(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】光伝送装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2019076532
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏佳
(72)【発明者】
【氏名】青木 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝市
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-108684(JP,A)
【文献】特開2018-136437(JP,A)
【文献】特開2001-244689(JP,A)
【文献】特開2007-156461(JP,A)
【文献】特開2006-003902(JP,A)
【文献】特開2005-316484(JP,A)
【文献】特開2008-090091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0049348(US,A1)
【文献】特開2016-006927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0097527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/43
H01R 13/40 - 13/533
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抜き差しが可能な光モジュールが搭載された光伝送装置であって、
前記光モジュールは、
1又は複数の光サブアセンブリと、
前記1又は複数の光サブアセンブリを制御する1又は複数の制御回路と、
第1のケース及び第2のケースを含む、筺体と、
前記1又は複数の光サブアセンブリと前記第1のケースとの間で、前記1又は複数の光サブアセンブリ及び前記第1のケースそれぞれと物理的に接して配置される放熱材と、
を備
え、
前記第1のケースは、前記1又は複数の制御回路の形状に応じた凸と、前記1又は複数の光サブアセンブリの形状に応じた凹と、を有し、
前記凸は、前記1又は複数の制御回路と対向する位置に配置され、
前記第1のケースは、前記1又は複数の制御回路及び前記1つ又は複数の光サブアセンブリを覆い、
前記筺体は、前記第1のケース及び前記第2のケースが嵌合されることにより、前記筺体の内部に、前記1又は複数の光サブアセンブリと、前記1又は複数の制御回路と、を格納し、
前記第1のケースの材料は、銅であり、前記第2のケースの材料より熱伝導率が高
く、
前記光伝送装置は、前記第1のケースとの接合箇所にヒートシンクを備え、
前記第1のケースは、前記ヒートシンクと1又は複数の制御回路との間に位置する、
ことを特徴とする、
光伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の
光伝送装置であって、
前記第2のケースの材料は、亜鉛合金、アルミニウム合金、及びマグネシウム合金からなる群より選択される1である、
ことを特徴とする、
光伝送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
光伝送装置であって、
前記光モジュールは、前記1又は複数の制御回路と前記第1のケースとの間に、前記1又は複数の制御回路及び前記第1のケースそれぞれと物理的に接して配置される、他の放熱材を、
さらに備える、
光伝送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の
光伝送装置であって、
前記1又は複数の制御回路は前記第1のケースと物理的に接触している、
ことを特徴とする、
光伝送装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の
光伝送装置であって、
前記第1のケースの上表面のうち前記ヒートシンクと接合する部分の表面粗さは、前記第2のケースの外表面の表面粗さより低い、
ことを特徴とする、
光伝送装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の
光伝送装置であって、
前記第1のケースの上表面のうち前記ヒートシンクと接合する部分の平面度は、前記第2のケースの外表面の平面度より高い、
ことを特徴とする、
光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及び光伝送装置に関し、特に、簡便な方法で放熱性を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光送信機能、又は/及び光受信機能を有する光モジュールが用いられている。かかる光モジュールは、光伝送装置に搭載されるのが一般的である。搭載するための作業工程に鑑みて、かかる光モジュールに、光伝送装置に対して抜き差し可能なプラガブルモジュールが広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光送信機能や光受信機能を実現するために、一般に、光モジュールは、1又は複数の光サブアセンブリ(OSA:Optical SubAssembly)を備えている。また、かかる光モジュールは、1又は複数の制御回路(例えばIC)をさらに備え、1又は複数の制御回路は光サブアセンブリを駆動及び制御する。
【0005】
特許文献1に、内部で発生する不要な電磁波を遮蔽し、また内部で発生する空洞共振を低減するために金属の箱型ケースを備える光送受信機が開示されている。特許文献1に開示の技術では、箱型ケースは、上部ケース100及び下部ケース101を含んで構成される。上部ケース100及び下部ケース101は、加工性や低コストの観点から、ダイカストで一体成型されており、その材料には亜鉛合金又はアルミニウム合金などが用いられる。
【0006】
光モジュールが駆動されるとき、1又は複数の光サブアセンブリ及び1又は複数の制御回路は熱を発生する。それゆえ、光モジュールから搭載される光伝送装置へ、発生する熱を放出する必要がある。光モジュールは、1又は複数の光サブアセンブリ及び1又は複数の制御回路を格納する筺体を備えており、発生する熱は筺体より光伝送装置へ放熱される。放熱性を向上させるために、筺体は金属製など熱伝導率が比較的高い材質で形成され、光伝送装置は光モジュールとの接合箇所にヒートシンクを備えている。近年、光モジュールの高機能化に伴い高密度実装が行われている。光モジュールの発熱量も増大している。それに応じて、従来の箱型ケースでは発生する熱を十分に外部へ放熱できなくなっているとの問題が生じている。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、低コストで放熱性が向上される、光モジュール及び光伝送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る光モジュールは、1又は複数の光サブアセンブリと、前記1又は複数の光サブアセンブリを制御する1又は複数の制御回路と、第1のケース及び第2のケースを含む、筺体と、を備える、光モジュールであって、前記筺体は、前記第1のケース及び前記第2のケースが嵌合されることにより、前記筺体の内部に、前記1又は複数の光サブアセンブリと、前記1又は複数の制御回路と、を格納し、前記第1のケースの材料は、前記第2のケースの材料より熱伝導率が高い、ことを特徴とし、前記第1のケースとの接合箇所にヒートシンクを備える光伝送装置に抜き差しが可能である。
【0009】
(2)上記(1)に記載の光モジュールであって、前記第1のケースの材料は銅であってもよい。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に記載の光モジュールであって、前記第2のケースの材料は、亜鉛合金、アルミニウム合金、及びマグネシウム合金からなる群より選択される1であってもよい。
【0011】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記1又は複数の制御回路と前記第1のケースとの間に、前記1又は複数の制御回路及び前記第1のケースそれぞれと物理的に接して配置される、第1の放熱材を、さらに備えていてもよい。
【0012】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記1又は複数の光サブアセンブリと前記第1のケースとの間に、前記1又は複数の光サブアセンブリ及び前記第1のケースそれぞれと物理的に接して配置される、第2の放熱材を、さらに備えていてもよい。
【0013】
(6)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記1又は複数の光サブアセンブリ及び前記1又は複数の制御回路は前記第1のケースと物理的に接触していてもよい。
【0014】
(7)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記第1のケースの上表面のうち前記ヒートシンクと接合する部分の表面粗さは、前記第2のケースの外表面の表面粗さより低くてもよい。
【0015】
(8)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光モジュールであって、前記第1のケースの上表面のうち前記ヒートシンクと接合する部分の平面度は、前記第2のケースの外表面の平面度より高くてもよい。
【0016】
(9)本発明に係る光伝送装置は、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の光モジュールが搭載される、光伝送装置であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、低コストで放熱性が向上される、光モジュール及び光伝送装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る光モジュールの外観図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る光伝送装置と光モジュールとの接合箇所を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る光モジュールの構成を示す斜視図である
【
図5】本発明の実施形態に係る上ケース又は下ケースに用いる材料の特性を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る上ケースの内壁熱流束を示す図である。
【
図7】関連技術に係る上ケースの内壁熱流束を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る光伝送装置1及び光モジュール2の構成を示す模式図である。光伝送装置1は、プリント回路基板11とIC12を備えている。光伝送装置1は、例えば、大容量のルータやスイッチである。光伝送装置1は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。光伝送装置1に、複数の光モジュール2が搭載されており、光モジュール2より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、IC12などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、プリント回路基板11を介して、該当する光モジュール2へそのデータを伝達する。
【0021】
光モジュール2は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバである。光モジュール2は、プリント回路基板21と、光ファイバ3Aを介して受信する光信号を電気信号に変換する光受信モジュール23Aと、電気信号を光信号に変換して光ファイバ3Bへ送信する光送信モジュール23Bと、を含んでいる。プリント回路基板21と、光受信モジュール23A及び光送信モジュール23Bとは、それぞれフレキシブル基板22A,22B(FPC)を介して接続されている。光受信モジュール23Aより電気信号がフレキシブル基板22Aを介してプリント回路基板21へ伝送され、プリント回路基板21より電気信号がフレキシブル基板22Bを介して光送信モジュール23Bへ伝送される。光モジュール2と光伝送装置1とは電気コネクタ5を介して接続される。光受信モジュール23Aや光送信モジュール23Bは、プリント回路基板21に電気的に接続され、光信号/電気信号を電気信号/光信号にそれぞれ変換する。プリント回路基板21は、光受信モジュール23Aより伝送される電気信号を制御する制御回路(例えばIC)や、光送信モジュール23Bへ伝送する電気信号を制御する制御回路(例えばIC)を備えている。
【0022】
当該実施形態に係る伝送システムは、2個以上の光伝送装置1と2個以上の光モジュール2と、1個以上の光ファイバ3(図示せず:例えば光ファイバ3A,3B)を含む。各光伝送装置1に、1個以上の光モジュール2が接続される。2個の光伝送装置1にそれぞれ接続される光モジュール2の間を、光ファイバ3が接続している。一方の光伝送装置1が生成した送信用のデータが接続される光モジュール2によって光信号に変換され、かかる光信号を光ファイバ3へ送信される。光ファイバ3上を伝送する光信号は、他方の光伝送装置1に接続される光モジュール2によって受信され、光モジュール2が光信号を電気信号へ変換し、受信用のデータとして当該他方の光伝送装置1へ伝送する。
【0023】
図2は、当該実施形態に係る光モジュール2の外観図である。当該実施形態に係る光モジュール2は、QSFP-DD(MSA規格)に適応しており、光モジュール2の伝送レートは400Gbit/sである。
図2に示す通り、光モジュール2は、筺体100を備える。筺体100は、上ケース101(第1のケース)及び下ケース102(第2のケース)を含む。
【0024】
図3は、当該実施形態に係る光伝送装置1と光モジュール2との接合箇所200を示す模式断面図である。光伝送装置1は、光モジュール2の上ケース101との接合箇所200にヒートシンク30を備えている。光モジュール2が光伝送装置1に搭載されると、光伝送装置1と光モジュール2との接合箇所200において、上ケース101とヒートシンク30とが物理的に接することとなる。なお、光モジュール2は、光ファイバへ接続される側の端部に、プルタブ50をさらに備え、光モジュール2を光伝送装置1に抜き差しする際に、ユーザはプルタブ50を利用すればよい。特に、光モジュール2を抜く(除去)する際に、プルタブ50は有用である。
【0025】
図4は、当該実施形態に係る光モジュール2の構成を示す斜視図である。上ケース101と下ケース102とが分離された状態で、内部に格納される主要な部品がそれぞれ示されている。簡単のために、主要な部品のみを示しており、それ以外の部品は図示を省略している。
図4に示す通り、光モジュール2は、2個の光サブアセンブリ104,105(1又は複数の光サブアセンブリ)を備えている。
図1に示す光受信モジュール23Aは、一般に1又は複数の光サブアセンブリを備えるが、ここでは、1個の光サブアセンブリ104を備えている。光サブアセンブリ104は、4個の100Gbit/s級(より具体的にはPAM4信号による50GBaud級)の受信素子を備えたROSA(Receiver Optical SubAssembly)である。すなわち、光サブアセンブリ104は4個または4波の光入力とそれに対応した4チャンネルの電気出力を備えている。
図1に示す光送信モジュール23Bは、一般に1又は複数の光サブアセンブリを備えるが、ここでは、1個の光サブアセンブリ105を備えている。光サブアセンブリ105は、100Gbit/s級(より具体的にはPAM4信号による50GBaud級)の発光素子を備えたTOSA(Transmitter Optical SubAssembly)である。すなわち、光サブアセンブリ105は4チャンネルの電気入力とそれに対応した4個または4波の光出力を備えている。光サブアセンブリ104,105の筐体は箱型である。
【0026】
光モジュール2は、プリント回路基板21上に配置される制御用IC106,107をさらに備える。ここで、制御用IC106,107が、1又は複数の光サブアセンブリを制御する1又は複数の制御回路である。具体的には、制御用IC106はDSP(Digital Signal Processor)であり、制御用IC107はドライバICである。プリント回路基板21はさらに図示しない電気部品を有している。プリント回路基板21は下ケース102に格納される。光モジュール2は、放熱シート111,112,113,114をさらに備える。放熱シート111,112はそれぞれ、制御用IC106,107の上面に貼付される。ここで、放熱シート111,112は、1又は複数の制御回路と第1のケースとの間に、1又は複数の制御回路及び第1のケースそれぞれと物理的に接して配置される、第1の放熱材である。放熱シート113,114はそれぞれ、光サブアセンブリ104,105のうちボックス型筺体の上面に貼付される。すなわち、放熱シート113,114はそれぞれ、光サブアセンブリ104,105の上面の少なくとも一部に貼付される。ここで、放熱シート113,114は、1又は複数の光サブアセンブリと前第1のケースとの間に、1又は複数の光サブアセンブリ及び第1のケースそれぞれと物理的に接して配置される、第2の放熱材である。
【0027】
筺体100は、上ケース101及び下ケース102が嵌合されることにより、筺体100の内部に、1又は複数の光サブアセンブリ(ここでは、光サブアセンブリ104,105)と、1又は複数の制御回路(制御用IC106,107)と、を格納する。上ケース101及び下ケース102が嵌合される状態では、放熱シート111,112,113,114は、上ケース101の内側(下側)の表面と物理的に接触する。上ケース101の内側(下側)の表面が放熱シート111,112,113,114を介して光サブアセンブリ104,105及び制御用IC106,107と物理的に接触するよう、光サブアセンブリ104,105及び制御用IC106,107の形状に応じて上ケース101の内側の表面は凸凹に加工される。放熱シート111,112,113,114は、熱伝導率の高いフィラーを含むシリコン系又はアクリル系などの材料によって形成される熱伝導シートであり、駆動時に光サブアセンブリ104,105及び制御用IC106,107に発生する熱を上ケース101に伝導させるための放熱材である。放熱材は放熱シートに限定されることはなく、放熱グリスであってもよい。なお、上ケース101と下ケース102とは、取付ねじ125によって固定される。
【0028】
当該実施形態に係る光モジュール2の主な特徴は、上ケース101(第1のケース)の材料は、下ケース102(第2のケース)の材料より熱伝導率が高いことにある。上ケース101の材料は銅が望ましい。下ケース102の材料は、亜鉛合金、アルミニウム合金、及びマグネシウム合金からなる群より選択される1が望ましい。上ケース101の材料が下ケース102の材料より熱伝導率が高いことにより、上ケース101は放熱性が重視される部材となっている。その結果、当該実施形態に係る光モジュール2が光伝送装置1に装着され光モジュール2が駆動される場合に、光モジュール2の内部で発生した熱を、熱伝導率の高い上ケース101を介して光伝送装置1のヒートシンク30へより放熱することができるとの格別の効果を奏する。
【0029】
図5は、当該実施形態に係る上ケース101又は下ケース102に用いる材料の特性を示す図である。2つのアルミニウム合金と亜鉛合金は下ケース102の材料であり、銅は上ケース101の材料である。アルミニウム合金と亜鉛合金との横に合金の種類をカッコの中に示している。
図5に示す通り、上ケース101の材料(銅)の熱伝導率は下ケース102の材料の熱伝導率よりも高い。さらに加工方法については、上ケース101は金属粉末射出成型(Metal Injection Molding:MIM)又は切削により、下ケース102はダイカスト又は切削により、それぞれ形成される。なお、
図5で示す亜鉛合金の種類は一例であり、他にもZAMAC3、ZAMAK5、ZDC1、ZDC2等も使われることがある。これらと比べて、銅の熱伝導率はより高い。
【0030】
銅は、亜鉛合金やアルミニウム合金などと比べて加工工程は高コストとなるが、熱伝導率が高く放熱性に優れている。当該実施形態では、上ケース101の材料を銅とすることにより、ヒートシンク30への放熱性を高めることができている。これに対して、下ケース102の材料を、亜鉛合金、アルミニウム合金、又はマグネシウム合金のいずれかとすることにより、放熱性よりも加工工程の低コストを優先させた構造となる。言い換えれば、上ケース101の材料及び下ケース102の材料をともに銅とするよりも低コストが実現される。
【0031】
図6は、当該実施形態に係る上ケース101の内壁熱流束を示す図である。
図7は、関連技術に係る上ケース201の内壁熱流束を示す図である。前述の通り、当該実施形態に係る上ケース101は銅を用いて形成されている。これに対して、関連技術に係る上ケース201は亜鉛合金(ZAMAK3)を用いて形成されている。関連技術に係る光モジュールは、上ケース201の構成以外は当該実施形態に係る光モジュール2と同じ構成をしている。
図6及び
図7はともに、上ケース主要部の内壁熱流束を計算機によりシミュレーションをした結果を示している。関連技術に係る上ケース201の内壁では、制御用IC106,107の形状を認識することができる。制御用IC106,107で発生した熱が上ケースの内壁全体へ流れ出ておらず、発生した熱が制御用IC106,107の上方で局在している。これに対して、当該実施形態に係る上ケース101の内壁では、制御用IC106,107の形状をはっきりと認識できないほどに、制御用IC106,107で発生した熱が上ケースの内壁全体へ流れ出ている。関連技術に係る光モジュールと比べて、当該実施形態に係る光モジュール2の内部で発生する熱が外部へより放熱されていることが分かる。
【0032】
さらに、上ケース101とヒートシンク30との間の伝熱性を向上させるために上ケース101の表面を研磨し平面度を高めることや表面粗さをより平滑(低減)させても良い。ここで、平面度とは、平面形体の幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさである。また、表面粗さとは、部品の加工面の状態(凹凸)を表すものであり、高さ、深さ、間隔が異なる山、谷が連続する周期的な形状の粗さの度合いである 。下ケース102についてもダイカスト成型後に表面研磨などにより平面度を高めることや表面粗さをより平滑にすることも可能だが、コスト面で非常に不利となる。一方、上ケース101は下ケース102と比べて加工コストが増加する銅を用いており、さらに表面研磨をすることで加工コストは増加するが、表面研磨をしていない亜鉛合金のダイカストと比べると大幅に放熱性を向上させることが可能となり、低消費電力を実現することが可能となる。ここでの上ケース101の上表面のうちヒートシンク30と接合する部分の表面粗さは下ケース102の外表面より低く、平面度については高い状態となっている。
【0033】
以上、本発明の実施形態に係る光モジュール、光伝送装置、及び光伝送システムについて説明した。本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能であり、本発明を広く適用することができる。上記実施形態で説明した構成を、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【0034】
上記実施形態では、光モジュール2はQSFP-DDに適応しているが、これに限定されることはなく、他の規格に適応していてもよい。高機能化・高密度実装が求められる規格において、本発明は格別の効果を奏する。
【0035】
上記実施形態では、上ケース101(第1のケース)の材料は銅であるとしたが、これに限定されることなく、下ケース102(第2のケース)の材料の熱伝導率より高い材料であれば、他の材料を用いて上ケース101が形成されていてもよい。例えば、銅タングステン合金(CuW)である。上記実施形態では、制御回路はDSP及びドライバICとしたが、これに限定されることなく他の構成であってもよい。
【0036】
上記実施形態では、放熱シート111,112は、制御用IC106,107の上面と上ケース101の下面とにそれぞれ物理的に接して配置され、放熱シート113,114は、光サブアセンブリ104,105の上面と上ケース101の下面とにそれぞれ物理的に接して配置されるが、これに限定されることはない。1又は複数の光サブアセンブリ及び1又は複数の制御回路は第1のケースと物理的に接触していてもよく、1又は複数の光サブアセンブリ及び1又は複数の制御回路は第1のケースと他の物質を介して熱的に接続されていてもよい。なお、ここで他の物質には空気などの気体は含まないものとする。
【0037】
上記実施形態では、光モジュール2は4チャンネルの光サブアセンブリ104,105を備えるとしたが、これに限定されることなく、1又は複数の光サブアセンブリを備えていてもよい。上記実施形態では、光サブアセンブリ104,105の筐体は箱型であるとしたが、これに限定されることはない。光サブアセンブリの筐体が円筒型であってもよい。また、光モジュール2は、光送信機能又は光受信機能のいずれかのみに限定されていてもよい。すなわち、光モジュール2は、光送信サブアセンブリ又は光受信サブアセンブリのいずれかのみを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 光伝送装置、2 光モジュール、3,3A,3B 光ファイバ、11,21 プリント回路基板、12 IC、22A,22B フレキシブル基板、23A,100 光受信モジュール、23B,光送信モジュール、30 ヒートシンク、50 プルタブ、100 筺体、101,201 上ケース、102 下ケース、104,105 光サブアセンブリ、106,107 制御用IC、111,112,113,114 放熱シート、125 取付ねじ、200 接合箇所。