつ直接トンネル要求パケットが端末20に到達しないケースである。
【0026】
(ケース1の経路最適化処理)
ケース1について、図2を参照して説明する。第1端末10は、第2端末20と通信するために、第2端末20のFQDNを用いて経路指示装置30にトンネル通信開始要求(Direction Request)を送信する。経路指示装置30は、FQDNから第2端末20の端末情報を取得する。
【0027】
経路指示装置30は、トンネル通信開始要求を受信すると、第2端末20およびトンネルスイッチ40に指示パケットを送信する。経路指示装置30は、第2端末20に対して、第2端末20から第1端末10にトンネル構築を行うように第1経路指示パケット(Route Direction cn)で指示を出す。第1経路指示パケットによって、第2端末20に第1NAT11のアドレス/ポート番号が伝達される。経路指示装置30は、トンネルスイッチ40に対して、トンネルスイッチ40を介して第2端末20と第1端末10との間にトンネル構築を行うように中継指示パケット(Relay Direction cn)で指示を出す。第1経路指示パケットは、トンネルスイッチ40に対して第1ホールパンチパケットを送信させる指示と、第1NAT11のアドレス/ポート番号に対して第2ホールパンチパケットを送信させる指示と、を含んでいる。
【0028】
第2端末20は、第1経路指示パケットを受信すると、第1ホールパンチパケットと第2ホールパンチパケットを送信する。また、第2端末20は、第1経路指示パケットを受信すると、経路指示装置30に対して確認パケット(Route Direction Confirmation)を送信する。経路指示装置30は、確認パケットを受信すると、第1端末10に対して第2経路指示パケット(RDmn(Route Direction mn))を送信する。第2経路指示パケットによって、第1端末10に第2NAT21のアドレス/ポート番号が伝達される。
【0029】
第2端末20は、第1ホールパンチパケットをトンネルスイッチ40に対して送信する。これにより、トンネルスイッチ40は、第2NAT21の外側のアドレス/ポート番号を取得することができるため、第1端末10から受信する後述する間接トンネル要求パケット(Tunnel Request)を中継して第2端末20に届けることができる。
【0030】
第2端末20は、第2ホールパンチパケットを第1NAT11のアドレス/ポート番号に対して送信する。ケース1では、第1NAT11が例えばcone型であり、第2ホールパンチパケットが第1NAT11を通過して第1端末10に届く。第2ホールパンチパケットが第1端末10に届くと、第1端末10は第2NAT21の外側のアドレス/ポート番号を取得するため、第1端末10から第2NAT21に向けて、後述する直接トンネル要求パケット(Tunnel Request Optimization)を送信することができる。なお、第2ホールパンチパケットは、第1NAT11を構成するNATの種類によって第1端末10に届かない場合がある。
【0031】
第1端末10は、第2ホールパンチパケットに含まれる第2NAT21のIPアドレスおよびポート番号をトンネルテーブル(TT)に登録する。第1端末10は、経路指示装置30から第2経路指示パケットを受信することに基づいて、第2端末20に対して、トンネル経路の生成を指示する直接トンネル要求パケット(Tunnel Request Optimization)を送信する。このとき、直接トンネル要求パケットの宛先は、トンネルテーブルに登録された第2NAT21のIPアドレスおよびポート番号である。第2ホールパンチパケットが第1端末10に到達しているため、直接トンネル要求パケットが必ず第2端末20に届くことになる。第2端末20は、直接トンネル要求パケットを受信することに応じて、直接トンネル応答パケット(ACKtro)を第1NAT11のIPアドレス/ポートに送信する。第1端末10は、直接トンネル応答パケットを受信し、トンネル生成処理を終了する。これにより、第1端末10と第2端末20は、実IPアドレスでデータをカプセル化し、仮想IPアドレスを用いたトンネル通信を行う。
【0032】
(ケース2の経路最適化処理)
ケース2について、図3を参照して説明する。ケース2でも、ケース1と同様に、第1端末10は、経路指示装置30にトンネル通信開始要求(Direction Request)を送信する。第2端末20は、経路指示装置30から第1経路指示パケット(Route Direction cn)を受信すると、第1ホールパンチパケットおよび第2ホールパンチパケットを送信する。また、第2端末20は、経路指示装置30に対して確認パケット(Route Direction Confirmation)を送信する。経路指示装置30は、確認パケットを受信すると、第2経路指示パケット(RDmn(Route Direction mn))を第1端末10に向けて送信する。指示パケットによって、第1端末10に第2NAT21のアドレス/ポート番号が伝達される。
【0033】
ケース2では、第1NAT11が例えばSymmetric型であり、第2ホールパンチパケットが第1NAT11を通過せず、第1端末10に届かない。第1端末10は、第2経路指示パケットを受信した後、経路指示装置30から第2経路指示パケットによって指示された第2NAT21のアドレスとポートに対して、直接トンネル要求パケット(Tunnel Request Optimization)を送信する。同時に、第1端末10は、間接トンネル要求パケット(Tunnel Request)をトンネルスイッチ40宛に送信する。
【0034】
ケース2では、第2NAT21が例えばcone型であり、直接トンネル要求パケットが第2NAT21を通過して第2端末20に到達する。第2端末20は、直接トンネル要求パケットを受信することに応じて、直接トンネル応答パケット(ACKtro)を第1NAT11のIPアドレス/ポートに向けて送信する。その後、間接トンネル要求パケットがトンネルスイッチ40を経由して第2端末20に到達しても応答しない。第1端末10は、直接トンネル応答パケットを受信し、トンネル生成処理を終了する。これにより、第1端末10と第2端末20は、実IPアドレスでデータをカプセル化し、仮想IPアドレスを用いたトンネル通信を行う。
【0035】
(ケース3の経路最適化処理)
ケース3について、図4を参照して説明する。ケース3でも、ケース1と同様に、第1端末10は、経路指示装置30にトンネル通信開始要求(Direction Request)を送信する。第2端末20は、経路指示装置30から第1経路指示パケット(Route Direction cn)を受信すると、第1ホールパンチパケットおよび第2ホールパンチパケットを送信する。また、第2端末20は、経路指示装置30に対して確認パケット(Route Direction(RD) Confirmation)を送信する。経路指示装置30は、確認パケットを受信すると、第2経路指示パケット(RDmn(Route Direction mn))を第1端末10に向けて送信する。指示パケットによって、第1端末10に第2NAT21のIPアドレス/ポート番号が伝達される。
【0036】
ケース3では、第1NAT11が例えばSymmetric型であり、第2ホールパンチパケットが第1NAT11を通過せず、第1端末10に届かない。第1端末10は、第2経路指示パケットを受信した後、経路指示装置30から第2経路指示パケットによって指示された第2NAT21のアドレスとポートに対して、直接トンネル要求パケット(Tunnel Request Optimization)を送信する。同時に、第1端末10は、間接トンネル要求パケット(Tunnel Request)をトンネルスイッチ40宛に送信する。
【0037】
ケース3では、第2NAT21が例えばSymmetric型であり、直接トンネル要求パケットが第2NAT21を通過せず、第2端末20に届かない。第2端末20には、トンネルスイッチ40経由の間接トンネル要求パケットのみが到達するため、間接トンネル応答パケット(ACKtr)をトンネルスイッチ40経由で第1端末10に送信する。第1端末10は、間接トンネル応答パケットを受信し、トンネル生成処理を終了する。これにより、第1端末10と第2端末20は、実IPアドレスでデータをカプセル化し、仮想IPアドレスを用いたトンネル通信を行う。
【0038】
以上のように、実施例1の通信方法は、第1端末10によるトンネル通信開始要求(Direction Request)に基づいて、経路指示装置30から第2端末20に第1経路指示パケット(Route Direction cn)を送信する。この第1経路指示パケット内には、トンネルスイッチ40に対して第1ホールパンチパケットを送信させる指示と、第1NAT11のアドレス/ポート番号に対して第2ホールパンチパケットを送信させる指示と、が含まれている。そのため、トンネルスイッチ40を介してトンネル通信を行う通信経路の確立と、トンネルスイッチ40を介さず直接的に第1端末10と第2端末20との間でトンネル通信を行う通信経路の確立と、をともに試行することができる。そして、実施例1の通信方法は、第1端末10が第2ホールパンチパケットを受信した場合、または第2端末20が直接トンネル要求パケット(経路指示装置30から受信する第2経路指示パケットに基づいて第2端末20に対して送信されるパケット)を受信した場合において、第1端末10と第2端末20との間で直接トンネル通信が行われる。そのため、トンネルスイッチ40を介した通信経路の確立の試行によって通信経路の確保を担保しつつ、直接通信の確立を試行することができる。したがって、通信経路の最適化を効率良く行い得る通信方法を実現することができる。
実施例1の通信方法は、どのような経路が確立される場合でも、即座に経路が決まるため、通信開始にかかる時間を短縮することができる。そのため、ウェブアクセスにおいて通信開始にかかる時間を短縮して、利便性を向上させることができる。
【0039】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1では、通信システム1を構成する端末として、第1端末10および第2端末20を例示した。しかしながら、通信システム1を構成する端末は、3つ以上の端末であってもよい。例えば、通信システム1において、第1端末10は、異なる仮想IPアドレスが割り当てられた複数の第2端末と仮想ネットワーク通信を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…通信システム
10…第1端末(Mobile Node、MN)
11…第1NAT
20…第2端末(Correspondent Node、CN)
21…第2NAT
30…経路指示装置(Direction Coordinator、DC)
40…トンネルスイッチ(TS)
図1
図2
図3
図4