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特許7370149位置特定装置、位置特定システム、位置特定方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】位置特定装置、位置特定システム、位置特定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20231020BHJP
【FI】
G01S5/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019051807
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020153786
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503362463
【氏名又は名称】アドソル日進株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】冨田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 諒太
【審査官】石原 徹弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-512571(JP,A)
【文献】特開2018-100929(JP,A)
【文献】特開2017-106864(JP,A)
【文献】特開2013-232805(JP,A)
【文献】特開2009-085780(JP,A)
【文献】冨田 知宏ほか,高精度屋内測位システム”uLocation”と屋内外シームレス測位プラットフォーム”uS1GMA”の紹介,電子情報通信学会2019年総合大会講演論文集 通信2,2019年03月05日,SS-10~11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象である発信機器から送信される無線信号を第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと、前記無線信号を第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアと、を含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定する位置特定装置であって、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度を取得して、前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、
前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度を取得して、前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定し、
前記特定された前記発信機器の所在位置を表示する、
制御部を備える、
位置特定装置。
【請求項2】
前記採用優先度が対応付けられている前記第1計測エリアと前記第2計測エリアとは所定量重畳して重畳エリアを形成しており、
前記重畳エリアのうち、前記第1計測エリアの縁部が第1ガードバンドであり、前記第2計測エリアの縁部が第2ガードバンドであり、前記第1ガードバンドおよび前記第2ガードバンドを除いたエリアが重複エリアであり、
前記第1計測エリアのうち、前記重畳エリアを除いたエリアが実質第1計測エリアであり、
前記第2計測エリアのうち、前記重畳エリアを除いたエリアが実質第2計測エリアであり、
前記制御部は、
前記第1推定位置が属するエリアが前記実質第1計測エリア、前記第1ガードバンド、前記重複エリア、前記第2ガードバンドのいずれに属しているか、及び、
前記第2推定位置が属するエリアが前記実質第2計測エリア、前記第2ガードバンド、前記重複エリア、前記第1ガードバンドのいずれに属しているか、により、
前記採用優先度に基づいて、前記第1推定位置を採用して前記発信機器の所在位置として特定するか、前記第2推定位置を採用して前記発信機器の所在位置として特定するか、又は、いずれも採用せずに前記発信機器の所在位置を特定しない、
請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項3】
測位対象である発信機器から送信される無線信号を第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと、前記無線信号を第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアと、を含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定する位置特定システムであって、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度を取得して、前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、
前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度を取得して、前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定し、
前記特定された前記発信機器の所在位置を表示する、
制御部を備える、
位置特定システム。
【請求項4】
無線信号を定期的に発信する発信機器と、前記無線信号を受信する第1信号計測センサおよび第2信号計測センサと、測位対象である前記発信機器から送信される前記無線信号を前記第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと前記無線信号を前記第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアとを含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定する位置特定装置と、を含む位置特定システムであって、
前記位置特定装置は、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度と、前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度と、を取得し、
前記第1計測情報から前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、前記第2計測情報から前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定し、
前記特定された前記発信機器の所在位置を表示する、
制御部を備える、
位置特定システム。
【請求項5】
測位対象である発信機器から送信される無線信号を第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと、前記無線信号を第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアと、を含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定する位置特定方法であって、
コンピュータが、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度を取得して、前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、
前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度を取得して、前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定する、
位置特定方法。
【請求項6】
測位対象である発信機器から送信される無線信号を第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと、前記無線信号を第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアと、を含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定するプログラムであって、
コンピュータに、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度を取得して、前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、
前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度を取得して、前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定し、
前記特定された前記発信機器の所在位置を表示する、
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置特定装置、位置特定システム、位置特定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人や物の所在位置を、各種の測位方式を用いて特定する位置特定技術が知られている。例えば、特許文献1は、複数の測位方式を用いて得られる複数の測位結果に基づいて、測位対象である移動機の位置情報を特定する位置情報特定装置を開示している。この位置情報特定装置は、移動機の位置を特定する際に、測位精度の高い測位方式による測位結果から順次評価し、測位結果の精度に基づいて移動機の位置情報として採用するか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-66638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、導入コストや稼動コスト等の観点から、測位対象の移動頻度や移動速度等に応じて適切な測位精度の測位方式を利用する技術が求められている。しかしながら、特許文献1が開示する位置情報特定装置は、測位精度の異なる複数の測位方式による測位情報を常に取得するため、移動機とは異なる測位対象の位置を適切な測位方式を用いて特定することが困難である。
【0005】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、人や物の位置を適切な測位方式を用いて特定することができる位置特定装置、位置特定システム、位置特定方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る位置特定装置は、
測位対象である発信機器から送信される無線信号を第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと、前記無線信号を第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアと、を含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定する位置特定装置であって、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度を取得して、前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、
前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度を取得して、前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定し、
前記特定された前記発信機器の所在位置を表示する、
制御部を備える。
【0007】
また、上記の目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る位置特定システムは、
測位対象である発信機器から送信される無線信号を第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと、前記無線信号を第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアと、を含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定する位置特定システムであって、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度を取得して、前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、
前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度を取得して、前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定し、
前記特定された前記発信機器の所在位置を表示する、
制御部を備える。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る位置特定システムは、
無線信号を定期的に発信する発信機器と、前記無線信号を受信する第1信号計測センサおよび第2信号計測センサと、測位対象である前記発信機器から送信される前記無線信号を前記第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと前記無線信号を前記第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアとを含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定する位置特定装置と、を含む位置特定システムであって、
前記位置特定装置は、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度と、前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度と、を取得し、
前記第1計測情報から前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、前記第2計測情報から前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定し、
前記特定された前記発信機器の所在位置を表示する、
制御部を備える。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る位置特定方法は、
測位対象である発信機器から送信される無線信号を第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと、前記無線信号を第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアと、を含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定する位置特定方法であって、
コンピュータが、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度を取得して、前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、
前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度を取得して、前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定する。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、本発明の第5の観点に係るプログラムは、
測位対象である発信機器から送信される無線信号を第1信号計測センサで受信してAOA方式を用いて前記発信機器を測位する第1計測エリアと、前記無線信号を第2信号計測センサで受信してRSSI方式を用いて前記発信機器を測位する第2計測エリアと、を含むエリアに存在する前記発信機器の所在位置を特定するプログラムであって、
コンピュータに、
前記無線信号を前記第1信号計測センサが受信して生成した第1計測情報である前記無線信号の到来角度を取得して、前記AOA方式を用いて前記発信機器の第1推定位置を算出し、
前記無線信号を前記第2信号計測センサが受信して生成した第2計測情報である前記無線信号の受信信号強度を取得して、前記RSSI方式を用いて前記発信機器の第2推定位置を算出し、
(1)前記第1推定位置、(2)前記第2推定位置、並びに、(3)前記第1推定位置が属するエリア及び前記第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応付けられた採用優先度に基づいて、前記第1推定位置又は前記第2推定位置から前記発信機器の所在位置を特定し、
前記特定された前記発信機器の所在位置を表示する、
処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人や物の位置を適切な測位方式を用いて特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る位置特定システムの概略図である。
図2】倉庫内の状態を説明するための図である。
図3A】第1計測情報の一例を示す図である。
図3B】第2計測情報の一例を示す図である。
図4】位置特定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5】位置特定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6A】倉庫内の第1計測エリア、第2計測エリア、ブランクエリアの一例を示す図である。
図6B】座標系を説明するための図である。
図7A】作業員・端末対応情報の一例を示す図である。
図7B】商品・タグ対応情報の一例を示す図である。
図8A】ブランクエリアと隣接する第1計測エリアに境界エリアとして設定される第1ガードバンドを説明するための図である。
図8B】ブランクエリアと隣接する第2計測エリアに境界エリアとして設定される第2ガードバンドを説明するための図である。
図9A】隣接する第1計測エリアと第2計測エリアの境界部分に設定される境界エリアを説明するための図である。
図9B】第1ガードバンドを説明するための図である。
図9C】第2ガードバンドを説明するための図である。
図10】優先度情報の一例を示す図である。
図11】所在位置特定処理の流れを示すフローチャートである。
図12】位置表示画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る位置特定システム1は、屋内における人および物品の位置を特定するシステムである。本実施の形態では、位置特定システム1を、倉庫WH内で利用し、作業員(人)および商品(物)の位置を管理対象とする場合を例に説明する。倉庫WH内において、作業員は、例えば、商品の搬入、搬出、在庫確認等の各種作業を行う。位置特定システム1は、図1に示すように、携帯端末100、タグ装置200、第1信号計測センサ300A、第2信号計測センサ300B、および位置特定装置400を含む。第1信号計測センサ300A、第2信号計測センサ300B、および位置特定装置400は、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。ネットワークNWは、有線または無線を問わず、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、3G/LTE回線、IEEE802.15.4などの近距離無線、LPWA無線、VPN(Virtual Private Network)等の任意の通信網である。また、第1信号計測センサ300Aおよび第2信号計測センサ300Bは、携帯端末100およびタグ装置200から発信された無線信号を受信することができる。
【0015】
なお、図1には、携帯端末100、タグ装置200、第1信号計測センサ300A、第2信号計測センサ300Bがそれぞれ一台ずつ示されているが、これらの装置の台数は複数であれば任意であり、位置特定システム1は、2台以上の携帯端末100、タグ装置200、第1信号計測センサ300A、第2信号計測センサ300Bを含んで構成される。また、第1信号計測センサ300Aと第2信号計測センサ300Bは、無線信号の受信態様を異なる計測方式を用いて計測するものとする。
【0016】
(携帯端末100)
携帯端末100は、スマートフォン、タブレット型端末等であり、自装置の識別情報(端末ID)を含む無線信号(電波信号)を定期的に(例えば、数秒間隔で)発信する機能を有する。図2に示すように、管理対象の作業員Wは、倉庫WH内において携帯端末100を所持しているものとする。本実施の形態において、携帯端末100が定期的に発信する無線信号は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)の規格に準拠するビーコン信号(以下、単に「BLEビーコン」とも称する)であるものとする。なお、携帯端末100は、BLEビーコン機能があればよいのでスマートフォン、タブレットのように人に表示する画面や操作するためのタッチパネルが必須ではなく小型化が可能であり、作業員のヘルメットや襟や肩にクリップなどで固定することが可能である。携帯端末100は、本発明の発信機器の一例である。
【0017】
(タグ装置200)
タグ装置200は、タグ状の発信機器であり、自装置の識別情報(タグID)を含む無線信号(電波信号)を定期的に(例えば、数秒間隔で)発信する機能を有する。図2に示すように、管理対象の商品Pには、タグ装置200が装着されているものとする。本実施の形態において、タグ装置200が周期的に送信する無線信号は、携帯端末100の場合と同様、BLEビーコンであるものとする。タグ装置200は、本発明の発信機器の一例である。
【0018】
なお、携帯端末100およびタグ装置200が発信する無線信号は、自己の存在を知らせるために一定間隔で送信される信号であればよく、BLEビーコン以外の信号であってもよい。携帯端末100およびタグ装置200は、本発明に係る発信機器の一例である。
【0019】
(第1信号計測センサ300A)
第1信号計測センサ300Aは、携帯端末100およびタグ装置200から発信されたBLEビーコンを受信し、その受信態様として、電波の到来角度(AOA(Angle Of Arrival))を計測するセンサである。第1信号計測センサ300Aは、本発明に係る受信機器、第1の受信機器の一例である。第1信号計測センサ300Aは、BLEビーコンを受信する毎に、受信したBLEビーコンの到来角度等を示す第1計測情報を生成し、ネットワークNWを介して位置特定装置400に送信する。第1計測情報は、例えば、図3Aに示すように、第1信号計測センサ300Aの識別情報であるセンサID、BLEビーコンの発信元である携帯端末100またはタグ装置200の識別情報である発信元ID(端末IDまたはタグID)、到来角度を含む。到来角度は、電波の到来角度を水平方向から見たときの、基準線(例えば、垂線)に対する角度θと、電波の到来角度を垂直方向から見たときの、基準線(例えば、北の方向)に対する角度φとを含む。
【0020】
(第2信号計測センサ300B)
第2信号計測センサ300Bは、携帯端末100およびタグ装置200から発信されたBLEビーコンを受信し、その受信態様として、受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator))を計測するセンサである。第2信号計測センサ300Bは、本発明の受信機器、第2の受信機器の一例である。第2信号計測センサ300Bは、BLEビーコンを受信する毎に、受信したBLEビーコンの受信信号強度等を示す第2計測情報を生成し、ネットワークNWを介して位置特定装置400に送信する。第2計測情報は、例えば、図3Bに示すように、第2信号計測センサ300Bの識別情報であるセンサID、ビーコン信号の発信元である携帯端末100またはタグ装置200の識別情報である発信元ID(端末IDまたはタグID)、受信信号強度を含む。
【0021】
受信信号強度は、第2信号計測センサ300Bが受信したBLEビーコンの電波の強度を示す相対的な指標であり、例えば、第2信号計測センサ300Bが受信した電界強度の対数値に対しほぼ比例した数値で表される。その数値が大きいほど受信電界強度が強く、第2信号計測センサ300Bから携帯端末100またはタグ装置200までの距離が短いことを示す。
【0022】
以下の説明では、第1信号計測センサ300Aと第2信号計測センサ300Bとを特に区別しない場合には、これらを総称して「信号計測センサ300」という。また、第1計測情報と第2計測情報とを特に区別しない場合には、これらを総称して「計測情報」という。
【0023】
(位置特定装置400)
位置特定装置400は、信号計測センサ300から取得した計測情報に応じて対応する測位方式を用いて測位対象である携帯端末100およびタグ装置200の推定位置を算出し、その推定位置が属するエリアに応じて予め定められた優先度に基づいて携帯端末100およびタグ装置200の現在位置を特定する。また、位置特定装置400は、測位対象の所在位置を示す位置表示画像を作成して表示する。
【0024】
(位置特定装置400のハードウェア構成)
次に、図4を参照しながら、位置特定装置400のハードウェア構成を説明する。位置特定装置400は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)401、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403、HDD(Hard Disk Drive)404、ディスプレイ405、入力装置406、通信I/F407を備える。これらの各部は、バスラインBLを介して相互に電気的に接続されている。
【0025】
CPU401は、ROM402やHDD404からプログラムやデータをRAM403上に読み出して処理を実行することにより、位置特定装置400全体を制御する演算装置である。
【0026】
ROM402は、CPU401が実行するプログラムやプログラム実行の際に使用されるデータ等を記憶する不揮発性メモリである。ROM402は、例えば、後述する位置特定処理に用いられる制御プログラムやデータを記憶する。
【0027】
RAM403は、ROM402やHDD404から読み出された各種プログラムや各種データを一時的に保持する揮発性メモリであり、CPU401の作業領域として使用される。
【0028】
HDD404は、記憶内容が書き換え可能な大容量かつ不揮発性の記憶装置である。HDD404は、例えば、CPU401が実行する各種プログラムや各種データを記憶する。なお、位置特定装置400は、HDD404に替えて、またはこれと共に、SSD(Solid State Drive)等の書き換え可能な不揮発性の記憶装置を備えてもよい。
【0029】
ディスプレイ405は、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置であり、CPU401の制御に従って、各種画像を表示する。
【0030】
入力装置406は、キーボード、マウス、操作ボタン等であり、ユーザの操作、各種データの入力等を受け付ける。入力装置406は、例えば、ユーザによる操作やデータ入力を受け付ける。なお、入力装置406は、ディスプレイ405の表示画面とこれに重ねて設けられたタッチセンサとからなるタッチパネルにより構成されてもよい。
【0031】
通信I/F407は、ネットワークNWを介して信号計測センサ300との間でデータの送受信を行うためのインタフェースである。
【0032】
(位置特定装置400の機能構成)
次に、図5を参照しながら、位置特定装置400の機能構成について説明する。位置特定装置400は、図5に示すように、記憶部410、制御部420、表示部430、入力部440、通信部450を備える。
【0033】
記憶部410は、HDD404により構成され、制御部420が実行する各種プログラム、入力データおよび送受信データ等の各種データを記憶する。記憶部410は、例えば、計測エリア情報411、センサ設置情報412、境界エリア情報413、優先度情報414、作業員・端末対応情報415、商品・タグ対応情報416を記憶する。
【0034】
計測エリア情報411は、倉庫WH内の空間が監視用途に応じて区分けされた各エリア(空間)の種別とそのエリアの位置を示す情報である。本実施の形態では、倉庫WH内の空間を所定の大きさ(体積)の直方体もしくは面積(平面)の単位空間に分割し、分割した各単位空間に、監視用途に応じて第1計測エリアARa、第2計測エリアARb、ブランクエリアARcのいずれかの種別が割り当てられている。より具体的には、図6Aに倉庫WHの床面WHFを基準に平面的に示すように、倉庫WH内の空間は、おもに作業員Wの位置の監視を必要とし、そのエリア内に設置された第1信号計測センサ300AによってBLEビーコンの到来角度が計測される第1計測エリアARaと、おもに商品Pの位置の監視を必要とし、そのエリア内に設置された第2信号計測センサ300BによってBLEビーコンの受信信号強度が計測される第2計測エリアARbと、作業員Wおよび商品Pの監視を特に必要としないブランクエリアARcとに区分されている。
【0035】
各エリアの位置は、例えば、図6Bに示すように、床面WHFの基準点Oを原点とするX軸、Y軸、およびZ軸からなる3次元直交座標系における、各エリアの代表点(例えば、8つの頂点)の座標値で表される。なお、倉庫WHが複数階で構成されている場合には、各階の空間を監視用途に応じて各エリアに区分して管理すればよい。
【0036】
センサ設置情報412は、倉庫WH内における第1信号計測センサ300Aおよび第2信号計測センサ300Bの設置位置を示す情報である。第1信号計測センサ300Aは、例えば、図2に示すように、第1計測エリアARaを画定する天井面に一定間隔(例えば、6メートル間隔)でメッシュ状に設置され、第2信号計測センサ300Bは、第2計測エリアARbを画定する天井面に一定間隔でメッシュ状に設置される(図2では、第1信号計測センサ300Aおよび第2信号計測センサ300Bを区別せず、信号計測センサ300と記されている)。なお、図2に示すように、第1信号計測センサ300Aおよび第2信号計測センサ300Bは、各計測エリアを画定する壁面にそれぞれ設置されてもよい。第1信号計測センサ300Aおよび第2信号計測センサ300Bの設置位置は、例えば、上述した各エリアの範囲と同じ座標系における、第1信号計測センサ300Aおよび第2信号計測センサ300Bの個々の設置座標値で表される。
【0037】
境界エリア情報413は、制御部420の境界エリア設定部421により設定された境界エリアの位置を示す情報である。境界エリア情報413の詳細については後述する。
【0038】
優先度情報414は、後述する位置特定部424が測位対象の所在位置を特定する際の推定位置の採用の優先度を示す情報である。
【0039】
作業員・端末対応情報415は、図7Aに示すように、作業員Wの識別情報である作業員IDと、その作業員Wが所持する携帯端末100の識別情報である端末IDとが対応付けられた情報である。制御部420は、この情報により作業員Wと携帯端末100との対応関係を把握することができる。また、商品・タグ対応情報416は、図7Bに示すように、商品Pの識別情報である商品IDとその商品Pに装着されたタグ装置200の識別情報であるタグIDとが対応付けられた情報である。
【0040】
制御部420は、CPU401、ROM402、RAM403等により構成され、位置特定装置400の構成部位の各々を制御する。制御部420は、機能的には、境界エリア設定部421、計測情報取得部422、位置推定部423、位置特定部424、位置表示画像生成部425を有する。これらの各機能部は、CPU401がROM402に記憶された制御プログラムを実行することにより実現される。
【0041】
境界エリア設定部421は、記憶部410が記憶する計測エリア情報411を参照して、種別が異なるエリアが隣接する境界部分に境界エリアを設定し、境界エリアの位置を示す境界エリア情報413を作成して記憶部410に記憶する。境界エリア設定部421は、本発明の境界エリア設定手段の一例である。境界エリアは、異なる種別のエリアが隣接する境界付近における測位対象の位置を特定する際の誤りを抑制するために設けられるエリアであり、例えば、ブランクエリアARcと第1計測エリアARaまたは第2計測エリアARbとが隣接する境界部分、第1計測エリアARaと第2計測エリアARbとが隣接する境界部分に設けられる。
【0042】
ブランクエリアARcと第1計測エリアARaとが隣接する場合、境界エリア設定部421は、図8Aに平面的に示すように、ブランクエリアARcと隣接する第1計測エリアARaの縁部に、境界エリアとして一定幅の第1ガードバンドARagを設定する。第1ガードバンドARagは、実際には第1計測エリアARa外に存在する測位対象に対するAOA方式(第1測位方式)の測位精度および信頼性を確保し得る限界領域として設定される。第1計測エリアARaから第1ガードバンドARagを除いたエリアを実質第1計測エリアARaaとする。
【0043】
境界エリア設定部421は、ブランクエリアARcと第2計測エリアARbとが隣接する場合も同様に、図8Bに示すように、第2ガードバンドARbgを設定する。第2計測エリアARbから第2ガードバンドARbgを除いたエリアを実質第2計測エリアARbbとする。第2ガードバンドARbgは、実際には第2計測エリアARb外に存在する測位対象に対するRSSI方式(第2測位方式)の測位精度および信頼性を確保し得る限界領域として設定される。
【0044】
第1計測エリアARaと第2計測エリアARbとが隣接する場合、第1計測エリアARaに設置された第1信号計測センサ300Aは、実際には、第1計測エリアARa内に位置する携帯端末100およびタグ装置200から発信されたBLEビーコン以外にも、隣接する第2計測エリアARb内に位置する携帯端末100およびタグ装置200から発信されたBLEビーコンを受信し得る。第2計測エリアARbに設置された第2信号計測センサ300Bについても同様である。
【0045】
境界エリア設定部421は、第1計測エリアARaと第2計測エリアARbとが隣接する場合には、図9Aに平面的に示すように、第1計測エリアARaと第2計測エリアARbの境界部分に、境界エリアとして第1ガードバンドARag、重複エリアARab、第2ガードバンドARbgを設定する。
【0046】
第1ガードバンドARagおよび第2ガードバンドARbgは、上述したブランクエリアARcと第1計測エリアARaまたは第2計測エリアARbとが隣接する場合に形成されるものとは多少異なり、概念的には、図9Bおよび図9Cに示すように、第1計測エリアARaと第2計測エリアARbを互いに隣接する他方側に向けて所定量重畳させ、各エリアの拡張方向の縁部に形成される。ここで、所定量は、携帯端末100およびタグ装置200から発信されるBLEビーコンの伝播距離や第1信号計測センサ300Aおよび第2信号計測センサ300Bの受信精度等に応じて予め定められた体積量(面積量)であればよい。ガードバンドは、通常、低精度の推定位置の算出を排除するために、各測位方式の精度が劣化するエリアに設定される。ガードバンドの形状は、図示の通り矩形でも良いし、円外郭、円弧外郭などの形状でも良い。
【0047】
重複エリアARabは、第1計測エリアARaと第2計測エリアARbとを互いに重畳させた重複部分から第1ガードバンドARagおよび第2ガードバンドARbgを除いたエリアである。第1計測エリアARaから境界エリアを除いたエリアを実質第1計測エリアARaaとし、第2計測エリアARbから境界エリアを除いたエリアを実質第2計測エリアARbbとする。境界エリア設定部421は、境界エリアを設定すると、境界エリアの位置を示す境界エリア情報413を作成し、記憶部410に格納する。境界エリアの位置は、計測エリア情報411における各エリアの位置と同様に、図6Bに示す3次元直交座標系における座標値、もしくは2次元直交座標系における座標値で表される。
【0048】
計測情報取得部422は、通信部450を介して、第1信号計測センサ300Aから第1計測情報を、第2信号計測センサ300Bから第2計測情報をそれぞれ取得する。計測情報取得部422は、本発明の計測情報取得手段の一例である。また、計測情報取得部422が第1計測情報および第2計測情報を取得するステップは、本発明の計測情報取得ステップの一例である。なお、計測情報取得部422は、AOA方式、RSSI方式などの各測位方式に対応して複数設けられてもよい。
【0049】
位置推定部423は、計測情報取得部422が取得した計測情報に基づいて、測位対象が電波信号を発信した時刻の推定位置を算出する。位置推定部423は、本発明の位置推定手段の一例である。また、位置推定部423が測位対象の推定位置を算出するステップは、本発明の位置推定ステップの一例である。例えば、位置推定部423は、計測情報取得部422が少なくとも2つの第1信号計測センサ300Aから同一の測位対象(携帯端末100またはタグ装置200)に関する第1計測情報を取得した場合、第1計測情報を送信した第1信号計測センサ300Aの設置位置を加味したうえで、各第1計測情報が示す到来角度に基づいてAOA方式(第1測位方式)を用いて測位対象の推定位置を算出する。第1信号計測センサ300Aの設置位置は、上述したセンサ設置情報412を読み出すことにより取得すればよい。
【0050】
なお、測位対象が電波を発信した時刻は厳密には把握することは困難であるが、測位空間において電波の速度は十分高速であるため、位置推定部423は、個々の信号計測センサ300が測位対象の電波を受信した時刻を、測位対象が電波を発信した時刻とみなして扱う。また、位置推定部423は、AOA方式、RSSI方式などの各測位方式に対応して複数設けられてもよい。
【0051】
AOA方式では、3次元測位の場合、測位対象から発信されたBLEビーコンを受信した2以上の第1信号計測センサ300Aにおいて計測した電波の到来角度から電波の到来方向をそれぞれ推定し、これらの到来方向の交点から測位対象が電波信号を発信した時刻の推定位置が算出される。2次元測位の場合、測位対象から発信されたBLEビーコンを受信した1以上の第1信号計測センサ300Aにおいて計測した電波の到来角度から電波の到来方向を推定し、この到来方向と基準面(例えば、水平面)と交点、または、これらの到来方向の交点から測位対象の推定位置が算出される。2次元測位の場合、携帯端末100、タグ装置200は例えば床面から一定の高さに位置するものとして、Z座標値を一定値で測位することを前提とする。以下、位置推定部423によりAOA方式を用いて算出された測位対象の推定位置を「第1推定位置」という。
【0052】
また、位置推定部423は、例えば、計測情報取得部422が少なくとも3つの第2信号計測センサ300Bから同一の測位対象(携帯端末100またはタグ装置200)かつ同一のBLEビーコンに関する第2計測情報を取得した場合、第2計測情報を送信した第2信号計測センサ300Bの設置位置を加味したうえで、第2計測情報が示す受信信号強度に基づいてRSSI方式(第2測位方式)を用いて測位対象の推定位置を算出する。第2信号計測センサ300Bの設置位置は、上述したセンサ設置情報412を読み出すことにより取得すればよい。
【0053】
RSSI方式では、測位対象から発信されたBLEビーコンを受信した3以上の第2信号計測センサ300Bが計測した受信信号強度から第2信号計測センサ300Bの各々から測位対象までの距離が算出される。さらに、三角測量の原理により、第2信号計測センサ300Bの各々を中心とし算出された距離を半径とする円または球の交点から測位対象の推定位置が算出される。以下、位置推定部423によりRSSI方式を用いて算出された測位対象の推定位置を「第2推定位置」という。
【0054】
位置特定部424は、記憶部410に記憶された計測エリア情報411、境界エリア情報、および優先度情報414を参照し、位置推定部423による推定位置が属するエリアを特定した上で、優先度情報414に基づいて測位対象の所在位置を特定する。位置特定部424は、本発明の位置特定手段の一例である。また、位置特定部424が測位対象の所在位置を特定するステップは、本発明の位置特定ステップの一例である。
【0055】
優先度情報414は、図10に示すように、第1推定位置が属するエリア、第2推定位置が属するエリア、およびこれらの組合せと、採用優先度とが対応付けられている。「―」は、推定位置が算出されていないことを示す。採用優先度の項目には、第1推定位置と第2推定位置のうち採用優先度が高い方の推定位置、または、推定位置を採用しないことを示す「不採用」が設定されている。図10に示す優先度情報414では、例えば、第1推定位置のみが算出され、第1推定位置が実質第1測定エリアに属する場合にはこの第1推定位置を採用し、第1推定位置が第1ガードバンドARagに属する場合にはこの第1推定位置を採用しないことが規定されている。また、第1推定位置および第2推定位置が算出され、第1推定位置が実質第1測定エリアに属し、第2推定位置が第2ガードバンドARbgに属する場合には、第1推定位置を優先して採用することが規定されている。
【0056】
位置特定部424は、位置推定部423により算出された測位対象の推定位置が1つである場合、すなわち、位置推定部423によりAOA方式またはRSSI方式のいずれかを用いて測位対象の第1推定位置と第2推定位置のうち一方のみが算出された場合には、位置特定部424は、まず、境界エリア情報413を参照して位置推定部423による推定位置が属するエリアを特定する。続いて、位置特定部424は、優先度情報414を参照して推定位置が属するエリアに対応する採用優先度に基づいて測位対象の所在位置を特定する。位置推定部423による推定位置がAOA方式を用いた第1推定位置のみである場合について説明すると、図10に示すように、位置特定部424は、その第1推定位置が実質第1測定エリアに属する場合には、その第1推定位置を採用して測位対象の所在位置として特定する一方、その第1推定位置が第1ガードバンドARagに属する場合には、その第1推定位置を採用せずに測位対象の所在位置を特定しない。
【0057】
一方、位置推定部423により算出された測位対象の推定位置が2つである場合、すなわち、位置推定部423が、AOA方式を用いて第1推定位置を算出するとともに、RSSI方式を用いて測位対象の第2推定位置を算出した場合には、まず、計測エリア情報411および境界エリア情報413を参照して第1推定位置が属するエリアと第2推定位置が属するエリアをそれぞれ特定する。続いて、位置特定部424は、優先度情報414を参照して第1推定位置が属するエリアと第2推定位置が属するエリアの組み合わせに対応する採用優先度に基づいて測位対象の所在位置を特定する。例えば、位置特定部424は、図10に示すように、第1推定位置が属するエリアが実質第1計測エリア、第2推定位置が属するエリアが第2ガードバンドARbgである場合には、第1推定位置を所在位置として特定する。また、位置特定部424は、第1推定位置が属するエリアと第2推定位置が属するエリアがともに第1ガードバンドARagである場合には、測位対象が携帯端末100であれば第1推定位置を、測位対象がタグ装置200であれば第2推定位置を、所在位置として特定する。なお、複数の位置推定部423が、AOA方式、RSSI方式などの各測位方式でそれぞれ推定位置を算出する場合、それぞれの処理にかかる時間が異なる場合がある。そのため、位置特定部424は、複数の測位方式による推定位置の算出に必要な時間をあらかじめ考慮し、所在位置の特定時に複数の位置推定部423からは特定の時間幅で各推定位置の入力を許容することとする。
【0058】
位置表示画像生成部425は、位置特定部424が特定した測位対象の所在位置をフロアマップに反映させた位置表示画像を生成し、表示部430を制御して表示させる。位置表示画像生成部425は、後述する表示部430とともに、本発明の表示手段の一例である。
【0059】
表示部430は、ディスプレイ405により構成され、制御部420の制御に従って、表示用の画像データにアナログ信号変換処理等を施して各種画像を表示する。表示部430は、例えば、位置表示画像生成部425が生成した位置表示画像を表示する。
【0060】
入力部440は、入力装置406により構成され、ユーザの操作、各種データの入力等を受け付ける。入力部440は、例えば、受け付けた操作に応じた操作信号を生成して制御部420に供給する。
【0061】
通信部450は、通信I/F407により構成され、制御部420の制御に従って、ネットワークNWを介して信号計測センサ300との間でデータの送受信を行う。通信部450は、例えば、計測開始および計測終了を指示する制御信号を信号計測センサ300に送信し、信号計測センサ300から計測情報を受信する。通信部450は、本発明の通信手段の一例である。
【0062】
次に、図11に示すフローチャートを参照して、位置特定装置400の制御部420が実行する所在位置特定処理について説明する。所在位置特定処理は、信号計測センサ300から取得した計測情報に基づいて対応する測位方式を用いて測位対象の推定位置を算出し、推定処理が属するエリアに応じて所在位置を特定し、特定した所在位置を反映した位置表示画像を表示する処理である。
【0063】
所在位置特定処理を開始すると、制御部420は、所定時間内に同一の測位対象に関する1以上の第1計測情報を取得したか否かを判別する(ステップS101)。位置推定部423は、所定時間内に発信元IDが同一の1以上の第1計測情報を計測情報取得部422が取得したか否かに応じて判定する。ここで、所定時間は、例えば、携帯端末100およびタグ装置200がBLEビーコンを発信する間隔とする。
【0064】
同一の測位対象に関する1以上の第1計測情報を取得したと判定した場合(ステップS101:YES)、制御部420は、測位対象の第1推定位置を算出する(ステップS102)。位置推定部423は、第1計測情報を送信した第1信号計測センサ300Aの設置位置を加味したうえで、2以上の第1計測情報のそれぞれが示す到来角度に基づいて、AOA方式により測位対象の第1推定位置を算出する。
【0065】
ステップS102の処理を実行した後、または、ステップS101において同一のBLEビーコンに関する1以上の第1計測情報を取得していないと判定した場合(ステップS101:NO)、制御部420は、同一のBLEビーコンに関する3以上の第2計測情報を取得したか否かを判別する(ステップS103)。位置推定部423は、信号識別情報が同一の3以上の第2計測情報を計測情報取得部422が取得したか否かに応じて判定する。ここで、信号識別情報が同一の3以上の第2計測情報は、単一の測位対象から発信されたBLEビーコンの受信信号強度をそれぞれ計測した3以上の第2信号計測センサ300Bから送信された情報である。
【0066】
同一の測位対象に関する3以上の第2計測情報を取得したと判定した場合(ステップS103:YES)、制御部420は、測位対象の第2推定位置を算出する(ステップS104)。位置推定部423は、第2計測情報を送信した第2信号計測センサ300Bの設置位置を加味したうえで、3以上の第2計測情報のそれぞれが示す受信信号強度に基づいて、RSSI方式により測位対象の第2推定位置を算出する。
【0067】
ステップS104の処理を実行した後、または、ステップS103において同一のBLEビーコンに関する3以上の第2計測情報を取得していないと判定した場合(ステップS103:NO)、制御部420は、第1推定位置と第2推定位置の少なくともいずれかが算出されたか否かを判定する(ステップS105)。位置特定部424は、位置推定部423による算出結果に応じて判定する。第1推定位置と第2推定位置がいずれも算出されていないと判定した場合(ステップS105:NO)、制御部420は、処理をステップS101に戻す。
【0068】
第1推定位置と第2推定位置の少なくとも一方が算出されたと判定した場合(ステップS105:YES)、制御部420は、記憶部410に記憶された計測エリア情報411、境界エリア情報413、および優先度情報414をROM402に読み出す(ステップS106)。
【0069】
続いて、制御部420は、計測エリア情報411および境界エリア情報413を参照して推定位置が属するエリアを特定する(ステップS107)。位置推定部423により第1推定位置と第2推定位置の一方のみが算出された場合、位置特定部424は、算出された推定位置が属するエリアを計測エリア情報411および境界エリア情報413を参照して特定する。また、位置推定部423により第1推定位置と第2推定位置の両方が算出された場合、位置特定部424は、計測エリア情報411および境界エリア情報413を参照して、第1推定位置が属するエリアおよび第2推定位置が属するエリアをそれぞれ特定する。
【0070】
次に、制御部420は、優先度情報414を参照して所在位置を特定する(ステップS108)。位置特定部424は、第1推定位置が属するエリアと第2推定位置が属するエリアの一方のみを特定した場合には、そのエリアに対応する採用優先度に基づいて、所在位置を特定する。また、第1推定位置が属するエリアと第2推定位置が属するエリアの両方を特定した場合には、これらの組合せに対応する採用優先度に基づいて、所在位置を特定する。
【0071】
制御部420は、特定した測位対象の所在位置を反映した位置表示画像を表示する(ステップS109)。位置表示画像生成部425は、位置特定部424が特定した測位対象の所在位置を倉庫内のフロアマップに反映した位置表示画像を生成し、表示部430を制御して表示する。位置表示画像生成部425は、例えば、図12に示すように、測位対象が携帯端末100であれば作業員Wの所在位置を、測位対象がタグ装置200であれば商品Pの所在位置をそれぞれフロアマップに反映させて位置表示画像を生成する。なお、図12に示す位置表示画像において、作業員Wを○、商品Pを□で表し、商品Pが積載されていたりラック等に配置されている場合には、上下関係が認識できるように下方の商品ほど大きく表している。また、図示していないが、○および□の近傍に作業員Wおよび商品Pの識別情報(作業員ID、商品ID)を表したり、色分けすることにより、各々を識別可能とするものとする。なお、表示形式はフロアマップ以外に一覧表でエリアと作業員ID、商品IDを表示したりしてもよい。
【0072】
ステップS109の処理を実行した後、制御部420は、処理をステップS101に戻し、ステップS101からステップS108までの一連の処理を繰り返し実行する。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態に係る位置特定装置400は、信号計測センサ300から取得した計測情報に応じて対応する測位方式を用いて測位対象である携帯端末100およびタグ装置200の推定位置を算出し、その推定位置が属するエリアに応じて予め定められた優先度に基づいて携帯端末100およびタグ装置200の所在位置を特定する。位置特定装置400は、特定した携帯端末100およびタグ装置200は、対応する作業員Wおよび商品Pの所在位置として表示する。これにより、位置特定装置400は、人や物の位置を適切な測位方式を用いて特定することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変形および応用が可能である。
【0075】
上記の実施の形態において、位置特定システム1は、第1測位方式としてAOA方式、第2測位方式としてRSSI方式を用いて測位対象の推定位置を算出した。測位方式はこれに限らず、他の測定方式(例えば、到来時刻(TOA:Time Of Arrival)方式、到来時間差(TDOA:Time Difference Of Arrival)方式)を用いてもよい。また、測定方式は、第1測位方式と第2測位方式の2つに限らず、2以上の測定方式を用いて推定位置を算出してもよい。
【0076】
上記の実施の形態において、位置特定装置400の動作を規定する制御プログラムは、ROM402に記憶されていた。しかしながら、本発明は、これに限定されず、上記の各種処理を実行させるための制御プログラムを、既存の汎用コンピュータや、フレームワーク、ワークステーション等に実装することにより、上記の実施の形態に係る位置特定装置400に相当する装置として機能させてもよい。
【0077】
上記の実施の形態において、境界エリア設定部421、計測情報取得部422、位置推定部423、位置特定部424、位置表示画像生成部425は、制御部420に収容しているが、それぞれ複数の位置特定装置400に分散配置してもよい。
【0078】
このようなプログラムの提供方法は任意であり、例えば、コンピュータが読取可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM)等に格納して配布してもよいし、インターネットをはじめとするネットワーク上のストレージにプログラムを格納しておき、これをダウンロードさせることにより提供してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…位置特定システム、100…携帯端末、200…タグ装置、300A…第1信号計測センサ、300B…第2信号計測センサ、400…位置特定装置、401…CPU、402…ROM、403…RAM、404…HDD、405…ディスプレイ、406…入力装置、407…通信I/F、410…記憶部、411…計測エリア情報、412…センサ設置情報、413…境界エリア情報、414…優先度情報、415…作業員・端末対応情報、416…商品・タグ対応情報、420…制御部、421…境界エリア設定部、422…計測情報取得部、423…位置推定部、424…位置特定部、425…位置表示画像生成部、430…表示部、440…入力部、450…通信部、ARa…第1計測エリア、ARaa…実質第1計測エリア、ARag…第1ガードバンド、ARb…第2計測エリア、ARbb…実質第2計測エリア、ARbg…第2ガードバンド、ARab…重複エリア、ARc…ブランクエリア、BL…バスライン、NW…ネットワーク、P…商品、W…作業員、WH…倉庫、WHF…床面
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12