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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】ミラーアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20231020BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20231020BHJP
   G02B 7/182 20210101ALI20231020BHJP
【FI】
G02B26/08 E
G02B26/10 104
G02B26/10 101
G02B7/182
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019145136
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021026137
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 清朗
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-198716(JP,A)
【文献】実開昭49-150234(JP,U)
【文献】特開平04-186313(JP,A)
【文献】特開2005-018067(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0049288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08
G02B 26/10
G02B 7/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸の周りに回動可能な光反射面を有するミラー体と、
一対のヒンジ部を含み前記回動軸の方向に延びる軸部を有し、前記ミラー体を前記回動軸の周りに回動させる回動機構と、
前記ミラー体を前記回動軸に沿った方向に移動させるスライド機構と、を有し、
前記光反射面は、前記回動軸に沿った方向において起伏する曲面形状を有することを特徴とするミラーアクチュエータ。
【請求項2】
回動軸の周りに回動可能な光反射面を有するミラー体と、
前記ミラー体を前記回動軸の周りに回動させる回動機構と、
前記ミラー体を支持する回動板と、
前記ミラー体を前記回動軸に沿った方向に移動させるスライド機構と、を有し、
前記光反射面は、前記回動軸に沿った方向において起伏する曲面形状を有し、
前記回動軸は、前記回動板を平面視した際に前記回動軸の少なくとも一部が前記ミラー体と重なっていることを特徴とする、ミラーアクチュエータ。
【請求項3】
前記ミラー体の前記光反射面は、前記回動軸に垂直な方向において平坦な面形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のミラーアクチュエータ。
【請求項4】
前記ミラー体の前記光反射面は、前記回動軸に垂直な方向に沿った方向を軸方向とするシリンドリカル形状を有することを特徴とする請求項に記載のミラーアクチュエータ。
【請求項5】
前記回動機構及び前記スライド機構を構成し、前記ミラー体を囲んで前記ミラー体を回動可能なように支持し、かつ前記回動軸に沿って移動可能な内側枠体を有することを特徴とする請求項1、3又は4のいずれか1つに記載のミラーアクチュエータ。
【請求項6】
前記スライド機構は、前記内側枠体を囲む矩形の外側枠体と、前記外側枠体の内側において前記内側枠体を移動可能なように弾性的に支持する弾性体部と、を有することを特徴とする請求項に記載のミラーアクチュエータ。
【請求項7】
前記弾性体部は、前記外側枠体における前記回動軸に沿った第1の方向において互いに対向する第1及び第2の内側面にそれぞれ設けられ、各々が前記第1の方向に沿って蛇腹状に折り重ねられた第1及び第2の板ばねを含むことを特徴とする請求項に記載のミラーアクチュエータ。
【請求項8】
前記スライド機構は、
前記外側枠体における前記第の方向に垂直な第2の方向において互いに対向する第3及び第4の内側面にそれぞれ設けられた第1及び第2の永久磁石と、
前記第2の方向において前記ミラー体を挟むように前記内側枠体の外周部にそれぞれ設けられ、各々が前記第1の方向に沿って柱状に延びる第1及び第2のコアと、
前記第1及び第2のコアにそれぞれ螺旋状に巻き付けられた第1及び第2のコイルと、を有することを特徴とする請求項に記載のミラーアクチュエータ。
【請求項9】
前記ミラー体は、前記回動軸の周りに回動可能なように前記内側枠体の内側において前記内側枠体に支持された回動板と、前記回動板の1の板面に設けられかつ前記1の板面に対して傾斜しつつ前記回動軸に垂直な方向に沿って延びる円筒面を有するシリンドリカルミラーと、を有することを特徴とする請求項乃至のいずれか1つに記載のミラーアクチュエータ。
【請求項10】
前記回動機構は、前記回動板の前記1の板面とは反対の他の板面に設けられ、前記他の板面に垂直な方向に沿って柱状に延びる第3のコアと、前記第3のコアに螺旋状に巻き付けられた第3のコイルと、を有することを特徴とする請求項に記載のミラーアクチュエータ。
【請求項11】
前記ミラー体は、前記回動軸の周りに回動可能に配置された回動板と、前記光反射面を有し且つ前記回動板の1の板面に設けられたミラーと、を有し、
前記光反射面は、前記回動板の前記1の板面に対して傾斜していることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1つに記載のミラーアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーを含む可動式のミラーアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物の光走査を行い、当該対象物までの距離及び形状などに関する情報を得る走査装置が知られている。当該走査装置には、例えば、光の反射方向を変化させることで種々の方向に光を出射する可動式のミラーが設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ミラー面を有する静電アクチュエータを含む光走査装置が開示されている。また、特許装置2には、往復直線運動を行うスキャナ面を有する光偏向器が開示されている。また、特許文献3には回転ミラーを含む光ビームスキャナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開1994-337953号公報
【文献】特開2003-005121号公報
【文献】特開2013-083626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動ミラー及びそのミラーの移動機構を走査装置などの種々の装置に搭載する場合、ミラー及びその移動機構を配置するための領域並びに当該ミラーが移動する領域などの当該ミラーのために用意するスペースが大きくなりやすい。一方、当該ミラー用のスペースを小さくしようとする場合、光の出射方向の変化範囲が小さくなり、走査領域が狭くなりやすい。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、省スペース化を図ることが可能であり、かつ広範囲に亘って所望の方向に光を反射させることが可能なミラーアクチュエータを提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、回動軸の周りに回動可能な光反射面を有するミラー体と、ミラー体を回動軸の周りに回動させる回動機構と、ミラー体を回動軸に沿った方向に移動させるスライド機構と、を有し、光反射面は、回動軸に沿った方向において起伏する曲面形状を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係るミラーアクチュエータを偏向素子として含む走査装置の全体構成を示す図である。
図2】実施例1に係る偏向素子の斜視図である。
図3】実施例1に係る偏向素子の斜視図である。
図4】実施例1に係る偏向素子におけるシリンドリカルミラーの斜視図である。
図5A】実施例1に係る偏向素子におけるシリンドリカルミラーの断面図である。
図5B】実施例1に係る偏向素子におけるシリンドリカルミラーの断面図である。
図6】実施例1に係る偏向素子の平面図である。
図7】実施例1に係る偏向素子の平面図である。
図8】実施例1に係る偏向素子を経た光の進路を示すである。
図9】実施例1に係る偏向素子を経た光の進路を示すである。
図10】実施例1に係る偏向素子の側面図である。
図11】実施例1に係る偏向素子の側面図である。
図12】実施例1に係る偏向素子を経た光の進路を示すである。
図13】実施例1に係る偏向素子を経た光の進路を示すである。
図14】実施例1に係る走査装置の走査面に照射される光の形状及び軌跡を示す図である。
図15】実施例1の変形例に係る偏向素子におけるシリンドリカルミラーの斜視図である。
図16】実施例2に係る走査装置の全体構成を示す図である。
図17】実施例2に係る走査装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1に係る走査装置10の模式的な配置図である。本実施例においては、走査装置10は、所定の領域(以下、走査領域と称する)R0の光走査を行い、走査領域R0内に存在する対象物OBまでの距離を測定する測距装置である。図1を用いて、走査装置10の構成について説明する。なお、図1には、走査領域R0及び対象物OBを模式的に示している。
【0011】
走査装置10は、1次光L1として例えばパルス光を生成及び出射する光源11を有する。本実施例においては、光源11は、1次光L1として赤外領域にピーク波長を有するレーザ光を生成し、これを断続的に出射する。
【0012】
走査装置10は、光源11から出射された1次光L1を走査領域R0に向けて方向可変に偏向しつつ出射する偏向素子12を有する。偏向素子12は、偏向した1次光L1を2次光L2として出射する。
【0013】
本実施例においては、偏向素子12は、基準軸AXに沿ってスライドしかつ基準軸AXの周りに回動する光反射面12Mを有するミラーアクチュエータである。また、偏向素子12の光反射面12Mは、少なくとも1次光L1に対して反射性を有する。
【0014】
偏向素子12は、周期的に光反射面12Sがスライド及び回動するように構成されている。従って、偏向素子12から出射される2次光L2は、その出射方向が周期的に変化する。この2次光L2の出射方向の1つの変化周期内に2次光L2が照射される領域は、走査領域R0となる。走査領域R0は、2次光L2が出射される仮想の3次元空間である。図1においては、走査領域R0の外縁を破線で模式的に示した。
【0015】
例えば、走査領域R0は、光反射面12Mの回動方向である基準軸AXの周方向に対応する高さ方向D1に沿った高さ方向範囲と、光反射面12Mのスライド方向である基準軸AXの軸方向に対応する幅方向D2に沿った幅方向範囲と、2次光L2の光軸の軸方向に対応する奥行方向に沿った奥行方向範囲と、を有する錐状の空間として定義されることができる。
【0016】
例えば、本実施例においては、偏向素子12は、湾曲した光反射面12Mを有する。従って、光反射面12Mが移動することで、1次光L1が入射する光反射面12Mの位置(以下、1次光L1の入射領域と称する場合がある)が変化する。また、当該1次光L1の入射領域における光反射面12Mの法線ベクトルは、光反射面12Mの移動に応じて周期的に変化する。
【0017】
従って、例えば、走査領域R0の高さ方向範囲は、1次光L1の光軸及び1次光L1の入射領域における光反射面12Mの法線ベクトルによって定まる2次光L2の光軸の軸方向における、基準軸AXの軸方向の成分の変化範囲に対応する。また、走査領域R0の幅方向範囲は、当該2次光L2の軸方向における基準軸AXの軸方向の成分の変化範囲に対応する。また、走査領域R0の奥行方向範囲は、2次光L2が所定の強度(走査装置10が検出可能な強度)を維持できる距離の範囲に対応する。
【0018】
また、走査領域R0内における偏向素子12から所定の距離だけ離れた仮想の平面を走査面R1としたとき、走査面R1は、高さ方向D1及び幅方向D2に沿って広がる2次元的な領域として定義されることができる。2次光L2は、この走査面R1を走査するように、走査領域R0に向けて出射される。
【0019】
また、図1に示すように、走査領域R0に対象物OB(すなわち2次光L2に対して反射性又は散乱性を有する物体又は物質)が存在する場合、2次光L2は、対象物OBによって反射又は散乱される。対象物OBによって反射された2次光L2は、その一部が、反射光(以下、3次光と称する場合がある)L3として、2次光L2とほぼ同一の光路を2次光L2とは反対の方向に向かって進み、偏向素子12に戻って来る。
【0020】
走査装置10は、1次光L1の光路上に設けられて1次光L1及び3次光L3を分離する分離素子13と、分離された3次光L3を受光する受光素子14と、を有する。分離素子13は、例えば、1次光L1を反射させ、3次光L3を透過させるビームスプリッタである。
【0021】
本実施例においては、受光素子14は、偏向素子12を経て投光され、対象物OBによって反射され、かつ偏向素子12を経た光である3次光L3を受光する。また、受光素子14は、3次光L3を検出し、3次光L3の検出結果、例えば3次光L3の強度値を示す電気信号を生成する少なくとも1つの検出素子を有する。走査装置10は、受光素子14によって生成された当該電気信号を走査領域R0の走査結果として生成する。
【0022】
なお、図示していないが、走査装置10は、例えば、光源11と偏向素子12との間の1次光L1の光路上に設けられて1次光L1を整形する光学系を有していてもよい。また、走査装置10は、分離素子13と受光素子14との間の3次光L3の光路上に設けられて3次光L3を集光する光学系を有していてもよい。これらの光学系は、例えば、少なくとも1つのレンズを含み、フィルタを含んでいてもよい。
【0023】
走査装置10は、光源11、偏向素子12及び受光素子14を駆動し、また、その制御を行う制御部15を有する。制御部15は、光源11の駆動及び制御を行う光源制御部15Aと、偏光素子12の駆動及び制御を行う偏向素子制御部15Aと、受光素子14の駆動及び制御を行う受光素子制御部15Cと、を有する。
【0024】
また、制御部15は、受光素子15による3次光L3の受光結果に基づいて対象物OBまでの距離を測定する測距部15Dを有する。本実施例においては、測距部15Dは、受光素子14によって生成された電気信号から3次光L3を示すパルスを検出する。また、測距部15Dは、2次光L2の出射タイミングと3次光L3の受光タイミングとの間の時間差に基づくタイムオブフライト法によって、対象物OB(又はその一部の表面領域)までの距離を測定する。また、測距部15Dは、測定した距離情報を示すデータ(測距データ)を生成する。
【0025】
また、本実施例においては、測距部15Dは、走査領域R0(走査面R1)を複数の測距点(走査点)に区別し、当該複数の測距点の各々の測距結果(距離値)を画素として示す走査領域R0の画像(測距画像)を生成する。本実施例においては、測距部15Dは、測距点と回動素子12の側面12Sの変位とを示す情報とを対応付け、走査領域R0の2次元マップ又は3次元マップを示す画像データを生成する。
【0026】
また、測距部15Dは、例えば、2次光L2の出射方向の変化周期を走査領域R0を走査する周期である走査周期とし、この走査周期毎に1つの測距画像を生成する。なお、測距部15Dは、測距画像を表示する表示部(図示せず)に接続されていてもよく、当該表示部に当該測距画像を送信するように構成されていてもよい。
【0027】
図2及び図3は、偏向素子12の模式的な斜視図である。図3は、図2とは異なる方向から偏向素子12を見たときの斜視図である。図2及び図3を用いて、偏向素子12に全体構成について説明する。
【0028】
まず、図2を参照すると、本実施例においては、偏向素子12は、矩形の(断面が矩形の)枠状体(以下、外側枠体と称する)21を有する。外側枠体21は、4つの内側面(以下、第1、第2、第3及び第4の内側面とそれぞれ称する)S1、S2、S3及びS4を有する。第1の内側面S1及び第2の内側面S2は、互いに対向して配置された外側枠体21の内壁面である。また、第3の内側面S3及び第4の内側面S4は、互いに対向して配置された外側枠体21の内壁面である。
【0029】
以下においては、第1及び第2の内側面S1及びS2が対向する方向をx軸方向(第1の方向)と称する。また、本実施例においては、第3及び第4の内側面S3及びS4が対向する方向は、外側枠体21の面内においてx軸方向に直交する方向であり、以下においてはy軸方向(第2の方向)と称する。また、以下においては、x軸方向及びy軸方向の各々に直交する方向をz軸方向(第3の方向)と称する。なお、本実施例においては、x軸方向は、基準軸AXの軸方向に対応する。また、本実施例においては、z軸方向は、1次光L1の光軸の軸方向に対応する。
【0030】
偏向素子12は、外側枠体21におけるx軸方向において互いに対向する第1及び第2の内側面S1及びS2にそれぞれ設けられ、各々がx軸方向に沿って蛇腹状に折り重ねられた第1及び第2の板ばね22A及び22Bからなる弾性体部22を有する。第1及び第2の板ばね22A及び22Bは、それぞれ、その一端が第1及び第2の内側面S1及びS2に固定されている。
【0031】
偏向素子12は、外側枠体21におけるy軸方向において互いに対向する第3及び第4の内側面S3及びS4にそれぞれ設けられた第1及び第2の永久磁石23A及び23Bからなる磁性体部23を有する。第1及び第2の永久磁石23A及び23Bは、両者の間で磁界を生成する。例えば、外側枠体21の内側においては、y軸方向に沿った方向の磁界が生成される。
【0032】
偏向素子12は、外側枠体21の内周部において第1及び第2の板ばね22A及び22Bによってx軸方向に沿って移動可能に支持された矩形の(断面が矩形の)枠状体(以下、内側枠体と称する)24を有する。内側枠体24は、第1及び第2の板ばね22A及び22Bによってx軸方向の移動を付勢された状態で、第1及び第2の板ばね22A及び22Bの他端に固定されている。換言すれば、弾性体部22は、外側枠体21の内側において内側枠体24を移動可能なように弾性的に支持する。
【0033】
本実施例においては、内側枠体24は、外側枠体21の第1~第4の内側面S1~S4にそれぞれ対向する4つの外側面を有する。第1及び第2の板ばね22A及び22Bは、それぞれ、内側枠体24における外側枠体21の第1及び第2の内側面S1及びS2に対向する外側面に固定されている。
【0034】
偏向素子12は、x軸方向を回動軸とし、x軸方向の周りに回動するように内側枠体24の内側において内側枠体24に支持された板状体(以下、回動板と称する)25を有する。回動板25は、互いに反対側を向いた互いに平行な板面(1の板面及び他の板面、以下、ミラー支持面及び裏面と称する)25A及び25Bを有する。なお、図2は、回動板25のミラー支持面25を見たときの偏向素子12の斜視図である。また、図3は、回動板25の裏面25Bを見たときの偏向素子12の斜視図である。
【0035】
偏向素子12は、回動板25をx軸方向の周りに回動するように内側枠体24に対して回動板25を結合するヒンジ部26を有する。ヒンジ部26は、各々がx軸方向に沿って延びかつ回動板25の外周部において回動板25に固定された一対のシャフトと、内側枠体24に設けられて当該一対のシャフトを回動可能なように支持するシャフトベースと、を含む。
【0036】
すなわち、内側枠体24は、外側枠体21の内周部において第1及び第2の板ばね22A及び22Bによってx軸方向に沿って移動可能に支持され、かつ回動板25を回動可能に支持している。
【0037】
偏向素子12は、回動板25のミラー支持面25Aに設けられ、かつy軸方向を軸方向とする凸面のシリンドリカルミラー27を有する。本実施例においては、シリンドリカルミラー27は、ミラー支持面25Aに対して傾斜しつつy軸方向に沿って延びる円筒面を有する。シリンドリカルミラー27の円筒面は、x軸方向において起伏する。シリンドリカルミラー27の円筒面は、偏向素子12における光反射面12Mとして機能する。
【0038】
図3を参照すると、偏向素子12は、y軸方向において回動板25を挟むように内側枠体24の外周部に固定された第1のコイル部28を有する。第1のコイル部28は、回動板25と磁性体部23との間に設けられている。
【0039】
第1のコイル部28は、第1の永久磁石23Aに対向する内側枠体24の外側面に固定され、x軸方向に沿って柱状に延びる第1のコア28Aと、第1のコア28Aに螺旋状に巻き付けられた第1のコイルと28Bと、を有する。また、第1のコイル部28は、第2の永久磁石23Bに対向する内側枠体24の外側面に固定され、x軸方向に沿って柱状に延びる第2のコア28Cと、第2のコア28Cに螺旋状に巻き付けられた第2のコイル28Dと、を有する。
【0040】
また、偏向素子12は、回動板25の裏面25Bに設けられた第2のコイル部29を有する。第2のコイル部29は、に設けられ、回動板25の裏面25Bに垂直な方向(非駆動時においてはz軸方向に対応する方向)に沿って柱状に延びる第3のコア29Aと、第3のコア29Aに螺旋状に巻き付けられた第3のコイル29Bと、を有する。第2のコイル部29は、外側枠体21の内側において、第1の永久磁石23Aと第2の永久磁石23Bとの間に配置されている。
【0041】
制御部15における偏向素子制御部15Bは、第1のコイル28B、第2のコイル28D及び第3のコイル29Bの各々に対し、電流を印加し、またその印加する電流を変化させる。本実施例においては、偏向素子制御部15Bは、第1のコイル28B、第2のコイル28D及び第3のコイル29Bの各々に対し、交流電流を印加する。偏向素子制御部15Bは、偏向素子12を駆動する駆動回路として機能する。
【0042】
図4は、シリンドリカルミラー27の斜視図である。図4においては、ヒンジ部26及び第2のコイル部29を省略している。図4に示すように、シリンドリカルミラー27は、回動板25のミラー支持面25Aに対して傾斜する方向でありかつy軸方向に沿った方向に延びる円筒面27Aを有する。
【0043】
図5A及び図5Bの各々は、シリンドリカルミラー27の断面図である。図5A及び図5Bは、それぞれ、図4の5A-5A線及び5B-5B線に沿った断面図である。また、図5A及び図5Bは、それぞれ、シリンドリカルミラー27をzx平面及びyz平面に沿って切断した場合の断面図である。
【0044】
図5Aに示すように、シリンドリカルミラー27の円筒面27Aは、z軸方向において回動板25から離れる方向に凸の面形状を有する。換言すれば、円筒面27Aは、x軸方向において連続的に起伏した曲面形状を有する。一方、図5Bに示すように、シリンドリカルミラー27の円筒面27Aは、y軸方向においては平坦な面形状を有し、本実施例においてはミラー支持面25Aに対してz軸方向に傾斜している。
【0045】
次に、図6及び図7を用いて、偏向素子12のスライド動作について説明する。本実施例においては、第1及び第2の永久磁石23A及び23Bは、互いに反対の磁極を構成する。
【0046】
例えば、第1の永久磁石23AはN極を構成し、第2の永久磁石23Bは、S極を構成する。この場合、図6に示すように、第1及び第2の永久磁石23A及び23B間には、駆動時及び非駆動時に関わらず、第1の永久磁石23Aから第2の永久磁石23Bに向かうy軸方向(+y方向)の磁界MGが発生する。なお、非駆動時におけるシリンドリカルミラー27の円筒面27Aの頂部のx軸方向における位置を基準位置X0とし、図に破線で示した。
【0047】
また、本実施例においては、第1及び第2のコイル28B及び28Dは、x軸方向において互いに同一の方向に向かって(例えば+x方向に向かって)同一の巻き方向で螺旋状に巻き付けられている。また、本実施例においては、偏向素子制御部15Bは、第1及び第2のコイル28B及び28Dに対し、互いに反対方向の電流を印加する。
【0048】
例えば、駆動中のあるタイミングにおいては、図7に示すように、第1及び第2のコイル28B及び28Dには、その第1及び第2の永久磁石23A及び23Bに対向するコイル部分にz軸方向の同一方向(例えば+z方向)に電流が流れるように、電流CRが印加される。
【0049】
このタイミングにおいては、図7に示すように、内側枠体24に対して-x方向に力が発生し、内側枠体24が第1及び第2の板ばね22A及び22Bに支持されながら、-x方向にスライドする。従って、シリンドリカルミラー27の円筒面27の頂部は、基準位置X0から-x方向にスライドする。
【0050】
また、同様に、第1及び第2のコイル28B及び28Dに反対の方向の電流が印加される場合には、内側枠体24は、反対の方向(+x方向)にスライドする。このようにして、内側枠体24及び内側枠体24に支持された回動板25は、x軸方向においてスライド移動を行う。これによって、シリンドリカルミラー27は、基準軸AXの軸方向においてスライド移動を行う。
【0051】
換言すれば、本実施例においては、弾性体部22(第1及び第2の板ばね22A及び23B)、磁性体部23(第1及び第2の永久磁石23A及び23B)、第1のコイル部28(第1及び第2のコイル28B及び28D)、及び内側枠体25は、回動板25及びシリンドリカルミラー27(光反射面12M)を基準軸AXに沿った方向にスライド移動させるスライド機構として機能する。
【0052】
図8及び図9は、シリンドリカルミラー27によって反射された1次光L1である2次光L2の出射方向について説明する図である。図8及び図9は、シリンドリカルミラー27の模式的な上面図である。
【0053】
まず、例えば、本実施例においては、光源11及び分離素子13は、偏向素子12のシリンドリカルミラー27に対し、1次光L1がz軸方向のみの成分を持った状態で入射するように構成及び配置されている。そして、シリンドリカル27がスライドすることで、1次光L1のシリンドリカルミラー27による反射方向は、少なくともx軸方向において周期的に変化する。
【0054】
例えば、シリンドリカルミラー27の円筒面27Aにおける頂部の法線ベクトルは、ほとんどx軸方向の成分を持たない。従って、シリンドリカルミラー27の円筒面27Aの頂部に1次光L1が入射するタイミングにおいては、1次光L1は、y軸方向及びz軸方向の成分のみを持った方向に反射される。従って、このタイミングにおいては、2次光L2は、図8に示すように、x軸方向の成分を持たない方向に出射する。
【0055】
一方、シリンドリカルミラー27の円筒面27Aにおける他の部分の法線ベクトルは、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の成分を持つ。従って、当該円筒面27Aの他の部分に1次光L1が入射するタイミングにおいては、1次光L1は、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の成分を持った方向に反射される。従って、このタイミングにおいては、2次光L2は、例えば図9に示すように、図8に示すタイミングに比べ、x軸方向の成分が変化した方向(例えば+x方向に変化した方向)に出射する。
【0056】
このように、シリンドリカルミラー27をx軸方向(基準軸AXに沿った方向)においてスライド移動させることによって、2次光L2の出射方向を、x軸方向において変化させることができる。すなわち、偏向素子12は、シリンドリカルミラー27のスライドによって1次光L1の偏向方向をx軸方向において変化させる。
【0057】
図10及び図11を用いて、偏向素子12の回動動作について説明する。本実施例においては、偏向素子制御部15Bは、第3のコイル29Bに対し、交流電流を印加する。また、図10に示すように、例えば、第1及び第2の永久磁石23A及び23B間には、第1の永久磁石23Aから第2の永久磁石23Bに向かうy軸方向(+y方向)の磁界MGが発生する。例えば、非駆動時における回動板25及びシリンドリカルミラー27の回動角を基準角A0とする。
【0058】
そして、例えば、駆動中のあるタイミングにおいては、図11に示すように、第3のコイル29Bには、その第1の永久磁石23Aに対向するコイル部分にx軸方向における一方の方向(例えば+x方向)の電流が流れ、その第2の永久磁石23Bに対向するコイル部分にx軸方向における他の方向(例えば-x方向)に電流が流れるように、電流CRが印加される。
【0059】
このタイミングにおいては、図11に示すように、回動板25の第1の永久磁石23Aに対向する部分においては-z方向の力が発生し、回動板25の第2の永久磁石23Bに対向する部分においては+z方向の力が発生する。従って、このタイミングにおいては、回動板25及びシリンドリカルミラー27は、ヒンジ部26によって内側枠体24に支持されながら、基準角A0とは異なる角度A1まで、x軸(基準軸AX)の周方向(図では時計回り)に回動する。
【0060】
また、同様に、第3のコイル29Bに反対の方向の電流が印加される場合には、回動板25は、反対の方向(図では反時計回り)に回動する。このようにして、回動板25及びシリンドリカルミラー27は、基準軸AXの周りに回動する。
【0061】
換言すれば、本実施例においては、磁性体部23(第1及び第2の永久磁石23A及び23B)、第2のコイル部29(第3のコイル29B)、内側枠体24及びヒンジ部26は、回動板25及びシリンドリカルミラー27(光反射面12M)を基準軸AXの周りに回動させる回動機構として機能する。
【0062】
図12及び図13は、シリンドリカルミラー27によって反射された1次光L1である2次光L2の出射方向について説明する図である。図12及び図13は、シリンドリカルミラー27の模式的な側面図である。
【0063】
シリンドリカル27は、回動することで、その円筒面27Aの法線ベクトルを少なくともz軸方向に変化させる。従って、1次光L1のシリンドリカルミラー27による反射方向は、少なくともz軸方向において周期的に変化する。
【0064】
例えば、図12に示すように、駆動中のあるタイミングにおいては、1次光L1は、x軸方向、y軸方向及びz軸方向において所定の成分を持った方向に反射される。従って、このタイミングにおいては、2次光L2は、図12に示すように、当該所定の成分を持った方向に出射する。一方、図13に示すように、駆動中の他のあるタイミングにおいては、1次光L1は、図12に示すタイミングに比べ、z軸方向の成分が変化した方向に出射する。
【0065】
このように、シリンドリカルミラー27をx軸方向(基準軸AXに沿った方向)の周りに回動させることによって、2次光L2の出射方向を、z軸方向において変化させることができる。すなわち、偏向素子12は、シリンドリカルミラー27の回動によって1次光L1の偏向方向をz軸方向において変化させる。
【0066】
図14は、走査面R1上における2次光L2の被照射位置を模式的に示す図である。図14においては、走査面R1上における2次光L2の照射軌跡TRを破線で示している。本実施例においては、走査装置10は、幅方向D2に沿って2次光L2を偏向しつつ順次出射して走査線を取得し、これを高さ方向D1に沿って複数回行う態様で、走査面R1(走査領域R0)を走査する。
【0067】
より具体的には、例えば、本実施例においては、偏向素子制御部15Bは、シリンドリカルミラー27のスライド周期が回動周期よりも早くなるように、偏向素子12を制御する。従って、シリンドリカルミラー27は、相対的に高速で基準軸AXに沿ってスライドし、相対的に低速で基準軸AXの周りに回動する。従って、偏向素子12から出射する2次光L2は、幅方向D2には高速に偏向され、高さ方向D1には低速で偏向される。
【0068】
換言すれば、走査装置10は、走査領域R0に対し、基準軸AXの軸方向に対応する幅方向D2に沿った走査線を高さ方向D1に沿って複数本得るようなラスタ走査を行う。また、走査装置10は、当該ラスタ走査を周期的に行うような動作を行う。
【0069】
上記したように、走査装置10は、スライド動作及び回動動作を行うシリンドリカルミラー27を含む偏光素子12に1次光L1を反射させることで、走査領域R0に向けて走査用の光である2次光L2を出射する。また、この偏向素子12は、2次光L2の出射方向を広範囲に亘って変化させることが可能であり、また、z軸方向において大幅に小型化された構造を有する。
【0070】
より具体的には、偏向素子12は、基準軸AXに沿った方向(すなわちxy平面上における1の方向範囲)シリンドリカルミラー27をスライドさせるスライド機構と、シリンドリカルミラー27を基準軸AXの周りに回動させる回動機構と、を組み合わせた構造を有する。
【0071】
従って、例えば、xy平面上において2つの軸に沿ってシリンドリカルミラー27を移動させる機構に比べ、z軸方向の装置サイズが大幅に小さくなる。また、磁性体部23は、スライド機構及び回動機構に共通の要素として使用される。従って、部品点数が少なくなり、また装置サイズが小さくなることにもつながる。
【0072】
また、偏向素子12は、シリンドリカルミラー27のように基準軸AX(スライド軸)において連続的に面形状が変化する光反射面12Mを有するミラー体を有する。このミラー体の平面形状は、ミラー体のスライド量に無関係に構成することができる。
【0073】
従って、例えば、シリンドリカルミラー27の曲率を比較的大きくすることで、シリンドリカルミラー27のスライド量が小さくても、2次光L2の出射方向の変化量(本実施例においては基準軸AXに沿った方向の変化量)を大きくすることができる。
【0074】
また、例えば、スライド機構及び回動機構は、互いの動作に影響を与えることがほとんどない。従って、例えば、シリンドリカルミラー27の動作が安定する。また、シリンドリカルミラー27のスライド量及び回動角についても、それぞれの駆動情報を取得することなどによって、正確にかつ安定して監視することができる。
【0075】
従って、偏向素子12は、省スペース化を図ることが可能であり、かつ広範囲に亘って所望の方向に光を反射させることが可能な構造を有する。また、偏向素子12を含むことで、走査装置10は、広範囲に亘って正確に2次光L2を出射することで、正確な3次光L3の処理を行うことができ、また、正確な走査情報を得ることが可能となる。
【0076】
なお、本実施例においては、シリンドリカルミラー27が回動板25に固定され、また、その円筒面27Aが回動板25のミラー支持面25Aに対して傾斜しつつy軸方向に沿った方向に延びるように構成されている場合について説明した。しかし、シリンドリカルミラー27の構成はこれに限定されない。例えば、シリンドリカルミラー27の円筒面27Aはミラー支持面25Aに平行な方向に延びていてもよい。
【0077】
図15は、実施例1の変形例に係る走査装置10Aにおける偏向素子12Aの一部の斜視図である。走査装置10Aは、偏向素子12の構成を除いては、走査装置10と同様の構成を有する。また、偏向素子12Aは、シリンドリカルミラー27Mの構成を除いては、偏向素子12と同様の構成を有する。
【0078】
本変形例においては、偏向素子12Aは、回動板25のミラー支持面25Aに平行でかつy軸方向に沿った方向に延びる円筒面27Aを有するシリンドリカルミラー27Mを有する。すなわち、シリンドリカルミラー27Mの円筒面27Aは、y軸方向においては、ミラー面25Aに平行な平坦な面形状を有する。
【0079】
偏向素子12Aのように、回動板25上には、ミラー支持面25Aに平行な方向を軸方向とする円筒面27Aを有するシリンドリカルミラー27Mが設けられていてもよい。この場合でも、回動板25を回動させ、かつスライドさせることで、2次光L2の出射方向を広範囲に亘って安定して変化させることができる。
【0080】
なお、xy平面内の素子サイズを小さくすることを考慮すると、偏向素子12のように、ミラー支持面25Aに対して傾斜する円筒面27Aのシリンドリカルミラー27を有することが好ましい。これによって、回動板25のy軸方向のサイズを小さくすることができ、偏向素子12のy軸方向のサイズを小さくすることができる。
【0081】
また、偏向素子12は、シリンドリカルミラー27を有していなくてもよい。例えば、偏向素子12は、回動板25の一部に光反射面12Mとして機能する表面領域が設けられていればよい。この場合、回動板25がミラー体として機能する。例えば、当該ミラー体の光反射面12Mは、y軸方向(基準軸AXに垂直な方向)に沿った方向を軸方向とするシリンドリカル形状を有していればよい。また、光反射面12Mは、基準軸AXに沿って円筒面が連なるようなシリンドリカル形状を有していてもよい。
【0082】
また、光反射面12Mは、シリンドリカル形状を有する場合に限定されない。例えば、光反射面12Mは、回動軸である基準軸AXに沿った方向において起伏する曲面形状を有していればよい。例えば、光反射面12Mは、波状の形状を有していてもよいし、球状の形状を有していてもよい。
【0083】
なお、偏向素子12を走査装置10に搭載する場合において、例えば高さ方向D1における2次光L2の出射方向を安定して変化させることを考慮すると、光反射面12Mは、例えば、円筒面27Aのように、y軸方向、すなわち基準軸AXに直交する方向においては平坦な形状を有することが好ましい。
【0084】
また、本実施例においては、磁性体部23、第1及び第2のコイル部28及び29、並びにヒンジ部26などが回動板25のスライド機構及び回動機構として機能する場合について説明した。しかし、回動板25は、種々の機構によってスライド及び回動されるように構成されていればよい。例えば、電磁気的に回動板25を動作させるのではなく、機械的、圧電的、電気的又は熱的に回動板25を動作させるような機構が設けられていてもよい。
【0085】
例えば、偏向素子12は、回動機構及び前記スライド機構を構成し、回動板25(ミラー体)を囲んで回動板25を基準軸AXの周りに回動可能なように支持し、かつ種々の態様で基準軸AXに沿って移動可能な内側枠体24を有していればよい。
【0086】
また、例えば、本実施例においては、回動機構が磁性体部23及び第2のコイル部29(第3のコア29A及び第3のコイル29B)を含む場合について説明した。しかし、回動機構は、例えば回動板25を機械的に回動させるように構成されていてもよい。
【0087】
また、本実施例においては、スライド機構が弾性体部22、磁性体部23及び第1のコイル部28(第1及び第2のコア28A及び28C並びに第1及び第2のコイル28B及び28D)を含む場合について説明した。しかし、スライド機構の構成はこれに限定されない。
【0088】
例えば、スライド機構は、内側枠体24を囲む矩形の外側枠体21と、外側枠体21の内側において内側枠体24を移動可能なように弾性的に支持する弾性体部22と、を有していればよい。
【0089】
また、本実施例においては、弾性体部22は、外側枠体21における基準軸AX(回動軸)に沿ったx軸方向(第1の方向)において互いに対向する第1及び第2の内側面S1及びS2にそれぞれ設けられ、各々がx軸方向に沿って蛇腹状に折り重ねられた第1及び第2の板ばね22A及び22Bを含む場合について説明した。しかし、弾性体部22は、上記したように、弾性的に内側枠体24を支持するように構成されていればよく、例えばコイルばねによって構成されていてもよい。
【0090】
換言すれば、例えば、偏向素子12は、回動軸(基準軸AX)の周りに回動可能な光反射面12Mを有するミラー体(例えば回動板25及びシリンドリカルミラー27)と、当該ミラー体を当該回動軸の周りに回動させる回動機構と、当該ミラー体を当該回動軸に沿った方向に移動させるスライド機構と、を有していればよい。また、当該光反射面12Mは、当該回動軸に沿った方向において起伏する曲面形状を有していればよい。これによって、省スペース化を図ることが可能であり、かつ広範囲に亘って所望の方向に光を反射させることが可能な走査装置10を提供することができる。
【0091】
また、偏向素子12は、走査装置10に搭載されることで1次光L1を方向可変に偏向させる光学素子として機能する。しかし、偏向素子12は、走査装置10以外の装置、すなわち走査用途以外の用途に用いられることができる。この場合、偏向素子12は、種々の用途に用いることが可能なミラーアクチュエータとなる。従って、偏向素子12は、例えば上記した構成を有することで、省スペース化を図ることが可能であり、かつ広範囲に亘って所望の方向に光を反射させることが可能なミラーアクチュエータとなる。
【実施例2】
【0092】
図16は、実施例2に係る走査装置30の全体構成を示す図である。走査装置30は、光源31、集光光学系32、及び制御部33の構成を除いては、走査装置10と同様の構成を有する。本実施例においては、光源31は、偏向素子12の基準軸AXを第1の基準軸とし、第1の基準軸AXに垂直な方向を軸方向とする軸である第2の基準軸AYに沿ってスライド可能な構成を有する。
【0093】
例えば、光源31は、例えばレーザ素子などの発光素子と、当該発光素子を第2の基準軸AYに沿ってスライドさせるスライド機構を含む。制御部33は、光源31における発光素子の発光動作と、当該スライド機構を制御する光源制御部33Aを有する。
【0094】
また、集光光学系32は、1次光L1を偏光素子12に向けて集光するように構成されている。例えば、集光光学系32は、1次光L1を偏光素子12の同一の位置に入射させるように構成されている。例えば、集光光学系32は、放物面鏡を含む。
【0095】
図17は、走査装置30の動作説明図である。走査装置30は、制御部33によって光源31及び偏向素子12を動作させることで、2次光L2を生成して2次光L2を走査領域R0に向けて出射する。
【0096】
まず、光源31は、第2の基準軸AYに沿って1次光L1の出射位置を周期的に変化させる。従って、光源31は、例えば実線及び破線で示すように、第2の基準軸AYにおいて周期的に出射方向を変化させつつ、互いに同一の方向に1次光L1を出射する。
【0097】
集光光学系32は、偏向素子12の光反射面12Mに対し、常に同じ位置に1次光L1が入射するように、1次光L1の光路を調節する。例えば、放物面鏡で集光光学系32を構成する場合、1次光L1の放物面鏡への入射位置に応じて、異なる方向に1次光L1が反射される。
【0098】
従って、偏向素子12の配置を調節することで、1次光L1は、光反射面12Mに対し、互いに異なる入射方向でかつ互いに同一の位置に入射する。これによって、偏向素子12の光反射面12Mにおける1次光L1の反射方向は、例えば、z軸方向において周期的に変化する。
【0099】
また、偏向素子12における光反射面12Mのスライド動作によって、1次光L1の反射方向は、x軸方向において周期的に変化する。従って、走査装置30においても、走査領域R0に対して広範囲に光を出射することが可能となる。また、本実施例においては、偏向素子12は、回動機構を有する必要が無い。従って、偏向素子12をさらに省スペース化することができ、小型かつ高性能なミラーアクチュエータを提供することができる。
【0100】
また、例えば、走査装置30は、第1の軸(第2の基準軸AY)に沿って異なる位置から1次光L1を出射する光源31と、第1の軸に直交する第2の軸(第1の基準軸AX)に沿ってスライド可能な光反射面12Mを有するミラー体(例えば回動板25及びシリンドリカルミラー27)と、を有する。これによって、小型かつ高性能な走査装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0101】
10、10A、30 走査装置
12、12A 偏向素子(ミラーアクチュエータ)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17