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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】ヘアスタイリング器具
(51)【国際特許分類】
   A45D 1/00 20060101AFI20231020BHJP
   A45D 1/02 20060101ALI20231020BHJP
   A45D 1/04 20060101ALI20231020BHJP
   A45D 1/28 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A45D1/00 C
A45D1/00 501D
A45D1/00 502B
A45D1/00 503A
A45D1/00 505G
A45D1/00 507
A45D1/02 A
A45D1/04 C
A45D1/28 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021572383
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2019065773
(87)【国際公開番号】W WO2019238961
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521531159
【氏名又は名称】ジャファム グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JAPHAM GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】First Floor Woburn Court 2 Railton Road Woburn Road Industrial Estate Kempston Bedfordshire MK42 7PN (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】デベネディクティス,アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】ホランド,ヤヌス,ルシエン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ,マーク,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,マーティン,マルコム
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ジェームズ,ロバート
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-216012(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062293(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0220768(US,A1)
【文献】特開2003-310339(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0019939(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 1/00
A45D 1/02
A45D 1/04
A45D 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材(12;212)及び第2部材(14;214)を備えるヘアスタイリング器具(10;210)であって、前記第1部材及び前記第2部材は、作動状態と非作動状態の間を相対的に移動可能であり、前記第1部材(12;212)は第1加熱パネル(16;116;216)を有し、前記第2部材(14;214)は第2加熱パネル(18;118;218)を有し、前記第1加熱パネル及び前記第2加熱パネル(16,18;116,118;216,218)は波形をなして、前記第2加熱パネル(18;118;218)の谷部(24b)と山部(22b)にそれぞれ向き合う前記第1加熱パネル(16;116;216)の山部(22a)と谷部(24a)を有し、前記第1加熱パネル及び前記第2加熱パネルは、使用時にこれらの間を一定長の毛髪が移動するのに伴って、前記一定長の毛髪(40)を加熱するのに適するものとされ、前記第1加熱パネル及び前記第2加熱パネル(16,18;116,118;216,218)は、前記作動状態では前記非作動状態に比べて近接し、前記作動状態において離隔しており、前記第1部材(12;212)はまた、第1押圧パネル(26;126;226)を有し、前記第2部材(14;214)はまた、第2押圧パネル(28;128;228)を有し、前記第1押圧パネル及び前記第2押圧パネルは、作動状態において前記加熱パネルよりも近接している、ヘアスタイリング器具。
【請求項2】
使用時に、前記押圧パネル(26,28;126,128;226,228)が加熱される、請求項1に記載のヘアスタイリング器具(10;210)。
【請求項3】
前記押圧パネル(26,28;126,128;226,228)は、使用時には前記加熱パネル(16,18;116,118;216,218)よりも低い温度に加熱される、請求項2に記載のヘアスタイリング器具(10;210)。
【請求項4】
各押圧パネル(26,28;126,128;226,228)は、加熱体(220)を有する、請求項2又は請求項3に記載のヘアスタイリング器具(10;210)。
【請求項5】
前記押圧パネル(26,28;126,128)が、前記加熱パネル(16,18;116,118)からの伝導によって加熱される、請求項2又は請求項3に記載のヘアスタイリング器具(10;210)。
【請求項6】
前記第1部材(212)及び前記第2部材(214)は、前記作動状態において前記加熱パネル(216,218)の間に予め定められたギャップを維持するための離隔協働構造(52,54,56;60,62;64,66)を少なくとも1セット有する、請求項1~5の何れか一項に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項7】
前記第1部材(212)及び前記第2部材(214)は、第1端部及び第2端部を有する長手状をなし、前記第1部材及び前記第2部材は、前記部材の前記第1端部に隣接するピボットジョイント(50)において連結され、少なくとも1セット前記離隔協働構造(60,62;64,66)が前記部材の前記ピボットジョイントの反対側の前記第2端部に隣接して配されている、請求項6に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項8】
前記部材の前記ピボットジョイントの反対側の前記第2端部に隣接して、2セット前記離隔協働構造(60,62;64,66)が配されている、請求項7に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項9】
波形の前記第1加熱パネルは端部を有し、波形の前記第2加熱パネルは端部を有し、少なくとも1セットの前記離隔協働構造(60,62;64,66)は、波形の前記第1加熱パネルの前記端部及び波形の前記第2加熱パネルの前記端部に配されている、請求項7又は請求項8に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項10】
少なくとも1セットの前記離隔協働構造(60,62;64,66)は、それぞれ、波形の前記第1加熱パネルの波の前記山部または波形の前記第2加熱パネルの波の前記山部に連なる凸部(60;64)と、波形の前記第1加熱パネルの波の前記谷部または波形の前記第2加熱パネルの波の前記谷部に連なる凹部(62;66)と、を備える、請求項9に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項11】
前記第1部材(212)及び前記第2部材(214)は、前記作動状態において前記部材(212,214)の整列を維持するための整列協働構造(52,54,56;60,62;64,66)を少なくとも1セット有する、請求項1~10の何れか一項に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項12】
前記第1部材(212)及び前記第2部材(214)のうち少なくとも1つは、平面視で非対称である、請求項1~11の何れか一項に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項13】
前記第1部材(212)及び前記第2部材(214)はどちらも、平面視で同様に非対称である、請求項12に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項14】
非対称な前記部材(212,214)は、不連続部(80)を備える第1側縁を有する、請求項12又は請求項13に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項15】
非対称な前記部材(212,214)は、実質的に直線状の第2側縁(212,214)を有する、請求項14に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項16】
非対称な前記部材(212,214)は、前記加熱パネル及び前記押圧パネルから離れたハンドル部を有し、前記段部(80)は、前記ハンドル部と前記パネルとの間に位置している、請求項14又は請求項15に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項17】
前記加熱パネル(216,218)は前記第1側縁に隣接し、前記押圧パネル(226,228)は前記第2側縁に隣接している、請求項14~16の何れか一項に記載のヘアスタイリング器具(210)。
【請求項18】
前記第1押圧パネル(126)は、前記第1加熱パネル(116)に近付くように又は遠ざかるように移動可能であり、前記第2押圧パネル(128)は、前記第2加熱パネル(118)に近付くように又は遠ざかるように移動可能であって、これによって前記押圧パネルと前記加熱パネルの間の温度差が調整される、請求項5に記載のヘアスタイリング器具(10)。
【請求項19】
波形の山部にローラーを有する、請求項1~18の何れか一項に記載のヘアスタイリング器具。
【請求項20】
前記第1押圧パネル(26,126)は、作動位置と非作動位置との間で前記第1加熱パネル(16,116)に対して移動可能であり、前記第2押圧パネル(28,128)は、作動位置と非作動位置との間で前記第2加熱パネル(18,118)に対して移動可能である、請求項1~19の何れか一項に記載のヘアスタイリング器具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアスタイリング器具、特にヘアストレートナー(hair straightener)に関する。
【0002】
従来の多くのヘアストレートナーと同じく、本発明は、毛髪をストレートにしたり、毛髪にウェーブを付与したりするために用いることができる。
【0003】
便宜上、以下の明細書では、女性の毛髪へのヘアストレートナーの使用について記載するが、本発明は男性も使用できる。
【背景技術】
【0004】
長年に亘り、女性の毛髪をスタイリングすること、すなわち生来ストレートな毛髪にウェーブやカールを付与したり、生来ウェーブやカールがかかった毛髪をストレートにしたりすることが希求されてきた。毛髪をスタイリングするには、毛髪に生来の形状を与えている幾つかの化学結合を修飾(modify)する必要がある。化学結合は、パーマ液によって化学的に、或いは、熱及び/又は圧力をかけることによって、修飾できる。
【0005】
ヘアストレートナーは、ヘアスタイリング器具(hair styling device)の特定の一形態であって、毛髪をスタイリングするために熱及び圧力を用いるものである。もともとヘアストレートナーは、毛髪にアイロンをかける、すなわち加熱された「アイロン」の間に毛髪を挟んで押圧して表面を平坦にする動作を繰り返すという事実を反映して、「ストレートアイロン(straightening iron)」と呼ばれていた。
【0006】
殆どのヘアストレートナーは、互いにヒンジ止めされた一対のアームを備えており、各アームは電気的加熱パネルを保持している。アームが開いた状態で、ユーザーが身体側又は頭皮端の選択された一定長の毛髪をアームの間に挟み込んでアームを押し合わせることで、一定長の毛髪が加熱パネルの間で押圧される。その後、ヘアストレートナーは頭皮から遠ざかるように移動され、一定長の毛髪は、パネルの間で引っ張られる際に加熱及び押圧される。毛髪は、パネル間を通過する際に毛髪にかかる熱と圧力によって、スタイリングされる。
【0007】
毛髪をストレートにするには、加熱パネルが頭皮に対してほぼ垂直になるような方向にアームを向けて、一定長の毛髪をパネルの間で実質的に直線方向に引っ張る。しかしながら、頭皮に対して毛髪が加熱パネルを通過するにつれて比較的鋭角に傾かざるを得ない方向にアームを向けることにより、毛髪にウェーブ又はカールを付与するためにヘアストレートナーを用いることも可能である。
【0008】
ヘアストレートナーにセラミックヒータを組み込むことで、これらの有用性は格段に増加する。セラミックヒータは、比較的迅速に加熱パネルの温度を上昇させることができるという利点を有する。また、セラミックヒータによれば、加熱パネルの温度を、迅速で長持ちするスタイリングが可能になると認識されている200℃以上まで、簡単に上昇させることができる。
【0009】
セラミックヒータの使用は、製造業者に、加熱パネルの幅を小さくして一層美観に優れた製品を提供することを可能にする。特に、加熱パネルの温度が高ければ、より迅速に毛髪をスタイリングに必要な温度に到達させることが可能になる;要求されるスタイリング温度に毛髪を到達させるために、かつて必要とされていたほどパネルが幅広である必要はない。
【0010】
毛髪タイプの相違のため、全ての女性について長持ちするスタイルを作り出すのに効果的な、熱と圧力の単一の組み合わせはない。むしろ、特に自身の毛髪を望みのスタイリングに仕上げるために、どの程度の圧力を加熱パネルの間の毛髪にかければよいのか、どの程度の速さで加熱パネルを自身の頭皮から遠ざかるように移動させればよいのか、個々人が実践を通して身につけることが必要である。多くの場合、ユーザーは、望みのスタイルを実現するまでに、一度以上、同じ一定長の毛髪を加熱パネルの間を通過させることになる。
【0011】
加熱パネルによってかけられる熱及び圧力はまた、毛髪のキューティクルを平坦化させるように働く。生来、毛髪は断面がほぼ円形であるが、キューティクルの平坦化(及びこれに伴う断面の平坦化)によって、毛髪からの反射を増加させ毛髪の艶を増すことができる。キューティクルの平坦化によって艶が増加するため、多くのユーザーが、ヘアストレートナーによって毛髪をより健康的に見せることができると信じている。
【0012】
加熱パネルから離れた毛髪を能動的に冷やすことにより、特にスタイリングをより長持ちさせる上で、ヘアストレートナーをより効果的なものにしようとしてきたヘアストレートナー製造者もいる。例えば、米国特許第6354305号には、毛髪が押圧されながらこれらの間を通過する対向した加熱パネルによって規定されるカーブした加熱ゾーンを有するヘアストレートナーが記載されている。対向する冷却面によって規定されるカーブした冷却ゾーンも、別に設けられる。ユーザーは、加熱ゾーンを通過させることで一定長の毛髪を軟化させてスタイリングし、その後、冷却ゾーンを通過させることで毛髪のスタイリングをいわば「凍結(frozen)」させることができる。米国特許第6354305号には、加熱及び冷却ゾーンが平面状であって互いに隣り合うようにアレンジされた別のアレンジ例が開示されている。
【0013】
欧州特許第1909609号には、ユーザーの毛髪がこれらの間を通過する対向した加熱パネルを保持する一対のアームを備えた、従来型のヘアストレートナーのような形状のヘアスタイリング器具が開示されている。アームは対向する冷却パネルも保持しており、ユーザーは対向する各一対のパネルの間で毛髪を押圧し、毛髪を加熱パネルの間を通過させた後に冷却パネルを通過させることができる。
【0014】
独国特許第2498417号のヘアスタイリング器具には、若干似ているが、加熱パネルの両側に冷却パネルを備えたアレンジ例が開示されている。
【0015】
韓国特許出願第101424122号、第20100010088号及び第20130116097号にもまた、毛髪が押圧されながらこれらの間を通過する加熱パネル及び冷却パネルを有するヘアストレートナーが開示されている。
【0016】
国際特許出願第2008/062293号には、対向する加熱パネル及び冷却パネルを有する一対のアームを備えたヘアストレートナーが開示されている。各アームの冷却パネルがアームの加熱パネルに対して回動可能とされていることで、ユーザーは加熱パネルを単独で利用することも、また加熱パネル後に冷却パネルを利用することもできる実施形態が開示されている。
【0017】
ヘアクリンパーは、異なるタイプのヘアスタイリング器具である。ヘアクリンパーは、波型の加熱パネルを利用する点においてヘアストレートナーとは異なる。また、パネルが押し合わせられているときに毛髪が加熱パネルの間を移動するヘアストレートナーとは異なり、ヘアクリンパーでは、毛髪はスタイリングが固定されるまでクリンピングパネルの間に静的にクランプされる。従って、ユーザーは、一定長の毛髪の一部分をクランプし、次いで加熱パネルを離して一定長の毛髪に沿って配置し直した後に別の部分の一定の毛髪をクランプすることによって一定長の毛髪を順次スタイリングし、毛髪が全長に亘ってスタイリングされるまで繰り返す。
【0018】
ジャンボウェーバー(jumbo waver)を含むヘアウェーバー(hair waver)は、ヘアクリンパーと同じ作動原理によるものであるが、より大きな幅のウェーブをユーザーの毛髪に形成するため、より大きな幅の波形を有している。
【0019】
従って、ヘアストレートナー及びヘアクリンパー/ヘアウェーバーは、対向する加熱パネルという特徴を共有し、スタイリングを行うためにユーザーは加熱パネル間の毛髪に圧力をかけるという作動の原理を共有する一方、(通常)ヘアストレートナーでは毛髪が加熱パネルの間を移動するが、(通常)ヘアクリンパー/ヘアウェーバーでは加熱パネルの間では移動しない、という点において相違している。
【0020】
「押圧(press)」と「クランプ(clamp)」の語(及びこれらの派生語)は、しばしば互換性があるものとして用いられるが、本明細書では、「押圧」の語は、ヘアストレートナー及びこれと同種のものであって、パネルに対して移動する毛髪に圧力をかけることによってヘアスタイリングを行うように設計されたものについて使用し、「クランプ」の語は、ヘアクリンパー及びこれと同種のものであって、パネルに対して静止した毛髪に圧力をかけてヘアスタイリングを行うように設計されたものについて使用する。
【0021】
欧州特許第1909609号はまた、(脱着可能な)クリンピングパネルを備えた加熱ゾーン及び冷却ゾーンの使用を開示しており、例えば、同じ加熱及び冷却パネルを備えた同じアームを、平坦なパネルと共にヘアストレートナーとして使用したり、波形パネルと共にヘアクリンパーとして使用したりできる。
【0022】
欧州特許第0606691号には、(沢山の小さなカールを有する)癖毛に適したヘアストレートナーが開示されている。従来のヘアストレートナーとは異なり、この器具は、加熱パネル間で毛髪を繰り返しクランプするように使用される。また、従来のヘアストレートナーとは異なり、加熱パネルは波形をなしている。しかしながら、波形は比較的浅く、波長の1/5から1/30の間の振幅を有している―これは、従来のヘアクリンパー/ヘアウェーバーの波形よりも著しく浅い。上記したように、ヘアストレートナーは、従来のヘアクリンパーのように使用される、すなわちユーザーは、一定長の毛髪の一部分をクランプし、次いで加熱パネルを離して一定長の毛髪に沿って配置し直した後に別の部分の一定長の毛髪をクランプすることにより、一定長の毛髪の分離した部分を順次スタイリングする。波形の形状により、これらの間に繰り返しクランプされるにつれて毛髪がストレートにされることは明らかである。
【0023】
欧州特許第0606691号の一実施形態では、波形の加熱パネルは、平坦な(第1)加熱パネルにそれぞれ連結された複数の第2加熱パネルを備える。波形の加熱パネルをくっつけてクランプできる一方、平坦な加熱パネルの間は約0.4mmだけ離隔(spaced apart)している。加熱パネル全体の幅のうち、平坦な加熱パネルが約1/3、波形の加熱パネルが約2/3を構成する。「第1の」及び「第2の」の用語は、使用時に、毛髪が平坦なパネルの間で加熱された後に波形のパネルの間にクランプされる、という事実を反映して用いられる。
【0024】
欧州特許第0606691号は波形パネルの間に毛髪をクランプするのに主に用いられるにも関わらず、従来のヘアストレートナーのように毛髪が波形パネルの間で押圧される、すなわち平坦なパネルと波形のパネルは共に毛髪の根元から毛先まで長さ方向に沿ってスライドされる仕上げ段階が開示されている。
【0025】
定期的に繰り返しヘアスタイリング器具を用いると、特にヘアスタイリングをし過ぎると、毛髪にダメージを与え得ることが知られている。定期的に繰り返しヘアストレートナー及び/又はヘアクリンパーを用いることは、例えば毛髪への長期的なダメージの原因となり得る。毛髪を高温に加熱すること、毛髪に大きな圧力をかけること、そして加熱パネルを頭皮から遠ざかるように引っ張って毛髪を引き伸ばすことは全て、特にこれらの影響が組み合わさった時には、長期間継続するダメージを引き起こす可能性があることが認識されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、ユーザーの毛髪に与える(又は与え得る)ダメージを低減しながら、既知の器具と同じくらい効果的に長持ちするヘアスタイルを作り出せるヘアスタイリング器具、特にヘアストレートナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明第1の側面によれば、第1部材及び第2部材を備えるヘアスタイリング器具であって、前記第1及び第2部材は、閉止もしくは作動状態と開放もしくは非作動状態の間を相対的に移動可能であり、前記第1部材は第1加熱パネルを有し、前記第2部材は第2加熱パネルを有し、前記第1及び第2加熱パネルは波形をなして、一定長の毛髪を、これらの間を前記一定長の毛髪が通過する際に加熱するのに適するものとされ、前記第1及び第2加熱パネルは、前記作動状態では前記非作動状態に比べて近接し、前記作動状態において離隔していることで、使用時に前記一定長の毛髪が前記加熱パネルの間で押圧されないものとされており、前記第1部材はまた、第1押圧パネルを有し、前記第2部材はまた、第2押圧パネルを有し、前記第1及び第2押圧パネルは、実質的に平坦で、前記作動状態において前記加熱パネルよりも互いに近接している、ヘアスタイリング器具が提供される。
【0028】
本発明者らは、一定長の毛髪に熱と圧力を同時にかける必要はなく、むしろこれらの操作をいわば別々に行えると考えてきた。一定長の毛髪は、部材間を通過する際に連続的に加熱できるが、このような過程の一部でしか押圧することはできない。よって、既知のヘアストレートナーを用いた場合に比べ、一定長の毛髪が熱と押圧と引っ張りの複合作用を受ける経路(path)は短くなり、理想的には時間も短くなって、毛髪がダメージを受ける可能性は低減される。
【0029】
波形の加熱パネルを設けることで、パネルの全体幅を増加させなくとも、一定長の毛髪が加熱パネル間を通過する際に、これに沿って移動しなければならない経路は長くなる。従って、欧州特許第P0606691号とは対照的に、所定の移動の速度では、一定長の毛髪が波形のパネルの間を通過するのに要する時間は、同じ全体幅の平坦なパネルと比較して長くなる。移動時間が長くなると、加熱パネル間の加熱ゾーンを離れる前に一定長の毛髪が到達する温度は高くなる。美観を向上させるためには、ヘアスタイリング器具の全体幅は、できるだけ短くすることが望ましい。また、欧州特許第0606691号とは対照的に、一定長の毛髪が押圧パネルの間を通過する際に、これに沿って移動しなければならない経路を最短化するため、押圧パネルは実質的に平坦である。毛髪が押圧パネル間を通過する際には、加熱、押圧、引っ張りの複合的な影響を受けることになるため、この間に複合的な影響が与えられる経路が(従って時間も)短くなると毛髪がダメージを受ける可能性が最小化されることが期待できる。また、毛髪をストレートにするには実質的に平坦な押圧パネルが最も効果的であることも、理解される。
【0030】
従来のヘアストレートナーとは異なり、望みのスタイルを形成するために、必要な熱の全てを毛髪に与えて毛髪を押圧することは、平坦なパネルには必要とされない。毛髪は、波形の加熱パネルの間でスタイリング温度まで加熱された後に、平坦な押圧パネルの間に進入するのであり、これより前に押圧が行われることはない。加熱された一定長の毛髪は、平坦な押圧パネルの間で押圧される際に素早くスタイリングされることが期待できるため、従来のヘアストレートナーの加熱パネルと比較して、押圧パネルを幅狭に製造できる。従って、所定の移動速度では、一定長の毛髪は従来のヘアストレートナーと比べて短い時間だけ押圧されることとなり、例え毛髪が押圧パネルの間でスタイリング温度に維持されたとしても、毛髪がダメージを受ける可能性は低減されると期待される。例えば、従来のヘアストレートナーの多くが20mm幅以上の加熱パネルを有するのに対し、本発明の押圧パネルは、スタイリング性能を低下させることなく20mm幅よりも格段に小さくできる。
【0031】
また、押圧パネルは、専用の(セラミック)ヒータによって直接加熱してもよいし、加熱パネルからの伝導によって受動的に加熱してもよい。押圧パネルの温度は、必要に応じて、加熱パネルの温度と同じとしてもよく、ほぼ同じとしてもよい。押圧パネル間では、加熱と押圧とが組み合わせられるが、押圧パネルの幅が小さければ、毛髪がダメージを受ける可能性は低減されると期待される。
【0032】
毛髪は、スタイリング温度に加熱されたときに最もダメージを受け易いと理解されている。従来のヘアストレートナーでは、毛髪は、スタイリング(最高)温度に維持しながら押圧する際に、加熱パネルの間を移動する(さらに典型的には引っ張られ引き伸ばされる)必要がある。本発明によれば、押圧パネルの間の温度を低下させることが可能になるのに加え、最も脆弱な状態にある毛髪が、ユーザーによって引っ張られ押圧される経路(及び時間)が短くなるため、押圧パネルの幅を小さくすることが許容される。
【0033】
深い波形によって浅い波形と比較して移動経路が長くなることは、理解されるであろう。しかしながら、加熱パネル間で毛髪を移動させるための摩擦抵抗は深い波形によって増加する。よって、毛髪が加熱パネル間で押圧されないとしても、毛髪が波形に沿わねばならないという事実は、必然的にこれが山部に係わって(engage)一定長の毛髪にドラッグ(drag、引きずり)をもたらすことを意味する。従って、深い波形は毛髪の移動の経路を最大化させ、浅い波形はドラッグを最小化させることになる。
【0034】
加熱ゾーンにおける毛髪のドラッグは、必要に応じて、加熱パネルに低摩擦コーティングを用いたり、波形の山部にローラーを用いたり(毛髪のドラッグ全ての大半が波形の山部において生じることは、理解されるであろう)することによって低減できる。ローラーは必要に応じて加熱しないこともでき、これによりローラーが加熱パネルの残りの部分よりもやや低い温度に維持され、毛髪は加熱パネルの低温である箇所においてのみ直接係わることになる。或いは、波形の山部に断熱材を配置して、加熱パネルの毛髪に直接係わる箇所の温度を低下させることもできる。
【0035】
波形によって規定されるスタイルを得るために一定長の毛髪が波形の加熱パネル間にクランプされるヘアクリンパーとは異なり、本発明では、毛髪は山部と谷部を通過して移動するため、波形にスタイリングされることはない。本発明では、波形は、毛髪が加熱パネルの間の入り組んだ長い経路を移動するように設けられる。これにより第1に、毛髪は、どちらの加熱パネルの山部にもこれらの間を通過する際に係わり、加熱パネルに直接接触することによって素早く熱を受容することになる。これにより第2に、一定長の毛髪が加熱パネル間に(ヘアストレートナーの所定の移動速度において)より長時間とどまることになって、毛髪が熱を受容する期間は長くなる。
【0036】
望ましくは、押圧パネルは、使用時に第1及び第2加熱パネルよりも低い温度に維持される。波形のパネルが平坦なパネルと同じ温度に加熱される欧州特許第0606691号とは異なり、本発明の押圧パネルは、加熱され得るものの加熱パネルよりは著しく低い温度に加熱されることにより、一定長の毛髪の温度は加熱パネルから押圧パネルに移動する際に著しく低下する。押圧パネルが加熱される実施形態では、加熱パネルと押圧パネルの間の温度差は、約30~60℃に維持できるが、必要に応じて、より大きな又は小さな温度差とすることができる。毛髪(及び押圧パネル)は、押圧パネルの間を移動する際の周囲温度よりも格段に熱いかもしれないが、加熱ゾーンを離れるにつれて冷却される。押圧パネルによって毛髪にかけられる圧力は、従って加熱パネルの温度よりも低い温度(また従来のヘアストレートナーのパネルよりも低い温度)で付与されることとなり、毛髪に与えるダメージも格段に低減すると期待されることが、理解されるであろう。
【0037】
望ましくは、第1押圧パネルは、第1加熱パネルに対して作動位置と非作動位置との間を移動可能であり、第2押圧パネルは、第2加熱パネルに対して作動位置と非作動位置との間を移動可能である。押圧パネルは、それだけでは毛髪をスタイリングするには細すぎ(そして恐らく十分に熱くもない)、加熱パネルと連動してのみ機能することが意図される。頭皮のすぐ近くの毛髪をスタイリングするには、この部分の毛髪に加熱パネルを直接当てる必要がある。押圧パネルは、ヘアスタイリング器具が頭皮から遠ざかるように移動されるにつれて毛髪に沿って加熱パネルに「追随する(follow)」ため、望ましい本実施形態では、頭皮の近くの毛髪をスタイリングできるよう、押圧パネルはスタイリング作業の最初の部分の間は遠ざかるように移動される。ヘアスタイリング器具がユーザーの頭皮から十分に遠ざかると、押圧パネルを押圧位置へと移動させて、ユーザーの頭皮の近くの加熱された毛髪を押圧できる。
【0038】
好ましくは、作動状態において、加熱パネルは少なくとも0.5mm、理想的には1mm超、恐らくは3mm程度、離隔している。加熱パネル間のギャップは小さいが、それでも毛髪の「リボン」(すなわち浅いが広いセクション)が押圧されることなく加熱パネル間を通過することを許容するには十分である。
【0039】
波形の数は、本願に適するように選択できる。波形が、主に加熱パネル間の毛髪の経路長を増加させるために設けられるものであることは、理解されるであろう。1つの大きな波形又はいくつかのより小さな波形により、増加された同じ経路長が提供されるが、これらは何れも本発明の範囲に含まれる。好ましくは、各加熱パネルには少なくとも1つの波形が設けられており、望ましくは、各加熱パネルに少なくとも2つの波形が設けられている。
【0040】
加熱パネルは作動状態では離隔していると述べたが、毛髪がこれらの間を通過する部分であっても、加熱パネルの孤立部分(isolated parts)が接触していることを排除するものではない。例えば、毛髪のドラッグを低減するために波形の山部の幾つか又は全てにローラーが設けられている場合、この(これらの)ローラーが他方の加熱パネルの谷部に係わっていてもよい。ローラーを通過する際に一定長の毛髪が瞬間的に押圧されるかもしれないが、加熱された毛髪のこのような瞬間的な押圧により、毛髪がダメージを受ける可能性が著しく高くなるとは考えられない。
【0041】
しかしながら、加熱パネルは所望のように分離させておくことが望ましいため、第1部材もしくは第1アーム、及び第2部材もしくは第2アームは、作動状態において加熱パネル間に予め定められたギャップを維持するように働く、少なくとも1セットの離隔協働構造(cooperating spacing formation)を有していることが好ましい。
【0042】
望ましくは、第1部材及び第2部材は第1及び第2端部を伴って伸び、第1及び第2部材は、部材の第1端部に隣接して配置されたピボットジョイントにおいて連結されている。離隔協働構造は、好ましくは、部材の第2端部に隣接して、すなわちその離隔機能に特に効果的な場所であるピボットジョイントの反対側に、配置される。望ましくは、部材の第2端部に隣接して2つの離隔協働構造が配置されており、好ましくは、これら2つの協働構造は部材を挟んで離隔している。
【0043】
好ましくは、第1部材もしくは第1アーム、及び第2部材もしくは第2アームは、作動状態において、部材の整列を維持する(従ってまた、加熱パネル及び押圧パネルの整列を維持する)ように働く、少なくとも1セットの整列協働構造(cooperating aligning formation)を有する。整列部材は、理想的には、非作動状態から作動状態に移動する際に各パネルを適切に整列させるガイド機能も発揮する。
【0044】
望ましくは、第1部材もしくは第1アーム及び/又は第2部材もしくは第2アームは、平面視で非対称である。器具は、毛髪が加熱パネル間を通過した後に押圧パネルを通過するように使用されるべきであるため、頭皮に対する正しい器具の向きについて、ユーザーに注意を促すことが望ましい。非対称部材は、ユーザーに正しい方向についての注意を促すのに効果的な方法である。好ましくは、非対称は、部材の一方の側に沿った不連続性(例えば段部(step)のような)によって創られる。望ましくは、段部は部材のハンドル部分に隣接して、理想的にはハンドル部分と加熱パネル及び押圧パネルとの間に、配置される。
【0045】
また押圧パネルも、加熱パネルに対して近付いたり遠ざかったりするように、特に加熱パネルと係わったり離れたりするように、移動可能にアレンジできる。このようなアレンジ例では、各パネルが係わっているときに加熱パネルからの伝導によって押圧パネルを受動的に加熱できる。或いは、押圧パネルは、押圧パネルの温度が最低となる(そして加熱パネルと押圧パネルとの間の温度差が大きくなる)ように、間に空隙を空けて加熱パネルから分離できる。
【0046】
本発明の第2の側面によれば、第1部材及び第2部材を備えるヘアスタイリング器具であって、前記第1及び第2部材は、作動状態と非作動状態の間を相対的に移動可能であり、前記第1部材は第1加熱パネルを有し、前記第2パネルは第2加熱パネルを有し、前記第1及び第2加熱パネルは、作動状態では離隔して、一定長の毛髪を、前記一定長の毛髪がこれらの間を移動するにつれて加熱するのに適するものとされ、使用時に前記一定長の髪は、前記第1及び第2加熱パネルの間の加熱経路を移動し、前記第1部材は第1押圧パネルを有し、前記第2パネルは第2押圧パネルを有し、前記第1及び第2押圧パネルは実質的に平坦であって、使用時に前記一定長の髪は、前記第1及び第2押圧パネルの間の押圧経路を移動し、前記加熱経路の長さは、前記押圧経路の長さより大きい、ヘアスタイリング器具が提供される。
【0047】
本発明のこの側面によれば、所定の一定長の毛髪は、加熱パネルの間に押圧パネルの間より長い経路を有すること(従って長い時間が費やされること);加熱パネルの間で費やされる時間が長くなることで、一定長の毛髪が多くの熱を受容するのを許容して高い温度まで昇温させられること;押圧パネルの間で費やされる期間が短くなることで、毛髪が熱と圧力の相乗効果(そしてダメージを与えかねない)期間が低減されること、が明確となる。
【0048】
好ましくは、加熱経路の長さは押圧経路の長さの少なくとも2倍であり、理想的には少なくとも3倍である。
【0049】
本改良の第3の側面によれば、第1部材及び第2部材を有するヘアスタイリング器具であって、前記第1及び第2部材は作動状態と非作動状態の間を相対的に移動可能であり、前記第1部材は第1加熱パネルを有し、前記第2部材は第2加熱パネルを有し、前記第1及び第2加熱パネルは、一定長の毛髪を前記一定長の毛髪がこれらの間を移動するにつれて加熱するのに適するものとされ、前記第1及び第2加熱パネルは、作動状態において非作動状態よりも互いに近接しており、前記第1部材はまた第1押圧パネルを有し、前記第2部材はまた第2押圧パネルを有し、前記第1及び第2押圧パネルは、平坦で、少なくとも3mmの幅を有している、ヘアスタイリング器具が提供される。
【0050】
第3の側面によれば、加熱パネルは作動状態において離隔している必要はない。本発明のこの側面によれば、加熱パネルが全幅に亘って他に触っていたとしても、使用時に加熱パネルがパネル間に存在する毛髪分だけ離隔していれば、作動可能である。このようなアレンジ例では、一定長の毛髪が加熱パネルの間で押圧され得るため、あまり好ましいものではないが、何れにしても効果的に毛髪をスタイリングできる。
【0051】
最低幅の平坦なパネルにより、従来技術のジャンボウェーバーのように平坦な部分がない波形の加熱/押圧パネルを有するものとは区別される。
【0052】
好ましくは、第1及び第2部材は作動状態において係わる協働構造を有する。よって第1部材の構造は、第2部材の構造と協働して部材の相対的な閉止動作を制限し、これにより作動状態を規定する。作動状態において加熱パネルが離隔している好ましい実施形態では、押圧パネルが係わること及び/又は協働構造により、間隔が決定される。
【0053】
理想的には、協働構造はまた、使用時におけるヘアスタイリング器具の構造上の剛性を増加させ、第1及び第2部材の作動状態への移動をガイドするのを助ける。
【0054】
好ましくは、協働構造は、第1及び第2部材のうち一方の表面の凸部もしくは垂直部と、第1及び第2部材のうち他方の表面の対応する形状の凹部と、を備える。
【0055】
従来技術のヘアストレートナーと同じく、押圧パネルは、必要に応じて、例えば冷却流体(周囲空気のような)によって、冷媒によって、又はペルチェ効果によって、能動的に冷却されてもよい。冷却流体(等)は、押圧パネルに直接的に、又は押圧パネルに間接的に、働くことができる(例えば、押圧パネルを放熱フィンや類似のものと熱的に接続してもよい)。しかしながら、本発明によれば、押圧パネルを冷却しなくとも効果的なヘアスタイリング器具を提供できることが期待される。
【0056】
無用な重複を避けるため、本発明の各側面に関連して説明された1つもしくは複数の特徴は、両立可能な本発明の他の側面の何れのそして全て特徴と組み合わせてもよいことを確認する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
ここで、以下の模式図を参照しつつ、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0058】
図1図1は、本発明による第1実施形態のヘアスタイリング器具の関連部分の斜視図を示す。
図2図2は、第2実施形態の可能な一構成における加熱パネル及び押圧パネルの断面図を示す。
図3図3は、第2実施形態の可能な他の構成における加熱パネル及び押圧パネルの断面図を示す。
図4図4は、本発明の第3実施形態によるヘアスタリング器具の一実施形態を下方から視た斜視図を示す。
図5図5は、図4の器具を上方から視た斜視図を示す。
図6図6は、図4のヘアスタイリング器具の加熱パネルから押圧パネルにかけての横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
ヘアスタイリング器具10は、関連部分のみが図1に示されているが、第1部材もしくはアーム12と、第2部材もしくはアーム14と、を備える。従来のように、第1及び第2アームは、図1に示されている開放もしくは非作動状態と、閉止もしくは作動位置(不図示)との間を、互いに相対的に移動可能である。アーム12,14は、既知のように、ヒンジ又はピボットジョイントによって互いに移動可能とされていてもよい。
【0060】
第1アーム12は第1加熱パネル16を有し、第2アーム14は第2加熱パネル18を有する。第1及び第2加熱パネル16,18は、金属製であって、各々がセラミックヒータ20を有する。セラミックヒータ20は、ヘアスタイリング器具10のコントローラ(不図示)で制御される電流によって駆動される。好ましくは、ユーザーが自身の頭髪をセットするのに最も適した温度を実践によって決められるように、コントローラは加熱パネル16,18の温度を幾つかの異なった温度のうちの何れかの温度に制御できる。
【0061】
示されている非作動(開放)位置では、加熱パネル16及び18が、選択された一定長の毛髪を加熱パネル16,18の間に挿入できるのに十分な距離だけ分離していることが理解されるであろう。ヘアスタイリング器具10は、(例えば図4~6の第3実施形態のように)アームの一方においてピボットジョイントで連結されたアーム12,14を有し、アームの他方に開放型ギャップ(open gap)を有し、これによって加熱パネルが非作動状態にあるときにユーザーが容易に一定長の毛髪を開放型ギャップから加熱パネル16,18の間に挿入可能とされた、従来のヘアストレートナーのように構成してもよい。既知のように、一定長の毛髪が加熱パネル16,18の間に挿入されると、ヘアスタイリング器具は、ユーザーの頭皮の近くから、毛髪のスタイリングを始めたいと望まれる位置まで移動される。
【0062】
ユーザーの頭皮に対して適切に配置されたら、アーム12,14は、図1に示される位置から特に加熱パネル16,18が互いに近接する作動状態へと共に移動され、加熱パネル16,18の間に一定長の毛髪が通過できる小さなギャップが作り出される。
【0063】
第1及び第2加熱パネル16,18は波形をなし、第2加熱パネル18の谷部24bと山部22bにそれぞれ向き合う第1加熱パネル16の山部22aと谷部24aを有する(図2及び3の実施形態の対向する類似した山部及び谷部を参照)。
【0064】
アーム12,14がくっつけられて第1及び第2加熱パネル16,18が作動位置(不図示)にあるとき、加熱パネル16,18が離隔したままであって一定長の毛髪が加熱パネル間で押圧されないことが重要である。それでも、加熱パネル16,18間の一定長の毛髪は、加熱パネル16,18に毛髪が係わると、主に伝導によって加熱されることになる。
【0065】
波形により、2つの方法で一定長の毛髪の加熱が促進される。第1に、加熱パネル16,18の間を通過する際に一定長の毛髪がとらざるを得ない入り組んだ経路により、所定の幅の加熱パネルにおける移動経路が長くなり、これにより、一定長の毛髪が加熱パネル間に留まる期間が長くなる(ヘアスタイリング器具10が所定の移動速度でユーザーの頭皮から遠ざかる際に)。第2に、一定長の毛髪は入り組んだ経路により加熱パネル16,18の山部22a,bに係わるが、加熱パネルとの係わりが大きくなるほど、毛髪への熱伝導は大きくなる。
【0066】
これらの促進の第1は、図2及び3を参照することによって理解できる-一定長の毛髪40が加熱パネル116,118の間を通過する際の入り組んだ移動経路は、加熱パネルの全体幅Wよりも格段に大きい。
【0067】
これら促進の第2もまた、図2及び3を参照することにより理解できる-一定長の毛髪40は、加熱パネル116,118間の入り組んだ経路をとらざるを得ず、一定長の毛髪は加熱パネル間を引っ張られるに際に波形の山部に係わることになる。
【0068】
図1に示されるように、第1アーム12はまた第1押圧パネル26を有し、第2アーム14はまた第2押圧パネル28を有する。第1及び第2押圧パネル26,28は、必要に応じて、加熱パネル16,18と同じ温度に維持されてもよく、これら専用のセラミック加熱体を有していてもよい。
【0069】
或いは、押圧パネル26,28は、使用時に第1及び第2加熱パネル16,18よりも低い温度に維持されてもよい。温度差は、例えば押圧パネル26,28を加熱パネル16,18よりも低い温度まで能動的に加熱することによって生じさせてもよい。或いは、押圧パネルの温度を周囲温度近辺に維持するための方法を模索し提供してもよい。後者の選択肢は、加熱パネルと押圧部分の間の空隙もしくは熱障壁によって、及び/又は、各押圧パネル26,28の延長部32,34上に放熱フィンを搭載することによって、得られるかもしれない。
【0070】
図1の実施形態において、第1押圧パネル26は第1加熱パネル16に対して移動可能であり、第2押圧パネル28は第2加熱パネル18に対して移動可能であることが重要である。押圧パネル26,28は、それぞれ各加熱パネル16,18に対して、図1に示される非作動位置と作動位置(不図示)との間を移動可能である。作動位置において、第1及び第2押圧パネル26,28は、これらの間で共に一定長の毛髪を押圧できる程度に近接している。
【0071】
本発明の別の実施形態では、各押圧パネルが、そのアームの加熱パネルに対して固定されることで、加熱パネルと押圧パネルが作動状態と非作動状態の間を共に移動する。このような実施形態においても、各アームの加熱パネルと押圧パネルとの間には空隙もしくは熱障壁が設けられ、押圧パネルの温度を加熱パネルから独立して(そして好ましくはより低い温度に)設定できるものとされていることが好ましい。
【0072】
図1に示す実施形態では、各押圧パネル26,28は、点線で示される経路30(カーブした経路30は、例えば各押圧パネルの端部において突出するボスがスライドできるチャネルを示している)に沿って、それぞれの加熱パネル16,18に直接搭載されている。
【0073】
従って、一定長の毛髪は、加熱パネル16,18の間を通過する際は押圧されないのに対し、押圧パネル26,28の間を通過する際には押圧される。従って、一定長の毛髪は、この一定長の毛髪をスタイリングするために、必要に応じて加熱され押圧されるが、これら2つの作業は、ヘアスタイリング器具10の異なる部分によって別々に(そして順次に)効果的に実施される。
【0074】
図1に全体として楕円形状に示されているように、押圧パネル26,28は、作動位置においては比較的小さな接触面積を有するものとされる。別の実施形態では、接触面積を増大させるため、(図2及び3の実施形態におけるように)押圧パネルの接触領域は平坦であってもよい。楕円形状であったとしても、予め加熱された毛髪が押圧パネル26,28間を通過する際のこれへの圧力は、この毛髪をスタイリングするのに十分である。
【0075】
図1から、非作動位置では、第1及び第2押圧パネル26,28は、加熱パネル16,18とは整列しないように移動されていることが分かるであろう。これにより、押圧パネルによって妨げられることなく、加熱パネル16,18をユーザーの頭皮に近付けることが許容される。使用中、押圧パネル26,28が、スタイリングされる一定長の毛髪に沿って加熱パネル16,18を「追随する」ことが理解されるであろう。通常は、ユーザーの頭皮の直近からスタイリングを開始することが望まれるため、スタイリング作業の最初に、加熱パネル16,18をユーザーの頭皮のすぐ近くに配置できることが必要である。図1に表されているように、押圧パネル26,28を加熱パネル16,18に対して移動させれば、加熱パネル16,18をユーザーの頭皮のすぐ近くに移動できるであろう。従って、ユーザーの頭皮の近くの毛髪を加熱し、そしてユーザーの頭皮から遠ざかるようにヘアスタイリング器具10を移動させて、押圧パネル26,28を作動位置に移動させ、加熱された毛髪を押圧してスタイリングできる。
【0076】
図2及び3は、本発明の第2実施形態を示しており、この実施形態は、以下に示され記載されるように、2つの可能な構成(作動及び非作動位置の両方において)を有している。図2及び3が何れも、作動状態にある加熱パネル116,118と、作動位置にある押圧パネル126,128を示していることは重要である。恐らくは従来のヘアストレートナーと同様に、パネル116,126を保持する第1部材もしくはアーム(不図示)及びパネル118,128を保持する第2部材もしくはアームを、各パネルを分離させるように移動できることは、図1を参照することによって理解されるであろう。
【0077】
また、必要に応じて、押圧パネル126,128は加熱パネルに対して離れるように非作動位置に移動させてもよく、これによってスタイリング作業の最初に加熱パネルの後端部Tをユーザーの頭皮のすぐ近くに移動できるようになる。
【0078】
本実施形態では、加熱パネル116,118は金属からなり、各々がセラミックヒータ120を有する。押圧パネル126,128も金属からなるが、本実施形態では加熱体を有しない。
【0079】
本実施形態の押圧パネル126,128は、要求される押圧パネルの温度に応じて、各加熱パネル116,118に対して図2及び3に示される2つの構成の間を移動可能である。
【0080】
図2に示す位置では、各押圧パネル126,128はそれぞれ加熱パネル116,118に係わっており、押圧パネルは金属製であるため、これらの加熱パネルから熱を受容することになる。この構成では、使用時の押圧パネル116,118の温度が加熱パネル116,118の温度と実質的に同じになるように、特にアレンジしてもよい。
【0081】
他方、図3の位置では、押圧パネル126,128はそれぞれの加熱パネル116,118から空間Sだけ間隔を空けており、空間Sにより空隙が設けられることで、加熱パネル116,118からの熱の伝導が回避される。
【0082】
押圧パネル126,128は、ヘアスタイリング器具の図2及び3には示されていない連結部分を通した伝導によって、使用時にこれらの間を通過する加熱された一定長の毛髪40からの伝導によって、さらには輻射や滞留によって、加熱されるものの、図3の構成の押圧パネル126,128が図2の構成におけるよりも格段に冷たいことが、理解されるであろう。空間Sは、押圧パネルと加熱パネルとの間に所望の温度差を形成するため、ユーザーによって(又はコントローラにより)調整され得る。
【0083】
一定長の毛髪40は、図2及び3に示されている。一定長の毛髪の末端42は頭皮端であり、末端44は一定長の毛髪の自由端であることが理解されるであろう。従来のヘアストレートナーと同じく、ユーザーは、最初、加熱パネル116,118を自身の頭皮近くに配置し、そして使用中は頭皮から遠ざかるように、すなわち図2及び3に表されている左側に向かって、器具を移動させる。従って、一定長の毛髪40は、一定長の毛髪に沿って加熱パネル116,118の次にやってくる押圧パネル126,128により、頭皮端42から自由端44に向かって漸進的にスタイリングされる。従って、図1の実施形態では、毛髪は最初、加熱パネル116,118の間を通過してスタイリング温度まで(押圧されることなく)加熱され、次いで、押圧パネル126,128を通過して押圧される。
【0084】
図4及び5に示されているヘアスタイリング器具210の第3実施形態は、第1部材もしくはアーム212と、第2部材もしくはアーム214と、を備える。第1及び第2アームは、図4及び5に示されている開放もしくは非作動状態と、図6に示されている閉止もしくは作動位置と、の間を互いに相対的に移動可能である。
【0085】
アーム212,214は、ユーザーによって一方の手でグリップされるハンドル部232,234をそれぞれ有しており、ハンドル部232,234ひいてはアーム212,214は、既知のように、ヒンジ又はピボットジョイント50によって相対的に移動する。同じく既知のように、好適にはピボットジョイント50の近傍に配置されたバネ(見えない)により、アーム212,214が離れるように付勢されて、図4及び5の非作動状態に移行する。
【0086】
第1アーム212は第1加熱パネル216を有し、第2アーム214は第2加熱パネル218を有する。第1及び第2加熱パネル216,218は金属製であって、各々がセラミックヒータ220を有する(図6)。セラミックヒータ220は、ヘアスタイリング器具210のコントローラ(不図示)によって制御される電流によって駆動される。好ましくは、ユーザーが自身の頭髪をセットするのに最も適した温度を実践によって決められるよう、コントローラは加熱パネル216,218の温度を幾つかの異なった温度のうちの何れかの温度に制御できる。
【0087】
図4及び5に示されている非作動(開放)位置では、加熱パネル216及び218が、選択された一定長の毛髪を加熱パネル216,218の間に挿入できるのに十分な距離だけ離れていることが理解されるであろう。既知のように、一定長の毛髪がアーム212,214の間に挿入されると、ヘアスタイリング器具は、ユーザーの頭皮の近くから毛髪のスタイリングを始めたいと望まれる位置まで移動できる。
【0088】
ユーザーの頭皮に対して適切に配置されたら、ハンドル部232,234は図4及び5に示された位置から図6に示された作動状態になるよう、ぎゅっとくっつけられる。作動状態では、押圧パネル226,228は実質的にその面積全体に亘って互いに係わり合って、加熱パネル216,218が互いに近接するが、一定長の毛髪が通過できる小さなギャップを有する。
【0089】
よって、他の実施形態では、加熱パネルがその幅の一部又は全体に亘って係わることが可能ではあるが、この好ましい実施形態では、これらの間で一定長の毛髪が押圧されることがないよう、加熱パネル216,218の間に制御されたギャップが維持される。
【0090】
第1及び第2加熱パネル216,218は波形をなし、第2加熱パネル218の谷部と山部にそれぞれ向き合う第1加熱パネル216の山部と谷部を有する。本実施形態では、各加熱パネルが1つの全体山部と1つの全体谷部(完全なサインカーブにやや似ている)を備えるが、要望に応じて、他の実施形態では、1つの完全な山部より少ない及び/又は1つの完全な谷部より少なく、或いは、1つの完全な山部より多い及び/又は1つの完全な谷部より多いものであってもよい。
【0091】
ヘアスタイリング器具210は、作動位置における加熱パネル216,218の分離を維持するのを助ける協働構造を有する。第1協働構造は、第1アーム212に保持された2つの突出構造52及び54と、第2アーム214のこれらに対応する凹部56である(図5では凹部56の1つだけが見えている)。
【0092】
第2協働構造は、第1アーム212に保持された突出構造60と、これらに対応する第2アーム214の凹部62である。
【0093】
第3協働構造は、第2アーム214に保持された突出構造64と、これらに対応する第1アーム212の凹部66である。
【0094】
協働構造の数、形状、及び配置は、図面に示されたものに厳密に限定されるものではなく、本願を損なうことなく、1つもしくは複数の構造を省いたり、移動又は変更したりしてもよいことが理解されるであろう。しかしながら、第2及び第3協働構造の配置及び形状は、これらが加熱パネル216,218の山部及び谷部の延長であるため、理想的である。
【0095】
重要なことに、突出構造52(及び54)がこれらの各凹部56に係合し、突出構造60及び64がこれらの各凹部62及び66に係合して、アーム212,214が作動状態に移動すると;第1及び第2加熱パネル216,218が、所望のギャップを空けて離れるか、全面積に亘って分離して維持されるようにアレンジされる。
【0096】
協働構造は、加熱パネル216,218の一方の端部において、そして加熱パネルの一方の側部に、共に働くことが分かるであろう。従って、使用中にアンバランスな又は偏った力が第1及び第2アームにかかっても、協働構造は共に、加熱パネル間における端部-端部の分離と、側部-側部の分離を担保できる。
【0097】
ヘアスタイリング器具210は、さらに協働構造70を有しており、凹部72は作動状態における器具のさらなる構造的安定性を提供していることが分かるであろう。加えて、所望される場合には、構造70は、凹部72のスイッチに係わって、加熱体を駆動できる。
【0098】
協働構造は、離隔機能に加え、これらの先細り状又はカーブした形状により、ガイド又は整列機能を提供して、作動状態において、加熱パネル214,216及び押圧パネル226,228の適切な整列が確保されるよう補助することが理解されるであろう。突出構造60及び64は、各凹部76にぴったり納まる各ガイド部分74をそれぞれ保持しており、アーム212,214の正確かつ正しい整列を確保する。各アームのピボットジョイント50とは反対側の端部にあるガイド部分74の配置は、アームが共に作動位置に移動される際にアームをガイドする上でのこれらの有用性を最大化するものであり、また、使用中の加熱パネル216,218と押圧パネル226,228の正しい整列を維持する上でのこれらの有用性を最大化するものでもあることが理解されるであろう。
【0099】
加熱パネル216,218が、ハンドル部232,234から若干オフセットしていること、すなわちアーム212,214の一方の側縁には段部80があるのに対し、他方の側縁は直線状であることが分かるであろう。ユーザーは、一定長の毛髪が、最初に加熱パネル216,218の間を、次いで押圧パネル226,228の間を通過するように、器具を自身の髪に対して正しく方向付け、自身の頭から遠ざかるように器具を移動させる必要がある。従って、器具を鏡の中に見るときであっても、ユーザーが、どちらが器具の前縁でどちらが後縁なのか、容易に判断できることが望ましい。器具を非対称にすれば、ユーザーに対する明確な視覚的指示が提供される、すなわち、器具の一方の側にある段部80がユーザーの頭の近くに置かれるべき縁の明確な視覚的指示を提供する。
【0100】
段部80は、加熱パネル216,218と同じ側部にあることが望ましい。器具の使用時には、ユーザーはハンドル部232,234を押し合わせ、これにより押圧パネル226,228を押し合わせる。オフセット力を最小化するため、押圧パネル226,228は、ハンドルと並んでいることが望ましい。
【0101】
アーム212,214の各々の加熱パネル216,218と押圧パネル226,226との間は直接連結されておらず、これらの間は逆に小さな空隙があることが、図6から分かるであろう。押圧パネルは加熱パネルの近くにあることで幾らか過熱されるであろうが、これらは、加熱パネルと比較して格段に低い温度に維持できる。本実施形態では、押圧パネル226,228は、これら自身の加熱体220を有しており、押圧パネルの温度は、加熱パネルの温度に関わりなく、また理想的にはより低い温度に、制御できる。
【0102】
第2実施形態による現実的な異型のヘアスタイリング器具では、一定長の毛髪が加熱パネルの間を通過するのに押圧パネルの間を通過するよりも格段に長い経路をとるように、加熱パネル116,118の幅Wは、押圧パネル126,128の幅wよりも長く、理想的には格段に長いことが期待される。実施形態の1つでは、幅Wは35mm程度で、幅wは10mm~15mm程度である。同じく、第3実施形態では、特に図6に示されているように、加熱パネル216,218の幅は、押圧パネル226,228の幅よりも格段に長い。第3実施形態の好ましい例の1つでは、加熱パネル216,218の幅(図3の幅Wに相当する)は35mmであり、押圧パネル226,228の幅(図3の幅wに相当する)は12mmである。
【0103】
10~15mm幅の押圧パネル126,128,216,218では、押圧パネルの温度が200℃程度であっても、これらだけで効果的に毛髪をスタイリングすることはできないらしい(このような理由から、従来のヘアストレートナーは典型的には20mm幅以上の加熱パネルを有している)ことが理解されるであろう。同じく、加熱パネル116,118の間では毛髪は押圧されないため、この段階で200℃程度に加熱できても、効果的にスタイリングされることはないであろう。代わりに、本発明で毛髪をスタイリングするために必要とされるのは、加熱パネルに続く押圧パネルの組み合わせである。従って、たった10~15mm程度の幅のパネルの間で毛髪を押圧することで、効果的に毛髪をスタイリングでき、従来のヘアストレートナーと比較してパネル幅が低減されていることで、ダメージに対して最も脆弱な状態にある毛髪が引っ張られ押圧される経路長(及び時間)が低減され、毛髪がダメージを受ける可能性が低減される。
【0104】
全ての実施形態のヘアスタイリング器具のアーム(12,14;212,214)は、従来のヘアストレートナーに見られるように、離れるように弾性的に付勢されており、ユーザーは、使用時にアームを握ってこれらを押し合わせる必要があることが、理解されるであろう。或いは、アームがくっつくように付勢されていると、ユーザーは、使用時にこれらが離れるように動かす必要がある(好適な代替アレンジ例は、アームのハンドル部分と、加熱及び押圧パネルとの間にピボットを有する)。後者のアレンジ例では、加熱パネルを作動位置に保つために、ユーザーがアームを握っている必要がない;従って、特に使用前に器具が昇温される間に大気中に失われる熱が少ない、という第1の利点を有する。後者のアレンジ例は、器具が操作される際に、ユーザーが意図せず加熱パネルに触る可能性が低くなることで、火傷の可能性が低減される、という第2の利点を有する。後者のアレンジ例は、作動位置にある押圧パネル間の圧力がユーザーの握力ではなくバネ(もしくは他の弾性付勢手段、又は例えば磁石)によって制御されることで、使用中、特に長時間の使用中に、より安定的な圧力が押圧パネルの間にかかり易い、という第3の利点を有する。従って、後者のアレンジ例の方が、ユーザーにとって疲れにくいものとなっている。後者のアレンジ例はまた、器具の不使用時の美観に一層優れている。
【0105】
第3実施形態の好ましい例では、波形の幅は波長の3分の1程度である(幅が約10mmで、波長が約35mm);要望に応じて、より深い又はより浅い波形(それぞれ、幅が波長の3分の1よりも大きいか、もしくは小さい)が設けられていてもよい。深い波形によって毛髪が加熱パネル間を通過する際の経路長が長くなり、また、加熱パネル間を毛髪が移動する際の摩擦抵抗が増大することは、理解されるであろう。図6に示されている相対的な幅と波長が、適切な妥協点であることが見出された。
【0106】
図4~6の第3実施形態によって製造され、上記した形状及び寸法の加熱パネル216及び218を有する実際のヘアスタイリング器具では、毛髪が加熱パネル間を通過するための経路長は、約43mmになった。従って、入り組んだ又は波形の形状の加熱パネルは、器具の全体幅を格段に低減しながらも、毛髪が所望のスタイリング温度に到達するのに十分な経路長を提供する。
【0107】
特定の実施形態では、波形の幅と波長は調整可能とすることができる。特定の一実施形態では、加熱パネルは柔軟な波形シートによって設けられており、要望に応じて、波形の波長を小さくし幅を大きくするためにシートの端部を強制的にくっつけるか、或いは、波形の波長を大きくし幅を小さくするために強制的に離すことができる。
【0108】
他の実施形態では、押圧パネルはローラーによって設けられていてもよい。(図1の実施形態のものと同じく)ローラーの接触面積は小さいが、それでも、予め加熱された毛髪をスタイリングするのに十分な圧力を提供できる。
【0109】
さらに他の実施形態では、加熱パネルは波形表面を有するローラーによって設けられ、1つのローラーの波形の山部が他のローラーの山形の谷部と軽く噛み合い、逆もまた同様とされる(理想的には、波形ローラーの間を通過する際に毛髪が押圧されないように)。ローラーは、これらの間の毛髪の通過をアシストするため、必要に応じて回転するように駆動されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6