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特許7370163共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物の製造方法、タイヤの製造方法、及びビニル化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物の製造方法、タイヤの製造方法、及びビニル化剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 36/04 20060101AFI20231020BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20231020BHJP
   C08F 4/48 20060101ALI20231020BHJP
   C08L 47/00 20060101ALI20231020BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231020BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231020BHJP
【FI】
C08F36/04
C08F2/38
C08F4/48
C08L47/00
C08K3/36
C08K3/013
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019082005
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020180174
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 美帆
(72)【発明者】
【氏名】安本 敦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 英樹
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-151219(JP,A)
【文献】特開平04-298509(JP,A)
【文献】国際公開第2002/090396(WO,A1)
【文献】特開2006-057103(JP,A)
【文献】特開2014-122359(JP,A)
【文献】特開2012-193277(JP,A)
【文献】特開2016-044255(JP,A)
【文献】特開2004-051757(JP,A)
【文献】特開昭59-018709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 36/04
C08F 2/38
C08F 4/48
C08L 47/00
C08K 3/36
C08K 3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される極性化合物の存在下で、重合開始剤を用いて、共役ジエン系重合体を重合する工程を有し、
前記重合開始剤が、有機リチウム化合物であり、
前記共役ジエン系重合体中の1,2-ビニル結合含有量が、10モル%以上45モル%以下である、
共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】
【化2】
(一般式(1)、(2)中、R1~R3は、各々独立して、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、及びフェニル基からなる群より選択されるいずれかであり、R1~R3は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
4は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、フェニル基、及び水素からなる群より選択されるいずれかであり、R4は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
1~R4は、互いを含む形で環状構造を取ってもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)及び一般式(2)において、R1~R3がメチル基である、
請求項1に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)及び一般式(2)において、
4がメチル基、エチル基、水素、及びフェニル基からなる群より選択される少なくとも一種である、
請求項1又は2に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
カップリング剤を添加し、当該カップリング剤により、活性末端を有する共役ジエン系重合体をカップリングする工程をさらに有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
モノマー転化率が90%以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
重合温度を10℃以上80℃以下とする、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法により共役ジエン系重合体を製造する工程と、
前記共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対してシリカ系無機充填剤を0.5質量部以上300質量部以下、混合する工程と、
を、有し、
前記ゴム成分は、当該ゴム成分の総量に対して、前記共役ジエン系重合体を20質量%以上含有する、
共役ジエン系重合体組成物の製造方法。
【請求項8】
前記ゴム成分を、架橋処理する工程をさらに有する、請求項7に記載の共役ジエン系重合体組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の共役ジエン系重合体組成物の製造方法により、共役ジエン系重合体組成物を製造する工程と、
前記共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤを成形する工程と、
を、有する、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物の製造方法、タイヤの製造方法、及びビニル化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エーテル基やアミノ基を有する極性化合物をビニル化剤として用いたSSBR重合(溶液重合によるスチレンブタジエンゴムの重合)が行われてきている。
例えば、テトラヒドロフラン(THF)や、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを、ビニル化剤として用いて、低い1,2-ビニル結合含有量のSSBRをバッチ重合で製造する場合において、高モノマー転化率(特に、ブタジエンモノマーよりも反応性の低いスチレンモノマーの高モノマー転化率)と高ランダム性を保持するためには、ある程度高温条件下で重合することが必要である。一方、重合温度が高温になると、重合体のリビング末端が熱失活することにより、カップリング剤との反応率が低下する。
また、重合開始剤として、アルカリ土類金属系開始剤を用いる方法も提案されているが、この方法により重合した場合においても、極端にカップリング剤との反応率が低下することが知られている。
【0003】
従来、THFの存在下において、共役ジエン化合物を多段的に反応器へ加え、0~90℃の重合温度範囲において、高モノマー転化率で、ランダム性の良好な共重合体を得る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、THFの存在下において、アルカリ土類金属を重合開始剤として用い、低ビニル結合含有SSBRを製造する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-210543号公報
【文献】特開平1-230647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術においては、重合工程の途中でのモノマー添加が必要であるため、安定的に所望の構造のポリマーを得るためには、常時、重合系の監視を行い、適切に重合反応を制御することが必要となり、操作が煩雑であるという問題点を有している。また、一般的な一段階での反応器へのモノマー添加による重合と比較し、十分なモノマー転化率を得られるまでの反応時間が長くなる傾向にある、という問題点も有している。
特許文献2に記載されている技術においては、高いモノマー転化率でスチレン連鎖が少なく、ランダム性の良い共重合体が得られる条件を設定可能ではあるものの、この場合、カップリング剤との反応率が極端に低くなるという問題点を有している。
【0006】
そこで、本発明においては、高カップリング反応率を有する共役ジエン系重合体を、高いモノマー転化率で、安定的に短い反応時間で製造することが可能な、共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために、鋭意研究検討した結果、所定の構造を有する極性化合物の存在下で、重合開始剤を用いて、共役ジエン系重合体を重合することにより、従来技術の課題の解決が図られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕
下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される極性化合物の存在下で、重合開始
剤を用いて、共役ジエン系重合体を重合する工程を有し、
前記重合開始剤が、有機リチウム化合物であり、
前記共役ジエン系重合体中の1,2-ビニル結合含有量が、10モル%以上45モル%以下である、共役ジエン系重合体の製造方法。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
(一般式(1)、(2)中、R1~R3は、各々独立して、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、及びフェニル基からなる群より選択されるいずれかであり、R1~R3は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
4は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、フェニル基、及び水素からなる群より選択されるいずれかであり、R4は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
1~R4は、互いを含む形で環状構造を取ってもよい。)
【0012】
〔2〕
前記一般式(1)及び一般式(2)において、R1~R3がメチル基である、前記〔1〕
に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔3〕
前記一般式(1)及び一般式(2)において、
4がメチル基、エチル基、水素、及びフェニル基からなる群より選択される少なくと
も一種である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔4〕
カップリング剤を添加し、当該カップリング剤により、活性末端を有する共役ジエン系
重合体をカップリングする工程をさらに有する、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔5〕
モノマー転化率が90%以上である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔6〕
重合温度を10℃以上80℃以下とする、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
〔7〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の共役ジエン系重合体の製造方法により共役ジエン系重合体を製造する工程と、
前記共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対してシリカ系無機充填剤
を0.5質量部以上300質量部以下、混合する工程と、
を、有し、
前記ゴム成分は、当該ゴム成分の総量に対して、前記共役ジエン系重合体を20質量%
以上含有する、
共役ジエン系重合体組成物の製造方法。
〔8〕
前記ゴム成分を、架橋処理する工程をさらに有する、前記〔7〕に記載の共役ジエン系重合体組成物の製造方法。
〔9〕
前記〔8〕に記載の共役ジエン系重合体組成物の製造方法により、共役ジエン系重合体組成物を製造する工程と、
前記共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤを成形する工程と、
を、有する、タイヤの製造方法。
〔10〕
前記〔1〕に記載の共役ジエン系重合体の製造方法における、前記共役ジエン系重合体を重合する工程において使用される極性化合物よりなるビニル化剤であって、
下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物である、ビニル化剤。
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
(一般式(1)、(2)中、R1~R3は、各々独立して、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、及びフェニル基からなる群より選択されるいずれかであり、R1~R3は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
4は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、フェニル基、及び水素からなる群より選択されるいずれかであり、R4は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
1~R4は、互いを含む形で環状構造を取ってもよい。)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高カップリング反応率を有する共役ジエン系重合体を、高いモノマー転化率で、安定的に短い反応時間で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の本実施形態に制限されるものではなく、本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
〔共役ジエン系重合体の製造方法〕
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法は、下記一般式(1)、及び/又は一般式(2)で表される極性化合物の存在下で、重合開始剤を用いて、共役ジエン系重合体を重合する工程を有する。
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
(一般式(1)、(2)中、R1~R3は、各々独立して、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、及びフェニル基からなる群より選択されるいずれかであり、R1~R3は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
4は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、フェニル基、及び水素からなる群より選択されるいずれかであり、R4は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
1~R4は、互いを含む形で環状構造を取ってもよい。)
【0022】
上記のように、特定の構造を有する極性化合物を用いた重合工程を実施することにより、高カップリング反応率を有する共役ジエン系重合体を、高いモノマー添加率で、安定的かつ短い反応時間で製造することができる。
【0023】
(重合工程)
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、共役ジエン系重合体の重合工程は、リビングアニオン重合反応による成長反応が行われることが好ましい。
【0024】
重合工程における重合反応様式としては、以下に限定されるものではないが、例えば、回分式(「バッチ式」ともいう。)、連続式の重合反応様式が挙げられる。
回分式の反応器は、例えば、攪拌機付の槽型のものが用いられる。回分式においては、好ましくは、単量体、溶媒、及び重合開始剤が初めに反応器にフィードされ、必要により単量体が重合中に連続的又は断続的に追加され、当該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、重合終了後に重合体溶液が排出される。
連続式においては、好ましくは、プラグフロー型反応器を用いることができる。連続式においては、好ましくは、連続的に単量体、溶媒、及び重合開始剤が反応器にフィードされ、当該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、連続的に重合体溶液が排出される。
【0025】
また、単量体として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とを用いて、これらを共重合する場合、ランダム化する方法としては、例えば、特開昭59-140211号公報に記載されているような、スチレンの全量と1,3-ブタジエンの一部とで共重合反応を開始させ、共重合反応の途中に残りの1,3-ブタジエンを断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0026】
本実施形態において、前記の共役ジエン化合物等の重合単量体や溶媒中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていると、後述する反応工程の反応を阻害するおそれがある。そのため、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
アレン類としては、例えば、プロパジエン、1,2-ブタジエンが挙げられる。アセチレン類としては、例えば、エチルアセチレン、ビニルアセチレンが挙げられる。
【0027】
本実施形態において、反応器内の重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であることが好ましく、生産性の観点から、0℃以上120℃以下であることが好ましく、10℃以上80℃以下であることがより好ましい。上記温度範囲、特に好ましくは10℃以上80℃以下の温度範囲においては、共役ジエン系重合体のリビング末端が重合の過程において失活しにくく、狭い分子量分布を有する共役ジエン系重合体が得られる傾向にある。これは、加硫物とした際、機械的強度や耐摩耗性に優れる傾向があるためより好ましい。また、重合終了後の活性末端にカップリング剤を反応させる場合においては、カップリング率が高い共役ジエン系重合体が得られる傾向にあるためより好ましい。
また、本実施形態において、重合にかかる反応時間は、重合開始剤添加時から、重合温度がピークに達するまでの時間を意味し、この反応時間は、生産性の観点から短いことが好ましい。例えば、10Lの内容積の反応器を用いる場合、20分以内であることが好ましく、15分以内であることがより好ましく、さらには10分以内であることがさらに好ましい。
【0028】
<極性化合物>
本実施形態においては、重合工程は、上記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される極性化合物の存在下で行われ、当該極性化合物は、ビニル化剤として機能する。
本明細書において「ビニル化剤」とは、リビングアニオン末端に配位可能な化合物を意味する。リビング末端に化合物が配位することで、共役ジエン系重合体の1,2-ビニル結合含有量を制御することが可能になる。
極性化合物の添加量を増やすと、1,2-ビニル結合含有量は増える傾向にある。添加量に対する1,2-ビニル結合含有量は、添加する化合物種により異なるが、これは、一リビングアニオン末端当たりの各ビニル化剤の配位数や配位形態が異なるためである。
また、極性化合物は、重合開始反応及び成長反応の促進等にも効果があり、添加により、重合反応時間の短縮やビニル芳香族化合物モノマーの重合転化率の増大が可能となる傾向にある。これらの効果の程度も、上記と同様の理由により添加する化合物種により異なる。
【0029】
本実施形態において、ビニル化剤として用いられる少なくとも一種類の極性化合物は、一般式(1)及び/又は一般式(2)から選択される。
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【0032】
(一般式(1)、(2)中、R1~R3は、各々独立して、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、及びフェニル基からなる群より選択されるいずれかであり、R1~R3は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
4は、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の環状炭化水素基、フェニル基、及び水素からなる群より選択されるいずれかであり、R4は、置換基を有していてもよく、O、N、P、Sのヘテロ原子を含んでもよい。
1~R4は、互いを含む形で環状構造を取ってもよい。)
【0033】
1~R4については、立体的に嵩高くないことが好ましい。これは、一般式(1)、(2)から選択される極性化合物がリビングアニオン末端に配位する際、立体的な障害が少ないほど、一つの末端当たりに配位する極性化合物の分子数が多くできるためであり、これにより共役ジエン系重合体中の1,2-ビニル結合含有量を少量とし、かつ、モノマー転化率を高くすることができる傾向にある。
例えば、極性化合物については、一般式(1)、(2)から選択される化合物のR1~R3は、炭素数1の炭化水素基、具体的にはメチル基であることが好ましい。
4は、炭素数1~2の炭化水素、水素、フェニル基、具体的には、メチル基、エチル基、水素、及びフェニル基のいずれかであることが好ましく、より好ましくは炭素数1の炭化水素、もしくは水素であり、さらに好ましくは水素である。
【0034】
前記一般式(1)又は一般式(2)の化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリイソプロピル、オルトギ酸トリフェニル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリイソプロピル、オルト酢酸トリフェニル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルト酪酸トリイソプロピル、オルト酪酸トリフェニル、オルトイソ酪酸トリメチル、オルトイソ酪酸トリエチル、オルトイソ酪酸トリイソプロピル、オルトイソ酪酸トリフェニル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトプロピオン酸トリイソプロピル、オルトプロピオン酸トリフェニル、オルト吉草酸トリメチル、オルト吉草酸トリエチル、オルト吉草酸トリイソプロピル、オルト吉草酸トリフェニル、オルト安息香酸トリメチル、オルト安息香酸トリエチル、オルト安息香酸トリイソプロピル、オルト安息香酸トリフェニル、テトラメトキシメタン、テトラエトキシメタン、テトラプロポキシメタン、2-メトキシ-1,3-ジオキソラン、2-エトキシ-1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
【0035】
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法において、重合工程における極性化合物の使用量、すなわちビニル化剤の使用量は、特に限定されず、所望の1,2-ビニル結合含量等に応じて選択することができるが、10L以下の内容積の反応器を用いる場合、重合開始剤1モルに対して、0.01モル以上100モル以下であることが好ましく、2モル以上40モル以下がより好ましい。11L以上99L以下の内容積の反応器を用いる場合、重合開始剤1モルに対して、0.01モル以上100モル以下であることが好ましく、1モル以上30モル以下がより好ましい。100L以上の内容積の反応器を用いる場合、重合開始剤1モルに対して、0.01モル以上100モル以下であることが好ましく、0.5モル以上20モル以下がより好ましい。
【0036】
また、前記一般式(1)、一般式(2)から選択される少なくとも1種類の極性化合物は、他のビニル化剤として用いることができる化合物と組み合わせて使用することもできる。特に、後述するアルカリ金属アルコキシド化合物を重合開始剤1モルに対して0.01モル以上10モル以下、より好ましくは0.01以上0.1モル以下で組み合わせることにより、モノマー転化率を向上でき、反応時間をさらに短縮できる傾向にあるため好ましい。
【0037】
他のビニル化剤としては、以下に限定されるものではないが、3級モノアミンが使用でき、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、1,1-ジメトキシトリメチルアミン、1,1-ジエトキシトリメチルアミン、1,1-ジエトキシトリエチルアミン、N,N-ジメチルホルムアミドジイソプロピルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタール等の化合物が挙げられる。
また、3級ジアミンが使用でき、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ジピペリジノペンタン、ジピペリジノエタン等の化合物が挙げられる。
さらに、鎖状エーテルが使用でき、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレンジメチルエーテルが挙げられる。
さらにまた、環状エーテルが使用でき、例えば、テトラヒドロフラン、ビス(2-オキソラニル)エタン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、1,1-ビス(2-オキソラニル)エタン、2,2-ビス(2-オキソラニル)ブタン、2,2-ビス(5-メチル-2-オキソラニル)プロパン、2,2-ビス(3,4,5-トリメチル-2-オキソラニル)プロパン等の化合物が挙げられる。
またさらに、アルカリ金属アルコキシド化合物が使用でき、例えば、カリウム-tert-アミラート、カリウム-tert-ブチラート、ナトリウム-tert-ブチラート、ナトリウムアミラート等の化合物が挙げられる。
【0038】
<共役ジエン系重合体を重合する単量体>
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、重合工程で、上述した極性化合物の存在下で、共役ジエン系重合体を重合する。
本明細書中の、「共役ジエン系重合体」とは、単量体単位として共役ジエンを含む重合体を意味し、単独重合体と共重合体が含まれる。
ビニル結合含有量の制御を容易化する観点から、重合体中の共役ジエン量は40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、55質量%以上88質量%以下であることがより好ましい。
共役ジエン系重合体は、少なくとも共役ジエン化合物を重合して得られ、必要に応じて共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との両方を共重合して得られる。
【0039】
共役ジエン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘプタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられ、特に、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらは一種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、ビニル芳香族化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、特に、スチレンが好ましい。
これらは一種単独で用いて共役ジエン化合物と共重合してもよく、2種以上を併用して共役ジエン化合物と共重合してもよい。
【0041】
<溶媒>
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法の重合工程で溶媒を用いる場合には、溶媒は炭化水素溶媒が好ましい。
炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、及びベンゼンが挙げられる。
重合反応に供する前に、不純物であるアレン類、及びアセチレン類を有機金属化合物で処理することで、高濃度の活性末端を有する共役ジエン系重合体が得られる傾向にあり、高いカップリング率の共役ジエン系重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
【0042】
<重合開始剤>
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法において、重合工程で用いる重合開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましい。
有機リチウム化合物としては、共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物の重合を開始できるものであれば特に以下に限定されるものではないが、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム、ピペリジノリチウム、ピロリジノリチウム等のモノ有機リチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多価リチウム化合物が挙げられる。これらの中でも、特に、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムが好ましい。
【0043】
この他にも、有機リチウム化合物は、置換アミノ基を有するアルキルリチウム化合物、又はジアルキルアミノリチウムを用いることもできる。この場合、重合開始末端にアミノ基の構成要素である窒素原子を有する、共役ジエン系重合体が得られる。
置換アミノ基とは、活性水素を有しない、又は、活性水素を保護した構造の、アミノ基である。活性水素を有しないアミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3-ジメチルアミノプロピルリチウム、3-ジエチルアミノプロピルリチウム、4-(メチルプロピルアミノ)ブチルリチウム、4-ヘキサメチレンイミノブチルリチウムが挙げられる。
活性水素を保護した構造のアミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3-ビストリメチルシリルアミノプロピルリチウム、4-トリメチルシリルメチルアミノブチルリチウムが挙げられる。
ジアルキルアミノリチウムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジ-n-ヘキシルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウム-ジ-2-エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリド、1-リチオアザシクロオクタン、6-リチオ-1,3,3-トリメチル-6-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1-リチオ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンが挙げられる。
【0044】
これらの置換アミノ基を有する有機リチウム化合物は、重合可能な単量体、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、スチレン等の単量体を少量反応させて、可溶化したオリゴマーの有機リチウム化合物として用いることもできる。
【0045】
有機リチウム化合物の重合開始剤としての使用量は、目的とする共役ジエン系重合体の分子量によって決めることが好ましい。重合開始剤の使用量に対する、共役ジエン化合物等の単量体の使用量は、重合度に関係し、すなわち、数平均分子量及び重量平均分子量に関係する傾向にある。したがって、共役ジエン系重合体の分子量を増大させるためには、重合開始剤を減らす方向に調整するとよく、分子量を低下させるためには、重合開始剤量を増やす方向に調整するとよい。
【0046】
(カップリング工程)
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、加工性と耐摩耗性とのバランス、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性の向上の観点から、カップリング剤により活性末端を有する共役ジエン系重合体をカップリングする工程をさらに有することが好ましい。
カップリング工程を有することで、高分子量の重合体を製造したり、所望の官能基を有する重合体を製造したりすることが容易になる。上述した一般式(1)又は(2)で表される極性化合物を使用することにより、高カップリング反応率の共役ジエン系重合体を得ることができる傾向にある。
【0047】
<カップリング剤>
本明細書中において「カップリング剤」とは、共役ジエン系重合体の活性末端と反応し、分岐状重合体成分を含む共役ジエン系重合体を得ることができる化合物を意味し、反応性の観点から、アルコキシ基、エポキシ基、エステル基、及びハロゲン基からなる群より選ばれる1種又は2種以上を有する化合物であることが好ましい。
【0048】
アルコキシ基を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4-メチルピペラジン、1-[3-(ジエトキシエチルシリル)プロピル]-4-メチルピペラジン、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-3-メチルイミダゾリジン、1-[3-(ジエトキシエチルシリル)プロピル]-3-エチルイミダゾリジン、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-3-メチルヘキサヒドロピリミジン、1-[3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル]-3-メチルヘキサヒドロピリミジン、3-[3-(トリブトキシシリル)プロピル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン、3-[3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル]-1-エチル-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン、1-(2-エトキシエチル)-3-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、(2-{3-[3(トリメトキシシリル)プロピル]テトラヒドロピリミジン-1-イル}エチル)ジメチルアミン、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4-(トリメチルシリル)ピペラジン、1-[3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル]-4-(トリメチルシリル)ピペラジン、1-[3-(トリブトキシシリル)プロピル]-4-(トリメチルシリル)ピペラジン、1-[3-(ジエトキシエチルシリル)プロピル]-3-(トリエチルシリル)イミダゾリジン、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-3-(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1-[3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル]-3-(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-3-(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1-[4-(トリエトキシシリル)ブチル]-4-(トリメチルシリル)ピペラジン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ,2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-エトキシ,2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタントリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0049】
エポキシ基を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、及びテトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0050】
エステル基を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、アジピン酸メチルエステル、アジピン酸エチルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル等が挙げられる。
【0051】
ハロゲン基を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ジメチルジブロモシラン、ジエチルジブロモシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリブロモシラン、及びテトラブロモシランが挙げられる。
【0052】
上述したカップリング剤の中でも、転がり抵抗の観点や押し出し加工性の観点から、テトラクロロシラン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンがより好ましい。
【0053】
上述したカップリング剤は、化合物中の官能基の合計モル数が、重合開始剤の添加モル数の0.8~3.0倍となる範囲であることが好ましく、1.0~2.5倍となる範囲であることがより好ましく、1.0~2.0倍となる範囲であることがさらに好ましい。
重合開始剤の添加モル数に対するカップリング剤の官能基の合計モル数が範囲内であると、補強用充填剤としてシリカを配合し、かつ加硫物とした場合に、十分なカップリング剤に起因する官能基の効果が得られるため、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが優れる傾向にある。また、上記範囲であると、十分な分岐状重合体成分を含む共重合体を得られることにより、耐摩耗性と加工性のバランスにも優れる加硫物を得ることができる傾向にある。
【0054】
(共役ジエン系重合体)
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体は、上述したカップリング剤によりカップリングする工程を含む場合、カップリング率が75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。カップリング率が上記範囲内であると、十分な分岐状重合体成分を含む共重合体が得られることにより、耐摩耗性と加工性のバランスにも更に優れる加硫物を得ることができる傾向にある。
カップリング率の測定方法としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でポリスチレン系ゲルカラムを用いて測定した際の面積比から求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0055】
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体中の共役ジエン量は、特に限定されないが、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、55質量%以上88質量%以下であることがより好ましい。
また、本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体中のビニル芳香族量は、特に限定されないが、0質量%以上60質量%以下であることが好ましく、12質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
共役ジエン量及びビニル芳香族量が上記範囲であると、加硫物としたときに、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスと、耐摩耗性が、より優れる傾向にある。ここで、ビニル芳香族量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0056】
<モノマー添加率>
本明細書中、モノマーの転化率は、全モノマーの転化率の平均値を示すため、共役ジエン系重合体がポリブタジエンの場合はブタジエンの転化率を示し、芳香族ビニルとの共重合体の場合には芳香族ビニルの転化率と共役ジエンの転化率の平均値を示す。
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体のモノマー転化率は、生産性と重合体のランダム性向上との観点から、好ましくは90%以上であり、より好ましくは98%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。
モノマー転化率が90%未満であると、重合体の末端にビニル芳香族化合物ブロックが生成する可能性が高い傾向にあり、これによりカップリング率が低くなることで加硫物とした際の省燃費性能が低下したり、タイヤにした際に強度が低下する傾向にあるため好ましくない。
モノマー転化率は、後述する実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
共役ジエン系重合体のモノマー転化率は、重合工程において、前記一般式(1)及び/又は(2)で表される極性化合物を用いることにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0057】
<ビニル結合含有量>
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体中の1,2-ビニル結合含有量は、10モル%以上45モル%以下であることが好ましく、12モル%以上35モル%以下であることがより好ましく、15モル%以上35モル%以下であることがさらに好ましい。
1,2-ビニル結合含有量が上記範囲内であると、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能とのバランスが更に優れ、耐摩耗性も満足する加硫物を得ることができる傾向にある。
共役ジエン系重合体中の1,2-ビニル結合含有量は、重合単量体として共役ジエン化合物量、ビニル化剤の添加量、重合温度等を適切に調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0058】
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンとの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中の1,2-ビニル結合含有量を求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0059】
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体の共役ジエン化合物単位中のシス1,4-結合量は、特に限定されないが、好ましくは8.0モル%以上99モル%以下であり、より好ましくは20モル%以上98モル%以下であり、さらに好ましくは25モル%以上90モル%以下である。シス1,4-結合量を上記範囲にすることで、転がり抵抗特性がより良好となる傾向にある。
【0060】
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体がランダム共重合体である場合、ランダム共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、特に限定されず、例えば、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、及び組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4-結合や1,2-結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
【0061】
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体の分子量は、例えば、上述したように重合開始剤としての有機リチウム化合物の使用量を調整することにより制御することができる。また、本実施形態の共役ジエン系重合体の分子量分布は、連続式、回分式のいずれの重合様式においても、滞留時間分布を調整すればよい。例えば、滞留時間分布を小さくする、すなわち、成長反応の時間分布を狭くすると、分子量分布が小さくなる傾向にある。回分式においては、好ましくは反応器内の組成が均一になる程度に十分な攪拌が行われる攪拌機付槽型反応器を用いる方法、連続式ではバックミックスがほとんどない管型反応器を用いる方法が好ましい。
【0062】
<安定剤>
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、重合後のゲル生成を抑制する観点や加工時の安定性を向上させる観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
ゴム用安定剤は、特に限定されず公知のものを用いることができるが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、n-オクタデシル-3-(4´-ヒドロキシ-3´,5´-ジーtert-ブチルフェノール)プロピオネート、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
【0063】
<伸展油>
また、本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法においては、共役ジエン系重合体の加工性をさらに改善するために、必要に応じて伸展油をさらに添加することができる。
伸展油を共役ジエン系共重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、伸展油重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。
伸展油としては、特に限定されるものではないが、例えば、アロマ油、ナフテン油、及びパラフィン油が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点や、オイルブリード防止の観点から、IP346法による多環状芳香族(PCA)成分が3.0質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。
アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
伸展油の含有量は、特に限定されないが、共役ジエン系重合体の総量(100質量部)に対して、好ましくは5質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上37.5質量部以下である。
【0064】
<共役ジエン系重合体の回収>
本実施形態の共役ジエン系重合体を、溶媒中から取得する方法としては、公知の脱溶媒方法を用いることができる。例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、共役ジエン系重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して共役ジエン系重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、更にベント押し出し機等で脱揮する方法、及びドラムドライヤー等で直接脱揮する方法が挙げられる。
【0065】
〔共役ジエン系重合体組成物の製造方法〕
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物の製造方法は、上述したように、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される極性化合物の存在下で、重合開始剤を用いて、共役ジエン系化合物及び必要に応じてその他の重合単量体を重合し、共役ジエン系重合体を製造する工程と、前記重合工程により得た共役ジエン系重合体と必要に応じてその他の成分を含有するゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上300質量部以下のシリカ系無機充填剤とを混合する工程を有する。
ゴム成分は、低温特性、耐摩耗性向上の観点から、当該ゴム成分の総量(100質量%)に対して、本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体を、20質量%以上含有するものとし、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上含有する。
【0066】
(シリカ系無機充填剤の混合工程)
共役ジエン系重合体と混合するシリカ系無機充填剤とは、化学式SiO2、又はSi3Alを構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質が挙げられる。
また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤の混合物も使用できる。特に、シリカ及びガラス繊維が好ましい。
シリカとしては、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカと呼ばれているもの等が使用できる。これらは平均粒子径が、0.01μm以上150μm以下であることが好ましい。
また、本実施形態の製造方法において、共役ジエン系重合体組成物中にシリカ系無機充填剤を分散させ、シリカの添加効果を十分に発揮させるためには、シリカ系無機充填剤の平均分散粒子径は、0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上0.5μm以下である。
【0067】
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物の製造方法におけるシリカ系無機充填剤の配合量は、上述した本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上300質量部以下であり、好ましくは5.0質量部以上200質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上120質量部以下である。
シリカ系無機充填剤の配合量が0.5質量部以上であると、補強性充填剤としての機能を有効に発揮でき、配合量が300質量部以下であると、共役ジエン系重合体中においてシリカ系無機充填剤の分散性が良好なものとなり、優れた加工性と、高い機械強度とが得られる。
【0068】
本実施形態において、ゴム成分とシリカ系無機充填剤とを混合する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、及び溶剤を加熱除去する方法が挙げられる。これらの中でも、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、ゴム成分とシリカ系無機充填剤とは、同時に全量を混練してもよく、それぞれを複数回に分けて混練してもよい。
【0069】
(加硫剤を用いた加硫工程)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、加硫剤を用いて加硫工程を実施してもよい。加硫工程によりゴム成分を架橋処理することにより、強靭なゴム弾性を発現することが知られている。加硫工程においては、ゴム成分は、例えば加熱処理等の手段で架橋処理することができる。
加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の使用量は、特に限定されないが、本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。
【0070】
加硫に際して、加硫促進剤をさらに用いてもよい。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒドーアミン系、アルデヒドーアンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、及びジチオカルバメート系のものが挙げられる。
また、加硫に際しては、加硫助剤をさらに用いてもよい。加硫助剤としては、例えば、亜鉛華、及びステアリン酸が挙げられる。
これらの加硫促進剤及び/又は加硫助剤の使用量は、本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。
【0071】
(ゴム用軟化剤の配合)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、加工性を改良するために、ゴム用軟化剤をさらに配合する工程を実施してもよい。
ゴム用軟化剤としては、例えば、鉱物油及び液状又は低分子量の合成軟化剤が好ましいものとして挙げられる。
一般にゴム成分の軟化、増容、加工性向上等の目的で用いられるプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が全炭素中30~45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が全炭素中30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物の製造方法に用いるゴム用軟化剤としては、ナフテン系及び/又はパラフィン系のものが好ましい。
合成軟化剤としては、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が使用可能であるが、鉱物油系ゴム用軟化剤の方が良好な結果を与える。
【0072】
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、ゴム用軟化剤を配合する場合、ゴム用軟化剤の配合量は、本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、0質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上90質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以上90質量部以下である。
ゴム用軟化剤の配合量が上記範囲であると、加工性が良好なものとなり、また、ブリードアウトを抑制でき、表面にベタツキを生じることも抑制できる傾向にある。
【0073】
(共役ジエン系重合体以外のゴム成分)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、ゴム成分として、上述した本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を、上述した共役ジエン系重合体と組み合わせて用いることができる。
このようなゴム状重合体としては、例えば、共役ジエン重合体又はその水添物、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水添物、非ジエン系重合体、及び天然ゴムが挙げられる。
具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物、スチレン-ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン-ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマー、及びアクリロニトリル-ブタジエンゴム又はその水素添加物が挙げられる。
非ジエン系重合体としては、例えば、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴム、エチレン-ブテンゴム、エチエン-ヘキセンゴム、エチレン-オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α,β-不飽和ニトリル-アクリル酸エステル-共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、及び多硫化ゴムが挙げられる。
これらのゴム状重合体は、官能基を付与したゴムであってもよい。
これらは、一種のみを単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体に、上述した各種ゴム状重合体を組み合わせ、ゴム成分を得る場合、ゴム状重合体は、本実施形態の製造方法により得られる共役ジエン系重合体100質量部に対して、1.0質量部以上400質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5.0質量部以上200質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以上100質量部以下である。
【0075】
(添加剤の配合)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、各種添加剤を配合することができる。
添加剤としては、例えば、軟化剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、及び滑剤が挙げられる。
共役ジエン系重合体組成物を用いた製品の硬さや流動性の調整のために、必要に応じて配合することができる軟化剤としては、例えば、流動パラフィン、ヒマシ油、及びアマニ油が挙げられる。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、及び硫酸バリウムが挙げられる。
耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、及び滑剤としては、公知の材料を適用できる。
【0076】
〔タイヤの製造方法〕
本実施形態のタイヤの製造方法は、本実施形態の製造方法で得られる共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤを成形する工程を有する。
共役ジエン系ゴム重合体組成物を用いたタイヤは、例えば、ゴム成分、シリカ系無機充填剤、カーボンブラック、硫黄、天然ゴム、各種配合剤を混練し、板状にした後、所望の部位に応じた形状に成型し、さらに加熱・加圧して化学反応させることにより加硫処理を行い、製造される。
なお、本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、タイヤ以外にも、防振ゴム、各種工業用品に成形することもできる。
【実施例
【0077】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例における各種の物性は、下記に示す方法により測定した。
【0078】
(物性1)モノマー転化率
耐圧ガラス瓶にノルマルプロピルベンゼン(nPB)0.5gとトルエン20gを加え、ゴム栓及び王冠をしたサンプル容器に、重合温度ピークから1分後の反応器内溶液を20gサンプリングした。
この耐圧瓶内の溶液のうち3μLを、下記の条件でガスクロマトグラフィ(GC)装置により測定した。

GC測定条件:
GC装置:株式会社島津製作所製、「GC-2014S」
カラム:株式会社島津製作所製、充填剤入りガラスカラム、内径3.2mm、直径5.1m
Apiezon GREASE L 15% UniportB メッシュ60/80 充填剤
エージング
キャリアガス:窒素、50mL/min
水素ガス:0.6kg/cm3
エアーガス:0.5kg/cm3
測定温度:90℃~150℃
温度上昇レート:16℃/分
インジェクション温度:200℃
ディテクション温度:190℃
打ち込み量:3μL

反応器中のモノマー転化率(%)は、下記の計算方法により算出した。

モノマー転化率(%)=[ブタジエンモノマーの転化率(%)+スチレンモノマーの転化率(%)]/2

上記式内の各モノマーの転化率(%)は下記の方法により算出した。

ブタジエンモノマーの転化率(%)=100-{[ブタジエンピークのエリア面積×サンプル溶液中のnPB量×106 ]/[サンプリング溶液量(g)×反応器内のモノマー濃度(%)×モノマー中のブタジエン割合(%)×nPBのエリア面積]}

スチレンモノマーの転化率(%)=100-{[スチレンピークのエリア面積×サンプル溶液中のnPB量×106 ]/[サンプリング溶液量(g)×反応器内のモノマー濃度(%)×モノマー中のスチレン割合(%)×nPBのエリア面積]}
【0079】
(物性2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2-ビニル結合含有量)
共役ジエン系重合体の試料を薄膜にして、パーキンエルマージャパン社製のFT-IR「Spectrum100」を用い、1回反射ATR法(減衰全反射法:attenuated total reflection)で、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定し、所定の波数における吸光度を使い、ハンプトン法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造(モル%)を求めた。
【0080】
(物性3)分子量分布、カップリング率
共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤とした下記のカラムを3本連結して用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用してクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、分子量分布(Mw/Mn)を算出して、分子量分布曲線を作成した。
作成した分子量分布曲線から、全ピーク面積を100として、全ピーク面積からカップリング剤によりカップリングしなかった非カップリングポリマーのピーク面積を除いた面積をカップリング率(%)とした。
その他の測定条件は、下記の通りとした。
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
ガードカラム:東ソー社製「TSKguardcolumn HHR-H」
カラム:東ソー社製「TSKgel G6000HHR」、
「TSKgel G5000HHR」、
「TSKgel G4000HHR」
オーブン温度:40℃
THF流量:1.0mL/分
RI検出器:東ソー社製「HLC8020」
試料:20mLのテトラヒドロフラン(THF)に対して共役ジエン系重合体10mg
を溶解したものを200μL注入
【0081】
<実施例1>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、オルトギ酸トリメチル(表中、「化合物1」と記す。)19.5gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら53℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は75℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g加えて、75℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料A)を得た。
試料Aの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0082】
<実施例2>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、オルト酢酸トリメチル(表中、「化合物2」と記す。)5.88gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら53℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は75℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、75℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料B)を得た。
試料Bの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0083】
<実施例3>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、オルトプロピオン酸トリメチル(表中、「化合物3」と記す。)5.74gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら53℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は77℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、77℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料C)を得た。
試料Cの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0084】
<実施例4>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、オルト安息香酸トリメチル(表中、「化合物4」と記す。)4.46gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら53℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は76℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、76℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料D)を得た。
試料Dの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0085】
<実施例5>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、オルトギ酸トリエチル(表中、「化合物5」と記す。)10.9gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら53℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は75℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、75℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料E)を得た。
試料Eの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0086】
<実施例6>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、オルトギ酸トリメチル(表中、「化合物1」と記す。)26.0gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら48℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は74℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、74℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料F)を得た。
試料Fの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0087】
参考例7>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレー
ブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブ
タジエン0.68kg、オルトギ酸トリメチル(表中、「化合物1」と記す。)39.0
gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら46℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン
溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始し
た。
最終的な反応器内のピーク温度は73℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリル
プロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、73℃の温度条
件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1
.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処
理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料G)を得た。
試料Gの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0088】
<実施例8>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、オルトギ酸トリメチル(表中、「化合物1」と記す。)1.30gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら57℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は79℃に達した。ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン(表中、「Cup-1」と記す。)を0.42g添加して、79℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料H)を得た。
試料Hの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0089】
<実施例9>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、オルトギ酸トリメチル(表中、「化合物1」と記す。)19.5gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら53℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は79℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料I)を得た。
試料Iの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0090】
<実施例10>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3ブタジエン0.68kg、オルトギ酸トリメチル(表中、「化合物1」と記す。)19.5gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら57℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は82℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、82℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料J)を得た。
試料Jの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0091】
<実施例11>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、1,3ブタジエン0.81kg、オルトギ酸トリメチル(表中、「化合物1」と記す。)19.5gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら51℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は78℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、78℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料K)を得た。
試料K重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0092】
<比較例1>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン(表中、「化合物6」と記す。)0.113gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら54℃まで加熱した。次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は75℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、75℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料L)を得た。
試料Lの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0093】
<比較例2>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン(表中、「化合物6」と記す。)0.146gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら58℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は87℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、87℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料M)を得た。
試料Mの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0094】
<比較例3>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン(表中、「化合物6」と記す。)0.338gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら49℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は75℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、75℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料N)を得た。
試料Nの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0095】
<比較例4>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン(表中、「化合物6」と記す。)0.878gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら52℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は75℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、75℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料O)を得た。
試料Oの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0096】
<比較例5>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン(表中、「化合物6」と記す。)0.068gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら58℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は71℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、71℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料P)を得た。
試料Pの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0097】
<比較例6>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン(表中、「化合物6」と記す。)0.113gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら54℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は75℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料Q)を得た。
試料Qの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0098】
<比較例7>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、1,3-ブタジエン0.81kg、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン(表中、「化合物6」と記す。)0.113gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら52℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は76℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、76℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料R)を得た。
試料Rの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0099】
<比較例8>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、テトラメチレンジアミン(表中、「化合物7」と記す。)0.25gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら50℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は78℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、78℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料S)を得た。
試料Sの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0100】
<比較例9>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、テトラメチレンジアミン(表中、「化合物7」と記す。)0.25gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら53℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は84℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、84℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料T)を得た。
試料Tの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0101】
<比較例10>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、テトラメチレンジアミン(表中、「化合物7」と記す。)0.46gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら52.0℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は75℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、75℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。
この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料U)を得た。
試料Uの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0102】
<比較例11>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、テトラメチレンジアミン(表中、「化合物7」と記す。)0.25gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら50℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は79℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.42g添加して、79℃の温度条件で5分間のカップリング反応を実施した。この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料V)を得た。
試料Vの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0103】
<比較例12>
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御可能なオートクレーブを反応器として使用した。
予め不純物を除去したシクロヘキサン5.6kg、スチレン0.13kg、1,3-ブタジエン0.68kg、テトラメチレンジアミン(表中、「化合物7」と記す。)0.25gを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、その混合物を撹拌しながら48℃まで加熱した。
次に、n-ブチルリチウム(表中、「n-BuLi」と略記する。)のシクロヘキサン溶液をリチウム添加量として6.12mmolとなるように反応器に供給し反応を開始した。
最終的な反応器内のピーク温度は79℃に達した。
ピーク温度から1分後、反応器に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。この重合体溶液に0.25gのメタノールを添加して反応を終了した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:BHT)1.5gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン-ブタジエン共重合体(試料W)を得た。
試料Wの重合条件の詳細、及び分析により得た物性及び評価の結果を表1に示した。
【0104】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の共役ジエン系重合体の製造方法は、自動車の内装・外装品、防振ゴム、ベルト、はきもの、発泡体、各種工業部品、タイヤ用途等の材料の製造技術の分野において、産業上の利用可能性がある。