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7370142クレーンシステム、及びクレーンシステムの監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】クレーンシステム、及びクレーンシステムの監視方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20231020BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20231020BHJP
   B66C 23/16 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C15/00 A
B66C23/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019019805
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020125204
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】庄福 勝美
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-107762(JP,A)
【文献】特開平07-300295(JP,A)
【文献】特開2001-255239(JP,A)
【文献】特開平10-307015(JP,A)
【文献】特開2016-193789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
B66C 15/00
B66C 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を移動させるクレーンシステムであって、
前記クレーンシステムの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を旋回方向及び径方向にそれぞれ複数の領域に分割する領域設定部と、
それぞれの前記領域に対する負荷を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する演算部と、
前記演算部の演算結果に基づく情報を出力する出力部と、を備え、
前記測定部は、前記対象物の重さに旋回半径を掛け合わせたモーメントを前記領域に対する負荷として測定する、クレーンシステム。
【請求項2】
対象物を移動させるクレーンシステムであって、
前記クレーンシステムの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を旋回方向及び径方向にそれぞれ複数の領域に分割する領域設定部と、
それぞれの前記領域に対する負荷を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する演算部と、
前記演算部の演算結果に基づく情報を出力する出力部と、を備え、
前記演算部は、前記監視対象として前記クレーンシステムの旋回ベアリングの負荷レベルを演算し、
特定の旋回角度における径方向の全領域の負荷の積算値を全て足し合わせることで、当該旋回角度における前記旋回ベアリングの負荷を演算する、クレーンシステム。
【請求項3】
対象物を移動させるクレーンシステムであって、
前記クレーンシステムの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を旋回方向及び径方向にそれぞれ複数の領域に分割する領域設定部と、
それぞれの前記領域に対する負荷を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する演算部と、
前記演算部の演算結果に基づく情報を出力する出力部と、を備え、
前記演算部は、負荷レベルの高い箇所を優先的に点検させるように、ユーザーを誘発するような情報を出力する、クレーンシステム。
【請求項4】
対象物を移動させるクレーンシステムであって、
前記クレーンシステムの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を旋回方向及び径方向にそれぞれ複数の領域に分割する領域設定部と、
それぞれの前記領域に対する負荷を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する演算部と、
前記演算部の演算結果に基づく情報を出力する出力部と、を備え、
前記測定部は、前記移動物が前記領域へ入る時の負荷と、当該領域から出る時の負荷との平均値を当該領域における負荷として測定する、クレーンシステム。
【請求項5】
前記クレーンシステムは、ジブクレーンである、請求項1~4の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項6】
対象物を移動させるクレーンシステムの監視方法であって、
前記クレーンシステムの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を旋回方向及び径方向にそれぞれ複数の領域に分割する領域設定工程と、
それぞれの前記領域に対する負荷を測定する測定工程と、
前記測定工程の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する演算工程と、
前記演算工程の演算結果に基づき、負荷レベルの高い箇所を優先的に点検させる情報を出力する出力工程と、を備え
前記測定工程では、前記対象物の重さに旋回半径を掛け合わせたモーメントを前記領域に対する負荷として測定する、クレーンシステムの監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンシステム、及びクレーンシステムの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、レール上を走行する走行体と、走行体上に設置される塔体と、塔体上に設置される旋回体と、旋回体に取り付けられるジブと、を備えるジブクレーンが開示されている。このジブクレーンは、旋回体を旋回させることでジブの向きを変更し、ジブを起伏させることで旋回半径を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-198630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなクレーンシステムでは、当該クレーンシステムの稼働部位に対して、メンテナンスを行う必要がある。しかしながら、クレーンシステムの稼働状況は、使用場所などによって異なるため、各稼働部位中でも、負荷レベルの大きい部位と、負荷レベルの小さい部位が存在する。従って、クレーンシステムの全ての稼働部位に対して同様なメンテナンスを行うと、メンテナンスの作業効率が低下してしまう。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、クレーンシステムのメンテナンスの作業効率を向上できるクレーンシステム、及びクレーンシステムの監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクレーンシステムは、対象物を移動させるクレーンシステムであって、クレーンシステムの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を複数の領域に分割する領域設定部と、それぞれの領域に対する負荷を測定する測定部と、測定部の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する演算部と、演算部の演算結果に基づく情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
本発明に係るクレーンシステムは、クレーンシステムの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を複数の領域に分割する領域設定部と、それぞれの領域に対する負荷を測定する測定部と、を備える。このように測定部が、移動範囲を分割した複数の領域に対する負荷を測定する場合、実際のクレーンシステムの稼働状況に沿った負荷の測定を行うことができる。これにより、演算部は、どの領域にどの程度の負荷がかかっているかの分布を把握することができる。演算部は、このような測定部の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算することで、監視対象のどの部位での負荷レベルが大きくなっているかを演算することができる。出力部が、このような演算部の演算結果に基づく情報を出力することで、ユーザーは、メンテナンスの際に優先的に点検を行う部位を把握することができる。これにより、クレーンシステムのメンテナンスの作業効率を向上できる。
【0008】
クレーンシステムは旋回クレーンであって、演算部は、監視対象としてクレーンシステムの旋回ベアリングの負荷レベルを演算してよい。旋回ベアリングには、クレーンシステムの旋回時に負荷がかかる。しかし、クレーンシステムの旋回状況によって、旋回ベアリングは、周方向における負荷レベルの分布がばらつき易くなる。よって、このような旋回ベアリングを監視対象とすることで、周方向において負荷レベルが高い部位を優先的に点検することができる。
【0009】
クレーンシステムにおいて、演算部は、監視対象としてクレーンシステムをガイドする走行レールの負荷レベルを演算してよい。走行レールには、クレーンシステムの走行時に負荷がかかる。しかし、クレーンシステムの走行状況によって、走行レールは、長手方向における負荷レベルの分布がばらつき易くなる。よって、このような走行レールを監視対象とすることで、走行レールの各部位のうち、負荷レベルが高い部位を優先的に点検することができる。
【0010】
クレーンシステムにおいて、演算部は、監視対象としてクレーンシステムのロープの負荷レベルを演算してよい。ロープには、クレーンシステムの巻上げ・巻下げ時、起伏時に負荷がかかる。しかし、クレーンシステムの稼働状況によって、ロープは、長手方向における負荷レベルの分布がばらつき易くなる。よって、このようなロープを監視対象とすることで、ロープの各部位のうち、負荷レベルが高い部位を優先的に点検することができる。
【0011】
クレーンシステムは、ジブクレーンであってよい。ジブクレーンは、稼働部位も多く、各部位における負荷レベルのバラツキも大きい。よって、本願の効果がより顕著となる。
【0012】
クレーンシステムにおいて、測定部は、移動物が領域へ入る時の負荷と、当該領域から出る時の負荷との平均値を当該領域における負荷として測定してよい。これにより、測定部は、領域における負荷を状況に合わせて正確に測定できる。
【0013】
本発明に係るクレーンシステムの監視方法は、対象物を移動させるクレーンシステムの監視方向であって、クレーンシステムの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を複数の領域に分割する領域設定工程と、それぞれの領域に対する負荷を測定する測定工程と、測定工程の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する演算工程と、演算工程の演算結果に基づき、負荷レベルの高い箇所を優先的に点検させる情報を出力する出力工程と、を備える。
【0014】
このクレーンシステムの監視方法によれば、上述のクレーンシステムと同趣旨の作用・効果を得ることができる。また、出力工程では、負荷レベルの高い箇所を優先的に点検させる情報を出力する。これにより、ユーザーは、メンテナンス時には負荷レベルの高い箇所を優先的に点検するように誘発される。従って、メンテナンスの作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クレーンシステムのメンテナンスの作業効率を向上できるクレーンシステム、及びクレーンシステムの監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るクレーンシステムを示す概略図である。
図2図1に示すクレーンシステムの概略構成図である。
図3】クレーンシステムの巻上げ・巻下げ動作及び起伏動作に関わる稼働部位を監視対象とする場合について説明するための図である。
図4】クレーンシステムの旋回動作に関わる稼働部位を監視対象とする場合について説明するための図である。
図5】旋回ベアリングの全周にわたる負荷レベルの分布を示すグラフである。
図6】クレーンシステムの走行動作で負荷を受ける部位を監視対象とする場合について説明するための図である。
図7】ワイヤーロープを監視対象とする場合について説明するための図である。
図8】本発明の実施形態に係るクレーンシステムの監視方法を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態に係るクレーンシステムの監視方法を示すフローチャートである。
図10】ワイヤーロープの各層の負荷レベルを示す三次元グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明によるクレーンシステムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るクレーンシステムを示す概略図である。図2は、図1に示すクレーンシステムの概略構成図である。
【0018】
本実施形態に係るクレーンシステム100は、各箇所における負荷状況に関するデータを蓄積すると共に、メンテナンス時などに蓄積したデータを有効に利用することができるシステムである。クレーンシステム100は、システム構成としては、計測装置10と、制御装置40と、入力部51と、出力部52と、を備える。
【0019】
図2に示すように、クレーンシステム100は、旋回を行うと共に走行を行うことができるジブクレーンである。クレーンシステム100は、装置構成としては、走行体11、塔体12、旋回体13、ジブ14、マスト15、及び走行レールRを有している。
【0020】
走行体11は、一対の脚部11a,11b、及び、一対の脚部11a,11bをそれらの上部で接続する桁部11cを含んでいる。一対の脚部11a,11bの下部には、走行レールR上を駆動される車輪が設けられている。走行体11は、車輪が走行レールR上を駆動されることで、走行レールRに沿って走行する。塔体12は、走行体11の桁部11c上に立設された柱状の構造体である。
【0021】
旋回体13は、塔体12の上端に設けられ、塔体12に対して鉛直軸線CL回りに旋回可能である。塔体12と旋回体13との間には旋回ベアリング17が設けられる。旋回体13は、その上部に運転室13aを含んでいる。ジブ14は、旋回体13の一端部13bにピン結合されている。ジブ14は、旋回体13の一端部13b側を基端部14aとして延在している。マスト15は、旋回体13上に立設されている。旋回体13の他端部13c、マスト15の上端部であるマストトップ15a、及びジブ14の先端部14bは、ワイヤーロープW1により互いに支持されている。ワイヤーロープW1が巻取り及び巻戻しされることにより、ジブ14は、その基端部14aを支点として起伏動作を行う。また、ワイヤーロープW2は、吊部16と連結されている。ワイヤーロープW2が巻き取り及び巻戻しされることにより、吊部16は、上下方向へ移動する。
【0022】
図1に戻り、計測装置10は、荷重計21と、位置検出器22を備えている。荷重計21は、クレーンシステム100が吊っている荷重を測定するセンサである。位置検出器22は、吊部16で吊られる荷物の移動範囲(すなわち吊部16の移動範囲)を検出することができるセンサである。上述のように、ジブ14が起伏動作を行うことで、吊部16の鉛直軸線CLからの旋回半径が変化する。また、吊部16が上下動することによって、揚程が変化する。位置検出器22は、これらの旋回半径及び揚程を検出することができる。また、吊部16の鉛直軸線CL周りの位置は、旋回体13の旋回によって変化する。位置検出器22は、吊部16が旋回方向におけるどの位置(角度)に存在するかを検出することができる。また、位置検出器22は、走行レールRに沿った方向のうち、クレーンシステム100がどの位置に存在するかを検出できる。荷重計21及び位置検出器22は、測定結果を制御装置40へ送信する。
【0023】
入力部51は、ユーザーが制御装置40に対して情報入力を行うインターフェースである。入力部51は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどが採用される。出力部52は、制御装置40からの情報をユーザーに出力するインターフェースである。出力部52は、例えば、モニタ、スピーカなどが採用される。
【0024】
制御装置40は、クレーンシステム100全体を制御する装置である。制御装置40は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。制御装置40では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御装置40は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0025】
制御装置40は、領域設定部41と、測定部42と、演算部43と、記憶部44と、を備えている。制御装置40は、クレーンシステム100のうち、当該クレーンシステム100の稼働によって負荷が蓄積される部位を監視することができる。このような部位を監視対象と称する。このような監視対象として、例えば、ワイヤーロープW1,W2、旋回ベアリング17、走行レールRなどが挙げられる。制御装置40は、クレーンシステム100の使用状態の履歴に応じて、監視対象のどの部分に特に負荷が蓄積しているかを把握することができる。
【0026】
領域設定部41は、クレーンシステム100の動作に伴って移動する移動物の移動範囲を複数の領域に分割する。領域設定部41は、監視対象の負荷レベルに影響を及ぼす移動物の移動について、領域の分割処理を行う。例えば、移動物が荷物(吊部16)である場合、当該荷物は上下方向、半径方向、及び旋回方向に移動するが、どの方向における移動範囲について分割処理を行うかは、監視対象に応じて決定してよい。
【0027】
測定部42は、領域設定部41によって設定された、それぞれの領域に対する負荷を測定する部分である。測定部42は、荷重計21及び位置検出器22からの情報に基づいて、各領域の負荷を測定する。測定部42は、吊部16に吊される荷物の荷重以外にモーメントも作用する場合、当該モーメントも考慮して負荷を測定する。
【0028】
演算部43は、測定部42の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する。なお、負荷レベルとは、監視期間のクレーンシステム100の使用状況の中で、監視対象に対してどの程度の負荷がかかって来たのかを示すパラメータである。負荷レベルとして、負荷の積算値が採用されてよい。ただし、負荷レベルは、特定の領域に対して、どの程度の負荷がかかったのかを示す情報であれば、具体的にどのようなパラメータを用いるかは限定されない。また、演算部43は、各領域の負荷レベルの演算結果に基づいて、監視対象物の各部位に作用する負荷レベルを演算することができる。記憶部44は、演算部43によって演算された各領域の負荷レベルを記憶しておく部分である。演算部43は、監視対象に作用した負荷レベルを出力部52にて出力する。演算部43がどのような情報を出力部52で出力するかは、具体例と共に後述する。
【0029】
図3を参照して、クレーンシステム100の巻上げ・巻下げ動作及び起伏動作に関わる稼働部位(すなわち当該動作で負荷を受ける部位)を監視対象とする場合について説明する。巻上げ・巻下げ動作に関わる稼働部位として、例えばワイヤーロープW2が挙げられる。図3に示すように、領域設定部41は、荷物が上下動する移動範囲である「揚程」を複数の領域に分割する。例えば、領域設定部41は、「揚程」を上下方向に一定ピッチで分割することで複数の領域EAを設定する。
【0030】
測定部42は、荷重計21及び位置検出器22の結果に基づいて、各領域EAに対する負荷を測定する。例えば、「重さX1」の荷物が位置P1から軌道TLを通過して位置P2へ移動した場合を想定する。このとき、測定部42は、位置P1に対応する領域EAから位置P3に対応する領域EAに対して「重さX1」分の負荷が作用したことを測定する。また、測定部42は、位置P3に対応する領域EAから位置P2に対応する領域EAに対して「重さX1」分の負荷が作用したことを測定する。演算部43は、記憶部44から、監視開始から現在に至るまでの各領域EAでの負荷の積算値を読み出す。また、演算部43は、読み出した積算値に対して、今回の測定によって得られた負荷情報(「重さX1」という負荷が、どの領域EAに作用したかという情報)を対応する領域EAの積算値に加算する。これにより、演算部43は、監視開始から現在に至るまでの、各領域EAに作用した負荷レベル(ここでは負荷の積算値)を更新する。演算部43は、監視対象であるワイヤーロープW2の負荷レベルを示すデータとして、各領域EAの負荷の積算値を用いることができる。記憶部44は、更新された情報を記憶する。記憶部44は、上下方向における各領域EAでの負荷の積算値を示す最新のグラフGAを得ることができる。
【0031】
図3を参照して、クレーンシステム100の起伏動作に関わる稼働部位(すなわち当該動作で負荷を受ける部位)を監視対象とする場合について説明する。起伏動作に関わる稼働部位として、例えばワイヤーロープW1が挙げられる。図3に示すように、領域設定部41は、荷物が径方向において移動し得る移動範囲である「作業半径」を複数の領域に分割する。なお、作業半径の範囲は、起伏によって吊部16が鉛直軸線CLから最も遠くなるときの最大半径と、起伏によって吊部16が鉛直軸線CLに最も近くなるときの最小半径との間の領域に設定される。例えば、領域設定部41は、径方向に並ぶグラフの幅を一つの領域EBとする。
【0032】
測定部42は、荷重計21及び位置検出器22の結果に基づいて、各領域EBに対する負荷を測定する。例えば、前述のように「重さX1」の荷物が位置P1から軌道TLを通過して位置P2へ移動した場合を想定する。このとき、測定部42は、位置P1に対応する領域EAから位置P2に対応する領域EAに対して「重さX1」分の負荷が作用したことを測定する。演算部43は、記憶部44から、監視開始から現在に至るまでの各領域EBでの負荷の積算値を読み出す。また、演算部43は、読み出した積算値に対して、今回の測定によって得られた負荷情報(「重さX1」という負荷が、どの領域EBに作用したかという情報)を対応する領域EBの積算値に加算する。これにより、演算部43は、監視開始から現在に至るまでの、各領域EBに作用した負荷レベル(ここでは負荷の積算値)を更新する。演算部43は、監視対象であるワイヤーロープW1の負荷レベルを示すデータとして、各領域EBの負荷の積算値を用いることができる。記憶部44は、更新された情報を記憶する。これにより、記憶部44は、上下方向における各領域EBでの負荷の積算値を示す最新のグラフGBを得ることができる。
【0033】
次に、図4を参照して、クレーンシステム100の旋回動作に関わる稼働部位(すなわち当該動作で負荷を受ける部位)を監視対象とする場合について説明する。旋回動作に関わる稼働部位として、例えば旋回ベアリング17が挙げられる。図4(a)に示すように、領域設定部41は、クレーンシステム100の旋回動作によって荷物が移動する移動範囲を複数の領域に分割する。上方から見たときに、移動範囲は、鉛直軸線CLを中心とした円を描くように設定される。領域設定部41は、移動範囲を旋回方向に複数の領域に分割する。また、クレーンシステム100の起伏によって荷物の径方向の位置が変化する。従って、領域設定部41は、移動範囲を径方向にも複数の領域に分割する。これにより、領域設定部41は、移動範囲を旋回方向及び径方向に分割することで複数の領域ECを設定する。
【0034】
測定部42は、荷重計21及び位置検出器22の結果に基づいて、各領域ECに対する負荷を測定する。例えば、「重さX1」の荷物が位置Aから位置Bへ移動した場合を想定する。ここで、位置Aでの旋回半径は「L1」であり位置Bでの旋回半径は「L2」であり、荷物の移動中に旋回半径が変化している。荷物の重さが同じであっても、旋回半径が大きいほうがモーメントが大きくなる。すなわち、監視対象である旋回ベアリング17に作用する負荷は、旋回半径が大きいほど大きくなる。従って、測定部42は、荷物の重さに加えて、旋回半径を考慮して、各領域ECに対する負荷を演算する。測定部42は、「重さX1」に旋回半径を掛け合わせたモーメントを当該領域ECに対する負荷として測定する。また、荷物がある領域ECへ入った時の旋回半径と、当該領域ECから出る時の旋回半径とが異なる場合がある。このような場合を考慮し、測定部42は、領域ECへ入る時の負荷と、当該領域ECから出る時の負荷との平均値を当該領域における負荷として測定する。例えば、図4(b)に示すように、測定部42が領域ECaの負荷を演算する場合、測定部42は、荷物が領域ECaへ入る時の位置P3における負荷と、領域ECaから出る時の位置P4における負荷と、を測定する。そして、測定部42は、両者の平均値を領域ECaにおける負荷として測定する。なお、位置P4は、領域ECaから出る時の位置であると共に、隣の領域ECbへ入る時の位置である。このように、測定部42は、位置Aから位置Bへ向かう途中の領域ECの負荷を測定する。
【0035】
演算部43は、記憶部44から、監視開始から現在に至るまでの各領域ECでの負荷の積算値を読み出す。また、演算部43は、読み出した積算値に対して、今回の測定によって得られた負荷情報(「重さX1」に旋回半径を掛け合わせたモーメントで示される負荷が、どの領域ECに作用したかという情報)を対応する領域ECの積算値に加算する。これにより、演算部43は、監視開始から現在に至るまでの、各領域ECに作用した負荷レベル(ここでは負荷の積算値)を更新する。記憶部44は、更新された情報を記憶する。
【0036】
演算部43は、測定部42の測定結果に基づき、監視対象である旋回ベアリング17に作用した負荷レベルを演算する。測定部42は、図4(a)に示すように、移動範囲を径方向に分割して各領域ECに対する負荷を測定した。これに対し、旋回ベアリング17の特定の旋回角度の位置には、当該位置における径方向の全領域ECに対する負荷が作用する。従って、演算部43は、特定の旋回角度における径方向の全領域ECの負荷の積算値を全て足し合わせることで、当該旋回角度における旋回ベアリング17の負荷を演算する。例えば、演算部43が旋回角度θ1と旋回角度θ2との間の領域における旋回ベアリング17の負荷レベルを演算するとき、演算部43は、旋回角度θ1と旋回角度θ2に存在する全ての領域ECの負荷の積算値を足し合わせる。演算部43は、このような演算を全周にわたって行うことにより、図5に示すように、旋回ベアリング17の全周にわたる負荷レベルの分布を示すデータを演算する。記憶部44は、当該データによって示される最新のグラフGCを記憶する。これにより、記憶部44には、どの旋回角度にて旋回ベアリング17の負荷レベルが大きくなっているかを示すデータを記憶できる。
【0037】
図6を参照して、クレーンシステム100の走行動作で負荷を受ける部位を監視対象とする場合について説明する。走行動作で負荷を受ける部位として、例えば走行レールが挙げられる。図6に示すように、領域設定部41は、移動物であるクレーンシステム100が走行レールRに沿って移動する移動範囲を複数の領域に分割する。例えば、領域設定部41は、移動範囲を走行レールRが延びる方向に一定ピッチで分割することで複数の領域EDを設定する。
【0038】
測定部42は、荷重計21及び位置検出器22の結果に基づいて、各領域EDに対する負荷を測定する。例えば、「重さX1」の荷物を吊り上げたクレーンシステム100が走行レールRに沿って移動することを想定する。このとき、測定部42は、クレーンシステム100が通過した位置に対応する領域EDに対して走行動作による負荷が作用したことを測定する。ここで、同じ重さの荷物を吊った状態であっても、旋回半径及び旋回角度が異なる場合、モーメントの関係により、監視対象である走行レールに作用する負荷は異なる。例えば、海側と陸側とで一対の走行レールが設けられている場合について説明する。図6の実線は海側の走行レールEに対する負荷を示し、破線は陸側の走行レールRに対する負荷を示す。クレーンシステム100がジブ14を海側へ向けて「重さX1」の荷物を吊り上げて走行する場合、海側の走行レールEに作用する負荷の方が、陸側の走行レールRに作用する負荷よりも大きい。海側の走行レールEに作用する負荷は、海側への旋回半径が大きくなるほど大きくなる。一方、クレーンシステム100がジブ14を陸側へ向けて「重さX1」の荷物を吊り上げて走行する場合、陸側の走行レールRに作用する負荷の方が、海側の走行レールEに作用する負荷よりも大きい。このように、同じ重さの荷物を吊しているときでも、クレーンシステム100の旋回半径及び旋回角度によって、走行レールE、Rに作用する負荷が変動する。
【0039】
よって、測定部42は、ある領域EDに対する負荷を測定するときは、当該領域EDでのクレーンシステム100の旋回半径及び旋回角度を考慮して、負荷を測定する。なお、クレーンシステム100がある領域EDへ入った時の旋回半径及び旋回角度と、当該領域EDから出る時の旋回半径及び旋回角度とが異なる場合がある。このような場合を考慮し、測定部42は、領域EDへ入る時の負荷と、当該領域EDから出る時の負荷との平均値を当該領域における負荷として測定する。測定部42は、一対の走行レールの両方に対して領域EDを設定することで、それぞれの走行レールE、Rに設定された領域EDに対する負荷を測定できる。また、一つの走行レールに沿って複数のクレーンシステム100が走行する場合、測定部42は、複数台分のクレーンシステム100の走行による負荷を測定できる。
【0040】
演算部43は、記憶部44から、監視開始から現在に至るまでの各領域EDでの負荷の積算値を読み出す。また、演算部43は、読み出した積算値に対して、今回の測定によって得られた負荷情報を対応する領域EDの積算値に加算する。これにより、演算部43は、監視開始から現在に至るまでの、各領域EDに作用した負荷レベル(ここでは負荷の積算値)を更新する。演算部43は、監視対象である走行レールRの負荷レベルを示すデータとして、各領域EDの負荷の積算値を用いることができる。記憶部44は、更新された情報を記憶する。記憶部44は、走行レールRに沿った方向における各領域EDでの負荷の積算値を示す最新のグラフGDを得ることができる。
【0041】
図6に示す例では、監視対象である走行レールR自体に対して複数の領域が設定されたが、監視対象はこれに限られない。他の監視対象であるワイヤーロープW1,W2自体に対して複数の領域が設定されてよい。例えば、図7(a)に示すように、ワイヤーロープW2は、吊部16とは反対側の端部ではドラム70に巻き付けられている。ドラム70が回転してワイヤーロープW2の巻き上げと巻き戻しを行う。図7(b)に示すように、ドラム70では、ワイヤーロープW2がドラム70の軸70aに軸方向に並列となるように巻かれる。これにより、ワイヤーロープW2の層L1が形成される。軸70aの全域に層L1が形成されたら、層L1の上にワイヤーロープW2が巻き付けられることで層L2が形成される。同様に、ワイヤーロープW2の層L3…が形成される。このような構成によれば、ワイヤーロープW2を引き延ばした時に、図7(c)に示すように、当該ワイヤーロープW2の長手方向に対し、どの層に属する部分であるかを分けることができる。
【0042】
ここで、ワイヤーロープW2のうち、ドラム70から繰り返し巻出し及び巻き戻しされる部分と、常にドラム70に巻き付けられた状態(または常にドラム70に巻き付けられていない状態)の部分とでは、前者の方が負荷レベルが大きくなる。ドラム70をワイヤーロープW2に対して相対的に回転移動する移動物であると見なした場合、ワイヤーロープW2のうちのドラム70で巻出し及び巻き戻しされる範囲が、ドラム70の相対的な回転移動の移動範囲と見なすことができる。従って、領域設定部41は、ドラム70の移動範囲としてのワイヤーロープWを長手方向に沿って複数の領域EEに分割する。このとき、領域設定部41は、一つの層を形成する長さを一つの領域EEとして設定する。図7(c)では、ワイヤーロープWのうちの層L1,L2,L3…に対応する部分が各領域EEとして設定される。
【0043】
測定部42は、「重さX1」の荷物を吊した状態で、ドラム70から層Lnが1回巻き出された場合、または1回巻き戻された場合に、層Lnに対して「重さX1」の負荷が1回かかったものと推定する。演算部43は、記憶部44から、監視開始から現在に至るまでの各領域EE(各層)での巻出し・巻き戻し回数、及びそのときの荷物の重さのデータを読み出す。また、演算部43は、読み出したデータに対して、今回の測定によって得られた負荷情報を対応する領域EE(層)のデータに追加。これにより、演算部43は、監視開始から現在に至るまでの、各領域EEに作用した負荷レベルを更新する。演算部43は、監視対象であるワイヤーロープW2の負荷レベルを示すデータとして、各領域EE(各層)の巻出し・巻き戻し回数及びその時の荷物の重さを用いることができる。演算部43は、三次元のグラフを用いてワイヤーロープW2の各層の負荷レベルを示すことができる。例えば、図10に示すように、X軸を層とし、Y軸を荷重とし、Z軸を層変わり回数としてよい。この三次元グラフから、ワイヤーロープW2のどの層に、どれだけの重さの荷物を吊した状態で、何回巻出し・巻き戻しされたかを把握できる。例えば、図10の実線のグラフは、前回交換時におけるワイヤーロープW2のデータを示し、破線のグラフは、現在のワイヤーロープW2の状態を示す。今回のワイヤーロープW2の状態が交換前の状態に近付いたら、ワイヤーロープW2を交換してよい。記憶部44は、更新された情報を記憶する。記憶部44は、上述の三次元グラフを得ることができる。
【0044】
次に、演算部43が出力部にどのような情報を出力するかについて説明する。演算部43は、ユーザーがクレーンシステム100をメンテナンスするときに、各部位の負荷レベルを示す情報を出力する。また、演算部43は、負荷レベルの高い箇所を優先的に点検させるように、ユーザーを誘発するような情報を出力する。例えば、演算部43は、監視対象に作用した負荷レベルの分布を示すグラフをそのまま出力部52に出力してよい。演算部43は、グラフGA,GB(図3参照)、グラフGC(図5参照)、グラフGD(図6参照)、及び図7を参照して説明した三次元グラフをそのまま出力してよい。なお、演算部43は、図4(a)の各領域ECでの負荷の積算値を示す三次元グラフを出力してもよい。この場合、演算部43は、監視対象の各部位における負荷レベルの分布を示すことができるため、負荷状態を可視化することができる。この場合、ユーザーは、どの部位を優先的に点検するべきかを直ちに理解することができる。
【0045】
また、演算部43は、監視対象の部位のうち、負荷レベルのパラメータが所定の閾値を超えた部位のみ、ユーザーに通知してよい。例えば、図5に示すグラフGCでは、旋回角度が120°の箇所が最も負荷レベルが高いため、当該箇所での負荷レベルが閾値を超えている場合は、演算部43は、旋回ベアリング17の当該部位を点検するように注意喚起を行ってよい。
【0046】
また、演算部43は、定期メンテナンスなどの場面では、各監視対象の負荷レベルを総合的に判断し、今回のメンテナンスで確認すべき点だけを抽出し、ユーザーに通知してもよい。また、演算部43は、ユーザーが入力部51を介して情報開示の要求を行った場合、当該要求に応じた情報を出力してよい。
【0047】
次に、図8及び図9を参照して、本実施形態に係るクレーンシステム100の監視方法の一例について説明する。ただし、監視方法の処理はこれらに限定されるものではない。
【0048】
図8の処理は、例えばクレーンシステム100の運転が開始されたタイミングで開始されてよい。図8に示すように、領域設定部41は、クレーンシステム100の動作に伴って移動する移動物の移動範囲を複数の領域に分割する(ステップS10:領域設定工程)。次に、測定部42は、ステップS10で設定されたそれぞれの領域に対する負荷を測定する(ステップS20:測定工程)。次に、演算部43は、ステップS20の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算し、当該演算結果を用いてデータの更新をする(ステップS30:演算工程)。ステップS30では、演算部43は、記憶部44から既存の負荷レベルのデータを読み出し、最新の測定で得られた測定結果を反映することで、データを更新する。ステップS30の処理が終了したら、再びステップS10から処理が開始される。ただし、ステップS10の処理は、前回設定した領域を用いればよいため、二回目以降は省略されてもよい。
【0049】
図9の処理は、ユーザーがクレーンシステム100をメンテナンスするときに実行される。演算部43は、記憶部44からデータの読み出しを行う(ステップS40)。次に、演算部43は、ステップS40で読み出したデータを用いて、負荷判定を行う(ステップS50)。例えば、演算部43は、負荷レベルを示すパラメータが閾値を超えていないか否かを判定する。次に、演算部43は、ステップS50での判断結果に基づき、監視対象に作用する負荷レベルに関する情報をユーザーに出力する(ステップS60:出力工程)。ステップS60では、演算部43は、負荷レベルの高い箇所を優先的に点検させる情報を出力する。
【0050】
次に、本実施形態に係るクレーンシステム100の監視方向の作用・効果について説明する。
【0051】
本実施形態に係るクレーンシステム100は、クレーンの動作に伴って移動する移動物の移動範囲を複数の領域に分割する領域設定部41と、それぞれの領域に対する負荷を測定する測定部42と、を備える。このように測定部42が、移動範囲を分割した複数の領域に対する負荷を測定する場合、実際のクレーンシステム100の稼働状況に沿った負荷の測定を行うことができる。これにより、演算部43は、どの領域にどの程度の負荷がかかっているかの分布を把握することができる。演算部43は、このような測定部42の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算することで、監視対象のどの部位での負荷レベルが大きくなっているかを演算することができる。出力部52が、このような演算部43の演算結果に基づく情報を出力することで、ユーザーは、メンテナンスの際に優先的に点検を行う部位を把握することができる。これにより、クレーンシステム100のメンテナンスの作業効率を向上できる。
【0052】
例えば、監視対象のうち、どの部位がどの程度の負荷レベルであるかを把握せずにメンテナンスする場合について検討する。この場合、定期メンテナンスなどでは、全ての部位を同じように毎回点検しなくてはならず、メンテナンスの作業効率が低下する。その一方、本実施形態に係るクレーンシステム100では、どの部位の負荷レベルが高くなっているかを把握できるため、定期メンテナンスなどでは、負荷レベルの低い部位に比して、負荷レベルが高い部位を優先的に、且つ入念に点検することができる。あるいは、負荷レベルの大小に応じて、予めメンテナンスの計画を作ることも可能となる。従って、メンテナンスの作業効率が向上する。
【0053】
クレーンシステム100は旋回クレーンであって、演算部43は、監視対象としてクレーンシステム100の旋回ベアリング17の負荷レベルを演算する。旋回ベアリング17には、クレーンシステム100の旋回時に負荷がかかる。しかし、クレーンシステム100の旋回状況によって、旋回ベアリング17は、周方向における負荷レベルの分布がばらつき易くなる。よって、このような旋回ベアリング17を監視対象とすることで、周方向において負荷レベルが高い部位を優先的に点検することができる。
【0054】
クレーンシステム100において、演算部43は、監視対象としてクレーンをガイドする走行レールRの負荷レベルを演算する。走行レールRには、クレーンシステム100の走行時に負荷がかかる。しかし、クレーンシステム100の走行状況によって、走行レールRは、長手方向における負荷レベルの分布がばらつき易くなる。よって、このような走行レールRを監視対象とすることで、走行レールRの各部位のうち、負荷レベルが高い部位を優先的に点検することができる。
【0055】
クレーンシステム100において、演算部43は、監視対象としてクレーンシステム100のワイヤーロープW1,W2の負荷レベルを演算する。ワイヤーロープW1,W2には、クレーンシステム100の巻上げ・巻下げ時、起伏時に負荷がかかる。しかし、クレーンシステム100の稼働状況によって、ワイヤーロープW1,W2は、長手方向における負荷レベルの分布がばらつき易くなる。よって、このようなワイヤーロープW1,W2を監視対象とすることで、ワイヤーロープW1,W2の各部位のうち、負荷レベルが高い部位を優先的に点検することができる。
【0056】
クレーンシステム100は、ジブクレーンであってよい。ジブクレーンは、稼働部位も多く、各部位における負荷レベルのバラツキも大きい。よって、本実施形態に係るクレーンシステム100を用いることによる効果がより顕著となる。
【0057】
クレーンシステム100において、測定部42は、移動物が領域へ入る時の負荷と、当該領域から出る時の負荷との平均値を当該領域における負荷として測定する。これにより、測定部42は、領域における負荷を状況に合わせて正確に測定できる。
【0058】
本実施形態に係るクレーンシステム100の監視方法は、対象物を移動させるクレーンシステム100の監視方向であって、クレーンシステム100の動作に伴って移動する移動物の移動範囲を複数の領域に分割する領域設定工程と、それぞれの領域に対する負荷を測定する測定工程と、測定工程の測定結果に基づき、監視対象に作用した負荷レベルを演算する演算工程と、演算工程の演算結果に基づき、負荷レベルの高い箇所を優先的に点検させる情報を出力する出力工程と、を備える。
【0059】
このクレーンシステム100の監視方法によれば、上述のクレーンシステム100と同趣旨の作用・効果を得ることができる。また、出力工程では、負荷レベルの高い箇所を優先的に点検させる情報を出力する。これにより、ユーザーは、メンテナンス時には負荷レベルの高い箇所を優先的に点検するように誘発される。従って、メンテナンスの作業効率が向上する。
【0060】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0061】
例えば、上述の実施形態では、クレーンシステム100としてジブクレーンを例示したが、クレーンの種類は特に限定されるものではない。例えば、天井クレーン、ゴライアスクレーンなどの横行機能を有するクレーンに対して、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…計測装置、41…領域設定部、42…測定部、43…演算部、52…出力部、100…クレーンシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10