(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】新規化合物およびその自己免疫疾患の治療用途
(51)【国際特許分類】
C07D 401/12 20060101AFI20231020BHJP
C07D 417/12 20060101ALI20231020BHJP
C07D 209/30 20060101ALI20231020BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20231020BHJP
A61K 31/428 20060101ALI20231020BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20231020BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20231020BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231020BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231020BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231020BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231020BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231020BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231020BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20231020BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231020BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20231020BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
C07D417/12
C07D209/30 ZNA
A61K31/4439
A61K31/428
A61K31/405
A61K31/4709
A61P35/00
A61P37/02
A61P29/00
A61P1/04
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/06
A61P29/00 101
A61P3/10
A61P35/04
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2022520452
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2020013418
(87)【国際公開番号】W WO2021066573
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-31
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2020-0127176
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522130324
【氏名又は名称】パレンキマ バイオテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PARENCHYMA BIOTECH INC.
【住所又は居所原語表記】(Inje University College Of Medicine Translational medicine laboratory, Gaegeum-dong) #201, 75, Bokji-ro, Busanjin-gu, Busan 47392 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ス キル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ウォン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リ, スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ウン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ハ ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム, チェ ウン
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516951(JP,A)
【文献】特開2015-205902(JP,A)
【文献】特開2017-014271(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107149602(CN,A)
【文献】国際公開第2018/229195(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107151231(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105777608(CN,A)
【文献】特表2009-535320(JP,A)
【文献】SINGH, P. et al.,Quantitative structure-activity relationship study of novel rhinacanthins and related naphthoquinone esters as anticancer agents,Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry,2008年,Vol.23, No.1,pp.50-55,DOI: 10.1080/14756360701408606
【文献】MENCIU, C. et al.,New N-(Pyridin-4-yl)-(indol-3-yl)acetamides and Propanamides as Antiallergic Agents,J. Med. Chem.,1999年,Vol.42,pp.638-648
【文献】SINGH, P. et al.,Quantitative structure-activity relationship study on N-(pyridine-4-yl)-(indol-3-yl) alkylamides as antiallergic agents,Indian Journal of Biochemistry & Biophysics,2002年,Vol.39,pp.351-355
【文献】GARDNER, C. R. et al.,Synthesis of retinoid enhancers based on 2-aminobenzothiazoles for anti-cancer therapy,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2012年,Vol.20,pp.6877-6884,DOI: 10.1016/j.bmc.2012.09.035
【文献】KAESSLER, A. et al.,Indole carboxamides inhibit bovine testes hyaluronidase at pH 7.0 and indole acetamides activate the enzyme at pH 3.5 by different mechanisms,Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry,2008年,Vol.23, No.5,pp.719-727,DOI: 10.1080/14756360802208152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中、R
1~R
4はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、R
5及びR
6は独立して水素またはC
1~C
5のアルキルであり、
AはC
5~C
12の単環または二環基であり、
前記環基の各環は1~3個のヘテロ原子で置換されていてもよく、
前記環基はハロゲン、C
1~C
5のアルキルまたはC
1~C
5のアルコキシで置換されていてもよく、
前記Aは以下の環基からなる群より選択され、
ここで、R
9~R
12及びR
17~R
24は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシであり、
R
10~R
12の少なくとも1つは、ハロゲンまたはC
1~C
3のアルコキシであり、
R
13~R
16は水素であり、
ただし、前記R
1~R
4及びR
13~R
16がいずれも水素である化合物は除く。)
【請求項2】
前記Aは以下の環基からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
(式中、R
9~R
12はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシであり、
R
10~R
12の少なくとも1つは、ハロゲンまたはC
1~C
3のアルコキシであり、
R
13~R
16は水素であり、
ただし、前記R
1~R
4及びR
13~R
16がいずれも水素である化合物は除く。)
【請求項3】
R
2及びR
3がそれぞれ独立してF、ClまたはBrである、請求項1に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
以下の化合物からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(6-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(キノリン-2-イル)アセトアミド;および、
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
【請求項5】
下記化学式1で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を含む自己免疫疾患の治療または予防用の薬学組成物。
(式中、R
1~R
4はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、R
5及びR
6は独立して水素またはC
1~C
5のアルキルであり、
Aは以下の環基からなる群より選択され、
ここで、R
9~R
24はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシである。)
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物は、以下の化合物からなる群より選択される化合物である、自己免疫疾患の治療または予防用である、請求項5に記載の薬学組成物。
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
2-(1H-インドール-3-イル)-N-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アセトアミド;
N-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3,5-ジクロロフェニル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(6-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(キノリン-2-イル)アセトアミド;および、
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
【請求項7】
多発性硬化症、炎症性腸疾患、移植片対宿主疾患、喘息、アトピー、乾癬、関節リウマチ、全身紅斑ループスおよび1型糖尿病からなる群より選択されるいずれかの自己免疫疾患の治療または予防用である、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項8】
下記化学式1で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を含む大腸癌の治療または予防用の薬学組成物。
(式中、R
1~R
4はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、R
5及びR
6は独立して水素またはC
1~C
5のアルキルであり、
Aは以下の環基からなる群より選択され、
ここで、R
9~R
16はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシである。)
【請求項9】
前記化学式1で表される化合物は、以下の化合物からなる群より選択される化合物である、請求項8に記載の大腸癌の治療または予防用の薬学組成物。
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;および、
N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(6-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物およびその自己免疫疾患の治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは免疫反応により病原体から身体を保護する。ウイルスやバクテリアなどの外来微生物に対する生体防御機構は自然免疫(innate immunity)と特異免疫(specific immunity)に分けられ、これらは免疫関連細胞から主に分泌されるサイトカインによって媒介される。
【0003】
免疫システムは、有害な外部物質である抗原(antigen)から身体を保護する役割を果たす。この抗原の種類としては、バクテリア、ウイルス、毒素、がん細胞や他種の血液及び組織が挙げられる。免疫システムはこれらの有害物質を破壊するために抗体を産生するが、自己免疫に異常が生じた場合には、免疫システムが自身の臓器と有害な抗原を区別できずに正常な組織を破壊してしまう。このような反応によって誘発される疾患が自己免疫疾患(autoimmune disease)である。
【0004】
アリル炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor,AHR)は、PER-ARNT-SIM(PAS)スーパーファミリーに属するリガンド依存性転写因子であり、障壁組織の免疫細胞、上皮細胞、内皮細胞、基質細胞(stromal)で主に発現される。AHRは環境センサー(environmental sensor)であり、環境汚染物質(例えば、ダイオキシン)のような生体異物リガンド(xenobiotic ligand)だけでなく、細胞、微生物、食物から生成される生理的リガンドもまた感知する。
【0005】
不活性化形態のAHRは、細胞質でHsp90:XAP2:p23:Srcシャペロン(chaperone)と複合体(AHR chaperone complex)を形成し、リガンドに対して高い親和力を持つ構造を維持している。リガンドの結合後にAHRが活性化されると、複合体は核に移動し、AHRはシャペロン複合体から離れて、標的遺伝子の上流調節領域(upstream regulatory regions)に位置するAHR-responsive DNA elements(xenobiotic response elements,XRE)に結合して標的遺伝子の発現を調節する。生体内のAHRを活性化できる無毒性の免疫調節リガンドは、新しい自己免疫疾患の治療薬として開発されることが期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、自己免疫疾患の予防および治療に有用な新規化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、新規化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を含む自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.下記化学式1で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中、R
1~R
4はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、R
5及びR
6は独立して水素またはC
1~C
5のアルキルであり、
AはC
5~C
12の単環または二環基であり、
前記環基の各環は1~3個のヘテロ原子で置換されていてもよく、
前記環基はハロゲン、C
1~C
5のアルキルまたはC
1~C
5のアルコキシで置換されていてもよい。)
【0010】
2.前記項目1において、前記Aは以下の環基からなる群より選択される、化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
(式中、Q
1~Q
15はそれぞれ独立してC、NまたはSであり、R
7~R
30はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシであり、Q
4がNであると、R
11はない。)
【0011】
3.前記項目1において、前記Aは以下の環基からなる群より選択される、化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
(式中、R
7~R
30はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシである。)
【0012】
4.前記項目1において、前記Aは以下の環基からなる群より選択される、化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
(式中、R
7~R
24はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシである。)
【0013】
5.前記項目1において、前記Aは以下の環基からなる群より選択される、化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
(式中、R
9~R
16はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシである。)
【0014】
6.前記項目1において、R2及びR3がそれぞれ独立してF、ClまたはBrである、化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【0015】
7.前記項目1において、以下の化合物からなる群より選択される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
2-(1H-インドール-3-イル)-N-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アセトアミド;
N-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3,5-ジクロロフェニル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(ピリジン-4-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(6-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(チアゾール-2-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(キノリン-2-イル)アセトアミド;および、
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
【0016】
8.前記項目1~7のいずれかに記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を含む薬学組成物。
【0017】
9.前記項目8において、自己免疫疾患の治療または予防用薬学組成物。
【0018】
10.前記項目8において、多発性硬化症、炎症性腸疾患、移植片対宿主疾患、喘息、アトピー、乾癬、関節リウマチ、全身紅斑ループスおよび1型糖尿病からなる群より選択されるいずれかの自己免疫疾患の治療または予防用薬学組成物。
【0019】
11.前記項目8において、癌の治療または予防用薬学組成物。
【0020】
12.前記項目11において、前記癌は、黒色腫、大腸癌、肝癌、膠細胞腫、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、胃癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、胆嚢癌、膵臓癌、血液癌、皮膚癌および肺癌からなる群より選択される、癌の治療または予防用薬学組成物。
【0021】
13.前記項目1~7のいずれかに記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、自己免疫疾患の治療方法。
【0022】
14.前記項目13において、前記自己免疫疾患は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、移植片対宿主疾患、喘息、アトピー、乾癬、関節リウマチ、全身紅斑ループスおよび1型糖尿病からなる群より選択される、自己免疫疾患の治療方法。
【0023】
15.前記項目1~7のいずれかに記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、AHRの活性誘導方法。
【0024】
16.前記項目1~7のいずれかに記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、IL-6の産生抑制方法。
【0025】
17.前記項目1~7のいずれかに記載の化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、癌の治療方法。
【0026】
18.前記項目17において、前記癌は、黒色腫、大腸癌、肝癌、膠細胞腫、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、胃癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、胆嚢癌、膵臓癌、血液癌、皮膚癌および肺癌からなる群より選択される、癌の治療方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の新規化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩は、免疫調節転写因子であるAHRの活性を誘導することにより、炎症の制御だけでなく、免疫バランスの調節および損傷組織を修復する効果がある。
【0028】
本発明の新規化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩は、炎症因子であるIL-6の産生を抑制することにより、過度の免疫反応、具体的には自己免疫反応を調節する効果がある。
【0029】
本発明の新規化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩は、調節T細胞(Treg)の活性を誘導する効果がある。
【0030】
また、本発明の新規化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩は、前記炎症因子の調節によって自己免疫疾患を予防および治療する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の化合物の細胞培養条件でAHRリガンドであることを確認するために、CYP1A1の発現量を測定して示すものである。
【
図2】
図2は、本発明の化合物の細胞培養条件でAHRリガンドであることを確認するために、CYP1A1の発現量を測定して示すものである。
【
図3】
図3は、本発明の化合物の炎症因子IL-6の産生抑制効果を示すものである。
【
図4】
図4は、本発明の化合物の炎症因子IL-6の産生抑制効果を示すものである。
【
図5】
図5は、本発明の化合物のFoxp3+調節T細胞の産生効果を示すものである。
【
図6】
図6は、本発明の化合物の炎症性腸疾患の治療効果をDSS(dextran sodium sulfate)誘導炎症性腸疾患動物モデルで示すものである。
図6は、対照群(vehicle)に比べて重症指数が低いほど治療効果があることを意味するものである。
【
図7】
図7は、本発明の化合物の炎症性腸疾患の治療効果をDSS(dextran sodium sulfate)誘導炎症性腸疾患動物モデルで示すものである。
図7は、大腸(colon)の長さに対して重量が少ないほど炎症性腸疾患の治療効果があることを意味するものである。
【
図8】
図8は、本発明の化合物の炎症因子(IL-1β、IL-6、IL-17a、TNF-α)の発現抑制および免疫調節因子(IL-10、Foxp3)の発現増加に及ぼす効果をDSS誘導炎症性腸疾患動物モデルで示すものである。
【
図9】
図9は、本発明の化合物の炎症因子(IL-1β、IL-6、IL-17a、TNF-α)の発現抑制および免疫調節因子(IL-10、Foxp3)の発現増加に及ぼす効果をDSS誘導炎症性腸疾患動物モデルで示すものである。
【
図10】
図10は、本発明の化合物の粘膜治療効果を、FITC-デキストラン(dextran)を用いてDSS誘導炎症性腸疾患動物モデルで示すものであり、検出程度が低いほど粘膜治療効果があることを意味する。
【
図11】
図11は、本発明の化合物の炎症誘導大腸癌の予防効果をAOM/DSS大腸癌動物モデルで示すものであり、大腸あたり腫瘍の数が少ないほど大腸癌の予防効果があることを意味する。
【
図12】
図12は、本発明の化合物の多発性硬化症の治療効果をEAE(Experimental autoimmune encephalomyelitis)動物モデルで示すものである。多発性硬化症の治療効果を確認するために、重症指数を期間別グラフで示している。対照群に比べて重症指数が低いほど治療効果があることを意味する。
【
図13】
図13は、本発明の化合物の炎症因子(IFN-γ、IL-17a、IL-1β)の発現抑制および免疫調節因子(IL-10、Foxp3)の発現増加に及ぼす効果を
図12のEAE動物モデルで示すものである。
【
図14】
図14は、本発明の化合物の炎症因子(IFN-γ、IL-17a、IL-1β)の発現抑制および免疫調節因子(IL-10、Foxp3)の発現増加に及ぼす効果を
図12のEAE動物モデルで示すものである。
【
図15】
図15は、肺-移植片対宿主疾患(GVHD)動物モデルにおける移植片対宿主疾患の治療効果を確認するために重症指数を測定してグラフで示すものである。
【
図16】
図16は、前記
図15の動物モデルにおいて、本発明の化合物によるIL-6、IL-17a、IL-10因子の発現程度を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0033】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本発明の関連分野の通常の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。また、本明細書には好ましい方法または試料が記載されているが、類似または同等のものも本発明の範囲に含まれる。
【0034】
本発明は、下記化学式1で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0035】
【0036】
前記構造式において、置換基が必要な箇所であるにも拘らずいずれの置換基も記載されていない場合は、水素置換基を省略したことを意味する。これは本発明の全ての構造式において同様に適用される。
【0037】
前記式中、R1~R4はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、具体的には水素、フルオールまたは塩素であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記式中、R5及びR6は独立して水素またはC1~C5のアルキルであってもよく、具体的には水素、メチルまたはエチルであってもよく、より具体的には水素またはメチルであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
前記式中、AはC5~C12の単環または二環基であり、具体的にはシクロペンタ-1,3-ジエン、ベンゼン、シクロヘキサン、インデン、4,5,6,7-テトラヒドロインデン、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、1,6-ジヒドロペンタレンなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0040】
前記環基の各環は1~3個のヘテロ原子で置換されていてもよく、例えば、それぞれ独立して1~3個の原子がN、S、Oなどで置換されてもよいが、これらに限定されるものではない。前記ヘテロ原子は、炭素や水素ではない原子を意味する。
【0041】
また、前記ヘテロ原子が置換され得る位置は、具体的には下記に示す構造中のQ1~Q15であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【0043】
前記構造式中、Q4がNであると、Q4の位置にさらに置換されることはないので、R11は存在しない場合と見ることができる。
【0044】
前記環基は、ハロゲン、C1~C5のアルキルまたはC1~C5のアルコキシで置換されていてもよく、例えば、F、Cl、メチル基、エチル基、メトキシ、エトキシなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記環基において、ハロゲン、C1~C5のアルキルまたはC1~C5のアルコキシで置換され得る位置は、具体的にはR7~R30であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、前記Aは以下の環基から選択することができる。
(式中、R
7~R
30はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシである。)
【0047】
本発明の一実施形態によれば、具体的には、前記Aは以下の環基から選択することができる。
(式中、R
7~R
24はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシである。)
【0048】
また、本発明の一実施形態によれば、より具体的には、前記Aは以下の環基から選択することができる。
(式中、R
9~R
16はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C
1~C
3のアルキルまたはC
1~C
3のアルコキシである。)
【0049】
下記表1は、化学式1で表される化合物において、具体的にはR1~R6とAの組み合わせにより化学式1で表される化合物構造の例を示すものである。
【0050】
【0051】
本発明は、以下の化合物からなる群より選択される化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0052】
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
2-(1H-インドール-3-イル)-N-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アセトアミド;
N-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3,5-ジクロロフェニル)アセトアミド;
N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(ピリジン-4-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド;
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(6-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(チアゾール-2-イル)アセトアミド;
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(キノリン-2-イル)アセトアミド;および、
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)アセトアミド
【0053】
また、本発明は、前記化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を含む薬学組成物に関するものである。
【0054】
前記薬学組成物は、自己免疫疾患の治療または予防用薬学組成物であってもよく、具体的には、多発性硬化症(Multiple sclerosis,MS)、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease,IBD)、移植片対宿主疾患(graft-versus-host disease,GVHD)、喘息、アトピー、乾癬、関節リウマチ(rheumatoid arthritis,RA)、全身紅半ループス(Systemic lupus erythematosus,SLE)、1型糖尿病(Type 1 diabetes mellitus,T1D)、ベーチェット病、シェーグレン症候群であってもよく、より具体的には、多発性硬化症、炎症性腸疾患、移植片対宿主疾患、喘息、アトピー、乾癬、関節リウマチ、全身紅斑ループス、1型糖尿病であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明で「自己免疫疾患」とは、体液性免疫、細胞性免疫または両方によって細胞や組織に損傷を与えるものであって、免疫系が自己抗原(autoantigen)に対して不適切な反応を起こし、自己免疫反応が全身性または特定の臓器などに特異的に現れる疾患であり、慢性炎症を誘発し得る。
【0056】
前記「多発性硬化症」とは、脳および脊髄の軸索突起を包む脂肪質髄鞘が損傷及び/又は消耗して生じる広義の徴候および症状であり、脱髄鞘(demyelination)および瘢痕形成を誘発する炎症性疾患を指す。多発性硬化症の種類には、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)、進行性再発型多発性硬化症(PRMS)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記「炎症性腸疾患」とは、腸管内の異常な慢性炎症が好転と再発を繰り返す疾患であり、クローン病(Chron's disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)および腸管ベーチェット病(intestinal Bechet's disease)からなる群の1つ以上の疾患であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前記「移植片対宿主疾患」とは、造血幹細胞の移植時に輸血されたリンパ球が免疫機能の低下した宿主を攻撃して発熱、発疹、肝機能異常などの症状を引き起こす疾患であり、皮膚、肺、腸、肝臓などに侵入し得るが、これらに限定されるものではない。
【0059】
前記「喘息」とは、特定の誘発原因物質に曝露されたときに気管支の炎症によって咳、呼吸困難などの症状が繰り返し発生する疾患であり、感染、喫煙、アレルギー抗原などによって発生し得るが、これらに限定されるものではない。
【0060】
前記「アトピー」とは、アトピー皮膚炎を意味する。慢性再発性の炎症性皮膚疾患であり、かゆみや皮膚乾燥などの症状が現れる代表的なアレルギー疾患である。
【0061】
前記「乾癬」とは、免疫システムの異常により皮膚または関節に発生する炎症疾患であり、外観の悪化、角質の溜まり、紅斑性プラーク(erythematous plaques)が生じ、苦痛を伴うなどの問題を引き起こす。乾癬は、乾癬性関節炎、滴状乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、頭皮乾癬、爪乾癬、および付着部炎から選択されるいずれか1つ以上の疾患を含むことができる。
【0062】
前記「関節リウマチ」とは、関節部位の慢性炎症によって特徴付けられる全身性自己免疫疾患を意味する。
【0063】
前記「全身紅斑ループス」とは、「ループス」とも呼ばれる慢性炎症性の自己免疫疾患であり、結合組織や皮膚、関節、血液、腎臓などの身体の様々な器官に侵入する全身性疾患を意味する。正確な原因は知られていないが、これまでの研究によると、遺伝的要因が関連していると知られている。米国リウマチ学会議(American College of Rheumatology,ACR)では、ループスの診断をより容易にするために、他の疾患との区分に役立つ11個の症状、徴候および検査所見を発表しており、11個の項目のうち4個以上の症状があればループスと診断できる。
【0064】
前記「1型糖尿病」とは、インスリン分泌β細胞が自己免疫反応によって破壊される免疫媒介疾患であり、原因としては多数の遺伝的及び環境的な要因が挙げられる。これはインスリン分泌β細胞に特異的に標的化された免疫細胞により、ランゲルハンス島の進行性炎症浸潤を伴い得る。
【0065】
本発明の薬学組成物は、本発明の化合物である有効成分以外に、薬剤学的に適切でかつ生理学的に許容される助剤を用いて調製するか、または哺乳動物に投与することができる。前記助剤としては、賦形剤、崩解剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などを用いることができる。
【0066】
また、本発明の薬学組成物は、投与のために、前記の薬学的に有効な量の有効成分以外に、さらに、薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含み、薬剤学的組成物に好ましく製剤化することができる。
【0067】
前記「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野でよく知られている要素に応じて決定されてもよい。本発明の薬学組成物は、個々の治療薬として投与するか、または他の治療薬と併用して投与してもよい。従来の治療薬とは順次又は同時に投与されてもよく、単一又は多重投与されてもよい。前記要素をすべて考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定することができる。
【0068】
具体的には、本発明の薬学組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内における活性成分の吸収度、不活性率及び排泄速度、疾病の種類、併用される薬物によって異なり得る。通常は、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは0.01~100mgを毎日または隔日投与するか、または1日1~3回に分けて投与することができる。しかし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減され得るので、前記投与量はいかなる意味でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0069】
また、前記「薬剤学的に許容される」というのは、生理学的に許容され、かつヒトに投与時に通常、胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはそれと類似した反応を引き起こさない組成物を指す。
【0070】
前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、および鉱物油が挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤および防腐剤などをさらに含むことができる。
【0071】
また、本発明の組成物は、ヒトを含む本発明の薬学組成物を必要とする個体に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供できるように、当該分野で公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質のゼラチンカプセル、滅菌注射用溶液、滅菌粉末であってもよい。
【0072】
本発明は前記化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む自己免疫疾患の治療方法に関するものである。
【0073】
また、本発明は前記化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、AHRの活性誘導方法に関するものである。
【0074】
具体的には、本発明の化合物は、免疫調節転写因子であるアリル炭化水素受容体(AHR)を標的とし、AHRの活性を誘導するアゴニストとしての役割を果たして、炎症の制御、免疫バランスの調節及び損傷組織の修復を行って自己免疫疾患の治療用途に使用できるが、これらに限定されるものではない。従来のリガンドは、毒性、低い親和性及び構造安定性、高い標的非特異性のため、薬学組成物としての開発に適していない問題があった。これに対して、本発明の「Drug-like properties」を有する化合物でAHRの活性を誘導すると、自己免疫疾患の治療および予防に効果的に使用できる。
【0075】
本発明は前記化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、IL-6の産生抑制方法に関するものである。
【0076】
具体的には、本発明の化合物は、炎症因子であるIL-6が自己免疫疾患を誘発することが知られているので、その産生を抑制するメカニズムにより自己免疫疾患の治療に使用することができる。実際、IL-6の抑制を治療目的とする自己免疫疾患の治療薬および関連論文が多数知られている。本発明の化合物もIL-6の産生を抑制することが下記実験データから確認され、自己免疫反応を減少させる効果があると予想されるので、自己免疫疾患の治療及び予防に使用することができる。
【0077】
さらに、本発明は前記化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を含む癌の予防または治療用組成物に関するものである。
【0078】
本発明で「癌」とは、広範に宿主における最初の異常細胞成長部位の周囲組織およびその部位の遠位にある潜在的組織を侵襲する宿主自体細胞の制御されない異常成長を指し、上皮組織(例えば、皮膚、扁平細胞)の癌である癌腫;結合組織(例えば、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管など)の癌である肉腫;血液形成組織(例えば、骨髄組織)の癌である白血病;免疫細胞の癌であるリンパ腫および骨髄腫;脳および脊椎組織からの癌を含む中枢神経系の癌を含むことができる。
【0079】
前記癌は、具体的には黒色腫、大腸癌、肝癌、膠細胞腫、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、胃癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、胆嚢癌、膵臓癌、血液癌、皮膚癌、および肺癌からなる群より選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
本発明は前記化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む癌の治療方法に関するものである。
【0081】
前記治療方法では、癌診断を受けた患者に、前記化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を抗癌治療のいずれの段階でも投与することができ、特定の段階に限定されない。
【0082】
また、前記化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩は、前記の薬学組成物の形態で投与できるが、これに限定されるものではない。
【0083】
本発明の化学式1で表される化合物は、各種文献に知られている方法により製造することができる。下記の製造例では、前記表1に示す化合物の一部の合成方法を簡単に記載しているが、これらに限定されるものですない。
【0084】
以下、本発明の製造例及び実施例により本発明を詳細に説明する。
【0085】
製造例
1.N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物8)の合成
[反応式1]
【0086】
室温で2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)酢酸(1.00g,4.77mmol)のCH2Cl2(30mL)溶液を撹拌しながら、5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-アミン(892mg,4.77mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾール[4,5-b]ピリジニウム-3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU,2.18g,5.72mmol)、およびトリメチルアミン(1.33mL,9.54mmol)を順次滴加した。反応混合物を室温で3日間撹拌し、混合物に蒸留水(10mL)を加えて反応を終了した。層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィー(SiO2,hexanes:EtOAc=4:1~2:1)で精製し、淡灰色の化合物(970mg,54%)を得た。
【0087】
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ8.67(br s,1H),8.00(d,J=8.0Hz,1H),7.97(br s,1H),7.55(d,J=4.0Hz,1H),7.23(d,J=8.0Hz,1H),7.14(m,2H),3.84(s,2H),2.45(s,3H)。
【0088】
2.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物40)の合成
[反応式2]
【0089】
前記製造例1において、アミンをベンゾ[d]チアゾール-2-アミンに変更した以外は同様な実験方法を実施し、白色の標題化合物(1.31g,80%)を得た。
【0090】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz):δ12.58(br s,1H),11.20(br s,1H),7.95(m,1H),7.74(d,J=8.0Hz,1H),7.68(d,J=4.0Hz,1H),7.43(ddd,J=8.0,8.0,2.0Hz,1H),7.39(m,2H),7.29(ddd,J=8.0,8.0,2.0Hz,1H),7.09(dd、J=8.0,4.0Hz,1H),3.91(s,2H)。
【0091】
3.2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド(化合物26)の合成
[反応式3]
【0092】
前記製造例1において、アミンを5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-アミンに変更した以外は同様な実験方法を実施し、淡黄色の標題化合物(560mg,35%)を得た。
【0093】
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ8.38(br s,1H),8.14(dd,J=8.0,2.0Hz,1H),7.87(br s,1H),7.77(dd,J=8.0,8.0Hz,1H),7.54(dd,J=4.0,2.0Hz,1H),7.33(dd,J=8.0,0.8Hz,1H),7.21(m,2H),3.87(s,2H)。
【0094】
4.N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物2)の合成
[反応式4]
【0095】
前記製造例1において、酢酸を2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)酢酸に変更した以外は同様な実験方法を実施し、淡茶色の標題化合物(107mg,44%)を得た。
【0096】
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ9.09(br s,1H),8.20(br s,1H),8.02(d,J=8.0Hz,1H),7.76(d,J=8.0Hz,1H),7.20(dd,J=8.0,4.0Hz,1H),7.13(dd,J=8.0,4.0Hz,1H),6.98(d,J=4.0Hz,1H),6.89(m,1H),3.83(s,2H),2.44(s,3H)。
【0097】
5.N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物45)の合成
室温でN-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド(70.0mg,0.228mmol)のDMF(1mL)溶液をアルゴン雰囲気下で撹拌しながらt-BuOK(74.0mg,0.456mmol)を滴加し、5分間撹拌した。混合物にMeI(28.4μL,0.456mmol)を滴加し、30分間撹拌した。混合物に蒸留水(1mL)を加えて反応を終了した。層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィー(SiO2,ヘキサン:EtOAc=4:1)で精製し、白色の標題化合物(39.0mg,51%)を得た。
【0098】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.83(d,J=8.1Hz,1H),7.80(d,J=7.9Hz,1H),7.64(d,J=8.0Hz,1H),7.43(td,J=7.8,1.0Hz,1H),7.29(m,3H),7.16(t,J=7.5Hz,1H),4.17(s,2H),3.85(s,3H),3.77(s,3H)。
【0099】
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ171.87,160.26,148.19,137.08,133.59,127.73,127.56,126.01,123.92,122.20,121.36,121.18,119.61,118.76,109.60,105.76,35.73,32.93,32.87。
【0100】
6.N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド(化合物35)の合成
(1)ステップ1:2-(1H-インドール-3-イル)アセチルクロリドの合成
0℃でインドール-3-酢酸(39.3mg,0.224mmol)のCH2Cl2(1.5mL)溶液をアルゴン雰囲気下で撹拌しながら、オキサリルクロリド(oxalyl chloride)(96.0μL,1.12mmol)およびDMF(1drop)を順次滴加した。反応混合物を1時間撹拌した。混合物を減圧濃縮および真空乾燥し、さらなる精製なしに次の反応に使用した。
【0101】
(2)ステップ2:N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミドの合成
0℃で5-クロロ-6-フルオロ-N-メチルピリジン-2-アミン(30.0mg,0.187mmol)のTHF(1mL)溶液をアルゴン雰囲気下で撹拌しながら、n-BuLi(116μL,0.187mmol)を一滴ずつ滴加した。反応混合物を1時間撹拌した。混合物にステップ1で調製した2-(1H-インドール-3-イル)アセチルクロリドのCH2Cl2(0.5mL)溶液を滴加した。混合物を5分間撹拌した後、蒸留水(1mL)を加えて反応を終了した。層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィー(SiO2,ヘキサン:EtOAc:CH2Cl2=3:3:1)で精製し、茶色の標題化合物(19.0mg,27%)を得た。
【0102】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ8.15(s,1H),7.69(t,J=8.7Hz,1H),7.53(d,J=7.9Hz,1H),7.34(s,1H),7.31(s,1H),7.19(t,J=7.5Hz,1H),7.11(t,J=7.4Hz,1H),7.04(s,1H),3.98(s,2H),3.43(s,3H)。
【0103】
13C NMR(CDCl3,125MHz): δ172.17,159.28,157.85,142.29,141.91,141.90,136.20,127.17,122.94,122.44,119.86,118.77,118.01,117.97,117.77,117.73,111.36,108.76,35.60,29.83 。
【0104】
7.2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド(化合物32)の合成
前記製造例6において、酢酸を2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)酢酸に変更した以外は同様な実験方法を実施し、茶色の標題化合物(11.6mg,15%)を得た。
【0105】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ8.25(s,1H),7.82(t,J=8.6Hz,1H),7.74(t,J=8.7Hz,1H),7.46(s,1H),7.22(d,J=8.6Hz,1H),7.12(dd,J=8.6,1.6Hz,1H),7.06(s,1H),3.92(s,2H),3.43(s,3H)。
【0106】
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ159.06,157.93,156.01,151.70,151.60,142.09,134.54,128.35,125.61,124.52,122.72,119.05,118.34,117.99,117.95,117.26,112.39,35.67,29.82。
【0107】
8.N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド(化合物51)の合成
N-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミドを用いて、前記製造例5と同様の実験方法で白色の標題化合物(26.4mg,54%)を得た。
【0108】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.83(d,J=8.1Hz,1H),7.80(d,J=7.9Hz,1H),7.58(d,J=1.0Hz,1H),7.43(t,J=7.6Hz,1H),7.30(t,J=7.5Hz,1H),7.23(d,J=8.7Hz,1H),7.20(dd,J=8.7,1.5Hz,1H),7.08(s,1H),4.11(s,2H),3.87(s,3H),3.75(s,3H)。
【0109】
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ171.51,160.22,148.12,135.51,133.56,129.19,128.65,126.09,125.58,124.03,122.55,121.42,121.23,118.28,110.71,105.57,35.73,33.16,32.49。
【0110】
9.N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物36)の合成
N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミドを用いて、前記製造例5と同様の実験方法で黄色の標題化合物(7.2mg,54%)を得た。
【0111】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.69(t,J=8.7Hz,1H),7.50(d,J=7.9Hz,1H),7.35(d,J=7.0Hz,1H),7.29(d,J=8.2Hz,1H),7.23(t,J=7.6Hz,1H),7.11(t,J=7.4Hz,1H),6.95(s,1H),3.96(s,2H),3.75(s,3H),3.43(s,3H)。
【0112】
13C NMR (CDCl3,125MHz): δ 172.27,157.85,155.94,151.78,151.69,141.87,141.86,136.99,127.65,127.61,122.00,119.36,118.82,118.03,117.98,112.96,112.72,109.46,107.06,35.56,32.87,32.82。
【0113】
10.2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-N-メチルアセトアミド(化合物37)の合成
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミドを用いて、前記製造例5と同様の実験方法で黄色の標題化合物(17.7mg,56%)を得た。
【0114】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.74(t,J=8.7Hz,1H),7.44(s,1H),7.35(br s,1H),7.19(d,J=8.6Hz,1H),7.15(dd,J=8.7,1.4Hz,1H),6.98(s,1H),3.90(s,2H),3.72(s,3H),3.43(s,3H)。
【0115】
13C NMR(CDCl3,125MHz): δ 171.82,157.89,155.98,151.69,151.64,142.02,141.98,135.39,129.12,128.67,125.28,122.27,118.36,117.98,117.94,113.23,112.96,110.54,106.88,35.61,33.06,32.43。
【0116】
11.2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミド(化合物38)の合成
2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)アセトアミドを用いて、前記製造例5と同様の実験方法で白色の標題化合物(8.20mg,27%)を得た。
【0117】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ8.14(d,J=8.5Hz,1H),7.86(s,1H),7.76(t,J=8.8Hz,1H),7.51(s,1H),7.27(d,J=8.2Hz,1H),7.22(dd,J=8.7,1.5Hz,1H),7.09(s,1H),3.84(s,2H),3.81(s,3H)。
【0118】
13C NMR(CDCl3,125MHz): δ 169.98,157.71,155.80,147.54,147.44,142.93,135.85,129.96,128.47,126.07,123.10,118.22,111.79,111.75,111.00,110.94,110.68,105.82,34.50,33.27。
【0119】
12.N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物6)の合成
[反応式5]
【0120】
室温で2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)酢酸(200mg,1.06mmol)のDMF(5mL)溶液を撹拌しながら、5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-アミン(197mg,1.06mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾール[4,5-b]ピリジニウム-3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU,402mg,1.06mmol)、およびトリメチルアミン(trimethylamine)(0.3mL,2.11mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。エチルアセテート(ethyl acetate)で層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(120mg,31%)を得た。
【0121】
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 7.99(m,2H),7.72(d,1H,J=12.0Hz),7.58(d,1H,J=12.0Hz),7.35(d,1H,J=8.0Hz),7.27(m,1H),7.15(m,1H),7.06(s,1H),3.87(s,2H),3.80(s,3H),2.42(s,3H)
【0122】
13.N-(5-ブロモ-6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物5)の合成
[反応式6]
【0123】
前記製造例12において、酢酸を2-(1H-インドール-3-イル)酢酸に変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(110mg,30%)を得た。
【0124】
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 8.37(s,1H),7.99(d,1H,J=12.0Hz),7.74(d,1H,J=8.0Hz),7.60(d,1H,J=8.0Hz),7.40(d,1H,J=8.0Hz),7.25(m,1H),7.16(m,1H),3.87(s,2H),3.90(s,3H),2.43(s,3H)
【0125】
14.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物43)の合成
[反応式7]
【0126】
室温で2-(1H-インドール-3-イル)酢酸(100mg,0.57mmol)のDMF(3mL)溶液を撹拌しながら、ベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(197mg,0.57mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾール[4,5-b]ピリジニウム-3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU,260mg,0.68mmol)、およびトリメチルアミン(0.16mL、1.14mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。エチルアセテートで層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(10mg,6%)を得た。
【0127】
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 8.99(s,1H),8.32(s,1H),7.80(d,1H,J=8.0Hz),7.64(d,1H,J=8.0Hz),7.56(d,1H,J=12.0Hz),7.40(m,2H),7.29(m,3H),7.16(m,1H),4.03(s,2H)
【0128】
15.N-(5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物23)の合成
[反応式8]
【0129】
前記製造例14において、アミンを5-クロロ-6-フルオロピリジン-2-アミンに変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(6mg,3%)を得た。
【0130】
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 8.14(dd,1H,J=8.0Hz and 2.0Hz),7.95(s,1H),7.75(m,1H),7.57(d,1H,J=8.0Hz),7.44(m,1H),7.24(m,2H),7.16(m,1H),3.92(s,2H)
【0131】
16.2-(1H-インドール-3-イル)-N-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アセトアミド(化合物71)の合成
[反応式9]
【0132】
前記製造例14において、アミンを3,4,5-トリメトキシアニリン(3,4,5-trimethoxyaniline)に変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(10mg,5%)を得た。
【0133】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 7.59(d,1H,J=8.0Hz),7.35(d,1H,J=8.0Hz),7.25(m,1H),7.07(m,1H),7.00(s,1H),6.97(m,1H),3.71(s,6H),3.69(s,2H),3.59(s,3H)
【0134】
17.2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アセトアミド(化合物68)の合成
[反応式10]
【0135】
室温で2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)酢酸(100mg,0.47mmol)のDMF(3mL)溶液を撹拌しながら、3,4,5-トリメトキシアニリン(87mg,0.47mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾール[4,5-b]ピリジニウム-3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU,217mg,0.57mmol)、およびトリメチルアミン(0.13mL,0.95mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。エチルアセテートで層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(10mg,5%)を得た。
【0136】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 11.12(s,1H),10.05(s,1H),7.65(d,1H,J=4.0Hz),7.38(s,1H),7.36(s,1H),7.07(m,1H),6.99(s,2H),3.72(s,6H),3.68(s,2H),3.33(s,3H)
【0137】
18.N-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物81)の合成
[反応式11]
【0138】
前記製造例14において、アミンを3,5-ジクロロアニリン(3,5-dichloroaniline)に変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(8mg,4%)を得た。
【0139】
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 8.50(s,1H),7.60(s,1H),7.55(d,1H,J=8.0Hz),7.41(d,1H,J=8.0Hz),7.30(d,1H,J=4.0Hz),7.24(m,1H),7.16(m,2H),7.01(m,1H),3.86(s,2H)
【0140】
19.2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3,5-ジクロロフェニル)アセトアミド(化合物78)の合成
[反応式12]
【0141】
前記製造例17において、アミンを3,5-ジクロロアニリンに変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(10mg,6%)を得た。
【0142】
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 8.33(s,1H),7.56(s,1H),7.36(d,1H,J=8.0Hz),7.34(d,1H,J=2.0Hz),7.30(bs,1H),7.26(m,1H),7.23(m,2H),7.06(m,1H),3.85(s,2H)
【0143】
20.2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(ピリジン-4-イル)アセトアミド(化合物88)の合成
[反応式13]
【0144】
前記製造例17において、アミンをピリジン-4-アミン(pyridin-4-amine)に変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(10mg,7%)を得た。
【0145】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 11.15(s,1H),10.49(s,1H),8.40(m,1H),7.63(d,1H,J=2.0Hz),7.57(m,1H),7.37(d,1H,J=8.0Hz),7.34(d,1H,J=4.0Hz),7.07(dd,1H,J=12.0Hz and 2.0Hz),3.72(s,6H),3.77(s,2H)
【0146】
21.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド(化合物44)の合成
[反応式14]
【0147】
室温で2-(1H-インドール-3-イル)酢酸(960mg,5.48mmol)のDMF(35mL)溶液を撹拌しながら、N-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(600mg,3.65mmol)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU,2.77g,7.31mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.55mL,14.61mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。エチルアセテートで層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(460mg,39%)を得た。
【0148】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 11.02(s,1H),7.93(m,1H),7.79(m,1H),7.57(m,1H),7.38(m,2H),7.31(m,2H),7.08(m,1H),6.98(m,1H),4.23(s,2H),3.84(s,3H)
【0149】
22.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド(化合物47)の合成
[反応式15]
【0150】
室温でN-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(100mg,0.61mmol)のCH2Cl2(12mL)溶液を撹拌しながら、トリエチルアミン(0.65mL,3.68mmol)を加え、2-(5-クロロ)-1H-インドール-3-イル)アセチルクロリド(280mg,1.23mmol)を滴加した。反応混合物を室温で1日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(30mg,7%)を得た。
【0151】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 11.22(s,1H),7.95(d,1H,J=8.0Hz),7.80(d,1H,J=8.0Hz),7.66(d,1H,J=4.0Hz),7.42(m,3H),7.31(m,1H),7.09(dd,1H,J=8.0Hz and 2.0Hz),4.25(s,2H),3.87(s,3H)
【0152】
23.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物54)の合成
[反応式16]
【0153】
室温でベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(214mg,1.43mmol)のCH 2Cl2(15mL)溶液を撹拌しながら、トリエチルアミン(0.66mL,4.75mmol)を加え、2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセチルクロリド(329mg,1.58mmol)を滴加した。反応混合物を室温で1日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(120mg,23%)を得た。
【0154】
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 8.96(s,1H),7.80(d,1H,J=8.0Hz),7.63(d,1H,J=8.0Hz),7.54(d,1H,J=8.0Hz),7.30(m,2H),7.16(m,1H),7.10(s,1H),4.01(s,2H),3.83(s,3H)
【0155】
24.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-N-メチルアセトアミド(化合物60)の合成
[反応式17]
【0156】
室温で2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)酢酸(352mg,1.83mmol)のDMF(12mL)溶液を撹拌しながら、N-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(200mg,1.22mmol)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU,923mg,2.44mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.9mL,4.87mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。エチルアセテートで層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(140mg,33%)を得た。
【0157】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 11.12(s,1H),7.95(d,1H,J=8.0Hz),7.80(d,1H,J=8.0Hz),7.37(m,5H),6.93(m,1H),4.23(s,2H),3.86(s,3H)
【0158】
25.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物56)の合成
[反応式18]
【0159】
室温で2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドール-3-イル)酢酸(300mg,1.34mmol)のDMF(13mL)溶液を撹拌しながら、ベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(161mg,1.07mmol)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU,1.02g,2.68mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.9mL,5.37mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。エチルアセテートで層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(170mg,35%)を得た。
【0160】
1H NMR(CDCl3,400MHz): δ 9.35(s,1H),7.81(d,1H,J=8.0Hz),7.65(d,1H,J=8.0Hz),7.48(m,1H),7.39(m,1H),7.25(m,3H),7.04(s,1H),3.94(s,2H),3.76(s,3H)
【0161】
26.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物64)の合成
[反応式19]
【0162】
室温で2-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)酢酸(50mg,0.25mmol)のDMF(3mL)溶液を撹拌しながら、ベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(31mg,0.20mmol)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU,196mg、0.51mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.2mL,1.04mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。エチルアセテートで層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(10mg,12%)を得た。
【0163】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 12.65(s,1H),11.10(s,1H),7.95(d,1H,J=8.0Hz),7.74(d,1H,J=8.0Hz),7.38(m,4H),7.28(m,1H),6.93(m,1H),3.90(s,2H)
【0164】
27.N-(ベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)-2-(6-クロロ-1H-インドール-3-イル)アセトアミド(化合物41)の合成
[反応式20]
【0165】
前記製造例26において、酢酸を2-(6-クロロ-1H-インドール-3-イル)酢酸に変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(6mg,3%)を得た。
【0166】
1H NMR(MeOD-d4,400MHz): δ 11.65(s,1H),11.10(s,1H),7.85(d,1H,J=8.0Hz),7.74(d,1H,J=8.0Hz),7.58(d,1H,J=8.0Hz),7.43(m,2H),7.31(m,2H),7.05(dd,1H,J=8.0Hz and 4.0Hz),4.87(s,2H)
【0167】
28.2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(チアゾール-2-イル)アセトアミド(化合物99)の合成
[反応式21]
【0168】
室温で2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)酢酸(125mg,0.49mmol)のDMF(5mL)溶液を撹拌しながら、チアゾール-2-アミン(50mg,0.59mmol)、N,N、N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU,378mg,0.99mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.4mL,2.00mmol)を順次添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。混合物に蒸留水を加えて反応を終了した。エチルアセテートで層を分離し、有機層を蒸留水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮液をカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(19mg,13%)を得た。
【0169】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 12.31(s,1H),11.18(s,1H),7.66(d,1H,J=2.0Hz),7.46(d,1H,J=4.0Hz),7.38(s,1H),7.36(m,1H),7.18(d,2H,J=4.0Hz),7.07(dd,1H,J=8.0Hz and 4.0Hz),3.84(s,2H)
【0170】
29.2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(キノリン-2-イル)アセトアミド(化合物109)の合成
[反応式22]
【0171】
前記製造例28において、アミンをキノリン-2-アミンに変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(18mg,15%)を得た。
【0172】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 11.16(s,1H),10.98(s,1H),8.30(m,1H),7.89(dd,1H,J=8.0Hz and 2.0Hz),7.82(d,1H,J=4.0Hz),7.72(m,2H),7.48(m,1H),7.40(d,1H,J=2.0Hz),7.37(d,1H,J=12.0Hz),7.07(dd,1H,J=8.0Hz and 4.0Hz),3.86(s,2H)
【0173】
30.2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[
d]チアゾール-2-イル)アセトアミド(化合物104)の合成
[反応式23]
【0174】
前記製造例28において、アミンを4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[d]チアゾール-2-アミンに変更した以外は同様な実験方法を実施し、標題化合物(19mg,17%)を得た。
【0175】
1H NMR(DMSO-d6,400MHz): δ 12.07(s,1H),11.17(s,1H),7.63(d,1H,J=4.0Hz),7.37(d,1H,J=8.0Hz and 2.0Hz),7.07(dd,1H,J=8.0Hz and 4.0Hz),3.78(s,2H),2.52(m,8H)
【0176】
前記化合物の構造式は下記の表2a~2cに示す通りであり、各化合物の分子量は表2dに示す通りである。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
実施例.化合物の活性の測定-実験プロトコル
1.化合物の探索および調製
調製した化合物の標的特異性(target specificity)を確認するために、以下の方法で評価を行った。
【0182】
DMEM-ウシ胎児血清(fetal bovine serum,FBS)10%培地で培養中のHepG2を回収し、トリパンブルー(trypan blue)染色によって生存率が97%以上であることを確認した。その後、室温で1200rpmの速度で5分間遠心分離した後、細胞をDMEM-ウシ胎児血清10%培地に3×105個/mlで再懸濁して準備した。次いで、細胞を60mmのディッシュ(dish)に3mlずつ分注し、各ディッシュにDMEM培地に希釈された5μM濃度の化合物をそれぞれ50μlずつ処理した。その後、細胞培養器(5%CO2インキュベーター)で24時間培養した。対照群では、0.05%のジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide,DMSO)/DMEM培地を50μl処理した。
【0183】
培養された細胞を回収し、mRNAサンプルを作製した。回収した細胞からmRNAを、Trizol試薬(Invitrogen,Cat No.15596018)を用いたフェノール-クロロホルム沈降法で抽出した。分離したRNAから逆転写でcDNAを合成し、CFX96(Bio-rad)検出システムでiQ SYBR-Green Supermix(Bio-rad)を用いて、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real-time PCR)でCYP1A1の発現を確認した。GAPDHを対照酵素として用いたΔΔct法で酵素発現量の相対値を比較した。対照群を用いて1倍数を設定した。
【0184】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応の結合温度(annealing temperature)を58℃とし、45回(cycle)の条件で行い、次のようなプライマー配列を用いた。ヒトCYP1A1順方向、5’-CAC CCT CAT CAG TAA TGG TCA GA-3’(配列番号1)と逆方向、5’-AAC GTG CTT ATC AGG ACC TC-3’(配列番号2);ヒトGAPDH順方向、5’-TGA TGA CAT CAA GAA GGT GG-3’(配列番号3)と逆方向、5’-TTA CTC CTT GGA GGC CAT GT-3’(配列番号4)。
【0185】
その結果、実験した化合物において対照群(vehicle)よりもCYP1A1の発現量が高いことが確認され、有意にCYP1A1の発現を誘導することが分かった(
図1及び
図2)。
【0186】
2.炎症因子IL-6の産生抑制効果
本発明による化合物のマクロファージIL-6の産生抑制効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0187】
RPMI-ウシ胎児血清(fetal bovine serum,FBS)10%+2-ME(mercaptoethanol)培地で培養中のTHP-1を回収し、トリパンブルー(trypan blue)染色により生存率が97%以上であることを確認した。その後、室温で1200rpmの速度で5分間遠心分離した後、細胞をRPMI-ウシ胎児血清10%+2-ME培地に5×105個/mlで再懸濁して準備した。次いで、細胞を24ウェルプレートに500μlずつ(1サンプル当たり3ウェルずつ)分注した。次いで、各ウェルにPMAを200ng/mlに合わせて0.5μlを処理し、RPMI+2ME培地に希釈された5μM濃度の化合物をそれぞれ10μlずつ処理した。その後、細胞培養器(5%CO2インキュベーター)で48時間培養した後、dPBSに溶かしたLPSを100ng/mlに合わせて5μlを処理し、細胞培養器(5% CO2インキュベーター)で24時間培養した。
【0188】
対照群では、0.05%のジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide,DMSO)/RPMI培地を10μl処理した。培養した細胞の培地を新しいマイクロチューブで回収し、細胞をTrizol(invitrogen)1mlで回収して-80℃で保存した。回収した培地10μl、assay diluent buffer40μlをFACS用チューブ(BD falcon)に入れてサンプルを1/5に希釈した。1サンプル当たりキャプチャービーズ(capture bead)をボルテックスした後1μl、キャプチャービーズ希釈溶液(capture bead diluent)を49μl入れて、キャプチャービーズ溶液を1サンプル当たり50μl 作った。キャプチャービーズ溶液をボルテックスで混合した後、各サンプルが入っているFACS用チューブにキャプチャービーズ溶液を50μlずつ入れ、さらにボルテックスした後、常温で1時間置いた。
【0189】
1時間後、PE検出試薬(PE detection reagent)1μl、PE検出希釈溶液(detection reagent diluent)49μlを入れて、PE検出溶液(PE detection solution)を1サンプル当たり50μl作った。ボルテックスした後、キャプチャービーズ溶液とサンプルが入っているFACS用チューブに、PE検出(PE detection)溶液を1サンプル当たり50μlずつ加えた。FACS用チューブをボルテックスした後、常温で1時間置いた。1時間後、CBA洗浄バッファー(wash buffer)を1つのチューブ当たり1mlずつ入れ、400g、5分間遠心分離した後、上清液を除去した。弱くボルテックスした後、固定バッファー(Fix buffer)を150μl入れて弱くボルテックスした後、フローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いて分析した。
【0190】
その結果、
図3及び
図4に示すように、LPS刺激によるTHP-1のIL-6の産生が化合物処理によって有意に減少した。具体的には、対照群(vehicle)の結果と比較して、本発明のすべての化合物において低い結果を示した。これは、化合物がIL-6の産生を効果的に抑制することを意味する。
【0191】
3.調節T細胞の産生効果
本発明による化合物の免疫寛容(immune tolerance)誘導効果を調べるために、以下のようにインビトロ(in vitro)調節T細胞(Foxp3+Treg)の産生実験を行った。
【0192】
ヒト末梢血液(AllCells)とリン酸緩衝食塩水(Phosphate buffered saline,PBS)を1:1の割合で混合して混合液を作り、Histopaque(Sigma)上層に混合されないようにゆっくりと上げた。350gで20分間遠心分離して中間層の単核球層のみを収集し、HBSS(Hanks' Balanced Salt Solution、Gibco(登録商標))で洗浄した。T細胞を得るためにMACSバッファー(Miltenyi Biotec)でもう一回洗浄した後、CD4マイクロビーズ(Microbeads,Miltenyi Biotec)でポジティブセレクション(positive selection,autoMACS seperator,Miltenyi Biotec)した。前記の方法で収集したT細胞をRPMI-ウシ胎児血清(fetal bovine serum,FBS)10%+2-ME(mercaptoethanol)培地に5×105/mlで再懸濁して準備した。T細胞の活性化のために10μg/mlの抗CD3(eBioscienceTM)を48ウェルプレートに150μl分注し、細胞培養器(37℃、5%CO2インキュベーター)で3時間反応させた後、リン酸緩衝食塩水で洗浄して準備した。準備したプレートに再懸濁したT細胞を250μlずつ分注し、各ウェルに抗CD28の2μg/ml(eBioscienceTM)、TGFβ-1の5ng/ml(R&D systems)、そしてIL-2の50U/ml(Miltenyi Biotec)を処理した。RPMI+2ME培地に希釈された2.5μM濃度の化合物をそれぞれ5μlずつ処理し、7日間細胞培養器(37℃、5%CO2インキュベーター)で培養した。対照群では、0.05%ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide,DMSO)/RPMI培地を5μl処理した。7日後、調節T細胞の産生効果を確認するために、培養細胞を回収してFoxp3タンパク質を確認した。
【0193】
回収した細胞を5mlのFACS用チューブ(BD Falcon)に入れ、1mlのリン酸緩衝食塩水で洗浄した。細胞を0.1mlのFACS緩衝溶液(0.1%NaN3、1%FBS)に再懸濁し、抗体の非特異的結合を防ぐために、1μgのヒト免疫グロブリンG(Human IgG,Sigma)を処理した。4℃で15分間反応させた後、FACS緩衝溶液で細胞を洗浄した。サンプルが入っているFACS用チューブに固定/透過(Fixation/Permeabilization)溶液(eBioscienceTM)を1サンプル当たり1mlずつ加え、4℃で1時間反応させた後、透過バッファー(Permeabilization buffer,eBioscienceTM)で2回洗浄した。その後、0.25μgのFoxp3モノクローナル抗体(monoclonal antibody,eBioscienceTM)を処理し、4℃で30分間染色した。透過バッファーで2回洗浄し、0.3mlのFACS緩衝溶液に懸濁した後、フローサイトメトリー(Flow cytometry)で測定した。
【0194】
その結果、実験した化合物5、8、43、40、23、26、71、81、2、44、47、56、64及び41の処理により、Foxp3+調節T細胞の産生が促進されることを確認することができた(
図5を参照)。これにより、前記化合物は調節T細胞の効果的な産生および増殖を誘導することが分かる。
【0195】
4.炎症性腸疾患の治療効果の確認
本発明による化合物の炎症性腸疾患の治療効果を調べるために、以下のようにC57BL/6マウスに炎症性腸疾患を誘導し、化合物(8、43、40、26、44、54、60)を投与してその効果を評価した(
図6~7)。
【0196】
実験0日目にDSS(Dextran sulfate sodium,MP biomedicals,Cat No.160110)を1.5%で滅菌蒸留水に溶かして調製した1.5%DSS溶液を、C57BL/6マウス(8週齢、雌、18±2g)に7日間飲用させた。1.5%DSS溶液を2日間隔で交換した。実験8日目からは滅菌蒸留水を飲用させた。実験0日目から2日間隔で体重と重症指数を測定し、炎症性腸疾患の発症の有無を確認した。
【0197】
マウス1匹当たり20mg/kgの化合物を投与容量の10%(v/v)に相当するDMSOに完全に溶かした後、最終DMSO:クレモフォールEL:リン酸緩衝食塩水(1:1:8,v/v/v)となるようにクレモフォールEL-リン酸緩衝食塩水混合物に希釈し、200μlずつ実験2日目から実験11日目まで合計10回を毎日経口投与した。炎症性腸疾患の重症指数は0~10段階に分類した重症指数体系であり、目視観察して2日間隔で記録した。
【0198】
炎症性腸疾患の症状に対しては、以下の3つの項目のスコアを合計して指数評価した(表3)。
【0199】
【0200】
分析の結果、溶媒対照群は実験6日目から体重が減少し始め、実験10日目には体重が10%以上減少し、重症指数が5以上増加し、腸炎が100%誘導されたことを確認した。溶媒対照群のマウスは、重症指数が最大値である実験10日目に重症指数7.29±2.29を示した。本発明の化合物8、43、40、26、44、54または60の20mg/kg投与群は、実験10日目には溶媒対照群に比べて統計的に有意な治療効果を示し、実験15日目には大腸の重量:長さの割合(weight:length ratio,mg/cm)の比較により、形態学的にも腸炎症を有意に抑制することを確認した(溶媒対照群に対して*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001、
図6、7参照)。本発明の化合物8、43、40、26、44、54および60は、20mg/kgの投与時に優れた炎症抑制効果を示した。
【0201】
実験15日目にマウスの大腸を摘出し、mRNAサンプルを作製した。mRNAを抽出するために、大腸組織を粉砕機(homogenizer)で粉砕して均質懸濁液を得た。均質懸濁液中のmRNAを、イージースピンTM(easy-spinTM,DNA free)トータルRNA抽出キット(Intron biotechnology,Cat No.17221)を用いたフェノール-クロロホルム沈降法で抽出した。分離したRNAから逆転写でcDNAを合成し、CFX96(Bio-rad)検出システムでiQ SYBR-Green Supermix(Bio-rad)を用いて、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real-time PCR)で炎症性サイトカインの発現を確認した。GAPDHを対照酵素として用いたΔΔct法で酵素発現量の相対値を比較した。正常マウスの大腸を対照群として用いて1倍数を設定した。
【0202】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応の結合温度(annealing temperature)を58℃とし、45回(cycle)の条件で行い、次のようなプライマー配列を用いた。
【0203】
マウスIL-1β順方向、5’-CTC GTG CTG TCG GAC CCA TAT-3’(配列番号5)と逆方向、5’-TTG AAG ACA AAC CGC TTT TCC A-3’(配列番号6)。
【0204】
マウスIL-6順方向、5’-CAT GTT CTC TGC GAA ATC GTG G-3’(配列番号7)と逆方向、5’-AAC GCA CTA GGT TTG CCG AGT A-3'(配列番号8)。
【0205】
マウスIL-17A順方向、5’-TTT AAC TCC CTT GGC GCA AAA-3’(配列番号9)と逆方向、5’-CTT TCC CTC CGC ATT GAC AC-3’(配列番号10)。
【0206】
マウスTNF-α順方向 、5’-CCA CAC CGT CAG CCG ATT TG-3’(配列番号11)と逆方向、5’-CAC CCA TTC CCT TCA CAG AGC-3’(配列番号12)。
【0207】
マウスIL-10順方向、5’-CAA GGC AGT GGA GCA GGT GAA-3’(配列番号13)と逆方向、5’-CGG AGA GAG GTA CAA ACG AGG TT-3’(配列番号14)。
【0208】
マウスFoxp3順方向、5’-CCC ATC CCC AGG AGT CTT G-3’(配列番号15)と逆方向、5’-ACC ATG ACT AGG GGC ACT GTA-3’(配列番号16)。
【0209】
マウスGAPDH順方向、5’-TTC ACC ACC ATG GAG AAG GC-3’(配列番号17)と逆方向、5’-GGC ATG GAC TGT GGT CAT GA-3’(配列番号18)。
【0210】
大腸病変内の炎症性サイトカインIL-1β、IL-6、IL-17A、TNF-αの発現量は、化合物8、40、26または54の投与により溶媒対照群に比べて有意に減少した(溶媒対照群に対して**、p<0.01;***、p<0.001、
図8参照)。大腸病変内の免疫調節因子IL-10、Foxp3の発現量は、化合物8、40、26または54の投与により溶媒対照群に比べて有意に増加した(溶媒対照群に対して***、p<0.001、
図9参照)。これらの結果から、本発明の化合物8、40、26および54は、腸内炎症因子の発現を有意に減少させるとともに、腸内免疫調節因子の発現を有意に増加させることが分かった。
【0211】
本発明による化合物の粘膜治療効果を調べるために、以下のようにC57BL/6マウスに炎症性腸疾患を誘導し、化合物(40、26、54)を投与して腸上皮障壁(epithelial braier intectriony)の回復程度を評価した。
【0212】
実験0日目にDSSを1.5%で滅菌蒸留水に溶かして調製した1.5%DSS溶液をC57BL/6マウス(8週齢、雌、18±2g)に7日間飲用させた。1.5%DSS溶液を2日間隔で交換した。実験8日目からは滅菌蒸留水を飲用させた。実験0日目から2日間隔で体重と重症指数を測定し、炎症性腸疾患の発症の有無を確認した。
【0213】
本発明による化合物40、26または54投与群では、マウス1匹当たり20mg/kgの化合物を投与容量の10%(v/v)に相当するDMSOに完全に溶かした後、最終DMSO:クレモフォールEL:リン酸緩衝食塩水(1:1:8、v/v/v)となるようにクレモフォールEL-リン酸緩衝食塩水混合物に希釈し、200μlずつ実験2日目から実験9日目まで合計8回毎日経口投与した。
【0214】
FITC-デキストラン投与の1日前にマウスを一晩断水した。実験10日目にFITC-デキストラン(Fluorescein isothiocyanate-dextran,Sigma aldrich,Cat No.FD40)600mg/kgをリン酸緩衝食塩水に希釈して200μlで1回経口投与した。経口投与4時間後、心臓から抽出した血清中の蛍光度(fluorometer,excitation 485-490nm,emission 528-530nm)を測定した。
【0215】
血清FITC-デキストランは、化合物40、26または54の投与により溶媒対照群に比べて有意に減少した(溶媒対照群に対して***、p<0.001、
図10参照)。この結果から、本発明の化合物40、26および54は有意な粘膜治療効果を示すことが分かった。
【0216】
前述のように、本発明の化合物8、43、40、26、44、54および60は、炎症性腸疾患マウスモデルにおいて経口投与治療効果を有するので、新規の炎症性腸疾患の経口治療薬として有用な治療戦略を提示することができる。
【0217】
5.炎症誘導大腸癌の予防効果の確認
本発明による化合物の炎症誘導大腸癌の予防効果を調べるために、以下のようにC57BL/6マウスのAOM/DSS誘導大腸癌マウスモデルに化合物40および26を投与し、その効果を評価した(
図11)。発癌物質であるAOM(azoxymethane)はマウスへの単独投与によっては大腸癌を発生させないが、DSSで炎症を追加すると大腸癌が発生する。
【0218】
AOM(Sigma aldrich,Cat No.A5486)を10mg/kgとなるように生理食塩水で希釈し、200μlずつ7日間隔(実験0、7、14日)で合計3回腹腔投与した。実験7日目にDSSを1.5%で滅菌蒸留水に溶かして調製した1.5%DSS溶液をC57BL/6マウス(8週齢、雌、18±2g)に7日間飲用させた。1.5%DSS溶液は2日間隔で交換した。実験8日目からは滅菌蒸留水を飲用させた。
【0219】
本発明による化合物40および26投与群では、マウス1匹当たり20mg/kgの化合物を投与容量の10%(v/v)に相当するDMSOに完全に溶かした後、最終DMSO:クレモフォールEL:リン酸緩衝食塩水(1:1:8、v/v/v)となるようにクレモフォールEL-リン酸緩衝食塩水混合物に希釈し、200μlずつ実験7日目から実験21日目まで合計14回毎日経口投与した。溶媒対照群の体重が最高点となる実験56日と比較して15%減少する時点で化合物の大腸癌予防効果を確認した。
【0220】
実験93日目にマウスの大腸を摘出し、大腸内腫瘍の発生を確認した。大腸内腫瘍の数は、溶媒対照群の場合は11.33±4.33、化合物40の場合は3.00±2.00、化合物26の場合は3.17±1.17であり、化合物40および26投与により溶媒対照群に比べて腫瘍数が有意に減少した(溶媒対照群に対して**、p<0.01、
図11参照)。
【0221】
前述のように、本発明の化合物40及び26は、炎症誘導大腸癌の発生抑制効果を有するので、大腸癌の予防効果を有する新規の炎症性腸疾患の経口治療剤として有用な治療戦略を提示することができる。
【0222】
6.多発性硬化症の治療効果の確認
本発明による化合物の多発性硬化症の治療効果を調べるために、以下のようにC57BL/6マウスに自己免疫脳脊髄炎(EAE)を誘導し、化合物(8、43、40、26)を投与してその効果を評価した(
図12~14)。
【0223】
実験0日目にミエリン希突起膠細胞糖タンパク質35-55(myelin oligodendrocyte glycoprotein 35-55,MOG 35-55,Peptron)(200μg)、熱処理マイコバクテリウム・ツベルクローシス死菌体(heat killed Mycobacterium tuberculosis,Difco,Cat No.231141)(500μg)、アジュバント(Complete Freund's adjuvant,Sigma aldrich,Cat No.F5506)を混合して7分間浸水した。浸水したペプチドをC57BL/6マウス(7週齢、雌、17±2g)の両脇腹(flank)にそれぞれ100μl皮下注射(subcutaneous injection)した後、百日咳毒素(pertussis toxin,Sigma aldrich,Cat No.P298)(200ng)100μlを尾部に静脈投与した。
【0224】
実験2日目に同量の百日咳毒素を静脈投与した。マウスの注入部位にイマージョン(immersion)が漏れて出るかを確認し、実験7日目から目視観察して多発性硬化症の発症の有無を確認した。
【0225】
化合物8、43、40および26処理群では、マウス1匹当たり20mg/kgの化合物を投与容量の10%(v/v)に相当するDMSOに完全に溶かした後、最終DMSO:クレモフォールEL:リン酸緩衝食塩水(1:1:8、v/v/v)となるようにクレモフォールEL-リン酸緩衝食塩水混合物に希釈し、200μlずつ実験12日目から実験17日目まで合計6回毎日腹腔投与した。多発性硬化症指数は実験7日目から0~5段階に分類した重症指数体系であり、目視観察して2日間隔で記録した。自己免疫脳脊髄炎の症状は以下の項目に従って指数評価した(表4参照)。
【0226】
【0227】
分析の結果、全ての実験群は実験7日目から多発性硬化症が発症し、実験18日目には重症指数3.0以上の急性反応が100%誘導されたことを確認した。
【0228】
溶媒対照群のマウスの重症指数は、急性反応期間である実験18日目には3.33±0.17、慢性反応期間である実験36日目には3.33±0.17を示した。さらに、溶媒対照群では再発寛解パータン(relapse-remitting pattern)を示し、実験の全期間にわたって高い重症指数を示した。
【0229】
これに対して、化合物処理群の重症指数は、実験18日目には化合物8処理群1.17±0.56、化合物43処理群1.83±0.17、化合物40処理群1.17±0.22、化合物26処理群1.33±0.56であり、実験36日目には化合物8処理群1.17±0.56、化合物43処理群2.00±0.33、化合物40処理群1.33±0.62、化合物26処理群1.33±0.22であり、溶媒対照群に比べて緩和された急性反応と慢性反応治療効果を示した。
【0230】
また、化合物8、43、40および26処理群では、実験16日目から溶媒対照群に比べて統計的に有意な治療効果が確認され、投与中断後も溶媒対照群に比べて統計的に有意な治療効果を維持した(溶媒対照群に対して***、p<0.001、
図12参照)。これにより、マウスに20mg/kgの投与時に優れた初期治療及び持続的な再発防止効果を示すことを確認できる。
【0231】
実験42日目にマウスの脊髄を摘出し、mRNAサンプルを作製した。mRNAを抽出するために、脊髄組織を粉砕機(homogenizer)で粉砕して均質懸濁液を得た。均質懸濁液中のmRNAを、Trizol試薬(Invitrogen,Cat No.15596018)を用いたフェノール-クロロホルム沈降法で抽出した。分離したRNAから逆転写でcDNAを合成し、CFX96(Bio-rad)検出システムでiQ SYBR-Green Supermix(Bio-rad)を用いて、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real-time PCR)で炎症性サイトカインの発現を確認した。GAPDHを対照酵素として用いたΔΔct法で酵素発現量の相対値を比較した。WTマウスの脊髄を対照群として用いて1倍数を設定した。
【0232】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応の結合温度(annealing temperature)を58℃とし、45回(cycle)の条件で行い、次のようなプライマー配列を用いた。
【0233】
マウスIFN-γ順方向、5’-ATG AAC GCT ACA CAC TGC ATC-3''(配列番号19)と逆方向、5’-CCA TCC TTT TGC CAG TTC CTC-3''(配列番号20)。
マウスIL-17A順方向、5’-TTT AAC TCC CTT GGC GCA AAA-3''(配列番号21)と逆方向、5’-CTT TCC CTC CGC ATT GAC AC-3''(配列番号22)。
マウスIL-1β順方向、5’-CTC GTG CTG TCG GAC CCA TAT-3''(配列番号23)と逆方向、5’-TTG AAG ACA AAC CGC TTT TCC A-3''(配列番号24)。
マウスGAPDH順方向、5’-TTC ACC ACC ATG GAG AAG GC-3''(配列番号25)と逆方向、5’-GGC ATG GAC TGT GGT CAT GA-3''(配列番号26)。
マウスIL-10順方向、5’-CAA GGC AGT GGA GCA GGT GAA-3'(配列番号27)と逆方向、5’-CGG AGA GAG GTA CAA ACG AGG TT-3''(配列番号28)。
マウスFoxp3順方向、5’-CCC ATC CCC AGG AGT CTT G-3''(配列番号29)と逆方向、5’-ACC ATG ACT AGG GGC ACT GTA-3''(配列番号30)。
【0234】
また、脊髄病変内の炎症性サイトカインIFN-γ、IL-17A、IL-1βの発現量が8、43、40および26化合物の投与により溶媒対照群に比べて有意に減少した(溶媒対照群に対して*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001、
図13参照)。脊髄病変内の免疫調節因子IL-10、Foxp3の発現量は、8、43、40および26化合物の投与により溶媒対照群に比べて有意に増加した(溶媒対照群に対して*、p<0.05;**、p<0.01、
図14参照)。
【0235】
前述のように、本発明の化合物8、43、40および26は、多発性硬化症マウスモデルにおいて治療効果を有するとともに投与中断後も再発防止効果が持続するので、新規の多発性硬化症の経口治療薬として有用な治療戦略を提示することができる。
【0236】
7.移植片対宿主疾患の治療効果の確認
本発明による化合物の移植片対宿主疾患(Graft versus host disease,GVHD)の抑制効果を調べるために、以下のようにC57BL/6マウスに同種骨髄移植で急性移植片対宿主疾患を誘導し、化合物(40、26)を投与してその効果を評価した(
図15~16)。
【0237】
Balb/c IFN-γノックアウトマウス(8~12週齢、雌、18±3g)の脾臓(spleen)を摘出し、RPMI培地を加えて粉砕した後、40μmのセルストライナー(BD Falcon)に通して単一細胞懸濁液(single cell suspension)を得た。単一細胞懸濁液は遠心分離(1200rpm、5分)後に上清液を捨て、ACK(塩化アンモニウム/重炭酸カリウム(ammonium chloride/potassium bicarbonate))溶解バッファー(lysis buffer)(0.15M NH4Cl,1mM KHCO3,0.1mM Na2EDTA)1mlを加えて1分間撹拌し、RPMI培地で洗浄した。
【0238】
細胞懸濁液は、遠心分離後、マウスCD90.2マイクロビーズ(Miltenyi Biotec,Cat No.130-121-278)に4℃、20分間反応させた。反応が終了した細胞懸濁液をautoMACS(登録商標)ランニングバッファー(Running Buffer,Miltenyi Biotec,Cat No.130-091-221)10mlで遠心分離して洗浄した後、autoMACS(登録商標)ランニングバッファー3mlで再懸濁した。autoMACS pro(Miltenyi Biotec)を用いて、細胞懸濁液からCD90.2+T細胞を得た(positive selection)。得られたCD90.2+T細胞と共に移植される骨髄細胞を得るために、正常(wild-type)Balb/cマウス(8~12週齢、雌、18±3g)の両側大腿骨および脛骨を無菌的に得た。大腿骨と脛骨の先端を切り、骨組織に注射器(大腿骨21G、脛骨26G)でRPMI培地を灌流させて骨髄を抽出した。抽出した骨髄を40μmのセルストライナーに通して単一細胞懸濁液を得た。
【0239】
骨髄単一細胞懸濁液は、遠心分離後に上清液を捨て、ACK溶解バッファー(lysis buffer)500μlを加えて30秒間撹拌し、RPMI培地で洗浄した。遠心分離後、マウスCD90.2マイクロビーズに4℃、20分間反応させた。反応が終了した細胞懸濁液をautoMACS(登録商標)ランニングバッファー10mlで遠心分離して洗浄した後、autoMACS(登録商標)ランニングバッファー3mlで再懸濁した。細胞懸濁液からAutoMACS proによりCD90.2-T細胞除去骨髄細胞(T cell-depleted bone marrow cells,TCD-BMs)を得た(negative selection)。得られたIFN-γノックアウトCD90.2+T細胞と正常TCD-BMをリン酸緩衝食塩水で洗浄した。T細胞は1×107/mlで、TCD-BMsは5×107/mlでリン酸緩衝食塩水に再懸濁して準備した。
【0240】
正常C57BL/6マウス(9~11週齢、雌、19±3g)に放射線照射器を用いて850cGyの放射線を3時間間隔で二分割して照射した。準備したCD90.2+T細胞とTCD-BMを1:1の割合で混合して作製した移植片を100μlずつC57BL/6マウスの尾静脈を介して注入した。本発明による化合物40または26投与群では、マウス1匹当たり20mg/kgの化合物を投与容量の10%(v/v)に相当するDMSOに完全に溶かした後、最終DMSO:クレモフォールEL:リン酸緩衝食塩水(1:1:8、v/v/v)となるようにクレモフォールEL-リン酸緩衝食塩水混合物に希釈し、200μlずつ移植後4日目から9日目まで合計6回毎日腹腔投与した。移植片対宿主病の重症指数は、体重減少、毛の状態、姿勢、活動性、皮膚の変化を各項目ごとに0~2点ずつ合計10点に分類した重症指数体系であり、目視観察して2日間隔で評価した。
【0241】
分析の結果、溶媒対照群のマウスは、重症指数が移植後7日目に4.12±1.20となり、移植片対宿主疾患が100%誘導された。移植後14日目には、溶媒対照群6.20±1.20、化合物40処理群0.60±0.60、化合物26処理群2.80±0.80となり、溶媒対照群に比べて有意に緩和された移植片対宿主疾患の治療効果を示した(溶媒対照群に対して***、p<0.001、
図15参照)。
【0242】
実験15日目にマウスの肺を摘出し、mRNAサンプルを作製した。mRNAを抽出するために、脊髄組織を粉砕機(homogenizer)で粉砕して均質懸濁液を得た。均質懸濁液中のmRNAを、Trizol試薬(Invitrogen,Cat No.15596018)を用いたフェノール-クロロホルム沈降法で抽出した。分離したRNAから逆転写でcDNAを合成し、CFX96(Bio-rad)検出システムでiQ SYBR-Green Supermix(Bio-rad)を用いて、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real-time PCR)で炎症性サイトカインの発現を確認した。GAPDHを対照酵素として用いたΔΔct法で酵素発現量の相対値を比較した。正常マウスの脊髄を対照群として用いて1倍数を設定した。
【0243】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応の結合温度(annealing temperature)を58℃とし、45回(cycle)の条件で行い、次のようなプライマー配列を用いた。
【0244】
マウスIL-17A順方向、5’-TTT AAC TCC CTT GGC GCA AAA-3’(配列番号31)と逆方向、5’-CTT TCC CTC CGC ATT GAC AC-3’(配列番号32)。
マウスIL-6順方向、5’-CAT GTT CTC TGC GAA ATC GTG G-3’(配列番号33)と逆方向、5’-AAC GCA CTA GGT TTG CCG AGT A-3’(配列番号34)。
マウスIL-10順方向、5’-CAA GGC AGT GGA GCA GGT GAA-3’(配列番号35)と逆方向、5’-CGG AGA GAG GTA CAA ACG AGG TT-3’(配列番号36)。
マウスGAPDH順方向、5’-TTC ACC ACC ATG GAG AAG GC-3’(配列番号37)と逆方向、5’-GGC ATG GAC TGT GGT CAT GA-3’(配列番号38)。
【0245】
肺組織内の炎症性サイトカインIL-6、IL-17Aの発現量は、化合物40および26の投与により溶媒対照群に比べて有意に減少した。肺組織内の免疫調節因子IL-10の発現量は、化合物40および26の投与により溶媒対照群に比べて有意に増加した(溶媒対照群に対して**、p<0.01;***、p<0.001、
図16参照)。
【0246】
前述のように、本発明の化合物40および26は、移植片対宿主疾患マウスモデルにおいて治療効果を有するとともに免疫調節因子の増加によって投与停止後も治療効果が持続するので、新規の移植片対宿主疾患の経口治療薬として有用な治療戦略を提示することができる。
【配列表】