(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】監視システムおよび監視システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20231020BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20231020BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20231020BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20231020BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231020BHJP
C09D 1/06 20060101ALI20231020BHJP
E04G 23/02 20060101ALN20231020BHJP
【FI】
G01L1/20 Z
C09D5/24
C09D5/02
C09D163/00
C09D7/61
C09D1/06
E04G23/02
(21)【出願番号】P 2022567811
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(86)【国際出願番号】 CN2022090679
(87)【国際公開番号】W WO2022223050
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】202111530448.0
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521291909
【氏名又は名称】青島理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No. 11, Fushun Road, Shibei District Qingdao, Shandong 266033, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼博
(72)【発明者】
【氏名】金祖▲権▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲雲▼▲昇▼
(72)【発明者】
【氏名】王▲鵬▼▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】于泳
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼小影
(72)【発明者】
【氏名】熊▲傳▼▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】李▲寧▼
(72)【発明者】
【氏名】李▲夢▼▲園▼
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-012014(JP,A)
【文献】特開2020-026565(JP,A)
【文献】特表2018-523815(JP,A)
【文献】特開2019-106285(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220404(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1569423(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103557989(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108871180(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105506645(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112047675(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106587758(CN,A)
【文献】Emma Qingnan Zhang and Luping Tang,Rechargable Concrete Battery,Buildings,スイス,MDPI,2021年03月09日,Volume 11, Issue 3, 103,pp.1-14,https://doi.org/10.3390/buildings11030103
【文献】Ma Jiachen、福山智子、金侖美,炭素繊維を混和したセメントペーストの圧電特性に関する基礎的検討,歴史都市防災論文集,日本,立命館大学歴史都市防災研究所,2021年07月,Vol.15,pp.45-50,https://r-dmuch.jp/results/papers/
【文献】D. D. L. Chung,Self-sensing concrete: from resisitance-based sensing to capacitance-based sensing,International Journal of Smart and Nano Materials,英国,Taylor & Francis,2020年11月26日,Volume 12, No.1,pp.1-19,https://doi.org/10.1080/19475411.2020.1843560
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26,5/00-5/28,25/00,
G01D 1/00-21/02,
G01B 7/00-7/34,21/00-21/32,
G01M 1/00-99/00,
G01N 3/00,27/00,33/00,
C04B 2/00-32/02,40/00-40/06
C09D 1/00-10/00,101/00-201/10,
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築の歪みを監視するためのエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティング
と、電流回路を形成し、当該電流回路の電流信号を歪みとして監視する監視装置とを含む監視システムであって、前記コーティングは、順に設けられた、正極コーティングと、電解質コーティングと、負極コーティングと、を含み、正極コーティングと、電解質コーティングと、負極コーティングはそれぞれ以下の質量百分率の成分を含み、
正極コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~80%、正極フィラー1~10%、導電性フィラー1~20%及び水10~50%を含み、
電解質コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~70%、無機アルカリ10~30%、導電性フィラー1~20%及び水10~40%を含み、
負極コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~80%、負極フィラー1~10%、導電性フィラー1~20%及び水10~50%を含む、
ことを特徴とする建築の歪みを監視するための
監視システム。
【請求項2】
前記水性エポキシ樹脂は、アニオン性水性エポキシ樹脂、カチオン性水性エポキシ樹脂及び非イオン性水性エポキシ樹脂のうちの一種又は複数種の混合物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の
監視システム。
【請求項3】
前記セメントは、ポルトランドセメント、普通のポルトランドセメント、スラグケイ酸塩セメント、火山灰石ポルトランドセメント、フライアッシュケイ酸塩セメント、複合ケイ酸塩セメント、G級油井セメント、早強ポルトランドセメント、道路ケイ酸塩セメント、アルミネートセメント及びスルホアルミン酸塩セメントのうちの一種又は複数種の混合物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の
監視システム。
【請求項4】
前記正極フィラーは、酸化ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル粉末のうちの一種又は複数種の混合物であり、
前記負極フィラーは、鉄粉、四酸化三鉄及び酸化鉄のうちの一種又は複数種の混合物であり、
前記無機アルカリは、カリウム粉末、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムのうちの一種又は複数種の混合物であ
る、
ことを特徴とする請求項1に記載の
監視システム。
【請求項5】
前記導電性フィラーは、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン及びカーボンナノチューブのうちの一種又は複数種の混合物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の
監視システム。
【請求項6】
建築の歪みを監視するためのエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティング
と、電流回路を形成し、当該電流回路の電流信号を歪みとして監視する監視装置とを含む監視システムの製造方法であって、
配合比率に応じて水性エポキシ樹脂、導電性フィラー、水、正極フィラー、無機アルカリ及び負極フィラーを秤量し、それぞれ均一に撹拌混合して正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを形成するステップ1と、
配合比率に応じて正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーをそれぞれセメントに添加し、均一に撹拌してそれぞれ正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを形成するステップ2と、
前記正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを内層、中層、外層に応じて層ごとに既存の建築構造の表面にナイフ塗布又はスプレーし、正極コーティング、電解質コーティング及び負極コーティングを形成し、養生した後に硬化して充放電可能なセメント基微小変化監視コーティングを形成するステップ3と、を含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の
監視システムの製造方法。
【請求項7】
前記ステップ3において、養生は具体的には散水養生又は被膜養生であり、養生温度は0~50℃であり、養生時間は3~7日間である、
ことを特徴とする請求項6に記載の
監視システムの製造方法。
【請求項8】
前記セメント系微小変化監視コーティングの厚さは0.3~30mmであり、前記正極コーティング、前記電解質コーティング及び前記負極コーティングの厚さはいずれも0.1~10mmである、
ことを特徴とする請求項6に記載の
監視システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの技術分野に属し、具体的には建築の歪みを監視するためのエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造の健康に関する監視はコンクリートの早期破壊を発見しかつ検査することに役立ち、橋・トンネル構造などの大型インフラストラクチャの安全供用及び重大な地質災害の予防制御に対して非常に重要である。近年、圧電、ピエゾ抵抗、磁気抵抗、光学及び音響効果に基づく様々な応力及び歪みセンサの監視システムが相次いで登場し、センサをコンクリート構造に埋め込むことにより構造歪みに対する長期的監視を予め実現することができる。ここで、ピエゾ抵抗型センサは、静電荷及び磁界などの外部の外乱信号の影響を受けず、供用の安定性が信頼できる。しかし、従来の金属又はポリマーセンサの構造監視に応用することは、その構造コストが高く、耐久性が不足かつコンクリートとの適合性が低いなどの短所による制限がある。したがって、セメント系センサが登場した。セメント系センサは、セメントマトリックスと導電性フィラーが複合して形成されたピエゾ抵抗効果を有するセンサであり、その弾性変形段階で応力、歪みにより規則的な抵抗値変化が発生し、外接測定回路により応力又は歪みに正比例する電気信号を取得することができる。セメント系センサはコンクリート構造との互換性が高く、価格が低いという利点を有するだけでなく、コンクリートの延性及び耐久性を向上させることができる。その自己抵抗効果に基づいてコンクリートの応力-歪みを取得することができ、それによりそれが嵌め込まれたコンクリート構造の変形と荷重を監視するという目的を達成する。
【0003】
しかしながら、セメント系センサの剛性が大きく、歪み範囲が小さく、監視範囲が狭く、性能が不安定(信号対雑音比が小さく、変動が大きい)で、その監視性能は導電性フィラーの凝集効果、スラリーのレオロジー性能、イオンの極化効果及び監視方式などの多くの要因の制約及び影響を受ける。より重要なことは、現在のセメント系センサ監視技術は、主に外部回路に基づいて給電することであり、このような解決手段は、低炭素の持続可能な発展に不利であり、かつ塩アルカリの侵食、乾湿凍結融解などの過酷な環境における長距離、大断面の橋・トンネル構造に対して、回路の保守交換はまだ完全な持続可能、循環自己感知診断技術に欠けている。
【0004】
現在、セメント系センサの製造と応用開発には、以下のいくつかの核心問題が存在する。1.監視範囲が狭く、亀裂やすく、腐食しやすい。2.受動的防護が主であり、エネルギー貯蔵及び能動的防護機能がない。3.事前埋設/非損傷配置であり、交換しにくく、操作が複雑である。4.受動的防護を主とし、エネルギー貯蔵及び能動的防護機能がない。最後に、センサとマトリックスとの界面接着力も構造の健康効果の安定検出を決定する必要の要件であり、センサとマトリックスが脱離すると信号伝達が遮断され、監視が無効になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、建築の健康監視に用いられるエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティングを提供することであり、現在のセメント系センサを予め埋設して取り付ける必要があることを解決するために用いられ、外部給電を継続する必要があり、建築内の鉄筋に保護を提供することができず、マトリックスとの接着強度が低く、かつ検出範囲が狭く、既存の異形構造に対して歪み監視を実現することができないという問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0007】
建築の歪みを監視するための監視システム及びその製造方法である。
【0008】
コーティングは、順に設けられた、正極コーティングと、電解質コーティングと、負極コーティングを含み、正極コーティング、電解質コーティング及び負極コーティングはそれぞれ以下の質量百分率の成分を含む。正極コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~80%、正極フィラー1~10%、導電性フィラー1~20%及び水10~50%を含み、電解質コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~70%、無機アルカリ10~30%、導電性フィラー1~20%及び水10~40%を含み、負極コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~80%、負極フィラー1~10%、導電性フィラー1~20%及び水10~50%を含む。
【0009】
製造方法は、以下のように、配合比率に応じて水性エポキシ樹脂、導電性フィラー、水、正極フィラー、無機アルカリ及び負極フィラーを秤量し、それぞれ均一に撹拌し混合して正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを形成するステップ1と、配合比率に応じて前記正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーをそれぞれセメントに添加し、均一に撹拌してそれぞれ正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを形成するステップ2と、前記正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを内層、中層、外層に応じて層ごとに既存の建築構造の表面にナイフ塗布又はスプレーし、正極塗層、電解質塗層及び負極塗層を形成し、養生した後に硬化して充放電可能なセメント基微小変化監視コーティングを形成するステップ3と、を含む。
【0010】
有益な効果:
1)セメント系微小変化監視コーティングは、既存のコンクリート建築の微小な歪みを監視することができ、圧力抵抗性能が安定し、緩和が低く、歪み測定が広く、ハケ塗りにより舗装することができる。
2)水性エポキシ樹脂を添加することによりセメント系コーティングの強化、延長及び接着強度の向上を実現する。セメント系微小変化監視コーティングは、薄層塗装の条件で亀裂せず、反りがなく、変形しなく、コーティングと旧コンクリート界面接着強度は2.6Mpaに達することができる。
3)三層コーティングはガルバニ電池を構成し、能動的にエネルギーを貯蔵することができるだけでなく、炭素の中和と持続可能な発展に役立ち、放電過程で正極材料(内層)を能動的に保護し、コーティングのコンクリート内部の鉄筋に対する保護作用を増加させることができる。
4)水性エポキシ樹脂によりセメント弾性段階の限界引張~圧縮歪みを顕著に増加させ、セメント系センサの監視帯域幅と構造歪みの監視範囲を顕著に増加させる。
5)既存の建築構造に対する非破壊化監視を実現することができる。建築の外部塗装解決手段によりセンサを敷設し、既存の建築構造を掘削し、破壊しかつセンサを内蔵する必要がない。
6)古い・破損構造センサに対する非破壊化更新の置き換えを実現することができる。交換対象領域のセンサコーティングを除去しかつ電極を改めて貼り付けるか又はセンサコーティングを塗布すれば更新交換を完了することができ、既存の建築構造に損傷をつけない。
7)異形表面の既存構造及び構造立面、底面に対する監視配置を実現することができる。従来の音響、光学などのセンサは、異形表面に配置することができず、打設式電極は建築の立面、底面に敷設することもできず、本発明のセメント系微小変化監視コーティングは、既存の建築構造にスプレーするだけで異形面、立面、底面の構造の健康監視を実現することができる。
8)既存の建築構造の耐圧、耐折、抗折、角度拡張、徐変、沈降、疲労、開裂に対する連続的な監視を実現することができる。従来のコンクリート健康監視装置の監視範囲が限られ、一種または複数種の建築の供用環境のみを監視することができ、本発明の提供するセメント系微小変化監視コーティングは、受力面、梁体の底面、柱体の側面、リンク部材のインタフェース等の様々な受力面に塗布することにより、複数種の建築の供用環境を同時にリアルタイムに監視することができる。
9)コーティングで構成された素電池は、自己監視給電であってもよく、風力エネルギー、太陽エネルギー、潮力エネルギーなどの不安定な充電装置を結合して持続的な自己監視感知装置を形成することができる。
10)本発明の提供する建築の歪みを監視するためのエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティングの製造方法は、解決手段が成熟し、プロセスが簡単であり、監視範囲を最大限に向上させかつ貴重な導電フィラーの利用率を向上させ、既存のコンクリート構造の耐久性を効果的に向上させることができ、国の長期的持続可能な発展戦略に合致する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1で製造されたセメント基微小変化監視コーティングがコンクリート試験片に塗布されたサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【
図2】実施例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリート試験ブロックに塗布し、充電した後に持続的に放電する電圧値の時間変化曲線である。
【
図3】実施例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布し、セメント系微小変化監視コーティング(センサ)信号と試験ブロックが循環荷重圧力の相関データである。
【
図4】実施例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布し、試験ブロックが循環荷重圧力を受けて亀裂して破壊されるまでのセメント系微小変化監視コーティング(センサ)の信号変化であり、ここで、マトリックスが18000分間テストする時に亀裂が発生する。
【
図5】実施例1におけるコンクリート梁体の曲げ破壊過程において、部材の下表面に塗布されたセメント基微小変化監視コーティング(センサ)信号が梁体のたわみに亀裂破壊が発生するまで増加する連続検出過程であり、梁体が曲げ箇所で破断する過程での応力-歪み曲線及びセメント基微小変化監視コーティングの監視信号曲線である。
【
図6】実施例2において、コンクリート梁体の曲げ破壊過程において、部材の下表面に塗布されたセメント基微小変化監視コーティング(センサ)信号が梁体のたわみに亀裂破壊が発生するまで増加する連続検出過程であり、梁体が曲げ箇所で破断する過程での応力-歪み曲線及びセメント基微小変化監視コーティングの監視信号曲線である。
【
図7】実施例3において、コンクリート梁体の曲げ破壊過程において、部材の下表面に塗布されたセメント基微小変化監視コーティング(センサ)信号が梁体のたわみに亀裂破壊が発生するまで増加する連続検出過程であり、梁体が曲げ箇所で破断する過程での応力-歪み曲線及びセメント基微小変化監視コーティングの監視信号曲線である。
【
図8】実施例4において、コンクリート梁体の曲げ破壊過程において、部材の下表面に塗布されたセメント基微小変化監視コーティング(センサ)信号が梁体のたわみに亀裂破壊が発生するまで増加する連続検出過程であり、梁体が曲げ箇所で破断する過程での応力-歪み曲線及びセメント基微小変化監視コーティングの監視信号曲線である。
【
図9】比較例1において、セメント系微小変化監視コーティングがコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布され、試験ブロックが循環荷重圧力を受けて亀裂して破壊されるまでのセメント系微小変化監視コーティング(センサ)信号の変化である。
【
図10】比較例2において、セメント系微小変化監視コーティングがコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布され、試験ブロックが循環荷重圧力を受けて亀裂して破壊されるまでのセメント系微小変化監視コーティング(センサ)信号の変化である。
【
図11】比較例3において、セメント系微小変化監視コーティングがコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布され、試験ブロックが循環荷重圧力を受けて亀裂して破壊されるまでのセメント系微小変化監視コーティング(センサ)信号の変化である。
【
図12】エネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティングと導電電極と既存建築との間の接続構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、建築の歪みを監視するためのセメント系導電性材料及びセメント系センサを提供し、水性エポキシ樹脂とセメントコンクリートを主な原料とし、導電性フィラー、適量の水を配合し、均一に撹拌した後にブラシで既存の建築構造の表面に塗布又はスプレー塗装し、建築表面に配置された導電性電極と接続された監視装置により電流回路を形成する。建築物が荷重を受けて歪みを生成する又は亀裂が発生する場合に表面コーティングに作用し、異なる電流信号を生成し、それにより既存の建築のリアルタイム健康監視を実現する。本発明により製造されたセメント系インテリジェント防護コーティングはコンクリートの応力-歪みをリアルタイムに取得することにより、コンクリート構造の変形、荷重及び亀裂を監視する目的を達成し、コンクリート構造との互換性が高く、価格が低いという利点を有するだけでなく、外界の二酸化炭素、雨水、塩溶液などの有害な媒体のコンクリートに対する浸食作用を阻害し、既存の建築の供用耐用年数を顕著に延長することができる。該監視コーティングは、信号の信号対雑音比が高く、緩和現象が小さく、監視性能が安定し、かつ敷設プロセスが簡単であり、マトリックスとの接着強度が高く、任意の異形構造の表面に敷設することができ、良好な経済的利益と長い社会的利益を有し、応用の将来性が非常に広い。
【0013】
本発明のセメント系微小変化の監視コーティングは抵抗性能が安定し、緩和が低く、歪みの測定範囲が広く、ハケ塗りにより舗装することができる新規な水性エポキシ樹脂-セメント系複合コーティング式センサである。このようなピエゾ抵抗センサは水性エポキシ樹脂とセメントマトリックスで形成されたネットワーク相互貫入構造により、導電性フィラーの分散性と連通性を調整し、かつセメント系イオンパーコレーション性能と分極現象をバランスさせる。同時に、水性エポキシ樹脂は、連続空間グリッドとしてセンサの弾性段階の柔軟性、不凍性及びコンクリートマトリックスとの接着性能を大幅に向上させ、構造応力歪み及び亀裂過程を持続的に監視すると同時に、構造の不凍性、耐乾性循環侵食等の耐久性能を大幅に向上させる。市場のコンクリート構造の監視に対する需要を満たす。
【0014】
本発明のセメント系微小変化監視コーティングは、ニッケル鉄系原電池の原理に基づいて、その正極はニッケル系材料であり、負極は鉄系材料であり、電解質(電解液)はアルカリ金属又はアルカリ金属の水酸化物である。それは主に長時間、中電流の場合に用いられる充電式電池である。ニッケル鉄電池はある程度の使用事故(過充電、過放電、短絡、過熱を含む)に耐えることができ、かつ上記損害を受けた後に依然として長い耐用年数を保持することができる。本発明のセメント系微小変化監視コーティングの耐用年数が長く、20~30年に達することができ、85年保存した後に依然として使用することができる。15000回のサイクル後に、容量はさらに80%を維持することができる。ニッケル鉄電池は、非常に優れた耐衝撃性、過放電能力を有する。かつこのような充放電解決手段はアルカリ性環境であり、コンクリートの水和環境と鉄筋の不動態化環境に非常に合致する。また、コーティングの放電過程において、内層の正極コーティングは、素電池の保護電極となり、内部コンクリートと鉄筋に能動的な防護機能を提供する。その以外に、コーティングで構成された素電池は、自己監視給電であってもよく、風力エネルギー、太陽エネルギー、潮力エネルギーなどの不安定な充電装置を結合して持続的な自己監視感知装置を形成することができる。
【0015】
また、本発明の提供する建築の歪みの監視に用いられるエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティングの製造方法であって、該製造方法はプロセスが簡単であり、既存のコンクリート構造の耐久性を効果的に向上させることができ、国の長期の持続可能発展戦略に合致する。
【0016】
本発明の提供する建築の歪みの監視に用いられるエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティングであって、コーティングは、正極コーティングと、電解質コーティングと、負極コーティングという三層コーティングを含む。正極コーティング、電解質コーティング及び負極コーティング材料は、具体的には以下の質量百分率の成分を含む。
【0017】
内層の正極コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~80%、正極フィラー1~10%、導電性フィラー1~20%及び水10~50%を含む。
【0018】
中層の電解質コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~70%、無機アルカリ10~30%、導電性フィラー1~20%及び水10~40%を含む。
【0019】
外層の負極コーティングは、水性エポキシ樹脂5~50%、セメント20~80%、負極フィラー1~10%、導電性フィラー1~20%及び水10~50%を含む。
【0020】
水性エポキシ樹脂は、アニオン性水性エポキシ樹脂、カチオン性水性エポキシ樹脂、非イオン性水性エポキシ樹脂のうちの一種又は複数種の混合物である。
【0021】
セメントは、ポルトランドセメント、普通のポルトランドセメント、スラグケイ酸塩セメント、火山灰石ポルトランドセメント、フライアッシュケイ酸塩セメント、複合ケイ酸塩セメント、G級油井セメント、早強ポルトランドセメント、道路ケイ酸塩セメント、アルミネートセメント、スルホアルミン酸塩セメントのうちの一種又は複数種の混合物である。
【0022】
正極フィラーは、酸化ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル粉末(すなわち単体ニッケル)のうちの一種又は複数種の混合物である。
【0023】
負極フィラーは、鉄粉(すなわち単体鉄)、四酸化三鉄及び酸化鉄のうちの一種又は複数種の混合物である。
【0024】
無機アルカリは、カリウム粉末(すなわち単体カリウム)、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムのうちの一種又は複数種の混合物である。
【0025】
導電性フィラーは、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン及びカーボンナノチューブのうちの一種又は複数種の混合物である。
【0026】
正極塗層、電解質塗層及び負極塗層中の水性エポキシ樹脂は、同じタイプであっても異なるタイプであってもよく、セメントは、同じタイプであっても異なるタイプであってもよく、導電性フィラーは、同じタイプであっても異なるタイプであってもよい。
【0027】
本発明は、さらに建築の歪みを監視するためのエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティングの製造方法を提供し、製造方法は、配合比率に応じて水性エポキシ樹脂、導電性フィラー、水、正極フィラー、無機アルカリ及び負極フィラーを秤量し、それぞれ均一に撹拌混合して正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを形成するステップ1と、配合比率に応じて正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーをそれぞれセメントに添加し、均一に撹拌してそれぞれ正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを形成するステップ2と、正極スラリー、電解質スラリー及び負極スラリーを内層、中層、外層に応じて層ごとに既存の建築構造の表面にナイフ塗布又はスプレーし、正極コーティング、電解質コーティング及び負極コーティングを形成し、養生した後に硬化して充放電可能なセメント基微小変化監視コーティングを形成するステップ3と、を含む。
【0028】
本発明は、さらにセメント系センサを提供し、該センサは以上のようなセメント系微小変化監視コーティングを含み、
図12に示すように、セメント系センサはさらにコーティング領域の既存の建築構造1の表面と負極コーティング4に取り付けられた導電性電極5を含み、セメント系微小変化監視コーティングは既存の建築構造1の表面の内層に貼り付けられた正極コーティング2と、中層の電解質コーティング3及び外層の負極コーティング4を含み、導電性電極5と外部との連通の監視装置により電流回路を形成し、既存の建築の応力-歪み状況を監視し、コンクリート建築構造1の構造形態を理解するために用いられる。
【0029】
本発明の具体的な実施例において、導電性電極は金属電極又はグラファイト電極である。
【0030】
本発明の具体的な実施例において、ステップ3において、養生は具体的には散水養生又は被膜養生であり、養生温度は0~50℃であり、養生時間は3~7日間である。
【0031】
本発明の具体的な実施例において、セメント系微小変化監視コーティングの厚さは0.3~30mmであり、ここで正極コーティング、電解質コーティング及び負極コーティングの厚さはいずれも0.1~10mmである。セメント系微小変化監視コーティングの厚さが薄すぎることによりコーティングが亀裂やすく、コーティングの導電性能が安定しない。コーティングの厚さが厚すぎるとコーティングが建築構造の表面に接着しにくく、脱落しやすくかつコストを増加させるため、セメント系微小変化監視コーティングの厚さは一定の範囲内に保持する必要がある。
【0032】
実施例1
本実施例が提供する建築の歪みを監視するためのエネルギー貯蔵保護型セメント系微小変化監視コーティングであって、コーティングは正極コーティングと、電解質コーティングと、負極コーティングという三層コーティングを含む。材料は以下の質量百分率の成分を含む。
【0033】
(内層)正極コーティング:アニオン性水性エポキシ樹脂20%、普通ポルトランドセメント40%、正極フィラー10%(ここで酸化ニッケル5%、水酸化ニッケル4%、ニッケル粉末1%を含む)、導電性フィラー10%(ここでカーボンナノチューブ2%、酸化グラフェン8%を含む)、水20%。
【0034】
(中層)電解質コーティング:アニオン性水性エポキシ樹脂20%、複合ケイ酸塩セメント40%、無機アルカリ15%(ここで水酸化カリウム10%、水酸化ナトリウム1%、水酸化リチウム4%を含む)、導電性フィラー10%(ここでカーボンナノチューブ2%、酸化グラフェン8%を含む)、水15%。
【0035】
(外層)負極コーティング:アニオン性水性エポキシ樹脂20%、アルミネートセメント40%、負極フィラー10%(ここで鉄粉6%、四酸化三鉄2%、酸化鉄2%)、導電性フィラー10%(そのうちカーボンナノチューブ2%、酸化グラフェン8%を含む)、水20%。
【0036】
セメント系微小変化監視コーティングの製造方法は以下のステップを含む。
【0037】
配合比率に応じて水性エポキシ樹脂、導電性フィラー、水及び正極充填剤/無機アルカリ/負極充填剤を称量して撹拌してそれぞれ均一に混合して内層、中層、外層スラリーを形成する;配合比率に応じて三種類のスラリーをそれぞれセメントに添加し、均一に撹拌してそれぞれ内層、中層、外層スラリーを形成する。スラリーを内層、中層、外層に応じて層ごとに既存の建築構造表面(コーティング面積が10 cm×10 cmである)にナイフ塗布又はスプレーし、かつ3日間養生し、メンテナンス温度が25℃であり、硬化した後にセメント基微小変化監視コーティングを得る。セメント系微小変化監視コーティングの厚さは5mmであり、ここで正極コーティングは1mm、電解質コーティングは3mm、負極コーティングは1mmである。塗布領域は塗布層の前に導電性電極(グラファイト電極)が取り付けられ、導電性電極と監視装置は電流回路を形成し、セメント系微小変化監視コーティングの監視信号(すなわちセンサデータ)を取得する。
【0038】
図1は、本発明の実施例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリートブロックに塗布するサイクリックボルタンメトリー曲線である。試験対極は黒鉛板であり、参照電極は飽和カロメル電極であり、走査範囲は0.4~1.4Vであり、走査速度は20mv/sである。サイクリックボルタンメトリー法における電圧の走査過程は陰極と陽極の二つの方向を含むため、得られたサイクリックボルタンメトリーパターンの酸化波及び還元波のピーク高さ及び対称性から電極表面での電気活性物質の可逆的程度を判断することができる。曲線中心が中心対称であれば、反応は可逆的である。中間のサイクリックボルタンメトリー曲線の安定部分曲線は、基本的に中心対称であり、セメント系微小変化監視コーティングの電気エネルギー貯蔵が循環可能であると判定することができる。
【0039】
図2は、本発明の実施例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリートブロックに塗布し、充電後の持続放電の電圧値の時間変化曲線である。図から分かるように、セメント系微小変化監視コーティングの自体の給電電圧信号は、放電時間の延長に伴って徐々に低下し、電圧が約30%低下する持続時間は一周に達することができ、充放電間隔の範囲内の持続エネルギー貯蔵及び給電を満たすことができる。
【0040】
図3は、本発明の実施例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布し、セメント系微小変化監視コーティング(センサ)信号と試験ブロックが循環荷重圧力の相関データである。図から分かるように、セメント系微小変化監視コーティング(センサ)信号と試験ブロックが循環荷重圧力を受けるデータ変数と一致する。
【0041】
図4は、本発明の実施例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布し、試験ブロックが循環荷重圧力を受けて亀裂して破壊されるまでのセメント系微小変化監視コーティング(センサ)の信号変化である。図から分かるように、ここでマトリックスは18000分間テストする時に亀裂が発生する。センサ信号は、18000分に顕著な変動が発生する。
【0042】
該実施例で調製されたセメント系微小変化監視コーティングとコンクリート梁体の接着強度試験方法は、DL/T5126-2001「ポリマー改質セメントモルタル試験手順」を参照する。梁体コンクリートの凍結融解耐久性試験方法は、GB/T50082-2009「普通コンクリート長期性能及び耐久性能試験方法標準」を参照し、梁体コンクリート内部鉄筋の腐食程度測定方法はDB34/T1929-2013「コンクリートにおける鉄筋腐食検出技術規程」を参照する。
【0043】
セメント系微小変化監視コーティングとコンクリート梁体の接着強度は2.52MPaであり、表面に亀裂がなく、反りがなく、変形がない。梁体コンクリートの凍結融解耐久性指数はDF=92%からDF=97.7%に向上する。梁体コンクリート内の鉄筋の積算頻度pは0.95から1.04まで向上する(特徴K値法、k=1.0、p≧1である場合、鉄筋が腐食しないことを示す)。梁体は底面の曲げ箇所においてコーティング監視領域と平行に同一スパンの歪みゲージが貼り付けられ、監視が正確で偏心しないことを保証するために、コーティング層の左右にそれぞれ一枚の歪みゲージがあり、破断過程における応力-歪み(すなわち
図4における歪みゲージデータ1と歪みゲージデータ2の結果)を監視するために用いられ、二枚の歪みゲージの結果が一致する傾向があればビーム体の湾曲が安定し、偏心破壊が発生しないことを説明する。得られた梁体の曲げ箇所での破断過程での応力-歪み曲線及びセメント系微小変化監視コーティングの監視信号曲線は
図5に示すとおりである。
【0044】
図5から分かるように、セメント系微小変化監視コーティングの監視信号と梁体が曲げ箇所で破断する過程での監視信号は、梁体の真の応力-歪み曲線の発展傾向と一致し、監視破断歪みは真の破断歪みと一致する。
【0045】
実施例2
本実施例において、セメント系微小変化監視コーティング材料の具体的な成分を変更し、他の方法のステップは実施例1と同じであり、ここでは説明を省略する。セメント系微小変化監視コーティング材料は以下の質量百分率の成分を含む。
【0046】
(内層)正極コーティング:カチオン性水性エポキシ樹脂10%、アルミネートセメント55%、正極フィラー10%(ここで酸化ニッケル2%、水酸化ニッケル7%、ニッケル粉末1%を含む)、導電性フィラー5%(そのうちグラファイト3%、カーボンブラック2%)、水20%。
【0047】
(中層)電解質コーティング:カチオン性水性エポキシ樹脂10%、スラグポルトランドセメント55%、無機アルカリ20%(ここで水酸化カリウム15%、水酸化ナトリウム4%、水酸化リチウム1%を含む)、導電性フィラー5%(そのうちグラファイト3%、カーボンブラック2%)、水20%。
【0048】
(外層)負極コーティング:カチオン性水性エポキシ樹脂10%、道路ポルトランドセメント55%、負極フィラー10%(ここで鉄粉8%、四酸化三鉄1%、酸化鉄1%を含む)、導電性フィラー5%(そのうちグラファイト3%、カーボンブラック2%)、水20%。
【0049】
実施例1における性能試験基準に従って本実施例で調製されたセメント系導電性材料に対して性能試験を行い、性能結果は以下のとおりである。
【0050】
セメント系コーティングとコンクリート梁体の接着強度は2.61Mpaであり、表面に亀裂がなく、反りがなく、変形がなく、梁体コンクリートの凍結融解耐久性指数はDF=95%からDF=98%まで向上する。梁体コンクリート内の鉄筋の積算頻度pは0.98から1.17まで向上する(特徴K値法、k=1.0、p≧1である場合、鉄筋が腐食しないことを示す)。梁体の曲げ破断過程での応力-歪み曲線及びセメント基微小変化監視コーティングの監視信号曲線は
図6に示すとおりである。
【0051】
図6から分かるように、セメント系微小変化監視コーティングの監視信号と梁体が曲げ箇所で破断する過程での監視信号は梁体の真の応力-歪み曲線の発展傾向と一致し、監視破断歪みは真の破断歪みと一致する。
【0052】
実施例3
本実施例において、セメント系微小変化監視コーティング材料の具体的な成分を変更し、他の方法のステップは実施例1と同じであり、ここでは説明を省略する。セメント系微小変化監視コーティング材料は以下の質量百分率の成分を含む。
【0053】
(内層)正極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂25%、道路ポルトランドセメント40%、正極フィラー15%(ここで酸化ニッケル6%、水酸化ニッケル8%、ニッケル粉末1%を含む)、導電性フィラー10%(ここで、還元酸化グラフェン5%、カーボンナノチューブ5%)、水10%。
【0054】
(中層)電解質コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂25%、スラグポルトランドセメント40%、無機アルカリ15%(ここで水酸化カリウム10%、水酸化ナトリウム1%、水酸化リチウム4%を含む)、導電性フィラー5%(ただしグラファイト3%、カーボンブラック2%)、水15%。
【0055】
(外層)負極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂25%、早強ポルトランドセメント40%、負極フィラー15%(ここで鉄粉10%、四酸化三鉄4%、酸化鉄1%を含む)、導電性フィラー5%(ここで黒鉛3%、カーボンブラック2%)、水15%。
【0056】
実施例1における性能試験基準に従って本実施例で調製されたセメント系導電性材料に対して性能試験を行い、性能結果は以下のとおりである。
【0057】
セメント系コーティングとコンクリート梁体の接着強度は2.55Mpaであり、表面に亀裂がなく、反りがなく、変形がなく、梁体コンクリートの凍結融解耐久性指数はDF=88%からDF=96%に向上する。梁体コンクリート内の鉄筋の積算頻度pは0.88から1.02まで向上する(特徴K値法、k=1.0、p≧1である場合、鉄筋が腐食しないことを示す)。梁体の曲げ破断過程での応力-歪み曲線及びセメント基微小変化監視コーティングの監視信号曲線は
図7に示すとおりである。
【0058】
図7から分かるように、セメント系微小変化監視コーティングの監視信号と梁体が曲げ箇所で破断する過程での監視信号は梁体の真の応力-歪み曲線の発展傾向と一致し、監視破断歪みは真の破断歪みと一致する。
【0059】
実施例4
本実施例において、セメント系微小変化監視コーティング材料の具体的な成分を変更し、該スラリーをコンクリート梁体の下表面に塗布する又は塗装しかつ7日間養生し、メンテナンス温度が15℃であり、セメント系微小変化監視コーティングの厚さが以下のとおりであり、ここで正極コーティング8mm、電解質コーティング8mm、負極コーティング8mm。他の方法ステップは実施例1と同じであり、ここでは説明を省略する。
セメント系微小変化監視コーティング材料は以下の質量百分率の成分を含む。
【0060】
(内層)正極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂10%、早強ポルトランドセメント50%、正極フィラー20%(ここで酸化ニッケル20%を含む)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水15%。
【0061】
(中層)電解質コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂10%、スラグポルトランドセメント50%、無機アルカリ20%(ここで水酸化カリウム20%を含む)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水15%。
【0062】
(外層)負極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂10%、普通ポルトランドセメント50%、負極フィラー20%(そのうち鉄粉20%を含む)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水15%。
【0063】
実施例1における性能試験基準に従って本実施例で調製されたセメント系導電性材料に対して性能試験を行い、性能結果は以下のとおりである。
【0064】
セメント系コーティングとコンクリート梁体の接着強度は2.54Mpaであり、表面に亀裂がなく、反りがなく、変形がなく、梁体コンクリートの凍結融解耐久性指数はDF=93%からDF=99%まで向上する。梁体コンクリート内の鉄筋の積算頻度pは0.95から1.10まで向上する(特徴K値法、k=1.0、p≧1である場合、鉄筋が腐食しないことを示す)。梁体の曲げ破断過程での応力-歪み曲線及びセメント基微小変化監視コーティングの監視信号曲線は
図8に示すとおりである。
【0065】
図8から分かるように、セメント系微小変化監視コーティングの監視信号と梁体が曲げ箇所で破断する過程での監視信号は梁体の真の応力-歪み曲線の発展傾向と一致し、監視破断歪みは真の破断歪みと一致する。
【0066】
比較例1
本対照例においてセメント基微小変化監視コーティング材料の具体的な成分を変更し、他の方法ステップは実施例1と同じであり、ここでは説明を省略する。
セメント系微小変化監視コーティング材料は以下の質量百分率の成分を含む。
【0067】
(内層)正極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂1%、普通ポルトランドセメント59%、正極フィラー20%(ここで酸化ニッケル5%、水酸化ニッケル5%、ニッケル粉末10%を含む)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水15%。
【0068】
(中層)電解質コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂1%、スラグポルトランドセメント59%、無機アルカリ20%(ここで水酸化カリウム15%、水酸化ナトリウム2%、水酸化リチウム3%を含む)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水15%。
【0069】
(外層)負極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂1%、スルホアルミン酸塩セメント59%、負極フィラー20%(ここで鉄粉15%、四酸化三鉄4%、酸化鉄1%を含む)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水15%。
【0070】
実施例1における性能試験基準に従って本実施例で調製されたセメント系導電性材料に対して性能試験を行い、性能結果は以下のとおりである。
【0071】
セメント系コーティングとコンクリート梁体の接着強度は1.07Mpaであり、表面に大量の乾燥亀裂が存在し、梁体コンクリートの凍結融解耐久性指数はDF=88%からDF=89%に向上する;梁体コンクリート内の鉄筋の積算頻度pは0.95から0.96まで向上する(特徴K値法、k=1.0、p≧1である場合、鉄筋が腐食しないことを示す)。
【0072】
図9は、本発明の比較例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布し、試験ブロックが循環荷重圧力を受けて亀裂して破壊されるまでのセメント系微小変化監視コーティング(センサ)の信号変化である。図から分かるように、センサ信号の変動が激しく、信号対雑音比が小さすぎ、かつ2000分に明らかな信号歪みが発見され、有効な監視信号を取得することができない。
【0073】
比較例2
本対照例においてセメント基微小変化監視コーティング材料の具体的な成分を変更し、他の方法ステップは実施例1と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0074】
セメント系微小変化監視コーティング材料は以下の質量百分率の成分を含む。
【0075】
(内層)正極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂10%、スラグポルトランドセメント55%、正極フィラー20%(ここで酸化ニッケル5%、水酸化ニッケル5%、ニッケル粉末10%を含む)、導電性炭素繊維5%、水10%。
【0076】
(中層)電解質コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂10%、アルミネートセメント55%、無機アルカリ20%(ここで水酸化カリウム15%、水酸化ナトリウム2%、水酸化リチウム3%を含む)、導電性炭素繊維5%、水10%。
【0077】
(外層)負極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂10%、スルホアルミン酸塩セメント55%、負極フィラー20%(ここで鉄粉15%、四酸化三鉄4%、酸化鉄1%を含む)、導電性炭素繊維5%、水10%。
【0078】
比較例1における性能試験基準に従って本実施例で調製されたセメント系導電性材料に対して性能試験を行い、性能結果は以下のとおりである。
【0079】
セメント系コーティングとコンクリート梁体の接着強度は2.51Mpaであり、表面に亀裂がなく、反りがなく、変形がなく、梁体コンクリートの凍結融解耐久性指数はDF=88%からDF=91%まで向上する。梁体コンクリート内の鉄筋の積算頻度pは0.95から0.99まで向上する(特徴K値法、k=1.0、p≧1である場合、鉄筋が腐食しないことを示す)。
【0080】
図10は、本発明の比較例1で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布し、試験ブロックが循環荷重圧力を受けて亀裂して破壊されるまでのセメント系微小変化監視コーティング(センサ)信号の変化である。図から分かるように、導電性炭素繊維の導電性が弱く、イオンパーコレーションが不安定であるため、センサ信号の変動が激しく、信号対雑音比が小さすぎ、信号が深刻に歪み、有効な監視信号を取得することができない。
【0081】
比較例3
本対照例においてセメント基微小変化監視コーティング材料の具体的な成分を変更し、他の方法ステップは実施例1と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0082】
セメント系微小変化監視コーティング材料は以下の質量百分率の成分を含む。
【0083】
(内層)正極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂70%、スラグポルトランドセメント10%、正極フィラー5%(ニッケル粉末5%)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水10%。
【0084】
(中層)電解質コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂70%、フライアッシュケイ酸塩セメント10%、無機アルカリ5%(水酸化カリウム5%)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水10%。
【0085】
(外層)負極コーティング:非イオン性水性エポキシ樹脂70%、道路ポルトランドセメント10%、負極フィラー5%(鉄粉5%)、導電性フィラー5%(ここで、グラフェン2%、カーボンナノチューブ3%)、水10%。
【0086】
比較例1における性能試験基準に従って本実施例で調製されたセメント系導電性材料に対して性能試験を行い、性能結果は以下のとおりである。
【0087】
セメント系コーティングとコンクリート梁体の接着強度は2.84Mpaであり、表面に亀裂がなく、反りがなく、変形がなく、梁体コンクリートの凍結融解耐久性指数はDF=91%からDF=97%まで向上する。梁体コンクリート内の鉄筋の積算頻度pは0.95から0.98まで向上する(特徴K値法、k=1.0、p≧1である場合、鉄筋が腐食しないことを示す)。
【0088】
図11は、本発明の比較例3で製造されたセメント系微小変化監視コーティングをコンクリート試験ブロックの受圧面に塗布し、試験ブロックが循環荷重圧力を受けて亀裂して破壊されるまでのセメント系微小変化監視コーティング(センサ)の信号変化である。図から分かるように、水性エポキシ樹脂の配合量が大きすぎるため、導電性能が著しく低下し、イオンパーコレーションがほぼ無効になる。信号の信号対雑音比が小さすぎ、信号の背ボトムが高すぎ、有効な監視信号を取得することができない。
【0089】
以上により、本発明に提供された建築の健康監視に用いられるセメント系導電性材料及びセメント系センサは、水性エポキシ樹脂及びセメントコンクリートを主な原料とし、導電性フィラー、適量の水を配合し、均一に撹拌した後にブラシにより既存の建築構造の表面に塗布又はスプレー塗装し、かつ建築表面及び負極コーティングに配置された導電性電極及び接続された監視装置により電流回路を形成する。建築の受ける負荷に歪みが発生するか又は亀裂が発生して表面の監視コーティングに作用し、異なる電流信号を生成し、それにより既存の建築のリアルタイム健康監視を実現する。
【0090】
本発明は、セメント系微小変化監視コーティングを製造することによりコンクリートの応力-歪みをリアルタイムに取得し、それによりコンクリート構造の変形、荷重及び亀裂を監視するという目的を達成し、コンクリートとの互換性が高く、価格が低いという利点を有するだけでなく、外界の二酸化炭素、雨水、塩溶液などの有害な媒体のコンクリートに対する浸食作用を阻害し、既存の建築の供用耐用年数を顕著に延長することができる。
【0091】
該監視コーティングにおける三層コーティングは、ガルバニ電池を構成し、充電装置により充電しエネルギー貯蔵することができ、かつ正極の材料を保護し、それによりコンクリート内部の鉄筋に保護を提供する。該監視コーティングの検出信号の信号対雑音比が高く、過充電、過放電、短絡、過熱供用を受けることができ、監視性能が安定し、かつ敷設、交換プロセスが簡単であり、マトリックスへの接着が強く、耐久性向上効果が高く、良好な経済的利益と長い社会的利益を有し、応用の将来性が非常に広い。
【0092】
該監視コーティングは信号の信号対雑音比が高く、緩和現象が小さく、監視性能が安定し、かつ敷設プロセスが簡単であり、マトリックスとの接着強度が高く、任意の異形構造の表面に敷設することができ、良好な経済的利益と長い社会的利益を有し、応用の将来性が非常に広い。
【符号の説明】
【0093】
1 建築構造
2 正極コーティング
3 電解質コーティング
4 負極コーティング
5 導電性電極