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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】自律走行作業装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20231020BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A47L9/28 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019062998
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020161081
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】足立 尚庸
(72)【発明者】
【氏名】小島 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】長田 翔一
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112917(JP,A)
【文献】特開2014-14456(JP,A)
【文献】特開2017-121376(JP,A)
【文献】特開平1-91824(JP,A)
【文献】特開2010-95891(JP,A)
【文献】特開2017-182175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/12
A47L 9/22 - 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置であって、
装置本体と、
前記装置本体を作業エリア内で走行させる走行部と、
前記装置本体の前記作業エリア内の走行経路上で作業を行う作業部と、
前記走行部および前記作業部の手動操作により該自律走行作業装置の学習走行作業が行われる間に、前記走行部の走行データと前記作業部の作業データとを記憶して、前記走行データと前記作業データとを含む作業プランを作成するプラン作成部と、
前記プラン作成部により作成された前記作業プランを、該自律走行作業装置の自動走行作業のために記憶する記憶部と、
前記記憶部から再現プランとして読み出した前記作業プランに基づいて、前記走行部および前記作業部を制御して前記自動走行作業を行う再現制御部と、
前記再現プランの前記走行データおよび/または前記作業データを一括して変更するプラン変更部と、を備え、
前記再現制御部は、前記プラン変更部によって前記再現プランが変更された場合に、変更後の前記再現プランに基づいて前記自動走行作業を行い、
前記作業部は、複数種類の清掃作業のうちの一の前記清掃作業を選択して前記作業として行うように構成され、また、前記複数種類の清掃作業のそれぞれに対応する複数種類の清掃部材を切り替えて使用するように構成され、
一の前記清掃作業を伴う前記学習走行作業が行われるとき、前記プラン作成部は、一の前記清掃作業の清掃データを前記作業データとして記憶して前記作業プランを作成し、
一の前記清掃部材を使用する一の前記清掃作業を伴う前記学習走行作業により作成された前記再現プランに基づいて前記再現制御部が前記自動走行作業を行うとき、前記プラン変更部は、前記作業部が一の前記清掃作業と異なる他の前記清掃作業を行うと判定すると共に、前記作業部が一の前記清掃部材と異なる他の前記清掃部材を使用すると判別した場合、他の前記清掃部材を使用する他の前記清掃作業に対応するように前記再現プランを、一の前記清掃部材と他の前記清掃部材との所定の組み合わせに応じて所定の内容に一括して変更する、ことを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項2】
前記プラン変更部は、変更した前記再現プランを新たな前記作業プランとして前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項3】
前記作業部は、前記複数種類の清掃作業として、床面洗浄作業と、ワックス剥離作業と、床面艶出し作業と、吸引清掃作業とから、一の前記清掃作業を選択して行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自律走行作業装置。
【請求項4】
前記プラン変更部は、前記再現プランに基づく前記自動走行作業に、走行中の作業液の供給が含まれ、前記再現プランを一括して変更する際に前記走行データの走行速度が変更されるとき、前記作業液の供給水量の総量を一定にする総量一定供給オプションが設定された場合には、元の前記再現プランに基づく前記自動走行作業で消費される前記作業液の供給水量の総量を維持するように、前記作業データの前記作業液の供給水量を設定して前記再現プランを一括して変更することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項5】
前記プラン変更部は、前記再現プランに基づく前記自動走行作業に、走行中の作業液の供給が含まれ、前記再現プランを一括して変更する際に前記走行データの走行速度が変更されるとき、前記作業液の供給水量を前記走行速度に追従させる速度追従供給オプションが設定された場合には、前記走行速度の変更の割合に応じて前記作業液の供給水量を増減させるように、前記作業データの前記作業液の供給水量を設定して前記再現プランを一括して変更することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項6】
前記再現プランの変更を制限する制限フラグが前記再現プランに設定されている場合、前記プラン変更部は、前記再現プランの変更を制限することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項7】
前記プラン変更部は、前記制限フラグとして、前記走行データの走行速度の変更を制限する旋回フラグが、前記再現プランの旋回走行区間のステップに設定されている場合には、
前記旋回走行区間のステップについて前記走行データの走行速度を速くする変更を指示された場合でも、前記再現プランの作成時の走行速度を維持することを特徴とする請求項6に記載の自律走行作業装置。
【請求項8】
前記プラン作成部は、前記作業プランの前記走行データにおいて、前記走行部の走行軌跡の曲率半径が所定の曲率半径閾値以下の区間、または前記走行部の操舵角が所定の操舵角閾値以上の区間を前記旋回走行区間と判定して、前記旋回フラグを設定することを特徴とする請求項7に記載の自律走行作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行作業装置は、手動操作により走行および作業(清掃)を行いながら自動走行作業(自動走行清掃)のために走行データおよび作業データ(清掃データ)を記憶する学習走行作業を行う学習走行モードと、記憶した走行データおよび作業データに従って走行および作業を制御する自動走行作業を行う自動走行モードとを切り替えて動作するように構成される。自律走行作業装置は、例えば、産業用(業務用)の清掃ロボット(自律走行清掃装置)として構成されて、ショッピングモール等の商業施設の床面の清掃作業を行うために用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1の床清掃ロボット(自律走行作業装置)は、床面を清掃しながら走行して各清掃通路の走行パターン(走行データ)を記憶し、記憶した走行パターンに従って床面の清掃を再現可能とする。床清掃ロボットは、記憶のみ走行スイッチを設けていて、記憶のみ走行スイッチが操作された場合、清掃手段をオフにして、各通路の幅や通路長を計測しながら走行処理を行い、通路長や幅等の走行パターンを記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-269825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の自律走行作業装置は、走行データのみを記憶することで、清掃作業に掛かる手間を省いて、使い勝手の向上を図ることができ、走行データに基づいて同一の走行経路を自律的に走行させることができる。なお、清掃作業については、走行データのみに基づいて自動走行する際に、清掃作業を制御すればよい。あるいは、清掃作業と共に走行を行って、走行データと共に清掃作業に掛かる作業データを記憶して、走行データおよび作業データに基づく自動走行作業を行ってもよい。
【0006】
しかしながら、自律走行作業装置は、作業エリアが同じであっても、作業環境や作業条件が異なる場合がある。例えば、商業施設の床面等を清掃する自律走行清掃装置は、清掃エリア(作業エリア)が変化しなくても、イベントやセールの有無および天気の変化等のように作業環境や作業条件が変化することがある。このように作業環境や作業条件が変化すると、床面の汚れ方が異なるので、走行データと共に記憶した清掃データでは、適切な清掃を行うことができず、汚れ方に合わせた清掃を行う必要がある。即ち、従来の自律走行清掃装置は、異なる清掃作業を行うように制御したり、学習走行作業をやり直して異なる清掃データを用意したりする必要があるので、清掃作業の制御や学習走行作業の仕直しに手間が掛かる。
【0007】
本発明は、上記したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、作業環境や作業条件の変化に拘らず、学習走行作業の仕直しの手間を省いて、好適な走行データや作業データを用いて自動走行作業を行うことができる自律走行作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の自律走行作業装置は、自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置であって、装置本体と、前記装置本体を作業エリア内で走行させる走行部と、前記装置本体の前記作業エリア内の走行経路上で作業を行う作業部と、前記走行部および前記作業部の手動操作により該自律走行作業装置の学習走行作業が行われる間に、前記走行部の走行データと前記作業部の作業データとを記憶して、前記走行データと前記作業データとを含む作業プランを作成するプラン作成部と、前記プラン作成部により作成された前記作業プランを、該自律走行作業装置の自動走行作業のために記憶する記憶部と、前記記憶部から再現プランとして読み出した前記作業プランに基づいて、前記走行部および前記作業部を制御して前記自動走行作業を行う再現制御部と、前記再現プランの前記走行データおよび/または前記作業データを変更するプラン変更部と、を備え、前記プラン変更部は、前記再現プランの示す走行経路を変更することなく、前記再現プランの前記走行データおよび/または前記作業データを一括して変更可能に構成され、前記再現制御部は、前記プラン変更部によって前記再現プランが変更された場合に、変更後の前記再現プランに基づいて前記自動走行作業を行い、前記作業部は、複数種類の清掃作業のうちの一の前記清掃作業を選択して前記作業として行うように構成され、また、前記複数種類の清掃作業のそれぞれに対応する複数種類の清掃部材を切り替えて使用するように構成され、一の前記清掃作業を伴う前記学習走行作業が行われるとき、前記プラン作成部は、一の前記清掃作業の清掃データを前記作業データとして記憶して前記作業プランを作成し、一の前記清掃部材を使用する一の前記清掃作業を伴う前記学習走行作業により作成された前記再現プランに基づいて前記再現制御部が前記自動走行作業を行うとき、前記プラン変更部は、前記作業部が一の前記清掃作業と異なる他の前記清掃作業を行うと判定すると共に、前記作業部が一の前記清掃部材と異なる他の前記清掃部材を使用すると判別した場合、他の前記清掃部材を使用する他の前記清掃作業に対応するように前記再現プランを、一の前記清掃部材と他の前記清掃部材との所定の組み合わせに応じて所定の内容に一括して変更する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の自律走行作業装置によれば、学習走行作業で作成した作業プランを再現プランとして利用して自動走行作業を行う場合に、再現プランの示す走行経路を変更することなく、作業エリアの床面の汚れ状況や作業スケジュールの都合等、様々な用途に応じて、走行データや作業データを一括して変更することができる。そのため、自律走行作業装置の操作に慣れていない操作者でも、走行データや作業データを1つ1つ設定することなく、所望の再現プランを容易に作成することができる。従って、同一の作業エリアの作業を行うときに、作業エリアの汚れ状況や作業スケジュールが変更された場合でも、走行経路を変える必要がなければ、学習走行作業をやり直すことなく、様々な用途に合わせた再現プランを容易に設定することができる。
また、同一の作業エリアの同一の走行経路を対象とする場合、学習走行作業をやり直すことなく、作業の異なる作業プランを容易に設定することができ、作業を容易に転換することができる。
また、同一の作業エリアの同一の走行経路を対象とする場合、学習走行作業をやり直すことなく、清掃部材毎に清掃作業の異なる作業プランを容易に設定することができ、清掃部材の変更があった場合に清掃作業を容易に転換することができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第2の自律走行作業装置は、前記プラン変更部は、変更した前記再現プランを新たな前記作業プランとして前記記憶部に記憶する。
【0011】
本発明の第2の自律走行作業装置によれば、学習走行作業を一回行うだけで、同一の作業エリアの同一の走行経路を対象としつつ、用途の異なる複数の作業プランを容易に作成して事前に用意しておくことができる。そのため、操作者は、複数の作業プランから用途に応じて再現プランを選択するだけで、手間を掛けることなく、所望の自動走行作業を行うことができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第の自律走行作業装置は、前記作業部は、前記複数種類の清掃作業として、床面洗浄作業と、ワックス剥離作業と、床面艶出し作業と、吸引清掃作業とから、一の前記清掃作業を選択して行う。
【0015】
本発明の第の自律走行作業装置によれば、同一の作業エリアの同一の走行経路を対象とする場合に、床面洗浄作業、ワックス剥離作業、床面艶出し作業および吸引清掃作業の何れかの清掃作業を行って作業プランを作成した後、学習走行作業をやり直すことなく、他の清掃作業を行うための作業プランを容易に設定することができる。従って、床面洗浄作業、ワックス剥離作業、床面艶出し作業および吸引清掃作業の間で清掃作業を容易に転換することができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の第の自律走行作業装置は、前記プラン変更部は、前記再現プランに基づく前記自動走行作業に、走行中の作業液の供給が含まれ、前記再現プランを一括して変更する際に前記走行データの走行速度が変更されるとき、前記作業液の供給水量の総量を一定にする総量一定供給オプションが設定された場合には、元の前記再現プランに基づく前記自動走行作業で消費される前記作業液の供給水量の総量を維持するように、前記作業データの前記作業液の供給水量を設定して前記再現プランを一括して変更する。
【0025】
本発明の第の自律走行作業装置によれば、走行速度の変更に応じて作業液の供給水量を変更する必要が生じた場合でも、作業液の供給水量の総量は変更されないので、作業液の残量が枯渇することなく、自動走行作業を完了することができる。従って、作業液不足により作業に伴って床面を傷つける問題や、作業液不足により床面の作業効果が十分に得られない問題を回避することができる。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の第の自律走行作業装置は、前記プラン変更部は、前記再現プランに基づく前記自動走行作業に、走行中の作業液の供給が含まれ、前記再現プランを一括して変更する際に前記走行データの走行速度が変更されるとき、前記作業液の供給水量を前記走行速度に追従させる速度追従供給オプションが設定された場合には、前記走行速度の変更の割合に応じて前記作業液の供給水量を増減させるように、前記作業データの前記作業液の供給水量を設定して前記再現プランを一括して変更する。
【0027】
本発明の第の自律走行作業装置によれば、走行速度の変更に応じて作業液の供給水量を変更する必要が生じた場合でも、走行速度に応じた供給水量で作業液を供給することができる。従って、走行速度を遅く設定した場合でも、作業液の枯渇により床面の作業が完遂できない問題を回避することができる。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の第の自律走行作業装置は、前記再現プランの変更を制限する制限フラグが前記再現プランに設定されている場合、前記プラン変更部は、前記再現プランの変更を制限する。
【0031】
本発明の第の自律走行作業装置によれば、走行データや作業データにおいて変更を所望しない部分については、予め制限フラグを設定しておくことで、再現プランが一括して変更される場合でも、元の再現プランの設定を維持することができる。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の第の自律走行作業装置は、前記プラン変更部は、前記制限フラグとして、前記走行データの走行速度の変更を制限する旋回フラグが、前記再現プランの旋回走行区間のステップに設定されている場合には、前記旋回走行区間のステップについて前記走行データの走行速度を速くする変更を指示された場合でも、前記再現プランの作成時の走行速度を維持する。
【0033】
本発明の第の自律走行作業装置によれば、作業時間の短縮等を目的として走行速度を高速化する場合でも、旋回走行区間では高速化されないので、旋回走行区間で自動走行や自動作業に生じる問題を事前に防ぐことができ、安全を確保して自動走行作業を行うことができる。例えば、旋回走行区間での転倒や汚水の回収不足を抑制することができる。また、旋回走行区間での安全を図るための細かな設定について、操作者が行う手間を省くことができる。
【0034】
上記課題を解決するために、本発明の第の自律走行作業装置は、前記プラン作成部は、前記作業プランの前記走行データにおいて、前記走行部の走行軌跡の曲率半径が所定の曲率半径閾値以下の区間、または前記走行部の操舵角が所定の操舵角閾値以上の区間を前記旋回走行区間と判定して、前記旋回フラグを設定する。
【0035】
本発明の第の自律走行作業装置によれば、走行経路の旋回走行区間を容易に認識して予め作業プランに設定することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、自律走行作業装置は、作業環境や作業条件の変化に拘らず、学習走行作業の仕直しの手間を省いて、好適な走行データや作業データを用いて自動走行作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示す概要図である。
図2】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で作成された清掃プランの例を示す表である。
図4】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部およびモード選択画面の例を示す正面図である。
図5】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示されるデータ設定画面の例を示す正面図である。
図6】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示される清掃プラン選択画面の例を示す正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示される清掃プラン変更画面の例を示す正面図である。
図8】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示される清掃部材一覧および変更オプション一覧の例を示す正面図である。
図9】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置における自動走行清掃の動作の例を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、自動走行清掃で時短清掃オプションに基づいて変更された再現プランの例を示す表である。
図11】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、自動走行清掃で床面洗浄作業から床面艶出し作業への変更に応じて変更された再現プランの例を示す表である。
図12】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、旋回走行区間を含む走行経路において走行速度が高速化された場合の走行速度の推移の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
【0039】
本発明の実施形態による自律走行作業装置1について説明する。図1に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、走行部3の手動操作を受け付ける走行操作部4とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面FLの清掃作業を実行する清掃部5を作業部として備えて、自律走行清掃装置として機能する。自律走行作業装置1は、例えば、ショッピングモール等の商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場等の全部または一部の領域を清掃エリア(作業エリア)として、清掃エリアの床面FLを清掃の対象とする。
【0040】
また、自律走行作業装置1は、装置本体2と周囲の壁や障害物(例えば、置物等)等の非作業対象との位置関係を計測する計測部6と、所定距離内の壁や障害物を検知する障害物検知部7とを備える。また、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各種機能の操作や表示のためのタッチパネル28(図4参照)からなる操作表示部8と、自律走行作業装置1の各部に電力を供給し、バッテリー(図示せず)の残量監視や充電を制御するための電源部9とを備える。更に、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部5による清掃作業、計測部6による計測等)を統括制御する制御部10と、走行部3の走行データや清掃部5の清掃データ(作業データ)からなる清掃プラン(作業プラン)を記憶する記憶部11とを備える(図2参照)。
【0041】
次に、自律走行作業装置1の動作の概要を説明する。
【0042】
自律走行作業装置1は、手動操作による走行および自動操作による自律的な走行が可能な車両であって、学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードの何れかの動作モードに切り替えられて動作する。
【0043】
自律走行作業装置1は、学習走行モードおよび手動走行モードでは、学習走行清掃(学習走行作業)および手動走行清掃(手動走行作業)をそれぞれ行って、操作者による走行操作部4や操作表示部8の手動操作に応じて手動走行や手動清掃(手動作業)を行う。学習走行清掃では、更に、学習走行に伴って清掃エリアの環境地図を作成して記憶すると共に、学習走行時の走行経路や走行状態を示す走行データと、学習清掃時の清掃状態を示す清掃データとを取得して走行データおよび清掃データを含む清掃プランを記憶する。清掃プランには、学習走行時の環境地図や、学習清掃時の清掃部5の清掃部材12の種類が関連付けられて記憶される。
【0044】
自律走行作業装置1は、自動走行モードでは(図9のステップS1参照)、自動走行清掃(自動走行作業)を行って、学習走行清掃で記憶された清掃プランのうちで、操作者に選択された清掃プラン(再現プラン)を再現するように、再現プランおよび対応する環境地図に基づいて、制御部10による自動操作に応じて自動走行および自動清掃(自動作業)を行う。なお、自動走行モードでは、自動走行清掃を開始する前に、操作者の操作に応じて、再現プランを一括して変更することができる。再現プランの一括変更の詳細は後述する。
【0045】
清掃プラン(作業プラン)は、図3に示すように、走行データおよび清掃データを所定のステップ毎に関連付けて構成される。清掃プランのステップは、学習走行清掃において、所定の時間間隔毎(例えば、25m/s毎)に設定されてもよく、あるいは、自律走行作業装置1の所定の移動距離(例えば、0.5m毎)に設定されてもよい。
【0046】
走行データは、例えば、走行部3の走行経路上の自己位置データ(環境地図上の自己位置を示すX座標およびY座標、開始位置の向きに対する角度)、操舵フラグ(直進、左折、右折)、進行方向への走行速度[m/s]および旋回速度[deg/s]を含み、走行データに基づいて走行経路を図化することができる。あるいは、走行速度は、複数段階の速度の何れかに切り替えられてよく、走行データは、走行速度の段階的な速度を数字(例えば、0~7の8段階)に換算して記憶するとよい。
【0047】
清掃データは、例えば、清掃部5の清掃部材12のパッド圧、洗浄液供給部13の供給水量および吸引部14の吸引量を含む。パッド圧は、清掃部材12を床面FLに押し付ける力であり、供給水量は、洗浄液供給部13によって床面FLに供給される洗浄液(作業液)の量であり、吸引量は、吸引部14によって床面FLから洗浄後の汚水を吸引する際の吸引ブロア(図示せず)の稼働強度である。なお、パッド圧、供給水量および吸引量は、複数段階の強度の何れかに切り替えられてよく、清掃データは、パッド圧、供給水量および吸引量の段階的な強度を数字(例えば、0~2の3段階や、0~4の5段階等)に換算して記憶するとよい。なお、清掃データは、清掃部材12の作動/停止、回転速度を含んでもよい。
【0048】
清掃プランは、走行データおよび清掃データに加えて、清掃プランの変更を制限する制限フラグを含む。制限フラグとして、例えば、各ステップが走行部3の旋回走行区間か否かを示す旋回フラグが1または0にそれぞれ設定される。旋回フラグが1に設定されているステップ、即ち、旋回走行区間のステップは、清掃プランが変更される場合でも、走行データの走行速度の加速の変更が制限されるので、清掃プランの作成時に記憶された最高走行速度が維持される。また、清掃プランは、上記した以外に、学習走行清掃開始からの経過時間をステップ毎に関連付けて記憶してもよい。
【0049】
次に、自律走行作業装置1の各部を説明する。
【0050】
走行部3は、装置本体2の下部に設けられていて、駆動輪として1つの前輪3aを備え、補助輪として一対の後輪3bを備える。前輪3aは、進行方向前側で装置幅方向中央に設けられ、走行駆動用モータ(図示せず)と前輪回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、走行駆動用モータを駆動して前輪3aを回転させることで装置本体2を前進させ、前輪3aの回転を停止させることで装置本体2を停止させる。走行駆動用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度の調整(加減速)が行われる。なお、走行部3は、走行駆動用モータが前輪3aを逆転させることで装置本体2を後退させてもよい。
【0051】
また、前輪3aは、操舵軸(図示せず)と操舵用モータ(図示せず)と操舵回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、操舵用モータを駆動して操舵軸を回転させることで前輪3aの向きを変えて装置本体2を操舵し、前輪3aの向きを変えながら装置本体2を前進させることで、自律走行作業装置1(走行部3)を左折(左旋回)や右折(右旋回)させる。操舵用モータの駆動を制御することで、し、自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角の調整が行われる。
【0052】
一対の後輪3bは、進行方向後側で装置幅方向(左右方向)に間隔を空けて設けられ、それぞれ走行距離を回転量から把握するためのエンコーダ(図示せず)を備える。一対の後輪3bは、前輪3aの駆動による装置本体2の移動に応じて従動回転する。自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度の調整(加減速)と操舵は、後輪3bに備えられたエンコーダを用いて後輪3bの各々の回転量をフィードバックしながら走行駆動用モータと操舵用モータを制御することで行われてもよい。なお、本実施形態では、駆動輪の前輪3aと補助輪の後輪3bとを備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、他の実施形態では、補助輪の前輪3aと一対の駆動輪の後輪3bとを備えてもよい。
【0053】
走行部3は、動作モードが学習走行モードまたは手動走行モードに設定されている場合、操作者による走行操作部4の手動操作に応じて動作する。また、走行部3は、動作モードが自動走行モードに設定されている場合、操作者に選択された清掃プランの走行データおよび環境地図に基づく制御部10(再現制御部24)の制御に応じて動作する。
【0054】
走行操作部4は、装置本体2の後上側に設けられ、操作者が手動操作可能なハンドル(図示せず)およびスロットル(図示せず)を備える。走行操作部4は、操作者によるハンドルの操舵量を電気信号に変換し、電気信号を操舵用モータに出力して駆動させることで、前輪3aの操舵軸を回転させて装置本体2を左折(左旋回)または右折(右旋回)させる。走行操作部4のハンドルの操舵量に応じて自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角が調整される。具体的には、ハンドル操作時の操舵回転用エンコーダのパルス数をカウントすることで、ハンドルの操舵量をパルス数に置き換え、このパルス数に合わせて操舵用モータを制御することで自律走行作業装置1の操舵角を調整することができる。なお、操舵角は、可変抵抗器を用いて電気信号に変換して検出してもよい。
【0055】
また、走行操作部4は、操作者によるスロットルの回動量(開度)を電気信号に変換し、電気信号を走行駆動用モータに出力して駆動させることで、前輪3aを回転させて装置本体2を進行方向に前進させる。走行操作部4のスロットルの回動量に応じて自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度が調整される。なお、走行操作部4は、動作モードが学習走行モードまたは手動走行モードに設定されている間は、操作者による手動操作を受け付けるが、自動走行モード設定されている間は、緊急停止ボタン27の操作以外の操作者による手動操作を受け付けないように構成される。
【0056】
清掃部5は、装置本体2の下部に設けられ、装置本体2の下方の床面FLを清掃するための複数種類の清掃作業を切り替えて、何れかの清掃作業を行うように構成される。清掃部5は、複数種類の清掃作業のそれぞれに対応する複数種類の清掃部材12を切り替えて、何れかの清掃部材12を装着して使用するように構成される。換言すれば、清掃部5は、複数種類の清掃部材12のうちから操作者等によって選択された一の清掃部材12を装着して使用し、装着している清掃部材12に対応する清掃作業を行う。
【0057】
例えば、清掃部5は、湿式の清掃作業として、床面洗浄作業と、ワックス剥離作業と、タイル洗浄作業とを含み、乾式の清掃作業として、床面艶出し作業と、吸引清掃作業とを含む。
【0058】
清掃部5は、床面洗浄作業に対応する清掃部材12として、通常洗浄に用いられる第1洗浄パッド、第1洗浄パッドより硬い材料で形成される第2洗浄パッド、またはカーペットなどの床面FLを対象とする洗浄ブラシを使用する。また、清掃部5は、ワックス剥離作業に対応する清掃部材12として、剥離パッドを使用し、床面艶出し作業に対応する清掃部材12として、艶出しパッドを使用し、タイル洗浄作業に対応する清掃部材12として、メラミンパッドを使用し、吸引清掃作業に対応する清掃部材12として、除塵ブラシを使用する。以下、第1洗浄パッド、第2洗浄パッド、剥離パッド、艶出しパッドおよびメラミンパッドの総称をパッドとし、洗浄ブラシおよび除塵ブラシの総称をブラシとする。
【0059】
清掃部5は、上記した着脱可能な清掃部材12と、清掃部材12を床面FL上で回転させる清掃部材用モータ(図示せず)と、清掃部材12を床面FLに対して上下方向に移動させる清掃部材用アクチュエータ(図示せず)とを備える。また、清掃部5は、湿式の清掃作業の場合に洗浄液を床面FLに供給する洗浄液供給部13と、湿式の清掃作業の場合に汚水を回収する汚水回収部(図示せず)と、乾式の清掃作業の場合に塵埃を回収する塵埃回収部(図示せず)と、湿式の清掃作業の場合に床面FLから汚水を吸引し、乾式の清掃作業の場合に床面FLから塵埃を吸引する吸引部14とを備える。
【0060】
清掃部5は、例えば、床面FLに垂直で装置本体2の内部から下方に突出した清掃シャフト(図示せず)を有し、清掃部材12は、清掃シャフトの下端に着脱可能に取り付けられる。清掃部材用モータが清掃シャフトを回転させると、清掃部材12は清掃シャフトを回転軸として回転し、清掃部材用アクチュエータが清掃シャフトを上下方向に移動させると、清掃部材12も上下方向に移動する。
【0061】
清掃部材12は、一対のパッドまたはブラシで構成され、一対のパッドまたはブラシは、進行方向略中央で装置幅方向(左右方向)に並んで取り付けられる。左側のパッドまたはブラシが上方視時計回りに回転し、右側のパッドまたはブラシが上方視反時計回りに回転して、幅方向中央側で前方から後方へ向かうように回転する。これにより、一対のパッドまたはブラシの前方の汚水や塵埃を幅方向中央側に収集しつつ後方へ排出する。
【0062】
なお、清掃部材用アクチュエータおよび清掃シャフトは、清掃部材12の着脱機構を兼ねている。清掃部材12の中央および清掃シャフトの下端には、相互の装着状態と未装着状態とを切り替える装着機構が設けられる。清掃部材12を装着していない場合、清掃部材用アクチュエータは、未装着状態の清掃シャフトを上方に退避させる。
【0063】
そして、清掃シャフトの下方に清掃部材12を載置して、モード選択画面30のパッド装着ボタン31(図4参照)を操作すると、清掃部材用アクチュエータは清掃シャフトを下方に移動させると共に、清掃シャフトが装着状態となり、清掃部材12が清掃シャフトに取り付けられる。また、清掃部材12を装着している場合に、パッド装着ボタン31を操作すると、清掃シャフトが未装着状態となり、清掃部材12が清掃シャフトから取り外されると共に、清掃部材用アクチュエータは清掃シャフトを上方に移動させる。
【0064】
洗浄液供給部13は、洗浄液を収容する洗浄液タンクや、この洗浄液タンクに接続された供給ポンプを備えていて、供給ポンプを用いて洗浄液タンクから床面FLに洗浄液を供給して散布する。洗浄液供給部13では、供給ポンプに電圧を印加して供給ポンプのインペラ(羽根車)を回転させることで洗浄液を供給する。この電圧を変更してインペラの回転数を調整することで、洗浄液の供給水量が調整される。例えば、電圧と洗浄液の供給水量との相関データを予め記憶部11に記憶しておくことで、所定の供給水量を要求された場合に、この供給水量に対応する電圧を取得し、取得した電圧を供給水ポンプに印加することで、要求された供給水量に調整される。
【0065】
汚水回収部は、スキージと、汚水ダクト(図示せず)と、汚水タンク(図示せず)とを備えていて、スキージは、清掃部材12より後方で床面FLに接地して設けられる。汚水回収部は、清掃部材12から後方に排出される汚水をスキージで受け止めて収集し、汚水ダクトを介して汚水タンクへ回収する。
【0066】
塵埃回収部は、吸込み口(図示せず)と、塵埃ダクト(図示せず)と、塵埃バケット(図示せず)とを備えていて、吸込み口は、清掃部材12より後方に設けられる。塵埃回収部は、清掃部材12から後方に排出される塵埃を吸込み口が吸い込んで収集し、塵埃ダクトを介して塵埃バケットへ回収する。なお、汚水ダクトおよび汚水タンクと、塵埃ダクトおよび塵埃バケットとはそれぞれ共通の部品でもよい。また、スキージと吸込み口とは相互に交換可能な部品でよい。
【0067】
吸引部14は、吸引ブロアで構成され、汚水ダクトや塵埃ダクトに接続されて、汚水や塵埃を吸引する。
【0068】
清掃部5は、床面洗浄作業では、洗浄液供給部13が床面FLに洗浄液を散布しながら、清掃部材12として装着された第1洗浄パッド、第2洗浄パッドまたは洗浄ブラシを、清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面FLに付勢して押し付けることで、床面FLを洗浄し、洗浄後の汚水を汚水回収部が回収する。
【0069】
清掃部5は、ワックス剥離作業では、洗浄液供給部13が床面FLに洗浄液(剥離剤)を散布しながら、清掃部材12として装着された剥離パッドを、清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面FLに付勢して押し付けることで、床面FL上に塗布されたワックスを剥離し、剥離したワックスを含む汚水を汚水回収部が回収する。
【0070】
清掃部5は、床面艶出し作業では、清掃部材12として装着された艶出しパッドを、清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面FLに付勢して押し付けることで、床面FLの艶出しを行う。なお、床面艶出し作業では、洗浄液供給部13による洗浄液の散布や、汚水回収部による汚水の回収は行わない。
【0071】
清掃部5は、タイル洗浄作業では、洗浄液供給部13が床面FLに洗浄液を散布しながら、清掃部材12として装着されたメラミンパッドを、清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面洗浄作業よりも弱い力で床面FLに付勢して押し付けることで、セラミックタイル等の床面FLを洗浄し、洗浄後の汚水を汚水回収部が回収する。
【0072】
清掃部5は、吸引清掃作業では、清掃部材12として装着された除塵ブラシを、清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面FLに付勢して押し付けることで、床面FLから塵埃を収集し、収集した塵埃を塵埃回収部が回収する。なお、吸引清掃作業では、洗浄液供給部13による洗浄液の散布は行わない。
【0073】
清掃部5は、動作モードが学習走行モードまたは手動走行モードに設定されている場合、操作者による走行操作部4の手動操作に応じて動作する。また、清掃部5は、動作モードが自動走行モードに設定されている場合、操作者に選択された清掃プランの清掃データおよび環境地図に基づく制御部10の制御に応じて動作する。
【0074】
なお、学習走行モードにおいて清掃部5が一の清掃作業を行って清掃プランを生成した後、自動走行モードにおいてこの清掃プランを自動走行清掃の対象の再現プランとして選択して自動走行清掃を行うときに、清掃部5は、他の清掃作業を再現作業として自動清掃を行ってもよい。このように、自動走行モードにおいて、再現プランの生成時の清掃作業と再現プランの実行時の再現作業とが異なる場合、再現プランは、再現作業に対応するように一括して変更される。そして、走行部3および清掃部5は、変更後の再現プランに基づいて動作する。このような清掃作業の変更に基づく再現プランの一括変更については、後述する。
【0075】
計測部6は、装置本体2と周囲の壁や障害物等の非作業対象との位置情報(例えば、装置本体2の進行方向に対する角度や距離)を計測するレーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)6a等を備える。計測部6は、装置本体2が走行している間、例えば、所定のタイミング毎(例えば、25m/s毎)に非作業対象との位置情報を計測する。
【0076】
障害物検知部7は、装置本体2から所定距離内の壁や障害物の有無を検知する超音波センサや装置本体2付近の床面FLの段差を検知する赤外線センサ等の障害物センサ7aを備える。障害物検知部7は、装置本体2が走行している間、常時稼働していてよい。
【0077】
操作表示部8は、装置本体2の後上側で走行操作部4の近傍に設けられ、図4に示すように、キースイッチ26と、緊急停止ボタン27と、タッチパネル28とを備え、操作表示部8の各部は、制御部10に接続されている。操作表示部8は、装置本体2に取り付けられる操作表示パネル等で構成されてもよく、装置本体2に対して着脱可能に装着されるタブレット端末等で構成されてもよい。なお、タブレット端末等で構成される操作表示部8は、無線通信を介して制御部10に接続されて、自律走行作業装置1を遠隔操作可能となる。
【0078】
キースイッチ26は、オン、オフを切替可能に構成されている。キースイッチ26をオンに切り替えることで、電源部9から各部に電力が供給されて自律走行作業装置1が稼働する一方、キースイッチ26をオフに切り替えることで、電源部9から各部への電力供給が停止されて自律走行作業装置1の稼働が停止する。緊急停止ボタン27は、操作されることで、自律走行作業装置1の各部の動作(特に、自動走行清掃)を強制的に停止(制動)する。
【0079】
タッチパネル28は、制御部10からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御部10へと送信する。例えば、キースイッチ26をオンにして自律走行作業装置1を稼働すると、タッチパネル28は、図4に示すように、動作モードを選択可能なモード選択画面30を表示する。
【0080】
モード選択画面30には、清掃部材12の着脱を行うためのパッド装着ボタン31や、学習ボタン32、自動ボタン33および手動ボタン34が操作可能に表示される。
【0081】
パッド装着ボタン31の操作によって清掃部材12が装着されるとき、タッチパネル28には、図8(1)に示すように、複数種類の清掃部材12のそれぞれの部材名をプルダウンメニュー等によって選択可能に列挙した清掃部材一覧80が、モード選択画面30上にポップアップ表示される。このとき、操作者が、装着した清掃部材12に対応する部材名を清掃部材一覧80から選択すると、制御部10は、その部材名に対応する清掃部材12を装着中の清掃部材12と認識して、装着中の清掃部材12の種類を記憶部11に記憶する。
【0082】
学習ボタン32および手動ボタン34が操作されると、動作モードが学習走行モードおよび手動走行モードに切り替えられて、タッチパネル28は、図5に示すように、手動走行や手動清掃に関するデータを設定操作可能なデータ設定画面40を表示する。また、自動ボタン33が操作されると、動作モードが自動走行モードに切り替えられて、タッチパネル28は、図6に示すように、清掃プランを選択操作可能な清掃プラン選択画面60を表示する。
【0083】
データ設定画面40には、走行部3の走行速度を変更する速度変更ボタン41が表示される。なお、速度変更ボタン41は、自動走行モードにおいて自動走行時に操作可能に表示されるが、学習走行モードおよび手動走行モードにおいて手動走行時には、操作不能に表示され、あるいは表示されない。速度変更ボタン41は、例えば、操作する度に走行速度を段階的に上げる上ボタンと、操作する度に走行速度を段階的に下げる下ボタンとを備える。
【0084】
データ設定画面40には、清掃部5の清掃部材12の清掃スイッチ42および清掃部材12のパッド圧を調整するパッド圧調整ボタン43が、動作モードに拘らず操作可能に表示される。清掃スイッチ42は、操作する度に清掃部材12による清掃の稼働/停止を切り替える。パッド圧調整ボタン43は、操作する度に清掃部材12のパッド圧を段階的かつ循環的に切り替える。
【0085】
データ設定画面40には、清掃部5の洗浄液供給部13の供給スイッチ44および洗浄液供給部13の供給水量を調整する供給水量調整ボタン45が、動作モードに拘らず操作可能に表示される。供給スイッチ44は、操作する度に洗浄液供給部13による洗浄液供給の稼働/停止を切り替える。供給水量調整ボタン45は、操作する度に洗浄液供給部13の供給水量を段階的かつ循環的に切り替える。
【0086】
データ設定画面40には、清掃部5の吸引部14の吸引スイッチ46および吸引部14の吸引量を調整する吸引量調整ボタン47が、動作モードに拘らず操作可能に表示される。吸引スイッチ46は、操作する度に吸引部14による吸引の稼働/停止を切り替える。吸引量調整ボタン47は、操作する度に吸引部14の吸引量を段階的かつ循環的に切り替える。
【0087】
更に、データ設定画面40には、学習走行モードにおいて、学習走行清掃を開始する学習開始ボタン48、学習走行清掃を中止する学習中止ボタン49、学習走行清掃を完了する学習完了ボタン50、学習走行清掃の結果を清掃プランとして記憶する記憶ボタン51等が操作可能に表示される。
【0088】
また、データ設定画面40には、自動走行清掃の対象である再現プランを変更してから自動走行清掃を開始するための再現開始ボタン52や、再現プランの走行データおよび/または清掃データを一括して変更する変更オプションを選択操作するためのオプションボタン53が表示される。なお、再現開始ボタン52およびオプションボタン53は、自動走行モードの場合に自動走行清掃の実行前に操作可能に表示されるが、学習走行モードおよび手動走行モードの場合には、操作不能に表示され、あるいは表示されない。
【0089】
自動走行モードでは、自動走行清掃の開始前に、データ設定画面40の速度変更ボタン41を操作することで、再現プランの走行データを個別に変更することができ、清掃スイッチ42、パッド圧調整ボタン43、供給スイッチ44、供給水量調整ボタン45、吸引スイッチ46および吸引量調整ボタン47を操作することで、再現プランの清掃データを個別に変更することができる。
【0090】
また、自動走行モードでは、自動走行清掃の開始前に、データ設定画面40のオプションボタン53が操作されると、タッチパネル28には、図8(2)に示すように、複数種類の変更オプションのそれぞれのオプション名をプルダウンメニュー等によって選択可能に列挙した変更オプション一覧81が、データ設定画面40上にポップアップ表示される。
【0091】
例えば、変更オプション一覧81では、弱清掃オプション、強清掃オプション、時短清掃オプション、ゆっくり清掃オプション、デモ走行オプション、供給水量変更オプション、静音走行オプション、雨天清掃オプション、簡易清掃オプション、しっかり清掃オプション等の複数種類の変更オプションを選択可能である。なお、供給水量変更オプションとして、総量一定供給オプションおよび速度追従供給オプションのうちの何れかを選択可能であり、供給水量変更オプションが変更オプション一覧81から選択されると、更に、総量一定供給オプションおよび速度追従供給オプションをプルダウンメニュー等によって選択可能に列挙してポップアップ表示される。
【0092】
そして、操作者が何れかの変更オプションを変更オプション一覧81から選択すると(図9のステップS5:Yes参照)、再現プランの走行データおよび/または清掃データが、選択した変更オプションに基づいて、一括して変更される(図9のステップS6参照)。変更オプションに基づく再現プランの一括変更については、後述する。
【0093】
また、データ設定画面40の再現開始ボタン52が操作されると、再現プランの自動走行清掃の実行に移行して(図9のステップS7参照)、タッチパネル28は、自動走行清掃の実行中を示す画面を表示する。
【0094】
清掃プラン選択画面60には、記憶部11に記憶されている各清掃プランのプラン項目62を選択可能に列挙した清掃プラン一覧61が表示される。プラン項目62には、例えば、清掃プランのプラン名、自動走行清掃に要する所要時間、作成日、前回実施日等が表示される。
【0095】
清掃プラン選択画面60には、戻るボタン63や決定ボタン64等が操作可能に表示される。戻るボタン63が操作されると、自動走行清掃に移行することなく自動走行モードを終了して、タッチパネル28はモード選択画面30に戻る。決定ボタン64が操作されると、選択しているプラン項目62に対応する清掃プランを、自動走行清掃の対象の再現プランとして(図9のステップS2参照)、タッチパネル28は、図7に示すように、再現プランの自動走行清掃の実行開始や再現プランの各データ変更を操作可能な清掃プラン変更画面70を表示する。
【0096】
なお、このように再現プランの選択が決定したとき、再現プランに関連付けられた清掃部5の清掃部材12の種類、即ち、再現プラン生成時の清掃部材12の種類が、清掃部5に今回装着中の清掃部材12の種類と異なる場合(図9のステップS3:Yes参照)、再現プランは、今回装着中の清掃部材12の種類に基づいて、一括して変更される(図9のステップS4参照)。また、タッチパネル28は、清掃プラン選択画面60の決定ボタン64が操作されるとき、再現プラン生成時の清掃部材12の種類と今回装着中の清掃部材12の種類とが異なることを示すと共に、清掃部材12の種類変更に基づく再現プランの一括変更を行ってよいか否かを操作者に問い合わせる問合せ画面を表示してもよい。このような清掃部材12の種類変更に基づく再現プランの一括変更は、上記した清掃作業の変更に基づく再現プランの一括変更の一例である。清掃部材12の種類変更に基づく再現プランの一括変更については、後述する。
【0097】
清掃プラン変更画面70には、戻るボタン71、実行ボタン72、変更ボタン73等が操作可能に表示される。戻るボタン71が操作されると、再現プランの選択が取り消されて、タッチパネル28は清掃プラン選択画面60に戻る。実行ボタン72が操作されると、再現プランの自動走行清掃の実行に移行して(図9のステップS7参照)、タッチパネル28は、自動走行清掃の実行中を示す画面を表示する。変更ボタン73が操作されると、タッチパネル28は、自動走行清掃の開始前に再現プランを変更するために、上記のデータ設定画面40を表示する。データ設定画面40における清掃プランの変更については上記した通りである。
【0098】
電源部9は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)および充電回路を備え、外部電源に接続することでバッテリーが充電され、また、自律走行作業装置1の各部へと電力を供給する。電源部9は、バッテリーの残量を示す信号を制御部10へと出力してもよい。
【0099】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータで構成され、図2に示すように、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ等を含む記憶部11に接続されている。また、制御部10は、上記の走行部3、走行操作部4、清掃部5、計測部6、障害物検知部7、操作表示部8および電源部9等の自律走行作業装置1の各部に接続されている。
【0100】
記憶部11は、自律走行作業装置1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御部10が、記憶部11に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各部および各種機能を統括制御する。例えば、制御部10は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、モード切替部20、地図作成部21、清掃プラン作成部22(プラン作成部)、清掃プラン変更部23(プラン変更部)および再現制御部24として動作する。これにより、自律走行作業装置1は、事前に記憶されたプログラムに従って自律的に走行し自動で作業することができる。また、記憶部11は、1つ以上の清掃プランを記憶すると共に、各清掃プランに対応する環境地図も記憶する。
【0101】
モード切替部20は、動作モードを学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードの何れかに切り替える。モード切替部20は、例えば、上記したモード選択画面30において、学習ボタン32、自動ボタン33および手動ボタン34の操作に応じて動作モードを学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードにそれぞれ切り替える。
【0102】
地図作成部21は、学習走行モードにおいて学習走行清掃が行われる間、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いて、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行う。
【0103】
具体的には、地図作成部21は、所定の清掃エリアの学習走行清掃の間に、計測部6の計測結果である装置本体2と非作業対象との位置情報に基づいて、所定の時間間隔毎または所定の距離間隔毎に、装置本体2の周囲の局所地図を作成する。また、地図作成部21は、局所地図と走行部3の各エンコーダによる検出結果(走行部3の移動量)とに基づいて、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置(座標)を推定する。
【0104】
そして、地図作成部21は、学習走行清掃を完了する際に、各局所地図をつなぎ合わせる(合成する)ことで清掃エリアの環境地図を作成する。また、地図作成部21は、計測部6が計測した各位置情報をつなぎ合わせる(合成する)ことで走行経路を作成する。
【0105】
清掃プラン作成部22は、学習走行モードにおいて学習走行清掃が行われる間、清掃プランのステップ間隔毎に、走行部3の走行データおよび清掃部5の清掃データを取得して記憶部11に一時的に記憶しておく。データ設定画面40の学習開始ボタン48の操作に応じて、学習走行清掃が開始され、清掃プラン作成部22は、走行データおよび清掃データの取得を開始する。
【0106】
清掃プラン作成部22は、例えば、走行データとして、計測部6が計測した位置情報に基づいて自己位置データ(X座標およびY座標、角度)を取得する。また、走行部3の前輪3aの前輪回転用エンコーダで前輪3aの走行回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の走行速度を取得する。更に、走行部3の前輪3aの操舵回転用エンコーダで前輪3aの操舵回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の旋回速度を取得する。
【0107】
また、清掃プラン作成部22は、例えば、清掃データとして、清掃部5の清掃部材12のパッド圧、洗浄液供給部13の供給水量および吸引部14の吸引量について、後述するデータ設定画面40を介して設定されていた段階的な強度を取得する。
【0108】
また、データ設定画面40の学習完了ボタン50の操作に応じて、学習走行清掃が完了すると、清掃プラン作成部22は、走行データおよび清掃データの取得を停止し、記憶部11に一時的に記憶していた走行データおよび清掃データをステップ毎に関連付けて清掃プラン(作業プラン)を作成する。
【0109】
更に、清掃プラン作成部22は、清掃プラン作成後、各ステップの走行データに基づいて、走行部3の走行経路(走行軌跡)を算出し、この走行軌跡において曲率半径が所定の曲率半径閾値以下の区間を旋回走行区間として判定し、この区間に対応するステップの旋回フラグを1に設定する。または、清掃プラン作成部22は、各ステップの走行データに基づいて、走行操作部4(ハンドル)の操舵角を検出し、この操舵角が所定の操舵角閾値(例えば、30度)以上の区間を旋回走行区間として判定し、この区間に対応するステップの旋回フラグを1に設定する。
【0110】
なお、操舵角を計測する場合、例えば、走行部3の前輪3aの操舵回転用エンコーダや、走行操作部4(ハンドル)の旋回軸に設けたエンコーダによって、走行操作部4を操舵したときの各エンコーダのパルス数値を計測し、走行部3の進行方向を基準(0度)にして、進行方向に対して左旋回をプラスの角度で検出し、進行方向に対して右旋回をマイナスの角度で検出するように、パルス数値を角度(deg)に換算すればよい。
【0111】
そして、清掃プラン作成部22は、学習走行清掃を完了する際に、作成した清掃プランについてプラン名の入力を操作者に問い合わせる問合せ画面をタッチパネル28に表示させる。プラン名の入力後、データ設定画面40の記憶ボタン51の操作に応じて、清掃プラン作成部22は、作成した清掃プランを、同じ学習走行清掃で地図作成部21が作成した環境地図と関連付けて記憶部11に記憶する。
【0112】
清掃プラン変更部23は、自動走行モードにおいて自動走行清掃のために選択された再現プランの走行データおよび/または清掃データについて、データ設定画面40の各種ボタンの操作に基づく個別変更、清掃部5の清掃作業の変更に基づく一括変更、変更オプションに基づく一括変更等を行う。なお、清掃プラン変更部23は、再現プランの一括変更では、走行データが示す自律走行作業装置1の自己位置データ(環境地図上のX座標およびY座標、角度)を変更することなく、即ち、走行経路を変更することなく、各ステップに亘って走行データおよび/または清掃データを変更する。
【0113】
清掃プラン変更部23は、変更後の再現プランを(図9のステップS8:Yes参照)、今回の自動走行清掃に限り実行するように一時的に記憶部11に記憶してもよく、あるいは、次回以降の自動走行清掃にも実行するように、新たな清掃プランとして記憶部11に記憶してもよい(図9のステップS10参照)。例えば、清掃プラン変更部23は、自動走行清掃の完了後に、変更した再現プランを新たな清掃プランとして記憶部11に記憶するか否かを操作者に問い合わせる問合せ画面をタッチパネル28に表示させてもよい(図9のステップS9参照)。
【0114】
清掃プラン変更部23は、自動走行モードにおいて、再現プランの選択後に、タッチパネル28にデータ設定画面40が表示されているとき、データ設定画面40の各種ボタンの操作に基づく再現プランの個別変更を受け付ける。例えば、清掃プラン変更部23は、速度変更ボタン41の操作に応じて、再現プランの走行データを個別に変更する。また、清掃プラン変更部23は、清掃スイッチ42、パッド圧調整ボタン43、供給スイッチ44、供給水量調整ボタン45、吸引スイッチ46および吸引量調整ボタン47の操作に応じて、再現プランの清掃データを個別に変更する。清掃プラン変更部23は、上記したように個別に変更された走行データおよび清掃データを、データ設定画面40の再現開始ボタン52の操作に応じて、自動走行清掃の開始前に、再現プランに反映させるとよい。
【0115】
また、清掃プラン変更部23は、自動走行モードにおいて、再現プランの生成時の清掃部5の清掃作業と再現プランの実行時の清掃部5の再現作業とが異なるとき、清掃作業の変更に基づく再現プランの一括変更を受け付ける。
【0116】
例えば、清掃プラン変更部23は、上記した清掃プラン選択画面60において決定ボタン64が操作されて再現プランの選択が決定したとき、再現プラン生成時の清掃部材12の種類と今回装着中の清掃部材12の種類とを記憶部11から読み取って比較する。清掃部材12の種類には、第1洗浄パッド、第2洗浄パッド、剥離パッド、艶出しパッド、メラミンパッド、洗浄ブラシおよび除塵ブラシがある。そして、再現プラン生成時の清掃部材12の種類と今回装着中の清掃部材12の種類とが異なるとき、清掃プラン変更部23は、再現プランの生成時の清掃部5の清掃作業と再現プランの実行時の清掃部5の再現作業とが異なると判定する。
【0117】
なお、清掃プラン変更部23は、清掃部材12の種類に基づいて清掃作業の種類を把握(判定)することができる。例えば、清掃部材12の種類が第1洗浄パッド、第2洗浄パッドまたは洗浄ブラシである場合、清掃作業の種類は床面洗浄作業と判定される。また、清掃部材12の種類が剥離パッド、艶出しパッド、メラミンパッドまたは除塵ブラシである場合、清掃作業の種類は、それぞれワックス剥離作業、床面艶出し作業、タイル洗浄作業または吸引清掃作業と判定される。
【0118】
以下に、第1洗浄パッドを清掃部材12として学習走行清掃を行って清掃プランを作成した後、この清掃プランを再現プランとして自動走行清掃を行う場合に、清掃プラン変更部23が、清掃作業の変更や清掃部材12の種類変更に基づく再現プランの一括変更を行う例を説明する。
【0119】
清掃部材12が第1洗浄パッドから硬い材料の第2洗浄パッドに変更された場合、清掃プラン変更部23は、床面FLに傷がつくのを防ぐために、清掃データのパッド圧を1段階下げるように一括変更を行う。清掃部材12が第1洗浄パッドから洗浄ブラシに変更された場合、清掃プラン変更部23は、清掃データの供給水量を1段階上げるように一括変更を行う。
【0120】
清掃部材12が第1洗浄パッドから剥離パッドに変更された場合、清掃プラン変更部23は、床面FLに密着した多量のワックスを確実に床面FLから除去させるため、走行データの走行速度を1/2に下げると共に、清掃データのパッド圧および吸引量を最上位の段階に一律に上げる(例えば、0~2の3段階の場合には2のレベルに上げ、0~4の5段階の場合には4のレベルに上げる)。
【0121】
清掃部材12が第1洗浄パッドから艶出しパッドに変更された場合、図11に示すように、清掃プラン変更部23は、ワックスを塗布した床面FLをゆっくりと時間を掛けて艶出しするために、走行データの走行速度を1/2に下げると共に、清掃データのパッド圧を最下位の段階に一律に下げ(例えば、0~2の3段階の場合や0~4の5段階の場合に、0のレベルに下げる)、更に、洗浄液供給部13の洗浄液供給および吸引部14の吸引を停止するように設定する(例えば、供給水量および吸引量をオフに設定する)。
【0122】
清掃部材12が第1洗浄パッドからメラミンパッドに変更された場合、清掃プラン変更部23は、セラミックタイルの床面FLを洗浄するために、走行データの走行速度の設定を1/2に下げると共に、清掃データのパッド圧を最下位の段階に下げ、供給水量および吸引量を最上位の段階に上げる。
【0123】
清掃部材12が第1洗浄パッドから除塵ブラシに変更された場合、清掃プラン変更部23は、カーペット等の起毛素材の床面FLを清掃するために、走行データの走行速度を1/2に下げると共に、清掃データのパッド圧を最下位の段階に一律に下げ、更に、洗浄液供給部13の洗浄液供給および吸引部14の吸引を停止するように設定する(例えば、供給水量および吸引量をオフに設定する)。このように、清掃プラン変更部23は、湿式の清掃作業から乾式の清掃作業に切り替えられた場合でも、清掃プランを一括変更して対応することができる。
【0124】
なお、清掃プラン変更部23は、上記したように清掃作業の変更に基づいて一括変更された走行データおよび清掃データを、清掃プラン選択画面60の決定ボタン64の操作に応じて再現プランの選択が決定したときに、再現プランに反映させてよく、あるいは、清掃プラン変更画面70の実行ボタン72の操作に応じて、自動走行清掃の開始前に、再現プランに反映させてもよい。また、清掃プラン変更部23は、清掃作業の変更に基づいて再現プランを一括変更する場合でも、清掃プラン変更画面70で変更ボタン73が操作された場合には、データ設定画面40において更に再現プランを変更してもよい。
【0125】
また、清掃プラン変更部23は、上記したデータ設定画面40において複数種類の変更オプションから何れかの変更オプションが選択されたとき、変更オプションに基づく再現プランの一括変更を受け付ける。変更オプションの種類には、例えば、弱清掃オプション、強清掃オプション、時短清掃オプション、ゆっくり清掃オプション、デモ走行オプション、供給水量変更オプション(総量一定供給オプションおよび速度追従供給オプション)、静音走行オプション、雨天清掃オプション、簡易清掃オプション、しっかり清掃オプションがある。清掃プラン変更部23は、選択された変更オプションに応じて、走行経路を変更することなく、再現プランの一括変更を行う。以下に、各変更オプションの場合の再現プランの一括変更の例を説明する。
【0126】
弱清掃オプション(弱作業オプション)や強清掃オプション(強作業オプション)は、例えば、選択された再現プランの自動走行清掃に要する清掃時間を、作成時の再現プランから変えることなく、清掃エリアの床面FLの汚れ具合に応じて、床面FLの汚れを除去する場合に選択されるとよい。弱清掃オプションでは、清掃データ(作業データ)の作業強度を弱くし、強清掃オプションでは、清掃データの作業強度を強くする。床面FLが通常時より汚れていない場合、弱清掃オプションの変更オプションが選択されるとよく、この場合、清掃プラン変更部23は、走行データを変更することなく、清掃データのパッド圧、供給水量および吸引量を1段階下げるように設定し、あるいはパッド圧、供給水量および吸引量を最下位の段階に一律に下げるように設定する。一方、床面FLが通常時より汚れている場合、強清掃オプションの変更オプションが選択されるとよく、この場合、清掃プラン変更部23は、走行データを変更することなく、清掃データのパッド圧、供給水量および吸引量を1段階上げるように設定し、あるいはパッド圧、供給水量および吸引量を最上位の段階に一律に上げるように設定する。
【0127】
時短清掃オプション(高速化オプション)やゆっくり清掃オプション(低速化オプション)は、例えば、選択された再現プランの自動走行清掃に要する清掃時間を短縮または伸長する場合に選択されるとよい。再現プランの作成時に要した清掃時間を確保できずに、自動走行清掃を早く切り上げる必要がある場合、時短清掃オプションの変更オプションが選択されるとよく、この場合、図10に示すように、清掃プラン変更部23は、走行データの走行速度を2倍に上げて設定し、あるいは複数段階の速度の上位(例えば、0~7の8段階の場合の5のレベル)に一律に設定する。清掃時間に余裕があり、大理石等の石材の床面FLをゆっくり清掃(例えば、艶出し)する場合、ゆっくり清掃オプションの変更オプションが選択されるとよく、この場合、清掃プラン変更部23は、走行データの走行速度を1/2に下げて設定し、あるいは複数段階の速度の下位(例えば、0~7の8段階の場合の1のレベル)に一律に設定する。
【0128】
デモ走行オプションは、例えば、商業施設等で自律走行作業装置1が学習した清掃プランの走行経路を確認するため、あるいは展示会等で自律走行作業装置1のデモンストレーションのためのデモ走行を行う場合に選択されるとよい。デモ走行オプションの変更オプションが選択されると、清掃プラン変更部23は、走行データを変更することなく、清掃部材12の清掃作業、洗浄液供給部13の洗浄液供給および吸引部14の吸引を停止するように清掃データを設定する(例えば、パッド圧、供給水量および吸引量をオフに設定する)。なお、デモ走行の自動走行清掃の開始前に、上記したデータ設定画面40の速度変更ボタン41を操作して走行データの走行速度をより速くまたはより遅く設定することで、再現プランをそのまま実行する場合に比べて、自動走行清掃に要する時間を短くまたは長くすることができ、例えば、走行速度をより速くすることでデモ走行をより早く終了させることができる。また、デモ走行の変更オプションが選択されている場合には、データ設定画面40では、清掃データの変更に関する操作を受け付けないように設定され、例えば、清掃スイッチ42、パッド圧調整ボタン43、供給スイッチ44、供給水量調整ボタン45、吸引スイッチ46および吸引量調整ボタン47は、操作不能に表示される。
【0129】
供給水量変更オプション(総量一定供給オプションおよび速度追従供給オプション)は、例えば、データ設定画面40での再現プランの個別変更や、清掃作業の変更に基づく再現プランの一括変更に伴って、走行データの走行速度が変更される場合に選択されるとよい。例えば、走行速度をより速く変更した場合には通過位置当たりの清掃時間が短くなるところ、洗浄液の供給水量が変更されないと、元の再現プランに比べて通過位置当たりの供給水量が減少するので、洗浄液不足により清掃部材12で床面FLを傷つけたり、十分な清掃効果を得られなくなったりするおそれがある。また、走行速度をより遅く変更した場合には通過位置当たりの清掃時間が長くなるところ、洗浄液の供給水量が変更されないと、元の再現プランに比べて通過位置当たりの供給水量が増加するので、洗浄液の供給過多により汚水が床面FLに残存するおそれがある。さらには、洗浄液が予定よりも多く消費されるため、清掃作業の完了までに枯渇してしまうおそれもある。
【0130】
そこで、総量一定供給オプションの変更オプションが選択されると、清掃プラン変更部23は、元の再現プランの清掃データの各ステップの供給水量の総量を算出し、変更後の再現プランの自動走行清掃において、元の再現プランと同じ総量の供給水量を消費するように、再現プランの清掃データの各ステップの供給水量を変更する。このとき、供給水量がオフ以外に設定されている各ステップを通して供給水量が一定となるように、供給水量を算出して変更する。
【0131】
また、速度追従供給オプションの変更オプションが選択されると、清掃プラン変更部23は、再現プランのステップ毎に、走行データの走行速度の変更の割合に応じて、清掃データの供給水量を増減させる。例えば、走行データの走行速度がより速く変更された場合には、速度変更の割合に応じて清掃データの供給水量を多く設定し、走行速度がより遅く変更された場合には、速度変更の割合に応じて供給水量を少なく設定する。一例として、走行速度が2割増しに変更された場合には、供給水量も2割増しに変更する。
【0132】
なお、上記のような供給水量変更を行うために、清掃部5では、洗浄液供給部13の洗浄液タンクおよび汚水回収部の汚水タンクに水位センサ(図示せず)を設けて、清掃プラン変更部23は、各水位センサの検知結果に基づいて、学習走行清掃で清掃プランを作成したときの洗浄液供給部13の供給水量の総量や、自動走行清掃で清掃プランを実行したときの洗浄液供給部13の供給水量の総量を把握する。清掃プラン変更部23は、元の再現プランに比べて洗浄液を多く供給する場合、清掃エリアの清掃を完了するまでに、洗浄液タンク内の洗浄液が足らなくならないように、また汚水タンクが満タンにならないように、供給水量を調整してもよい。供給水量変更では、細かく供給水量を変更させる必要があり、洗浄液供給部13の供給ポンプに印加される電圧を変更することで、供給水量を調整する。
【0133】
静音走行オプションは、例えば、清掃すべき商業施設の営業時間中やオフィスの就業時間中において、走行部3の走行音や、清掃部材12の稼働音、吸引部14の吸引音を抑制して、自律走行作業装置1が発する周囲への騒音を軽減するように配慮する場合に選択されるとよい。静音走行オプションの変更オプションが選択されると、清掃プラン変更部23は、走行データの走行速度、並びに清掃データのパッド圧、供給水量および吸引量を、それぞれ下げて設定する。例えば、走行速度を1/2に下げて設定し、あるいは複数段階の速度の下位(例えば、0~7の8段階の場合の1のレベル)に一律に設定する。また、パッド圧、供給水量および吸引量を、1段階下げるように設定し、あるいはパッド圧、供給水量および吸引量を最下位の段階に一律に下げるように設定する。更に、清掃部材12を回転させる清掃部材用モータを定速制御することで、清掃部材12の回転数を1/2に下げるよう調整してもよい。
【0134】
雨天清掃オプションは、例えば、清掃当日の天気が降雨のために床面FLの汚れ状況が水分過多である場合に選択されるとよい。雨天清掃オプションの変更オプションが選択されると、清掃プラン変更部23は、走行データの走行速度を下げて設定すると共に、清掃データの吸引量を上げて設定する。例えば、全ステップを通して、走行速度を2/3に下げて設定すると共に、吸引量を最上位の段階に一律に下げるように設定する。
【0135】
簡易清掃オプションは、例えば、清掃すべき清掃エリアの床面FLがあまり汚れていないために、清掃に係る作業負担を軽減して清掃時間を短縮したい場合に選択されるとよい。簡易清掃オプションは、床面FLの汚れを除去する能力が最も低いモードであり、簡易清掃オプションの変更オプションが選択されると、清掃プラン変更部23は、走行データの走行速度を上げて設定すると共に、清掃データのパッド圧、供給水量および吸引量を下げて設定する。例えば、走行速度を2倍に上げて設定し、あるいは複数段階の速度の上位(例えば、0~7の8段階の場合の5のレベル)に一律に設定する。また、パッド圧、供給水量および吸引量を、1段階下げるように設定し、あるいはパッド圧、供給水量および吸引量を最下位の段階に一律に下げるように設定する。
【0136】
しっかり清掃オプションは、例えば、清掃すべき清掃エリアの床面FLが非常に汚れているために、清掃に係る作業負担や清掃時間に拘らず、より確実に床面FLの汚れを除去したい場合に選択されるとよい。しっかり清掃オプションは、床面FLの汚れを除去する能力が最も高いモードであり、しっかり清掃オプションの変更オプションが選択されると、清掃プラン変更部23は、走行データの走行速度を下げて設定すると共に、清掃データのパッド圧、供給水量および吸引量を上げて設定する。例えば、走行速度を1/2に下げて設定し、あるいは複数段階の速度の下位(例えば、0~7の8段階の場合の1のレベル)に一律に設定する。また、パッド圧、供給水量および吸引量を、1段階上げるように設定し、あるいはパッド圧、供給水量および吸引量を最上位の段階に一律に上げるように設定する。
【0137】
なお、清掃プラン変更部23は、上記したように変更オプションに基づいて一括変更された走行データおよび清掃データを、データ設定画面40において変更オプションを選択したときに、再現プランに反映させてよく、あるいは、データ設定画面40の再現開始ボタン52の操作に応じて、自動走行清掃の開始前に、再現プランに反映させてもよい。
【0138】
また、清掃プラン変更部23は、データ設定画面40の各種ボタンの操作に基づく再現プランの個別変更、清掃部5の清掃作業の変更に基づく再現プランの一括変更、変更オプションに基づく再現プランの一括変更のそれぞれについて、走行データおよび清掃データの変更状況を統合して記憶してもよい。そして、清掃プラン変更部23は、データ設定画面40の再現開始ボタン52の操作に応じて、自動走行清掃の開始前に、統合された走行データおよび清掃データの変更状況を、再現プランに反映させてもよい。
【0139】
ところで、上記では、データ設定画面40の各種ボタンの操作に基づく再現プランの個別変更、清掃部5の清掃作業の変更に基づく再現プランの一括変更、変更オプションに基づく再現プランの一括変更について説明したが、再現プランの変更は、再現プランに含まれる制限フラグによって制限される。例えば、再現プランには、制限フラグとして、走行データの走行速度の変更を制限する旋回フラグが含まれる。
【0140】
清掃プラン変更部23は、再現プランを変更するとき、各ステップの旋回フラグを参照し、即ち、各ステップが旋回走行区間か否かを判定する。そして、清掃プラン変更部23は、旋回フラグが1に設定されたステップ(旋回走行区間のステップ)に対して、データ設定画面40の操作や清掃作業の変更、変更オプションに基づいて、走行データの走行速度を高速にする変更または一括変更を指示されている場合でも、この旋回走行区間のステップについては、元の再現プランの走行データ(清掃プラン作成時の走行データ)の走行速度を維持する。
【0141】
例えば、図12に示すように、体育館等の矩形形状の清掃エリアの床面FLにおいて、自律走行作業装置1をジグザグに往復させて学習走行清掃させることで、この清掃エリアを塗りつぶすように清掃プランを作成することがある。このような清掃プランの走行経路は、180度旋回する区間で、曲率半径が所定の曲率半径閾値以下になり、旋回走行区間として判定される。そして、この清掃プランを再現プランとして自動走行清掃させるとき、清掃プラン変更部23は、開始位置から終了位置に亘って(全ステップに亘って)走行速度を高速化するように再現プランを一括変更する場合でも、旋回走行区間の走行速度を元の再現プランの走行速度に維持し、あるいは旋回走行区間の走行速度を下げて設定する。図12において、破線は走行速度を高速化した区間を示し、一点鎖線は走行速度を元の再現プランの走行速度に維持した区間、即ち、旋回走行区間を示す。
【0142】
再現制御部24について、自動走行清掃の動作を示す図9のフローチャートを参照しながら説明する。再現制御部24は、動作モードが自動走行モードの場合に(図9のステップS1参照)、清掃プラン選択画面60で再現プランが選択された後(図9のステップS2参照)、清掃プラン変更画面70の実行ボタン72の操作に応じて、選択された再現プランの自動走行清掃を制御する。このとき、再現制御部24は、再現プランが変更されない場合には(図9のステップS3:No参照)、記憶部11から読み出した清掃プランをそのまま再現プランとして使用し、あるいは、再現プランが清掃作業の変更に基づいて一括変更される場合には(図9のステップS3:Yes、ステップS4参照)、変更後の再現プランを使用する。
【0143】
また、再現制御部24は、清掃プラン選択画面60で再現プランが選択された後(図9のステップS2参照)、清掃プラン変更画面70の変更ボタン73が操作されてデータ設定画面40が表示されると、データ設定画面40の再現開始ボタン52の操作に応じて、選択された再現プランの自動走行清掃を制御する。このとき、再現制御部24は、再現プランが変更されない場合には(図9のステップS5:No参照)、記憶部11から読み出した清掃プランをそのまま再現プランとして使用し、あるいは、再現プランがデータ設定画面40の操作や清掃作業の変更、変更オプションに基づいて変更または一括変更される場合には(図9のステップS5:Yes、ステップS6参照)、変更後の再現プランを使用する。
【0144】
再現制御部24は、上記のように選択された再現プランの走行データおよび清掃データに基づいて、走行部3および清掃部5を制御して自動走行清掃を行う(図9のステップS7参照)。このとき、再現制御部24は、再現プランに対応する環境地図を記憶部11から読み出して、環境地図上の自律走行作業装置1の自己位置を推定しながら自動走行清掃を実行する。例えば、再現制御部24は、地図作成部21を利用してSLAM等の技術を用いて局所地図を作成し、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置を推定して、局所地図を環境地図にマッチングさせることで、環境地図上の自己位置を推定する。そして、再現制御部24は、再現プランの走行データの自己位置データに、環境地図上で推定される自己位置を合わせて走行部3を制御しつつ、清掃部5の清掃データに基づいてステップ毎に清掃作業を制御する。
【0145】
なお、上記では、清掃プラン変更部23が変更後の再現プランを新たな清掃プランとして記憶部11に記憶する例を説明したが、再現制御部24が、変更後の再現プランの自動走行清掃後に、変更後の再現プランを新たな清掃プランとして記憶部11に記憶してもよい。例えば、再現制御部24は、再現プランに変更があった場合(図9のステップS8:Yes参照)、変更後の再現プランを新たな清掃プランとして記憶部11に記憶するか否かを、操作表示部8の問合せ画面等を介して操作者に問い合わせる。そして、操作者が変更後の再現プランの記憶を所望する場合(図9のステップS9:Yes参照)、再現制御部24は、新たな清掃プランのプラン名の入力を、操作表示部8の問合せ画面等を介して操作者に問い合わせる。プラン名が入力されると、再現制御部24は、変更後の再現プランを、新たな清掃プランとして記憶部11に記憶する(図9のステップS10)。
【0146】
上記のように、本実施形態によれば、自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置1は、装置本体2と、装置本体2を清掃エリア(作業エリア)内で走行させる走行部3と、装置本体2の清掃エリア内の走行経路上で清掃作業(作業)を行う清掃部5(作業部)と、走行部3および清掃部5の手動操作により自律走行作業装置1の学習走行清掃(学習走行作業)が行われる間に、走行部3の走行データと清掃部5の清掃データ(作業データ)とを記憶して、走行データと清掃データとを含む清掃プラン(作業プラン)を作成する清掃プラン作成部22(プラン作成部)と、清掃プラン作成部22により作成された清掃プランを、自律走行作業装置1の自動走行清掃(自動走行作業)のために記憶する記憶部11と、記憶部11から再現プランとして読み出した清掃プランに基づいて、走行部3および清掃部5を制御して自動走行清掃を行う再現制御部24と、再現プランの走行データおよび/または清掃データを変更する清掃プラン変更部23とを備える。また、清掃プラン変更部23は、再現プランの示す走行経路を変更することなく、再現プランの走行データおよび/または清掃データを一括して変更可能に構成される。そして、再現制御部24は、清掃プラン変更部23によって再現プランが変更された場合に、変更後の再現プランに基づいて自動走行清掃を行う。
【0147】
このような構成により、自律走行作業装置1では、学習走行清掃で作成した清掃プランを再現プランとして利用して自動走行清掃を行う場合に、再現プランの示す走行経路を変更することなく、清掃エリアの床面FLの汚れ状況や清掃スケジュールの都合等、様々な用途に応じて、走行データや清掃データを一括して変更することができる。そのため、自律走行作業装置1の操作に慣れていない操作者でも、走行データや清掃データを1つ1つ設定することなく、所望の再現プランを容易に作成することができる。従って、同一の清掃エリアの清掃作業を行うときに、清掃エリアの汚れ状況や清掃スケジュールが変更された場合でも、走行経路を変える必要がなければ、学習走行清掃をやり直すことなく、様々な用途に合わせた再現プランを容易に設定することができる。
【0148】
このように、商業施設等におけるイベントやセールの有無および天気の変化等のような清掃環境(作業環境)や清掃条件(作業条件)の変化に拘らず、学習走行清掃の仕直しの手間を省いて、好適な走行データや清掃データを用いて自動走行清掃を行うことができる自律走行作業装置1を提供することができる。
【0149】
また、本実施形態では、清掃プラン変更部23は、変更した再現プランを新たな清掃プランとして記憶部11に記憶する。
【0150】
このような構成により、自律走行作業装置1は、学習走行清掃を一回行うだけで、同一の清掃エリアの同一の走行経路を対象としつつ、用途の異なる複数の清掃プランを容易に作成して事前に用意しておくことができる。そのため、操作者は、複数の清掃プランから用途に応じて再現プランを選択するだけで、手間を掛けることなく、所望の自動走行清掃を行うことができる。
【0151】
また、本実施形態では、清掃部5は、複数種類の清掃作業のうちの一の清掃作業を選択して作業として行うように構成される。このような一の清掃作業を伴う学習走行作業が行われるとき、清掃プラン作成部22は、一の清掃作業の清掃データを作業データとして記憶して清掃プランを作成する。このような一の清掃作業を伴う学習走行作業により作成された再現プランに基づいて再現制御部24が自動走行作業を行うとき、清掃部5が一の清掃作業と異なる他の清掃作業を行う場合、清掃プラン変更部23は、このような他の清掃作業に対応するように再現プランを一括して変更する。
【0152】
このような構成により、自律走行作業装置1は、同一の清掃エリアの同一の走行経路を対象とする場合、学習走行清掃をやり直すことなく、清掃作業の異なる清掃プランを容易に設定することができ、清掃作業を容易に転換することができる。
【0153】
また、本実施形態では、清掃部5は、複数種類の清掃作業として、床面洗浄作業と、ワックス剥離作業と、床面艶出し作業と、吸引清掃作業とから、一の清掃作業を選択して行う。
【0154】
このような構成により、自律走行作業装置1は、同一の清掃エリアの同一の走行経路を対象とする場合に、床面洗浄作業、ワックス剥離作業、床面艶出し作業および吸引清掃作業の何れかの清掃作業を行って清掃プランを作成した後、学習走行清掃をやり直すことなく、他の清掃作業を行うための清掃プランを容易に設定することができる。従って、床面洗浄作業、ワックス剥離作業、床面艶出し作業および吸引清掃作業の間で清掃作業を容易に転換することができる。
【0155】
また、本実施形態では、清掃部5は、複数種類の清掃作業のそれぞれに対応する複数種類の清掃部材12を切り替えて使用するように構成される。一の清掃部材12を使用する一の清掃作業を伴う学習走行作業により作成された再現プランに基づいて再現制御部24が自動走行作業を行うとき、清掃部5が一の清掃部材12と異なる他の清掃部材12を使用する場合、清掃プラン変更部23は、このような他の清掃部材12を使用する他の清掃作業に対応するように再現プランを一括して変更する。
【0156】
このような構成により、自律走行作業装置1は、同一の清掃エリアの同一の走行経路を対象とする場合、学習走行清掃をやり直すことなく、清掃部材12毎に清掃作業の異なる清掃プランを容易に設定することができ、清掃部材12の変更があった場合に清掃作業を容易に転換することができる。
【0157】
また、本実施形態では、清掃作業を行わずに走行するデモ走行オプションが設定された場合、清掃プラン変更部23は、清掃データが清掃作業をオフに設定するように再現プランを一括して変更する。
【0158】
このような構成により、自律走行作業装置1は、走行データと清掃データとを含む清掃プランが事前に用意されていれば、学習走行清掃をやり直すことなく、デモ走行を容易に行うことができる。なお、デモ走行では、清掃作業を行わないので、電源部9のバッテリーの消耗を抑えることができる。
【0159】
また、本実施形態では、清掃作業の作業強度を強くする強清掃オプション(強作業オプション)または清掃作業の作業強度を弱くする弱清掃オプション(弱作業オプション)が設定された場合、清掃プラン変更部23は、それぞれ、清掃データの作業強度を強くまたは弱く設定するように再現プランを一括して変更する。
【0160】
このような構成により、自律走行作業装置1は、同一の清掃エリアの同一の走行経路を対象とする場合、学習走行清掃をやり直すことなく、清掃エリアの床面FLの汚れ状況に合わせて清掃データの強弱を容易に変更して再現プランを設定することができる。
【0161】
また、本実施形態では、自動走行清掃の清掃時間(作業時間)を高速化する時短清掃オプション(高速化オプション)または自動走行清掃の清掃時間を低速化するゆっくり清掃オプション(低速化オプション)が設定された場合、清掃プラン変更部23は、それぞれ、走行データの走行速度を速くまたは遅く設定するように再現プランを一括して変更する。
【0162】
このような構成により、自律走行作業装置1は、同一の清掃エリアの同一の走行経路を対象とする場合、学習走行清掃をやり直すことなく、清掃エリアの床面FLの汚れ状況や清掃スケジュール、清掃作業に供する時間配分に応じて、走行データの走行速度を変更して再現プランを設定することができる。
【0163】
また、本実施形態では、清掃プラン変更部23は、再現プランに基づく自動走行清掃に、走行中の洗浄液(作業液)の供給が含まれ、再現プランを一括して変更する際に走行データの走行速度が変更されるとき、洗浄液の供給水量の総量を一定にする総量一定供給オプションが設定された場合には、元の再現プランに基づく自動走行清掃で消費される洗浄液の供給水量の総量を維持するように、清掃データの洗浄液の供給水量を設定して再現プランを一括して変更する。
【0164】
このような構成により、自律走行作業装置1は、走行速度の変更に応じて洗浄液の供給水量を変更する必要が生じた場合でも、洗浄液の供給水量の総量は変更されないので、洗浄液の残量が枯渇することなく、自動走行清掃を完了することができる。従って、洗浄液不足により清掃部材12で床面FLを傷つける問題や、洗浄液不足により床面FLの清掃効果が十分に得られない問題を回避することができる。
【0165】
また、本実施形態では、清掃プラン変更部23は、再現プランに基づく自動走行清掃に、走行中の洗浄液の供給が含まれ、再現プランを一括して変更する際に走行データの走行速度が変更されるとき、洗浄液の供給水量を走行速度に追従させる速度追従供給オプションが設定された場合には、走行速度の変更の割合に応じて洗浄液の供給水量を増減させるように、清掃データの洗浄液の供給水量を設定して再現プランを一括して変更する。
【0166】
このような構成により、自律走行作業装置1は、走行速度の変更に応じて洗浄液の供給水量を変更する必要が生じた場合でも、走行速度に応じた供給水量で洗浄液を供給することができる。従って、走行速度を遅く設定した場合でも、洗浄液の枯渇により床面FLの清掃効果が完遂できない問題を回避することができる。
【0167】
また、本実施形態では、走行部3および清掃部5の発する音量を抑制する静音走行オプションが設定された場合、清掃プラン変更部23は、走行部3および清掃部5の動作を抑制するように走行データおよび清掃データを設定して再現プランを一括して変更する。
【0168】
このような構成により、自律走行作業装置1は、清掃スケジュールの変動などにより、清掃すべき商業施設の営業時間中やオフィスの就業時間中に自動走行清掃を行う必要が生じた場合には、学習走行清掃をやり直すことなく、走行部3の走行音や、清掃部材12の稼働音、吸引部14の吸引音を抑制するように再現プランを設定することができ、自律走行作業装置1が発する周囲への騒音を軽減して自動走行清掃を行うことができる。
【0169】
また、本実施形態では、再現プランの変更を制限する制限フラグが再現プランに設定されている場合、清掃プラン変更部23は、再現プランの変更を制限する。
【0170】
このような構成により、自律走行作業装置1は、走行データや清掃データにおいて変更を所望しない部分については、予め制限フラグを設定しておくことで、再現プランが一括して変更される場合でも、元の再現プランの設定を維持することができる。
【0171】
例えば、清掃プラン変更部23は、制限フラグとして、走行データの走行速度の変更を制限する旋回フラグが、再現プランの旋回走行区間のステップに設定されている場合には、旋回走行区間のステップについて走行データの走行速度を速くする変更を指示された場合でも、再現プランの作成時の走行速度を維持する。
【0172】
このような構成により、自律走行作業装置1は、清掃時間の短縮等を目的として走行速度を高速化する場合でも、旋回走行区間では高速化されないので、旋回走行区間で自動走行や自動清掃に生じる問題を事前に防ぐことができ、安全を確保して自動走行清掃を行うことができる。例えば、旋回走行区間での転倒や汚水の回収不足を抑制することができる。また、旋回走行区間での安全を図るための細かな設定について、操作者が行う手間を省くことができる。
【0173】
また、本実施形態では、清掃プラン作成部22は、再現プランの走行データにおいて、走行部3の走行軌跡の曲率半径が所定の曲率半径閾値以下の区間、または走行部3の操舵角が所定の操舵角閾値以上の区間を旋回走行区間と判定して、旋回フラグを設定する。
【0174】
このような構成により、自律走行作業装置1は、走行経路の旋回走行区間を容易に認識して予め清掃プランに設定することができる。
【0175】
なお、上記した実施形態では、パッド装着ボタン31の操作によって清掃部材12が装着されるとき、モード選択画面30に表示された清掃部材一覧80から選択された清掃部材12を、装着中の清掃部材12であると認識する例を説明したが、本発明において装着中の清掃部材12の判別手段はこの例に限定されない。他の実施形態では、清掃部材12の装着状態と未装着状態とを切り替える装着機構やその周囲に、装着中の清掃部材12を判別する機器や手段を備えてもよい。
【0176】
例えば、清掃部材12はパッドとブラシとで厚さが異なるため、清掃部材12の装着状態において装着機構の清掃部材用アクチュエータの移動量が異なる。そのため、清掃部材用アクチュエータの移動量に基づいて、制御部10等によって、清掃部材12の床面FLからの装着高さを検出することができ、この装着高さに基づいて清掃部材12がパッドかブラシかを判別し、清掃作業が湿式か乾式かを判定することができる。
【0177】
また、清掃部材12の装着機構の周囲に、清掃部材12または清掃部材12に貼付されたQRコード(登録商標)等の識別情報を撮像可能なCCD等のカメラを備えてもよい。そして、このカメラが撮像した画像に基づいて、制御部10等によって、清掃部材12またはその識別情報の画像認識を行うことで、装着中の清掃部材12を判別し、この清掃部材12に合わせた清掃作業を判定することできる。なお、清掃部材12自体の画像認識を行う場合には、清掃部材12の色や形状、厚さを判別し、その判別結果に基づいて清掃部材12の種類を判別してよい。例えば、第1洗浄パッドは赤色で形成され、第2洗浄パッドは緑色で形成され、剥離パッドは黒色で形成され、艶出しパッドは白色で形成される場合、これらのパッドを色で識別することができる。
【0178】
なお、上記した実施形態では、再現プランを一括して変更する変更オプションを選択操作するためのオプションボタン53を、データ設定画面40に表示する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、オプションボタン53を、清掃プラン変更画面70に表示しもよい。また、上記した実施形態では、自動走行清掃の対象の再現プランをデータ設定画面40で変更する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、自動走行清掃の対象の再現プランの変更を、清掃プラン変更画面70で完結させるように構成されてもよい。この場合、清掃プラン変更画面70において変更ボタン73が操作されると、データ設定画面40に移行せずに、再現プランの変更を反映させて、自動走行清掃の実行に移行するとよい。
【0179】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行作業装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、自律的に走行し自動で作業することが可能な自律走行作業装置とそれと一体的に構成した業務用の自動床面洗浄・清掃装置等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0181】
1 自律走行作業装置
2 装置本体
3 走行部
5 清掃部(作業部)
10 制御部
11 記憶部
12 清掃部材
13 洗浄液供給部
14 吸引部
22 清掃プラン作成部
23 清掃プラン変更部
24 再現制御部
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