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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】減速機、駆動ホイール及び運搬台車
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20231020BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B60K7/00
B62B3/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018039873
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2018144806
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017041936
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 江児
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 隆
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-149155(JP,A)
【文献】特開2014-159272(JP,A)
【文献】実開昭62-059348(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0238105(US,A1)
【文献】特開平05-008640(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10219922(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第01904831(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 7/00
B62B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールと、
回転入力を減速して前記ホイールに出力する減速機と、を備え
前記減速機は、ケースと、前記回転入力を入力される入力部と、前記ホイールに減速された回転を出力する出力部と、前記ケースに少なくとも一部が収容され、前記入力部の回転を減速して前記出力部に伝達する減速機構と、を含み、
前記出力部は、前記ケースに相対回転可能に接続され、
前記減速機は、前記減速機構が前記入力部の回転を前記出力部及び前記ケースの一方に伝達可能であるように構成され、前記ケースが車体に固定されることで前記入力部の回転が前記出力部に伝達され、
前記入力部の回転軸線が、前記出力部の回転軸線と一致しており、
前記減速機の前記ケースは、走行面に対面する一部分において前記ホイールの外縁よりも前記ホイールの回転軸線に接近する側に位置し、前記一部分以外の他の一部分において前記ホイールの外縁よりも前記回転軸線から離間する側に位置し、
前記ケースに、補強部が設けられ、
前記補強部は、前記走行面と平行な方向に延出した延出部及び前記走行面に対面する前記一部分の近傍に設けられた厚肉部の少なくとも一方を含む、駆動ホイール。
【請求項2】
前記ケースは、前記走行面に対面する前記一部分において、平面、又は、前記回転軸線から当該一部分までの距離よりも大きな曲率半径の曲面を含んでいる、請求項1に記載の駆動ホイール。
【請求項3】
前記ケースは、前記走行面に対面する側とは反対側となる一部分において、前記ホイールの外縁よりも前記ホイールの回転軸線に接近する側に位置している、請求項1又は2に記載の駆動ホイール。
【請求項4】
前記ケースは、前記走行面に対面する側とは反対側となる前記一部分が車体に接触するようにして、前記車体に取り付けられる、請求項3に記載の駆動ホイール。
【請求項5】
前記一部分以外の前記他の一部分は、前記回転軸線から前記走行面と平行な方向にずれた位置にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動ホイール。
【請求項6】
モータからの回転を減速してホイールに出力する減速機であって、
ケースと、
前記モータから回転を入力される入力部と、
前記ホイールに回転を出力する出力部と、
前記ケースに少なくとも一部が収容され、前記入力部の回転を減速して前記出力部に伝達する減速機構と、を備え、
前記出力部は、前記ケースに相対回転可能に接続され、
前記減速機は、前記減速機構が前記入力部の回転を前記出力部及び前記ケースの一方に伝達可能であるように構成され、前記ケースが車体に固定されることで前記入力部の回転が前記出力部に伝達され、
前記入力部の回転軸線が、前記出力部の回転軸線と一致しており、
前記出力部の回転軸線に直交する径方向に沿った前記回転軸線から前記ケースの外輪郭までの最大距離は、前記ホイールの半径よりも大きく、
前記出力部の回転軸線に直交する径方向に沿った前記回転軸線から前記ケースの外輪郭までの最小半径は、前記ホイールの半径よりも小さく、
前記ケースに、補強部が設けられ、
前記補強部は、行面と平行な方向に延出した延出部及び前記ケースの前記走行面に対面する部分の近傍に設けられた厚肉部の少なくとも一方を含む、減速機。
【請求項7】
請求項6に記載の減速機と、
前記減速機と接続したホイールと、を備える駆動ホイール。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動ホイール、又は、請求項6に記載の減速機を備える運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機、並びに、減速機を備える駆動ホイール及び運搬台車に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動源とする運搬台車が様々な分野で活用されており、有人操作の運搬台車だけではなく、無人で駆動されるRGV(Rail Guided Vehicle)やAGV(Automatic Guided Vehicle)などの運搬台車が知られている。これらの運搬台車は、モータから出力される動力が減速機を介してホイールに伝達され、走行する。減速機はモータから出力された動力を減速して、トルクが増大された動力を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-59348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、減速機は、その出力が大きいほど大型化する傾向にある。一方で、減速機をその回転軸線と平行な方向から観察した場合の寸法は、減速機が取り付けられるホイールの外径よりも小さく制限される。減速機の寸法がホイールの外径よりも大きいと、減速機がホイールの走行面と接触してしまって、運搬台車の走行を妨げてしまうからである。結果として、減速機の出力は、減速機が取り付けられるホイールの外径に応じて制限されてしまうこととなる。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ホイールの外径に基づく減速機の寸法の制約が低減された減速機、並びに、当該減速機を備える駆動ホイール及び運搬台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による第1の駆動ホイールは、
ホイールと、
回転入力を減速して前記ホイールに出力する減速機と、を備え
前記減速機のケースは、走行面に対面する一部分において前記ホイールの外縁よりも前記ホイールの回転軸線に接近する側に位置し、前記一部分以外の他の一部分において前記ホイールの外縁よりも前記回転軸線から離間する側に位置している。
【0007】
本発明による第1の駆動ホイールにおいて、減速機は、回転入力を減速して出力する減速機構と、減速機構を少なくとも部分的に収容するケースと、を有するようにしてもよい。
【0008】
本発明による第1の駆動ホイールにおいて、前記ケースは、前記走行面に対面する前記一部分において、平面、又は、前記回転軸線から当該一部分までの距離よりも大きな曲率半径の曲面を含んでいてもよい。
【0009】
本発明による第1の駆動ホイールにおいて、前記ケースは、前記走行面に対面する側とは反対側となる一部分において、前記ホイールの外縁よりも前記ホイールの回転軸線に接近する側に位置していてもよい。
【0010】
本発明による第1の駆動ホイールにおいて、前記ケースは、前記走行面に対面する側とは反対側となる前記一部分が車体に接触するようにして、前記車体に取り付けられていてもよい。
【0011】
本発明による第1の駆動ホイールにおいて、前記一部分以外の前記他の一部分は、前記回転軸線から前記走行面と平行な方向にずれた位置にあるようにしてもよい。
【0012】
本発明による第1の駆動ホイールにおいて、前記ケースに、補強部が設けられていてもよい。
【0013】
本発明による第1の駆動ホイールにおいて、前記補強部は、前記走行面と平行な方向に延出した延出部及び前記走行面に対面する前記一部分の近傍に設けられた厚肉部の少なくとも一方を含むようにしてもよい。
【0014】
本発明による減速機は、
モータからの回転を減速してホイールに出力する減速機であって、
車体に固定されるケースと、
前記モータから回転を入力される入力部と、
前記ホイールに回転を出力する出力部と、
前記ケースに少なくとも一部が収容され、前記入力部の回転を減速して前記出力部に伝達する減速機構と、を備え、
前記出力部の回転軸線に直交する径方向に沿った前記回転軸線から前記ケースの外縁までの最大距離は、前記ホイールの半径よりも大きく、
前記出力部の回転軸線に直交する径方向に沿った前記回転軸線から前記ケースの外縁までの最小距離は、前記ホイールの半径よりも小さい。
【0015】
この場合、前記ケースの下部分にカット面が設けられていてもよい。
【0016】
また、前記ケースの上部分にカット面が設けられていてもよい。
【0017】
また、前記ケースの上部分は、前記車体に接触していてもよい。
【0018】
また、前記ケースに、補強部が設けられていてもよい。
【0019】
また、前記補強部は、前後方向に延出した延出部及びカット面近傍に設けられた厚肉部の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0020】
また、本発明による第2の駆動ホイールは、
上述の減速機と、
前記減速機と接続したホイールと、を備える。
【0021】
また、本発明による運搬台車は、
上述の減速機、又は、上述の第1又は第2の駆動ホイールを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ホイールの外径に基づく減速機の寸法の制約を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態を説明する図であって、運搬台車に取り付けられた駆動ホイールを示す図。
図2図1に示す駆動ホイールのII-II線断面図。
図3図1に示す駆動ホイールのIII-III線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面は簡略化されており、例えば各要素の寸法、各要素間の寸法比及び各要素の具体的な形状が、実物のそれらから異なっている部分が図面に含まれうる。ただし、当業者であれば、そのような簡略化された図面から、以下に説明する実施形態及び本発明のその他の実施形態を十分に理解することが可能である。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態に係る運搬台車に取り付けられた駆動ホイールを、その回転軸線と平行な方向から観察した図である。また、図2及び図3は、それぞれ、図1に示す駆動ホイールのII-II線断面図及びIII-III線断面図である。
【0026】
図1に示すように、運搬台車100は、車体10と、車体10に取り付けられた駆動ホイール15と、を備える。運搬台車100は、走行面200を走行する台車である。図2及び図3に示すように、駆動ホイール15にはモータ20が接続されており、駆動装置16を構成している。駆動ホイール15は、ホイール40と、ホイール40に接続した減速機30と、を備える。減速機30は、モータ20から入力される動力、すなわち回転を減速してホイール40に出力し、減速機30に取り付けられたホイール40を回転させる。
【0027】
図2及び図3に示すように、減速機30は、車体10に固定されるケース33と、モータ20からの動力(回転)を入力される入力部35と、ホイール40に回転を出力する出力部32と、ケース33に少なくとも一部が収容され、入力部35の回転を減速して出力部32に伝達する減速機構31と、を備えている。また、図2及び図3に示す例においては、減速機30は、さらに、モータ20を支持する基部34を有している。
【0028】
図1及び図2に示すように、ケース33は、その上部分において、図示しない締結部材によって、車体10の底面に取り付けられている。なお、車体10に固定されるケース33とは、車体10に直接的に取り付けられていてもよいし、車体10に取り付けられる接続部品を介して間接的に取り付けられていてもよい。
【0029】
ここで、本明細書中において、ケース、減速機、あるいは駆動ホイールに対する「上」、「下」、「上下方向」および「前後方向」の用語は、特に指示がない場合、駆動ホイールが取り付けられる運搬台車を走行面上に配置して前進させる状況で判断される「上」、「下」、「前」、「後」、「上下方向」および「前後方向」を意味する。具体的には、「上下方向」とは、図1における紙面の上下方向に相当する。そして、「前後方向」とは、図1における紙面の左右方向に相当する。また、本明細書中において、駆動ホイールあるいは減速機に対する「幅方向」の用語は、「上下方向」及び「前後方向」のいずれにも直交する方向である。具体的には、「幅方向」とは、図1における紙面の垂直方向に相当する。
【0030】
ケース33及び基部34は、概ね筒状の部材であり、モータ20の回転軸線Ax方向に延在する。基部34の一方の端部には、モータ20の本体部21が、図示しない締結部材によって基部34に取り付けられている。一方、基部34の他方の端部には、ケース33の一方の端部が、図示しない締結部材によって固定されている。
【0031】
回転軸線Axを中心とする径方向におけるケース33及び基部34の内側には、入力部35が、回転軸線Axと平行な方向に延在している。また、回転軸線Axを中心とする径方向におけるケース33の内側には、減速機構31及び出力部32の一部が収容されている。出力部32は、減速機構31を支持し、ケース33に対して相対運動可能となっている。なお、図示された例において、回転軸線Axは、幅方向と平行になっている。また、径方向は、回転軸線Axと直交している。
【0032】
入力部35は、減速機構31にモータ20の動力を入力するインプットギアとして機能する。具体的には、入力部35の一方の端部には、モータ20の出力軸25が接続されている。これにより、入力部35は、モータ20の出力軸25と一体的に、回転軸線Axを中心に回転することができる。このようにして、モータ20から出力される動力(回転)が、入力部35に伝達される。入力部35は、その他方の端部において、減速機構31にモータ20の動力を入力するようになっている。
【0033】
なお、モータ20の本体部21及び出力軸25は、それぞれ、基部34及び入力部35に着脱可能に取り付けられている。そのため、モータ20は、必要に応じて交換することが可能である。
【0034】
減速機構31は、入力部35から入力される動力(回転)を減速して、トルクが増大された動力を、減速機構31を支持するキャリア又はキャリアを収容するケース33に、伝達する。図2に示す例においては、ケース33は車体10に固定されているため、キャリアが出力部32として機能し、減速機構31は、この出力部32に動力を伝達し、出力部32を回転させる。
【0035】
図2に示す例においては、減速機30は、偏心揺動型減速機として構成されている。ケース33の内周面には、周方向に沿って配列された内歯が形成されている。減速機構31は、ケース33の内歯と噛み合う外歯を有した偏心揺動歯車となっている。減速機構31をなす偏心揺動歯車は、出力部32をなすキャリアによって偏心揺動可能に支持されている。減速機構31をなす偏心揺動歯車は、入力部35の回転にともなって、キャリアに対して偏心揺動する。この際、偏心揺動歯車の外歯はケース33の内歯と噛み合い、減速機構31を支持するキャリアがケース33に対して相対回転する。偏心揺動型の減速機は、一般にバックラッシが小さく、駆動ホイール15全体の誤動作を低減させることが可能である。もちろん、減速機30としては、偏心揺動型減速機に限られず、他の方式の減速機も採用可能である。例えば、減速機30は、遊星歯車型減速機であってもよいし、遊星歯車型及び偏心揺動型が組み合わされた減速構造によって構成されてもよい。また、他の任意の方式の減速構造によって減速機30が構成されてもよい。なお、減速機30が遊星歯車型減速機である場合、一例として、太陽歯車を入力部とし、ケース33の内歯と噛み合う外歯を有した遊星歯車を減速機構31とし、遊星歯車を回転可能に支持しケース33に対して相対回転可能なキャリアを出力部32とすることができる。
【0036】
出力部32は、ケース33との間に配置された一対の軸受60a,60bによって、ケース33に対して相対回転可能に接続されている。図2及び図3に示す例においては、減速機構31が固定されたケース33と噛み合うことにより、出力部32は、減速機構31とともに減速された回転数にて回転軸線Axを中心に回転する。出力部32は、また、一対の軸受60a,60bによって、ケース33に対する回転軸線Axと平行な方向への移動を規制されている。
【0037】
一対の軸受60a,60bは、また、出力部32やケース33等に加えられる荷重を支える。例えば運搬台車100が直進する場合、出力部32やケース33等には、ホイール40からラジアル方向荷重が加えられ得る。また、運搬台車100が曲がる場合、出力部32やケース33等は、ホイール40からラジアル方向荷重に加えスラスト方向荷重も受ける。ここでいうラジアル方向とは、回転軸線Axを中心とする径方向である。また、スラスト方向とは、回転軸線Axが延在する方向である。一対の軸受60a,60bは、出力部32とケース33の間でスラスト方向荷重およびラジアル方向荷重の両方を受けることができる。このような一対の軸受60a,60bが出力部32とケース33との間に配置されていることにより、当該スラスト方向荷重およびラジアル方向荷重が減速機30の各部品、例えば減速機構31、に伝えられることが防止される。この結果、減速機30を長寿命化させることが可能である。
【0038】
なお、図2及び図3に示す例において、一対の軸受60a,60bは、アンギュラ玉軸受であるが、これに限られず、他の方式の軸受であってもよい。例えば、一対の軸受60a,60bは、ホイール40の回転軸線Bxと平行な軸線を中心として回転可能な転動体を有する円筒コロ軸受であってもよい。この場合も、一対の軸受60a,60bは、少なくともラジアル方向荷重を受けることができる。この結果、当該ラジアル方向荷重が減速機30の各部品、例えば減速機構、に伝えられることが防止される。この結果、減速機30を長寿命化させることが可能である。
【0039】
出力部32の他方の端部には、ホイール40を接続するための接続部80が、ボルト等の締結部材53により固定されている。この接続部80に対して、ホイール40が、ボルト等の締結部材52により固定される。
【0040】
図1に示すように、ホイール40は、出力部32の接続部80に、ホイール40の回転軸線Bxと出力部32の回転軸線Axとが一致するように固定される。
【0041】
基部34とケース33と出力部32とによって囲まれる内部空間Sは、シール部70によってシールされている。本実施形態のシール部70は、基部34と入力部35との間をシールする第1シール要素71と、ケース33と出力部32との間をシールする第2シール要素72と、を有する。減速機構31及び軸受60a,60bは、シール部70によってシールされて閉じられた内部空間Sに配置されている。
【0042】
次に、ケースについて、さらに詳細に説明する。
【0043】
ところで、上述したように、減速機の出力を上げるには、寸法の大きい大型の減速機を用いればよい。しかしながら、大型の減速機30を用いた場合、減速機と走行面との干渉を防止するため、大径のホイールを使用する必要が生じ、台車の車高も高くなってしまっていた。さもなければ、減速機が走行面と接触し、この接触が台車の走行を阻害することになる。
【0044】
一方、ここで説明する台車100には、大型の減速機30を使用して高出力を確保しながらホイール40の大型化を抑制して車高を低くするための工夫がケース33になされている。具体的には、ホイール40の回転軸線Axと直交する径方向に沿った回転軸線Axからケース33の外縁の一部分までの距離は、ホイール40の半径Rwよりも長くする一方で、ケース33と走行面200との接触を防止するため手段Mが、ケース33に設けられている。以下、ケース33の構成について詳述する。
【0045】
上述したように、ケース33は概ね筒状である。図1乃至図3から理解されるように、ケース33の内輪郭S1は、減速機構31と噛み合う内歯によって形成されており、出力部32の回転軸線Axから各内歯の歯先までの距離が一定である。一方、ケース33の外輪郭(外縁)S2の回転軸線Axからの距離は一定ではない。より詳細には、出力部32の回転軸線Axを中心としたケース33の最大外半径Rmaxがホイール40の半径Rwよりも大きく(図1及び図3参照)、出力部32の回転軸線Axを中心としたケース33の最小外半径Rminがホイール40の半径Rwよりも小さい(図1及び図2参照)。
【0046】
ここで、本明細書中において「出力部の回転軸線を中心としたケースの最大外半径」とは、出力部の回転軸線からケースの外輪郭(外縁)までの、出力部の回転軸線を中心とする径方向に沿った、最大距離のことである。また、本明細書中において「出力部の回転軸線を中心としたケースの最小外半径」とは、出力部の回転軸線からケースの外輪郭(外縁)までの、出力部の回転軸線を中心とする径方向に沿った、最小距離のことである。
【0047】
図1を参照してより詳細に説明すると、運搬台車100の前後方向C2に沿ったケース33の幅W2は、ホイール40のホイール径(ホイール40の直径)Dwよりも大きい。また、運搬台車100の上下方向C1に沿ったケース33の幅W1は、ホイール40のホイール径Dwよりも小さい。
【0048】
さらに別の表現を行うと、減速機30のケース33は、走行面200に対面する一部分においてホイール15の外縁よりもホイール15の回転軸線Bxに接近する側に位置し、前記一部分以外の他の一部分においてホイール15の外縁よりも回転軸線Bxから離間する側に位置している。図1に示された回転軸線Bxと平行な方向からの観察において、ケース33は、走行面200に対面する前記一部分において、平面、又は、回転軸線Bxから当該一部分までの距離よりも大きな曲率半径の曲面を含んでいてもよい。また、図1に示された回転軸線Bxと平行な方向からの観察において、前記一部分以外の前記他の一部分は、回転軸線Bxから走行面200と平行な方向にずれた位置にあるようにしてもよい。
【0049】
図示された例において、ケース33の下部分には、カット面P1が設けられている。ここで、本明細書中において「カット面」とは、外輪郭がその他の部分と不連続となる面のことである。典型的なカット面として、出力部の回転軸線と平行な方向からの観察において、平坦面(平取り面)や、出力部の回転軸線を中心とした円弧よりも大径の曲面となっている面のことである。図1に示す例においては、カット面P1は平坦面、とりわけ前後方向に延びる平坦面である。
【0050】
また、また、図1に示された回転軸線Bxと平行な方向からの観察において、ケース33は、走行面200に対面する側とは反対側となる一部分において、ホイール15の外縁よりもホイール15の回転軸線Bxに接近する側に位置していてもよい。そして、ケース33は、走行面200に対面する側とは反対側となる前記一部分が車体10に接触するようにして、車体10に取り付けられていてもよい。
【0051】
図1に示す例においては、ケース33の上部分にも、平坦なカット面P2が設けられている。カット面P2において、ケース33は車体10の底面に接触する。なお、カット面P2は、平坦面に限られず、曲面であってもよい。また、ケース33が車体10に接続部品を介して取り付けられる場合、カット面P2は、当該接続部品と接触することができるように形成される。ケース33の上部にカット面P2が設けられていることにより、減速機30を低床の運搬台車にも取り付けることができる。また、カット面P2を車体10あるいは接続部品に接触させることにより、ケース33のうちカット面P2が設けられて厚みが薄くなっている部分を、車体10または接続部品によって補強することができる。
【0052】
このカット面P1,P2が、ケース33と走行面200との接触を防止するため手段Mを形成している。すなわち、ケース33と走行面200との接触を防止するため手段Mは、切欠部CPとして形成され得る。この切欠部CPは、回転軸線Ax,Bxと平行な方向からの観察において直線状となる面、或いは、回転軸線Ax,Bxと平行な方向からの観察において回転軸線Ax,Bxからの距離よりも大きな曲率半径を持つ曲線を形成する。図1に示された例において、切欠部CPは、回転軸線Ax,Bxと平行な方向からの観察において直線となっている。切欠部CPは、ケース33の走行面200に対面する領域に設けられてカット面P1をなし、また、ケース33の車体10に対面する領域に設けられてカット面P2をなしている。なお、「切欠部」および「カット面」との名称は、単に部位を指すものであり、その作製方法まで特定するものではない。したがって、「切欠部」および「カット面」は、切り欠くことやカットすることによって得られた部分や面のみを意味するものではなく、鋳造や鍛造によって得られた部分や面を含む。
【0053】
ケース33のうちカット面P1,P2が設けられる部分は、他の部分と比較して厚みの薄い薄肉部T1,T2となっている。このような薄肉部T1,T2を有するケース33の剛性を向上させるため、ケース33には、補強部36が設けられている。補強部36は、図3に示すように回転軸線Axに沿ったケース33の基部34の側の一端及びホイール40の側の他端から、図1に示すように前後方向C2に延出した延出部361を含む。延出部361は、ケース33と一体形成されている。延出部361の上端面、すなわち車体10側の面は、カット面P2と面一となる平坦面である。延出部361は、当該上端面において、車体10に接触する。
【0054】
さらに、補強部36は、図1及び図2に示すように、カット面P1,P2近傍に設けられた厚肉部362a,362bを含む。厚肉部362a,362bは、ケース33のホイール40の側の面P33から幅方向C3に突出する部分である。厚肉部362a,362bは、ケース33と一体形成されている。カット面P1近傍の厚肉部362aは、出力部32の回転軸線Axと平行な方向からの観察において、カット面P1近傍の薄肉部T1と重なるように設けられている。また、カット面P2近傍の厚肉部362bは、出力部32の回転軸線Axと平行な方向からの観察において、カット面P2近傍の薄肉部T2と重なるように設けられている。
【0055】
このような減速機30を備えた駆動装置16が車体10に取り付けられることにより、運搬台車100が構成される。なお、上述の減速機30は、モータ20からの動力が減速機30を介してホイール40に伝達される台車類全般に対して適用可能である。例えば、走行時にオペレータによるアシストを要する台車に対してだけではなく、走行時にオペレータによるアシストを要しないAGVやRGVなどの台車(すなわち無人搬送車)に対しても、本発明に係る減速機30を応用することが可能である。
【0056】
以上に説明した本実施の形態による減速機30は、モータ20からの回転を減速してホイール40に出力する減速機30であって、車体10に固定されるケース33と、モータ20から回転を入力される入力部35と、ホイール40に回転を出力する出力部32と、ケース33に少なくとも一部が収容され、入力部35の回転を減速して出力部32に伝達する減速機構31と、を備えている。ケース33には、ケース33と走行面200との接触を防止するための手段Mが、設けられている。その一方で、ホイール40の回転軸線Bxと直交する径方向に沿った当該回転軸線Bxからケース33の外縁の一部分までの距離は、ホイール40の半径Rwよりも長くなっている。そして、出力部32の回転軸線Axを中心としたケース33の最大外半径Rmaxは、ホイール40の半径Rwよりも大きく、出力部32の回転軸線Axを中心としたケース33の最小外半径Rminは、ホイール40の半径Rwよりも小さい。上述の減速機30では、減速機30のケース33は、走行面200に対面する一部分においてホイール15の外縁よりもホイール15の回転軸線Bxに接近する側に位置し、前記一部分以外の他の一部分においてホイール15の外縁よりも回転軸線Bxから離間する側に位置している。
【0057】
このような減速機30においては、回転軸線Axと平行な方向からの観察におけるケース33の外輪郭S2の最大寸法W2を、ホイール40のホイール径Dwよりも大きくすることができる。そして、回転軸線Axと平行な方向からの観察におけるケース33の内輪郭S1の寸法を、このような外輪郭S2の最大寸法W2に応じた寸法とすることができる。これにより、ケース33に少なくとも一部が収容される減速機構31の寸法も、ケース33の内輪郭S1の寸法に応じた寸法、したがって外輪郭S2の最大寸法W2に応じた寸法にすることができる。この結果、減速機30の出力を、ホイール40のホイール径Dwに応じた寸法を有する減速機よりも大きくすることができる。
【0058】
ケース33と走行面200との接触を防止するための手段Mとして、ホイール40の回転軸線Ax,Bxと平行な方向からの観察において直線状となる面、或いは、ホイール40の回転軸線Ax,Bxと平行な方向からの観察において回転軸線Ax,Bxからの距離よりも大きな曲率半径を持つ曲線を形成する切欠部CPを採用することができる。この切欠部CPは、カット面P1,P2として形成され得る。
【0059】
具体的には、本実施の形態では、ケース33の下部分にカット面P1が設けられている。すなわち、切欠部CPは、ケース33の走行面200に対面する位置に、設けられている。例えば、ケース33は、走行面200に対面する前記一部分において、平面、又は、回転軸線Bxから当該一部分までの距離よりも大きな曲率半径の曲面を含むことができる。ケース33の下部分にカット面P1が設けられていることにより、回転軸線Axと平行な方向からの観察におけるケース33の外輪郭S2の最大寸法W2をホイール40のホイール径Dwよりも大きくしても、ケース33が、ホイール40が走行する走行面200と接触してしまって運搬台車100の走行を妨げることを効果的に回避することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、ケース33の上部分にカット面P2が設けられている。すなわち、切欠部CPは、ケース33の車体10に対面する位置に、設けられている。例えば、ケース33は、走行面200に対面する側とは反対側となる一部分において、ホイール40の外縁よりもホイール40の回転軸線Bxに接近する側に位置していてもよい。これにより、減速機30を車体10の高さが低い低床の運搬台車に取り付けることが可能である。
【0061】
この場合において、本実施の形態では、ケース33の上部分は、車体10に接触するようにしてもよい。すなわち、切欠部CPまたはカット面P2が、車体10に接触するようにしてもよい。例えば、ケース33は、走行面200に対面する側とは反対側となる一部分が車体に接触するようにしてもよい。これにより、ケース33の上部分にカット面P2が設けられてケース33の剛性が所望の剛性よりも低くなってしまっても、ケース33を車体10によって補強することができる。
【0062】
なお、図示された例において、回転軸線Bxと平行な方向からの観察においてホイール40の外縁よりも回転軸線Bxから離間する側に位置するケース33の外縁の一部分は、回転軸線Bxから走行面200と平行な方向にずれた位置にある。このような例によれば、減速機30の出力を、ホイール40のホイール径Dwに応じた寸法を有する減速機よりも有効に大きくすることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、ケース33に、補強部36が設けられている。より具体的には、補強部36は、前後方向C2に延出した延出部361及びカット面P1,P2近傍に設けられた厚肉部362a,362bの少なくとも一方を含む。これにより、ケース33にカット面P1,P2が設けられてケース33の剛性が所望の剛性よりも低くなってしまっても、ケース33を補強部36で補強することができる。
【0064】
また、本実施の形態による駆動ホイール15は、上述の減速機30と、減速機30と接続したホイール40と、を備える。
【0065】
このような駆動ホイール15においては、ホイール40のホイール径Dwに対応する寸法の減速機よりも出力の大きな減速機30を用いることができる。具体的には、このような駆動ホイール15で用いられる減速機30においては、回転軸線Axと平行な方向からの観察におけるケース33の外輪郭S2の最大寸法W2を、ホイール40のホイール径Dwよりも大きくすることができる。そして、回転軸線Axと平行な方向からの観察におけるケース33の内輪郭S1の寸法を、このような外輪郭S2の最大寸法W2に応じた寸法とすることができる。これにより、ケース33に少なくとも一部が収容される減速機構31の寸法も、ケース33の内輪郭S1の寸法に応じた寸法、したがって外輪郭S2の最大寸法W2に応じた寸法にすることができる。この結果、減速機30の出力を、ホイール40のホイール径Dwに応じた寸法を有する減速機よりも大きくすることができる。
【0066】
また、本実施の形態による運搬台車100は、上述の減速機30、又は、上述の駆動ホイール15を備える。
【0067】
このような運搬台車100においては、ホイール40のホイール径Dwに対応する寸法の減速機よりも出力の大きな減速機30を用いることができる。具体的には、このような運搬台車100で用いられる減速機30においては、回転軸線Axと平行な方向からの観察におけるケース33の外輪郭S2の最大寸法を、ホイール40のホイール径Dwよりも大きくすることができる。そして、回転軸線Axと平行な方向からの観察におけるケース33の内輪郭S1の寸法を、このような外輪郭S2の最大寸法W2に応じた寸法とすることができる。これにより、ケース33に少なくとも一部が収容される減速機構31の寸法も、ケース33の内輪郭S1の寸法に応じた寸法、したがって外輪郭S2の最大寸法W2に応じた寸法にすることができる。この結果、減速機30の出力を、ホイール40のホイール径Dwに応じた寸法を有する減速機よりも大きくすることができる。
【0068】
本発明は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。例えば、上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素及び/又は方法以外の構成要素及び/又は方法を含む形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、上述の構成要素及び/又は方法のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。
【符号の説明】
【0069】
10 車体
15 駆動ホイール
20 モータ
25 出力軸
30 減速機
31 減速機構
32 出力部
33 ケース
34 基部
35 入力部
36 補強部
40 ホイール
60a 軸受
60b 軸受
100 台車
200 走行面
M 手段
CP 切欠部
図1
図2
図3