(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】電子デバイス用回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231020BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231020BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
H05K1/02 G
H05K3/00 X
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2019150486
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-04-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 古哲
(72)【発明者】
【氏名】栗城 新吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 滋
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116963(JP,A)
【文献】特開2016-009870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスを設置する主面と、該主面と対向する裏面と、を有する電子デバイス用回路基板が形成された集合基板の裏面に、底面が略平坦な形状の分割溝を該集合基板自体に形成する分割溝形成ステップ、を含み、前記分割溝形成ステップは、更に前記主面に、主面方向へ向かって開く底面が略平坦な略台形状の第一の分割溝を形成し、該略台形状の第一の分割溝は、台形を形成するテーパ面と回路基板の主面との為す角度(二面角)が45°以上90°より小さ
く、前記回路基板の主面は絶縁性材料を有し、該絶縁性材料は、前記第一の分割溝を形成する箇所に形成されない、電子デバイス用回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記分割溝形成ステップで形成された分割溝に沿って前記集合基板を切断する切断ステップ、を含む、請求項1に記載の電子デバイス用回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記切断ステップは、レーザー照射で前記集合基板を切断する、請求項2に記載の電子デバイス用回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記分割溝形成ステップで形成された分割溝は、分割溝の延伸方向に対して直交する方向の分割溝底部の長さが、0.05mm以上0.5mm以下である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の電子デバイス用回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記分割溝形成ステップ後、前記切断ステップ前に、主面に電子デバイスを設置する設置ステップを含む、請求項2に記載の電子デバイス回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合基板を個片化して、電子デバイス用回路基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス用の回路基板は、回路基板が形成された集合基板シートを個片に分離することで製造される。集合基板を個片に分離する際には、ダイサーやレーザーにより分割溝を設け、次いでプレスにより個片化する方法が知られている。
【0003】
具体的には、特許文献1には、割断時のバリ等の発生を防止するため、レーザー光により分割溝を形成し、その後振動を加えながらプレスを行うことで基板を個片化する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、基板の一方の面に略台形状の第1の溝部を形成し、該第1の溝部の底面に、当該第1の溝部が延在する方向に延びる略V形状の切欠を形成し、溝部の両側から弾性体を挟み込んでプレスすることで、立体回路基板を分割する方法が開示されている。更に、立体回路基板の他方の面の第1の溝部の対向側に、略台形の第2の溝部を形成する形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-294523号公報
【文献】特開2006-339459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の方法では、割断時のバリ等の発生を低減できるものの、プレスを行っているため基板裏面の端部には依然バリの発生があった。
また、特許文献2では、基板の両面に溝部を形成することで基板裏面の端部に発生するバリの発生を防止できるものの、やはりプレスにより割断するために個片となった基板の側面がただれて、尖った先鋭部が生じる場合があった。先鋭部が生じると、基板の側面を挟持する際に挟持するための治具を傷つける場合があり、また、挟持の際に先鋭部が折れて異物が発生する場合があるなど、作業性を低下させる場合があった。
本発明は、上記課題を解決するものであり、バリの発生を抑えるとともに、作業性に優れた電子デバイス用回路基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ね、裏面のバリの発生と側面のただれとを抑制するためには、裏面側に分割溝を形成するとともに、レーザー照射で分割溝を切断することが有用との知見を得た。しかしながら、分割溝がV字であるなど分割溝が平坦な底面を有さない場合には、レーザー照射による切断の際にポイントのズレにより切断面が斜めになるなどの不具合が生じる場合があった。そこで本発明者らは、底面が略平坦な分割溝を形成することで、レーザー照射の際に生じ得る問題も併せて解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の一形態は、電子デバイスを設置する主面と、該主面と対向する裏面と、を有する電子デバイス用回路基板が形成された集合基板の裏面に、底面が略平坦な形状の分割溝を形成する分割溝形成ステップ、を含む電子デバイス用回路基板の製造方法、である。
【0009】
また、前記分割溝形成ステップで形成された分割溝に沿って前記集合基板を切断する切断ステップ、を含む形態が好ましく、前記切断ステップは、レーザー照射で前記集合基板を切断する形態が好ましい。レーザー照射により、個片基板の側面のただれの発生を抑制することができる。
【0010】
また、前記回路基板の主面は絶縁性材料(以下、レジストとも称する)を有しており、前記分割溝形成ステップは、更に前記主面に、主面方向へ向かって開く底面が略平坦な略台形状の第一の分割溝を形成する形態が好ましい。レーザーによるレジストの焦げ、飛散を防止することができ、またレジストと基板の熱膨張率の差により発生した応力を、第一の分割溝を形成することで、逃がすことができる。
また、絶縁性材料が、前記第一の分割溝を形成する箇所に形成されない形態が好ましい。このような形態により、基板とレジストとの間に熱膨張率の差異による応力が発生した場合でも応力を逃がすことができるため、基板からレジストが剥がれることを防止することができる。
【0011】
また、前記分割溝形成ステップで形成された分割溝は、分割溝の延伸方向に対して直交する方向の分割溝底部の長さが、0.05mm以上0.5mm以下であることが好ましい。分割溝底部の長さ上記範囲とすることで、レーザー光照射の際の公差を緩めることができる。
また、前記分割溝形成ステップで主面に形成された略台形状の分割溝は、台形を形成するテーパ面と回路基板の主面との為す角度が45°以上90°より小さいことが好ましい。主面の分割溝を上記形状とすることで、基板上の電子デバイスと基板との沿面距離を確保することができる。
【0012】
また、前記分割溝形成ステップ後、前記切断ステップ前に、主面に電子デバイスを設置する設置ステップを含むことが好ましい。切断ステップ前に主面に電子デバイスを設置した場合であっても、主面に分割溝を形成してあることで、電子デバイス設置の際に生じる熱により、レジストと基板との間に発生した応力を逃がすことができ、レジストの剥がれを抑制することができる。
【0013】
更に、本発明の別の形態は、電子デバイスと、該電子デバイスが設置された主面、該主面と対向する裏面、及び該主面と裏面とに挟まれた側面、を有する矩形の電子デバイス基板と、を含む電子部品であって、前記電子デバイス基板の少なくとも1つの側面は、前記主面に対して略直交する面である側頂面を有する凸部、該凸部から主面へ向かって延伸する上テーパ部、及び該凸部から裏面へ向かって延伸する下側面部、を有し、前記側頂面の直角度は50μm以下である、電子部品、である。
また、前記下側面部は、テーパ形状である形態が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、バリの発生を抑えるとともに、作業性に優れた電子デバイス用回路基板の製造方法を提供することができる。また、バリの発生が抑えられ、作業性に優れた電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電気デバイス用回路基板に形成された分割溝の一形態を示す断面図である。
【
図2】電気デバイス用回路基板に形成された分割溝の一形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、電子デバイス用回路基板の製造方法であり、電子デバイスを設置する主面と、該主面と対向する裏面と、を有する電子デバイス用回路基板が形成された集合基板の裏面に、底面が略平坦な形状の分割溝を形成する分割溝形成ステップ、を含む。
【0017】
電子デバイスは、導電回路からの電流により駆動するデバイスであり、例えばトランジスタ、光学素子が挙げられるがこれに限定されない。以下、主として、電子デバイスが光学素子である例により本発明を説明する。なお、本明細書では、電子デバイス基板において電子デバイスを設置する面を主面、該主面と対向する面を裏面と称する。
【0018】
集合基板は、電子デバイス用回路基板が形成された基板であり、基材に導電体からなる配線が設けられることで、形成される。集合基板は通常電子デバイス用回路基板が複数個一体に形成されるが、電子デバイス用回路基板の大きさによっては、集合基板が1つの電子デバイス用回路基板と製品にはならない余白部とからなる場合もある。
基材は典型的には金属材料であり、銅、アルミニウムなどが挙げられるが、これらに限られずセラミックス材料のアルミナや窒化アルミニウム、シリコーン、ガラスなどであってもよい。
基板に設けられる配線は既知の方法により設けられ、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどの方法により導電体の膜を形成した後に、配線部分以外の不要部分をエッチングなどにより除去してもよい。
金属材料と配線の間には、絶縁性を確保する材料が配置される。絶縁性材料は、レジストなどのエポキシ系の有機樹脂、ポリイミド系の有機樹脂、または、セラミックスなどの無機材料でもよい。
集合基板は、電子デバイス用回路基板のみで形成してもよいし、製品にはならない余白部を用いて構成してもよい。余白は手で触れてもよいので、集合基板のハンドリング性がアップする。また、余白部を有することで、ジグ等を使用するとき余白を保持すればよく、電子デバイス用回路基板にジグが接触しないので、傷が付かない。余白部を有する場合、その大きさは特に限定されないが、通常数mm程度である。
【0019】
分割溝形成ステップは、集合基板の裏面に、底面が略平坦な形状の分割溝を形成する。裏面の分割溝を、底面が略平坦な形状とすることで、後述する切断ステップでの切断による、基板の裏面端部のバリの発生を抑制することができ、更にレーザー光により切断する際に生じ得る不具合を解決し得る。
底面が略平坦な形状の分割溝の形成方法は、底面が略平坦な形状の溝を形成できれば特段限定されず、レーザーにより分割溝を形成してもよく、溝加工機により分割溝を形成してもよいが、溝部底面を略平坦にし易いことから、溝加工機により分割溝を形成することが好ましい。また、湿式法により分割溝を形成してもよく、乾式法により分割溝を形成してもよい。また、分割溝を曲線に形成するときには、溝加工機として、エンドミルを使用してもよい。
底面が略平坦な形状の分割溝は、典型的には矩形や台形であるが、これらに限られない。台形とする場合には裏面方向へ向かって開く台形とする方が、溝形成が容易である。
【0020】
分割溝形成ステップでは、集合基板の裏面に設ける底面が略平坦な形状の溝に加えて、集合基板の主面にも底面が略平行な形状の溝、例えば略台形状の分割溝を形成することが好ましい。集合基板の主面に分割溝を形成することで、後述するレーザー光による切断ステップにおいて、レーザー光による有機の絶縁性材料の焦げを防ぐことができ、また有機及び無機の絶縁性材料焼成物などが飛散して基板に付着することを防ぐことができる。
更に、分割溝形成ステップ後で後述する切断ステップ前に光学素子などの電子デバイスを設置する場合には、ダイボンドやワイヤーボンドなどの工程を経るが、その際に基板が
熱に晒されることで、基板反りが生じたり、絶縁性材料や配線が基材から剥がれる恐れがある。この反りや剥がれは基材と絶縁性材料との熱膨張率の違いに起因する。基板の主面にも分割溝を形成することで、基材と絶縁性材料との熱膨張率の違いに起因して発生する応力を逃がすことが可能となり、基板の反りや、絶縁性材料、配線が基材から剥がれることを防ぐことができる。
【0021】
なお、基板にレジスト等、有機の絶縁性材料が積層されている場合には、レジスト等、有機の絶縁性材料の焼けを防ぐ観点から、溝加工機により分割溝を形成することが好ましい。以下、図により分割溝の形状を説明する。
【0022】
図1は、分割溝形成ステップにより、分割溝が形成された基板の断面模式図である。
図1に示すように、集合基板である基板10は、絶縁性材料16が積層され、また、光学素子(図示せず)が設置される主面11と、主面11に対向する裏面12を有し、主面11方向に向かって開く台形状の第一の分割溝13と、裏面12方向に向かって開く台形状の第二の分割溝14とを有する。第一の分割溝13と、第二の分割溝14とは対向して形成される。第一の分割溝13と、第二の分割溝14は、底面に略平坦な形状を有する。
第一の分割溝13と第二の分割溝14の形成により、基板10は肉薄部15を有する。
第一の分割溝13、第二の分割溝14、肉薄部15のサイズは、製造する光学素子の大きさにより適宜設定すればよい。
【0023】
図2は、分割溝のサイズを説明するための、
図1から符号を除いた断面図である。
第一の分割溝において、分割溝深さD1は一例としては0.3mm程度であり、通常0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよく、また2mm以下であってよく、1mm以下であってよい。
第二の分割溝において、分割溝深さD2は一例としては0.3mm程度であり、通常0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよく、また2mm以下であってよく、1mm以下であってよい。
また、第一の分割溝の溝角度θ1は、基板の主面と分割溝のテーパ面との為す角度(二面角)であるが、一例としては75°程度であり、通常90°以下であり、90°より小さくてよく、85°以下であってよく、また45°以上であってよく、45°より大きくてよく、60°以上であってよい。回路配線などの導電部と、基板の導電部との沿面距離を確保する観点から、溝角度θ1が90°のとき沿面距離(L2=レジストの厚さ)は最も短く、90°より小さいときの沿面距離(L3=L2÷cos(90-θ1))は、より長くなるため、上記範囲であることが好ましい。沿面距離が長くなり、電子デバイスの絶縁耐圧が高くなるからである。また、電子デバイスが光学製品の時、基板に高反射性能を持つ材料が使われる。溝角度θ1が45°より小さくなると、基板をレーザーにより切断するとき、基板が高反射性能を持つ材料であるため、レーザー光が乱反射する恐れがあるから、上記範囲であることが好ましい。分割溝形成ステップで、溝底部が略平坦であると、レーザー光が均一に照射され、レーザー光が乱反射しない。分割溝内壁には、レーザー光が乱反射しない処理をしてもよい。なお、第二の分割溝の溝角度についても、第一の分割溝の溝角度と同様であり得るが、例えば、絶縁性材料の熱収縮により、基板の反りが大きいとき、D1<D2とし、肉薄部を絶縁性材料側に設けると、基材の強度が増すので基板の反りが抑制できる。また、肉薄部幅L1は、レーザー照射を容易にする、基材の熱容量を確保するため、集合基板主面側を大きくしてもよい。一方、完成品を載置するエリアが小さい場合は、集合基板裏面側を大きくしてもよい。主面側からレーザー光を照射するとき、裏面側に基材の溶融物が飛散することがあるから、第一の分割溝13の底面と第二の分割溝14の底面とは同じ大きさ、もしくは、第一の分割溝13の底面より第二の分割溝14の底面が大きい方が好ましい。なお、第一の分割溝13と第二の分割溝14の底面の大きさが同じとき、溝の形状はテーパが好ましい。溶融物が付着しないからである。
また、第二の分割溝の溝角度θ2は、基板の裏面と分割溝のテーパ面との為す角度であ
るが、一例としては75°程度であり、通常90°以下であり、90°より小さくてよく、85°以下であってよく、また45°以上であってよく、45°より大きくてよく、60°以上であってよい。
【0024】
また、肉薄部幅L1は、分割溝の延伸方向に対して直交する方向の分割溝底面の長さであるが、一例としては0.3mm程度であり、通常0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよく、また1mm以下であってよく、0.5mm以下であってよい。後述するレーザーによる集合基板の切断の際に、公差を緩めることができる観点から、肉薄部幅L1が上記範囲の略平坦部であることが好ましい。レーザー光は約φ0.05mmであるから、0.05mmより小さくなり、断面視略V形状になると、レーザー光が乱反射し、品質が安定しないからである。
また、肉薄部厚みT1は、一例としては0.2mm程度であり、通常0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよく、また0.1mm以下であってよく、0.5mm以下であってよい。肉薄部厚みT1が上記範囲であることで、集合基板の作業性が向上し、また後述するレーザーによる切断の際に、エネルギー消費を抑えることができる。
【0025】
切断ステップは、前記分割溝形成ステップで形成された略台形状の分割溝の底部に主面側からレーザー光を照射することで、前記集合基板を切断するステップである。レーザー光は、集合基板を切断できればよく、YAGレーザーやエキシマレーザー、ファイバーレーザー等を用いることができる。
レーザーによる切断は、分割溝を形成した集合基板の肉薄部にレーザーを照射することにより行う。肉薄部をレーザー照射により切断することで、プレスを使用することなく、また切断距離を短くすることができるため、切断した際に基板にバリが形成することを抑制できる。また、プレスによる切断ではないため、切断面がただれて、尖った先鋭部が生じることを防ぐことができる。
【0026】
このように基板へのバリ形成を抑制することで、基板底面が均一に放熱部材等に取り付けられることから、電子デバイスで発生した熱を効率よく放熱部材等に使えることができ、放熱性の向上のみならず、部材の劣化を抑制することができる。
【0027】
上記分割溝形成ステップの後、上記切断ステップの前に、電子デバイスを基板の主面に設置する設置ステップを含んでもよい。設置ステップでは、電子デバイスが光学素子である場合、ダイボンド、ワイヤーボンドなどにより光学素子を基板の主面上に設置し、更にその上から光学素子を透過性樹脂により封止してもよい。
設置ステップを切断ステップの前に行う場合、裏面のみならず主面にも分割溝を形成することで、主面上のレジストも同時に除去することができるため、その後の工程で、基板とレジストとの間に熱膨張率の差異による応力が発生した場合でも応力を逃がすことができるため、基板からレジストが剥がれることを防止することができる。
【0028】
なお、基板主面のレジストは、集合基板の主面全域に形成してもよく、集合基板の主面のうち第一の分割溝を形成する箇所に形成されない形態でもよい。第一の分割溝を形成する箇所にレジストが形成されない場合、基板とレジストとの間に熱膨張率の差異による応力が発生した場合でも応力を逃がすことができるため、基板からレジストが剥がれることを防止することができる。
【0029】
上記製造方法により製造された電子デバイス用回路基板に電子デバイスを設置した電子部品は、本発明の別の実施形態である。すなわち本発明の別の実施形態は、電子デバイスと、該電子デバイスが設置された主面、該主面と対向する裏面、及び該主面と裏面とに挟まれた側面、を有する矩形の電子デバイス基板と、を含む電子部品であって、前記電子デバイス基板の少なくとも1つの側面は、前記主面に対して略直交する面である側頂面を有
する凸部、該凸部から主面へ向かって延伸する上テーパ部、及び該凸部から裏面へ向かって延伸する下テーパ部、を有し、前記側頂面の直角度は50μm以下である電子部品である。
図3に、電子部品の一形態の模式図を示す。
【0030】
図3は電子部品の一形態である、半導体発光素子21を設置した半導体発光装置20を示す。発光素子基板22上には絶縁層24を介して半導体発光素子21が設置されている。半導体発光素子21は図示しない封止材により封止されており、封止材は半導体発光素子21の両側に設置されるダム材により半導体発光素子21上に留まり、半導体発光素子21を封止する。
【0031】
発光素子基板22の側面は、半導体発光素子21の設置面と略直交する側頂面を有する凸部25、凸部から基板の主面及び裏面へ延伸する上テーパ面26aと下テーパ面26bとからなる。
凸部25は、上記説明した集合基板の主面及び裏面に形成された分割溝からなり、凸部25の側頂面は、レーザーにより切断されることで形成されるため、表面に尖った先鋭部などが存在せず、滑らかである。一例では、側頂面の、JIS-B-0621に準じて測定される直角度fの最大値が21μmであり、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが更に好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。製品外形サイズのばらつきが小さくなり、製品外形サイズの保証が容易となる。直角度fは、キーエンス社製の画像寸法測定器LM-1100を使用し、凸部25の測頂面の断面高さ方向(基板厚さ方向)の5点、断面横方向(基板長さ方向)の7点の合計35箇所を測定した。レーザーにより切断した電子デバイス基板の側頂面の直角度fは、平均値8.8μm、最大値21μmであった。一方、プレスにより切断した電子デバイス基板の側頂面の直角度fは、平均52.8μm、最大値約100μmであった。なお、上記側頂面に存在しない先鋭部とは、高さが500μm以上の先鋭部であってよく、100μm以上の先鋭部であってよく、50μm以上の先鋭部であってよい。
【0032】
凸部25を形成する上テーパ面26aと基板の主面が為す角度θ3は、一例としては105°程度であり、通常90°以上であり、90°より大きくてよく、95°以上であってよく、また135°以下であってよく、135°より小さくてよく、120°以下であってよい。角度が90°より大きいとき、基材の容積が大きくなり、熱容量も大きくなるので、放熱性がアップする。十分な放熱性である時は、角度が90°であってもよい。つまり、上テーパ面26aと下テーパ面26bが角度90°の直線で結ばれてもよいし、全体が略直線状になってもよい。なお、下テーパ面26bと基板の裏面が為す角度についても、上テーパ面26aと基板の主面が為す角度と同様であり得る。また、上テーパ面26aと下テーパ面26bが非対称であってもよい。主面側からレーザー光を照射するとき、裏面側に基材の溶融物が飛散することがある。下テーパ面26bと基板の裏面が為す角度θ4は90°より大きい方が好ましい。溶融物が付着しないからである。
【0033】
凸部25の基板厚み方向長さは、上記分割溝を形成した基板の肉薄部厚みに対応する。一例としては0.2mm程度であり、通常0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよく、また0.1mm以下であってよく、0.5mm以下であってよい。
また、基板の主面及び/又は裏面と凸部までの距離(基板主面又は裏面と直行方向距離)は、上記分割溝を形成した基板の分割溝深さに対応する。一例としては0.3mm程度であり、通常0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよく、また2mm以下であってよく、1mm以下であってよい。
【0034】
なお上記説明は、本発明の実施形態の一例の説明であり、当業者は本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 集合基板
11 主面
12 裏面
13 第一の分割溝
14 第二の分割溝
15 肉薄部
16 絶縁性材料(レジスト)
20 半導体発光装置
21 半導体発光素子
22 発光素子基板
23 ダム材
24 絶縁層
25 凸部
26a、26b テーパ面