(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】軸部材の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B23B 25/06 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
B23B25/06
(21)【出願番号】P 2019180614
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄平
(72)【発明者】
【氏名】尾曲 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓実
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237140(JP,A)
【文献】実開昭57-162057(JP,U)
【文献】特開2009-248211(JP,A)
【文献】特開2002-144209(JP,A)
【文献】実開昭59-008753(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 15/00
B23B 25/06
B23B 31/00
B24B 19/16
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向先端よりも軸方向後端側に軸太部を有するワークを加工する軸部材の製造装置であって、
前記軸太部を有する前記ワークを軸方向と交差する方向から前記軸方向先端を突出させた状態で挿入可能な切り欠きを有するとともに、前記ワークの前記軸太部の軸方向先端側を当該切り欠きのない部分に押し当てて当該ワークを位置決めする位置決め部と、
前記ワークを前記位置決め部に押し当てた後、または当該ワークを当該位置決め部に押し当てる際に、当該位置決め部よりも軸方向先端側にて当該ワークを把持する把持部と、
把持した前記ワークを加工する加工部と、
を有することを特徴とする軸部材の製造装置。
【請求項2】
前記位置決め部は、軸を中心として回転可能であり、前記ワークが挿入される際と、当該ワークが取り外される際に、前記切り欠きを異なる向きに向けること、を特徴とする
請求項1記載の軸部材の製造装置。
【請求項3】
軸方向先端よりも軸方向後端側に軸太部を有するワークを加工する軸部材の製造装置であって、
前記軸太部を有する前記ワークを軸方向と交差する方向から前記軸方向先端を突出させた状態で挿入可能な切り欠きを有し、当該切り欠きから挿入された当該ワークの
当該軸太部の軸方向先端側にエッジを押し当てて当該ワークを位置決めする位置決め部と、
前記ワークを前記位置決め部に押し当てた後、または当該ワークを当該位置決め部に押し当てる際に、当該位置決め部よりも軸方向先端側にて当該ワークを把持する把持部と、
把持した前記ワークを加工する加工部と、
を有することを特徴とする軸部材の製造装置。
【請求項4】
前記エッジは、前記ワークにおける前記軸太部の軸方向先端側が前記軸方向先端に向けて先細となる円錐状のテーパ面を押し当てて当該ワークを位置決めすること、を特徴とする
請求項3記載の軸部材の製造装置。
【請求項5】
軸太部を有するワークを加工して軸部材を製造する軸部材の製造方法であって、
前記軸太部を有する前記ワークを軸方向と交差する方向から
切り欠きを介して軸方向先端を突出させた状態で挿入し当該ワークの当該軸太部の軸方向先端側を製造装置の位置決め部に押し当てて当該ワークを把持する把持工程と、
把持した前記ワークを加工する加工工程と、
を有することを特徴とする軸部材の製造方法。
【請求項6】
前記把持工程は、
前記ワークの前記軸太部の軸方向先端側を前記製造装置の前記位置決め部に押し当てて位置決めする位置決め工程を有し、
位置決めされた前記ワークの軸を、チャックを閉じて把持することを特徴とする
請求項5記載の軸部材の製造方法。
【請求項7】
前記位置決め工程は、前記製造装置の前記位置決め部を有する領域に前記ワークを前記軸方向と交差する方向から挿入した後、当該位置決め部に対して当該ワークを軸方向先端側に相対的に移動させて前記軸太部の軸方向先端側を当該位置決め部に押し当てること、を特徴とする
請求項6記載の軸部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部材の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸部材を旋盤(チャッカー機)により加工する場合、一般に、ワークである軸部材を前側(加工室側)から供給し、適切な位置でチャックにより軸部材を把持して固定し、加工していた。
【0003】
特許文献1には、チャック機構を備えた回転把持部が、軸線方向に挿入された棒状部材であるワークを把持すること、ワークの挿入に伴ってスライド可能なスライド部材を有すること、ワークの挿入に伴うスライド部材のスライド量の適否を検出する位置検出手段を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸部材の一端側(先端側)を加工する場合であって、この軸部材の他端側(後端側)に軸太部が有り、この軸太部の軸部材先端側の面に軸部材の先端からの距離が特定された位置決め基準が設定されている場合を考える。このような場合、先端側から後端側へ向かう方向に(すなわち、旋盤の加工室側から)軸部材を移動させて供給する構造では、軸太部がチャックに干渉する等の理由で、軸部材を位置決めしセットすることが困難である。
【0006】
一方、位置決めを容易にするために、後端側から先端側へ向かう方向に(すなわち、旋盤の主軸台側から)軸部材を移動させて供給する構造とすると、軸部材を供給する手順が複雑になり、供給に時間が掛かるという問題があった。
【0007】
本発明は、軸太部の軸部材先端側の面に位置決め基準が設定されている軸部材の位置決めを容易にすると共に、軸部材の供給に要する時間の増大を抑制することが可能な製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明は、軸方向先端よりも軸方向後端側に軸太部を有するワークを加工する軸部材の製造装置であって、切り欠きを有するとともに、ワークの軸太部の軸方向先端側を当該切り欠きのない部分に押し当ててワークを位置決めする位置決め部と、ワークを位置決め部に押し当てた後、またはワークを位置決め部に押し当てる際に、位置決め部よりも軸方向先端側にてワークを把持する把持部と、把持したワークを加工する加工部と、を有することを特徴とする軸部材の製造装置である。
より詳細には、位置決め部の切り欠きは、軸太部を有するワークを軸方向と交差する方向から挿入可能な大きさである。
より好ましくは、位置決め部は、軸を中心として回転可能であり、ワークが挿入される際と、このワークが取り外される際に、切り欠きを異なる向きに向ける。
また、上記の目的を達成する本発明は、軸方向先端よりも軸方向後端側に軸太部を有するワークを加工する軸部材の製造装置であって、ワークの軸太部の軸方向先端側にエッジを押し当てて当該ワークを位置決めする位置決め部と、ワークを位置決め部に押し当てた後、または当該ワークを当該位置決め部に押し当てる際に、当該位置決め部よりも軸方向先端側にて当該ワークを把持する把持部と、把持したワークを加工する加工部と、を有することを特徴とする軸部材の製造装置である。
より好ましくは、エッジは、ワークにおける軸太部の軸方向先端側が軸方向先端に向けて先細となる円錐状のテーパ面を押し当ててワークを位置決めする。
また上記の目的を達成する本発明は、軸太部を有するワークを加工して軸部材を製造する軸部材の製造方法であって、軸太部を有するワークを軸方向と交差する方向から挿入し当該ワークの当該軸太部の軸方向先端側を製造装置の位置決め部に押し当てて当該ワークを把持する把持工程と、把持したワークを加工する加工工程と、を有することを特徴とする軸部材の製造方法である。
より詳細には、把持工程は、ワークの軸太部の軸方向先端側を製造装置の位置決め部に押し当てて位置決めする位置決め工程を有し、位置決めされたワークの軸を、チャックを閉じて把持する。
さらに詳細には、位置決め工程は、製造装置の位置決め部を有する領域にワークを軸方向と交差する方向から挿入した後、かかるワークを軸方向先端側に移動させて軸太部の軸方向先端側を位置決め部に押し当てる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸太部の軸部材先端側の面に位置決め基準が設定されている軸部材の位置決めを容易にし、軸部材の供給に要する時間の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の製造装置による加工対象の金属部品(ワーク)の形状を示す図であり、
図1(A)は斜視図、
図1(B)は側面図である。
【
図2】本実施形態による製造装置の構成を示す断面図である。
【
図3】位置決め器の構成を示す図であり、
図3(A)は斜視図、
図3(B)は側断面図である。
【
図4】位置決め器と把持部との関係を示す図である。
【
図5】製造装置に対するワークの取り付け工程における取り付け前の状態を示す図であり、
図5(A)は側断面図、
図5(B)は正面図である。
【
図6】製造装置に対するワークの取り付け工程におけるワークを位置決めした状態を示す図であり、
図6(A)は側断面図、
図6(B)は正面図である。
【
図7】製造装置に対するワークの取り付け工程における把持部を締めてワークを固定した状態を示す図であり、
図7(A)は側断面図、
図7(B)は正面図である。
【
図8】製造装置にワークを装着して加工する手順を示すフローチャートである。
【
図9】ワークの供給および排出の動作の例を示す図であり、
図9(A)は一つ目のワークが供給口から供給される様子を示す図、
図9(B)は一つ目のワークが供給口から図の右方向へ搬送され、位置決め器に装着された様子を示す図、
図9(C)は一つ目のワークの加工が終了し、排出動作が開始される際の様子を示す図、
図9(D)は一つ目のワークが位置決め器から取り外された様子を示す図、
図9(E)は位置決め器の切り欠きの向きを変えた様子を示す図、
図9(F)は二つ目のワークが位置決め器に装着された様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<加工対象のワーク>
図1は、本実施形態の製造装置による加工対象の金属部品(ワーク)の形状を示す図である。
図1(A)は斜視図であり、
図1(B)は側面図である。
【0012】
ワーク10は、軸方向に垂直な断面形状が円形の棒状部材(軸部材)である。ワーク10は、軸方向に沿った棒状の軸部11と、軸部11と同軸で軸部11よりも太い軸太部13とを有する。また、軸部11には加工部位12がある。加工部位12とは、本実施形態の製造装置1による加工が行われる部位である。
図1に示す例では、軸部11の一方の端部付近が加工部位12となっているが、図示の例には限定されない。例えば、軸部11の端部から離れた側面が加工部位12であっても良いし、ワーク10が中空の筒状である場合は、内径面に加工部位12があっても良い。
【0013】
軸太部13は、ワーク10の加工部位12とは異なる位置に設けられている。以下、ワーク10における加工部位12と軸太部13との位置関係に基づき、加工部位12がある方の端部を先端と呼び、軸太部13がある方の端部を後端と呼ぶ。また、ワーク10の軸方向に沿って、加工部位12のある側を先端側、軸太部13のある側を後端側と呼ぶ。
図1(A)、(B)に示す例では、軸太部13がワーク10の後端に設けられているが、軸太部13の位置は、加工部位12よりも後端側であれば良く、図示の位置に限定されない。
【0014】
軸太部13の軸方向先端側の面は、ワーク10の先端11aに向けて先細となる円錐状のテーパ面13aとなっている。そして、このテーパ面13aには、ワーク10を本実施形態の製造装置1にセットする際の位置決め基準14が設定される。位置決め基準14は、テーパ面13a上で直径が特定された円(
図1において破線で示された円)として設定される。テーパ面13a上であるため、位置決め基準14の円の直径を指定することにより、ワーク10の軸上の位置が決まる。言い換えれば、ワーク10における特定の位置から位置決め基準14までの基準距離(
図1(B)に示す例では、先端11aから位置決め基準14までの距離R)が決まることとなる。
【0015】
<製造装置の構成>
図2は、本実施形態による製造装置1の構成を示す断面図である。
図2には、本実施形態の製造装置1である旋盤の構成の一部が記載されている。本実施形態の製造装置1は、主軸台20と、位置決め器30と、把持部40と、工具50とを備える。
図2には、この製造装置1にワーク10がセットされた様子が示されている。実際の旋盤は、工具を取り付けて移動させる往復台や送り装置、主軸台20の反対側からワーク10の端部を押さえる心押し台等を備えるが、
図2では、本実施形態における特徴的な構成である、ワーク10をセットする部分の構成のみを記載し、通常の旋盤における他の構成については記載および説明を省略する。
【0016】
主軸台20は、ワーク10に回転を与える主軸や駆動装置(何れも図示せず)を有する。また、位置決め器30および把持部40は、主軸台20に設けられている。位置決め器30は、主軸台20にワーク10をセットする際の位置決めを行う。位置決め器30は、内部に、ワーク10の軸太部13が入る空間が形成されている。位置決め器30の詳細については後述する。把持部40は、チャックであり、位置決め器30によりワーク10を位置決めした状態で、複数の爪によりワーク10を締め付けて固定する。把持部40は主軸台20の主軸と共に回転し、ワーク10を軸周りに回転させる。工具50は、ワーク10を加工する加工部の一例である。工具50の先端は刃が設けられており、ワーク10を軸周りに回転させた状態で工具50の刃を当てることによりワーク10を旋削加工する。
【0017】
<位置決め器の構成>
図3は、位置決め器30の構成を示す図である。
図3(A)は斜視図であり、
図3(B)は側断面図である。位置決め器30は、基部31と、覆い部32とを備える。覆い部32の外形は、略円錐台である。この覆い部32により位置決め器30の内部の空間が形成される。位置決め器30において、基部31は主軸台20に取り付けられている。そして、覆い部32は、基部31の主軸台20とは反対側(言い換えれば、ワーク10に対する加工が行われる位置側)に設けられている。
【0018】
覆い部32の基部31とは反対側の面には装着孔32aが設けられている。装着孔32aは貫通孔であり、ワーク10の装着時に軸部11が通る。また、覆い部32の側面には切り欠き32bが設けられている。切り欠き32bは、側面から装着孔32aに達し、側面においてはワーク10の軸太部13が通る幅を有する。このため、位置決め器30にワーク10を装着する場合、主軸台20の主軸に交差する方向から切り欠き32bを通して、ワーク10の軸太部13を位置決め器30の内部に入れることができる。そして、ワーク10が位置決め器30にセットされると、軸太部13が位置決め器30の内部にあり、装着孔32aから軸部11が突き出た状態となる。なお、
図3に示す例では、覆い部32の装着孔32aを有する面の切り欠き32bが、覆い部32の側面の切り欠き32bの幅に合わせて装着孔32aの位置から円周へ向かって扇上に広がっている。しかしながら、ワーク10を主軸台20の主軸に交差する方向から切り欠き32bを通す場合、覆い部32の側面の軸太部13が通る位置で、切り欠き32bが、ワーク10を主軸と交差する方向から挿入可能な大きさであれば良く、装着孔32aを有する面の切り欠き32bは、軸部11が通る幅があれば良い。例えば、装着孔32aの位置から円周に至る範囲全体で、軸部11が通る程度の同じ幅であっても良い。
【0019】
覆い部32の装着孔32aは、略円形の貫通孔であり、ワーク10の位置決め基準14と同一の直径である。また、装着孔32aの内側の縁は、位置決め用エッジ32cとなっている。したがって、位置決め器30の内部の空間は、位置決め部としての位置決め用エッジ32cを有する領域となっている。さらに言えば、装着孔32aの内側の位置決め用エッジ32cが設けられる部分は、位置決め器30における切り欠き32bでない部分となる。ワーク10が位置決め器30にセットされた状態で、ワーク10が先端方向へ引き出され、位置決め基準14が位置決め器30の位置決め用エッジ32cに当たることにより、ワーク10の位置決めが完了する。この状態で把持部40が締め付けられて、ワーク10が主軸台20に固定される。位置決め器30および位置決め用エッジ32cは、位置決め部の一例である。なお、ここでは覆い部32の外形を略円錐台としたが、覆い部32の形状は、ワーク10を内部に収納し得る空間を有する形状であれば良く、略円錐台に限定されない。例えば、覆い部32の側面を、基部側と装着孔32aのある面側の径が等しい円筒形としても良いし、円錐状のテーパ面と円筒とが連続する形状等としても良い。
【0020】
図4は、位置決め器30と把持部40との関係を示す図である。
図4は、製造装置1の主軸台20を主軸に沿って主軸台20へ向かう方向に見た状態を示す。言い換えれば、主軸台20にワーク10をセットした状態でワーク10の先端側から見た状態である。以下、この方向から見た図を正面図とする。
図4に示す例では、把持部40には3個の爪41がある。この爪41が開いている状態では、
図4に示すように、各爪41の間に隙間がある。そして、この爪41の間の隙間の一つと、位置決め器30の切り欠き32bが設けられた方向とは一致する。このため、
図4に示すように、把持部40の外から主軸台20の主軸に交差する方向にワーク10を移動させることにより、把持部40の爪41の間の隙間と切り欠き32bとを通って、ワーク10を位置決め器30内にセットすることができる。ここで、ワーク10の移動方向を主軸台20の主軸に交差する方向としたが、これは、主軸に垂直な方向のみに限定されない。位置決め器30の切り欠き32bを通してワーク10の軸太部13を位置決め器30の内部に入れることができれば、主軸に対して斜め方向にワーク10を移動させても良い。また、ワーク10の移動は、直線的な移動に限定されず、曲線的な軌道を経てワーク10の軸太部13が位置決め器30の内部に挿入されるように移動しても良い。
【0021】
<位置決め方法>
図5乃至
図7は、製造装置1に対するワーク10の取り付け工程を示す図である。
図5は、取り付け前の状態を示す図であり、
図5(A)は側断面図、
図5(B)は正面図である。
図6は、ワーク10を位置決めした状態を示す図であり、
図6(A)は側断面図、
図6(B)は正面図である。
図7は、把持部40を締めてワーク10を固定した状態を示す図であり、
図7(A)は側断面図、
図7(B)は正面図である。
【0022】
本実施形態の製造装置1にワーク10を取り付ける場合、
図5(A)(B)に示すように、ワーク10をワーク移動用ハンド60により把持し、位置決め器30の切り欠き32bの側から、主軸台20の主軸に交差する方向へ移動させる。これにより、ワーク10の軸太部13が、把持部40の爪41の間を通り、切り欠き32bから位置決め器30の内部へ侵入する。
【0023】
次に、
図6(A)(B)に示すように、ワーク移動用ハンド60が、ワーク10の軸が主軸台20の主軸と一致した状態で、ワーク10を軸方向に沿って先端側へ引き出す。これにより、ワーク10のテーパ面13aが、位置決め器30の装着孔32aの内側に設けられた位置決め用エッジ32cに当たる。装着孔32aはワーク10のテーパ面13a上の位置決め基準14と同一の直径であるため、ワーク10の位置決め基準14と位置決め器30の位置決め用エッジ32cとが当たることになる。これによって、ワーク10の軸方向の位置が決まり、ワーク10の位置決めが完了する。
【0024】
次に、
図7(A)(B)に示すように、ワーク10が位置決めされた状態で把持部40を締める。これにより、把持部40の爪41がワーク10の軸部11を挟み、ワーク10を固定する。この後、ワーク移動用ハンド60が解除される。
【0025】
なお、図示しないが、ワーク10を製造装置1から取り外す工程は、上記
図5乃至
図7を参照して説明した取りつけ工程を逆にたどる。すなわち、まずワーク10をワーク移動用ハンド60により把持し、把持部40を緩めてワーク10の固定を解く。次に、ワーク移動用ハンド60がワーク10を軸方向に沿って後端側へ押し込む。これにより、ワーク10のテーパ面13aが、位置決め器30の装着孔32aの内側に設けられた位置決め用エッジ32cから外れる。そして、ワーク移動用ハンド60が、主軸台20の主軸に交差する方向へワーク10を移動させ、切り欠き32bおよび把持部40の爪41の間を通して、ワーク10を製造装置1から取り外す。
【0026】
図8は、製造装置1にワーク10を装着して加工する手順を示すフローチャートである。まず、位置決め器30の内部の空間に、ワーク10の軸太部13を軸方向と交差する方向から挿入する(S801)。そして、ワーク10を軸方向先端側に移動させ、軸太部13のテーパ面13aを位置決め用エッジ32cに押し当てて、ワーク10を位置決めする(S802)。そして、位置決めされたワーク10の軸部11を、把持部40の爪41を閉じて把持する(S803)。この後、把持されたワーク10を工具50により加工する(S804)。以上の手順において、S801~S803が把持工程であり、S804が加工工程である。把持工程のうち、S801~S802は位置決め工程である。なお、ここではワーク10の位置決めのためにワーク10を軸方向先端側に移動させるとしたが、ワーク10と位置決め器30とが軸方向に沿って相対的に移動し、軸太部13のテーパ面13aを位置決め用エッジ32cに押し当てれば良い。したがって、ワーク10を移動する代わりに、位置決め器30を軸方向後端側へ向けて移動させても良い。
【0027】
<ワークの供給と排出>
図9は、ワーク10の供給および排出の動作の例を示す図である。製造装置1には、ワーク10を供給し、装着して加工し、排出する過程においてワーク10を搬送する搬送装置が設けられるものとする。ここでは、ワーク10の搬送動作の一例を示す。この例では、複数のワーク10が連続的に供給され、加工され、排出されるものとする。なお、
図9には、ワーク10を供給する供給口71と、位置決め器30と、加工後のワーク10を排出する排出口72との位置関係が示されており、把持部40等のワーク10が搬送されないときに動作する構成は省略されている。
【0028】
図9(A)~(F)に示す例では、ワーク10は、図の左側に位置する供給口71から供給され、図の右方向へ搬送されて位置決め器30に装着され、加工される。そして、加工後のワーク10は、位置決め器30の位置からさらに図の右方向へ搬送され、排出口72から排出される。言い換えれば、
図9(A)~(F)に示す例において、ワーク10は、供給口71から排出口72へ向かって(図の左側から右方向へ)、供給口71から装着位置(加工位置)、装着位置(加工位置)から排出口72という一連の流れにしたがって移動する。
【0029】
図9(A)は、一つ目のワーク10が供給口71から供給される様子を示す。
図9(A)に示すように、位置決め器30は、切り欠き32b(図では符号を省略)を供給口71側へ向けて、ワーク10を受け入れられる状態となっている。
【0030】
図9(B)は、一つ目のワーク10が供給口71から図の右方向へ搬送され、位置決め器30に装着された様子を示す。この状態で、ワーク10は、位置決めされ、把持部40に把持されて固定され、加工される。
図9(B)において、供給口71には、次のワーク10が準備されている。
【0031】
図9(C)は、一つ目のワーク10の加工が終了し、排出動作が開始される際の様子を示す。このとき、位置決め器30は、
図9(A)、(B)の状態に対し、主軸を中心に180度回転し、切り欠き32bを排出口72側へ向ける。これにより、ワーク10が排出口72へ向かって(図の右方向へ)搬送可能となる。
【0032】
図9(D)は、一つ目のワーク10が位置決め器30から取り外された様子を示す。ワーク10は、位置決め器30の切り欠き32bを通って排出口72へ向かって(図の右方向へ)移動する。このとき、一つ目のワーク10の移動に伴って、二つ目のワーク10も供給口71から右方向、すなわち位置決め器30に向かって移動する。
【0033】
図9(E)は、位置決め器30の切り欠き32bの向きを変えた様子を示す。上述したように、一つ目のワーク10が位置決め器30から離れる方向に搬送されるのに伴って、二つ目のワーク10は位置決め器30に近づく方向に搬送される。このとき、位置決め器30は、
図9(C)、(D)の状態に対し、主軸を中心に180度回転し、切り欠き32bを供給口71側へ向ける。これにより、二つ目のワーク10が切り欠き32bを通って位置決め器30に装着可能となる。
【0034】
図9(F)は、二つ目のワーク10が位置決め器30に装着された様子を示す。
図9(E)の状態から一つ目のワーク10および二つ目のワーク10が共に図の右方向へ移動することにより、二つ目のワーク10が切り欠き32bを通って位置決め器30に装着される。そして、一つ目のワーク10は排出口72に達し、排出される。なお、
図9(F)には記載されていないが、三つ目のワーク10がある場合は、この時点で供給口71に準備される。
【0035】
以上の動作を繰り返すことで、複数のワーク10が連続的に搬送されながら、次々と供給され、加工され、排出される。なお、
図9(A)~(F)に示す例では、ワーク10が、図の左側から右方向へ直線的に移動することとした。しかしながら、加工後のワーク10の排出と次のワークの供給を同じタイミングで行うためには、位置決め器30から見て、供給されるワーク10が搬送されてくる方向(供給方向)と、排出されるワーク10が搬送されていく方向(排出方向)とが重なっていなければ良い。したがって、ワーク10の供給方向と排出方向とが異なる方向であれば良く、必ずしも、
図9(A)~(F)に示した例のように、両方向の関係が180度でなくても良い。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態において位置決め器30の位置決め用エッジ32cは、円形の装着孔32aの内側の縁としたため、装着孔32aと同じ略円形となっている。これに対し、ワーク10のテーパ面13a上に設定された円形の位置決め基準14を用いて位置決めするためには、位置決め基準14と同一の径の円周上に適当な感覚で配置された3点以上の点が特定されれば良い。したがって、例えば、装着孔32aの内側の縁の3か所以上に同じ高さの爪を設け、ワーク10の位置決め基準14をこの爪に当てることで位置決めするような構成としても良い。
【0037】
また、本実施形態では、位置決め器30の覆い部32に設けられた切り欠き32bは、ワーク10の軸太部13が通る幅とした。これに対し、切り欠き32bのうち軸太部13が通る位置以外は、軸部11が通る幅としても良い。
【0038】
なお、本実施形態における加工対象であるワーク10は、軸太部13の軸方向先端側の面をテーパ面13aとし、このテーパ面13a上に位置決め基準14が設定された。ここで、軸太部13の軸方向先端側の面は、必ずしもテーパ面13aでなくても良い。すなわち、軸太部13の軸方向先端側の面を位置決め器30の位置決め用エッジ32cに押し当ててワーク10を位置決めする構成であれば良い。一例として、軸太部13の軸方向先端側の面をワーク10の軸に対して垂直な平面としても良い。この場合、軸太部13の軸方向先端側の面の位置自体が位置決め基準14として設定される。そして、この面が位置決め器30の位置決め用エッジ32cに当たることで、ワーク10の位置決めが行われる。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…製造装置、10…ワーク、11…軸部、12…加工部位、13…軸太部、13a…テーパ面、14…位置決め基準、20…主軸台、30…位置決め器、31…基部、32…覆い部、32a…装着孔、32b…切り欠き、32c…位置決め用エッジ、40…把持部、41…爪、50…工具、60…ワーク移動用ハンド、71…供給口、72…排出口