(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】バッテリー冷却システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/617 20140101AFI20231020BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231020BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20231020BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20231020BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20231020BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20231020BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231020BHJP
【FI】
H01M10/617
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/6554
H01M10/6556
H01M10/651
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2021522280
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020034
(87)【国際公開番号】W WO2020241431
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2019098004
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修
(72)【発明者】
【氏名】垣内 修司
(72)【発明者】
【氏名】高野 明彦
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089507(JP,A)
【文献】特開2015-022830(JP,A)
【文献】特開2014-216298(JP,A)
【文献】特開2013-105880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0041835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー冷却装置であって、
複数の熱交換部(10)を備え、前記各熱交換部が、当該熱交換部の内部に形成された熱媒体通路(11)を流れる熱媒体と当該熱交換部の表面に熱的に接触するバッテリーモジュール(1a)との間で熱交換を行うように構成され、前記各熱交換部が熱媒体流入部および熱媒体流出部(12,14)を有しており、前記複数の熱交換部は、前記熱媒体流入部と前記熱媒体流出部との間の圧力差と前記熱媒体通路内を流れる熱媒体の流速との関係が前記複数の熱交換部間において実質的に同じになるように構成されており、
前記複数の熱交換部は複数の熱交換部群(G1,G2,G3)にグループ分けされ、各熱交換部群に複数の熱交換部(10)が属し、一つの熱交換部群に属する複数の熱交換部は、当該の複数の熱交換部の各々を通過する熱媒体の流速が互いに実質的に同じになるように並列に接続されており、
前記複数の熱交換部群(G1,G2,G3)は互いに直列に接続されており、相対的に上流側にある熱交換部群に属する熱交換部(10)の数が、相対的に下流側にある熱交換部群に属する熱交換部の数よりも多く、これにより、相対的に下流側にある熱交換部群に属する各一つの熱交換部を通過する熱媒体の流速が、相対的に上流側にある熱交換部群に属する各一つの熱交換部を通過する熱媒体の流速よりも速くなって
おり、
前記複数の熱交換部群には、第1熱交換部群(G1)および第2熱交換部群(G2)が少なくとも含まれ、
前記第1および第2熱交換部群(G1,G2)に属する複数の熱交換部(10)は、X方向に沿って並べられ、
前記各熱交換部(10)は、前記X方向に直交するY方向に関して互いに反対側にある第1端部(12)と第2端部(14)とを有し、これら第1端部および第2端部のいずれか一方が前記熱媒体流入部であり、他方が前記熱媒体流出部であり、
前記第1熱交換部群(G1)は、前記第1熱交換部群(G1)に属する複数の熱交換部(10)の各々の第1端部(12)および第2端部(14)がそれぞれ接続された第1ヘッダ部(16)および第2ヘッダ部(20)を有し、前記第1ヘッダ部および前記第2ヘッダ部はX方向に連続的に延び、前記第1ヘッダ部の内部に、複数の熱交換部(10)の熱媒体通路(11)と接続された第1接続路(18)が形成され、前記第2ヘッダ部の内部に、複数の熱交換部の熱媒体通路と接続された第2接続路(22)が形成され、
前記第2熱交換部群(G2)は、前記第2熱交換部群(G2)に属する複数の熱交換部(10)の各々の第1端部(12)および第2端部(14)がそれぞれ接続された第3ヘッダ部(24)および第4ヘッダ部(28)を有し、前記第3ヘッダ部および前記第4ヘッダ部はX方向に連続的に延び、前記第3ヘッダ部の内部に、複数の熱交換部の熱媒体通路と接続する第3接続路(26)が形成され、前記第4ヘッダ部の内部に、複数の熱交換部の熱媒体通路と接続する第4接続路(30)が形成され、
前記第1熱交換部群に(G1)属する各熱交換部(10)では、前記第2端部(14)から前記第1端部(12)に向けて熱媒体が流れるようになっており、
前記第2熱交換部群(G2)に属する各熱交換部(10)では、前記第1端部(12)から前記第2端部(14)に向けて熱媒体が流れるようになっており、
前記第1ヘッダ部(16)の下流端と前記第3ヘッダ部(24)の上流端とは、第1連結部(32)により連結され、熱媒体は、前記第1連結部の内部に形成された第1連通路(34)を介して前記第1熱交換部群(G1)から前記第2熱交換部群(G2)に流れるように構成されており、
前記第2ヘッダ部(20)の下流端と前記第4ヘッダ部(28)の上流端とは、第2連結部(36)により連結され、熱媒体は、前記第2連結部の内部に形成された第2連通路(38)も介して前記第1熱交換部群から前記第2熱交換部群に流れるように構成されており、前記第1連通路(34)を流れる熱媒体の流量が、前記第2連通路(38)を流れる熱媒体の流量よりも大きくなるように、前記第1および第2連結部(32,36)が形成されていることを特徴とするバッテリー冷却装置。
【請求項2】
前記第1熱交換部群(G1)に属する熱交換部(10)の数を「m」、前記第2熱交換部群(G2)に属する熱交換部(10)の数を「n」、前記第2連通路(38)を通過する熱媒体の流量の、前記第1連通路(34)を通過する熱媒体の流量および前記第2連通路(38)を通過する熱媒体の流量の和に対する比を「k」としたとき、
k < 1-(n/m)
という関係が成立する、請求項
1記載のバッテリー冷却装置。
【請求項3】
前記第1熱交換部群(G1)に属する熱交換部(10)の数を「m」、前記第2熱交換部群(G2)に属する熱交換部(10)の数を「n」、前記第2連通路(38)の通路断面積の、第1連通路(34)の通路断面積および第2連通路(38)の通路断面積の和に対する比を「k」としたとき、
k < 1-(n/m)
という関係が成立する、請求項
1記載のバッテリー冷却装置。
【請求項4】
少なくとも、前記複数の熱交換部(10)と、前記第1ヘッダ部(16)および前記第2ヘッダ部(20)と、前記第3ヘッダ部(24)および前記第4ヘッダ部(28)とが、互いにろう付けされた2枚の金属板(2,3)から一体的に形成されている、請求項
1から
3のうちのいずれか一項に記載のバッテリー冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などのバッテリーをクーラントで冷却する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーは充電時に発熱する。とりわけ、電気自動車などの車両用のバッテリーを急速充電するときには、バッテリーの発熱は大きい。バッテリーが高温となった状態で充電を継続すると、バッテリーの劣化が促進されて充電容量が低下し、電気自動車の走行可能距離が短くなってしまう。この問題を解決するために、バッテリーを、熱媒体(冷媒、クーラント等)を用いて冷却する冷却装置が用いられる。(例えば特許文献1を参照)
【0003】
電気自動車では、一度の充電で長距離走行ができること、かつ短時間で急速充電を完了できることが望まれている。このような要求を満足するため、多数のバッテリーモジュールからなるバッテリーが車両に搭載される。冷却装置には、多数のバッテリーモジュール間の性能差(発熱による劣化度合いの差も含む)を小さくするため、バッテリーモジュール間の温度差を小さくすることが求められている。また、冷却装置で用いる熱媒体がクーラントである場合には、熱媒体を循環させるウォーターポンプの大型化および消費電力増大を回避するために、冷却装置特に熱交換部の内部の圧力損失を小さくすることも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数の熱交換部で生じる総圧力損失を低減しつつ、複数の熱交換部間の冷却能力のばらつきを抑制しうるバッテリー冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、バッテリー冷却装置であって、複数の熱交換部を備え、各熱交換部が、当該熱交換部の内部に形成された熱媒体通路を流れる熱媒体と当該熱交換部の表面に熱的に接触するバッテリーモジュールとの間で熱交換を行うように構成され、各熱交換部が熱媒体流入部および熱媒体流出部を有しており、複数の熱交換部は、熱媒体流入部と熱媒体流出部との間の圧力差と熱媒体通路内を流れる熱媒体の流速との関係が複数の熱交換部間において実質的に同じになるように構成されており、複数の熱交換部は複数の熱交換部群にグループ分けされ、各熱交換部群に複数の熱交換部が属し、一つの熱交換部群に属する複数の熱交換部は、当該の複数の熱交換部の各々を通過する熱媒体の流速が互いに実質的に同じになるように並列に接続されており、複数の熱交換部群は互いに直列に接続されており、相対的に上流側にある熱交換部群に属する熱交換部の数が、相対的に下流側にある熱交換部群に属する熱交換部の数よりも多く、これにより、相対的に下流側にある熱交換部群に属する各一つの熱交換部を通過する熱媒体の流速が、相対的に上流側にある熱交換部群に属する各一つの熱交換部を通過する熱媒体の流速よりも速くなっており、複数の熱交換部群には、第1熱交換部群および第2熱交換部群が少なくとも含まれ、第1および第2熱交換部群に属する複数の熱交換部は、X方向に沿って並べられ、各熱交換部は、X方向に直交するY方向に関して互いに反対側にある第1端部と第2端部とを有し、これら第1端部および第2端部のいずれか一方が熱媒体流入部であり、他方が熱媒体流出部であり、第1熱交換部群は、第1熱交換部群に属する複数の熱交換部の各々の第1端部および第2端部がそれぞれ接続された第1ヘッダ部および第2ヘッダ部を有し、第1ヘッダ部および第2ヘッダ部はX方向に連続的に延び、第1ヘッダ部の内部に、複数の熱交換部の熱媒体通路と接続された第1接続路が形成され、第2ヘッダ部の内部に、複数の熱交換部の熱媒体通路と接続された第2接続路が形成され、第2熱交換部群は、第2熱交換部群に属する複数の熱交換部の各々の第1端部および第2端部がそれぞれ接続された第3ヘッダ部および第4ヘッダ部を有し、第3ヘッダ部および第4ヘッダ部はX方向に連続的に延び、第3ヘッダ部の内部に、複数の熱交換部の熱媒体通路と接続する第3接続路が形成され、第4ヘッダ部の内部に、複数の熱交換部の熱媒体通路と接続する第4接続路が形成され、第1熱交換部群に属する各熱交換部では、第2端部から第1端部に向けて熱媒体が流れるようになっており、第2熱交換部群に属する各熱交換部では、第1端部から第2端部に向けて熱媒体が流れるようになっており、第1ヘッダ部の下流端と第3ヘッダ部の上流端とは、第1連結部により連結され、熱媒体は、第1連結部の内部に形成された第1連通路を介して第1熱交換部群から第2熱交換部群に流れるように構成されており、第2ヘッダ部の下流端と第4ヘッダ部の上流端とは、第2連結部により連結され、熱媒体は、第2連結部の内部に形成された第2連通路も介して第1熱交換部群から第2熱交換部群に流れるように構成されており、第1連通路を流れる熱媒体の流量が、第2連通路を流れる熱媒体の流量よりも大きくなるように、第1および第2連結部が形成されていることを特徴とするバッテリー冷却装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の熱交換部で生じる総圧力損失を低減しつつ、複数の熱交換部間の冷却能力のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバッテリー冷却装置の構成をバッテリーモジュールと一緒に示した概略分解斜視図および断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るバッテリー冷却装置の熱媒体流路間の接続関係を示す流体回路図である。
【
図3】第2実施形態に係るバッテリー冷却装置の熱媒体流路間の接続関係を示す流体回路図である。
【
図4】第3実施形態に係るバッテリー冷却装置の熱媒体流路間の接続関係を示す流体回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して車両用のバッテリー冷却装置の好適かつ非限定的な実施形態について説明する。
【0010】
バッテリー冷却装置は、熱媒体としてのクーラントの循環経路(図示せず)の一部をなす熱交換器として構成される。循環経路には、クーラントを循環経路内で循環させるためにクーラントを送出するポンプと、バッテリー冷却装置のところでバッテリーと熱交換することにより加熱されたクーラントを冷却する冷却部とを有する(いずれも図示せず)。冷却部は、例えば車両(自動車)のフロントグリルの背後に設けることができる。
【0011】
本明細書において用語「クーラント」とは、本質的な相変化を伴うことなく熱を冷却対象物から奪うことにより冷却対象物を冷却する液体を意味している。具体的には、クーラントとして、自動車のエンジン冷却水に用いられるような不凍成分(凝固点を低下させる成分)を含む水が例示される。
【0012】
図1に示すように、冷却装置は、2枚のパネル2,3を接合することにより形成される。パネル2,3は、高い熱伝導率を有する金属材料、例えばアルミニウム合金により形成することができる。このようなパネル2,3(金属板)は、プレス加工等の塑性加工技術により予め定められた形状に加工される。
【0013】
パネル2(上パネル2とも呼ぶ)には、複数(図示例では5つ)の凸部(上に凸の領域)が形成されている。言い換えれば、パネル2の下面には上に凸の窪みが形成されている。パネル2の各凸部の上にバッテリーモジュール1aが1つずつ載置されている。各バッテリーモジュール1aは、パネル2に熱的に結合されている。複数のバッテリーモジュール1aが直列及び/又は並列に電気的に接続されることにより、所望の出力電圧および容量を有するバッテリー1が構成される。
【0014】
図1の右側の断面図は、後述する1つの熱交換部10のY方向中央部をXZ平面に平行な切断面で切断した断面を示している。パネル3(下パネル3とも呼ぶ)のうちのパネル2の上記の凸部に対応する位置には、上に凸のプリーツ状の突起が形成されている。パネル2,3がろう付けにより接合されることにより、パネル2,3の間に、Y方向に互いに平行に延びる複数(例えば4つ)の熱媒体流路6が形成されている。パネル2,3同士が接触している部分は、図示されていないろう材によりシールされている。
【0015】
互いにろう付けされるパネル2,3に適宜凹凸を設けることにより、上述した熱媒体流路6だけでなく、後述するヘッダ部(16,20,24,28,40,44)、接続路(18,22,26,30,42,46)および連通路(34,38,50)を形成することができる。このような凹凸は、
図1に描かれたパネル3の斜視図に概略的に示されている。
【0016】
バッテリー冷却装置には、流入口4および流出口5が設けられている。流入口4および流出口5は、例えばクイックコネクタとの接続に適した形状に形成することができる。流入口4および流出口5は、前述したクーラントの循環経路に接続される。流入口4を介して循環経路からバッテリー冷却装置に流入したクーラントは、パネル2,3の間に形成された熱媒体流路6内を流れ、流出口5を介して循環経路に流出する。クーラントは、熱媒体流路6内を流れるときに、バッテリー1から熱を奪い、バッテリー1を冷却する。
【0017】
次に、
図2を参照してバッテリー冷却装置の第1実施形態について説明する。
図2において、太線の矢印はバッテリー冷却装置内の熱媒体の流れを示している(
図3、
図4においても同じ)。
【0018】
バッテリー冷却装置は、複数の熱交換部10を備えている。各熱交換部10は、当該熱交換部10の内部に形成された熱媒体通路11を流れる熱媒体としてのクーラントと、当該熱交換部10の表面に熱的に接触するバッテリーモジュール1aとの間で熱交換を行うように構成されている。熱交換部10は、
図1に示した上パネル2の各凸部(上に凸の領域)に対応する位置に1つずつ設けられる。
【0019】
複数の熱交換部10は、X方向に沿って並べられている。X方向は、好ましくは水平方向である。
【0020】
各熱交換部10は、X方向に直交するY方向に関して互いに反対側にある第1端部12と第2端部14とを有している。Y方向も、好ましくは水平方向である。
図2~
図4に示した実施形態では、熱交換部10の図中上側にある端部を第1端部12と呼び、図中下側にある端部を第2端部14と呼んでいる。
【0021】
第1端部12および第2端部14のうちの一方が、熱交換部10への熱媒体の入口となる熱媒体流入部であり、他方が熱交換部10からの熱媒体の出口となる熱媒体流出部である。
【0022】
熱交換部10内の熱媒体通路11は、複数の熱媒体流路6(
図1の右側の断面図を参照)により構成することができる。熱交換部10は、第1端部12と第2端部14とのの間の圧力差(つまり熱媒体流入部と熱媒体流出部との間の圧力差)と熱媒体通路11内を流れる熱媒体の流速との関係が、複数の熱交換部10間において実質的に同じになるように構成されている。この関係は、例えば、各熱交換部10が同じ数(例えば4つ)の熱媒体流路6(
図1の右側の断面図を参照)を有し、かつ、全ての熱媒体流路6が互いに実質的に同じ相当直径を有していることにより実現することができる(但しこれには限定されない)。
【0023】
複数の熱交換部10は複数の熱交換部群にグループ分けされている。
図2の実施形態では、複数の熱交換部10が、2つの熱交換部群、すなわち第1熱交換部群G1と第2熱交換部群G2とにグループ分けされている。
【0024】
第1および第2熱交換部群G1,G2の各々には複数の熱交換部10が属している。一つの熱交換部群(G1,G2)に属する複数の熱交換部10は、当該の複数の熱交換部10の各々を通過する熱媒体の流速が互いに実質的に同じになるように、互いに並列に接続されている。
【0025】
第1熱交換部群G1は、複数の熱交換部10の各々の第1端部12(第1熱交換部群G1においては熱媒体流出部)が接続される第1ヘッダ部16と、複数の熱交換部10の各々の第2端部14(第1熱交換部群G1においては熱媒体流入部)が接続される第2ヘッダ部20とを有している。
【0026】
第1ヘッダ部16および第2ヘッダ部20はそれぞれX方向に連続的に延びている。第1ヘッダ部16の内部には、各熱交換部10の熱媒体通路11と第1端部12を介して接続される第1接続路18が形成されている。第2ヘッダ部20の内部には、各熱交換部10の熱媒体通路11と第2端部14を介して接続される第2接続路22が形成されている。
【0027】
第2熱交換部群G2は、複数の熱交換部10の各々の第1端部12(第2熱交換部群G2においては熱媒体流入部)が接続される第3ヘッダ部24と、複数の熱交換部10の各々の第2端部14(第2熱交換部群G2においては熱媒体流出部)が接続される第4ヘッダ部28とを有している。
【0028】
第3ヘッダ部24および第4ヘッダ部28はそれぞれX方向に連続的に延びている。第3ヘッダ部24の内部には、各熱交換部10の熱媒体通路11と第1端部12を介して接続される第3接続路26が形成されている。第4ヘッダ部28の内部には、各熱交換部10の熱媒体通路11と第2端部14を介して接続される第4接続路30が形成されている。
【0029】
第2接続路22の第2熱交換部群G2側の端部と反対側の端部の近傍に、前述した流入口4が設けられている。流入口4は、詳細には図示しない熱媒体流路を介して第2接続路22に連通している。第4接続路30の第1熱交換部群G1側の端部と反対側の端部の近傍に、流出口5が設けられている。流出口5は、詳細には図示しない熱媒体流路を介して第4接続路30に連通している。
【0030】
従って、第1熱交換部群G1に属する各熱交換部10では、第2端部14から第1端部12に向けて熱媒体が流れるようになっており、また、第2熱交換部群G2に属する各熱交換部10では、第1端部12から第2端部14に向けて熱媒体が流れるようになっている。
【0031】
つまり、1つの熱交換部群(例えばG1)に属する全ての熱交換部(10)において、一方のヘッダ部(20
)から他方のヘッダ部(16)に熱媒体が流れるようになっている。1つの熱交換部群(例えばG1)とは、「共通の一対のヘッダ部(20,16)の間に並列に設けられ、かつ、内部を同じ方向に熱媒体が流れる隣接する複数の熱交換部(10)の群」と定義することができる。この点は、全ての実施形態に係る全ての熱交換部群(G1~G3)において共通する。
【0032】
第1ヘッダ部16の下流端(熱交換部群G2側の端部)と第3ヘッダ部24の上流端(熱交換部群G1側の端部)とは、第1連結部32により連結されている。熱媒体は、第1連結部32の内部に形成された第1連通路34を介して第1熱交換部群G1から第2熱交換部群G2に流れる。つまり、複数(図示例では3つ)の熱交換部10を備えた第1熱交換部群G1と複数(図示例では2つ)の熱交換部10を備えた第2熱交換部群G2とは互いに直列に接続されている。
【0033】
ここで、相対的に上流側にある第1熱交換部群G1に属する熱交換部10の数(3つ)が、相対的に下流側にある第2熱交換部群G2に属する熱交換部10の数(2つ)よりも多くなっている。前述したように、一つの熱交換部群(G1,G2)に属する複数の熱交換部10は、当該の複数の熱交換部10の各々を通過する熱媒体の流速が互いに実質的に同じになるように、互いに並列に接続されている。このため、第2熱交換部群G2に属する各熱交換部10を通過する熱媒体の流速が、第1熱交換部群G1に属する各熱交換部10を通過する熱媒体の流速よりも速くなる。
【0034】
第2熱交換部群G2には、第1熱交換部群G1の熱交換部10を通過するときにバッテリーモジュール1aから熱を奪うことにより昇温された熱媒体が流入する。上述したように、第2熱交換部群G2の熱交換部10を通過する熱媒体の流速が、第1熱交換部群G1の熱交換部10を通過する熱媒体の流速よりも速いため、第1熱交換部群G1および第2熱交換部群G2の冷却性能を均一化することができる。
【0035】
第1熱交換部群G1および第2熱交換部群G2の冷却性能を均一化できることについて説明する。
【0036】
第1熱交換部群G1では、第2熱交換部群G2に対し、熱媒体とバッテリーモジュール1aとの温度差が相対的に大きく、かつ熱交換部10を通流する熱媒体の流速が、相対的に遅い。このため、第1熱交換部群G1を通過する熱媒体は混合性が低く、熱媒体通路11の断面で見たときに、中心部分と内表面近傍との温度差が大きくなる。すなわち、熱媒体通路11の内表面近傍を通流する熱媒体の温度が上昇するので、第1熱交換部群G1と熱媒体との熱交換量は、ある一定の程度に抑制される。
【0037】
第2熱交換部群G2では、第1熱交換部群G1に対し、熱媒体とバッテリーモジュール1aとの温度差が相対的に小さく、かつ熱交換部10を通流する熱媒体の流速が、相対的に速い。このため、第1熱交換部群G1を通過する熱媒体は混合性が高く、熱媒体通路11の断面で見たときに、中心部分と内表面近傍との温度差が大きくならない。すなわち、熱媒体通路11の内表面近傍を通流する熱媒体の温度が上昇しにくい。しかしながら、熱媒体は、第1連結部32から第2熱交換部群G2に流入した時点で、流入口4における温度よりも上昇している。このため、第2熱交換部群G2と熱媒体との熱交換量は、ある一定の程度に抑制される。
【0038】
上記のように、相対的に低い温度の熱媒体が通流する第1熱交換部群G1では熱交換部10を通過する熱媒体の流速を遅いものとし、相対的に高い温度の熱媒体が通流する第2熱交換部群G2では、熱交換部10を通過する熱媒体の流速を早いものとすることで、バッテリーモジュール1aに対する第1熱交換部群G1の冷却能力と第2熱交換部群G2の冷却能力とを均一化することができる。
【0039】
また、上記実施形態によれば、並列接続された複数の熱交換部10により1つの熱交換部群(G1,G2)を構成することにより、1つの熱交換部群を通過するときの熱媒体の圧力損失を小さくすることができる。そして、このような熱交換部群を直列に接続するとともに、下流側にある熱交換部群に属する熱交換部10の数を上流側にある熱交換部群に属する熱交換部10の数よりも少なくすることにより、全ての熱交換部群(G1,G2)に含まれる熱交換部10の冷却性能を均一化することができる。
【0040】
次に、
図3を参照してバッテリー冷却装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第2ヘッダ部20の下流端(熱交換部群G2側の端部)と第4ヘッダ部28の上流端(熱交換部群G1側の端部)とは、第2連結部36により連結されており、これにより、熱媒体の一部は、第2連結部36の内部に形成された第2連通路38も介して第1熱交換部群G1から第2熱交換部群G2に流れるようになっている。第2実施形態の構成は上記の点を除き第1実施形態の構成と同一であり、重複説明は省略する。第1実施形態は、第2ヘッダ部20の下流端と第4ヘッダ部28の上流端とを直接連結する連結部(第2連結部36)を有しない点が第2実施形態と異なるとも言える。
【0041】
第1連通路34を流れる熱媒体の流量が、第2連通路38を流れる熱媒体の流量よりも大きくなるように、第1および第2連結部32,36が形成されている。例えば、第1連通路34の断面積を、第2連通路38の断面積よりも大きくすることにより、上記流量の関係を得ることができる。
【0042】
より具体的には、例えば、下記の不等式1が成立するように、第1連通路34および第2連通路38を構成することができる。 第1熱交換部群G1に属する熱交換部10の数を「m」、第2熱交換部群G2に属する熱交換部10の数を「n」、第2連通路38を通過する熱媒体の流量の、第1連通路34および第2連通路38を通過する熱媒体の流量の和に対する比を「k」としたとき、 k < 1-(n/m)・・・(不等式1)
【0043】
あるいは、下記の不等式2が成立するように、第1連通路34および第2連通路38を構成することができる。 第1熱交換部群(G1)に属する熱交換部10の数を「m」、第2熱交換部群G2に属する熱交換部10の数を「n」、第2連通路38の通路断面積の、第1連通路34の通路断面積および第2連通路38の通路断面積の和に対する比を「k」としたとき、 k < 1-(n/m)・・・(不等式2)
【0044】
上記の不等式1,2のうちの少なくとも一方を満たすことにより、第1連通路34および第2連通路38を通過する熱媒体の流量の比を適正化すること可能となる、これにより熱交換部群の冷却性能をより均一化することが可能となる。
【0045】
なお、k ≧ 1-(n/m)の場合、第2熱交換部群G2に属する熱交換部10を流れる熱媒体の流速が、第1熱交換部群G1に属する熱交換部10を流れる熱媒体の流速よりも低くなってしまう。このため、第2熱交換部群G2に属する熱交換部10により冷却されるバッテリーモジュール1aの温度が、第1熱交換部群G1に属する熱交換部10により冷却されるバッテリーモジュール1の温度よりも高くなってしまう。
【0046】
第2実施形態では、第1熱交換部群G1と第2熱交換部群G2とが2つの連結部(第1連結部32および第2連結部36)により連結されているため、第1実施形態のように1つの連結部(第1連結部32)のみで連結されている場合と比較して、バッテリー冷却装置全体の強度および剛性を高めることができる。またこれにより、バッテリー冷却装置の搬送および組み付け時に作業者の負担を低減することができる。
【0047】
次に、
図4を参照してバッテリー冷却装置の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第2熱交換部群G2の下流側にさらに第3熱交換部群G3が設けられている。第1熱交換部群G1、第2熱交換部群G2および第3熱交換部群G3は直列に接続されている。第1熱交換部群G1には4つの熱交換部10が属しており、第2熱交換部群G2には3つの熱交換部10が属しており、第3熱交換部群G3には2つの熱交換部10が属している。すなわち、第1実施形態および第2実施形態と同様に、上流側にある熱交換部群ほど、属する熱交換部10の数が多い。
【0048】
第3実施形態において、第1熱交換部群G1および第2熱交換部群G2については属する熱交換部10の数が1つずつ多い点以外は、第1実施形態と同一である。第2熱交換部群G2と第3熱交換部群G3との関係は、第1熱交換部群G1と第2熱交換部群G2との関係と同一である。
【0049】
図4に示すように、第3熱交換部群G3は、複数の熱交換部10の各々の第1端部12(第3熱交換部群G3においては熱媒体流出部)が接続される第5ヘッダ部40と、複数の熱交換部10の各々の第2端部14(第3熱交換部群G3においては熱媒体流入部)が接続される第6ヘッダ部44とを有している。
【0050】
第5ヘッダ部40および第6ヘッダ部44はそれぞれX方向に連続的に延びている。第5ヘッダ部40の内部には、各熱交換部10の熱媒体通路11と第1端部12を介して接続される第5接続路42が形成されている。第6ヘッダ部44の内部には、各熱交換部10の熱媒体通路11と第2端部14を介して接続される第6接続路46が形成されている。
【0051】
第4ヘッダ部28の下流端(熱交換部群G3側の端部)と第6ヘッダ部44の上流端(熱交換部群G2側の端部)とは、第3連結部48により連結されている。熱媒体は、第3連結部48の内部に形成された第3連通路50を介して第2熱交換部群G2から第3熱交換部群G3に流れる。
【0052】
第5接続路42の第2熱交換部群G1側の端部と反対側の端部の近傍に、流出口5が設けられている。流出口5は、第5接続路42に連通している。熱媒体は、第3熱交換部群G3の各熱交換部10の第2端部14から第1端部12に向けて流れる
【0053】
第3実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏することは明らかである。
【符号の説明】
【0054】
1 バッテリー 1a バッテリーモジュール 10 熱交換部 11 熱媒体通路 12 第1端部(熱媒体流入部または熱媒体流出部) 14 第2端部(熱媒体流入部または熱媒体流出部) 16,20,24,28,40,44 ヘッダ部 18,22,26,30,42,46 接続路 32,36,48 連結部 34,38,50 連通路 G1,G2,G3 熱交換部群