IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ビルシステムの特許一覧

<>
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図1
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図2
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図3
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図4
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図5
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図6
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図7
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図8
  • 特許-物体検知装置およびその方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】物体検知装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/70 20060101AFI20231020BHJP
   B66B 3/02 20060101ALI20231020BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20231020BHJP
   G01S 13/93 20200101ALI20231020BHJP
【FI】
G01S13/70
B66B3/02 P
B66B5/00 G
G01S13/93
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019183340
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021060231
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 理香
(72)【発明者】
【氏名】森下 真年
(72)【発明者】
【氏名】溝口 崇子
(72)【発明者】
【氏名】大西 友治
(72)【発明者】
【氏名】川崎 勝
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠一朗
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-002537(JP,A)
【文献】特開昭56-132276(JP,A)
【文献】特開2001-278557(JP,A)
【文献】特開2008-127180(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108358007(CN,A)
【文献】中国実用新案第202848786(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95,
B66B 3/02, 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーター棟の昇降路内を移動する複数の物体に対して電磁波を送信し、前記電磁波の送信後に前記複数の物体の各々で反射した反射波をそれぞれ受信信号として受信する送受信機と、
前記送受信機から前記各受信信号を取り込み、当該各受信信号を基に少なくとも前記各受信信号で検知された各検知対象の位置を解析する端末と、を備え、
前記端末は、
前記各受信信号を基に前記各検知対象の速度を算出すると共に、前記各受信信号の信号強度を算出し、前記各検知対象の速度の算出結果と前記各受信信号の信号強度の算出結果を基に前記各検知対象を識別し、
前記送受信機から前記各受信信号を取り込む際に、前記各受信信号のうち前記信号強度の時間変化における連続性がない受信信号を偽像による受信信号として除去し、前記偽像による受信信号が除去された後の受信信号を基に前記各検知対象と前記送受信機との距離をそれぞれ算出し、当該各算出値を基に、少なくとも前記送受信機との距離が最小値を示す検知対象を特定し、当該特定した検知対象と前記送受信機との距離が設定値の範囲内になったことを条件に警告を発することを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が、前記設定値の範囲内になった場合、前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が小さくなるに従って、前記警告を複数の異なる形態で多段階に分けて発することを特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が、作業者に危険が発生し注意を促す距離に相当する場合、第1段階の形態で前記警告を発し、
前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が、前記作業者に危険区域からの退避を促す距離に相当する場合、第2段階の形態で前記警告を発し、
前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が、前記作業者にすぐに危険回避が必要であることを促す距離に相当する場合、第3段階の形態で前記警告を発することを特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記各検知対象が、かご、カウンターウェイト、又はケーブルであるかを識別することを特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
エレベーター棟の昇降路内を移動する複数の物体に対して電磁波を送信し、前記電磁波の送信後に前記複数の物体の各々で反射した反射波をそれぞれ受信信号として受信する送受信機と、
前記送受信機から前記各受信信号を取り込み、当該各受信信号を基に少なくとも前記各受信信号で検知された各検知対象の位置を解析する端末と、を備え、
前記端末は、
前記各受信信号を基に前記各検知対象の速度を算出すると共に、前記各受信信号の信号強度を算出し、前記算出した速度が、前記各検知対象が前記送受信機から離れる規定の方向、又は、前記各検知対象が前記送受信機に近づく規定の方向における速度であって、前記算出した信号強度が、前記複数の検知対象のうち最大値を示す検知対象をかごと識別し、
前記送受信機から前記各受信信号を取り込む際に、前記各受信信号のうち前記信号強度の時間変化における連続性がない受信信号を偽像による受信信号として除去することを特徴とする物体検知装置。
【請求項6】
エレベーター棟の昇降路内を移動する複数の物体に対して電磁波を送信し、前記電磁波の送信後に前記複数の物体の各々で反射した反射波をそれぞれ受信信号として受信する送受信機と、
前記送受信機から前記各受信信号を取り込み、当該各受信信号を基に少なくとも前記各受信信号で検知された各検知対象の位置を解析する端末と、を備え、
前記端末は、
前記各受信信号を基に、前記各受信信号の信号強度を算出すると共に、前記各検知対象の速度と位置に対応した画像の画像処理上の領域をそれぞれ算出し、当該各算出した前記画像処理上の領域として、第1設定面積より大きいかご候補領域が複数存在する場合、前記複数のかご候補領域のうち、前記算出した速度が、前記各検知対象が前記送受信機から離れる規定の方向、又は、前記各検知対象が前記送受信機に近づく規定の方向における速度であって、前記算出した信号強度が、第1しきい値より大きく、最大値を示すかご候補領域をかご領域とし、当該かご領域に存在する検知対象をかごと識別し、
前記送受信機から前記各受信信号を取り込む際に、前記各受信信号のうち前記信号強度の時間変化における連続性がない受信信号を偽像による受信信号として除去することを特徴とする物体検知装置。
【請求項7】
請求項5に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記算出した速度が、前記規定の方向とは逆の方向における速度であって、前記算出した信号強度が、前記最大値と最小値との間の中間値を示す検知対象をカウンターウェイトと識別することを特徴とする物体検知装置。
【請求項8】
請求項6に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記各算出した前記画像処理上の領域として、前記第1設定面積と当該第1設定面積よりも小さい第2設定面積との間の面積となるカウンターウェイト候補領域が複数存在する場合、前記複数のカウンターウェイト候補領域のうち、前記算出した速度が、前記規定の方向における速度とは逆の方向の速度であって、前記算出した信号強度が、前記第1しきい値と当該第1しきい値より小さい第2しきい値との間の値で、最大値を示すカウンターウェイト候補領域をカウンターウェイト領域とし、当該カウンターウェイト領域に存在する検知対象をカウンターウェイトと識別することを特徴とする物体検知装置。
【請求項9】
請求項8に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記複数のカウンターウェイト候補領域のうち、前記算出した速度が、前記規定の方向における速度と正負が同じ方向の速度である領域を第1ゴースト候補領域とし、前記算出した速度が、前記規定の方向における速度と正負が逆で大きさが異なる速度である領域を第2ゴースト候補領域とし、前記複数のカウンターウェイト候補領域から前記第1ゴースト候補領域と前記第2ゴースト候補領域を除去することを特徴とする物体検知装置。
【請求項10】
請求項5に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記算出した速度が、前記規定の方向における速度であって、かごの速度の半分の速度であり、前記算出した信号強度が、最小値を示す検知対象をケーブルと識別することを特徴とする物体検知装置。
【請求項11】
請求項8に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記各算出した前記画像処理上の領域として、前記第2設定面積と当該第2設定面積より小さい第3設定面積との間の面積となるケーブル候補領域が複数存在する場合、前記複数のケーブル候補領域のうち、前記算出した速度が、前記規定の方向における速度と正負が同じで半分の大きさの速度で、前記算出した信号強度が、前記第2しきい値と当該第2しきい値より小さい第3しきい値との間の値で、最大値を示すケーブル候補領域をケーブル領域とし、当該ケーブル領域に存在する検知対象をケーブルと識別することを特徴とする物体検知装置。
【請求項12】
請求項11に記載の物体検知装置であって、
前記端末は、
前記複数のケーブル候補領域のうち、前記算出した速度が、前記規定の方向における速度と正負が逆の方向の速度である領域を第3ゴースト候補領域とし、前記算出した速度が、前記規定の方向における速度と正負が同じで半分の大きさとは異なる速度である領域を第4ゴースト候補領域とし、前記複数のケーブル候補領域から前記第3ゴースト候補領域と前記第4ゴースト候補領域を除去することを特徴とする物体検知装置。
【請求項13】
送受信機が、エレベーター棟の昇降路内を移動する複数の物体に対して電磁波を送信し、前記電磁波の送信後に前記複数の物体の各々で反射した反射波をそれぞれ受信信号として受信する送受信ステップと、
前記送受信機から前記各受信信号を取り込む端末が、前記送受信ステップで受信された前記各受信信号を基に少なくとも前記各受信信号で検知された各検知対象の位置を解析する解析ステップと、を備え、
前記解析ステップでは、
前記各受信信号を基に前記各検知対象の速度を算出すると共に、前記各受信信号の信号強度を算出し、前記各検知対象の速度の算出結果と前記各受信信号の信号強度の算出結果を基に前記各検知対象を識別し、
前記送受信ステップで受信された前記各受信信号を取り込む際に、前記各受信信号のうち前記信号強度の時間変化における連続性がない受信信号を偽像による受信信号として除去し、前記偽像による受信信号が除去された後の受信信号を基に前記各検知対象と前記送受信機との距離をそれぞれ算出し、当該各算出値を基に、少なくとも前記送受信機との距離が最小値を示す検知対象を特定し、当該特定した検知対象と前記送受信機との距離が設定値の範囲内になったことを条件に警告を発することを特徴とする物体検知方法。
【請求項14】
請求項13に記載の物体検知方法であって、
前記解析ステップでは、
前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が、前記設定値の範囲内になった場合、前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が小さくなるに従って、前記警告を複数の異なる形態で多段階に分けて発することを特徴とする物体検知方法。
【請求項15】
請求項14に記載の物体検知方法であって、
前記解析ステップでは、
前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が、作業者に危険が発生し注意を促す距離に相当する場合、第1段階の形態で前記警告を発し、
前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が、前記作業者に危険区域からの退避を促す距離に相当する場合、第2段階の形態で前記警告を発し、
前記特定した検知対象と前記送受信機との距離が、前記作業者にすぐに危険回避が必要であることを促す距離に相当する場合、第3段階の形態で前記警告を発することを特徴とする物体検知方法。
【請求項16】
請求項13に記載の物体検知方法であって、
前記解析ステップでは、
前記各検知対象が、かご、カウンターウェイト、又はケーブルであるかを識別することを特徴とする物体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降路内の物体を検知する物体検知装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターのかご等の移動体の位置情報を検出するに際して、電磁波の反射強度変化を利用して検出する方法がある。例えば、特許文献1には、「第1電波を放射する電磁送信機SNDと、放射された第1電波からそれぞれの絶対位置において固有の反射強度およびその時間変化のパターンを生成する位置マーカーMKと、位置マーカーMKにより反射された第2電波を受信し、位置情報を取り出すための信号形式に変換し出力する電磁受信機RCVと、電磁受信機RCVの出力から位置を求めるマーカー認識装置LCCから構成される。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-38607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベーターの保守作業において、作業者の危険リスクを低減するに際しては、かご等の移動体の位置を検知し、検知結果を作業者に知らせることが重要である。特に、昇降路の底部であるピットで作業者が作業する場合、かご、ケーブル、カウンターウェイト等の物体の位置を正確に検知し、物体がピットに近づくことを作業者に知らせることが必要となる。この際、電磁波を利用して、各物体の位置を検出する方法を採用することができる。
【0005】
しかし、エレベーター棟の昇降路内は、閉鎖空間であり、昇降路内で電磁波を利用して各物体の位置を検知しようとしても、電磁波が昇降路内で多重に反射して、ゴースト(偽像)が発生し、各物体を誤認識し正確に識別することが困難である。
【0006】
本発明の目的は、昇降路内を移動する1以上の物体を正確に識別することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、エレベーター棟の昇降路内を移動する複数の物体に対して電磁波を送信し、前記電磁波の送信後に前記複数の物体の各々で反射した反射波をそれぞれ受信信号として受信する送受信機と、前記送受信機から前記各受信信号を取り込み、当該各受信信号を基に少なくとも前記各受信信号で検知された各検知対象の位置を解析する端末と、を備え、前記端末は、前記各受信信号を基に前記各検知対象の速度を算出すると共に、前記各受信信号の信号強度を算出し、当該各算出結果を基に前記各検知対象を識別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、昇降路内を移動する1以上の物体を正確に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る物体検知装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施例1に係る物体検知装置の検知結果の表示例を示す図である。
図3】本発明の実施例1に係る物体検知装置の検知結果の表示例であって、(a)、(b)は、検知結果の時間変化を示す図である。
図4】本発明の実施例1に係る物体検知装置の検知方法を説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の実施例1に係る物体検知装置の検知結果を示す表示例であって、かご移動時の検知結果を示す図である。
図6】本発明の実施例1に係る物体検知装置の第1の処理方法を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の実施例1に係る物体検知装置の第2の処理方法を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の実施例1に係る物体検知装置の第3の処理方法を説明するためのフローチャートである。
図9】本発明の実施例2に係る物体検知装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
【0011】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係る物体検知装置の概略構成図である。図1において、エレベーター棟10の昇降路12内には、かご(乗りかご)14とカウンターウェイト(つり合い錘)16が鉛直方向に沿って移動可能に配置されている。かご14の底部にはケーブル(ロープ)18の一端側が接続されており、ケーブル18の他端側は、エレベーター棟10の上部に接続されている。カウンターウェイト16は、かご14が昇降路12内を上昇又は下降する際に、かご14とは反対方向(逆方向)に同じ速度で昇降する。この際、ケーブル18は、その一部がかご14の底部から垂れる形でかご14と同一方向に、かご14の半分の速度で移動する。
【0012】
昇降路12の底部であるピットは、作業者の作業エリアに設定されており、この作業エリアには、ミリ波センサ20と、回路22と、端末24が設置される。
【0013】
ミリ波センサ20は、例えば、電磁波として、ミリ波(波長が1~10mmの電波)を生成するミリ波生成器と、ミリ波生成器で生成されたミリ波を設定時間毎に送信する送信アンテナと、送信アンテナから送信された各ミリ波が物体(対象物)で反射して戻ってきた電波(反射波)を順次受信する受信アンテナと、受信アンテナで順次受信された電波(ミリ波)と送信アンテナから順次送信されたミリ波を基に、ミリ波よりも周波数の低い中間周波数信号(IF信号)を順次生成し、生成された各中間周波数信号を各受信信号として、回路22に伝送する信号変換器(いずれも図示せず)を有する送受信機として構成される。
【0014】
回路22は、ミリ波センサ20から伝送された各受信信号を端末24に伝送する処理を実行する。端末24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、入力装置、出力装置、通信装置および記憶装置を備えたコンピュータ装置で構成される。
【0015】
CPUは、装置全体の動作を統括的に制御する中央処理装置として構成される。入力装置は、キーボードまたはマウスから構成され、出力装置は、ディスプレイまたはプリンタから構成される。また通信装置は、無線LAN又は有線LANに接続するためのNIC(Network Interface Card)を備えて構成される。さらに記憶装置は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶媒体から構成される。
【0016】
この際、CPUは、回路22から伝送された各受信信号を処理し、各受信信号で検知された1以上の検知対象(物体)の位置を解析し、解析結果を画像信号や警報信号として生成する解析部として機能する。この際、CPUは、各受信信号を基に各検知対象の速度と各受信信号の信号強度を算出し、各算出結果を基に各検出対象を、例えば、かご14、カウンターウェイト16、又はケーブル18のいずれであるかを識別する。この場合、CPUは、かご14などの物体の像と偽像(ゴースト)とを識別するために、回路22から伝送された各受信信号を取り込む際に、各受信信号のうち時間変化に連続性がない受信信号を偽像による受信信号として除去する。これにより、かご14などの物体(検知対象)の像を誤認識することなく、正確に識別することができる。
【0017】
また、CPUは、偽像による受信信号が除去された後の受信信号を基に各検知対象とミリ波センサ20との距離をそれぞれ算出し、各算出値を基に、少なくともミリ波センサ20との距離が最小値を示す検知対象を特定し、特定した検知対象とミリ波センサ20との距離が設定値の範囲内になったことを条件に警告を発する処理を実行する。この場合、CPUは、特定した検知対象とミリ波センサ20との距離が、設定値の範囲内になった場合、特定した検知対象とミリ波センサ20との距離が小さくなるに従って、警告を複数の異なる形態で多段階に分けて発する処理を実行する。CPUで生成された警報信号は、警告を警報音で報知するスピーカ(図示せず)に伝送される。これにより、特定した検知対象が接近物としてミリ波センサ20に順次近づいてくることを警報音の変化で作業者に知らせることができる。
【0018】
出力装置は、CPUで生成された画像信号による画像(検知対象の画像)を画面上に表示する表示部又は表示装置として機能する。なお、出力装置の画面上に表示される検知対象(物体)の画像は、検知対象の速度・位置に対応して変化する。
【0019】
図2は、実施例1に係る物体検知装置の検知結果の表示例を示す図である。図2において、端末24で解析された解析結果(検知結果)が、受信信号で検知された検知対象の速
度と距離(位置)の情報として端末24の画面上に表示され、端末24の画面(表示画面)のうち横軸は、ミリ波センサ20の位置(センサ位置)=0を基準として、ミリ波センサ20からの距離を示し、縦軸は、ミリ波センサ20で検知された検知対象(物体)やゴースト(偽像)の速度を示す。速度は、検知対象がミリ波センサから離れる方向の速度が正であり、検知対象がミリ波センサに近付く方向の速度が負である。
【0020】
この際、かご14とカウンターウェイト16は、同一の大きさの速度で昇降路12内を互いに逆方向に移動するので、かご14の像14a(かご14で1回反射しただけのミリ波を受信して得られた像)とカウンターウェイト16の像16a(カウンターウェイト16で1回反射しただけのミリ波を受信して得られた像)は、同じ速度で正負の符号が逆になる位置にそれぞれ表示される。ケーブル18の像18a(ケーブル18で1回反射しただけのミリ波を受信して得られた像)は、かご14の像14aに対して、同一符号で半分の速度の位置に表示される。エレベーター棟10内で作業者にとって危険となる接近物である物体は、主に、かご14とカウンターウェイト16、及びケーブル18である。
【0021】
ミリ波は、金属体で大きく反射するため、ミリ波センサ20で各種対象物(物体)からの反射波を受信した場合、3つの接近物のうちかご14で反射した反射波による受信信号が最大の信号強度を示し、カウンターウェイト16、ケーブル18の順で、その反射波による受信信号の信号強度が低下する。このため、端末24は、受信信号で検知された検知対象の速度と受信信号の信号強度を基に3つの接近物(物体)を判別(識別)することができる。
【0022】
例えば、端末24は、算出した速度が、規定の方向(かご14の移動方向)における速度であって、算出した信号強度が、複数の検知対象のうち最大値を示す検知対象をかご14と識別し、算出した速度が、規定の方向とは逆の方向における速度であって、算出した信号強度が、最大値と最小値との間の中間値を示す検知対象をカウンターウェイト16と識別し、算出した速度が、規定の方向における速度であって、かご14の速度の半分の速度であり、算出した信号強度が、最小値を示す検知対象をケーブル18と識別することができる。
【0023】
また、エレベーター棟10の壁、天井、床などでもミリ波は反射するが、これらの対象物は、移動しないので、建屋で反射した反射波による受信信号を解析して得られた像の速度は0となる。このため、これら建屋に関する像10aは、速度0上の横線として表示される。
【0024】
一方、かご14の像14aに対して、かご14のゴースト14A、14Bが表示される。すなわち、ミリ波センサ20がミリ波を送信すると、このミリ波は、昇降路12内の物体に当たって反射する。ミリ波センサ20が、物体に当たって反射して戻ってきたミリ波を受信すると、受信したミリ波(反射波)の中には、多重反射を繰り返したミリ波が含まれている。ミリ波は、ある広がり角度を持った状態でミリ波センサ20から送信されるので、多重反射を繰り返して受信されたミリ波がミリ波センサ20によって受信されると、受信されたミリ波(反射波)による受信信号を解析して得られた像は、ゴーストとして表示される。
【0025】
例えば、かご14で反射したミリ波が多重反射した場合、このミリ波による像は、かご14の像14aの周辺であって、かご14と同一速度の位置にゴースト(偽像)14Aとして表示されると共に、かご14の速度に対して整数分の1の速度又は整数倍の速度の位置に、ゴースト14Bとして表示される。ミリ波は、その伝搬距離に応じてエネルギーが減衰する。このため、かご14で反射した後、多重反射を繰り返したミリ波から得られた受信信号のうち、ゴースト14A、14Bの信号強度は、かご14の像14aの信号強度よりも、小さくなる。また、ゴースト14A、14Bを検知したときの受信信号は、時間変化に対して連続性がない。すなわち、端末24は、ミリ波から得られた受信信号の受信強度(信号強度)や受信信号から生成された像の速度を基に、かご14の像14a、カウンターウェイト16の像16a、或いはケーブル18の像18aであるか否かを判別することができる。また、端末24は、ミリ波(受信信号)の受信強度(信号強度)・受信信号の時間変化における連続性の有無を基に、かご14の像14a、或いはゴースト14A、14Bであるか否かを識別することができる。なお、ミリ波センサ20から送信されるミリ波の広がりを制限すれば、ミリ波センサ20で一度に検知できるミリ波の領域が狭まるので、ゴーストの数を減少させることはできる。
【0026】
図3は、本発明の実施例1に係る物体検知装置の検知結果の表示例であって、(a)、(b)は、検知結果の時間変化を示す図である。なお、図3(a)、(b)における横軸と縦軸の関係は、図2と同様である。
【0027】
図3(a)に示すように、端末24のある時間t1における処理結果が、図2における処理結果と同一である場合、かご14の像14aとカウンターウェイト16の像16aは、同じ速度で正負の符号が逆になる位置にそれぞれ表示される。ケーブル18の像18aは、かご14の像14aに対して、同一符号で半分の速度の位置に表示される。さらに、かご14の像14aの周辺には、かご14のゴースト14A、14Bが表示される。この際、かご14の像14aは、かご14の像14aを表示するための領域であるかご領域14b内に表示され、カウンターウェイト16の像16aは、カウンターウェイト16の像16aを表示するための領域であるカウンターウェイト領域16b内に表示される。また、ケーブル18の像18aは、ケーブル18の像18aを表示するための領域であるケーブル領域18b内に表示される。
【0028】
次に、例えば、かご14が上昇し、時間t1から一定時間経過すると、図3(b)に示すように、かご14の像14aとケーブル18の像18aは、かご14の上昇に合わせて、それぞれセンサ位置から遠ざかる位置に表示される。この際、かご14のゴースト14Aは、この時点では、ゴースト14Aに対応した受信信号には、時間変化に連続性があると端末24で判断されるので、端末24の画面上に表示される。一方、かご14のゴースト14Bは、この時点では、ゴースト14Bに対応した受信信号には、時間変化に連続性が無いと端末24で判断されるので、端末24の画面上に表示されない。また、カウンターウェイト16は、かご14とは逆方向に移動するので、カウンターウェイト16の像16aは、元の位置よりもセンサ位置に近づく位置に表示される。
【0029】
図4は、本発明の実施例1に係る物体検知装置の検知方法を説明するためのフローチャートである。図4において、まず、作業者は、昇降路12の底部であるピットにミリ波センサ20等を設置する(S1)。この際、ミリ波センサ20の送信アンテナと受信アンテナを、対象物体(接近物)が存在する方向に向けてミリ波センサ20を設置する。また、ミリ波センサ20にレーザー発信器が内蔵されている場合、レーザー発信器から測定可能領域を示すレーザー光を発することにより、ミリ波センサ20の設置が容易になる。或いは、ミリ波センサ20に超音波や可聴音等の音送受信機が内蔵されている場合、音送受信機から送信音を発生させ、その後、受信音が得られた場合、受信音の大きさに応じて受信音の高さや音量を変化させることで、ミリ波センサ20の設置を容易にすることができる。或いは、ミリ波センサに音発生機が内蔵されている場合、ミリ波センサの受信信号の大きさに応じて発生音の高さや音量を変化させることで、ミリ波センサ20の設置を容易にすることができる。また、端末24の表示画面に検知結果が表示されることを確認する。さらに、測定対象の物体が想定距離内に入っている場合に、警報音が発生することを確認する。
【0030】
次に、作業者の操作により、ミリ波センサ20による測定を開始する(S2)。測定が開始されると、ミリ波センサ20は、昇降路12内に向けてミリ波を送信し、測定対象となる対象物体(対象物)から反射した反射波(ミリ波)を受信して受信信号を出力する。この後、端末24は、ミリ波センサ20の受信による受信信号を基に対象物体(検知対象)を識別する(S3)。
【0031】
次に、端末24は、時間が経過する毎に、識別した対象物体の動きを追跡し、対象物体がミリ波センサ20に対して遠ざかっているのか、近づいているのかを判断する。具体的には、端末24は、対象物体とミリ波センサ20との距離が距離A以内(設定値の範囲内)、例えば、20m以内であるか否かを判定し(S4)、ステップS4で否定の判定結果を得た場合には、ステップS3の処理に戻り、ステップS4で肯定の判定結果を得た場合には、対象物体とミリ波センサ20との距離が距離B以内、例えば、10m以内であるか否かを判定する(S5)。
【0032】
端末24は、ステップS5で否定の判定結果を得た場合には、対象物体とミリ波センサ20との距離が、距離Aと距離Bとの間であって、距離Aよりも小さくなったとして、警告音aを発する処理を実行し(S6)、ステップS5で肯定の判定結果を得た場合には、対象物体とミリ波センサ20との距離が距離C以内、例えば、5m以内であるか否かを判定する(S7)。
【0033】
端末24は、ステップS7で否定の判定結果を得た場合には、対象物体とミリ波センサ20との距離が、距離Bと距離Cとの間であって、距離Bよりも小さくなったとして、警告音bを発する処理を実行し(S8)、ステップS7で肯定の判定結果を得た場合には、対象物体とミリ波センサ20との距離が、距離Cよりも小さくなったとして、警告音cを発する処理を実行する(S9)。これにより、対象物体がミリ波センサ20側に接近して来る場合に、順次警告音a、b、cが発生するので、作業者の危険リスクを低減することができる。
【0034】
次に、端末24は、作業を終了したか否かを判定し(S10)、ステップS10で否定の判定結果を得た場合(作業が終了していない場合)には、ステップS3の処理に戻り、ステップS3~ステップS10の処理を繰り返し、ステップS10で肯定の判定結果を得た場合(作業が終了した場合)には、ミリ波センサ20による測定を終了する(S11)。この後、作業者は、ミリ波センサ20の取り外しを行い(S12)、ミリ波センサ20を回収し、このルーチンでの処理を終了する。
【0035】
上述したように、対象物体がミリ波センサ20に近付いてくる場合、順次警告音a、b、cが発生するので、作業者は、対象物体がミリ波センサ20に対して遠ざかっているのか、近付いているのかを判断する必要がないので、作業を容易に行うことができる。また、対象物体が指定範囲内(設定値の範囲内)に存在する場合には、警告音が発生するため、対象物体の上下動が急に反転しても、作業者に、対象物体が指定範囲内に存在することを警告することができる。
【0036】
なお、ミリ波センサ20は持ち込みではなく、ピットに据え置きさせてもよい。据え置きとすることで、ミリ波センサ20を設置する手間が省かれ、作業者の安全確保が容易になる。
【0037】
また、警告音を発生させるか否かを判定するために用いる距離のうち距離Aは、作業者に危険が発生し注意を促す距離であり、距離Bは、作業者に危険区域からの退避を促す距離であり、距離Cは、作業者にすぐに危険回避が必要な距離である。なお、エレベーターのかご14の速度に応じて、距離A、B、Cの値を変更することができる。また、対象物体とミリ波センサ20との距離が、設定値の範囲内になった場合、対象物体とミリ波センサ20との距離が小さくなるに従って、多段階に警告音a、b、cの高さや間隔を変更することができる。例えば、警告音a、b、cを、警告音a、b、cの順に波長の短い高い音に設定したり、或いは、警告音a、b、cの順に間隔の短い音に設定したり、することができる。警告に警告音a、b、cを使用することで、作業中でも作業者が耳で聞くことができるため、作業者に注意を促すことができる。なお、警告に、警告音の代わりに光を用いることができる。その場合、警告光として、対象物体がミリ波センサ20に近づく順に明るい照明の光を用いたり、あるいは、対象物体がミリ波センサ20に近づく順に点滅の間隔の短い光を用いたりすることができる。また、対象物体がミリ波センサ20に近づく順に色が青、黄、赤となる光を用いることができる。警告に光による照明を使う場合、店舗内など煩くて雑音の多い環境でも、作業者に警告を正確に報知することが可能である。
【0038】
図5は、本発明の実施例1に係る物体検知装置の検知結果を示す表示例であって、かご移動時の検知結果を示す図である。なお、図5における横軸と縦軸の関係は、図2と同様である。
【0039】
図5において、端末24は、時間t1で処理を開始し、時間t2でかご14の上昇が開始され、かご14とケーブル18がミリ波センサ20の検知可能範囲に存在する場合、端末24の表示画面には、例えば、速度=0の位置に、かご14の像14aとケーブル18の像18aが表示される。この際、かご14の像14aは、かご領域14b内に表示され、ケーブル18の像18aは、ケーブル領域18b内に表示される。かご14の上昇移動とともに、時間が、時間t3、t4、t5の順に変化すると、端末24の表示画面には、かご14の上昇移動に合わせて、速度が順次高くなる位置であって、センサ位置から順次離れていく位置に、かご14の像14aが表示される。同時に、端末24の表示画面には、かご14の上昇移動に合わせて、速度が順次高くなる位置(かご14の半分の速度の位置)であって、センサ位置から順次離れていく位置に、ケーブル18の像18aが表示される。
【0040】
一方、カウンターウェイト16は、この場合、ミリ波センサ20の検知可能範囲から外れた位置に存在するので、時間t1~t5では、端末24の表示画面には、カウンターウェイト16の像16aは、表示されない。
【0041】
次に、時間t11でカウンターウェイト16が、センサ位置から距離Aのところに近づくと、端末24の表示画面には、センサ位置からの距離が、距離A、B、Cであることを示す情報が表示されると共に、センサ位置から距離Aの近くに、カウンターウェイト16の像16aが、カウンターウェイト領域16b内に表示される。
【0042】
次に、時間t12でカウンターウェイト16が、センサ位置から距離Aの範囲内であって、距離Aと距離Bとの間にところに移動すると、端末24の表示画面には、距離Aと距離Bとの間の位置に、カウンターウェイト16の像16aが、カウンターウェイト領域16b内に表示される。この際、端末24は、警告音aを発生させる処理を実行する。
【0043】
次に、時間t13でカウンターウェイト16が、センサ位置から距離Bの範囲内であって、距離Bと距離Cとの間にところに移動すると、端末24の表示画面には、距離Bと距離Cとの間の位置に、カウンターウェイト16の像16aが、カウンターウェイト領域16b内に表示される。この際、端末24は、警告音bを発生させる処理を実行する。
【0044】
時間t14、t15でカウンターウェイト16が、センサ位置から距離Cの範囲内に順次移動すると、端末24の表示画面には、距離Cの範囲内の位置に、かご14の移動に合わせて、カウンターウェイト16の像16aが、カウンターウェイト領域16b内に順次表示される。この際、端末24は、警告音cを継続して発生させる処理を実行する。これにより、作業者に、対象物体が指定範囲内に存在することを警告することができる。
【0045】
図6は、本発明の実施例1に係る物体検知装置の第1の処理方法を説明するためのフローチャートである。図6において、端末24は、ミリ波センサ20で受信した受信電波から得られた受信信号を回路22から順次入力し、入力した各受信信号を処理して解析する。この際、端末24は、各受信信号を基に、各受信信号の信号強度を算出すると共に、各検知対象の速度及び各検知対象の画像処理上の領域をそれぞれ算出し、受信信号の信号強度が、しきい値T1(第1しきい値)よりも大きい値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M1(第1設定面積)よりも大きい領域を1以上抽出し、抽出した領域をかごの候補領域(かご候補領域)とする(S21)。
【0046】
次に、端末24は、かごの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、各かごの候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をかご領域とする(S22)。この際、例えば、かご領域14b内には、かご14の像14aが表示される(図3(a)参照)。これにより、かご領域14b内に表示された像14aを、かご14と識別することができる。
【0047】
次に、端末24は、受信信号の信号強度が、しきい値T1としきい値T2(第2しきい値)の間の値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M1と設定面積M2(第2設定面積)の間の大きさを持つ領域を1以上抽出し、抽出した領域をカウンターウェイトの候補領域(カウンターウェイト候補領域)とする(S23)。なお、しきい値T1としきい値T2は、しきい値T1>しきい値T2の関係にあり、設定面積M1と設定面積M2は、設定面積M1>設定面積M2の関係にある。
【0048】
次に、端末24は、カウンターウェイトの候補領域のうち、かご領域と正負が逆(かご14の移動方向を規定の方向として、かご14の移動方向における速度とは正負が逆)で同じ大きさの速度を持つ領域を候補領域(カウンターウェイトの候補領域)として残す(S24)。
【0049】
次に、端末24は、カウンターウェイトの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、各カウンターウェイトの候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をカウンターウェイト領域とする(S25)。この際、例えば、カウンターウェイト領域16b内には、カウンターウェイト16の像16aが表示される(図3(a)参照)。これにより、カウンターウェイト領域16b内に表示された像16aを、カウンターウェイト16と識別することができる。
【0050】
次に、端末24は、受信信号の信号強度が、しきい値T2としきい値T3(第3しきい値)の間の値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M2と設定面積M3(第3設定面積)の間の大きさを持つ領域を1以上抽出し、抽出した領域をケーブルの候補領域(ケーブル候補領域)とする(S26)。なお、しきい値T2としきい値T3は、しきい値T2>しきい値T3の関係にあり、設定面積M2と設定面積M3は、設定面積M2>設定面積M3の関係にある。
【0051】
次に、端末24は、ケーブルの候補領域のうち、かご領域と正負が同じで半分の大きさの速度を持つ領域を候補領域(ケーブルの候補領域)として残す(S27)。
【0052】
端末24は、ケーブルの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、各ケーブル18の候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をケーブル領域とし(S28)、その後、このルーチンでの処理を終了する。この際、例えば、ケーブル領域18b内には、ケーブル18の像18aが表示される(図3(a)参照)。これにより、ケーブル領域18b内に表示された像18aを、ケーブル18と識別することができる。また、かご領域、カウンターウェイト領域、及びケーブル領域を正確に求めることができる。
【0053】
図7は、本発明の実施例1に係る物体検知装置の第2の処理方法を説明するためのフローチャートである。図7において、端末24は、ミリ波センサ20で受信した受信電波から得られた受信信号を回路22から順次入力し、入力した各受信信号を処理して解析する。この際、端末24は、各受信信号を基に、各受信信号の信号強度を算出すると共に、各検知対象の速度及び各検知対象の画像処理上の領域をそれぞれ算出し、受信信号の信号強度が、しきい値T1よりも大きい値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M1よりも大きい領域を1以上抽出し、抽出した領域をかごの候補領域とする(S41)。
【0054】
次に、端末24は、かごの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、各かごの候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をかご領域とする(S42)。
【0055】
次に、端末24は、受信信号の信号強度が、しきい値T1としきい値T2の間の値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M1と設定面積M2の間の大きさを持つ領域を1以上抽出し、抽出した領域をカウンターウェイトの候補領域とする(S43)。
【0056】
次に、端末24は、複数のカウンターウェイトの候補領域のうち、かご領域と正負が同じ大きさの速度を持つ領域を第1ゴースト候補領域として除く(S44)。
【0057】
次に、端末24は、複数のカウンターウェイトの候補領域のうち、かご領域と正負が逆で大きさが異なる速度を持つ領域を第2ゴースト候補領域として除く(S45)。
【0058】
次に、端末24は、複数のカウンターウェイトの候補領域から、第1ゴースト候補領域と第2ゴースト候補領域が除かれた後のカウンターウェイトの候補領域に対して、カウンターウェイトの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、第1ゴースト候補領域と第2ゴースト候補領域が除かれた後のカウンターウェイトの候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をカウンターウェイト領域とする(S46)。
【0059】
次に、端末24は、受信電波の信号強度が、しきい値T2としきい値T3の間の値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M2と設定面積M3の間の大きさを持つ領域を1以上抽出し、抽出した領域をケーブルの候補領域(ケーブル候補領域)とする(S47)。
【0060】
次に、端末24は、複数のケーブルの候補領域のうち、かご領域と正負が逆の速度を持つ領域を第3ゴースト候補領域として除く(S48)。
【0061】
次に、端末24は、複数のケーブルの候補領域(ケーブル候補領域)のうち、かご領域と正負が同じで半分の大きさとは異なる速度を持つ領域を第4ゴースト候補領域として除く(S49)。これにより、複数のケーブルの候補領域の中から、偽像による領域(ゴースト候補領域)を除去することができる。
【0062】
次に、端末24は、複数のケーブルの候補領域から、第1ゴースト候補領域~第4ゴースト候補領域を除去した後に残ったケーブルの候補領域に対して、ケーブルの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、第1ゴースト候補領域~第4ゴースト候補領域が除去された後に残った、ケーブルの候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をケーブル領域とし(S50)、その後、このルーチンでの処理を終了する。これにより、かご領域、カウンターウェイト領域、及びケーブル領域を正確に求めることができる。
【0063】
図8は、本発明の実施例1に係る物体検知装置の第3の処理方法を説明するためのフローチャートである。図8において、端末24は、ミリ波センサ20で受信した受信電波から得られた受信信号を回路22から順次入力し、入力した各受信信号を処理して解析する。この際、端末24は、各受信信号を基に、各受信信号の信号強度を算出すると共に、各検知対象の速度及び各検知対象の画像処理上の領域をそれぞれ算出し、受信信号の信号強度が、しきい値T1よりも大きい値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M1よりも大きい領域を1以上抽出し、抽出した領域をかごの候補領域とする(S61)。
【0064】
次に、端末24は、かごの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、各かごの候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をかご領域とする(S62)。
【0065】
次に、端末24は、受信信号の信号強度が、しきい値T1としきい値T2の間の値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M1と設定面積M2の間の大きさを持つ領域を2以上抽出し、抽出した領域をカウンターウェイトの候補領域(カウンターウェイト候補領域)とする(S63)。
【0066】
次に、端末24は、複数のカウンターウェイトの候補領域のうち、かご領域と正負が同じ大きさの速度を持つ領域を第1ゴースト候補領域とする(S64)。
【0067】
次に、端末24は、複数のカウンターウェイトの候補領域のうち、かご領域と正負が逆で大きさが異なる速度を持つ領域を第2ゴースト候補領域とする(S65)。
【0068】
次に、端末24は、複数のカウンターウェイトの候補領域から、第1ゴースト候補領域と第2ゴースト候補領域を除去する(S66)。これにより、複数のカウンターウェイトの候補領域の中から、偽像による領域(ゴースト候補領域)を除去することができる。
【0069】
次に、端末24は、複数のカウンターウェイトの候補領域から、第1ゴースト候補領域と第2ゴースト候補領域が除去された後に残った、カウンターウェイトの候補領域に対して、カウンターウェイトの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、第1ゴースト候補領域と第2ゴースト候補領域が除去された後に残った、カウンターウェイトの候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をカウンターウェイト領域とする(S67)。
【0070】
次に、端末24は、受信信号の信号強度が、しきい値T2としきい値T3の間の値を持ち、検知対象の画像処理上の領域が、設定面積M2と設定面積M3の間の大きさを持つ領域を1以上抽出し、抽出した領域をケーブルの候補領域(ケーブル候補領域)とする(S68)。
【0071】
次に、端末24は、複数のケーブルの候補領域のうち、かご領域と正負が逆の速度を持つ領域を第3ゴースト候補領域とする(S69)。
【0072】
次に、端末24は、複数のケーブルの候補領域のうち、かご領域と正負が同じで半分の大きさとは異なる速度を持つ領域を第4ゴースト候補領域とする(S70)。
【0073】
次に、端末24は、複数のケーブルの候補領域から、第3ゴースト候補領域と第4ゴースト候補領域を除去する(S71)。これにより、複数のケーブルの候補領域の中から、偽像による領域(ゴースト候補領域)を除去することができる。
【0074】
次に、端末24は、複数のケーブルの候補領域から、第3ゴースト候補領域と第4ゴースト候補領域が除去された後に残った、ケーブルの候補領域に対して、ケーブルの候補領域毎に値(信号強度)の平均値を算出し、第3ゴースト候補領域と第4ゴースト候補領域が除去された後に残った、ケーブルの候補領域のうち、算出値(平均値)が最大値となる領域をケーブル領域とし(S72)、その後、このルーチンでの処理を終了する。これにより、かご領域、カウンターウェイト領域、及びケーブル領域を正確に求めることができる。
【0075】
本実施例によれば、昇降路内を移動する1以上の物体を誤認識することなく、正確に識別することができる。また、受信信号を基に検知対象を検知する際に、偽像による受信信号を除去しているので、検知対象をより正確に識別することができる。さらに、検知対象とミリ波センサ20との距離が設定値の範囲内になった場合、警告を発するようにしているので、作業者の危険リスクを低減することができる。
【0076】
(実施例2)
図9は、本発明の実施例2に係る物体検知装置の概略構成図である。本実施例は、かご14内に端末30を配置し、端末30と端末24との間で情報の送受信を行うと共に、端末30と回路22との間で情報の送受信を行うようにしたものであり、他の構成は、実施例1と同様である。
【0077】
図9において、端末30は、例えば、端末24と同様のコンピュータ装置で構成される。また、端末30としては、例えば、iPhone(登録商標)あるいはタブレットなどの端末を用いることができる。この際、かご14内でかご14の操作を行う作業員が端末30を使用し、ピットで点検作業を行う作業員が端末24を使用することで、両者が、共通の画面を見たり、共通の警告音を聞いたりすることができる。
【0078】
本実施例によれば、各作業者が危険情報を共有することが可能であり、各作業者に対する危険リスクを減らすことができる。
【0079】
また、本実施例では、ミリ波センサ20への接近物(物体)として、かご14、カウンターウェイト16、ケーブル18を検知したが、作業者の着衣やヘルメットや保護メガネを検知することも可能である。この際、一方の作業者の位置を端末24で検知し、この検知結果を端末24から他方の作業員(かご14内の作業者)の端末30に位置情報・動き情報として提供することができる。これにより、危険情報を各作業者で共有することが可能であり、作業者の危険リスクを減らすことができる。
【0080】
また、端末24と端末30で処理された情報をかご14の床や壁に投影して表示することにより、各作業者が危険を察知し易くすることが可能である。例えば、ピット底の作業員の位置をかご14の床や壁に表示することにより、かご14内の作業員が、ピット底の作業員の位置を把握することが可能となり、作業者の危険回避を容易にすることができる。また、警告音を作業者の位置方向から発生させたり、警告音に対応する映像を表示したりすることにより、各作業者が危険を容易に察知することができる。
【0081】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0082】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録して置くことができる。
【符号の説明】
【0083】
10 エレベーター棟、12 昇降路、14 かご、16 カウンターウェイト、18 ケーブル、20 ミリ波センサ、22 回路、24 端末、30 端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9