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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/537 20060101AFI20231020BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20231020BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20231020BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20231020BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A61F13/537 210
A61F13/537 310
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/511 200
A61F13/512
A61F13/15 148
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019060524
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020156836
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千尋
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-104646(JP,A)
【文献】特開2013-066614(JP,A)
【文献】特開2018-000546(JP,A)
【文献】特表2011-522672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/537
A61F 13/53
A61F 13/511
A61F 13/512
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液保持性の吸収体とこの吸収体の肌対向面側に液透過性のトップシートとを有する使い捨ておむつであって、
前記トップシートは、その肌側面が疎水性の不織布により形成され、開孔径が0.1~2.0mmの開口が、2~40%の開口率をもって形成され、
前記トップシートと前記吸収体との間に前記トップシートを透過した体液を前記吸収体へ移行させるエアスルー不織布からなる中間シートを有し、
前記トップシートの肌側面、前記中間シートの肌側面及び前記吸収体を包む包装シートの肌側面にグリセリンを主体とする吸収剤が設けられており、
前記吸収剤の塗布量が、トップシートの肌側面、前記中間シートの肌側面及び前記吸収体を包む包装シートの肌側面の順で多くなる勾配を有し、
前記中間シートの肌側面の塗布量は0.02~3.00g/m である、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記吸収剤は、成分組成としてグリセリンを70質量%以上含み、添加剤として、乳化剤、リン酸エステル、パラフィン及び界面活性剤の群から選ばれた一種又は複数種の添加剤を含む請求項1記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を吸収する吸収性物品、特に使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品、特に使い捨ておむつにおいては、着用者の肌が荒れる、特にかぶれがしばしば問題となる。
この要因として、おむつの装着時の肌との摩擦、長時間装着に伴う体液、排泄物(尿・軟便)からの肌が受ける刺激を挙げることができる。
【0003】
特に肌が長時間、軟便と接触することによる刺激による要因は大きい。これを抑制するためには、おむつが軟便を素早く吸収体に吸収することである。おむつが軟便を素早く吸収体に吸収することができれば、肌の刺激が低減するばかりでなく、脚部や背部からの漏れを防止することに役立つ。
【0004】
トップシートを通して軟便の吸収を阻害する要因の第一は、便成分がトップシートを透過する際に、透過できなかった成分がトップシートを構成する繊維の表面部に残留し、トップシートが目詰まりすることである。第二に、排便速度がおむつの吸収速度を上回り、吸収できずトップシート上に残留することである。
トップシート上への軟便成分の残留は、軟便成分がトップシート上を滑り、便漏れの結果を招くことがある。
したがって、おむつが軟便を素早く吸収体に吸収するようにすることはきわめて重要である。
【0005】
特許文献1には、おむつの幅方向両側のいわゆるギャザーカフス間にスキンケア剤を設けることが開示されている。
また、スキンケア剤はトップシート上に配されており、その例示はジアミド誘導体を有効成分とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-102836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者は、スキンケア剤によって肌荒れを抑制することには限界があり、それよりおむつが軟便を素早く吸収体に吸収するように構成することが重要であることを知見した。
【0008】
したがって、本発明の主たる課題は、使い捨ておむつが体液(例えばおむつが軟便)を素早く吸収体に吸収するように構成することによって、着用者の肌荒れを防止又は抑制することができる使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した使い捨ておむつの主要な態様は次のとおりである。
<第1の態様>
液保持性の吸収体とこの吸収体の肌対向面側に液透過性のトップシートとを有する使い捨ておむつであって、
前記トップシートは、その肌側面が疎水性の不織布により形成され、開孔径が0.1~2.0mmの開口が、2~40%の開口率をもって形成され、
前記トップシートと前記吸収体との間に前記トップシートを透過した体液を前記吸収体へ移行させるエアスルー不織布からなる中間シートを有し、
前記トップシートの肌側面、前記中間シートの肌側面及び前記吸収体を包む包装シートの肌側面にグリセリンを主体とする吸収剤が設けられており、
前記吸収剤の塗布量が、トップシートの肌側面、前記中間シートの肌側面及び前記吸収体を包む包装シートの肌側面の順で多くなる勾配を有し、
前記中間シートの肌側面の塗布量は0.02~3.00g/m である、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0010】
後述の実施例で示すように、トップシートと吸収体との間にあって、トップシートを透過した体液を吸収体へ移行させる中間シートに、グリセリンを主体とする吸収剤が設けられていると、体液(例えば軟便)を素早く吸収体に吸収するようになることを知見した。
【0011】
<第2の態様>
前記中間シートが、前記トップシート側のセカンドシートと、前記吸収体を包む包装シートとを有し、前記セカンドシート及び前記包装シートに前記吸収剤が設けられている態様である。
セカンドシートのみならず、吸収体を包む包装シートにも吸収剤を設けることができる。
【0012】
【0013】
【0014】
<第3の態様>
前記吸収剤は、成分組成としてグリセリンを70質量%以上含み、添加剤として、乳化剤、リン酸エステル、パラフィン及び界面活性剤の群から選ばれた一種又は複数種の添加剤を含む態様である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使い捨ておむつが体液(例えばおむつが軟便)を素早く吸収体に吸収するように構成することによって、着用者の肌荒れを防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
図2】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
図3図1の前後方向中央断面図である。
図4図1の前後方向端部断面図である。
図5】実施の形態の例1の要部説明図である。
図6】実施の形態の例2の要部説明図である。
図7】実施の形態の例3の要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<使い捨ておむつの構成例>
本発明の使い捨ておむつとしてのテープタイプ使い捨ておむつの構成例を図1図5に示した。
使い捨ておむつの一例を示しており、図中の符号Xは連結テープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示しており、断面図における点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としてのホットメルト接着剤を示している。
ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0018】
このテープタイプ使い捨ておむつは、前後方向LDの中央を含む股間部と、前後方向LDの中央より前側に延びる腹側部分Fと、前後方向LDの中央より後側に延びる背側部分Bとを有している。
このテープタイプ使い捨ておむつは、股間部を含む範囲に内蔵された吸収体56と、吸収体56の表側を覆う液透過性のトップシート30と、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11と、液不透過性シートの裏側を覆い、製品外面を構成する外装不織布12とを有するものである。
【0019】
他方、腹側部分Fから背側部分Bにかけての幅方向両側には、吸収体56を有しないサイドフラップ部SFが形成されており、腹側部分Fの外面に着脱可能に連結される連結テープ13を有している。装着状態では、連結テープ13が腹側部分Fの外面に連結される。また、図示例のテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体56の前側及び後側にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のエンドフラップ部EFを有している。
【0020】
以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。
(吸収体)
吸収体56は、排泄液を吸収し、保持する部分であり、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。
【0021】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0022】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0023】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0024】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0025】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/mとすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/mを超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0026】
(包装シート)
高吸収性ポリマー粒子の抜け出しを防止するため、あるいは吸収体56の形状維持性を高めるために、吸収体56は包装シート58で包んでなる吸収要素50として内蔵させることができる。包装シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5~40g/m、特に10~30g/mのものが望ましい。
【0027】
この包装シート58は、図3に示すように、一枚で吸収体56の全体を包む構造とするほか、上下2枚等の複数枚のシートで吸収体56の全体を包むようにしてもよい包装シート58は省略することもできる。
【0028】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0029】
トップシート30は、前後方向では製品前端から後端まで延び、幅方向WDでは吸収体56よりも側方に延びているが、例えば後述する起き上がりギャザー60の起点が吸収体56の側縁よりも幅方向中央側に位置する場合等、必要に応じて、トップシート30の幅を吸収体56の全幅より短くする等、適宜の変形が可能である。
【0030】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
【0031】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド不織布又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/mが好ましく、25~60g/mがより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0032】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。また、中間シート40は、おむつの全長にわたり設けてもよいが、図示例のように排泄位置を含む中間部分にのみ設けてもよい。
【0033】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11は、特に限定されるものではないが、透湿性を有するもが好ましい。液不透過性シート11としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを好適に用いることができる。また、液不透過性シート11としては、不織布を基材として防水性を高めたものも用いることができる。
【0034】
液不透過性シート11は、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56と同じか又はより広範囲にわたり延びていることが望ましいが、他の遮水手段が存在する場合等、必要に応じて、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56の端部を覆わない構造とすることもできる。
【0035】
(外装不織布)
外装不織布12は液不透過性シート11の裏側全体を覆い、製品外面を布のような外観とするものである。外装不織布12としては特に限定されず、素材繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~50g/m、特に15~30g/mのものが望ましい。
【0036】
(起き上がりギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する排泄物を阻止し、いわゆる横漏れを防止するために、表面の幅方向WDの両側には、装着者の肌側に立ち上がる起き上がりギャザー60が設けられていると好ましい。もちろん、起き上がりギャザー60は省略することもできる。
【0037】
起き上がりギャザー60を採用する場合、その構造は特に限定されず、公知のあらゆる構造を採用できる。図示例の起き上がりギャザー60は、実質的に幅方向WDに連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向LDに沿って伸長状態で固定された細長状のギャザー弾性部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、またギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性部材は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0038】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向WDの接合始端を有し、この接合始端から幅方向外側の部分は各サイドフラップ部SFの内面、つまり図示例では液不透過性シート11の側部及びその幅方向外側に位置する外装不織布12の側部にホットメルト接着剤などにより接合されている。
【0039】
脚周りにおいては、起き上がりギャザー60の接合始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性部材63の収縮力により立ち上がり、身体表面に密着するようになる。
【0040】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SFには、糸ゴム等の細長状弾性部材からなるサイド弾性部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。脚周り弾性部材64は、図示例のように、ギャザーシート62の接合部分のうち接合始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に設けるほか、サイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装不織布12との間に設けることもできる。脚周り弾性部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0041】
(連結テープ)
背側部分Bには、腹側部分Fの外面に対して着脱可能に連結される連結手段としての連結テープ13がそれぞれ設けられている。おむつの装着に際しては、連結テープ13を腰の両側から腹側部分Fの外面に回して、連結テープ13の連結部13Aを腹側部分F外面の適所に連結する。
【0042】
連結テープ13の構造は特に限定されないが、テープ取付部13Cから突出するテープ本体部と、幅方向中間部に設けられた連結部13Aとを有し、この連結部13Aより先端側が摘み部となっている。連結テープ13の形状も特に限定されるものではないが、テープ取付部13Cは前後方向寸法が最も長くかつ一定の部分を有し、テープ本体部は先端に向かうにつれて細くなるテーパー形状とすることができる。
【0043】
連結部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)を設ける他、粘着剤層を設けてもよい。フック材は、その連結面に多数の係合突起を有するものであり、係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。
【0044】
また、テープ取付部13Cからテープ本体部までを形成するシート基材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができるが、繊度1.0~3.5dtex、目付け20~100g/m、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布が好ましい。
【0045】
(ターゲット部)
腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所には、ターゲット部を設けることが好ましい。ターゲット部は、図示例のように、連結を容易にするためのターゲットシート20を腹側部分Fの外面に貼り付けることにより設けることができる。ターゲットシート20は、連結部13Aがフック材の場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。また、腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所が不織布からなる場合、例えば図示例のように外装不織布12を有する場合には、ターゲットシート20を省略し、フック材を外装不織布12の繊維に絡ませて連結することもできる。この場合、目印としてのターゲットシート20を外装不織布12と液不透過性シート11との間に設ける他、外装不織布12や液不透過性シート11の外面に目印を印刷してもよい。
【0046】
<吸収剤>
次に本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態は、トップシートを透過した体液を吸収体へ移行させる中間シートに、グリセリンを主体とする吸収剤が設けられているものである。
【0047】
後述の実施例で示すように、トップシートと吸収体との間にあって、トップシートを透過した体液を吸収体へ移行させる中間シートに、グリセリンを主体とする吸収剤が設けられていると、体液(例えば軟便)を素早く吸収体に吸収するようになる。
【0048】
代表例は、要部のみについて模式的にあらわした図5に示すように、トップシート30を透過した体液を吸収体56へ移行させる中間シート40に、グリセリンを主体とする吸収剤Qが設けられているものである。
【0049】
【0050】
また、セカンドシート40に吸収剤Qを設けるほか、トップシート30に吸収剤Qを設けることができる。
この場合、トップシート30に肌側面に吸収剤Qを設けるのではなく、図6に示すように、トップシート30の非肌側面(図6の下面)に吸収剤Qを設けるのが望ましい。
トップシート30の肌側面(図6の上面)は疎水性であることが体液の液成分の拡散性を高めるのに好ましいところ、グリセリンを主体とする親水性の吸収剤を設けるとすればトップシート30の疎水性を阻害することになるから、この形態はあまり好ましいことではない。
他方で、トップシート30の非肌側面(図6の下面)に吸収剤Qを設けると、体液がトップシート50を透過しようとする段階で、トップシート50の非肌側面に設けられた吸収剤Qが中間シート40側に受け渡すようになることで、吸収速度の向上効果が高まるものと考えられる。
【0051】
トップシート30が多数の開孔を有する不織布からなることで、体液が吸収されやすくなり、その結果、吸収剤Qによる吸収速度の向上効果が高まる。
不織布の開孔としては、円や楕円などの適宜の形状とすることができる。開孔径(楕円の場合は相当直径)は0.1~2.0mmが望ましい。また、開孔の配置としては、例えば千鳥状又は格子状である。開口率としては、2~40%が望ましい。開孔径及び開口率が小さいと体液の透過性が十分でない傾向にある。開孔径及び開口率が過度に大きいと、一旦吸収要素が吸収した体液がトップシート表面に戻ってしまう逆戻りを生じる可能性がある。
【0052】
包装シート58の肌側面に吸収剤Qを設けることができる。
【0053】
この態様の下で、図7に示すように、さらにトップシート30に、好ましくは非肌側面に吸収剤Qを設けることができる。
吸収剤Qを配置するシートが複数層である場合において、吸収剤Qの塗布量に、例えば次のように勾配を設けることが望ましい。この態様が好ましい理由は、塗布量の勾配が吸収剤Qによる体液の移行速度に関係するからである。
トップシート≪中間シート<包装シート
塗布量としては、中間シート40を例にとれば、0.02g/m以上とすることが好ましく、0.05g/m以上とすることが更に好ましく、そして、3.00g/m以下とすることが好ましく、1.50g/m以下とすることが更に好ましく、具体的には、0.05g/m以上1.20g/m以下とすることが好ましい。
【0054】
本発明に係る吸収剤としては、成分組成としてグリセリンを70質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上含み、添加剤として、乳化剤、リン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、パラフィン及び界面活性剤の群から選ばれた一種又は複数種の添加剤を含む態様とすることができる。
界面活性剤としては、エーテル型非イオン系界面活性剤、EO/PO型を含む非イオン系界面活性剤が好ましい。
【0055】
吸収剤の配置にあたっては、トップシートと中間シートとがホットメルト接着剤によるストライプ状又はスパイラル状などによる接着がなされている場合には、使い捨ておむつの幅方向に間隔をおいて前後方向に延びるストライプ状の塗布が好ましい。トップシートと中間シートとが熱エンボスによって接合されている場合には、ストライプ状又はスパイラル状のほか、対象領域全面へのスプレー塗布でもよい。
他方、トップシート30の非肌面に吸収剤を設ける場合、例えば中間シート40への吸収剤への適用のみとし、使い捨ておむつの包装時又は保管時に受ける圧縮力、あるいは着用者の使用時の圧縮力を利用して、吸収剤の一部をトップシート30の非肌面に転写することによって適用するようにしてもよい。
【0056】
次に実施例を示す。
(実験例1)
図1図4に示す構造であって、図5図6及び図7に示すように吸収剤Qの配置形態を替えた3種類の使い捨ておむつ構成の下で、擬似軟便を、開孔を有するトップシートの上方から流下させて吸収特性を調査した。なお、吸収剤を配置していない使い捨ておむつも用意し、比較例とした。
合計4種類の使い捨ておむつについては、それぞれ5サンプルを用意し、吸収試験を行った。
【0057】
具体的な吸収試験は、使い捨ておむつを展開状態にしその背側に直径7cmの筒を置き、20mlの擬似軟便を流入させると同時に吸収速度の測定開始時とした。擬似軟便は筒から平板の開口を通って、トップシートを透過し始める。吸収速度の測定開始時から30秒後に筒を取り除き、トップシート表面の水分が無くなったことを確認した時点を、吸収速度の測定終了とする。
擬似軟便を流入して3分後に使い捨ておむつの背側にろ紙10cm×10cmを10枚重ね、その上から1kgのおもり10cm×10cmを置き、60秒後にろ紙側に移行する液の吸収に伴う重量増分を逆戻り量とする。
その後に、使い捨ておむつを解体し、背側の吸収体が存在する幅8cm×前後方向15cmの測定領域を切り取り、吸収体、包装シート、中間シート(セカンドシート)、トップシートのそれぞれについて、液の吸収に伴う重量増分を算出した。この場合、測定領域の重量は既知であるから、重量増分として算出できる。
擬似軟便としては、公知のヨーグルト系擬似軟便を使用した。ここでは、市販のヨーグルト2、イオン交換水3の質量割合で、粘度:300mPa・sに粘度調整したものを使用した。
【0058】
4種類の使い捨ておむつの吸収試験の結果を表1に示す。
【表1】
この結果から、中間シートに本発明に係る吸収剤を適用することにより、使い捨ておむつが軟便を素早く吸収体に吸収し、表面に軟便を残留させにくくすることに有効であることが判明した。
【0059】
また、吸収剤の種類を換えた吸収試験の結果を表2に示す。表には例1の結果を再掲した。グリセリンとは異なる吸収剤Qの比較として、比較例2は図5の形態において、エーテル型非イオン系界面活性剤を適用したものである。比較例3は図5の形態において、EO/PO型を含む非イオン系界面活性剤を適用したものである。
【表2】
この結果から、本発明に係る吸収剤は、この技術分野で親水性の界面活性剤として使用されるものと比較して、吸収速度が高く、表面に軟便を残留させにくいものであることが判明した。
【0060】
(明細書中の用語の説明)
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・符号「LD」は使い捨ておむつの前後方向を、WDは幅方向を示す。前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0061】
・「展開した状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0062】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0063】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、上記例のようなテープタイプ使い捨ておむつの他、パンツタイプ、パッドタイプ等の各種使い捨ておむつのほか、生理用ナプキン、スイミングや水遊び用の使い捨て着用物品等、使い捨て着用物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0065】
10…脚周り縁、11…液不透過性シート、12…外装不織布、13…連結テープ、20…ターゲットシート、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、62…ギャザーシート、B…背側部分、F…腹側部分、WD…幅方向、LD…前後方向、SF…サイドフラップ部、Q…吸収剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7