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特許7370155漏水受け具、漏水受け構造、排水路保持具、漏水の排水路形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】漏水受け具、漏水受け構造、排水路保持具、漏水の排水路形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20231020BHJP
   E04G 23/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
E04D13/04 Z
E04G23/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019065064
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165139
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203460
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0083521(US,A1)
【文献】実開平06-001967(JP,U)
【文献】実開昭55-008267(JP,U)
【文献】実開昭61-141885(JP,U)
【文献】実開昭53-010746(JP,U)
【文献】米国特許第05172718(US,A)
【文献】特開平06-322912(JP,A)
【文献】米国特許第04633899(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00-15/07
E04G 23/00-23/08
E04G 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井からの漏水を受けることが可能な受け部が前記天井に取り付けられており、
前記受け部が受けた前記漏水を前記受け部から排出可能に、前記受け部に排水路が接続されており、
前記排水路を保持可能な保持具が構造物に対して吸盤により取り付けられており、
前記保持具の少なくとも一部が前記構造物に取り付けられた状態で前記排水路が取り外し可能に、前記排水路が前記保持具により保持されており、
前記排水路は、既設の排水管に形成されている通孔に着脱可能に接続されている、漏水受け構造。
【請求項2】
前記保持具は、
前記構造物に取り付けられる板状の基部と、
断面円弧状であり、その円弧の両端を前記基部に対して取り付けられ、前記排水路の外周面に当接して保持可能な保持部と、を備え、
前記保持部は、前記基部が前記構造物に取り付けられている状態で、前記基部から取り外し可能であり、前記基部から前記保持部が取り外されることで、前記排水路が前記保持具から取り外される、請求項1に記載の漏水受け構造。
【請求項3】
前記排水路が前記通孔から取り外された場合に、前記排水管の内部と外部との前記通孔を介した連通を遮断手段により遮断可能であり、
前記遮断手段は、前記排水路が接続されていない場合に限り前記連通を遮断する、請求項1又は2に記載の漏水受け構造。
【請求項4】
前記排水路が前記通孔から取り外された場合に、前記排水管の内部と外部との前記通孔を介した連通を遮断手段により遮断可能であり、
前記排水路は、前記通孔に取り付けられた接続具を介して接続され、
前記遮断手段は前記接続具に取り付けられることで前記連通を遮断する、請求項1又は2に記載の漏水受け構造。
【請求項5】
前記排水路が前記通孔から取り外された場合に、前記排水管の内部と外部との前記通孔を介した連通を遮断手段により遮断可能であり、
前記排水路は、前記通孔に取り外し可能に取り付けられた接続具を介して接続され、
前記遮断手段は前記接続具とは別体として設けられている、請求項1又は2に記載の漏水受け構造。
【請求項6】
天井からの漏水を受けることが可能な受け部を天井に取り付ける工程と、
受け部に取り付けられる排水路を保持可能である保持具を、前記保持具の少なくとも一部が建造物に取り付けられた状態で前記排水路が取り外し可能となるように、吸盤により前記建造物の壁又は天井に吸着固定する工程と、
前記排水路を前記受け部に取り付け、その排水路を前記保持具に保持させる工程と、
前記排水路を、既設の排水管に形成されている通孔に接続する工程と、を有する、漏水の排水路形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井の漏水箇所に取り付けられて用いられる漏水受け具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下街や地下道等の天井で漏水が生じている場合に、その漏水を受ける漏水受け具を取り付けることが行われている。このような漏水受け具として、特許文献1や特許文献2に記載の漏水受け具がある。特許文献1に記載の漏水受け具では、粘着テープを用いたり、天井に取り付けた金具等を用いたりすることで、漏水を受ける受け部を天井に固定し、その受け部にホース等の排水部材を接続し、バケツや既存の排水路へ排水可能としている。また、特許文献2に記載の漏水受け具では、床面と天井とを複数の棒で繋ぎ、その棒で囲まれた領域に水の通路を設けることで、漏水を排水している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-71669号
【文献】特開2008-285979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の漏水受け具では、粘着テープや金具等の設置及び撤去や、排水に使用するホースの取り回し、さらにはバケツの配置場所の確保といった様々な問題が生ずる。また、特許文献2に記載の漏水受け具では、排水を床に流して排水溝へ至らせるものであるため、漏水箇所から排水溝までの床が濡れ、歩行者の通行の妨げになるといった問題が生ずる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、適切に設置及び撤去が可能な漏水受け具、漏水受け構造、排水路保持具、漏水の排水路形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の構成は、漏水受け構造であって、天井からの漏水を受けることが可能な受け部が前記天井に取り付けられており、前記受け部が受けた前記漏水を前記受け部から排出可能に、前記受け部に排水路が接続されており、前記排水路を保持可能な保持具が構造物に対して吸盤により取り付けられており、前記排水路が前記保持具により保持されている。
【0007】
第1の構成では、排水路を撤去する場合に、吸盤を構造物から取り外すことで排水路を保持している保持具を取り外すことが可能であるため、排水路の撤去を容易に行うことができる。
【0008】
第2の構成は、漏水受け構造であって、天井からの漏水を受けることが可能な受け部が前記天井に取り付けられており、前記受け部が受けた前記漏水を前記受け部から排出可能に、前記受け部に排水路が接続されており、前記排水路を保持可能な保持具が構造物に対して取り付けられており、前記保持具の少なくとも一部が前記構造物に取り付けられた状態で前記排水路が取り外し可能に、前記排水路が前記保持具に保持されている。
【0009】
第2の構成では、排水路を撤去する場合に排水路を保持具から取り外せばよいため、排水路の撤去が容易になる。また、漏水のおそれがある箇所の近傍に予め保持具を取り付けておいたり、漏水が収束した場合に保持具を構造物に取り付けたままにしておいたりすることで、漏水が発生した場合に、素早く排水路を設置可能となる。
【0010】
第3の構成は、第2の構成に加えて、前記保持具は、前記構造物に取り付けられる基部と、前記基部に対して取り付けられ、前記排水路を保持可能な保持部と、を備え、前記保持部は、前記基部が前記構造物に取り付けられている状態で、前記基部から取り外し可能である。
【0011】
第3の構成では、排水路を撤去する場合に保持部を基部から取り外せばよいため、排水路の撤去が容易になる。また、漏水のおそれがある箇所の近傍に予め基部を取り付けておいたり、漏水が収束した場合に基部を構造物に取り付けたままにしておいたりすることで、漏水が発生した場合に、素早く排水路を設置可能となる。
【0012】
第4の構成は、第2の構成に加えて、前記保持具は、前記構造物に対して貼着されたシートと、前記シートに対して取り外し可能に取り付けられている、前記排水路を保持可能な保持部と、を備える。
【0013】
第4の構成では、排水路を撤去する場合に保持部をシートから取り外せばよいため、排水路の撤去が容易になる。また、漏水のおそれがある箇所の近傍に予めシートを張り付けておいたり、漏水が収束した場合にシートを構造物に貼り付けたままにしておいたりすることで、漏水が発生した場合に、素早く排水路を設置可能となる。
【0014】
第5の構成は、天井からの漏水を受けることが可能な受け部を有する漏水受け具に接続され、前記受け部が受けた前記漏水を排出可能とする排水路に対して使用される排水路保持具であって、排水路を保持可能な保持部と、保持部に取り付けられ、構造物に対して吸着可能な吸盤と、を備える。
【0015】
第5の構成の排水路保持具を用いることで、第1の構成の漏水受け構造を提供することができる。
【0016】
第6の構成は、天井からの漏水を受けることが可能な受け部を有する漏水受け具に接続され、前記受け部が受けた前記漏水を排出可能とする排水路に対して使用される排水路保持具であって、構造物に対して貼着可能なシートと、前記シートに対して取り外し可能に取り付けることができる、排水路を保持可能な保持部と、を備える。
【0017】
第6の構成の排水路保持具を用いることで、第4の構成の漏水受け構造を提供することができる。
【0018】
第7の構成は、天井に取り付けられて用いられ、その天井からの漏水を受けることが可能な漏水受け具であって、前記漏水を受けることが可能な受け部と、前記天井に貼着可能な貼着面を有するシートと、前記受け部に設けられ、シートに対して取り外し可能に取り付けることができる取付部と、を備える。
【0019】
第7の構成では、天井に凹凸があったりして取付部の形状によっては取付が困難な場合であっても、シートを張り付けることで、その取付部により天井に受け部を取り付けることができる。また、漏水のおそれがある箇所の近傍に予めシートを張り付けておいたり、漏水が収束した場合にシートを張り付けたままにしておいたりすることで、漏水が発生した場合に、素早く受け部を取り付けることができる。
【0020】
第8の構成では、第1~4のいずれかの構成に加えて、前記排水路が、予め設けられた排水管に形成されている通孔に着脱可能に接続されており、前記排水路が前記通孔から取り外された場合に、前記排水管の内部と外部との前記通孔を介した連通を遮断手段により遮断可能である。
【0021】
第9の構成は、漏水受け具であって、天井に取り付けられて用いられ、前記天井からの漏水を受けることが可能な受け部と、一端側が前記受け部に接続され、他端側が予め設けられた排水管に形成されている通孔に着脱可能に接続され、前記受け部が受けた前記漏水を前記排水管へ導入可能な排水路と、前記排水路の前記他端側が前記通孔から取り外された場合に、前記排水管の内部と外部との前記通孔を介した連通を遮断可能な遮断手段と、を備える。
【0022】
排水管に通孔を設ける場合、その通孔を開放することにより、排水管からの臭いが通行を介して外部へ漏れるおそれがある。この点、第8の構成及び第9の構成では、遮断手段を設けているため、排水管からの臭いの漏れを抑制することができる。
【0023】
第10の構成では、第9の構成に加えて前記遮断手段は、前記排水路が接続されていない場合に限り前記連通を遮断する。
【0024】
第10の構成では、排水路が接続されている場合には排水管への排水を滞りなく行うことができる。
【0025】
第11の構成では、排水路は、通孔に取り付けられた接続具を介して接続され、遮断手段は接続具に取り付けられることで連通を遮断する。
【0026】
第12の構成では、排水路は、通孔に取り外し可能に取り付けられた接続具を介して接続され、遮断手段は接続具とは別体として設けられている。
【0027】
第11の構成及び第12の構成では、遮断手段の形状を接続具の形状に合わせておけばよいため、汎用性を向上させることができる。
【0028】
第13の構成では、第9~12のいずれかの構成に加えて、排水路を保持可能な保持部と、保持部に取り付けられ、構造物に対して吸着可能な吸盤と、をさらに備える。
【0029】
第13の構成では、第1の構成の効果を第9~12のいずれかの構成に付与することができる。
【0030】
第14の構成では、第9~12のいずれかの構成に加えて、排水路を保持可能な保持具をさらに備え、保持具は、その保持具の少なくとも一部が構造物に取り付けられた状態で排水路を取り外し可能である。
【0031】
第14の構成では、第2の構成の効果を第9~12のいずれかの構成に付与することができる。
【0032】
第15の構成は、漏水の排水路形成方法であって、天井からの漏水を受けることが可能な受け部を天井に取り付ける工程と、予め設けられた排水管における、その排水管に予め形成されている通孔を介した外部と内部との連通を、遮断状態から開放状態にする工程と、受け部に一端が取り付けられ受け部が受けた漏水を通過させる排水路の他端を、通孔に接続する工程と、を有する。
【0033】
第15の構成では、第9~14のいずれかの構成を有する漏水受け具を、適切に設置することができる。
【0034】
第16の構成は、漏水の排水路形成方法であって、天井からの漏水を受けることが可能な受け部を天井に取り付ける工程と、受け部に取り付けられる排水路を保持可能であり、吸盤を備える保持具を、建造物の壁又は天井に吸着固定する工程と、排水路を受け部に取り付け、その排水路を前記保持具に保持させる工程と、を有する。
【0035】
第16の構成では、第1の構成に関する受け構造を、適切に設置することができる。
【0036】
第17の構成では、第15又は第16の構成に加えて、受け部を天井に取り付ける工程では、受け部を吸盤により天井に取り付ける。
【0037】
第17の構成では、天井が漏水により濡れている場合でも、受け部を天井に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】漏水受け具全体の構成を示す図である。
図2】受け部の上側からの斜視図である。
図3】受け部の下側からの斜視図である。
図4】受け部の平面図である。
図5】受け部の正面図である。
図6】受け部の背面図である。
図7】A-A線断面図である。
図8】B-B線断面図である。
図9】取付部を構成する吸盤及び雄ネジ部の斜視図である。
図10】取付部を構成する吸盤及び雄ネジ部の正面図である。
図11】取付部を構成するカバー部の斜視図である。
図12】取付部を構成するカバー部の正面図である。
図13】取付部全体の斜視図である。
図14】取付部全体の正面図である。
図15】受け部の漏水箇所への取り付け方を示す図である。
図16】接続具の斜視図である。
図17】接続具の平面図である。
図18】接続具を排水管の通孔に取り付けた状態を示す図である。
図19】接続具から排水路を取り外した場合を説明する図である。
図20】保持具について説明する図である。
図21】第2実施形態における受け部の漏水箇所への取り付け方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0040】
<第1実施形態>
本実施形態に係る漏水受け具10は、図1に示すように、天井100の漏水箇所に受け部20が取り付けられ、受け部20が天井100からの漏水を受ける。受け部20には、排水路40の一端側が接続具50を介して接続されており、受け部20が受けた水はその排水路40中を通過する。排水路40の他端側は既設の排水管200の側面に設けられた通孔201に接続具50を介して接続されており、排水路40中を通過した水は、排水管200へと排水される。漏水受け具10は、このように設置されることで、漏水受け構造として機能する。なお、排水路40は、複数の円筒形のパイプ等をつなぎ合わせたものであり、周知のものであるため、具体的な説明は省略する。
【0041】
まず、受け部20の具体的な構造について、図2~8を参照して説明する。この受部20は、例えば、硬質の樹脂であるポリプロピレンで形成されている。受け部20は、上面視にて角丸正方形である受け面21を備えている。この受け面21は厚みが均一であり、4辺のそれぞれから中央下方へ向けて傾斜している。受け面21の中心には、上下方向について垂直に下方へ突出して設けられた円筒形の排出口22が設けられている。この排出口22の底には、縮径された内側フランジ23が設けられている。
【0042】
受け面21の一対の辺の中心のそれぞれから排出口22へ向けて、及び、4隅のそれぞれから排出口へ向けて、下方へ凹んだ排水溝24が設けられている。この排水溝24の断面形状は、長手方向及び幅方向においてが均一な矩形である。
【0043】
受面21の、排出口22と、排水溝24が設けられていない辺のそれぞれとの間には、上下方向について垂直に貫通した円筒状の取付孔25が設けられている。この取付孔25の上端には、縮径された内側フランジ26が設けられている。受け面21の外周の各辺には、各辺に沿って上方へ向けて垂直に起立した、厚み及び高さが均一な立設壁27が設けられている。すなわち、受け面21の平行な一対の辺に設けられた立設壁27は、互いに平行な平面を構成しており、受面21の角の部分に設けられた立設壁27は、その角の形状に沿った曲面を構成している。この立設壁27の上端には、外側へ向けて均一に拡幅された、厚みが均一なフランジ部28が設けられている。
【0044】
以上のように構成される受け部20は、取付部30により天井100へ取り付けられる。この取付部30の構造について、図9~14を参照して説明する。取付部30は、塩化ビニールで形成された、中心が窪んだ円形の吸盤31を備えている。この吸盤31の外径は、受け部20の取付孔25に設けられた内側フランジ26の内径よりも小さい。この吸盤31の窪んだ側の反対側の中心には、円筒の側面に螺旋状の凸部が設けられた雄ネジ部32が接続されている。
【0045】
この取付部30は、円筒形の筒部33と、その筒部33の一方の開口を共有し、その反対側の端には底よりも径の小さい開口を有する略円錐台筒状の円錐筒部34と、筒部33の他方の開口の周囲に拡径して設けられたフランジ部35と、そのフランジ部35の筒部33側とは反対側に突出した円環状の環状凸部36とを有するカバー部37を備えている。フランジ部35の外径は、受け部20の取付孔25の内径よりも小さく、且つ、その取付孔25に設けられた内側フランジ26の内径よりも大きい。環状凸部36の外径は、吸盤31の直径よりもやや小さい。また、円錐筒部34の側面には、周方向に交互に連続する、軸方向に延びた凹凸が設けられている。カバー部37の円錐筒部34における小径側の開口近傍には、縮径された内側フランジ38が設けられており、その内側フランジ38の内周面には、螺旋状に連続する雌ネジ部39が形成されている。その雌ネジ部39の径は雄ネジ部32の螺旋状の凸部と係合する径である。
【0046】
以上のように構成される取付部30を用いて、天井100への受け部20の取り付け方について図15を参照して説明する。まず、吸盤31に接続された雄ネジ部32を、受け部20の取付孔25に通す。続いて、カバー部37を取付孔25に下側から入れ、雄ネジ部32を雌ネジ部39に係合させて、カバー部37を回転させる。カバー部37を回転させることでカバー部37は上昇し、フランジ部35が内側フランジ25の下面に当接し、環状凸部36が吸盤31に当接する。フランジ部35が内側フランジ25の下面に当接し、環状凸部36が吸盤31に当接した時点で、カバー部37の回転を一旦停止し、受け部20の上面が天井100の漏水箇所101に対向するようにして、吸盤31を天井100に吸着させる。そして、カバー部37をさらに回転させると、その回転に伴って雄ネジ部32が雌ネジ部9に引き込まれ、吸盤31がカバー部37側へと引っ張られる。これにより、吸盤31と天井100との間の体積が大きくなってその空間の気圧が低下し、吸盤31の吸着力が向上して、天井100に受け部20を取り付けることができる。
【0047】
排水路40の受け部20に接続される側、及び、排水管の通孔に接続される側のそれぞれは、接続具50を介して接続される。この接続具50は公知のものであるため、詳細な形状を省略しつつ、図16及び17を参照して説明する。なお、本実施形態において、接続具50は、角筒形の排水管200の側面に設けられた円形の通孔201に取り付けるものとして説明する。
【0048】
接続具本体51は、全体が略円筒状であり、その一部の外形は、接続される排水路40の内径と略等しい。また、接続具本体51の長手方向の中央近傍の外周面には、外周面から隆起して周方向に旋回する螺旋状であるネジ部(図示せず)が設けられている。また、排水路40に接続される側とは反対側の端部には、拡径されたフランジが設けられている。
【0049】
ナット体52は、全体の形状が接続具本体51よりも短い円筒形であり、内面には、接続具本体51のネジ部と係合する内ネジ部(図示せず)が設けられている。スペーサ体53は、軸方向に延びる円筒状であり、一方の端部には、拡径されたフランジが設けられている。止水体54は、弾性を有しており、円筒形である。
【0050】
以上のように構成される接続具50は、図18に示すように、排水管200の内部に止水体54が位置するようにして、ナット体52を回してスペーサ体53を排水管200の通行201の周囲に押し付けることで、取り付けられる。この接続具50から排水路40が取り外された場合、図19に示すように、接続具50の接続具本体51には有底筒状の栓55が取り付けられる。この栓55は、接続具50に取り付けられる排水路40と内径が略等しくなっており、接続具50に取り付けられることで、排水管200の外部と内部との通孔201を介した連通を遮断する遮断手段として機能する。なお、漏水が再度発生し、漏水受け具10の再設置が必要となった場合等には、栓55を外して接続具50に排水路40を接続し、漏水受け具10を設置する。
【0051】
受け具20と排水管200とを繋ぐ排水路40は、保持具60により、天井100や壁等に取り付けられる。この保持部60について、図20を参照して説明する。保持具60は、保持部61と基部62とを備えている。保持部61は、断面円弧状の部材であり、その内径は、排水路40の外径と略等しい。基部62は、板状の部材であり、保持部61の円弧の両端を取り外し可能に取り付けることができるように構成されている。保持部61の内周面に排水路40の外周面が当接するようにしておき、保持部61の円弧の両端を基部62に取り付けることで、保持具60により排水路40が保持される。
【0052】
この保持具60は、例えば基部62に吸盤(図示せず)を設けておき、その吸盤により構造物の壁面等に取り付けられる。もしくは、基部62を構造物の壁面等に接着したり粘着テープで張り付けたりする。こうすることで、基部62を構造物の壁面等に残した状態で、保持部61を取り外すことで、保持具60から排水路40を取り外すことができる。
【0053】
上記構成により、本実施形態に係る漏水受け具は、以下の効果を奏する。
【0054】
・受け部20を吸盤31を備える取付部30により天井100へ取り付けるものとしているため、漏水により天井100が濡れている場合にも、天井100に漏水受け具10を取り付けることができ、且つ、その取り付けの際に天井100を傷つけないため、新たな漏水の発生を抑制することができる。加えて、漏水受け部10の位置を変更しようとする場合においても、粘着テープなどの取付手段を取り換えたり、天井100の別の箇所に穴を開けたりする必要が無いため、漏水受け部10の位置の変更を容易に行うことができる。
【0055】
・吸盤31は、濡れた箇所に吸着させる場合には、乾いた場所に吸着させる場合よりも吸着力が向上するのが一般的である。一方、受け部20は、漏水が継続する場合には、その漏水により荷重がかかる。したがって、吸盤31により受け部20を取り付けることで、吸着力がより必要な漏水が継続する場合において、より強力な吸着力を得ることができ、且つ、漏水が停止して天井100が乾いた場合、すなわち漏水受け具10が不要となった場合には、吸着力が低下して漏水受け具10の取り外しを容易にすることができる。
【0056】
・受け部20の排出口22を排水路40を介して既設の排水管200と接続しているため、受け部20が受けた漏水を適切に排出することができる。
【0057】
・受け部20を排出口22を囲むように複数の取付部30により取り付けているため、取付部30に係る荷重を分散させることができ、受け部20の落下を抑制することができる。また、取付部30を天井100の漏水箇所201の近く、すなわち湿っている可能性の高い位置に取り付けるものとしているため、吸盤31の吸着力を向上させることができる。
【0058】
・排水路40を撤去する場合に保持部61を基部62から取り外せばよいため、排水路40の撤去が容易になる。また、漏水のおそれがある箇所の近傍に予め基部62を取り付けておいたり、漏水が収束した場合に基部62を構造物に取り付けたままにしておいたりすることで、漏水が発生した場合に、素早く排水路40を設置することができる。加えて、保持部61や排水路40を取り外すことができるため、漏水が発生しない場合には、歩行者等の通行の妨げ等となることを抑制でき、基部62を壁面に残したとしても目立たないため、通路の美観を損なわない。
【0059】
・排水管200に通孔201を設ける場合、その通孔201を開放することにより、排水管200からの臭いが通孔201を介して外部へ漏れるおそれがある。この点、本実施形態では、排水路40を取り外した場合に接続具50に栓55を取り付けるものとしているため、排水管200からの臭いの漏れを抑制することができる。
【0060】
<第2実施形態>
本実施形態では、受け部20の天井100への取り付け方の一部が第1実施形態と異なっている。本実施形態における受け部20の天井100への取り付け方について、図21を参照して説明する。
【0061】
天井100の漏水箇所101の周囲には、受け部20が取り付けられる前に、シート70が貼り付けられる。このシート70は、ポリエチレンテレフタレート、ウレタンやシリコーン等の樹脂で形成された気体非透過性のもの、若しくは、金属で形成された気体非透過性のものであり、素材によっては透明であったり、天井100と同様の意匠が施されていたりする。シート70の天井100と対向する側とは反対の側は、平滑な平面となっている。また、湾曲した天井100に沿わせて貼着可能とすべく、曲面に沿って変形可能であることが必要となる場合もあるため、湾曲させることが可能である程度の厚みであることが望ましい。加えて、素材として各種の樹脂を例示したように、気体非透過性の機能については、厳密なものでなく一部の気体の通過が可能なものであってもよいし、恒久的なものでなくてもよい。すなわち漏水が発生している間において、吸盤が外れる事態を抑制できる程度のものであればよい。そして、そのシート70に取付部30の吸盤31を吸着させることで、受け部20を天井100に取り付ける。
【0062】
なお、保持具60の基部62を構造物の壁面等に取り付けるうえで吸盤を用いるものとした場合に、受け部20を天井100に取り付ける場合と同様に、シート70を用いるものとしてもよい。
【0063】
上記構成により、本実施形態に係る漏水受け具10は、第1実施形態に係る漏水受け具が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0064】
・天井100に凹凸があったりして取付部30の吸盤31による取り付けが困難であっても、シート70を張り付けることで、その吸盤31により天井100に受け部20を取り付けることができる。また、漏水のおそれがある箇所の近傍に予めシート70を張り付けておいたり、漏水が収束した場合にシート70を張り付けたままにしておいたりすることで、漏水が発生した場合に、素早く受け部20を取り付けることができる。
【0065】
・受け具20や排水路40を取り外した場合に、天井や壁面にはシート70が残るのみであるため、漏水が発生しない場合には、歩行者等の通行の妨げ等となることを抑制できる。加えて、シート70は一般的には目立たないものであるため、天井や壁面等にシート70を残した場合でも、通路の美観を損なわない。
【0066】
<変形例>
・実施形態では、吸盤31を吸着可能なシート70を天井100に貼り付けるものとしたが、シート70を鉄板などの磁着可能なものとし、吸盤31の代わりに取付部30に磁石を設けることで、受け部20を取り付けるものとしてもよい。また、排水路40を保持する保持具60についても、磁石を設けるものとし、壁面や天井100等に貼り付けた鉄板等に磁着させるものとしてもよい。
【0067】
・実施形態では、接続具50を介して排水路40を受け部20や通孔201に接続するものとしたが、少なくとも一方において接続具50を用いることなく、排水路40を直接接続するものとしてもよい。通孔201において、排水路40を直接接続するものとした場合には、その通孔201を閉塞可能な遮蔽手段を別途設ければよい。
【0068】
・実施形態では、接続具50に栓55を取り付けることで、通孔201の連通を遮断するものとしたが、接続具50の内部に外部から内部への水の流入を許容し、且つ、内部から外部への空気の流出を阻止する弁等を設けるものとしてもよい。また、その弁について、排水路を接続した場合に開き、排水路を取り外した場合に閉塞する構造としてもよい。
【0069】
・実施形態では、受け部20の排出口22に接続具50を介して排水路40を接続するものとしたが、受け部20と排水路40を一体に形成するものとしてもよい。また、受け部20と所定の長さの排水路40とを一体に形成し、必要に応じてその排水路40を延長するように、別体の排水路40を接続することで、排水路40全体を構成するものとしてもよい。
【0070】
・実施形態で示した保持具60の構造はあくまで一例であって、種々の変更が可能であり、基部62に相当する部分を壁面等に取り付けた状態を維持しつつ、保持部61に相当する部材による排水路40の保持状態と被保持状態とを変更できる構造であればよい。たとえば、排水路40を天井100や壁から離れた位置で保持する必要がある場合には、天井100に基部61に相当するフック状の部材を取り付けておき、その部材に取り付けたワイヤー等で排水路40を吊り下げたりしてもよい。また、その基部61に相当する部材等を吸盤で壁面や天井100に取り付けるものとし、容易に設置及び撤去ができるものしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
漏水受け具…10、受け部…20、受け面…21、排出口…22、立設壁…27、取付部…30、吸盤…31、排水路40、接続具…50、栓…55、保持具…60、保持部…61、基部…62、シート…70、天井…100、排水管…200、通孔…201、

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