(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】塗装物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231020BHJP
A47B 13/08 20060101ALI20231020BHJP
A47B 96/18 20060101ALI20231020BHJP
A47K 1/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B32B27/00 E
A47B13/08 A
A47B96/18 E
A47B96/18 H
A47K1/00 L
(21)【出願番号】P 2019062600
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】313014077
【氏名又は名称】トクラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】弁理士法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】紺野 良文
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-263561(JP,A)
【文献】特開2000-140750(JP,A)
【文献】特開平07-266527(JP,A)
【文献】特開2007-261249(JP,A)
【文献】特開2001-025703(JP,A)
【文献】特開2005-081176(JP,A)
【文献】特開2014-223792(JP,A)
【文献】特開2015-061908(JP,A)
【文献】特開平02-119979(JP,A)
【文献】特開平03-157167(JP,A)
【文献】特開平06-015229(JP,A)
【文献】特開2008-126095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
A47B 13/08
A47B 96/18
A47K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人造大理石、樹脂成形板又は木製板を基材とするとともに、キッチン、浴室、洗面台、家具の天板又は扉面材に利用される被塗装物の表面に塗装された斑点模様と、
前記被塗装物の表面及び斑点模様の表面に塗装され
た着色層とを備え、
前記斑点模様を構成する凸部の大きさが1mm
2
~50mm
2
であるとともに、厚み若しくは高さが5μm~70μmであり、
前記着色層の前記斑点模様との色差ΔEが、白色隠蔽紙に厚み40μmとなるように前記斑点模様の色と着色層の色の塗料を塗装して色差測定器で計測したときに25以下であるとともに、着色層の全光線透過率が、厚み2.7mmのガラス板に前記着色層の色の塗料を塗装して濁度計で測定したときに5%~70%であり、
前記着色層を透かして前記被塗装物の表面及び斑点模様が目視可能に設けられていることを特徴とする塗装物。
【請求項2】
人造大理石、樹脂成形板又は木製板を基材とするとともに、キッチン、浴室、洗面台、家具の天板又は扉面材に利用される被塗装物の表面に塗装された斑点模様と、
前記被塗装物の表面及び斑点模様の表面に塗装された着色層とを備えた塗装物であって、
前記斑点模様を構成する凸部の大きさが1mm
2
~50mm
2
であるとともに、厚み若しくは高さが5μm~70μmであり、
前記着色層は、当該着色層を透かして見た塗装物との色差ΔEが
、白色隠蔽紙に40μm厚みとなるように着色層の色の塗料を塗装して乾燥させた着色層のサンプルと、前記塗装物表面をそれぞれ測定面として前記請求項1記載の色差測定器を用いて計測したときに20以下であることを特徴とする塗装物。
【請求項3】
前記被塗装物の表面は塗装を施すことによって構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の塗装物。
【請求項4】
前記着色層の表面に透明層を更に備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装物に係り、例えば、キッチン、浴室、洗面化粧台、家具等の天板、壁面材、扉面材等として利用することに適した斑点模様付きの塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンや、洗面化粧台に用いられる天板は、その基材の表面或いは成形品の表面をそのまま表出させて利用する他、表面に塗装を施して、色、模様等の装飾が施されたものが利用されている。
このような塗装により模様を表出させた塗装物としては、例えば、特許文献1、2に記載されている。
特許文献1記載の塗装物は、基材の表面に塗装された着色ベース塗料層と、着色塗料を斑点状に塗装した多彩模様層とを備えて構成されている。ここで、着色ベース塗料層は、斑点模様層と共色、具体的には、着色ベース塗料層の色調が斑点模様層に比べて淡色なものとされている。
また、特許文献2には、金属やガラス等の表面に、透明な塗料を塗布した上で高粘度の塗料をスプレーガンで強制的に吹き付けて、細かな線と点が混ざった不規則な模様付けを行った塗装物が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-140750号公報
【文献】特開2002-45787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の塗装物は、着色ベース塗料層と斑点模様との色調のバランスを統一して意匠性を向上させることが企図されている。
しかしながら、この塗装物にあっては、着色ベース塗料層にライトグレーやライトブラウン等の色を用いる一方、着色多彩模様層にホワイト、アイボリー、グレー、ダークグレー等の色を用いて上述の淡色となる関係を満たす共色としているだけのものである。そのため、斑点模様と、着色ベース塗料層との色調にコントラストの違いがないものとなり、斑点模様の見え方若しくは存在が薄いものになり易く、全体としての意匠性は単調なものとならざるを得ない。しかも、斑点模様を多彩なものとしても、そのことが塗装物に奥行感や深み感等という意匠性に寄与することにはなっていない。
【0005】
また、特許文献2においては、模様のある部分と模様のない部分との材質的な違いが表出するが、奥行感や深み感等を有する意匠性を備えた塗装物を提供するものとはなっていない。
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、奥行感や深み感を表出させることのできる塗装物を提供することにある。
本発明の他の目的は、積層される色同士の色調が合う状態においても陰影のコントラストを生じさせて模様の存在を明確化することのできる塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものである。具体的には、人造大理石、樹脂成形板又は木製板を基材とするとともに、キッチン、浴室、洗面台、家具の天板又は扉面材に利用される被塗装物の表面に塗装された斑点模様と、
前記被塗装物の表面及び斑点模様の表面に塗装された着色層とを備え、
前記斑点模様を構成する凸部の大きさが1mm
2
~50mm
2
であるとともに、厚み若しくは高さが5μm~70μmであり、
前記着色層の前記斑点模様との色差ΔEが、白色隠蔽紙に厚み40μmとなるように前記斑点模様の色と着色層の色の塗料を塗装して色差測定器で計測したときに25以下であるとともに、着色層の全光線透過率が、厚み2.7mmのガラス板に前記着色層の色の塗料を塗装して濁度計で測定したときに5%~70%であり、
前記着色層を透かして前記被塗装物の表面及び斑点模様が目視可能に設けられる、という構成を採っている。
ΔEが25以下であることにより着色層が斑点模様の色調に合うようになる。ΔEが25を超えると色差が大きすぎて落ち着いた感じにならない。
また、目視可能とは全光線透過率が90%程度となるガラスに着色層を塗装したときの全光線透過率が5~70%であることをいう。
【0008】
また、本発明は、人造大理石、樹脂成形板又は木製板を基材とするとともに、キッチン、浴室、洗面台、家具の天板又は扉面材に利用される被塗装物の表面に塗装された斑点模様と、
前記被塗装物の表面及び斑点模様の表面に塗装された着色層とを備えた塗装物であって、
前記斑点模様を構成する凸部の大きさが1mm
2
~50mm
2
であるとともに、厚み若しくは高さが5μm~70μmであり、
前記着色層は、当該着色層を透かして見た塗装物との色差ΔEが、白色隠蔽紙に40μm厚みとなるように着色層の色の塗料を塗装して乾燥させた着色層のサンプルと、前記塗装物表面をそれぞれ測定面として前記請求項1記載の色差測定器を用いて計測したときに20以下である、という構成を採っている。
ΔEが20以下であることにより着色層が「塗装物の色調と合う」ようになる。
【0009】
なお、前記被塗装物の表面は塗装を施すことによって構成することが好ましい。塗装物の表面は艶消し調に設けてもよい。また、金属粒子が添加されたメタリック塗料を用いて表面に塗装を施すこともできる。
【0010】
また、前記着色層の表面に透明層を更に備える、という構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、斑点模様に着色層の色調を合わせ、当該着色層を透かして被塗装物の表面、斑点模様を目視できるようにしたことにより、全体として奥行感や深み感を表出させることができる。
また、着色層と、着色層を透かして見た塗装物の色調が合うように構成した場合には、被塗装物の表面と斑点模様との色調の違いによるコントラストの差を緩和し、全体として色調に統一感が付与された塗装物を得ることができる。
更に、被塗装物の表面が塗装によるものであれば、色調を種々調整することができ、意匠の多様化を期待することができる。また、例えば、アルミ等の金属粒子が添加されたメタリック塗料を用いて表面を塗装した場合には、きらきら輝く輝度が付与された高質感を備えた塗装物とすることができる。
更に、透明層を設けた構成によれば、着色層の保護が図れるとともに、外観に濡れ色が付与された意匠性を表出させることができる。
なお、塗装物が天板や壁面材等に適用される構成では、当該天板等が適用されるキッチン等の全体的な質感向上に有効に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)は実施例に係る塗装物の概略断面図、(B)は、その一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示されるように、模様付きの塗装物10は、板状の被塗装物11と、当該被塗装物11の表面に塗装された凸状の斑点模様12と、これら被塗装物11及び斑点模様12の表面を覆うように塗装された透明な着色層14と、当該着色層14の表面に塗装された透明層15とにより構成されている。なお、
図1に示す塗装物の各層厚みは、明細書の理解を容易にする目的で示したものであり、実際の厚みは、以下に説明する数値の範囲内で決定されるものである。
【0015】
被塗装物11は、特に限定されるものではないが、板状の基材11Aと、当該基材11Aに塗装されて被塗装物11の表面を構成するベース層11Bとにより構成されている。本実施形態では、基材11Aとして人造大理石が用いられているが、その他の樹脂成形板、金属板、木製板等を採用することができる。
基材11Aを構成する人造大理石は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を染料や顔料によって着色するとともに、プラスチック材等を粉砕して様々な色、形状、大きさとされた粒体の他、人造大理石、天然石等を粉砕して得られる粒体、各種添加剤を配合することにより形成されている。熱硬化性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
なお、本実施形態における基材11Aの好ましい板厚としては、1mm~50mmのもの、さらに好ましくは3mm~20mmが例示できる。
【0016】
前記ベース層11Bは、本実施形態では、メタリック塗料をスプレーガンで塗装することによって設けられている。このベース層11Bは、アルミフレーク(アルミ粒子)を透明樹脂に混合した公知のメタリック塗料を用いて形成されている。
なお、メタリック塗料以外に、各種の着色顔料で着色された塗料を用いてベース層を設けることもできる。この塗料としては、樹脂成分及び着色顔料をシンナー、水等の溶剤に混合、分散させたものが好適に用いることができ、樹脂成分として、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用できる。
本実施形態では、ベース層11Bはスプレーガンで塗装されるが、その他の手段、例えば、ローラー等によるものであってもよい。
なお、ベース層11Bは必ずしも設けることを要しない。この場合には、基材11Aを構成する人造大理石の表面がベース層11Bとして機能し得る面であれば足りる。
【0017】
前記斑点模様12は、樹脂成分及び着色顔料をシンナー、水等の溶剤に混合、分散させた塗料で塗装することにより設けられている。この斑点模様12は艶有りの凸部を点在させる状態で、ベース層11Bの面内全域に設けられている。凸部間はベース層11Bが表出した凹部を形成する。斑点模様12を構成する凸部の大きさは、1mm2~50mm2、厚み若しくは高さは、5μm~70μmとすることが好ましい。凸部の大きさが1mm2未満では模様が目立たなくなって斑点模様を設ける効果が低下するためであり、50mm2を超えると凸部と凹部との面積バランスが悪くなって意匠性を低下させるためである。また、高さが5μm未満では、凸部と凹部とによる陰影のコントラストが目立たなくなり、70μmを超えると、塗装物10の表面が極端にざらついてしまい好ましくない。さらに好ましくは、凸部の大きさは、2mm2~30mm2、高さは、10μm~50μmとするとよい。
斑点模様12は、図示例では、凸部が一つずつ独立したものが示されているが、実際には、突部が重なり合う場合や面方向につながる場合もある。
なお、斑点模様12は、スプレーガンを用いて塗布することが好ましいものとされるが、これに限定されるものではなく、ローラー等を用いた他の塗装手段を用いることもできる。例えば、凸部に対応する多数の穴を備えたマスキングシートをベース層11B上に配置し、塗料を含浸したローラーをシート上で転動させた後、当該シートを除去する方法等も採用できる。この場合には、斑点模様12の位置が共通化ないしは規格化された塗装物を提供でき、スプレー塗布に要求される熟練度を必要とすることはない。
斑点模様12の塗料の粘度は、アネスト岩田株式会社製の粘度カップNK-2にて滴下時間が9秒~12秒になるように調整する。これにより、スプレーガンを用いて斑点模様12を塗布した際に、上記大きさ、高さを有する凸部を無理なく形成することができる。なお、凸部を大きく形成するためには12秒~18秒に調整することが好ましい。
【0018】
前記着色層14は、斑点模様12の色調に合わせた塗料で塗装することによって構成されている。着色層14に用いる塗料としては、着色顔料を用いて着色された透明なアクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用できる。また、着色顔料として、樹脂成分を着色できるものであればよく、各種の着色用顔料を用いることができる。
なお、着色層14は、当該着色層の色調と、着色層を透かして見た塗装物の色調と合うように構成する場合もある。
【0019】
前記透明層15は、必要がある場合に設けることができるものであり、アクリル、ウレタン、シリコン樹脂等を用いたクリア塗料を塗装することによって形成され、これにより、着色層14の表面保護を行うとともに、濡れ色を付与することができるようになっている。本実施形態では、透明層15を形成するクリア塗料として、ガラスビーズ15Aが添加されたものが採用されており、当該ガラスビーズ15Aにより、硬度が更に高められるようになっている。ガラスビーズは、メジアン径が10~50μm程度のものを採用することが好ましい。
【0020】
次に、実施例について説明する。
[実施例1]
板厚10mmの人造大理石を基材として用い、この基材表面に、メタリック塗料(商品名:カシュー株式会社製ストロンTXL No30 1分艶有(以下、「カシュー塗料」という)Sロ「薄赤銅色」を塗装してベース層を形成した。
このベース層の塗装は、岩田粘度カップNK-2を用いてカップ粘度10秒程度にシンナーで粘度調整してスプレーガンで行った。
ベース層の乾燥硬化後、その表面に、カシュー塗料 黒(改)42重量部、白(改)6重量部、赤(改)30重量部、黄(改)80重量部の割合で調合して得られた「こげ茶色」の塗料を粘度10秒程度にシンナーで調整してスプレーガンで塗装を行った。
スプレーガンのエアー量を調整して大きさ2mm2~30mm2、厚み(高さ)5μm~50μmの斑点模様を形成した。
次いで、ベース層及び斑点模様の表面を覆うように、カシュー塗料 黒(改)100重量部、白(改)50重量部の割合で調合して得られた「ダークグレー色」の塗料を、粘度10秒程度にシンナーで調整してスプレーガンで塗装を行い、着色層を形成した。
上記斑点模様の「こげ茶色」と、着色層の「ダークグレー色」の色差ΔEは8.24である。この色差の測定は、白の隠蔽紙に厚み40μm(乾燥後)となるように、「こげ茶色」と「ダークグレー色」の塗料を塗装し、これを日本電色工業株式会社製の測定器:ZE-6000で計測することにより行われたものである。
また、着色層は、全光線透過率(Tt)が異なるように厚みを調整した。この全光線透過率の測定は、厚み2.7mmのガラス板(全光線透過率89.8%)に上記着色層の塗料で塗装してサンプルを複数形成し、同サンプルを日本電色工業株式会社製の濁度計NDH-2000を用いて測定することによって行われたものである。
得られた塗装物を目視観察したところ、全光線透過率が5%~70%の範囲にある着色層において、奥行感、深み感のある外観を有する塗装物とすることができた。5%未満では模様間の凹部が見えなくなる一方、70パーセントを超えると凹部の色がそのまま見える状態となり、全体の色調の変化及び深み感を十分に得ることができなかった。
なお、実施例1では透明層を設けていないが、当該透明層を設けた場合には、着色層の保護を行うことができるとともに、外観に濡れ色を付与して意匠性を高めることが容易に推定できる。
【0021】
[実施例2]
実施例1と同様の人造大理石を基材として用い、この基材表面に、実施例1と同様のベース層を形成した。
ベース層の乾燥硬化後、その表面に、カシュー塗料 黒(改)50重量部、白(改)50重量部の割合で調合して得られた「灰色」の塗料を粘度10秒程度にシンナーで調整し、スプレーガンのエアー量を調整して実施例1と同様の大きさ、厚み(高さ)を有する斑点模様を形成した。
次いで、ベース層及び斑点模様の表面を覆うように、実施例1に示す「ダークグレー色」の塗料により着色層を形成した。
実施例1と同様の測定器による測定結果において、上記「灰色」と、「ダークグレー色」の色差ΔEは24.9であった。
着色層の全光線透過率についても実施例1と同様に調整した。
この実施例2においても、全光線透過率が5%~70%の範囲にある着色層において、実施例1と同様の奥行感、深み感を得ることができた。
なお、ベース層と斑点模様の色差ΔEが25を超える関係となる色で塗装した場合には、例えば、「ダークグレー色」の斑点模様と「茶色」の着色層、「茶色」の斑点模様と「灰色」の着色層等では色差が大きすぎて落ち着いた感じにならない点が認められた。
【0022】
[実施例3]
実施例1と同様の人造大理石に、カシュー塗料黒(改)2重量部、白(改)124重量部、赤(改)30重量部、黄(改)80重量部の割合で調合して得られた「薄茶色」の塗料をスプレーガンで塗装を行い、これに上記「灰色」の斑点模様層と、上記「こげ茶色」の着色層を形成して塗装物Aを得た。
得られた塗装物Aを目視で官能評価したところ、奥行感、深み感を有する意匠性が認められた。
上記塗装物Aと、着色層との色差測定を次のようにして行った。
「こげ茶色」の塗料を白の隠蔽紙に40μm厚み(乾燥後)となるように塗装して乾燥させた着色層のサンプルBを設けた。このサンプルBと、塗装物Aの表面をそれぞれ測定面として実施例1と同様の測定器を用いて色差ΔEを計測した
得られた色差ΔEは18.8であった。
なお、「茶色」の斑点模様に、「ダークグレー色」の着色層を設けた塗装物を形成して目視、官能評価したところ、奥行感、深み感を感ずるには至らなかった。これを上記測定器で同様に測定したところ、色差ΔEは21.1であった。
この結果から明らかなように、着色層と、当該着色層を透かして見た塗装物との色調が合う関係において、良好な意匠性を備えた塗装物を提供することができる。
【0023】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
また、上記に開示した塗装物の塗装条件すなわち材料、色、大きさ、厚み、高さなどは、任意に、或いは、それらの相互関係において変化し得るものであり、これらに関する上記の限定は、本発明の目的を達成することができる変更することを妨げない。
【符号の説明】
【0024】
10…塗装物、11…被塗装物、12…斑点模様、14…着色層、15…透明層