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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231020BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20231020BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/68 A
H01L21/68 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019171517
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021048363
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】中澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 祐一
(72)【発明者】
【氏名】森岡 利仁
(72)【発明者】
【氏名】蒲 裕充
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓也
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-130948(JP,A)
【文献】特開2018-107388(JP,A)
【文献】特開2002-086048(JP,A)
【文献】特開2019-046985(JP,A)
【文献】特開平11-102882(JP,A)
【文献】特開2016-149420(JP,A)
【文献】特開2009-117794(JP,A)
【文献】特開2010-073751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
H01L 21/67 -21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液で基板を処理する基板処理装置において、
前記処理液に対する耐性を備え、基板の直径より大なる直径を有し、外周側にて上面と下面とが連通した貫通口を複数個形成された回転部材と、
前記処理液に対する耐性を備え、前記複数個の貫通口に非シール構造で取り付けられ、前記回転部材の上面から基板の下面を離間して支持するための複数本の支持ピンと、
前記回転部材の上面にて前記複数本の支持ピンで支持された基板に対して処理液を供給する供給ノズルと、
前記処理液に対する耐性を備え、前記回転部材の下面から下方に離間して配置されたカバーと、
前記カバー内に配置され、前記カバーに設けられたシール部材を介して、前記回転部材を水平面内で回転駆動する回転駆動手段と、
前記カバー内に配置され、前記カバーに設けられたシール部材を介して。前記複数本の支持ピンを駆動する駆動手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記複数本の支持ピンのうちの一部の複数本を昇降ピンとし、
前記複数個の昇降ピンを前記回転部材の下方において連結する連結部材を備え、
前記駆動手段は、基板を受け渡すための受け渡し位置と、前記受け渡し位置より低い支持位置とにわたって前記連結部材を介して前記複数本の昇降ピンを昇降駆動することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記駆動手段は、進退駆動される作動軸を備え、前記受け渡し位置に移動する際には前記連結部材に前記作動軸の上端が当接し、前記支持位置に移動する際には前記作動軸の上端が前記連結部材から離間し、
前記連結部材が前記受け渡し位置から前記支持位置に移動する際に、前記連結部材を下方へ磁力で吸引する磁石を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記回転部材は、その外周面から下方へ延出され、前記カバーの上面から上方へ離間した下端部を有し、下面が開放された周面部材を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記周面部材の内部に向かって洗浄液を供給する洗浄ノズルを備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記回転部材と前記複数本の支持ピンに支持された基板の下面との間に気体を供給する気体供給機構をさらに備え、
前記複数本の支持ピンに支持された基板に対して前記回転部材側への吸引力を生じさせることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、液晶表示器や有機EL(Electroluminescence)表示装置用基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板(以下、単に基板と称する)に対して、処理液による処理を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、回転可能に基板を支持する載置台と、載置台の上面における外周側に立設され、基板の外周縁を支持する複数本の支持ピンと、載置台に支持された基板に処理液を供給する供給ノズルと、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数本の支持ピンは、載置台に形成された貫通口に挿通されており、昇降ピンを備えている。昇降ピンは、載置台の上面から離れた受け渡し位置と、受け渡し位置より載置台の上面に近い保持位置とにわたって昇降する。載置台には、基板が保持された状態で供給ノズルから処理液が供給されるが、載置台に流下した処理液が支持ピンと貫通口の隙間を伝って載置台の内部に浸入すると、支持ピンを昇降する駆動部品が処理液によって破損する恐れがある。そこで、支持ピンが挿通されている載置台の貫通口には、Oリングなどのシール部材が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-46985号公報(図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、シール部材による支持ピンの摺動抵抗が非常に大きいので、支持ピンを駆動する駆動部品について、その駆動力を大きなものにしたり、駆動部品の数を増やしたり、複数本の支持ピンを連結し、駆動部品によって昇降される連結部材の強度を高めたりする必要がある。そのため、基板処理装置のコスト低減を妨げる原因となっている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、支持ピンを非シール構造とすることにより、コストを低減することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、処理液で基板を処理する基板処理装置において、前記処理液に対する耐性を備え、基板の直径より大なる直径を有し、外周側にて上面と下面とが連通した貫通口を複数個形成された回転部材と、前記処理液に対する耐性を備え、前記複数個の貫通口に非シール構造で取り付けられ、前記回転部材の上面から基板の下面を離間して支持するための複数本の支持ピンと、前記回転部材の上面にて前記複数本の支持ピンで支持された基板に対して処理液を供給する供給ノズルと、前記処理液に対する耐性を備え、前記回転部材の下面から下方に離間して配置されたカバーと、前記カバー内に配置され、前記カバーに設けられたシール部材を介して、前記回転部材を水平面内で回転駆動する回転駆動手段と、前記カバー内に配置され、前記カバーに設けられたシール部材を介して。前記複数本の支持ピンを駆動する駆動手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、回転部材の貫通口に取り付けられている複数本の支持ピンは、非シール構造で取り付けられている。そのため、供給ノズルから供給された処理液は、回転部材の貫通口と複数本の支持ピンとの隙間を通って回転部材の下面に浸入するが、カバーから上は処理液に耐性を備え、回転駆動手段と駆動手段はカバーで覆われており、処理液による悪影響を受けない。また、非シール構造を採用しているので、摺動抵抗を小さくでき、駆動負荷を小さくできる。したがって、駆動手段は駆動力を大きくしたり、駆動するための部材の剛性を高くしたりする等の必要がなく、基板処理装置のコストを低減できる。
【0009】
また、本発明において、前記複数本の支持ピンのうちの一部の複数本を昇降ピンとし、前記複数個の昇降ピンを前記回転部材の下方において連結する連結部材を備え、前記駆動手段は、基板を受け渡すための受け渡し位置と、前記受け渡し位置より低い支持位置とにわたって前記連結部材を介して前記複数本の昇降ピンを昇降駆動することを特徴とすることが好ましい(請求項2)。
【0010】
連結部材を介して駆動手段が昇降ピンを昇降するが、非シール構造により駆動負荷が小さいので、連結部材の剛性を従来よりも低くできる。
【0011】
また、本発明において、前記駆動手段は、進退駆動される作動軸を備え、前記受け渡し位置に移動する際には前記連結部材に前記作動軸の上端が当接し、前記支持位置に移動する際には前記作動軸の上端が前記連結部材から離間し、前記連結部材が前記受け渡し位置から前記支持位置に移動する際に、前記連結部材を下方へ磁力で吸引する磁石を備えていることが好ましい(請求項3)。
【0012】
受け渡し位置に移動する際には連結部材を作動軸が押し上げる一方、支持位置に移動する際には、作動軸が連結部材から離間するので、複数本の支持ピン及び連結部材を合わせた自重で下降する。その際、磁石によって連結部材が下方へ吸引されるので、受け渡し位置から支持位置へ素早く移動させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記回転部材は、その外周面から下方へ延出され、前記カバーの上面から上方へ離間した下端部を有し、下面が開放された周面部材を備えていることが好ましい(請求項4)。
【0014】
回転部材の貫通口を通して回転部材の下方へ浸入した処理液が側方へ飛散することを防止できる。また、下面が開放されているので、回転部材のメンテナンスを容易にできる。
【0015】
また、本発明において、前記周面部材の内部に向かって洗浄液を供給する洗浄ノズルを備えていることが好ましい(請求項5)。
【0016】
回転部材の下方へ浸入した処理液を洗浄ノズルから洗浄液を供給することにより、回転部材の下面及び周面部材の内部で構成される空間内を清浄化することができる。
【0017】
また、本発明において、前記回転部材と前記複数本の支持ピンに支持された基板の下面との間に気体を供給する気体供給機構をさらに備え、前記複数本の支持ピンに支持された基板に対して前記回転部材側への吸引力を生じさせることが好ましい(請求項6)。
【0018】
気体供給機構による気体の供給により、ベルヌーイ式チャックとして動作させることができる。したがって、複数本の支持ピンによる保持力に加え、回転部材側への吸引力により、基板を確実に保持させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る基板処理装置によれば、回転部材の貫通口に取り付けられている複数本の支持ピンは、非シール構造で取り付けられている。そのため、供給ノズルから供給された処理液は、回転部材の貫通口と複数本の支持ピンとの隙間を通って回転部材の下面に浸入するが、カバーから上は処理液に耐性を備え、回転駆動手段と駆動手段はカバーで覆われており、処理液による悪影響を受けない。非シール構造を採用したことにより、摺動抵抗を小さくできるので、駆動負荷を小さくできる。したがって、駆動手段は駆動力を大きくしたり、駆動するための部材の剛性を高くしたりする等の必要がなく、基板処理装置のコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例に係る基板処理装置の概略構成を示す全体構成図である。
図2】保持ユニットの一部を示した縦断面図である。
図3】保持ユニットの一部を示し、支持ピンが受け渡し位置にある状態を示す縦断面図である。
図4】保持ユニットの一部を示し、支持ピンが支持位置にあり、回転した状態を示す縦断面図である。
図5】保持ユニット内を洗浄している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係る基板処理装置の概略構成を示す全体構成図であり、図2は、保持ユニットの一部を示した縦断面図である。
【0022】
実施例に係る基板処理装置は、例えば、基板Wを水平姿勢で保持して処理液による処理を行う。この基板処理装置は、保持ユニット1と、カバー3と、飛散防止カップ5と、処理液供給系7と、下方供給系9と、洗浄液供給系11とを備えている。
【0023】
保持ユニット1が保持する処理対象である基板Wは、例えば、平面視で円形状を呈する。保持ユニット1は、回転部材13と、複数本(例えば、6本)の支持ピン15と、周面部材17と、連結部材19と、ガイドピン21と、上部磁石23と、磁石保持部材25と、下部磁石27と、回転軸29とを備えている。
【0024】
回転部材13は、基板Wの直径より大径の円形状を呈する。具体的には、回転部材13の直径は、基板Wの直径の1.05から1.2倍程度であることが好ましい。回転部材13は、電動モータ45で回転駆動されるものであり、また、飛散防止カップ5で周囲を囲われている。そのため、回転部材13が大き過ぎると電動モータ45を駆動力が高いものにする必要が生じ、また、飛散防止カップ5を大きくする必要が生じるので、装置のコストが高くなるからである。回転部材13は、その外周側に、上面と下面とに連通した貫通口31が複数箇所(例えば、6箇所)に形成されている。貫通口31には、Oリングなどのシール部材を介在させることなく、非シール構造で支持ピン15が挿通されている。この支持ピン15は、処理液に対する耐性を備えた樹脂材料で構成されている。樹脂材料としては、例えば、フッ素系の樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)や、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)などが挙げられる。この樹脂材料は、フッ素系の樹脂でなくとも、後述する処理液供給系7から供給される処理液に対する耐性を備えているものであればよい。各支持ピン15は、回転部材13の厚みより長い長軸を有する円柱形状を呈する。各支持ピン15は、基板Wの水平方向への移動を規制する突起15aを上面に備えている。各支持ピン15は、その外径が、貫通口31の内径より若干小径に形成されている。
【0025】
各支持ピン15の下端部は、連結部材19に連結されている。連結部材19は、平面視環状を呈し、平面視において支持ピン15が存在しない箇所の一部に、複数本のガイドピン21が挿通されている。複数本のガイドピン21は、上部が回転部材13の下面に取り付けられ、下部にフランジ21aが形成されている。したがって、連結部材19は、ガイドピン21のフランジ21aによって下降位置が規制される。連結部材19や複数本のガイドピン21は、ステンレス鋼などの金属材料を上述したフッ素樹脂でモールドすることで、耐薬品性をもたせてある。また、回転部材13は、ステンレス鋼などの金属材料で構成され、その下面や内周面を、上述したフッ素樹脂などでコーティングすることにより、耐薬品性をもたせてある。
【0026】
連結部材19の下面の一部には、上部磁石23が取り付けられている。連結部材19の下方には、上部磁石23から離間して磁石保持部材25が取り付けられている。この磁石保持部材25は、その高さ位置が固定されている。磁石保持部材25は、上部磁石23の対向する上面に下部磁石27が取り付けられている。上部磁石23と下部磁石27とは、互いに吸引する極性が対向するように取り付けられている。つまり、上部磁石23の下面がS極であれば、下部磁石27の上面はN極となるように取り付けられている。上部磁石23、下部磁石27、磁石保持部材25は、上述したフッ素樹脂でモールドすることにより、耐薬品性をもたせてある。
【0027】
連結部材19を介して複数本の支持ピン15を昇降するが、複数本の支持ピン15が非シール構造で回転部材13に取り付けられているので、連結部材19を介した複数本の区支持ピン15の駆動負荷が小さくなっている。したがって、連結部材19を従来に比較して剛性が低いもので構成できる。
【0028】
回転軸29は、先端部が回転部材13に取り付けられている。回転軸29は、二重筒構造となっている。回転軸29は、外筒33に内筒35が挿通されており、外筒33の内周面と内筒35の外周面は離間して配置されている。したがって、回転軸29には、内筒35の中心の第1流路37と、内筒35の外周面と外筒33の内周面の第2流路39とが形成されている。回転軸29の上部であって、回転部材13の回転中心には、開口蓋41が取り付けられている。開口蓋41の中心部には、吐出口41aが形成されている。開口蓋41の下部は、下に突出した三角形状に形成されている。この部分に対向する内筒35は、上面が開口蓋41の三角形状に対応するように下に窪んだ三角形状に形成されている。これらの三角形状の部分は互いに離間しており、ラビリンス構造41bを構成している。回転軸29は、ステンレス合金などの金属材料を上述したフッ素樹脂でコーティングすることで、耐薬品性をもたせてある。
【0029】
回転部材13の内部には、一端側が第2流路39に連通し、他端側が回転部材13の周辺側の上面に連通した流路43が形成されている。周辺側の開口は、エッジ開口43aである。エッジ開口43aは、支持位置の高さにある支持ピン15の上端部に向かって気体を吹き出すように、上向きに傾斜した姿勢で形成されている。
【0030】
なお、上述した吐出口41aとエッジ開口43aとが本発明における「気体供給機構」に相当する。
【0031】
回転部材13は、周面部材17を備えている。周面部材17は、平面視で環状を呈する。周面部材17は、回転部材13の外周面側から下方に向かって延出され、下端部がカバー3の上面から上方へ離間している。周面部材17の下面は、下方から見てほぼ円形状に開口を有する。周面部材17により、回転部材13の貫通口31を通して回転部材13の下方へ浸入した処理液が側方へ飛散することを防止できる。また、周面部材17は、その下面が開放されているので、保持ユニット1の内部のメンテナンスを容易にできる。
【0032】
カバー3は、上面が周面部材17の下端部から下方に離間した位置に配置されている。カバー3の少なくとも上面は、例えば、上述したようなフッ素樹脂で構成されており、後述する処理液供給系7から供給される処理液に対する耐性を備えている。カバー3は、内部に電動モータ45と、昇降駆動部47とを内蔵している。カバー3のうち、中央部には、シール部材49を介して回転軸29が挿通されている。回転軸29は、電動モータ45の下端部から下方に突出された状態で電動モータ45に連結されている。電動モータ45を作動させると、回転軸29が軸芯P回りに回転される。カバー3の上面のうち外周側には、昇降駆動部47が配置されている。昇降駆動部47は、例えば、エアシリンダなどのアクチュエータで構成されている。昇降駆動部47は、作動軸51を備えている。作動軸51は、鉛直方向に長軸を向けられており、シール部材53を介してカバー3に挿通されている。作動軸51は、昇降駆動部47が作動されると昇降駆動部47から上端が離れるように伸長され、非作動とされると、昇降駆動部47に上端が近づくように収縮する。作動軸51は、昇降駆動部47が非作動とされた状態において、その上端が連結部材19の下面から若干離間しており、連結部材19の下降を許容し、支持ピン15が支持位置に下降することを許容する。また、作動軸51は、昇降駆動部47が作動された状態において、その上端が連結部材19の下面に当接して連結部材19を押し上げた状態とされ、支持ピン15を受け渡し位置に押し上げる。
【0033】
上記の作動軸51は、例えば、ステンレス鋼で構成され、上述したフッ素樹脂、PBI(ポリベンゾイミダゾール)やEFEP(テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体)などでコーティングすることで耐薬品性をもたせてある。また、作動軸51をPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)で構成し、上述したフッ素樹脂などでコーティングしてもよい。
【0034】
カバー3の上面から下方に傾斜した側面には、洗浄ノズル55が配置されている。洗浄ノズル55は、その長軸が周面部材17の開口部に向けられている。カバー3及び保持ユニット1の側方には、飛散防止カップ5が配置されている。飛散防止カップ5は、保持ユニット1から周囲に飛散した処理液を回収したり、保持ユニット1の内部に浸入した処理液を回収したりする。また、飛散防止カップ5は、洗浄ノズル55から保持ユニット1に供給されて飛散した洗浄液を回収する。
【0035】
処理液供給系7は、供給ノズル57と、処理液供給部59と、配管61と、制御弁63とを備えている。保持ユニット1の上方であって、軸芯Pの軸線上には、供給ノズル57が配置されている。この供給ノズル57は、図示しない待機位置と、図1に示す供給位置とにわたって移動可能に構成されている。処理液供給部59は、基板Wを洗浄するための洗浄液を貯留している。洗浄液は、例えば、純水、SC1(アンモニア水と過酸化水素水の混合液)、SC2(塩酸、過酸化水素水、純水の混合液)、DHF(希釈フッ化水素酸)等である。供給ノズル57と処理液供給部59とは、配管61によって連通接続されている。配管61には、その流量を調節したり、設定された流量での供給を許容したり遮断したりする制御弁63が取り付けられている。
【0036】
下方供給系9は、次のように構成されている。回転軸29の第1流路37には、配管65の一端側が連通接続されている。配管65の他端側は、処理液供給部67に連通接続されている。配管65は、処理液の流量を調整したり、処理液の供給/遮断を制御したりする制御弁69を備えている。処理液供給部67は、例えば、上述した処理液供給部59と同様の処理液を供給可能である。また、回転軸29の第2流路39には、配管71の一端側が連通接続され、気体供給部73には、配管71の他端側が連通接続されている。配管71は、気体の流量を調整したり、気体の供給/遮断を制御したりする制御弁69を備えている。気体供給部73は、気体を供給する。気体は、不活性ガスが好ましく、例えば、窒素ガスが好適である。制御弁69,75は、同時に開放される場合があるが、その場合には、吐出口41aから基板Wの下面に向けて処理液と気体が同時に供給され、エッジ開口43aからは気体だけが基板Wの周縁下面に向かって供給される。
【0037】
また、回転軸29は、ラビリンス構造41bを採用しているので、吐出口41aから処理液を供給した後、処理液が第2流路39に入り込まない。したがって、気体だけを吐出口41aから供給する場合であっても、先に供給した処理液が吐出41aから基板Wに供給されることがなく、適切な流体供給を行うことができる。
【0038】
洗浄液供給系11の洗浄ノズル55には、配管77の一端側が連通接続されている。配管77の他端側には、洗浄液供給部79が連通接続されている。配管77には、洗浄液の流量を調整したり、洗浄液の供給/遮断を制御したりする制御弁81が取り付けられている。洗浄液供給部79は、例えば、純水などを洗浄液として供給する。
【0039】
基板処理装置の底部には、例えば、クリーンルームなどが備えている排液部に連通接続された排液管83が設けられている。この排液管83は、処理液供給系7、下方供給系9、洗浄液供給系11から供給された処理液などを排出する。
【0040】
次に、図3及び図4を参照する。なお、図3は、保持ユニットの一部を示し、支持ピンが受け渡し位置にある状態を示す縦断面図であり、図4は、保持ユニットの一部を示し、支持ピンが支持位置にあり、回転した状態を示す縦断面図である。
【0041】
処理対象である基板Wを図示しない搬送機構から受け取る際には、昇降駆動部47を作動させる。これにより、図3に示すように作動軸51が上昇し、連結部材19を押し上げて支持ピン15を受け渡し位置に上昇させる。支持ピン15は、貫通口31に挿通されているが、従来のようなOリングなどのシール部材がないので、上昇時の摺動抵抗が従来に比較して極めて小さい。したがって、支持ピン15を上昇させる際の駆動負荷は、支持ピン15と連結部材19などを上昇させる力と、磁石23,27の磁力による吸引力を解除する力だけであるが、これも従来のようなOリングなどのシール部材を備えた構成に比較すると駆動負荷は極めて小さい。このように複数本の支持ピン15を受け渡し位置に上昇させた状態で、図示しない搬送機構から基板Wを複数本の支持ピン15に載置させる。その際、基板Wの端縁は、突起15aにより水平方向の位置が規制される。
【0042】
次いで、昇降駆動部47を非作動とする。これにより、作動軸51が昇降駆動部47側に収縮する。すると、図4に示すように、連結部材19の下面を押し上げていた作動軸51の上端が連結部材19の下面から下方に離間する。したがって、複数本の支持ピン15は、連結部材19及び磁石23等を合わせた自重によって下方に移動を始めるとともに、上部磁石23及び下部磁石27の磁力による吸引によって急速に下降され、連結部材19がガイドピン21のフランジ21aに到達した時点で下降が停止される。これにより、複数本の支持ピン15の一部が回転部材13の上面に進入し、基板Wの下面が回転部材13の上面に近づいた支持位置に移動される。上部磁石23及び下部磁石27によって連結部材19が下方へ吸引されるので、支持ピン15を受け渡し位置から支持位置へ素早く移動させることができる。
【0043】
なお、この時点で、回転部材13に備えられている図示しないセンタリングピンによって基板Wの中心を回転部材13の回転中心に一致させるセンタリング動作を行うようにしてもよい。ここでは、発明の理解を容易にするため、基板Wの中心と回転部材13の中心とがほぼ一致して載置されているものとする。
【0044】
基板Wが支持位置に移動されると、制御弁75が開放される。すると、図4中に白三角矢線で示すように、吐出口41aとエッジ開口43aから窒素ガスが吐出される。吐出口41aから吐出された窒素ガスは、基板Wの下面で側方に向きが変えられ、回転台13の上面と基板Wの下面との狭い空間を基板Wの外周方向に向かって高速で流れ出る。さらに、エッジ開口43aから吐出された窒素ガスは、基板Wの外周縁下面で側方に向きが変えられ、回転台13と基板Wの外周縁下面との狭い空間を高速で流れ出る。この窒素ガス流は、ベルヌーイ効果を生じさせ、基板Wの下面に負圧を生じさせるので、基板Wに対して回転部材13の上面側へ吸引力が生じ、基板Wが回転部材13側に吸引される。これにより、基板Wを保持ユニット1により安定して保持できる。
【0045】
基板Wが回転部材13側に吸引された後、電動モータ45を操作して、回転軸29を洗浄回転数に向けて回転させ始める。基板Wの回転数が洗浄回転数に到達した後、供給ノズル57を軸芯Pの上方に移動させるとともに、制御弁63を開放させる。すると、供給ノズル57から処理液が基板Wの上面に向かって供給され、遠心力により基板Wの上面にて外周面に向かって処理液が流れ出す。これにより、基板Wの上面が処理液によって洗浄される。所定の処理時間が経過すると、制御弁63を閉止して供給ノズル57からの処理液の供給を停止させる。そして、電動モータ45の回転数を洗浄回転数より高い乾燥回転数へ上げる。これにより、基板Wや回転台13などに付着している処理液を周囲に飛散させて、基板Wの乾燥処理を行う。周囲に飛散した処理液は、飛散防止カップ5によって回収される。所定時間の乾燥処理の後、電動モータ45を停止させる。
【0046】
乾燥処理を終えると、制御弁75を閉止して、窒素ガスの供給を停止させる。これにより、基板Wの下面に生じていた負圧が解消される。次いで、駆動機構47を作動させると、図3に示すように作動軸51が上昇し、連結部材19を押し上げて支持ピン15を受け渡し位置に上昇させる。そして、図示しない搬送機構により、洗浄処理済みの基板Wを複数本の支持ピン15から移載させる。
【0047】
また、上述した洗浄処理を繰り返し実施するうちに、支持ピン15と貫通口31との隙間から処理液が流下する。回転部材13や周面部材17から下方に流下した処理液は、基板処理装置の下部にある排液管83を介して排液部に排出される。排液管83から排出されなかった処理液は、回転部材13及び周面部材17で囲われた空間の構成部品に付着している。そこで、定期的に電動モータ45を回転させつつ、制御弁81を開放させ、洗浄液を洗浄ノズル55から供給させる。これにより、回転部材13及び周面部材17で囲われた空間の構成部品に洗浄液が吹き付けられ、カバー3の上面にも処理液が流下するので、付着している処理液を除去することができる。したがって、付着していた処理液が固着して乾燥した後に剥がれてパーティクルとなり、基板Wを汚染するような事態を未然に防止できる。
【0048】
本実施例によると、回転部材13の貫通口31に取り付けられている複数本の支持ピン15は、非シール構造で取り付けられている。そのため、供給ノズル57から供給された処理液は、回転部材13の貫通口31と複数本の支持ピン15との隙間を通って回転部材13の下面に浸入するが、電動モータ45と昇降駆動部47はカバー3で覆われており、処理液による悪影響を受けない。また、非シール構造を採用しているので、摺動抵抗を小さくでき、駆動負荷を小さくできる。したがって、昇降駆動部47は駆動力を大きくしたり、駆動するための部材の剛性を高くしたりする等の必要がなく、基板処理装置のコストを低減できる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0050】
(1)上述した実施例では、処理対象を単に基板Wとしているが、例えば、最外周のエッジ部分(数mm度)を残し、その内周のみを研削して薄化した基板W(TAIKO基板とも呼ばれる)や、全面にわたって薄化した基板Wを処理する基板処理装置にも適用できる。
【0051】
(2)上述した実施例では、回転部材13に支持ピン15だけを備えた基板処理装置を例にとって説明した。本発明は、例えば、上述した各支持ピン15の間にセンタリングピンを備え、基板Wが各支持ピン15に支持され、支持位置に移動された状態で、センタリングピンを回動させることにより、基板Wの回転中心を回転部材13の回転中心と一致させるセンタリング機構を備えた基板処理装置にも適用できる。センタリングピンは、鉛直軸周りに回動可能に回転部材13に取り付けられ、鉛直軸から偏芯した位置に位置合わせ突起を有する。なお、この場合には、センタリングピンの下端部に、水平方向で磁極が異なるように磁石を取り付けておき、カバー3の内部に磁石の極性を切り換えるセンタリングピン駆動部を配置する。そして、センタリングピン駆動部を作動させると、センタリングピンの下端部の磁石に対して、カバー3の上面を通して磁極の切り替わりによる磁力の影響が及ぶ。その結果、センタリングピンが鉛直軸周りに回動する。このようなセンタリングピンについては、上述したフッ素樹脂でコーティングしておき、非シール構造で回動可能な構成を採用することが好ましい。
【0052】
(3)上述した実施例では、複数本の支持ピン15を連結部材19で一括して昇降駆動しているが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、6本の支持ピン15を2グループに分けて、3本の支持ピン15ごとに一括して昇降駆動する構成を採用してもよい。
【0053】
(4)上述した実施例では、連結部材19が作動軸51と連結されていない構成を採用しているが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、連結部材19の下面に作動軸51の上端が連結されている構成を採用してもよい。その場合には、上部磁石23、下部磁石27、磁石保持部材25を省略できるので、コストを低減できる。
【0054】
(5)上述した実施例では、カバー3に洗浄ノズル55を備えているが、本発明はこの構成を必須とするものではない。また、カバー3自体に洗浄ノズル55を備えるのではなく、周面部材17の内部に洗浄液を供給できる位置、例えば、カバー3の外部であって飛散防止カップ5の内部の位置に洗浄ノズル55を配置してもよい。
【0055】
(6)上述した実施例では、支持ピン15に支持されている基板Wの下面と回転部材13の表面との間に気体を高速で噴出させることにより負圧を生じさせ、基板Wに対して回転部材13側への吸引力を生じさせている。しかしながら、本発明はこのようなベルヌーイ式のチャックに限定されるものではない。つまり、単に支持ピン15で基板Wの外周縁下面を当接支持する保持ユニットを備えた基板処理装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明は、複数本の支持ピンを駆動することにより基板を支持し、その基板を処理液で処理する基板処理装置に適している。
【符号の説明】
【0057】
W … 基板
1 … 保持ユニット
3 … カバー
5 … 飛散防止カップ
7 … 処理液供給系
9 … 下方供給系
11 … 洗浄液供給系
13 … 回転部材
15 … 支持ピン
17 … 周面部材
19 … 連結部材
21 … ガイドピン
23 … 上部磁石
25 … 磁石保持部材
27 … 下部磁石
29 … 回転軸
31 … 貫通口
41a … 吐出口
43a … エッジ開口
45 … 電動モータ
49,53 … シール部材
55 … 洗浄ノズル
図1
図2
図3
図4
図5