(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】位置特定装置、移動器、位置特定システム、位置特定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/48 20100101AFI20231020BHJP
G01S 5/02 20100101ALN20231020BHJP
G01S 5/04 20060101ALN20231020BHJP
【FI】
G01S19/48
G01S5/02 Z
G01S5/04
(21)【出願番号】P 2019050871
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503362463
【氏名又は名称】アドソル日進株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】冨田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 諒太
【審査官】石原 徹弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-069748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0335887(US,A1)
【文献】特開2010-107347(JP,A)
【文献】特開2016-066907(JP,A)
【文献】特開2009-250932(JP,A)
【文献】特開2008-227685(JP,A)
【文献】国際公開第2019/036939(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/30
G01S 19/00-19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象である移動器の位置情報を特定する位置特定装置であって、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
制御部を備える、
位置特定装置。
【請求項2】
測位対象である移動器の位置情報を特定する位置特定装置であって、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界通知信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界通知信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界通知信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
制御部を備える、
位置特定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいてAOA方式により算出する、
請求項1
又は2に記載の位置特定装置。
【請求項4】
測位対象である移動器であって、
GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部と、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位するためのビーコンを送信するビーコン送信手段と、
前記GPS受信部により屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を送信する屋外情報送信手段と、
GPS捕捉衛星数を取得するGPS捕捉衛星数取得手段と、
を備え、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記ビーコン送信手段が前記ビーコンを送信し、屋外モードなら前記屋外情報送信手段が前記位置情報を送信し、中間モードなら前記ビーコン送信手段が前記ビーコンを前記屋外情報送信手段が前記位置情報をそれぞれ送信する、
移動器。
【請求項5】
測位対象である移動器であって、
GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部と、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位するためのビーコンを送信するビーコン送信手段と、
前記GPS受信部により屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を送信する屋外情報送信手段と、
GPS捕捉衛星数を取得するGPS捕捉衛星数取得手段と、
を備え、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記ビーコン送信手段が前記ビーコンを送信し、屋外モードなら前記屋外情報送信手段が前記位置情報を送信し、中間モードなら前記ビーコン送信手段が前記ビーコンを前記屋外情報送信手段が前記位置情報をそれぞれ送信する、
移動器。
【請求項6】
測位対象である移動器と、前記移動器が送信するビーコンを受信する検出器と、前記移動器の位置情報を特定する位置特定装置と、を備える位置特定システムであって、
前記位置特定装置は、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記ビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報
とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを
、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
制御部を備える、
位置特定システム。
【請求項7】
測位対象である移動器と、前記移動器が送信するビーコンを受信する検出器と、前記移動器の位置情報を特定する位置特定装置と、を備える位置特定システムであって、
前記位置特定装置は、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記ビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界通知信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界通知信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界通知信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
制御部を備える、
位置特定システム。
【請求項8】
測位対象である移動器の位置情報を特定する位置特定方法であって、
コンピュータが、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報
とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを
、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
位置特定方法。
【請求項9】
測位対象である移動器の位置情報を特定する位置特定方法であって、
コンピュータが、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界通知信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界通知信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界通知信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
位置特定方法。
【請求項10】
測位対象である移動器の位置情報を特定するプログラムであって、
コンピュータに、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報
とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを
、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
処理を実行させるためのプログラム。
【請求項11】
測位対象である移動器の位置情報を特定するプログラムであって、
コンピュータに、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界通知信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界通知信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界通知信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置特定装置、移動器、位置特定システム、位置特定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内外を移動する人や物の位置を、測位する技術が知られている。例えば、特許文献1には、屋内外をシームレスに移動する利用者の位置を検出するデバイスを、適切な時期に切り替える位置情報提供システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている位置情報提供システムでは、予め設定したエリアに移動器が入ったときにサーバに次に使う測位方式を問合せ、サーバが次の測位方式を移動器に通知することにより、屋内外をシームレスに測位できるようにしている。しかしながら、特許文献1に開示されているシステムでは、移動器はサーバに問い合わせなければ次の測位方式を取得できない。そのため、サーバのネットワーク上の配置によっては遅延等が発生し、また、サーバのメンテナンス時には稼働できないという課題がある。
【0005】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、サーバに依存せずに測位方式をシームレスに切り替えることができる位置特定装置、移動器、位置特定システム、位置特定方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る位置特定装置は、
測位対象である移動器の位置情報を特定する位置特定装置であって、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
制御部を備える。
【0007】
また、本発明の第2の観点に係る位置特定装置は、
測位対象である移動器の位置情報を特定する位置特定装置であって、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界通知信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界通知信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界通知信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
制御部を備える。
【0008】
また、前記制御部は、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいてAOA方式により算出する、
ようにしてもよい。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る移動器は、
測位対象である移動器であって、
GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部と、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位するためのビーコンを送信するビーコン送信手段と、
前記GPS受信部により屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を送信する屋外情報送信手段と、
GPS捕捉衛星数を取得するGPS捕捉衛星数取得手段と、
を備え、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記ビーコン送信手段が前記ビーコンを送信し、屋外モードなら前記屋外情報送信手段が前記位置情報を送信し、中間モードなら前記ビーコン送信手段が前記ビーコンを前記屋外情報送信手段が前記位置情報をそれぞれ送信する。
【0010】
また、本発明の第4の観点に係る移動器は、
測位対象である移動器であって、
GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部と、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位するためのビーコンを送信するビーコン送信手段と、
前記GPS受信部により屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を送信する屋外情報送信手段と、
GPS捕捉衛星数を取得するGPS捕捉衛星数取得手段と、
を備え、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記ビーコン送信手段が前記ビーコンを送信し、屋外モードなら前記屋外情報送信手段が前記位置情報を送信し、中間モードなら前記ビーコン送信手段が前記ビーコンを前記屋外情報送信手段が前記位置情報をそれぞれ送信する。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明の第5の観点に係る位置特定システムは、
測位対象である移動器と、前記移動器が送信するビーコンを受信する検出器と、前記移動器の位置情報を特定する位置特定装置と、を備える位置特定システムであって、
前記位置特定装置は、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記ビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
制御部を備える。
【0012】
また、本発明の第6の観点に係る位置特定システムは、
測位対象である移動器と、前記移動器が送信するビーコンを受信する検出器と、前記移動器の位置情報を特定する位置特定装置と、を備える位置特定システムであって、
前記位置特定装置は、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記ビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界通知信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界通知信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界通知信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
制御部を備える。
【0013】
また、上記の目的を達成するため、本発明の第7の観点に係る位置特定方法は、
測位対象である移動器の位置情報を特定する位置特定方法であって、
コンピュータが、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する。
また、本発明の第8の観点に係る位置特定方法は、
測位対象である移動器の位置情報を特定する位置特定方法であって、
コンピュータが、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界通知信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界通知信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界通知信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する。
【0014】
また、上記の目的を達成するため、本発明の第9の観点に係るプログラムは、
測位対象である移動器の位置情報を特定するプログラムであって、
コンピュータに、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、
中間モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値より小である状態が所定の時間以上継続したら屋内モードに切り替え、
屋内モードにおいて、前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上になったら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
処理を実行させる。
また、本発明の第10の観点に係るプログラムは、
測位対象である移動器の位置情報を特定するプログラムであって、
コンピュータに、
屋内を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報を、前記移動器が送信したビーコンを受信する検出器からの検出情報に基づいて算出し、
屋外を対象とする測位方式で前記移動器を測位した位置情報とGPS捕捉衛星数とを、前記移動器から取得し、
前記移動器が屋外と屋内の境界に存在することを示す境界通知信号を受信し、
屋内モード、屋外モード及び中間モードのいずれか1つに切り替えられて前記測位方式のいずれを利用するかを決定するためのモードである測位モードを、
屋外モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が閾値より小になったら中間モードに切り替え、中間モードにおいて前記GPS捕捉衛星数が前記閾値以上である状態が所定の時間以上継続したら屋外モードに切り替え、
屋外モード又は中間モードで前記境界通知信号を受信したら屋内モードに切り替え、屋内モードで前記境界通知信号を受信したら中間モードに切り替え、
前記切り替えられた測位モードが、屋内モードなら前記算出した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、屋外モードなら前記取得した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、中間モードなら予め設定された優先度の高い測位方式で測位した位置情報を前記移動器の位置情報として特定し、
前記特定した位置情報を出力する、
処理を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サーバに依存せずに測位方式をシームレスに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る位置特定システムの概略図である。
【
図2】実施の形態1に係る第1検出器が屋内に設置された状況の一例を水平方向から見た図である。
【
図3】実施の形態1に係る第1検出器が屋内に設置された状況の一例を垂直方向から見た図である。
【
図4】実施の形態1に係る第1検出情報の一例を示す図である。
【
図5】水平方向から見た時の電波の到来角度に基づいて移動器の位置を算出する方法を説明する図である。
【
図6】垂直方向から見た時の電波の到来角度に基づいて移動器の位置を算出する方法を説明する図である。
【
図7】実施の形態1に係る第2検出情報の一例を示す図である。
【
図8】RSSIに基づいて移動器の位置を算出する方法を説明する図である。
【
図9】位置特定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】位置特定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】実施の形態1に係る移動器情報の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1に係る検出器情報の一例を示す図である。
【
図13】位置特定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態1に係る測位モードの状態遷移を示す図である。
【
図15】実施の形態2に係る測位モードの状態遷移を示す図である。
【
図16】実施の形態3に係る測位モードの状態遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態に係る位置特定システム1は、人又は物品が屋内及び屋外のどちらに存在する場合でも、当該人又は物品の位置(より正確には、当該人又は物品に装着された移動器の位置)を特定するシステムである。本実施の形態では、位置特定システム1を、工場等の構内において、作業員W(人)及び商品P(物品)の位置を管理するために用いる場合を例に説明する。位置特定システム1は、
図1に示すように、位置特定装置100、移動器200、第1検出器300、第2検出器400及び位置算出器500を含む。
【0019】
第1検出器300と位置算出器500との間、第2検出器400と位置算出器500との間、位置算出器500と位置特定装置100との間、はそれぞれネットワークNW1を介して通信可能に接続されている。ネットワークNW1は、有線または無線を問わない。例えば、有線LAN(Local Area Network)、3G(3rd. Generation)/LTE(Long Term Evolution)回線のような携帯電話通信網、無線LAN(Wi-Fi)/IEEE802.15.4などの近距離無線、LPWA(Low Power Wide Area)無線、VPN(Virtual Private Network)、インターネット等の任意の通信網である。
【0020】
また、位置特定装置100と移動器200との間は、ネットワークNW2を介して通信可能に接続されている。ネットワークNW2は、屋外から無線で通信可能なネットワークであり、例えば携帯電話通信網等である。
【0021】
また、第1検出器300及び第2検出器400は、移動器200から発信された無線信号を受信することができる。なお、移動器200、第1検出器300、第2検出器400のそれぞれの台数は任意であり、位置特定システム1は、複数の移動器200、第1検出器300、第2検出器400を含んで構成される。位置特定システム1を構成する各装置について、以下に説明する。
【0022】
(移動器200)
移動器200は、スマートフォン、タブレット型端末等の、人や物に装着できる小型端末である。移動器200は、CPU(Central Processing Unit)等から構成される制御部、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信するGPS受信部、他の装置と通信する通信部を備える。
【0023】
制御部は、GPS受信部で受信した信号を用いて、屋外を対象とする測位方式であるGPSにより現在位置を測定(測位)する。また、制御部は、GPSによる測位の際は、捕捉したGPS衛星の数の取得も行うので、GPS捕捉衛星数取得手段として機能する。
【0024】
また、移動器200は、通信部により、当該移動器200を一意に識別するための識別情報(移動器ID(Identification))を含む無線信号(電波信号)を定期的に(例えば、数秒間隔で)発信することができ、また、携帯電話通信網やWi-Fi通信網等を通じて位置特定装置100とデータ通信を行うことができる。なお、測位の対象である作業員W及び商品Pには、移動器200が装着されているものとする。
【0025】
また、本実施の形態において、移動器200が定期的に発信する無線信号は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)の規格に準拠するビーコン信号(以下、単に「BLEビーコン」とも称する)であるものとする。ただし、移動器200が発信する無線信号は、自己の存在を知らせるために間欠的に送信される信号であればよく、BLEビーコン以外の信号であってもよい。通信部は、BLEビーコンを送信する際、ビーコン送信手段として機能する。
【0026】
移動器200の制御部は、GPS受信部により定期的にGPSの電波を受信して測位を行う。そして、移動器200の制御部は、通信部により、移動器200の識別情報、測位した時刻の情報(時刻情報)、測位方式を示す情報(GPS)、捕捉したGPS衛星の数、測位した移動器200の位置の情報、を含む、屋外位置情報を位置特定装置100に送信する。屋外位置情報を送信する際、移動器200の制御部は、屋外情報送信手段として機能する。
【0027】
(第1検出器300)
第1検出器300は、移動器200の送信するBLEビーコンを受信する装置である。第1検出器300は、アレイアンテナ等を用いることで、移動器200から発信されたBLEビーコンを受信した際の電波の到来角度(AOA(Angle Of Arrival))を計測することができる。
【0028】
第1検出器300は、
図2及び
図3に示すように、屋内の天井や壁等に複数設置される。ここで、
図2は屋内を水平方向(横)から見た図で、
図3は屋内を垂直方向(上)から見た図である。なお、第1検出器300は、電波を遮る板等の障害物の影響をなるべく受けない場所に設置されることが望ましい。また、位置特定システム1の管理者は、予め、各第1検出器300の設置位置等の情報を位置算出器500が把握できるようにしておく。本実施の形態では、後述するように、この各第1検出器300の設置位置等の情報は、検出器情報122として位置特定装置100の記憶部120に記憶され、位置特定処理の初期化時に位置算出器500に転送されるようにしている。
【0029】
第1検出器300は、BLEビーコンを受信する毎に、受信したBLEビーコンの到来角度等を示す第1検出情報を生成し、ネットワークNW1を介して位置算出器500に送信する。第1検出情報は、例えば、
図4に示すように、第1検出器300の識別情報(検出器ID)、BLEビーコンの発信元である移動器200の識別情報(移動器ID)、BLEビーコンの受信時刻(時刻情報)及びBLEビーコンが到来した角度(到来角度)を含む。
【0030】
ここで、到来角度は、例えば
図5に示すように、電波の到来角度を水平方向から見た時の、基準線(例えば、垂線)に対する角度θ
Aと、
図6に示すように、電波の到来角度を垂直方向から見た時の、基準線(例えば、北の方向)に対する角度φ
Aとを含む。位置算出器500は、これら到来角度の情報に基づいて移動器200の位置を算出することができるが、この算出方法(測位方式)をAOA方式と呼ぶことにする。本実施の形態において、AOA方式は屋内を対象とする測位方式の一例である。
【0031】
(第2検出器400)
第2検出器400は、移動器200から発信されたBLEビーコンを受信した際の受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator))を計測する。第2検出器400は、第1検出器300と同様に、屋内の天井や壁などに複数設置される。第2検出器400は、第1検出器300と同様に、電波を遮る板等の障害物の影響をなるべく受けない場所に設置されることが望ましい。
【0032】
また、位置特定システム1の管理者は、予め、各第2検出器400の設置位置等の情報を位置算出器500が把握できるようにしておく。本実施の形態では、後述するように、この各第2検出器400の設置位置等の情報も、検出器情報122として位置特定装置100の記憶部120に記憶され、位置特定処理の初期化時に位置算出器500に転送されるようにしている。
【0033】
第2検出器400は、BLEビーコンを受信する毎に、受信したBLEビーコンの受信信号強度等を示す第2検出情報を生成し、ネットワークNW1を介して位置算出器500に送信する。第2検出情報は、例えば、
図7に示すように、第2検出器400の識別情報(検出器ID)、BLEビーコンの発信元である移動器200の識別情報(移動器ID)、BLEビーコンの受信時刻(時刻情報)、BLEビーコンの受信信号強度(RSSI)の情報を含む。
【0034】
RSSIは、第2検出器400が受信したBLEビーコンの電波の強度を示す相対的な指標であり、例えば、第2検出器400が受信した電波の入力電圧の対数値に対しほぼ比例した数値で表される。その数値が大きいほど受信信号強度が高く、発信元である移動器200までの距離が短いことを示す。
【0035】
移動器200から送信した電波を第2検出器400で受信する場合、RSSIは移動器200と第2検出器の距離に反比例する。1つの移動器200から送信した電波を複数の第2検出器400で受信する場合、それぞれの第2検出器400のRSSIの比率により、移動器200の位置を算出することができる。この算出方法(測位方式)をRSSI方式と呼ぶことにする。本実施の形態において、RSSI方式は屋内を対象とする測位方式の一例である。
【0036】
(位置算出器500)
位置算出器500は、屋内に設置された複数の第1検出器300及び第2検出器400のそれぞれから第1検出情報又は第2検出情報を受信する。そして、第1検出情報を受信した場合には、予め取得している第1検出器300の位置の情報と、第1検出情報に含まれる到来角度の情報とから、移動器200の位置を算出する。また、第2検出情報を受信した場合には、予め取得している第2検出器400の位置の情報と、第2検出情報に含まれる受信信号強度の情報とから、移動器200の位置を算出する。
【0037】
移動器200の位置をAOA方式で3次元で算出する具体的な方法について、説明する。まず、第1検出情報を用いたAOA方式による算出方法について説明する。位置算出器500は、
図5に示すように、第1検出器300A及び第1検出器300Bの高さの情報、第1検出器300Aの第1検出情報に含まれる到来角度θ
A、第1検出器300Bの第1検出情報に含まれる到来角度θ
B、を用いて、移動器200の高さの情報を算出することができる。また、位置算出器500は、
図6に示すように、水平面内の第1検出器300A及び第1検出器300Bの位置の情報、第1検出器300Aの第1検出情報に含まれる到来角度φ
A、第1検出器300Bの第1検出情報に含まれる到来角度φ
B、を用いて、移動器200の水平面内の位置の情報を算出することができる。
【0038】
AOA方式による3次元測位では上記のように第1検出器300が2台以上必要であるが、移動器200が床上の一定高さを移動することを前提とすれば、利用する第1検出器300は1台だけでよい。この場合、XYZ座標系のZ軸の値は一定値とし、X,Y軸の値が変化する。
【0039】
位置算出器500は、算出した移動器200の高さの情報及び水平面内の位置の情報により、移動器200の3次元空間内での位置の情報を求めることができる。このようにして、位置算出器500は位置算出手段として機能する。
【0040】
また、位置算出器500は、第1検出器300から受信した第1検出情報等に基づき移動器200の3次元空間内もしくは2次元空間内での位置の情報を算出したら、算出に用いた第1検出情報に含まれる移動器200の識別情報、時刻情報、位置の算出方法(測位方式)を示す情報(AOA)、算出された移動器200の3次元空間内もしくは2次元空間内での位置の情報を含む、屋内位置情報を位置特定装置100に送信する。このようにして、位置算出器500は屋内情報送信手段としても機能する。
【0041】
次に、第2検出情報を用いたRSSI方式による2次元空間の算出方法について説明する。第2検出情報には、受信信号強度(RSSI)が含まれているので、このRSSIの値から、位置算出器500は、以下の式(1)を元に移動器200と第2検出器400との間の距離dを求めることができる。
RSSI=-(10Nlog10d+A) …(1)
A:1m離れた箇所での電界強度
N:経路品質係数
d:通信距離
【0042】
上記「A:1m離れた箇所での電界強度」は送信出力が0dBmの場合、通常45~49となる。上記「N:経路品質係数」は環境により異なり、自由空間の場合1.0、電波伝搬環境が良い室内では2.5、障害物が多い環境、電波の反射が多い環境では4.0などが適用される。
【0043】
上述の式(1)から、1つの移動器200と2つの第2検出器400の距離比は以下の式(2)で求められる。
dr=10(ΔRSSI/10N) …(2)
ΔRSSI:2つの第2検出器400のRSSI差
N:経路品質係数
【0044】
このように位置算出器500は、複数の第2検出器400のRSSI情報を元に、移動器200の送信電界強度を用いずに、移動器200の位置の特定が可能である。
【0045】
位置算出器500は、複数の第2検出器400から第2検出情報を受信すると、上述の式(2)により移動器200と複数の第2検出器400との間の距離比を求めることができる。したがって、各移動器200について2つの第2検出器の距離比が算出できれば、2つの第2検出器400を結ぶ直線上のある位置を、3つの第2検出器400で囲むある位置を算出することができる。このようにして、位置算出器500は位置算出手段として機能する。
【0046】
説明をわかりやすくするために、
図8を用いて移動器200の平面上での位置の情報を算出する原理を説明する。位置算出器500が、第2検出器400A、400B、400Cからそれぞれ受信した第2検出情報中のRSSIから第2検出器400Aと400BのRSSI比、第2検出器400Aと400CのRSSI比、第2検出器400Bと400CのRSSI比からそれぞれの距離比を算出する。第2検出器400Aと400Bを結ぶ直線上の距離比が距離d
A1と距離d
B1の点を点P
AB、第2検出器400Aと400Cを結ぶ直線上の距離比が距離d
A2と距離d
C1の点を点P
AC、第2検出器400Bと400Cを結ぶ直線上の距離比が距離d
B2と距離d
C2の点を点P
BCとする。それぞれの第2検出器400を結ぶ直線上の点P
AB、点P
AC、点P
BCから垂線を引き、その交点が移動器200の位置として算出することができる。この演算をXY平面とXZ平面、もしくはYZ平面で行うことにより、3次元座標を求めることができる。
【0047】
位置算出器500は、移動器200の3次元空間内もしくは2次元空間内での位置の情報を算出したら、算出に用いた第2検出情報に含まれる移動器200の識別情報、時刻情報、位置の算出方法(測位方式)を示す情報(RSSI)、算出された移動器200の3次元空間内での位置の情報を含む、屋内位置情報を位置特定装置100に送信する。このようにして、位置算出器500は屋内情報送信手段としても機能する。
【0048】
(位置特定装置100)
位置特定装置100は、移動器200から取得する屋外位置情報及び位置算出器500から取得する屋内位置情報に基づいて、測位対象の移動器200の位置を特定する。これにより、移動器200を装着している作業員W及び商品Pの位置を特定することができる。また、位置特定装置100は、特定した測位対象の位置を示す位置表示画像を作成して表示する。
【0049】
(位置特定装置100のハードウェア構成)
次に、
図9を参照しながら、位置特定装置100のハードウェア構成を説明する。位置特定装置100は、
図9に示すように、CPU101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、ディスプレイ105、入力装置106、通信I/F107を備える。これらの各部は、バスラインBLを介して相互に電気的に接続されている。
【0050】
CPU101は、ROM102やHDD104からプログラムやデータをRAM103上に読み出して処理を実行することにより、位置特定装置100の制御や機能を実現する演算装置である。
【0051】
ROM102は、CPU101が実行する各種プログラムやプログラム実行の際に使用される各種データ等を記憶する不揮発性メモリである。
【0052】
RAM103は、ROM102やHDD104から読み出されたプログラムやデータを一時的に保持する揮発性メモリであり、CPU101の作業領域として使用される。
【0053】
HDD104は、記憶内容が書き換え可能な大容量かつ不揮発性の記憶装置である。HDD104は、例えば、後述する位置特定処理に用いられるプログラムやデータを記憶する。なお、HDD104に替えて、またはこれと共に、SSD(Solid State Drive)等の書き換え可能な大容量の不揮発性の記憶装置を備えてもよい。
【0054】
ディスプレイ105は、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置であり、CPU101の制御に従って、各種画像を表示する。
【0055】
入力装置106は、キーボード、マウス、操作ボタン等であり、位置特定システム1の管理者等のユーザの操作、各種データの入力等を受け付ける。入力装置106は、例えば、管理者による位置特定装置100への指示等の入力を受け付ける。なお、入力装置106は、ディスプレイ105の表示画面とこれに重ねて設けられたタッチセンサとからなるタッチパネルにより構成されてもよい。
【0056】
通信I/F107は、位置特定システム1を構成する各装置と通信するためのインタフェースである。通信I/F107により、CPU101の制御に従って、位置特定装置100は、ネットワークNW1を介して移動器200との間でデータの送受信を行い、ネットワークNW2を介して位置算出器500との間でデータの送受信を行う。
【0057】
(位置特定装置100の機能構成)
次に、
図10を参照しながら、位置特定装置100の機能構成について説明する。位置特定装置100は、
図10に示すように、制御部110、記憶部120、表示部131、入力部132、通信部133を備える。
【0058】
制御部110は、CPU101、ROM102、RAM103等により構成され、位置特定装置100の構成部位の各々を制御する。制御部110は、機能的には、屋内情報取得部111、屋外情報取得部112、モード切替部113、位置特定部114、位置情報出力部115を有する。これらの各機能部は、制御部110が記憶部120に記憶された制御プログラムを実行することにより実現される。
【0059】
屋内情報取得部111は、位置算出器500が送信する屋内位置情報を、通信部133を介して取得する。屋内情報取得部111は、屋内情報取得手段として機能する。
【0060】
屋外情報取得部112は、移動器200が送信する屋外位置情報を、通信部133を介して取得する。屋外情報取得部112は、屋外情報取得手段として機能する。
【0061】
モード切替部113は、各移動器200が屋内と屋外のどちらに存在しているかに応じて、測位モードを屋外モード、屋内モード、中間モードの3つのモードのいずれかに切り替える。モード切替部113は、モード切替手段として機能する。
【0062】
位置特定部114は、モード切替部113により切り替えられた測位モード、屋内情報取得部111が取得する屋内位置情報、屋外情報取得部112が取得する屋外位置情報、に基づいて、測位対象である移動器200の位置を特定する。位置特定部114は、位置特定手段として機能する。
【0063】
位置情報出力部115は、位置特定部114が特定した移動器200の位置を表示部131に表示する。位置情報出力部115は、位置情報出力手段として機能する。
【0064】
記憶部120は、ROM102、RAM103、HDD104等により構成され、制御部110が実行する各種プログラム、制御部110がプログラム実行の際に用いる各種データ、制御部110がプログラム実行により生成した各種データ等を記憶する。記憶部120は、例えば、移動器情報121、検出器情報122を記憶する。
【0065】
移動器情報121は、
図11に示すように、各移動器200について、移動器200の識別情報(移動器ID)、移動器IDで示される移動器200が装着された作業員W又は商品Pの識別情報(作業員・商品ID)、移動器IDで示される移動器200の現在の測位モード(モード)、移動器IDで示される移動器200が優先的に用いる優先度の高い測位方式(優先方式)の情報を含む。
【0066】
検出器情報122は、屋内における第1検出器300又は第2検出器400の設置位置等を示す情報であり、例えば
図12に示すように、第1検出器300又は第2検出器400の識別子(検出器ID)、検出器IDで示される検出器の測位方式(方式)、検出器IDで示される検出器が設置されているエリア(設置エリア)、検出器IDで示される検出器が設置されている位置(設置位置)の情報を含む。設置位置は、例えば、GPSで得られる情報と同様の3次元座標値でもよいし、設置エリアの基準位置からの相対位置でもよい。
図12では、設置位置は、各設置エリアの最初の検出器の位置を原点とする相対位置で表されている。検出器情報122は、位置算出器500が移動器200の位置を算出する際に利用する情報なので、後述する位置特定処理の初期化処理時に、位置算出器500に転送される。なお、検出器情報122は
図12に示すように全ての検出器についてまとめて記憶しなくてもよい。例えば、検出器を各方式毎に独立して記憶してもよい。
【0067】
図10に戻り、表示部131は、ディスプレイ105等により構成され、移動器200の位置を表示する。
【0068】
入力部132は、入力装置106等により構成され、位置特定システム1の管理者等のユーザからの入力を受け付ける。
【0069】
通信部133は、通信I/F107等により構成され、他の装置(移動器200、位置算出器500等)とのデータ通信を行う。
【0070】
(位置特定処理)
次に、位置特定装置100の制御部110が実行する位置特定処理について、
図13を参照して説明する。位置特定処理は、位置特定システム1の管理者等から、位置特定処理の開始を指示されると処理が開始される。
【0071】
まず、制御部110は、初期化処理を行う(ステップS101)。初期化処理では、検出器情報122を位置算出器500に転送するとともに、種々の変数等の初期化を行う。
【0072】
初期化処理が完了したら、屋内情報取得部111は、位置算出器500が送信する屋内位置情報(測位対象の屋内における位置情報を含む情報)を取得する(ステップS102)。ステップS102は、屋内情報取得ステップとも呼ばれる。なお、位置算出器500から屋内位置情報が送信されない場合(例えば移動器200が屋内にいない場合等)は屋内位置情報が送信されるのを待つことなく、ステップS103に進む。
【0073】
次に、屋外情報取得部112は、移動器200が送信する屋外位置情報(測位対象の屋外における位置情報を含む情報)を取得する(ステップS103)。ステップS103は、屋外情報取得ステップとも呼ばれる。なお、移動器200から屋外位置情報が送信されない場合(例えば移動器200が屋外にいない場合等)は屋外位置情報が送信されるのを待つことなく、ステップS104に進む。
【0074】
そして、モード切替部113は、各移動器200のGPS捕捉衛星数に応じて測位モードを切り替える(ステップS104)。ステップS104は、モード切替ステップとも呼ばれる。なお、測位モード切り替えの詳細については後述する。
【0075】
次に、位置特定部114は、各移動器200の測位モードに応じて、各移動器200の位置を特定する(ステップS105)。ステップS105は位置特定ステップとも呼ばれる。例えば、屋内モードの移動器200については、ステップS102で取得した屋内位置情報に含まれる位置情報を当該移動器200の位置情報として特定する。また、屋外モードの移動器200については、ステップS103で取得した屋外位置情報に含まれる位置情報を当該移動器200の位置情報として特定する。
【0076】
また、中間モードの移動器200については、当該移動器200の移動器情報121に含まれる優先方式に基づいて、優先方式が屋内の測位方式(例えばAOA又はRSSI)なら、ステップS102で取得した屋内位置情報に含まれる位置情報を当該移動器200の位置情報として特定し、優先方式が屋外の測位方式(例えばGPS)なら、ステップS103で取得した屋外位置情報に含まれる位置情報を当該移動器200の位置情報として特定する。
【0077】
次に、位置情報出力部115は、位置特定部114が特定した各移動器200の位置情報を、表示部131に表示する(ステップS106)。ステップS106は、位置情報出力ステップとも呼ばれる。ステップS106で位置情報出力部115は、移動器情報121を参照して、移動器200を装着している作業員W又は商品Pの情報や、当該移動器200の現在の測位モードの情報等も、位置情報と合わせて表示部131に表示してもよい。
【0078】
次に、制御部110は、位置特定処理を終了するか否かを判定する(ステップS107)。例えば、位置特定システム1の管理者等のユーザから、位置特定処理の終了が指示されたら位置特定処理は終了するので、制御部110は、そのような指示が行われたか否かを判定することになる。位置特定処理を終了すると判定されたら(ステップS107;Yes)、位置特定処理を終了する。
【0079】
位置特定処理を終了すると判定されなかったら(ステップS107;No)、ステップS102に戻る。以上、位置特定処理について説明した。
【0080】
(状態遷移)
次に、測位モードの状態遷移について、
図14を参照して説明する。この測位モードは、移動器200の各々について設定及び遷移が行われ、位置特定装置100が、移動器情報121の「モード」の項目を更新することによって管理される。以下の処理中では、屋内位置情報又は屋外位置情報に含まれる「移動器200の識別情報」で示される移動器200が各処理及び測位モード遷移の対象となる。
【0081】
位置特定処理が開始されると、まず初期化処理中(ステップS101)は、状態は状態S10になる。初期化処理が完了すると、制御部110は、屋外情報取得部112が取得した屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値(例えば6)以上か否かを判定する。
【0082】
そして、GPS捕捉衛星数が閾値以上なら、状態S11に行き、当該移動器200の測位モードは屋外モードになる。GPS捕捉衛星数が閾値以上なら、GPSでの測位が安定して正確に行えると考えられるからである。また、GPS捕捉衛星数が閾値より小さければ、状態S12へ行き、当該移動器200の測位モードは中間モードとなる。
【0083】
屋外モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、BLEビーコン送信の停止と、タイマーA(例えば1秒)毎に屋外位置情報(GPS情報)を送信することを指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、BLEビーコンの送信を停止し、タイマーA毎に屋外位置情報の送信を行う。
【0084】
屋外モードでは、屋外情報取得部112がタイマーA毎に屋外位置情報を取得するが、屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値より小さくなったら、状態S12に行き、当該移動器200の測位モードは中間モードに遷移する。
【0085】
中間モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、BLEビーコン送信の開始と、タイマーB(例えば1秒)毎に屋外位置情報(GPS情報)を送信することを指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、BLEビーコンの送信を開始し、タイマーB毎に屋外位置情報の送信を行う。
【0086】
中間モードでは、定期的(例えば1秒毎)にBLEビーコンが送信されることにより、第1検出器300又は第2検出器400が当該BLEビーコンを検出したら、位置算出器500が算出した屋内位置情報が位置特定装置100に送信される。これにより、屋内情報取得部111は定期的(例えば1秒毎)に屋内位置情報を取得する。また、屋外情報取得部112はタイマーB毎に屋外位置情報を取得する。
【0087】
中間モードでは、当該移動器200の移動器情報121に含まれる優先方式に基づいて、屋内位置情報又は屋外位置情報に含まれる位置情報を当該移動器200の位置情報として特定する。そして、屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値以上である状態が所定の回数(例えば3回)継続した場合、状態S11に行き、当該移動器200の測位モードは屋外モードに遷移する。所定の回数継続した場合とは、タイマーBの時間×所定の回数の時間(つまり所定の時間)継続した場合である。
【0088】
また、屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値より小さい状態が所定の回数(例えば3回)継続した場合、状態S13に行き、当該移動器200の測位モードは屋内モードに遷移する。ここでも、所定の回数継続した場合とは、タイマーBの時間×所定の回数の時間(つまり所定の時間)継続した場合である。
【0089】
屋内モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、GPS受信の停止と、タイマーC(例えば10秒)毎にGPS受信を開始して屋外位置情報(GPS情報)を送信しGPS受信を停止する処理を指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、タイマーC毎にGPS受信を行って屋外位置情報を送信してはGPS受信を停止する処理を繰り返す。なお、当該移動器200によるBLEビーコンの定期的な送信は継続して行われる。また、屋内モードでのGPS受信はGPS捕捉衛星数を取得できればよく、GPSによる測位までは行わなくてよい。
【0090】
屋内モードでは、定期的(例えば1秒毎)にBLEビーコンが送信されることにより、第1検出器300又は第2検出器400が当該BLEビーコンを検出したら、位置算出器500が算出した屋内位置情報が位置特定装置100に送信される。これにより、屋内情報取得部111は定期的(例えば1秒毎)に屋内位置情報を取得する。
【0091】
また、屋内モードでは、タイマーC毎にGPS捕捉衛星数が位置特定装置100に送信されるが、このGPS捕捉衛星数が閾値以上になったら、状態S12に行き、当該移動器200の測位モードは中間モードに遷移する。中間モードに遷移した以降は上述の通りの処理となる。
【0092】
なお、タイマーA,B,Cの関係は、タイマーA≦タイマーB≪タイマーCとなるように設定するのが望ましい。例えばタイマーA及びタイマーBは1秒、タイマーCは10秒等である。通常の作業員Wの動線や商品Pの動きを把握する用途にはビーコンの周期は1秒で十分なので、この例ではタイマーAやタイマーBの値を1秒に設定している。また、実施の形態1では、タイマーC毎に、GPSの起動、受信及び停止を繰り返すことから、消費電力を低減するためにタイマーCに長めの値を設定している。より消費電力を削減するために、タイマーCを15秒や30秒等に設定してもよい。
【0093】
以上、測位モードの状態遷移について説明した。上述したように、中間モードからは、GPS捕捉衛星数が閾値以上(又は閾値より小)の状態が一定回数(時間)継続しない限り他の測位モード(屋外モード又は屋内モード)に遷移しないようなヒステリシスが生じるようになっているため、移動器200を装着した測位対象(作業員W、商品P等)が屋外と屋内の境界付近を移動中であっても測位モードはふらつかず、安定的に中間モードを維持するので、位置特定装置100は、安定した位置情報を取得することができる。
【0094】
そして、移動器200毎に、上述の状態遷移が行われるため、移動器200が屋内にあっても屋外にあっても、その位置に応じた適切な測位が行われ、位置特定装置100は各移動器200の位置を正しく特定することができる。
【0095】
(実施の形態2)
実施の形態1では、移動器200がBLEビーコンを送信し、第1検出器300及び第2検出器400がBLEビーコンを受信するという関係になっており、移動器200が第1検出器300又は第2検出器400から位置に関する情報を取得することはなかった。しかし、第1検出器300及び第2検出器400は、設置場所が予め決められているため、位置に関する情報を移動器200に送信することも考えられる。そこで、第1検出器300及び第2検出器400が、屋外と屋内の境界に関する情報を移動器200に送信する、位置特定システムの実施の形態2について説明する。
【0096】
実施の形態2に係る位置特定システムの構成は、実施の形態1に係る位置特定システム1と基本的には同じである。ただし、第1検出器300及び第2検出器400のうち、屋外との境界部分に設置された第1検出器300及び第2検出器400は、移動器200からBLEビーコンを受信すると、当該移動器200に、屋外と屋内の境界であることを示す信号(境界信号)を送信する機能を有する。そして、移動器200の制御部は、通信部でこの境界信号を受信する際、境界信号受信手段として機能する。
【0097】
そして、移動器200は、第1検出器300又は第2検出器400から送信された境界信号を受信すると、境界信号を受信したことを知らせるパケット(境界通知信号)を位置特定装置100に送信する。位置特定装置100は、当該パケット(境界通知信号)を受信すると、当該移動器200が屋外と屋内の境界部分に位置することを把握することができる。
【0098】
実施の形態2に係る位置特定処理は、実施の形態1に係る位置特定処理(
図13)のステップS104の処理において、GPS捕捉衛星数に応じてだけでなく、境界通知信号を受信したか否かによっても各移動器200の測位モードを切り替えるようにする点以外は、実施の形態1に係る位置特定処理と同じである。
【0099】
(実施の形態2の状態遷移)
実施の形態2に係る測位モードの状態遷移は実施の形態1と異なる部分があるため、
図15を参照して説明する。この測位モードも、移動器200の各々について設定及び遷移が行われる。そして、以下の処理中では、屋内位置情報又は屋外位置情報に含まれる「移動器200の識別情報」で示される移動器200、又は境界通知信号を送信した移動器200が、各処理及び測位モード遷移の対象となる。
【0100】
位置特定処理が開始されると、まず初期化処理中(ステップS101)は、状態は状態S20になる。初期化処理が完了すると、制御部110は、屋外情報取得部112が取得した屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値(例えば6)以上か否かを判定する。
【0101】
そして、GPS捕捉衛星数が閾値以上なら、状態S21に行き、当該移動器200の測位モードは屋外モードになる。また、GPS捕捉衛星数が閾値より小さければ、状態S22へ行き、当該移動器200の測位モードは中間モードとなる。
【0102】
屋外モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、BLEビーコン送信の停止と、タイマーD(例えば1秒)毎に屋外位置情報(GPS情報)を送信することを指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、BLEビーコンの送信を停止し、タイマーD毎に屋外位置情報の送信を行う。
【0103】
屋外モードでは、屋外情報取得部112がタイマーD毎に屋外位置情報を取得するが、屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値より小さくなったら、状態S22に行き、当該移動器200の測位モードは中間モードに遷移する。
【0104】
中間モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、タイマーE(例えば1秒)毎にBLEビーコンと屋外位置情報(GPS情報)を送信することを指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、タイマーE毎にBLEビーコンの送信と屋外位置情報の送信を行う。
【0105】
中間モードでは、タイマーE(例えば1秒)毎にBLEビーコンが送信されることにより、第1検出器300又は第2検出器400が当該BLEビーコンを検出したら、位置算出器500が算出した屋内位置情報が位置特定装置100に送信される。これにより、屋内情報取得部111はタイマーE(例えば1秒)毎に屋内位置情報を取得する。また、屋外情報取得部112はタイマーE毎に屋外位置情報を取得する。
【0106】
中間モードでは、当該移動器200の移動器情報121に含まれる優先方式に基づいて、屋内位置情報又は屋外位置情報に含まれる位置情報を当該移動器200の位置情報として特定する。そして、屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値以上である状態が所定の回数(例えば3回)継続した場合、状態S21に行き、当該移動器200の測位モードは屋外モードに遷移する。所定の回数継続した場合とは、タイマーEの時間×所定の回数の時間(つまり所定の時間)継続した場合である。
【0107】
また、移動器200が第1検出器300又は第2検出器400から境界信号を受信したら、当該移動器200は位置特定装置100に境界通知信号を送信する。位置特定装置100が境界通知信号を受信すると、状態S23に行き、当該移動器200の測位モードは屋内モードに遷移する。境界通知信号を受信する際、位置特定装置100の制御部110は、境界通知受信手段として機能する。
【0108】
屋内モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、GPS受信の停止と、タイマーF(例えば1秒)毎にBLEビーコン送信する処理を指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、タイマーF毎にBLEビーコンを送信する。
【0109】
屋内モードでは、タイマーF(例えば1秒)毎にBLEビーコンが送信されることにより、第1検出器300又は第2検出器400が当該BLEビーコンを検出したら、位置算出器500が算出した屋内位置情報が位置特定装置100に送信される。これにより、屋内情報取得部111はタイマーF(例えば1秒)毎に屋内位置情報を取得する。
【0110】
また、屋内モードでは、移動器200が第1検出器300又は第2検出器400から送信された境界信号を受信したら、当該移動器200は位置特定装置100に境界通知信号を送信する。位置特定装置100が境界通知信号を受信すると、状態S22に行き、当該移動器200の測位モードは中間モードに遷移する。その後は、上で説明した通りの処理となる。
【0111】
なお、タイマーD,E,Fの関係は、タイマーD≒タイマーE≧タイマーFとなるように設定するのが望ましい。例えばタイマーD、タイマーE及びタイマーFを全て1秒に設定する等である。通常の作業員Wの動線や商品Pの動きを把握する用途にはビーコンの周期は1秒で十分なので、この例ではタイマーD、タイマーE及びタイマーFの値を1秒に設定している。
【0112】
以上、実施の形態2に係る測位モードの状態遷移について説明した。移動器200毎に、上述の状態遷移が行われるため、移動器200が屋内にあっても屋外にあっても、その位置に応じた適切な測位が行われ、位置特定装置は各移動器200の位置を正しく特定することができる。また、実施の形態2では、屋内モードの際にはGPS受信を行う必要がないため、移動器200の消費電力を削減することができる。
【0113】
(実施の形態3)
実施の形態2では、第1検出器300及び第2検出器400が、移動器200からBLEビーコンを受信すると、当該移動器200に、屋外と屋内の境界であることを示す信号(境界信号)を送信する。しかし、移動器200の測位モードが屋外モードの時は、当該移動器200はBLEビーコンを送信しないため、境界信号が送信される機会がなかった。そこで、屋外モードにおいても移動器200にBLEビーコンを送信させることにより、屋外モードで境界信号を受信した移動器200が、中間モードを経由せずに屋内モードに遷移できる、位置特定システムの実施の形態3について説明する。
【0114】
実施の形態3に係る位置特定システムの構成は、実施の形態2に係る位置特定システムと同じである。実施の形態3に係る位置特定処理は、実施の形態2に係る位置特定処理と同じである。
【0115】
(実施の形態3の状態遷移)
実施の形態3に係る測位モードの状態遷移は実施の形態2と異なる部分があるため、
図16を参照して説明する。この測位モードも、移動器200の各々について設定及び遷移が行われる。そして、以下の処理中では、屋内位置情報又は屋外位置情報に含まれる「移動器200の識別情報」で示される移動器200、又は境界通知信号を送信した移動器200が、各処理及び測位モード遷移の対象となる。
【0116】
位置特定処理が開始されると、まず初期化処理中(ステップS101)は、状態は状態S30になる。初期化処理が完了すると、制御部110は、屋外情報取得部112が取得した屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値(例えば6)以上か否かを判定する。
【0117】
そして、GPS捕捉衛星数が閾値以上なら、状態S31に行き、当該移動器200の測位モードは屋外モードになる。また、GPS捕捉衛星数が閾値より小さければ、状態S32へ行き、当該移動器200の測位モードは中間モードとなる。
【0118】
屋外モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、タイマーD(例えば1秒)毎に屋外位置情報(GPS情報)を送信し、タイマーG(例えば5秒)毎にBLEビーコンを送信することを指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、タイマーD毎に屋外位置情報を送信し、タイマーG毎にBLEビーコンの送信を行う。
【0119】
屋外モードでは、屋外情報取得部112がタイマーD毎に屋外位置情報を取得するが、屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値より小さくなったら、状態S32に行き、当該移動器200の測位モードは中間モードに遷移する。
【0120】
また、移動器200が第1検出器300又は第2検出器400から境界信号を受信したら、当該移動器200は位置特定装置100に境界通知信号を送信する。位置特定装置100が境界通知信号を受信すると、状態S33に行き、当該移動器200の測位モードは屋内モードに遷移する。境界通知信号を受信する際、位置特定装置100の制御部110は、境界通知受信手段として機能する。
【0121】
中間モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、タイマーE(例えば1秒)毎にBLEビーコンと屋外位置情報(GPS情報)を送信することを指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、タイマーE毎にBLEビーコンの送信と屋外位置情報の送信を行う。
【0122】
中間モードでは、タイマーE(例えば1秒)毎にBLEビーコンが送信されることにより、第1検出器300又は第2検出器400が当該BLEビーコンを検出したら、位置算出器500が算出した屋内位置情報が位置特定装置100に送信される。これにより、屋内情報取得部111はタイマーE(例えば1秒)毎に屋内位置情報を取得する。また、屋外情報取得部112はタイマーE毎に屋外位置情報を取得する。
【0123】
中間モードでは、当該移動器200の移動器情報121に含まれる優先方式に基づいて、屋内位置情報又は屋外位置情報に含まれる位置情報を当該移動器200の位置情報として特定する。そして、屋外位置情報に含まれる「捕捉したGPS衛星の数」(GPS捕捉衛星数)が閾値以上である状態が所定の回数(例えば3回)継続した場合、状態S31に行き、当該移動器200の測位モードは屋外モードに遷移する。所定の回数継続した場合とは、タイマーEの時間×所定の回数の時間(つまり所定の時間)継続した場合である。
【0124】
また、中間モードで移動器200が第1検出器300又は第2検出器400から境界信号を受信したら、当該移動器200は位置特定装置100に境界通知信号を送信する。位置特定装置100が境界通知信号を受信すると、状態S33に行き、当該移動器200の測位モードは屋内モードに遷移する。
【0125】
屋内モードに遷移すると、位置特定装置100は、当該移動器200に対し、GPS受信の停止と、タイマーF(例えば1秒)毎にBLEビーコン送信する処理を指示するリクエストパケットを送信する。このリクエストパケットを受信した当該移動器200は、タイマーF毎にBLEビーコンを送信する。
【0126】
屋内モードでは、タイマーF(例えば1秒)毎にBLEビーコンが送信されることにより、第1検出器300又は第2検出器400が当該BLEビーコンを検出したら、位置算出器500が算出した屋内位置情報が位置特定装置100に送信される。これにより、屋内情報取得部111はタイマーF(例えば1秒)毎に屋内位置情報を取得する。
【0127】
また、屋内モードでは、移動器200が第1検出器300又は第2検出器400から送信された境界信号を受信したら、当該移動器200は位置特定装置100に境界通知信号を送信する。位置特定装置100が境界通知信号を受信すると、状態S32に行き、当該移動器200の測位モードは中間モードに遷移する。その後は、上で説明した通りの処理となる。
【0128】
なお、タイマーD,E,F,Gの関係は、タイマーG≫タイマーD≒タイマーE≧タイマーFとなるように設定するのが望ましい。例えばタイマーD、タイマーE及びタイマーFは全て1秒、タイマーGは5秒に設定する等である。通常の作業員Wの動線や商品Pの動きを把握する用途にはビーコンの周期は1秒で十分なので、この例ではタイマーD、タイマーE及びタイマーFの値を1秒に設定している。また、タイマーGによる屋外モードでのBLEビーコンの送信はオプション的なものであるため、頻繁な送信は不要であり、この例では5秒に設定している。
【0129】
以上、実施の形態3に係る測位モードの状態遷移について説明した。移動器200毎に、上述の状態遷移が行われるため、移動器200が屋内にあっても屋外にあっても、その位置に応じた適切な測位が行われ、位置特定装置100は各移動器200の位置を正しく特定することができる。また、実施の形態3では、屋内モードの際にはGPS受信を行う必要がないため、移動器200の消費電力を削減することができる。さらに、実施の形態3では、移動器200が屋外モードで境界信号を受信した場合には中間モードを経由せずに直接屋内モードに遷移することができるため、(中間モードでの)測位方式を優先度に応じて選択する処理をスキップできる。
【0130】
(実施の形態4)
上述の実施の形態1,2,3では、位置特定装置100の制御部110内にあるモード切替部113で屋外モード、屋内モード、中間モードの切り替えを実施しているが、モード切替部113の処理は移動器200で実施してもよい。このような実施の形態4について説明する。
【0131】
実施の形態4では、屋外位置情報、屋内位置情報の送信周期は事前に移動器200に設定されているものとする。また、実施の形態4に係る各移動器200は、モード切替部を備え、自律的に屋内モード、屋内モード、中間モードを切り替える。このため、位置特定装置100から移動器200にリクエストパケットを送信する必要がなく、また、移動器200から位置特定装置100へ送信する屋外位置情報から、捕捉したGPSの数を除外することが可能となる。
【0132】
実施の形態4に係る位置特定装置100は、モード切替部を備える必要はない。また、実施の形態4に係る位置特定装置100が実行する位置特定処理は、ステップS104を備える必要はなく、ステップS105では、屋内位置情報(ステップS102で取得)と屋外位置情報(ステップS103で取得)のうち、取得できた方の情報を当該移動器200の位置として特定する。
【0133】
また、実施の形態4における状態遷移は、位置特定装置100による管理は行われず、各移動器200が自分自身で自分の状態を管理する。そして、移動器200の制御部により、
図14,15,16に示すような状態遷移が行われる。
【0134】
実施の形態4では、移動器200がモード切り替えを行う際に、位置特定装置100と通信する必要はないため、屋内(特に地下)など携帯電話通信網が利用できない環境や、Wi-Fiなどが利用できない環境においても、各移動器200は自律的に屋内モード又は中間モードに切り替えて、GPSのON/OFF、BLEビーコン送信をそれぞれ制御する。したがって、屋内において移動器200と位置特定装置100とが直接通信できない場合でも、上述した実施の形態1,2,3と同様の運用が可能となる。
【0135】
(変形例)
本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他の種々の変更が可能である。例えば、位置特定システム1では、上記実施の形態で示した全ての技術的特徴を備えるものでなくてもよく、従来技術における少なくとも1つの課題を解決できるように、上記実施の形態で説明した一部の構成を備えたものであってもよい。また、下記の変形例それぞれについて、少なくとも一部を組み合わせても良い。
【0136】
例えば、上述の実施の形態では、検出器として第1検出器300及び第2検出器400の両方を備えるものとして説明した。しかし、位置特定システム1は、第2検出器400を備えなくてもよい。この場合、位置算出器500は、第1検出器300からの第1検出情報を用いて移動器200の位置を算出する。また逆に、位置特定システム1は、第1検出器300を備えなくてもよい。この場合、位置算出器500は、第2検出器400からの第2検出情報を用いて移動器200の位置を算出する。さらに、位置特定システム1は、第1検出器300及び第2検出器400を備えず、他の方式によって屋内位置情報を取得する手段を備えたものであってもよい。
【0137】
また、位置特定装置100は、位置算出器500の機能を含んだ装置であってもよい。この場合、位置特定装置100の記憶部120に格納された検出器情報122を位置算出器500に転送する処理は不要になる。また、第1検出器300は位置特定装置100に第1検出情報を送信し、第2検出器400は位置特定装置100に第2検出情報を送信し、位置特定装置100は、これらの検出情報を用いて自ら屋内における移動器200の位置情報を算出する。
【0138】
また、上述の実施の形態では、移動器情報121(
図11)の優先方式には、最も優先度の高い測位方式が登録されている例が示されていたが、これに限られない。移動器情報121の優先方式の項目に、優先度の順に複数の測位方式が登録されてもよい。この場合、測位モードが中間モードの際には、位置特定部114は、優先度の高い測位方式から利用可能な測位方式を検索し、最初に見つかった利用可能な測位方式を採用して位置を特定することになる。
【0139】
また、上述の実施形態では、測位方式の優先度が、予め移動器情報121により、移動器200毎に設定されていることを想定しているが、これに限られない。例えば「優先度情報」等という形で、移動器200毎に限らず、エリア毎、時間帯毎、作業員W毎、商品P毎等によって、どの測位方式を優先して利用するかが設定され、それに基づいて位置特定部114が、優先度の高い測位方式を利用するようにしてもよい。
【0140】
なお、上記の実施の形態において、位置特定装置100の動作を規定する制御プログラムは、ROM102、HDD104等に記憶されているものとして説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されず、上記の各種処理を実行させるための制御プログラムを、通常のPC(Personal Computer)等のコンピュータに実装することにより、上記の実施の形態に係る位置特定装置100に相当する装置として機能させてもよい。
【0141】
このようなプログラムの提供方法は任意であり、例えば、コンピュータが読取可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical Disc)、メモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等)等に格納して配布してもよいし、インターネットをはじめとするネットワーク上のストレージにプログラムを格納しておき、これをダウンロードさせることにより提供してもよい。
【0142】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0143】
1…位置特定システム、100…位置特定装置、101…CPU、102…ROM、103…RAM、104…HDD、105…ディスプレイ、106…入力装置、107…通信I/F、110…制御部、111…屋内情報取得部、112…屋外情報取得部、113…モード切替部、114…位置特定部、115…位置情報出力部、120…記憶部、121…移動器情報、122…検出器情報、131…表示部、132…入力部、133…通信部、200…移動器、300,300A,300B…第1検出器、400,400A,400B,400C…第2検出器、500…位置算出器、θA,θB,φA,φB…角度、A,B,C,D,E,F,G…タイマー、BL…バスライン、d,dA1,dA2,dB1,dB2,dC1,dC2…距離、NW1,NW2…ネットワーク、P…商品、PAB,PAC,PBC…点、S10,S11,S12,S13,S20,S21,S22,S23,S30,S31,S32,S33…状態、W…作業員